(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240508BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240508BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240508BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240508BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2023503354
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2021034340
(87)【国際公開番号】W WO2022185580
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2021035639
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】刀川 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】黒木 康好
(72)【発明者】
【氏名】三木 健
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-302009(JP,A)
【文献】特開2017-224496(JP,A)
【文献】特開2019-96501(JP,A)
【文献】国際公開第2015/045350(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/132934(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/038067(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/008827(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0373558(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とを備え、前記正極及び前記負極が積層されたリチウムイオン二次電池であって、
前記正極は、正極箔と、前記正極箔の表面に設けられた正極活物質層と、前記正極活物質層の表面に設けられた正極絶縁層とを有し、
前記正極活物質層は、正極活物質と、第一非水系バインダとを含み、
前記正極絶縁層は、無機フィラーと、第二非水系バインダと、分散剤とを含み、
前記第二非水系バインダは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項8】
正極箔を準備する工程と、
正極活物質と、第一非水系バインダと、第一非水系溶媒とを混合することで正極活物質層用スラリーを調製する工程と、
無機フィラーと、第二非水系バインダと、分散剤と、第二非水系溶媒とを混合することで正極絶縁層用スラリーを調製する工程と、
前記正極活物質層用スラリーを前記正極箔の表面に塗布する工程と、
前記正極絶縁層用スラリーを前記正極箔の表面に塗布された前記正極活物質層用スラリーの表面に塗布する工程と、
塗布された前記正極活物質層用スラリー及び前記正極絶縁層用スラリーを同時に乾燥させる工程と、を備え、
前記分散剤は、カルボン酸化合物及びリン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項11】
前記第二非水系バインダは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸(PAA)、及びカルボキシメチルセルロース(CMC)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項8又は10に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池及びその製造方法に関し、例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車等の動力用電源に用いるリチウムイオン二次電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車、電気自動車等の動力源に用いる大容量の二次電池が開発されており、その中でもエネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池が注目されている。そして、排気ガスを抑制し環境性能を重視する観点から自動車では電動化による走行が指向されている結果、リチウムイオン二次電池では、より高いエネルギー密度とともに、より高い安全性が求められている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、一般的には、正極及び負極と、それらを電気的に絶縁するためのセパレータとを備え、正極及び負極がセパレータを介して積層された基本構成を有している。正極及び負極は、通常、帯状の金属箔の表面にリチウムイオンを挿入・脱離可能な活物質を含むスラリーを塗布することで活物質層が形成されたものである。これらの正極及び負極並びにセパレータは、例えば、互いに重ね合わされた状態で捲回され電極群として成形され、缶あるいはラミネート外装体に入れられ電解液に含浸された状態で封入される。
