(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】X線発生装置およびX線撮像装置
(51)【国際特許分類】
H01J 35/16 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
H01J35/16
(21)【出願番号】P 2024505630
(86)(22)【出願日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2023002275
【審査請求日】2024-01-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227294
【氏名又は名称】キヤノンアネルバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 健夫
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-101879(JP,A)
【文献】特開2016-095916(JP,A)
【文献】国際公開第2020/136911(WO,A1)
【文献】特開2018-026355(JP,A)
【文献】特開2017-022037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 35/00-35/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1開口端および第2開口端を有する絶縁管と、前記絶縁管の前記第1開口端を閉塞するように配置され、電子放出部を含むカソードと、前記第2開口端を閉塞するように配置され、前記電子放出部からの電子が衝突することによってX線を発生するターゲットを含むアノードとを有するX線発生管と、
前記X線発生管を収容する収容容器と、を備え、
前記収容容器は、第3開口端を有し、前記アノードは、前記第3開口端を閉塞するように配置され、
前記アノードの一部に接するように前記収容容器の中に絶縁性液体が充填され、
前記絶縁管を介した前記カソードと前記アノードとの間の異常放電が低減されるように、前記絶縁管の外側表面の全域および前記カソードの外側表面の全域が部材によって取り囲まれている、
ことを特徴とするX線発生装置。
【請求項2】
前記部材がモールド方法によって形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のX線発生装置。
【請求項3】
第1開口端および第2開口端を有する絶縁管と、前記絶縁管の前記第1開口端を閉塞するように配置され、電子放出部を含むカソードと、前記第2開口端を閉塞するように配置され、前記電子放出部からの電子が衝突することによってX線を発生するターゲットを含むアノードとを有するX線発生管と、
前記X線発生管を収容する収容容器と、を備え、
前記収容容器は、第3開口端を有し、前記アノードは、前記第3開口端を閉塞するように配置され、
前記アノードの一部に接するように前記収容容器の中に絶縁性液体が充填され、
前記絶縁管を介した前記カソードと前記アノードとの間の異常放電が低減されるように、前記絶縁管の外側表面の一部が部材によって取り囲まれ、
前記部材は、前記第1開口端および前記第2開口端から離隔して配置され、
前記部材と前記カソードとの最短距離は、前記部材と前記アノードとの最短距離より小さい、
ことを特徴とするX線発生装置。
【請求項4】
前記部材は、リング形状部を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載のX線発生装置。
【請求項5】
複数の前記部材が前記絶縁管の軸方向に互いに離隔して配置されている、
ことを特徴とする請求項4に記載のX線発生装置。
【請求項6】
前記リング形状部は、円形状の断面を有する、
ことを特徴とする請求項
4に記載のX線発生装置。
【請求項7】
前記収容容器は、筒形状を有する部分を含み、前記部分は、前記アノードによって閉塞された前記第3開口端を有し、前記X線発生管の一部は、前記部分によって取り囲まれている、
ことを特徴とする請求項
1に記載のX線発生装置。
【請求項8】
前記部材は、絶縁材料で構成されている、
ことを特徴とする請求項
1に記載のX線発生装置。
【請求項9】
前記部材は、ポリテトラフルオロエチレン、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)およびフッ素ゴムのいずれかである、
ことを特徴とする請求項
1に記載のX線発生装置。
【請求項10】
前記部材は、エポキシである、
ことを特徴とする請求項
1に記載のX線発生装置。
【請求項11】
前記絶縁性液体は、絶縁油である、
ことを特徴とする請求項
1に記載のX線発生装置。
【請求項12】
前記絶縁性液体は、フッ素系不活性液体である、
ことを特徴とする請求項
1に記載のX線発生装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のX線発生装置と、
前記X線発生装置から放射されたX線を検出するX線検出器と、
を備えることを特徴とするX線撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線発生装置およびX線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、X線発生管、X線発生管を駆動する管駆動回路、および、X線発生管および管駆動回路を収容する収容容器を備えるX線発生装置が記載されている。収容容器の中には、絶縁液体が充填され、絶縁液体は、X線発生管と管駆動回路との間に絶縁性能を担保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
