(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】組成物の製造方法及び飲食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20240508BHJP
C12P 7/22 20060101ALI20240508BHJP
C12N 1/16 20060101ALN20240508BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20240508BHJP
【FI】
A23L33/10
C12P7/22
C12N1/16 A
C12N1/20 A
(21)【出願番号】P 2024502221
(86)(22)【出願日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2023047050
【審査請求日】2024-01-15
(31)【優先権主張番号】P 2023191268
(32)【優先日】2023-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三橋 和也
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-128414(JP,A)
【文献】国際公開第2005/000042(WO,A1)
【文献】特開2015-139424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/10
C12P 7/22
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)工程;(b1)工程及び/又は(b2)工程;並びに(c)工程を含む、組成物の製造方法。
(a)イソフラボン配糖体から、グルコースとイソフラボンアグリコンとを生成する工程;
(b1)エクオール産生能を有する微生物に、前記イソフラボンアグリコンからエクオールを産生させる工程;
(b2)エクオール誘導体産生能を有する微生物に、前記イソフラボンアグリコンからエクオール誘導体を産生させる工程;及び、
(c)前記グルコースの含有量が、前記組成物中0g/L以上2.0g/L未満、又は前記組成物の固形分量あたり30g/kg以下となるように前記グルコースを分解する工程
【請求項2】
前記(c)工程が、糖資化能を有する微生物を用いた発酵により前記グルコースを分解する工程である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記糖資化能を有する微生物が酪酸菌、乳酸菌、及び酵母からなる群から選ばれる1種以上の微生物である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記糖資化能を有する微生物がクロストリジウム(Clostridium)属に属する微生物、
ラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する微生物、ラクトコッカス(Lactococcus)属に属する微生物、ロイコノストック(Leuconostoc)属に属する微生物、及びサッカロマ
イシス(Saccharomyces)属に属する微生物からなる群から選ばれる1種以上の微生物で
ある、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記(c)工程が、グルコースを分解する酵素を用いて前記グルコースを分解する工程である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記グルコースを分解する酵素がグルコースオキシダーゼ、及びグルコース脱水素酵素からなる群から選ばれる1種以上である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記(b1)工程及び/又は(b2)工程と、前記(c)工程とが同時に行われる、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記イソフラボン配糖体がダイジンであり、前記イソフラボンアグリコンがダイゼインである、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記(a)工程がイソフラボン配糖体にβ-グルコシダーゼを作用させて、グルコースとイソフラボンアグリコンとを生成する工程である、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
下記(a)工程;(b1)工程及び/又は(b2)工程;(c)工程;並びに(d)工程を含む、飲食品の製造方法。
(a)イソフラボン配糖体から、グルコースとイソフラボンアグリコンとを生成する工程;
(b1)エクオール産生能を有する微生物に、前記イソフラボンアグリコンからエクオールを産生させる工程;
(b2)エクオール誘導体産生能を有する微生物に、前記イソフラボンアグリコンからエクオール誘導体を産生させる工程;
(c)前記グルコースの含有量が、(a)工程、(b1)工程及び/又は(b2)工程、並びに(c)工程を含む方法により製造される組成物中で0g/L以上2.0g/L未満、又は前記組成物の固形分量あたり30g/kg以下となるように前記グルコースを分解する工程;並びに、
(d)前記(a)工程、(b1)工程及び/又は(b2)工程、並びに(c)工程を含む方法により製造した組成物を用いて飲食品を製造する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組成物の製造方法、飲食品の製造方法及び発酵組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆胚軸や大豆胚軸抽出物に含まれるイソフラボン配糖体はβ-グルコシダーゼによりアグリコンに変換された後、さらにエクオールやエクオール誘導体等に代謝される。エクオールは女性ホルモン様の生理作用が強いため、更年期症状や骨粗鬆症の予防や改善(特許文献1)、皮膚の老化及びシワの予防や治療(特許文献2)、アレルギー症状の緩和(特許文献3)等への利用が提案されている。
エクオール誘導体、特に5-ヒドロキシエクオールは、抗酸化効果(非特許文献1)や寿命延長効果(非特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2001-523258号公報
【文献】特表2002-511860号公報
【文献】特許第4479505号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】Archives Biochem. Biophys. vol.356, pp133-141(1998)
【文献】J. Chin. Pharm. Sci. vol.23,pp378-384(2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らがイソフラボン配糖体からエクオール及び/又はエクオール誘導体を含む組成物を製造したところ、当該組成物は加熱により褐変することがわかった。また、当該組成物を原料として、食品を製造するためにタンパク質等を含む原料と混合し、加熱したところ、加熱により褐変することがわかった。これはメイラード反応と呼ばれる還元糖及びアミノ酸の反応に起因すると考えられた。また、メイラード反応に起因して、アクリルアミド等の発がん性があると言われる副産物等が生じた可能性がある。
【0006】
本開示は、少なくとも、そのままで又は追加のアミノ酸等の存在下で、加熱されても褐変しない、エクオール及び/又はエクオール誘導体を含む組成物の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討した結果、イソフラボン配糖体がアグリコンに変換される際、還元糖であるグルコースが生じ、当該グルコースが製造された組成物中に残存しているため、加熱によりメイラード反応が進行し、組成物が褐変することを見出した。さらに、組成物に含まれるグルコースを分解する工程を実施することで、上記課題が解決できることを見出した。
すなわち、本開示は少なくとも以下を含む。
【0008】
〔1〕 下記(a)工程;(b1)工程及び/又は(b2)工程;並びに(c)工程を含む、組成物の製造方法。
(a)イソフラボン配糖体から、グルコースとイソフラボンアグリコンとを生成する工程;
(b1)エクオール産生能を有する微生物に、前記イソフラボンアグリコンからエクオールを産生させる工程;