【0004】
リチウムイオン二次電池では、正極及び負極の間に、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔性フィルムなどからなるセパレータが介在することで、正極及び負極が絶縁されている。近年においては、より高い安全性を確保するべく、コンタミネーション等を原因とする電圧低下や内部短絡の抑制、あるいは耐熱性能の向上等を目的として、電極の活物質層の表面に絶縁層を設けることが提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、電極に形成される活物質合剤層の性能を阻害することなく、より絶縁信頼性を向上させるために、電極箔の上に活物質合剤層が形成され、活物質合剤層の上に絶縁層が形成された電極を有する二次電池の製造方法であって、活物質合剤スラリーと絶縁層用分散液とを電極箔の上に同時に塗布して活物質合剤層と絶縁層とを形成する工程を備える二次電池の製造方法が提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、正極と負極との間に保護層を介在させることで二次電池が高温状態に陥ったときにも正極と負極との間の二次短絡を回避し、安全性を向上させるために、負極の負極活物質層の表面に負極保護層(絶縁層)が設けられており、負極保護層が無機フィラーと樹脂フィラーと結着材とを有し、樹脂フィラーとしてセパレータよりも融点が高いものが用いられる二次電池が提案されている。この二次電池では、セパレータの融点以上の異常発熱時において、負極保護層の樹脂フィラーが軟化し第二の結着材の機能を発揮することで、無機フィラーの動きを抑制する。これにより、セパレータが熱によりシュリンクしても、負極保護層により正極と負極との間の二次短絡を回避することができ、安全性を向上させることができる。
【0007】
さらに、特許文献3には、絶縁性耐熱材料と水系溶媒(水又は水と極性有機溶媒とを含有する溶媒)とを含む絶縁性耐熱層用ペーストを用いた方法で正極の活物質層の表面に絶縁性耐熱層(絶縁層)を形成する際に、絶縁性耐熱層の欠陥の発生を抑制するために、正極合材層の表面に親水性導電材の粉末を付着させることにより親水性導電材層を形成し、親水性導電材層の表面に絶縁性耐熱層用ペーストを塗布して絶縁性耐熱層を形成した後に、正極合材層及び親水性導電材層を乾燥させるリチウムイオン二次電池用正極の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】再表2019/008827号公報
【文献】再表2017/038327号公報
【文献】特開2019-169416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のリチウムイオン二次電池の製造方法において、コンタミネーション等を原因とする電圧低下や内部短絡の抑制、あるいは耐熱性能の向上等を目的として、正極活物質層の表面に正極絶縁層を形成するために、非水系溶媒を含む正極活物質層用スラリー及び水系溶媒を含む正極絶縁層用スラリーを正極箔の表面に重ね合わせて塗布し、塗布された両方のスラリーを同時に乾燥させる場合には、乾燥工程で非水系溶媒及び水系溶媒を分離し回収することが困難であった。このため、溶媒のリサイクルが問題となった。一方、このような問題を回避すべく、両方が非水系溶媒を含む正極活物質層用スラリー及び正極絶縁層用スラリーを正極箔の表面に重ね合わせて塗布し、塗布された両方のスラリーを同時に乾燥させる場合には、正極絶縁層の材料が正極活物質層に沈み込み、正極絶縁層の絶縁性が低下するおそれがあった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、正極絶縁層の材料が正極活物質層に沈み込むことを抑制し、正極絶縁層の絶縁性の低下を抑制できるリチウムイオン二次電池及びその製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のリチウムイオン二次電池は、正極と負極とを備え、上記正極及び上記負極が積層されたリチウムイオン二次電池であって、上記正極は、正極箔と、上記正極箔の表面に設けられた正極活物質層と、上記正極活物質層の表面に設けられた正極絶縁層とを有し、上記正極活物質層は、正極活物質と、第一非水系バインダとを含み、上記正極絶縁層は、無機フィラーと、第二非水系バインダと、分散剤とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明のリチウムイオン二次電池によれば、正極絶縁層の材料が正極活物質層に沈み込むことを抑制し、正極絶縁層の絶縁性の低下を抑制できる。
【0013】