X線発生装置を長期間にわたって使用すると、X線発生管において異常放電が発生することがあった。発明者による調査により、X線発生管のカソードとアノードとの間で絶縁管の外側表面を介して異常放電が発生することが分かった。異常放電により、X線発生装置が停止あるいは故障しうる。
【0005】
本発明の1つの側面は、X線発生装置における異常放電の発生を抑制するために有利な技術を提供する。
【0006】
本発明の1つの側面は、X線発生装置に関する。前記X線発生装置は、X線発生管を備えうる。前記X線発生管は、第1開口端および第2開口端を有する絶縁管と、前記絶縁管の前記第1開口端を閉塞するように配置され、電子放出部を含むカソードと、前記第2開口端を閉塞するように配置され、前記電子放出源からの電子が衝突することによってX線を発生するターゲットを含むアノードとを有しうる。前記X線発生装置は、前記X線発生管を収容する収容容器を備えうる。前記収容容器は、第3開口端を有し、前記アノードは、前記第3開口端を閉塞するように配置されうる。前記アノードの一部に接するように前記収容容器の中に絶縁性液体が充填されうる。前記絶縁管を介した前記カソードと前記アノードとの間の異常放電が低減されるように、少なくとも前記絶縁管の外側表面の一部が部材によって取り囲まれうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示におけるX線発生装置の基本構成を説明する図。
【
図2】第1実施形態のX線発生装置の構成が例示的かつ模式的に示す図。
【
図3】第2実施形態のX線発生装置の構成が例示的かつ模式的に示す図。
【
図4】第3実施形態のX線発生装置の構成が例示的かつ模式的に示す図。
【
図5】第4実施形態のX線発生装置の構成が例示的かつ模式的に示す図。
【
図7】絶縁性液体との摩擦帯電における帯電列を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
まず、
図1を参照しながら本開示におけるX線発生装置100の基本構成を説明する。X線発生装置100は、X線発生管1と、X線発生管1を収容する収容容器50とを備えうる。X線発生装置100は、X線発生管1を駆動する駆動回路40を更に備えてもよく、駆動回路40は、収容容器50に収容され、ケーブル42を介してX線発生管1に接続されうる。X線発生管1の一部(後述のアノード20)は、収容容器50の外部空間(X線発生装置100の外部空間)に露出しうる。収容容器50の内部空間には、絶縁性液体60が充填される。他の観点において、収容容器50の内部空間は、収容容器50に収容された構成要素(X線発生管1、ケーブル42等)が占める空間を除いて、絶縁性液体60によって満たされる。絶縁性液体60は、例えば、鉱物油、化学合成油等の絶縁油でありうる。あるいは、絶縁性液体60は、絶縁油以外の液体、例えば、フッ素系不活性液体(例えば、フロリナート(商標))であってもよい。
【0010】
X線発生管1は、絶縁管10、カソード30、および、アノード20を含みうる。X線発生管1の内部空間は、真空に維持される。絶縁管10は、第1開口端OP1および第2開口端OP2を有しうる。絶縁管10は、円筒形状等の筒形状を有しうる。絶縁管10は、絶縁管10の内部空間の真空気密性および絶縁性を提供するように構成されうる。絶縁管10は、例えば、アルミナまたはジルコニア等を主成分とするセラミック材料で構成されうる。絶縁管10は、あるいは、ボロシリケートガラス等のガラス材料で構成されうる。
【0011】
カソード30は、絶縁管10の第1開口端OP1を閉塞するように配置されうる。カソード30は、電子放出部32を含む。アノード20は、絶縁管10の第2開口端OP2を閉塞するように配置されうる。アノード20は、電子放出部32からの電子が衝突することによってX線を発生するターゲット23を含みうる。アノード20は、ターゲット23を保持するターゲット保持板22と、ターゲット保持板22を支持する電極21とを含みうる。電極21は、導電体で構成され、ターゲット23に電気的に接続され、ターゲット23に電位を与える。アノード20は、例えば、接地電位に維持されうるが、他の電位に維持されてもよい。ターゲット23は、融点が高く、X線の発生効率が高い材料、例えば、タングステン、タンタルまたはモリブデン等で構成されうる。ターゲット保持板22は、例えば、X線を透過し易い材料、例えば、ベリリウム、ダイヤモンド等で構成されうる。
【0012】
収容容器50は、第3開口端OP3を有しうる。収容容器50は、例えば、第1部分52、第2部分53、第3部分54、第4部分55および第5部分56を含みうる。第1部分52は、円筒形状等の筒形状を有しうる。第1部分52は、収容容器50の第3開口端OP3を規定しうる。換言すると、第1部分52は、第3開口端OP3を有しうる。第2部分53は、導電体で構成され、X線発生管1のアノード20と電気的に接続される。第2部分53は、電極21とともにアノードを構成するものとして理解されてもよい。第2部分53は、リング形状あるいは枠形状を有しうる。第2部分53は、絶縁性液体60と接触するように配置されうる。あるいは、電極21および第2部分53を含む導電性部材は、絶縁性液体60と接触するように配置されうる。電極21および第2部分53は、同一材料でシングルピースとして構成されてもよい。第4部分55は、円筒形状や角筒形状等の筒形状を有しうる。第3部分54は、第4部分55の一端に連結され、リング形状あるいは枠形状を有しうる。第1部分52は、第3部分54から突出するように第3部分54に連結されうる。第5部分は、第4部分の他端に連結されうる。または、第3部分54と第4部分55、第5部分56が一体となって中空の球体形状としてもよい(第1部分52との接合部分を除いて)。