(b2)エクオール誘導体産生能を有する微生物に、前記イソフラボンアグリコンからエクオール誘導体を産生させる工程;及び、
(c)前記グルコースの含有量が、前記組成物中で0g/L以上2.0g/L未満、又は前記組成物の固形分量あたり30g/kg以下となるように前記グルコースを分解する工程
〔2〕 前記(c)工程が、糖資化能を有する微生物を用いた発酵により前記グルコースを分解する工程である、〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕 前記糖資化能を有する微生物が酪酸菌、乳酸菌、及び酵母からなる群から選ばれる1種以上の微生物である、〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕 前記糖資化能を有する微生物がクロストリジウム(Clostridium)属に属する微生物、ラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する微生物、ラクトコッカス(Lactococcus)属に属する微生物、ロイコノストック(Leuconostoc)属に属する微生物、及びサッカロマイシス(Saccharomyces)属に属する微生物からなる群から選ばれる1種以上の微生物である、〔3〕に記載の製造方法。
〔5〕 前記(c)工程が、グルコースを分解する酵素を用いて前記グルコースを分解する工程である、〔1〕に記載の製造方法。
〔6〕 前記グルコースを分解する酵素がグルコースオキシダーゼ、及びグルコース脱水素酵素からなる群から選ばれる1種以上である、〔5〕に記載の製造方法。
〔7〕 前記(b1)工程及び/又は(b2)工程と、前記(c)工程とが同時に行われる、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の製造方法。
〔8〕 前記イソフラボン配糖体がダイジンであり、前記イソフラボンアグリコンがダイゼインである、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の製造方法。
〔9〕 前記(a)工程がイソフラボン配糖体にβ-グルコシダーゼを作用させて、グルコースとイソフラボンアグリコンとを生成する工程である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の製造方法。
〔10〕 下記(a)工程;(b1)工程及び/又は(b2)工程;(c)工程;並びに(d)工程を含む、飲食品の製造方法。
(a)イソフラボン配糖体から、グルコースとイソフラボンアグリコンとを生成する工程;
(b1)エクオール産生能を有する微生物に、前記イソフラボンアグリコンからエクオールを産生させる工程;
(b2)エクオール誘導体産生能を有する微生物に、前記イソフラボンアグリコンからエクオール誘導体を産生させる工程;
(c)前記グルコースの含有量が、(a)工程、(b1)工程及び/又は(b2)工程、並びに(c)工程を含む方法により製造される組成物中で0g/L以上2.0g/L未満、又は前記組成物の固形分量あたり30g/kg以下となるように前記グルコースを分解する工程;並びに、
(d)前記(a)工程、(b1)工程及び/又は(b2)工程、並びに(c)工程を含む方法により製造した組成物を用いて飲食品を製造する工程
〔11〕 エクオール及び/又はエクオール誘導体を含み、グルコースを実質的に含まない、発酵組成物。
〔12〕 前記グルコースを実質的に含まないことが、グルコースを0g/L以上2.0g/L未満含むことである、〔11〕に記載の発酵組成物。
〔13〕 エクオール及び/又はエクオール誘導体と、グルコースと、を含み、
前記グルコースの含有量が、前記発酵組成物の固形分量あたり30g/kg以下である、発酵組成物。
〔14〕 飲食品に用いられる、〔11〕~〔13〕のいずれかに記載の発酵組成物。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、少なくとも、グルコースの量が低減されており、そのままで又は追加のアミノ酸等の存在下で、加熱されてもメイラード反応が進行せず褐変しない、エクオール及び/又はエクオール誘導体を含む組成物の製造方法が提供できるという効果を奏しうる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。また、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
また、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味し、「A~B」は、A以上B以下であることを意味する。
【0011】
本明細書において、DSMとの文言から始まる菌株の受託番号は、DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)に保存されている微生物に付与された番号である。
JCMとの文言から始まる菌株の受託番号は、Japan Collection of Microorganisms(国立研究開発法人理化学研究所バイオリソース研究センター微生物材料開発室、郵便番号:305-0074、住所:茨城県つくば市高野台3-1-1)に保存されている微生物に付与された番号であり、同機関から入手することができる。
FERMとの文言から始まる菌株の受託番号は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(現 独立行政法人製品評価技術基盤機構特許生物寄託センター、郵便番号:292-0818、住所:千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に保存されている微生物に付与された番号であり、同機関から入手することができる。
KCCMとの文言から始まる菌株の受託番号は、韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms; KCCM)に保存されている微生物に付与された番号であり、同機関から入手することができる。
【0012】
本明細書において、「微生物」は真正細菌、古細菌、又は真菌を指し、ウイルス、動植物を含まない。
【0013】
本明細書において、グルコースを分解するとは、グルコースとアミノ酸等とがメイラード反応を起こさなくなるよう、グルコースの還元末端を不活化することを意味し、グルコースの酸化、及び、代謝による別化合物への変換を含む。
また、アミノ酸等とは、グルコースとメイラード反応を起こしうる化合物であれば特に限定されず、アミノ基を含む化合物が挙げられる。アミノ基を含む化合物の例として、アミノ酸、ペプチド、及びタンパク質が挙げられる。
【0014】
本開示の一実施形態は、下記(a)工程;(b1)工程及び/又は(b2)工程;並びに(c)工程を含む、組成物の製造方法である。
(a)イソフラボン配糖体から、グルコースとイソフラボンアグリコンとを生成する工程;
(b1)エクオール産生能を有する微生物に、前記イソフラボンアグリコンからエクオールを産生させる工程;
(b2)エクオール誘導体産生能を有する微生物に、前記イソフラボンアグリコンからエクオール誘導体を産生させる工程;及び、
(c)前記グルコースの含有量が、前記組成物中0g/L以上2.0g/L未満、又は前記組成物の固形分量あたり30g/kg以下となるように前記グルコースを分解する工程
【0015】
〔(a)工程〕
本実施形態に係る製造方法は、(a)イソフラボン配糖体から、グルコースとイソフラボンアグリコンとを生成する工程を含む。
【0016】
イソフラボン配糖体は、イソフラボン類の配糖体を指す。イソフラボン類は、ポリフェノールの分類のひとつであり、イソフラボンを基本骨格とするフラボノイドである。
イソフラボン類は、大豆、葛、レッドクローバー、カンゾウなどのマメ科の植物に多く含まれる。本実施形態におけるイソフラボン類としては、例えば、イソフラボン類を含むマメ科植物由来のイソフラボン類が挙げられる。具体的には、大豆由来のイソフラボン類(当該技術分野及び市場では、「大豆イソフラボン」や「大豆イソフラボン類」などと称されることがあり、本開示では同義として扱う。)、葛由来のイソフラボン類(当該技術分野及び市場では、「葛イソフラボン」や「葛イソフラボン類」などと称されることがあり、本開示では同義として扱う。)、レッドクローバー由来のイソフラボン類(当該技術分野及び市場では、「レッドクローバーイソフラボン」や「レッドクローバーイソフラボン類」などと称されることがあり、本開示では同義として扱う。)、カンゾウ由来のイソフラボン類(当該技術分野及び市場では、「カンゾウイソフラボン」や「カンゾウイソフラボン類」などと称されることがあり、本開示では同義として扱う。)が挙げられる。