さらに、本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法は、正極箔を準備する工程と、正極活物質と、第一非水系バインダと、第一非水系溶媒とを混合することで正極活物質層用スラリーを調製する工程と、無機フィラーと、第二非水系バインダと、分散剤と、第二非水系溶媒とを混合することで正極絶縁層用スラリーを調製する工程と、上記正極活物質層用スラリーを上記正極箔の表面に塗布する工程と、上記正極絶縁層用スラリーを上記正極箔の表面に塗布された上記正極活物質層用スラリーの表面に塗布する工程と、塗布された上記正極活物質層用スラリー及び上記正極絶縁層用スラリーを同時に乾燥させる工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法によれば、正極絶縁層の材料が正極活物質層に沈み込むことを抑制し、正極絶縁層の絶縁性の低下を抑制できる。
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2021-035639号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、正極絶縁層の材料が正極活物質層に沈み込むことを抑制し、正極絶縁層の絶縁性の低下を抑制できる。
【0016】
以上に説明した内容以外の本発明の課題、構成、及び効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一の実施形態に係るリチウムイオン二次電池である扁平捲回形二次電池の概略を示す外観斜視図である。
【
図2】
図1に示す扁平捲回形二次電池の構成部品概略を示す分解斜視図である。
【
図3】
図2に示す電極捲回群の一部を展開した状態の概略を示す分解斜視図である。
【
図4】(a)は、
図3に示す正極の裁断前の構成を模式的に示す断面図であり、(b)は、
図3に示す正極の裁断前の構成を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面等を用いて、本発明のリチウムイオン二次電池及びその製造方法に係る実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明は、これらの説明に限定されるものではなく、本明細書で開示されている技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更及び修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0019】
本明細書に記載される「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的に記載されている上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書に記載される数値範囲の上限値又は下限値は、実施例中に示されている値に置き換えてもよい。
【0020】
以下で例示している材料群から材料を選択する場合、本明細書で開示されている内容と矛盾しない範囲で、材料を単独で選択してもよく、複数組み合わせて選択してもよい、また、本明細書で開示されている内容と矛盾しない範囲で、以下で例示している材料群以外の材料を選択してもよい。
【0021】
最初に、実施形態に係るリチウムイオン二次電池の概略について、一の実施形態に係るリチウムイオン二次電池を例示して説明する。ここで、
図1は、一の実施形態に係るリチウムイオン二次電池である扁平捲回形二次電池の概略を示す外観斜視図である。
図2は、
図1に示す扁平捲回形二次電池の構成部品概略を示す分解斜視図である。
図3は、
図2に示す電極捲回群の一部を展開した状態の概略を示す分解斜視図である。
【0022】
図1及び
図2に示すように、扁平捲回形二次電池100は、電池缶1及び電池蓋(蓋)6を備えている。電池缶1は、矩形の底面1dと、底面1dから立ち上がる角筒状の側面1b、1cと、側面1b、1cの上端で上方に向かって開放された開口部1aとを有している。角筒状の側面1b、1cは、相対的に面積の大きい一対の対向する幅広側面1bと相対的に面積の小さい一対の対向する幅狭側面1cとを含んでいる。電池缶1内には絶縁保護フィルム2を介して捲回群3が収納されている。電池蓋6は、略矩形平板状であり、電池缶1の上方の開口部1aを塞ぐように溶接されている。これにより、電池缶1が封止されている。
【0023】
電池蓋6には正極外部端子14と負極外部端子12とが設けられており、ガス排出弁10が一体的に設けられている。扁平捲回形二次電池100では、正極外部端子14及び負極外部端子12を介して捲回群3に充電され、外部負荷に電力が供給される。また、電池缶1の内部の圧力が上昇すると、ガス排出弁10が開いて電池缶1の内部からガスが排出され、電池缶1の内部の圧力が低減される。これにより、扁平捲回形二次電池100の安全性が確保される。
【0024】
図2及び
図3示すように、捲回群3は、扁平形状に捲回されているため、断面半円形状を有する互いに対向する一対の湾曲部と、これら一対の湾曲部の間に連続して形成される平面部とを有している。捲回群3は、捲回軸方向が電池缶1の横幅方向に沿うように、一方の湾曲部側から電池缶1の内部に挿入され、他方の湾曲部側が電池缶1の上方の開口部1a側に配置される。
【0025】
捲回群3の正極箔露出部34cは、正極集電板(集電端子)44を介して電池蓋6に設けられた正極外部端子14と電気的に接続されている。また、捲回群3の負極箔露出部32cは、負極集電板(集電端子)24を介して電池蓋6に設けられた負極外部端子12と電気的に接続されている。これにより、正極集電板44及び負極集電板24を介して捲回群3から外部負荷へ電力が供給され、正極集電板44及び負極集電板24を介して捲回群3へ外部発電電力が供給され充電される。
【0026】
正極外部端子14及び負極外部端子12並びに正極集電板44及び負極集電板24をそれぞれ電池蓋6から電気的に絶縁するために、ガスケット5及び絶縁板7が電池蓋6に設けられている。電池蓋6には、電池缶1の内部に電解液を注入するための注液口9が穿設されている。扁平捲回形二次電池100では、電解液を注液口9から電池缶1の内部に注入した後、注液栓11を電池蓋6にレーザ溶接により接合することで注液口9が封止されている。これにより、扁平捲回形二次電池100が密閉されている。
【0027】
正極外部端子14及び負極外部端子12は、バスバー等に溶接接合される溶接接合部を有している。溶接接合部は、電池蓋6の表面から上方に突出する直方体のブロック形状を有しており、下面が電池蓋6の表面に対向し、上面が所定高さ位置で電池蓋6の表面と平行となっている。
【0028】
正極接続部14a及び負極接続部12aは、正極外部端子14の溶接接合部の下面及び負極外部端子12の溶接接合部の下面からそれぞれ突出しており、それらの先端が電池蓋6の正極側貫通孔46及び負極側貫通孔26に挿入可能な円柱形状をそれぞれ有している。正極接続部14a及び負極接続部12aは、電池蓋6を貫通して正極集電板44の正極集電板基部41及び負極集電板24の負極集電板基部21よりも電池缶1の内部側にそれぞれ突出しており、先端が加締められ、正極外部端子14及び負極外部端子12と正極集電板44及び負極集電板24とを電池蓋6に一体に固定している。電池蓋6と正極外部端子14及び負極外部端子12との間にはガスケット5が介在しており、正極集電板44及び負極集電板24と電池蓋6との間には絶縁板7が介在している。
【0029】
正極集電板44及び負極集電板24は、電池蓋6の下面に対向して配置される矩形板状の正極集電板基部41及び負極集電板基部21と、正極集電板基部41及び負極集電板基部21の側端で折曲されて、電池缶1の幅広側面1bに沿って底面側に向かって延出し、捲回群3の正極箔露出部34c及び負極箔露出部32cに対向して重ね合わされた状態で接続される正極側接続端部42及び負極側接続端部22を有している。
【0030】
正極集電板基部41及び負極集電板基部21には、正極接続部14a及び負極接続部12aがそれぞれ挿通される正極側開口穴43及び負極側開口穴23がそれぞれ設けられている。
【0031】
捲回群3の扁平面に沿う方向でかつ捲回群3の捲回軸方向に直交する方向を中心軸方向として上記捲回群3の周囲には絶縁保護フィルム2が巻き付けられる。絶縁保護フィルム2は、特に限定されず一般的なものを用いることができるが、例えば、PP(ポリプロピレン)等の合成樹脂製の一枚のシート又は複数のフィルム部材からなる。絶縁保護フィルム2は、捲回群3の扁平面に沿う方向でかつ捲回軸方向に直交する方向を巻き付けの中心軸方向として巻き付けることができる長さを有している。
【0032】
図3に示すように、捲回群3は、正極34及び負極32の間にセパレータ33、35を介在させ、正極34及び負極32並びにセパレータ33、35を扁平状に捲回することにより構成されている。捲回群3は、最外周の電極が負極32であり、さらに最外周の負極32の外周側にセパレータ35が捲回されている。
【0033】
セパレータ33、35は、正極34及び負極32の短絡を防止する絶縁機能を有し、かつ非水系解液の保持機能を有している。
【0034】
負極32の負極活物質層32bが塗布された部分は、正極34の正極活物質層34bが塗布された部分よりも幅方向(捲回軸方向)に大きくなっている。これにより、捲回群3は、正極活物質層34bが塗布された部分の全体が、負極活物質層32bが塗布された部分に挟まれるように構成されている。正極箔露出部34c及び負極箔露出部32cは、捲回群3の平面部で束ねられて溶接等により接続される。なお、セパレータ33、35は、幅方向で負極活物質層32bが塗布された部分よりも広いが、正極箔露出部34c及び負極箔露出部32cで端部の金属箔面が露出する位置に捲回される。このため、セパレータ33、35は、束ねて溶接する場合の支障にはならない。
【0035】
図3に示すように、負極32は、負極箔32aと、負極箔32aの両面に設けられた負極活物質層32bとを備えている。
【0036】
負極32は、負極活物質と結着剤であるバインダとを適切な溶媒(例えば、水、N-メチル-2-ピロリドン等)に分散し混練することで調製したスラリーを負極箔32aの両面に塗布し、負極箔32aの両面に塗布されたスラリーを乾燥することで溶媒を除去することにより、負極活物質層32bを形成した後に、さらに負極箔32a及び負極活物質層32bをプレス機でプレスすることで適切な厚みにすることにより作製できる。
【0037】
ここで、
図4(a)は、
図3に示す正極の裁断前の構成を模式的に示す断面図であり、
図4(b)は、
図3に示す正極の裁断前の構成を模式的に示す平面図である。
【0038】
図3及び