【0017】
イソフラボン配糖体の例としては、ゲニスチン、グリシチン、ダイジンなどを挙げることができる。本実施形態においては、二以上の混合物であってもよい。例えば、ダイジン、グリシチン、及びゲニスチンの混合物であってもよい。これらは大豆胚軸、大豆胚軸抽出物等に含まれるため、例えば、大豆胚軸抽出物をイソフラボン配糖体の混合物として用いることができる。
【0018】
イソフラボンアグリコンの例としては、ダイゼイン、6-ヒドロキシダイゼイン、ジヒドロキシダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、ビオカニンA、ホルモノネチン、オロボール及びクメストロールなどを挙げることができる。本実施形態においては、二以上の混合物であってもよい。なお、本開示における「イソフラボンアグリコン」との文言は、当該技術分野及び市場では「イソフラボン類のアグリコン」などと称されることがあり、本開示では同義として扱う。
【0019】
本実施形態において、好ましくは、イソフラボン配糖体がダイジンであり、イソフラボンアグリコンがダイゼインであるか、イソフラボン配糖体がゲニスチンであり、イソフラボンアグリコンがゲニステインである。より好ましくは、イソフラボン配糖体がダイジンであり、イソフラボンアグリコンがダイゼインである。
【0020】
イソフラボン配糖体から、グルコースとイソフラボンアグリコンとを生成する方法としては、イソフラボン配糖体にβ-グルコシダーゼを作用させる方法、及びイソフラボン配糖体含有培地においてβ-グルコシダーゼを産生する微生物を培養する方法が挙げられる。
【0021】
β-グルコシダーゼとは、糖のβ-グリコシド結合を加水分解する反応を触媒する酵素である。β-グルコシダーゼは、上記酵素活性を有する限り限定されず、アスペルギルス(Aspergillus)属、ペニシリウム(Penicillium)属、リゾープス(Rhizopus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ピキア(Pichia)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属などに属する微生物由来、高等植物由来、動物由来のものを挙げることができる。また、β-グルコシダーゼを含む酵素製剤ペクチナーゼG(天野エンザイム社製)などの市販品も使用することができる。
【0022】
イソフラボン配糖体にβ-グルコシダーゼを作用させるには、イソフラボン配糖体を含む溶液にβ-グルコシダーゼを添加すればよい。添加量は適宜調整することができるが、イソフラボン配糖体1gに対して通常10U以上3000U以下であり、好ましくは20U以上1000U以下であり、より好ましくは50U以上500U以下である。
【0023】
イソフラボン配糖体にβ-グルコシダーゼを作用させる際の条件は、β-グルコシダーゼがイソフラボン配糖体に作用し、グルコースの遊離を触媒する限り特に制限はないが、温度は、通常15℃以上65℃以下であり、好ましくは20℃以上55℃以下であり、より好ましくは30℃以上45℃以下である。
また、pHは通常2以上9以下であり、好ましくは3以上7以下であり、より好ましくは4以上6以下である。
【0024】
β-グルコシダーゼを産生する微生物としては、特に限定されず、属、種、株に拘らず、一又は複数の微生物を用いることができる。
例えば、アスペルギルス(Aspergillus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトバチルス属(Lactobacillus)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、ペニシリウム(Penicillium)属、ピキア(Pichia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、リゾープス(Rhizopus)属に属する微生物等が挙げられる。
好ましくは、アスペルギルス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトバチルス属(Lactobacillus)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する微生物が挙げられる。
さらに好ましくは、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・アクレアタス(Aspergillus aculeatus)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)に属する微生物が挙げられる。
【0025】
β-グルコシダーゼを産生する微生物の培養条件としては、前記微生物の培養において通常用いられている培養条件やそれを適宜修正した培養条件を用いることができる。
【0026】
培養液(培地)としては、例えば、Difco社製のBHI培地、Oxoid社製のANAEROBE BASAL BROTH(ABB培地)、Oxoid社製のWilkins-Chalgren Anaerobe Broth(CM0643)、日水製薬株式会社製のGAM培地、変法GAM培地等を使用することができる。なお、本明細書において、培地とは、最少培地を含む、微生物が増殖できる溶液をいい、微生物が増殖できない溶液、例えば、水や塩溶液、緩衝液などを含まないものとする。
【0027】
前記培地にはイソフラボン配糖体を添加する。イソフラボン配糖体の培地への添加は、微生物の培養前及び培養中に行うことができる。
イソフラボン配糖体の含有量は、特に限定されないが、通常0.5g/L以上100g/L以下であり、好ましくは1g/L以上50g/L以下であり、より好ましくは2g/L以上20g/L以下である。
【0028】
前記培地には水溶性の有機物を炭素源として加えることができる。水溶性の有機物として、以下の化合物を挙げることができる。例えば、グルコース、アラビノース、ソルビトール、フラクトース、マンノース、スクロース、トレハロース、キシロースなどの糖類;グリセロールなどのアルコール類;吉草酸、酪酸、プロピオン酸、酢酸、ギ酸、フマル酸、コハク酸などの有機酸類、デキストリンなどの多糖類などを挙げることができる。
【0029】
炭素源としての培地に加える有機物の濃度は、効率的に発育させるために適宜調節することができる。一般的には、0.1~10wt/vol%の範囲から添加量を選択することができる。
【0030】
上記の炭素源に加えて、培地に窒素源を加えることができる。窒素源としては通常の発酵に用いうる各種の窒素化合物を用いることができる。例えば、無機窒素源及び有機窒素源が挙げられる。
無機窒素源の例として、アンモニウム塩、硝酸塩を挙げることができる。無機窒素源として好ましくは、硫安、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、硝酸カリウム又は硝酸ソーダである。
また、有機窒素源としては、アミノ酸類(グルタミン酸、アルギニン、オルニチンなど)、オレイン酸などの油脂、酵母エキス、ペプトン類(例えばポリペプトンN、大豆ペプトンなど)、肉エキス(例えばエールリッヒカツオエキス、ラブ-レムコ末、ブイヨンなど)、魚介類エキス、肝臓エキス、消化血清末、魚油などを挙げることができる。より好ましくは、アルギニン、システイン、シトルリン、リジン、酵母エキス、ペプトン類(例えばポリペプトンNなど)である。
【0031】
さらに、炭素源や窒素源に加えて、例えば、ビタミンなどの補因子や各種の塩類等の無機化合物を培地に加えることによって、増殖や活性を増強できる場合もある。たとえば無機化合物、ビタミン類など、動植物由来の微生物増殖補助因子として以下のものを挙げることができる。
【0032】
無機化合物 ビタミン類
リン酸二水素カリウム ビオチン
硫酸マグネシウム 葉酸
硫酸マンガン ピリドキシン
塩化ナトリウム チアミン
塩化コバルト リボフラビン
塩化カルシウム ニコチン酸
硫酸亜鉛 パントテン酸
硫酸銅 ビタミンB12
明ばん チオオクト酸
モリブデン酸ソーダ p-アミノ安息香酸
塩化カリウム ビタミンK
ホウ酸等
塩化ニッケル
タングステン酸ナトリウム
セレン酸ナトリウム
硫酸第一鉄アンモニウム
酢酸ナトリウム三水和物
硫酸マグネシウム七水和物
硫酸マンガン四水和物
【0033】
これらの無機化合物やビタミン類など、動植物由来の増殖補助因子を添加して培地を製造する方法は公知である。培地は、液体、半固体、あるいは固体とすることができる。好ましい培地の形態は、液体培地である。
【0034】
また、本開示の培地には、デキストリン類を含めることができる。デキストリン類を含む培地で嫌気性微生物を培養することで、培養後の培養液にデキストリン類が必要であっても、デキストリン類を追加することなく、機能性物質及びデキストリン類を含む溶液を取得することができる。デキストリン類の培地への添加は、微生物の培養前及び培養中に行うことができる。
【0035】
また、嫌気的に培養する場合には、培地中に、システイン、シスチン、硫化ナトリウム、亜硫酸塩、アスコルビン酸、グルタチオン、チオグリコール酸、ルチンなどの還元剤やカタラーゼ、スーパーオキシドムターゼなどの活性酸素種を分解する酵素を添加することにより生育が良好になる可能性がある。
【0036】
嫌気的に培養する場合には、培養中の気相、水相としては、空気もしくは酸素を含まないことが好ましく、例えば、窒素及び/又は水素を任意の比率で含むことや、窒素及び/又は二酸化炭素を任意の比率で含むことが挙げられる。これらはガス状で供給されてよい。
気相における水素の割合は特に限定されないが、通常0.5%以上100%以下であり、好ましくは1.0%以上20%以下であり、より好ましくは2.0%以上10%以下である。
【0037】
培地のpHは、好ましくは5.0以上、より好ましくは6.0以上、さらに好ましくは6.5以上であり、一方で、好ましくは8.0以下、より好ましくは7.5以下である。
培養温度は、20℃~45℃、より好ましくは25℃~40℃、さらに好ましくは30℃~37℃が好ましい。
培養器の加圧条件は、生育できる条件であれば特に限定されるものではないが、0.001~1MPaの範囲、好ましくは0.01~0.5MPaを挙げることができる。
培養時間としては、通常8~340時間、好ましくは12~170時間、より好ましくは16~120時間を挙げることができる。
【0038】
〔(b1)工程〕
本実施形態に係る製造方法は、(b1)エクオール産生能を有する微生物に、前記イソフラボンアグリコンからエクオールを産生させる工程、及び/又は、後述する(b2)工程を含む。
【0039】
エクオール産生能を有する微生物としては、例えば、アドレクラウチア(Adlercreutzia)属に属する微生物、アトポビウム(Atopobium)属に属する微生物、バクテロイデス(Bacteroides)属に属する微生物、コリンゼラ(Collinsella)属に属する微生物、コーリオバクテリウム(Coriobacterium)属に属する微生物、クリプトバクテリウム(Cryptobacterium)属に属する微生物、デニトロバクテリウム(Denitrobacterium)属に属する微生物、エガセラ(Eggerthella)属に属する微生物、エンテロハブダス(Enterorhabdus)属に属する微生物、ユーバクテリウム(Eubacterium)属に属する微生物、ゴルドニバクター(Gordonibacter)属に属する微生物、ラクトコッカス(Lactococcus)属に属する微生物、オルセネラ(Olsenella)属に属する微生物、パラエガセラ(Paraeggerthella)属、ルミノコッカス(Ruminococcus)属に属する微生物、スラッキア(Slackia)属に属する微生物、ストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する微生物が挙げられる。
【0040】
好ましくは、アドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・エクオリファシエンス(Adlercreutzia equolifaciens subsp. equolifaciens)に属する微生物、アドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・セラツス(Adlercreutzia equolifaciens subsp. celatus)に属する微生物、バクテロイデス・オバタス(Bacteroides ovatus)に属する微生物、エガセラ・エスピー(Eggerthella sp.)に属する微生物、ユーバクテリウム・エスピー(Eubacterium sp.)に属する微生物、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garvieae)に属する微生物、パラエガセラ・エスピー(Paraeggerthella sp.)に属する微生物、ルミノコッカス・プロダクタス(Ruminococcus productus)に属する微生物、スラッキア・イソフラボニコンベテンス(Slackia isoflavoniconvertens)に属する微生物、スラッキア・エクオリファシエンス(Slackia equolifaciens)に属する微生物、スラッキア・エスピー(Slackia sp.)に属する微生物、ストレプトコッカス・インターメディウス(Streptococcus intermedius)に属する微生物である。
【0041】
さらに好ましくは、アドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・エクオリファシエンス(Adlercreutzia equolifaciens subsp. equolifaciens)DSM 19450株、アドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・セラツス(Adlercreutzia equolifaciens subsp. celatus)DSM 18785株、エガセラ・エスピー(Eggerthella sp.)KCCM 10490株、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garvieae)DSM 6783株、スラッキア・イソフラボニコンベテンス(Slackia isoflavoniconvertens)DSM 22006株、スラッキア・エクオリファシエンス(Slackia equolifaciens)DSM 24851株、スラッキア・エスピー(Slackia sp.)FERM AP-20729株が挙げられる。
以上の微生物は、属、種、株にかかわらず、単独で用いても2以上を用いてもよい。
【0042】
また、本実施形態において、アドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・エクオリファシエンス(Adlercreutzia equolifaciens subsp. equolifaciens)DSM 19450株は、上記寄託菌株と同一の菌株に制限されず、上記寄託菌株と実質的に同等の菌株であってもよい。実質的に同等の菌株とは、上記寄託菌株と同属又は同種に属する菌株であって、エクオール産生能を有する菌株をいう。また、実質的に同等の菌株とは、その16S rRNA遺伝子の塩基配列が、上記寄託菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列と97%以上、好ましくは97.5%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは98.7%以上、よりさらに好ましくは99%以上の相同性を有する微生物である。さらに、エクオール産生能を有する微生物は、本開示の効果が損なわれない限り、上記寄託菌株又はそれと実質的に同等の菌株から、変異処理、遺伝子組換え、自然変異株の選択等によって育種された菌株であってもよい。
このことは、本明細書の他の寄託菌株についても同様に適用される。
【0043】
エクオール産生能を有する微生物がβ-グルコシダーゼを産生する場合、前記β-グルコシダーゼを産生する微生物は、エクオール産生能を有する微生物と同一であってよい。この場合、(a)工程と(b1)工程は同一の系において連続的に行われる。
【0044】
培養条件としては、前記微生物の培養において通常用いられている培養条件やそれを適宜修正した培養条件を用いることができ、β-グルコシダーゼを産生する微生物の培養条件と同様の条件が挙げられる。
【0045】
〔(b2)工程〕