図4(a)に示すように、正極34は、正極箔34aと、正極箔34aの両面に設けられた正極活物質層34bと、両方の正極活物質層34bの表面をそれぞれ覆うように設けられた正極絶縁層34dとを備えている。正極絶縁層34dは、負極32の負極活物質層32bに対向している。
【0039】
図4(b)では、正極34を平面視した場合において、正極活物質層34bが示されるように、正極絶縁層34dで覆われていない部分が示されている。実際に使用する正極では、正極を平面視した場合の正極活物質層が設けられた部分の全面が絶縁層で覆われるように設けられる。
図4(b)に示すように、正極34は、裁断前の状態であり、幅方向の中央線CLで幅方向の両側の2つに分割されるように裁断されることで2枚の正極34が形成される。
【0040】
正極活物質層34bは、正極活物質と、第一非水系バインダとを含んでいる。正極絶縁層34dは、無機フィラーと、第二非水系バインダと、分散剤とを含んでいる。分散剤は、カルボン酸化合物及びリン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有するものである。
【0041】
正極活物質層34b及び正極絶縁層34dは、正極活物質層用スラリー及び正極絶縁層用スラリーを正極箔34aに両面に同時に塗布することにより形成される。ここで「同時に塗布」とは、正極活物質層用スラリーと正極絶縁層用スラリーとを予め層状に重ね合わせた状態とし、その重ね合わせた状態のまま正極箔34a上に塗布する場合を含み、また、正極箔34a上に先に正極活物質層用スラリーを塗布し、正極活物質層用スラリーの表面が乾燥する前のウエットな状態で正極活物質層用スラリー上に正極絶縁層用スラリーを塗布する場合も含む。
【0042】
以上のように一の実施形態に係るリチウムイオン二次電池である扁平捲回形二次電池100では、正極34が、正極箔34aと、正極箔34aの表面に設けられた正極活物質層34bと、正極活物質層34bの表面に設けられた正極絶縁層34dとを有し、正極活物質層34bが、正極活物質と、第一非水系バインダとを含み、正極絶縁層34dが、無機フィラーと、第二非水系バインダと、分散剤とを含んでいる。このため、扁平捲回形二次電池100の製造時において、両方が非水系溶媒を含む正極活物質層用スラリー及び正極絶縁層用スラリーを正極箔34aの表面に重ね合わせて塗布し、塗布された両方のスラリーを同時に乾燥させることで、正極活物質層34b及び正極絶縁層34dを形成する際には、塗布された正極絶縁層用スラリーにおいて無機フィラー等の材料を分散剤により分散できる。これにより、正極絶縁層34dの無機フィラー等の材料が正極活物質層34bに沈み込むことを抑制できる。よって、正極絶縁層34dの絶縁性の低下を抑制できる。また、塗布された正極活物質層用スラリー及び正極絶縁層用スラリーを同時に乾燥させる場合に、両方のスラリーから非水系溶媒を回収しリサイクルできるため、低コスト化を図ることができる。
【0043】
続いて、実施形態に係るリチウムイオン二次電池及びその製造方法の構成の詳細について説明する。
【0044】
1.正極
上記正極は、正極箔と、上記正極箔の表面に設けられた正極活物質層と、上記正極活物質層の表面に設けられた正極絶縁層とを有する。
【0045】
(1)正極箔
正極箔としては、特に限定されないが、アルミニウム箔、アルミニウム製穿孔箔、発泡アルミニウム板等が挙げられる。
【0046】
(2)正極活物質層
上記正極活物質層は、正極活物質と、第一非水系バインダとを含む。
正極活物質としては、特に限定されず、リチウム二次電池の正極活物質として適用可能な材料の1種若しくは2種以上混合した材料を用いることができるが、例えば、スピネル系(例えば、LiMn2O4等)、層状系(例えば、LiCoO2、LiNiO2等)、オリビン系(例えば、LiFePO4等)の1種若しくは2種以上混合した材料などが好ましい。中でも、Li、Ni、Co、及びMnを構成元素として含む層状系のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えば、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2等)がより好ましい。リチウムイオンの脱離量が2/3までは充放電に伴う格子体積の変化がほとんどないことから、耐久性にも優れているからである。
【0047】
第一非水系バインダとしては、有機溶媒である非水系溶媒に分散又は溶解するバインダであれば特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸(PAA)、及びカルボキシメチルセルロース(CMC)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有するものが好ましい。
【0048】
なお、正極活物質層に含まれる各成分及び各成分の含有量は、赤外分光法(IR)等のスペクトル分析、ガスクロマトグラフィー質量分析法(Py-GC/MS)等のクロマトグラフ分析などを用いて確認又は測定できる。
【0049】
(3)正極絶縁層
上記正極絶縁層は、無機フィラーと、第二非水系バインダと、分散剤とを含む。