本実施形態に係る製造方法は、前記(b1)工程、及び/又は、(b2)エクオール誘導体産生能を有する微生物に、前記イソフラボンアグリコンからエクオール誘導体を産生させる工程を含む。エクオール誘導体としては、5-ヒドロキシエクオールが挙げられる。
【0046】
エクオール誘導体が5-ヒドロキシエクオールである場合、5-ヒドロキシエクオール産生能を有する微生物としては、アドレクラウチア(Adlercreutzia)属、エガセラ(Eggerthella)属、スラッキア(Slackia)属に属する微生物が挙げられる。
アドレクラウチア(Adlercreutzia)属に属する微生物としては、アドレクラウチア・エクオリファシエンス(Adlercreutzia equolifaciens)に属する微生物が好ましく、中でも、アドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・エクオリファシエンス(Adlercreutzia equolifaciens subsp. equolifaciens)DSM 19450株又はアドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・セラツス(Adlercreutzia equolifaciens subsp. celatus)DSM 18785株が好ましい。
【0047】
エガセラ(Eggerthella)属に属する微生物としては、エガセラ・エスピー(Eggerthella sp.)に属する微生物が挙げられる。中でも、エガセラ・エスピー(Eggerthella sp.)KCCM 10490株が好ましい。
スラッキア(Slackia)属に属する微生物としては、スラッキア・イソフラボニコンベテンス(Slackia isoflavoniconvertens)に属する微生物、スラッキア・エクオリファシエンス(Slackia equolifaciens)に属する微生物、スラッキア・エスピー(Slackia sp.)に属する微生物が挙げられる。
【0048】
エクオール誘導体産生能を有する微生物がβ-グルコシダーゼを産生する場合、前記β-グルコシダーゼを産生する微生物は、エクオール誘導体産生能を有する微生物と同一であってよい。この場合、(a)工程と(b2)工程は同一の系において連続的に行われる。
【0049】
培養条件としては、前記微生物の培養において通常用いられている培養条件やそれを適宜修正した培養条件を用いることができ、β-グルコシダーゼを産生する微生物の培養条件と同様の条件が挙げられる。
【0050】
〔(c)工程〕
本実施形態に係る製造方法は、(c)前記グルコースの含有量が、前記組成物中0g/L以上2.0g/L未満、又は前記組成物の固形分量あたり30g/kg以下となるように前記グルコースを分解する工程を含む。グルコースを分解する、とは、グルコースをより炭素数が少ない化合物に変化させることを指す。
(c)工程は、糖資化能を有する微生物を用いた発酵により前記グルコースを分解する工程であってよく、グルコースを分解する酵素を用いて前記グルコースを分解する工程であってもよい。
【0051】
(c)工程が糖資化能を有する微生物を用いた発酵を利用する場合、糖資化能を有する微生物は、酪酸菌、乳酸菌、及び酵母からなる群から選ばれる1種以上の微生物であることが好ましい。より好ましくは、クロストリジウム(Clostridium)属に属する微生物、ラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する微生物、ラクトコッカス(Lactococcus)属に属する微生物、ロイコノストック(Leuconostoc)属に属する微生物、及びサッカロマイシス(Saccharomyces)属に属する微生物からなる群から選ばれる1種以上の微生物である。
【0052】
クロストリジウム(Clostridium)属に属する微生物としては、クロストリジウム・アスパラギフォルメ(Clostridium asparagiforme)DSM 15981株、クロストリジウム・ボルテアエ(Clostridium bolteae)JCM 12243株等が挙げられる。
ラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する微生物としては、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)DSM 20054株等が挙げられる。
ラクトコッカス(Lactococcus)属に属する微生物としては、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)DSM 20481株等が挙げられる。
ロイコノストック(Leuconostoc)属に属する微生物としては、ロイコノストック・メセンテロイデス・サブスピーシズ・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides subsp. mesenteroides)DSM 20343株等が挙げられる。
【0053】
糖資化能を有する微生物がβ-グルコシダーゼを産生する場合、前記β-グルコシダーゼを産生する微生物は、糖資化能を有する微生物と同一であってよい。この場合、(a)工程と(c)工程は同一の系において連続的に行われてよい。
【0054】
糖資化能を有する微生物はエクオール産生能を有する微生物と同一種であってよい。すなわち、糖資化能を有する微生物は、エクオール産生能及び糖資化能を有する微生物であってよい。この場合、(b1)工程と(c)工程は同一の系において連続的に行われる。
【0055】
糖資化能を有する微生物はエクオール誘導体産生能を有する微生物と同一種であってよい。すなわち、糖資化能を有する微生物は、エクオール誘導体産生能及び糖資化能を有する微生物であってよい。この場合、(b2)工程と(c)工程は同一の系において連続的に行われる。
【0056】
培養条件としては、前記微生物の培養において通常用いられている培養条件やそれを適宜修正した培養条件を用いることができ、β-グルコシダーゼを産生する微生物の培養条件と同様の条件が挙げられる。
【0057】
(c)工程がグルコースを分解する酵素を利用する場合、グルコースを分解する酵素としては、グルコースオキシダーゼ及びグルコース脱水素酵素が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。グルコースオキシダーゼ及びグルコース脱水素酵素は、β-D-グルコースをD-グルコノ-1,5-ラクトンへ酸化する反応を触媒する酵素である。
【0058】
グルコースオキシダーゼ及びグルコース脱水素酵素は、上記酵素活性を有する限り限定されず、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来やグルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)由来のものを挙げることができる。
【0059】
グルコースを分解する酵素を用いてグルコースを分解するには、グルコースを含む溶液(培地)に上記酵素を添加すればよい。添加量は適宜調整することができるが、グルコース1gに対して通常1U以上10000U以下であり、好ましくは10U以上5000U以下であり、より好ましくは100U以上2000U以下である。
【0060】
グルコースを分解する際の温度は特に限定されないが、通常15℃以上60℃以下であり、好ましくは25℃以上50℃以下であり、より好ましくは30℃以上40℃以下であり、特に好ましくは35℃である。
グルコースを分解する際のpHは特に限定されないが、通常4以上9以下であり、好ましくは4以上7以下であり、より好ましくは5以上6以下である。
【0061】
(b1)工程及び(b2)工程が行われる場合、これらの工程の順序は限定されず、(b1)工程の後に(b2)工程が行われてもよく、(b2)工程の後に(b1)工程が行われてもよく、(b1)工程と、(b2)工程とが同時に行われてもよい。
【0062】
(b1)工程及び/又は(b2)工程と(c)工程の順序は限定されず、(b1)工程及び/又は(b2)工程の後に(c)工程が行われてもよく、(c)工程の後に(b1)工程及び/又は(b2)工程が行われてもよく、(b1)工程及び/又は(b2)工程と、(c)工程とが同時に行われてもよい。
(b1)工程及び/又は(b2)工程と、(c)工程とが同時に行われる態様として具体的には、グルコースと、イソフラボンアグリコンと、エクオール産生能を有する微生物と、を含む培地中にグルコースを分解する酵素を添加する態様、エクオール産生能を有する微生物と糖資化能を有する微生物をグルコース及びイソフラボンアグリコンを含む培地で共培養する態様、エクオール産生能及び糖資化能を有する微生物をグルコース及びイソフラボンアグリコンを含む培地で培養する態様等が挙げられる。
【0063】
(c)工程では、前記グルコースの含有量が、前記組成物中0g/L以上2.0g/L未満、又は前記組成物の固形分量あたり30g/kg以下となるように前記グルコースを分解する。
グルコースの含有量を上記範囲とするには、培養条件やグルコースを分解する酵素の処理条件を適宜調整すればよい。例えば、培養時間や処理時間を長くするなどが挙げられる。
【0064】
組成物におけるグルコースの含有量は、0g/L以上2.0g/L未満が好ましく、0g/L以上1.0g/L以下がより好ましく、0g/L以上0.5g/L以下がさらに好ましく、0g/L以上0.2g/L以下が特に好ましい。また、組成物の固形分量あたり30g/kg以下が好ましく、10g/kg以下がより好ましく、4g/kg以下がさらに好ましい。固形分量は、組成物を乾燥させた後、残存重量を測定することで求められる。乾燥方法としては、減圧加熱乾燥法、常圧加熱乾燥法、凍結乾燥法などがあげられる。
グルコースの含有量は、電極法により測定することができる。
組成物が固形状など水を含まない場合は、組成物に水を加え、グルコースを水に溶解させた上で測定し、固形分量あたりのグルコース含有量を測定することができる。
【0065】
〔その他の工程〕
本実施形態の製造方法は、例えば、得られたエクオール及び/又はエクオール誘導体を定量する工程を含んでもよい。その方法は常法に従うことができる。たとえば、培養液の一部を採取して適宜希釈し、よく撹拌した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜などの膜を使用して濾過し、不溶物を除去したものを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で定量することなどが挙げられる。
【0066】
また、本実施形態の製造方法は、得られたエクオール及び/又はエクオール誘導体を回収する工程を含んでもよい。当該回収工程は、精製工程や濃縮工程等を含む。精製工程における精製処理としては、熱などによる微生物の殺菌;精密濾過(MF)、限外濾過(UF)などによる除菌;固形物、高分子物質の除去;有機溶媒やイオン性液体などによる抽出;疎水性吸着剤、イオン交換樹脂、活性炭カラム等を用いた吸着、脱色といった処理を行うことができる。また、濃縮工程における濃縮処理としては、エバポレーター、逆浸透膜等による濃縮が挙げられる。
【0067】
さらに、得られたエクオール及び/又はエクオール誘導体を含む溶液は、凍結乾燥、噴霧乾燥などにより粉末化することができる。粉末化において、ラクトース、デキストリン、コーンスターチ等の賦形剤を添加することもできる。
【0068】
〔飲食品の製造方法〕
本実施形態に係る製造方法により製造された組成物は、そのままで又は追加のアミノ酸等の存在下で、加熱されてもメイラード反応が進行せず褐変しないため、飲食品に好適に含ませることができる。なお、本明細書において、飲食品はサプリメントを含む。
すなわち、本開示の別の実施形態は、下記(a)工程;(b1)工程及び/又は(b2)工程;(c)工程;並びに(d)工程を含む、飲食品の製造方法である。
(a)イソフラボン配糖体から、グルコースとイソフラボンアグリコンとを生成する工程;
(b1)エクオール産生能を有する微生物に、前記イソフラボンアグリコンからエクオールを産生させる工程;
(b2)エクオール誘導体産生能を有する微生物に、前記イソフラボンアグリコンからエクオール誘導体を産生させる工程;
(c)前記グルコースの含有量が、(a)工程、(b1)工程及び/又は(b2)工程、並びに(c)工程を含む方法により製造される組成物中で0g/L以上2.0g/L未満、又は前記組成物の固形分量あたり30g/kg以下となるように前記グルコースを分解する工程;並びに、
(d)前記(a)工程、(b1)工程及び/又は(b2)工程、並びに(c)工程を含む方法により製造した組成物を用いて飲食品を製造する工程
【0069】
本実施形態の製造方法により製造される飲食品は、エクオール及び/又はエクオール誘導体を含む。上記飲食品は、一般の飲食品の他、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品、病者用食品、食品添加物等(これらには飲料も含まれる。)として使用できる。飲食品の形態としては、例えば、適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペーストなどに成形して食用に供してもよい。また、種々の食品、例えば、ハム、ソーセージなどの食肉加工食品、かまぼこ、ちくわなどの水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳、発酵乳製品に添加して使用したり、水、果汁、牛乳、清涼飲料などの飲料に添加して使用してもよい。
【0070】
上記飲食品は、水、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー類等を含んでよい。タンパク質としては、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、カゼイン、大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、肉タンパク質等の動植物性タンパク質、及びこれらの加水分解物、バターなどが挙げられる。糖質としては、糖類、加工澱粉(デキストリンのほか、可溶性澱粉、ブリティッシュスターチ、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル等)、食物繊維などが挙げられる。脂質としては、例えば、ラード、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の植物性油脂などが挙げられる。ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロテン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸などが挙げられる。ミネラル類としては、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレン、乳清ミネラルなどが挙げられる。有機酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸などが挙げられる。これらの成分は、2種以上を組み合わせて使用してもよく、合成品及び/又はこれらを多く含む飲食品を用いてもよい。
【0071】
(a)工程;(b1)工程及び/又は(b2)工程;並びに(c)工程については、本開示の一実施形態に係る組成物の製造方法における説明を援用する。また、本実施形態の飲食品の製造方法は、上述のその他の工程を含んでよい。
【0072】
(d)前記(a)工程、(b1)工程及び/又は(b2)工程、並びに(c)工程を含む方法により製造した組成物を用いて飲食品を製造する工程は、常法に従って実施することができる。また、エクオール及び/又はエクオール誘導体の配合量、配合方法、配合時期は適宜選択することができる。さらに、上記飲食品は、必要に応じて、瓶、袋、缶、箱、パック等の容器に封入することができる。
【0073】
〔発酵組成物〕
本開示の一実施形態に係る組成物の製造方法により、グルコースの量が低減されており、そのままで又は追加のアミノ酸等の存在下で、加熱されてもメイラード反応が進行しない、エクオール及び/又はエクオール誘導体を含む組成物を得ることができる。
すなわち、本開示の別の実施形態は、エクオール及び/又はエクオール誘導体を含み、グルコースを実質的に含まない、発酵組成物である。あるいは、本開示の別の実施形態は、エクオール及び/又はエクオール誘導体を含み、前記グルコースの含有量が、前記発酵組成物の固形分量あたり30g/kg以下である、発酵組成物である。エクオール誘導体としては、5-ヒドロキシエクオールが挙げられる。
また、本実施形態に係る発酵組成物は、そのままで又は追加のアミノ酸等の存在下で、加熱されてもメイラード反応が進行せず褐変しないため、飲食品に好適に含ませることができる。すなわち、上記発酵組成物は、飲食品に用いることができる。