上記無機フィラーとしては、特に限定されず一般的なものを用いることができるが、例えば、アルミナ(Al2O3)、ベーマイト(Al2O3水和物)、マグネシア(MgO)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、酸化鉄、シリカ(SiO2)、及びチタン酸バリウム(BaTiO2)等からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有するものなどが挙げられる。上記無機フィラーとしては、アルミナ、ベーマイト、マグネシア、ジルコニア、及びチタニアからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有するものが好ましい。
【0050】
上記第二非水系バインダとしては、有機溶媒である非水系溶媒に分散又は溶解するバインダであれば特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸(PAA)、及びカルボキシメチルセルロース(CMC)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有するものが好ましい。ここで、非水系溶媒は、有機溶媒であれば特に限定されないが、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等が好ましい。
【0051】
上記分散剤としては、特に限定されないが、カルボン酸化合物及びリン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有するものが好ましい。カルボン酸化合物又はリン酸化合物を、非水系溶媒に分散剤として無機フィラー等の材料と一緒に混合すると、例えば、COO-等の陰イオンなどが生じ、これが非水系溶媒中の無機フィラーの表面の極性による電荷と反発し合うことで無機フィラーが分散する結果、無機フィラーの沈み込みを効果的に抑制できるからである。
【0052】
ここで、「カルボン酸化合物」とは、カルボキシ基を1又は2以上有する化合物を意味する。なお、カルボキシ基は塩を形成してもよい。
【0053】
また、「リン酸化合物」とは、*-O-P(=O)(OR’)(OR’’)で表される極性官能基を1又は2以上有する化合物を意味する。式中、*は、リン酸化合物における他の構造部分との結合手を表す。R’及びR’’は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。なお、上記式で表される極性官能基は塩を形成していてもよい。
【0054】
正極絶縁層における無機フィラー及び第二非水系バインダの合計含有量に対する第二非水系バインダの含有量としては、特に限定されないが、例えば、0.1wt%以上10.0wt%以下の範囲内が好ましく、中でも0.2wt%以上1.5wt%以下の範囲内が好ましい。これらの範囲の下限以上であることにより、正極絶縁層を耐久性に優れたものにできるからであり、これらの範囲の上限以下であることにより、正極及び負極間の短絡を効果的に抑制できるからである。
【0055】
正極絶縁層における無機フィラー及び分散剤の合計含有量に対する分散剤の含有量としては、特に限定されないが、例えば、0.5wt%以上10.0wt%以下の範囲内が好ましく、中でも1.3wt%以上5.0wt%以下の範囲内が好ましい。これらの範囲の下限以上であることにより、分散剤により無機フィラーを好適に分散し、正極活物質層への無機フィラーの沈み込みを効果的に抑制できるからであり、これらの範囲の上限以下であることにより、正極及び負極間の短絡を効果的に抑制できるからである。
【0056】
また、正極絶縁層に含まれる各成分及び各成分の含有量は、ガスクロマトグラフィー質量分析法(Py-GC/MS)等のクロマトグラフ分析などを用いて確認又は測定できる。
【0057】
2.負極
上記負極は、特に限定されないが、例えば、負極箔と、上記負極箔の表面に設けられた負極活物質層とを有するものである。
【0058】
(1)負極箔
負極箔としては、特に限定されないが、例えば、銅箔、銅製穿孔箔、発泡銅板等が挙げられる。
【0059】
(2)負極活物質層
負極活物質層は、特に限定されないが、例えば、負極活物質と、バインダとを含むものである。
負極活物質としては、特に限定されず一般的なものを用いることができるが、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)等の炭素材料などが挙げられる。黒鉛については、黒鉛表面に非晶質炭素を被覆することで必要以上に電解液と反応することを抑制できる。
【0060】
負極活物質としては、黒鉛にアセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラックを導電助剤として混合させた材料、黒鉛にその導電助剤を混合させた材料をさらに非晶質炭素で被覆し複合化させた材料、黒鉛に黒鉛化炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)、金属酸化物(例えば、酸化鉄、酸化銅等)を混合させた材料などが挙げられる。
【0061】
バインダとしては、特に限定されず一般的なものを用いることができるが、例えば、特に限定されないが、スチレン-ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が挙げられる。
【0062】