【0074】
「グルコースを実質的に含まない」とは、メイラード反応による組成物の褐変が生じない程度にグルコースの含有量が十分低ければよく、具体的には、グルコースを0g/L以上2.0g/L未満含む場合を含む。
【0075】
発酵組成物におけるグルコースの含有量は、0g/L以上2.0g/L未満が好ましく、0g/L以上1.0g/L以下がより好ましく、0g/L以上0.5g/L以下がさらに好ましく、0g/L以上0.2g/L以下が特に好ましい。発酵組成物の固形分量あたり30g/kg以下が好ましく、10g/kg以下がより好ましく、4g/kg以下がさらに好ましい。固形分量は、発酵組成物を乾燥させた後、残存重量を測定することで求められる。乾燥方法としては、減圧加熱乾燥法、常圧加熱乾燥法、凍結乾燥法などがあげられる。
グルコースの含有量は、電極法により測定することができる。
発酵組成物が固形状など水を含まない場合は、発酵組成物に水を加え、グルコースを水に溶解させた上で測定し、固形分量あたりのグルコース含有量を測定することができる。
【0076】
エクオール及び/又はエクオール誘導体の含有量は、発酵組成物の固形分量あたり1g/kg以上が好ましく、5g/kg以上がより好ましく、10g/kg以上がさらに好ましい。
エクオール及び/又はエクオール誘導体の含有量は、上述のHPLCにより測定することができる。
【0077】
発酵組成物は、上述の培地に含まれ得るその他の成分を含んでよい。
【0078】
発酵組成物を含む飲食品は、一般の飲食品の他、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品、病者用食品、食品添加物等(これらには飲料も含まれる。)として使用できる。飲食品の形態としては、例えば、適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペーストなどに成形して食用に供してもよく、また種々の食品、例えば、ハム、ソーセージなどの食肉加工食品、かまぼこ、ちくわなどの水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳、発酵乳製品に添加して使用したり、水、果汁、牛乳、清涼飲料などの飲料に添加して使用してもよい。
【0079】
上記飲食品は、水、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー類等を含んでよい。タンパク質としては、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、カゼイン、大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、肉タンパク質等の動植物性タンパク質、及びこれらの加水分解物、バターなどが挙げられる。糖質としては、糖類、加工澱粉(デキストリンのほか、可溶性澱粉、ブリティッシュスターチ、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル等)、食物繊維などが挙げられる。脂質としては、例えば、ラード、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の植物性油脂などが挙げられる。ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロテン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸などが挙げられる。ミネラル類としては、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレン、乳清ミネラルなどが挙げられる。有機酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸などが挙げられる。これらの成分は、2種以上を組み合わせて使用してもよく、合成品及び/又はこれらを多く含む飲食品を用いてもよい。
【0080】
上記飲食品は、常法に従って製造することができる。また、エクオール及び/又はエクオール誘導体の配合量、配合方法、配合時期は適宜選択することができる。さらに、上記飲食品は、必要に応じて、瓶、袋、缶、箱、パック等の容器に封入することができる。
【実施例】
【0081】
以下、具体的な実施例により本開示をさらに詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されない。
【0082】
(グルコース濃度の測定方法)
測定対象の液1mLを分取し、遠心分離により菌体を沈降させた。上清を0.45μmフィルターでろ過した後に、ろ液を下記条件で分析した。測定レンジ(10mg/dL~600mg/dL)を超える場合は、ろ液をミリQ水で希釈し、分析した。
検査装置:株式会社三和化学研究所製グルテストNeoアルファ
チップ:株式会社三和化学研究所製グルテストNeoセンサー
固形分量あたりの含有量(g/kg)は、電子式水分計(島津製作所製MOC-120H)を用いて測定対象の液の固形分濃度(kg/L)を測定し、上記グルコース濃度(g/L)を固形分濃度で除して算出した。
【0083】
(エクオール濃度及びエクオール誘導体の測定方法)
測定対象の液20μLを分取し、エタノール:ミリQ水=70:30(v/v)からなる希釈液で50倍希釈した。希釈液を0.45μmフィルターでろ過した後に、ろ液を下記HPLC条件で分析した。
エクオール標準品としては、富士フィルム和光純薬株式会社製(S)-エクオールを、5-ヒドロキシエクオール標準品としては、トロントリサーチケミカルズ社製5-ヒドロキシエクオールを使用した。
{HPLC条件}
カラム:Phenomenex SYNERGI, 4μm, POLAR-R, 150mm×4.6mm
溶出液:蒸留水/メタノール=55/45(v/v)
温度:40℃
検出波長:280nm
流速:1.0mL/min
注入:10μL
時間:30min
【0084】
〔試験例1〕
(前培養培地の調製)
Thermo scientific社製Anaerobe Basal Broth (ABB)培地35.4gを1Lの水に溶解して前培養培地を調製した。前培養培地10mLを試験管に分注し、ブチルゴム栓をした。窒素ガスでガス置換した後にオートクレーブで滅菌した。
【0085】
(酵素処理)
大豆胚軸抽出物(ダイジン、グリシチン、ゲニスチン等イソフラボン配糖体を80%含む)16g/Lに、ペクチナーゼGアマノ(天野エンザイム社製)0.16g/Lを加え、撹拌しながら50℃で一晩保持することで、イソフラボン配糖体から、糖を遊離させた。
【0086】
(本培養培地の調製)
酵素処理液に、終濃度として、ABB培地35.4g/L、アルギニン1g/L、β-シクロデキストリン16g/Lとなるように添加し、2L容量のミニジャーに1Lずつ分注した。窒素ガスで置換した後にオートクレーブ滅菌した。
【0087】
(前培養)
前培養培地に、表1に示す組み合わせで微生物を植菌した後、嫌気性ガスで置換し、37℃、200spmで2日間培養した。
エクオール産生能を有する微生物として、アドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・セラツス(Adlercreutzia equolifaciens subsp. celatus)DSM 18785株(表中ACと表記)、アドレクラウチア・エクオリファシエンス(Adlercreutzia equolifaciens)DSM 19450株(表中AEと表記)のいずれかを用いた。これらはエクオール誘導体(特に、5-ヒドロキシエクオール)産生能も有する。
また、糖資化能を有する微生物には、クロストリジウム・アスパラギフォルメ(Clostridium asparagiforme)DSM 15981株(表中CAと表記)、クロストリジウム・ボルテアエ(Clostridium bolteae)JCM 12243株(表中CBと表記)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)DSM 20054株(表中LBと表記)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)DSM 20481株(表中LLと表記)、ロイコノストック・メセンテロイデス・サブスピーシズ・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides subsp. mesenteroides)DSM 20343株(表中LMと表記)を使用した。