(3)その他
上記負極としては、上記負極活物質層の表面に設けられた負極絶縁層をさらに有するものが好ましい。負極絶縁層としては、特に限定されないが、例えば、無機フィラーと、バインダとを含むものである。なお、負極が負極絶縁層をさらに有する場合には、正極の正極絶縁層は、負極の負極絶縁層に対向する。
【0063】
3.リチウムイオン二次電池
リチウムイオン二次電池は、正極と負極とを備え、上記正極及び上記負極が積層されたリチウムイオン二次電池であって、上記正極は、正極箔と、上記正極箔の表面に設けられた正極活物質層と、上記正極活物質層の表面に設けられた正極絶縁層とを有し、上記正極活物質層は、正極活物質と、第一非水系バインダとを含み、上記正極絶縁層は、無機フィラーと、第二非水系バインダと、分散剤とを含むことを特徴とする。
【0064】
上記リチウムイオン二次電池としては、特に限定されないが、セパレータをさらに備え、上記正極及び上記負極が上記セパレータを介して積層されたものが好ましい。
【0065】
セパレータ33、35としては、特に限定されず一般的なものを用いることができるが、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂製の多孔質シートを有するものなどが挙げられる。樹脂製の多孔質シートは、単層構成でもよく、複数層構成(例えば、PP/PE/PPの三層構成等)でもよい。セパレータ33、35としては、樹脂製の多孔質シート等からなる本体の片側若しくは両側に設けられた無機材料(例えば、アルミナ粒子等)及びバインダから構成される層をさらに有するものが好ましい。これにより、リチウム二次電池が異常な状態で使用された場合(例えば、過充電や圧壊等で二次電池の温度が160℃以上まで上昇した場合)であっても溶融せず絶縁機能を保持でき、安全性を確保できる。
【0066】
リチウムイオン二次電池は、通常、電解質層を備える。電解質層は、例えば、電池缶の内部に注入される電解液である。電解液としては、特に限定されず一般的なものを用いることができるが、例えば、エチレンカーボネート等の炭酸エステル系の有機溶媒に6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等のリチウム塩が溶解された非水系解液などが挙げられる。
【0067】
リチウムイオン二次電池は、正極外部端子及び正極集電板並びに負極外部端子及び負極集電板を備えていてもよい。正極外部端子及び正極集電板の構成材料としては、特に限定されず一般的なものを用いることができるが、例えば、アルミニウム合金等が挙げられる。負極外部端子及び負極集電板の構成材料としては、特に限定されず一般的なものを用いることができるが、例えば、銅合金等が挙げられる。
【0068】
リチウムイオン二次電池は、絶縁板及びガスケットを備えていてもよい。絶縁板7及びガスケット5の構成材料としては、特に限定されず一般的なものを用いることができるが、例えば、ポリブチレンテレフタレートやポリフェニレンサルファイド、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂等の絶縁性を有する樹脂材などが挙げられる。
【0069】
4.リチウムイオン二次電池の製造方法
リチウムイオン二次電池の製造方法は、正極箔を準備する工程と、正極活物質と、第一非水系バインダと、第一非水系溶媒とを混合することで正極活物質層用スラリーを調製する工程と、無機フィラーと、第二非水系バインダと、分散剤と、第二非水系溶媒とを混合することで正極絶縁層用スラリーを調製する工程と、上記正極活物質層用スラリーを上記正極箔の表面に塗布する工程と、上記正極絶縁層用スラリーを上記正極箔の表面に塗布された上記正極活物質層用スラリーの表面に塗布する工程と、塗布された上記正極活物質層用スラリー及び上記正極絶縁層用スラリーを同時に乾燥させる工程と、を備える。このリチウムイオン二次電池の製造方法により、実施形態に係るリチウムイオン二次電池を製造する。
【0070】
正極活物質層用スラリーに含まれる第一非水系溶媒は、有機溶媒であれば特に限定されないが、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等が好ましい。
【0071】
正極活物質層用スラリーに含まれる正極活物質及び第一非水系バインダについては、正極活物質層に含まれる正極活物質及び第一非水系バインダとそれぞれ同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0072】
正極絶縁層用スラリーに含まれる第二非水系溶媒は、有機溶媒であれば特に限定されないが、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等が好ましい。
【0073】
正極絶縁層用スラリーに含まれる無機フィラー、第二非水系バインダ、及び分散剤については、正極絶縁層に含まれる無機フィラー、第二非水系バインダ、及び分散剤とそれぞれ同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0074】
上記正極活物質層用スラリー及び上記正極絶縁層用スラリーとしては、同一の溶媒を用いることが好ましい。効率よくリサイクルできるからである。
【実施例】