【0088】
(本培養)
本培養培地に上記前培養培地から植菌した後、嫌気性ガスを0.22μmのフィルターを介して通気しながら、37℃、500rpmで2日間培養した。
【0089】
(結果)
培養後、エクオール濃度、5-ヒドロキシエクオール濃度及びグルコース濃度を測定した。結果を表1に示す。なお、「g/kg」で表されるグルコース濃度は固形分量あたりのグルコース含有量を示す。
【0090】
【0091】
比較例1、2、実施例1~6から、エクオール産生能を有する微生物の培養により、エクオール及び5-ヒドロキシエクオールが産生したことがわかる。さらに、実施例1~6から、糖資化能を有する微生物を共培養することによって、糖が資化され、培養液にグルコースが残存していないことがわかる。
【0092】
〔試験例2〕
(前培養培地の調製)
試験例1と同様に前培養培地を調製した。
【0093】
(酵素処理)
大豆胚軸抽出物(ダイジン、グリシチン、ゲニスチン等イソフラボン配糖体を80%含む)16g/Lに、ペクチナーゼGアマノ0.16g/Lを加え、撹拌しながら50℃で一晩保持することで、イソフラボン配糖体から、糖を遊離させた。
【0094】
(本培養培地の調製)
酵素処理液に、終濃度として、ABB培地35.4g/L、アルギニン1g/L、β-シクロデキストリン16g/Lとなるように添加し、バイアルに50mLずつ分注し、ブチルゴム栓で封をした。窒素ガスで置換した後にオートクレーブ滅菌した。
【0095】
(前培養)
前培養培地に、表2に示すエクオール産生能を有する微生物を植菌した後、嫌気性ガスで置換し、37℃、200spmで2日間培養した。
【0096】
(本培養)
本培養培地に上記前培養から植菌した後、嫌気性ガスで置換し、37℃、200spmで3日間培養した。
上記の通り培養したものを比較例3及び4とし、エクオール濃度、5-ヒドロキシエクオール濃度及びグルコース濃度を測定した。
【0097】
(酵母処理)
比較例3及び4に、培養液100mLあたり1gのパン酵母(株式会社日清製粉ウェルナ製スーパーカメリアドライイースト)を加え、30℃で一晩保存したものをそれぞれ実施例7、8とした。
【0098】
(結果)
比較例3、4、実施例7、8のエクオール濃度、5-ヒドロキシエクオール濃度及びグルコース濃度の測定結果を表2に示す。
【0099】
【0100】
本培養後である比較例3、4に比べて、酵母処理後である実施例7、8はグルコース濃度が大きく低下していた。酵母によって、グルコースが資化されたと考えられる。また、酵母処理したものは、酵母特有のにおいが感じられ、風味が良かった。
【0101】
〔試験例3〕
比較例3、実施例7の液を遠心分離し、菌体及び不溶成分を除去し、上清を回収した。上清の420nmでの吸光度を測定した。また、80℃、2時間加熱した後、同様に吸光度を測定した。結果を表3に示す。
【0102】
【0103】
比較例3は加熱により吸光度が増加した。残存するグルコースによりメイラード反応が進行し、褐変したためと考えられる。一方、実施例7は酵母の作用によりグルコース濃度が0.2g/L以下まで減少したため、加熱処理後も吸光度の増加は確認されなかった。
【0104】
〔試験例4〕
比較例3、実施例7の液に、グリシンを2g/Lとなるように加えた後、遠心分離し、菌体及び不溶成分を除去し、上清を回収した。上清の420nmでの吸光度を測定した。また、同様に比較例3、実施例7の液にグリシンを2g/Lとなるように加えた後、80℃、2時間加熱し、同様に吸光度を測定した。結果を表4に示す。
【0105】
【0106】
比較例3は加熱により吸光度が増加した。残存するグルコースと添加したグリシンによりメイラード反応が進行し、褐変したためと考えられる。一方、実施例7は酵母の作用によりグルコース濃度が0.2g/L以下まで減少したため、グリシンを添加してもなお、加熱処理後も吸光度の増加は確認されなかった。
【0107】
〔試験例5〕
試験例2と同様に、本培養まで行った。培養後、HPLC分析により、エクオール及び5-ヒドロキシエクオール産生を確認し、グルコース濃度を測定した。グルコースが残存していることを確認後、市販のグルコースオキシダーゼ(天野エンザイム株式会社)及びペルオキシダーゼ(富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、30℃で一晩保存した。その後、エクオール濃度、5-ヒドロキシエクオール濃度及びグルコース濃度を測定した。酵素添加処理前の培養液を比較例5、6とし、酵素添加処理後の培養液を実施例9、10として表5に示す。
【0108】
酵素添加処理によって、グルコースが分解され、処理後の液には残存していないことがわかる。
【0109】
【0110】
〔試験例6〕
(前培養培地の調製)
試験例1と同様に前培養培地を調製した。
(酵素処理)
大豆胚軸抽出物(ダイジン、グリシチン、ゲニスチン等イソフラボン配糖体を44%含む)16g/Lに、ペクチナーゼGアマノ(天野エンザイム社製)0.16g/Lを加え、撹拌しながら50℃で一晩保持することで、イソフラボン配糖体から、糖を遊離させた。
【0111】
(本培養培地の調製)
酵素処理液に、終濃度として、ABB培地35.4g/L、アルギニン1g/L、β-シクロデキストリン16g/Lとなるように添加し、2L容量のミニジャーに1Lずつ分注した。窒素ガスで置換した後にオートクレーブ滅菌した。
【0112】
(前培養)
前培養培地に、表5に示す組み合わせで微生物を植菌した後、嫌気性ガスで置換し、37℃、200spmで2日間培養した。使用した微生物は試験例1と同様である。
(本培養)
本培養培地に上記前培養培地から植菌した後、嫌気性ガスを0.22μmのフィルターを介して通気しながら、37℃、500rpmで2日間培養した。
(結果)
培養後、エクオール濃度、5-ヒドロキシエクオール濃度、グルコース濃度を測定した。結果を表6に示す。
【0113】
【0114】
比較例7、8、実施例11~16から、エクオール産生能を有する微生物の培養により、エクオール及び5-ヒドロキシエクオールが産生したことがわかる。さらに、実施例11~16から、糖資化能を有する微生物を共培養することによって、糖が資化され、培養液にグルコースが残存していないことがわかる。
【0115】
〔試験例7〕
比較例7及び8に、市販のグルコースオキシダーゼ(天野エンザイム株式会社)及びペルオキシダーゼ(富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、30℃で一晩保存した。その後、エクオール濃度、5-ヒドロキシエクオール濃度及びグルコース濃度を測定した。
【0116】
(結果)
酵素添加処理後の培養液を実施例17、18とし、比較例7、8及び実施例17、18のエクオール濃度、5-ヒドロキシエクオール濃度及びグルコース濃度の測定結果を表7に示す。
【0117】
【0118】
酵素添加処理によって、グルコースが分解され、処理後の液には残存していないことがわかる。
【0119】
〔試験例8〕
比較例7及び実施例17の液を遠心分離し、菌体及び不溶成分を除去し、上清を回収した。上清の420nmでの吸光度を測定した。また、80℃、2時間加熱した後、同様に吸光度を測定した。結果を表8に示す。
【0120】
【0121】
比較例7は加熱により吸光度が増加した。残存するグルコースによりメイラード反応が進行し、褐変したためと考えられる。一方、実施例17は酵素の作用によりグルコース濃度が0.1g/L以下まで減少したため、加熱処理後も吸光度の増加は確認されなかった。
【要約】
少なくとも、そのままで又は追加のアミノ酸等の存在下で、加熱されても褐変しない、エクオール及び/又はエクオール誘導体を含む組成物の製造方法を提供することを課題とする。
下記(a)工程;(b1)工程及び/又は(b2)工程;並びに(c)工程を含む、組成物の製造方法により課題を解決する。
(a)イソフラボン配糖体から、グルコースとイソフラボンアグリコンとを生成する工程;
(b1)エクオール産生能を有する微生物に、前記イソフラボンアグリコンからエクオールを産生させる工程;
(b2)エクオール誘導体産生能を有する微生物に、前記イソフラボンアグリコンからエクオール誘導体を産生させる工程;及び、
(c)前記グルコースの含有量が、前記組成物中で0g/L以上2.0g/L未満、又は前記組成物の固形分量あたり30g/kg以下となるように前記グルコースを分解する工程