【0075】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
[実施例]
本発明に係る正極を作製した。具体的には、まず、厚さ15μmのアルミニウム箔(正極箔)を準備した。
【0077】
次に、Li1.0Ni0.33Co0.33Mn0.33O2粉末(正極活物質)と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(第一非水系バインダ)と、アセチレンブラック(導電助剤)とを90:5:5となる重量比で混合し、それらの混合物をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)(第一非水系溶媒)と混合し粘度を調整することで正極活物質層用スラリーを調製した。
【0078】
次に、ベーマイト(無機フィラー)と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(第二非水系バインダ)と、カルボキシル基を有する構造の分散剤とを98:1:1となる重量比で混合し、それらの混合物をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)(第二非水系溶媒)と混合し粘度を調製することで正極絶縁層用スラリーを調製した。
【0079】
次に、正極活物質層用スラリーをアルミニウム箔の両面に未塗工部(正極箔露出部)が残るように塗布した。次に、正極絶縁層用スラリーを、アルミニウム箔の両面に塗布された液状の正極活物質層用スラリーの表面に塗布した。
【0080】
次に、塗布された液状の正極活物質層用スラリー及び正極絶縁層用スラリーを同時に乾燥させた。これにより、正極活物質層及び正極絶縁層を形成し、アルミニウム箔の両面に正極活物質層及び正極絶縁層がこの順番に積層された積層体を得た。
【0081】
次に、アルミニウム箔、正極活物質層、及び正極絶縁層の積層体をプレスし、さらに裁断することで、正極活物質層及び正極絶縁層が同時塗工で形成された正極を作製した。
【0082】
[比較例]
まず、実施例と同様に、アルミニウム箔(正極箔)を準備し、正極活物質層用スラリー及び正極絶縁層用スラリーを調整した。
【0083】
次に、正極活物質層用スラリーをアルミニウム箔の両面に未塗工部(正極箔露出部)が残るように塗布した。次に、塗布された正極活物質層用スラリーを乾燥させることで正極活物質層を形成した。
【0084】
次に、正極絶縁層用スラリーを、アルミニウム箔の両面に形成された正極活物質層の表面に塗布した。次に、塗布された正極絶縁層用スラリーを乾燥させることで正極絶縁層を形成した。これにより、アルミニウム箔の両面に正極活物質層及び正極絶縁層がこの順番に積層された積層体を得た。
【0085】
次に、実施例と同様に、アルミニウム箔、正極活物質層、及び正極絶縁層の積層体をプレスし、さらに裁断することで、正極活物質層及び正極絶縁層が逐次塗工で形成された正極を作製した。
【0086】
[外観観察]
実施例の正極絶縁層に分散剤を用いた正極の作製時において、正極活物質層用スラリーをアルミニウム箔の両面に塗布した後に、正極活物質層用スラリーを乾燥させる前に、正極絶縁層用スラリーを液状の正極活物質層用スラリーの表面に塗布した際に、正極絶縁層の無機フィラーが正極活物質層に沈み込むかどうかについて、外観観察を行った。
【0087】
その結果、図示しないが、実施例の正極では、正極絶縁層の無機フィラーが正極活物質層に沈み込んでいなかった。
【0088】
本発明は、上記実施形態及び上記実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含され、様々な変形例が含む。例えば、上記実施形態及び上記実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態及び実施例の構成の一部を他の実施形態及び実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態及び実施例の構成に他の実施形態及び実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態及び各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 電池缶
1a 開口部
1b 幅広側面
1c 幅狭側面
1d 底面
2 絶縁保護フィルム
3 捲回群
5 ガスケット
6 電池蓋
7 絶縁板
9 注液口
10 ガス排出弁
11 注液栓
12 負極外部端子
12a 負極接続部
14 正極外部端子
14a 正極接続部
21 負極集電板基部
22 負極側接続端部
23 負極側開口穴
24 負極集電板
26 負極側貫通孔
32 負極
32a 負極箔
32b 負極活物質層
32c 負極箔露出部
33 セパレータ
34 正極
34a 正極箔
34b 正極活物質層
34c 正極箔露出部
34d 正極絶縁層
35 セパレータ
41 正極集電板基部
42 正極側接続端部
43 正極側開口穴
44 正極集電板
46 正極側貫通孔
100 扁平捲回形二次電池(リチウムイオン二次電池)
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。