【0013】
絶縁性液体60は、収容容器50の内部空間において対流しうる。絶縁管10の外側表面14の全体が絶縁性液体60と接触している場合、絶縁管10の外側表面14と絶縁性液体60との摩擦によって絶縁管10と絶縁性液体60とが帯電しうる。このような帯電は、摩擦帯電と呼ばれる。一般に、摩擦帯電とは、異なる二種類の材料が摩擦されることによって二種類の材料間で電荷が移動し、一方の材料が正極性に、他方の材料が負極性に帯電する現象をいう。本発明者は、対流する絶縁油(絶縁性液体)の中に絶縁管を放置した後に絶縁管の外側表面の電位を表面電位計によって測定する実験を行った。その結果、絶縁管の外側表面が正極性側に帯電すること、そして、その帯電量が時間に比例して増えることを確認した。摩擦によって帯電する極性は、摩擦する物質の特性に依存する。物質の特性として、帯電列および比誘電率を挙げることができる。
図7は、絶縁油に対する帯電列の一例を示している。帯電列は、摩擦された材料が正極性または負極性のいずれに帯電するか、および、帯電のしやすさを示す序列を示している。帯電列において、より正極性側に位置する材料は正極性に帯電しやすく、より負極性側に位置する材料は負極性に帯電しやすい。
【0014】
絶縁管10の外側表面14が正極性側に帯電することにより、カソード30とアノード20との間の絶縁性能が低下しうる。カソード30とアノード20との間の絶縁性能は、カソード30とアノード20との間の電位差、カソード30とアノード20との間の抵抗、カソード30とアノード20との距離等に依存しうる。実験の結果、絶縁管10が正極性側に帯電すると、
図6に太い矢印で模式的に示されるように、カソード30とアノード20とが絶縁管10の外側表面14を介して短絡することが分かった。また、実験の結果、絶縁管10の外側表面14、カソード30および絶縁性液体60が三重点を形成する場合に、電子雪崩によって異常放電が発生しやすいことも分かった。
【0015】
以下、
図2、
図3、
図4、
図5にそれぞれ示された複数の実施形態を通して本開示のX線発生装置100について例示的に説明する。以下で言及しない事項は、
図1を参照しながら説明した基本構成に従いうる。
【0016】
図2には、第1実施形態のX線発生装置100の構成が例示的かつ模式的に示されている。アノードの一部(例えば、第2部分53)に接し、かつ絶縁管10の外側表面14およびカソード30の外側表面34を覆うように収容容器50の中に絶縁性液体60が充填されうる。第1実施形態のX線発生装置100では、絶縁管10を介したカソード30とアノード20との間の異常放電が低減されるように、少なくとも絶縁管10の一部が部材72によって取り囲まれている。部材72は、絶縁材料で構成されうる。より詳しくは、第1実施形態のX線発生装置100では、絶縁管10の外側表面14の全域が部材72によって取り囲まれうる。他の観点において、絶縁管10の外側表面14の全域が部材72によって被覆されうる。また、絶縁管10の外側表面14の全域の他、カソード30の外側表面34の全域が部材72によって被覆されうる。第1実施形態は、絶縁管10の外側表面14、カソード30および絶縁性液体60が三重点を形成することを回避するために有効で、これにより異常放電の発生が低減されうる。
【0017】
絶縁管10を介したカソード30とアノード20との間の異常放電を低減するためには、部材72と絶縁性液体60との摩擦帯電によって部材72が負極性に帯電し、絶縁性液体60が正極性に帯電するように、部材72の材料を決定すればよい。絶縁性液体60として絶縁油を採用する場合、例えば、
図7に例示された帯電列に従って、部材72と絶縁油との摩擦帯電によって部材72が負極性に帯電するように部材72の材料が選択されうる。部材72の材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(商標))、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)、エポキシおよびフッ素ゴム(例えば、バイトン(商標))が好適である。部材72は、例えば、絶縁管10の外側表面14およびカソード30の外側表面34の全域を被覆するように配置されてよく、そのために、例えば、モールド方法、スプレー法またはディップ法等が適用されうる。
【0018】
絶縁管10を介したカソード30とアノード20との間の異常放電を低減するためには、部材72と絶縁性液体60との比誘電率差が部材72と絶縁管10との比誘電率差よりも小さいように部材72の材料が決定されうる。例えば、部材72は、比誘電率が3であるバイトン、または、比誘電率が2.1であるポリテトラフルオロエチレンで構成され、絶縁管10は、比誘電率が4.9であるボロシリケートガラス、または、比誘電率が9であるアルミナで構成される。ここで、部材72と絶縁性液体60との比誘電率差が部材72と絶縁管10との比誘電率差よりも小さいという事実は、X線を発生させる際の温度において評価されてもよいし、室温(例えば、25℃)において評価されてもよい。ただし、前者と後者との間に大きな差はない。
【0019】
ここで、X線発生管1(絶縁管10の外側表面14、カソード30の外側表面34)を被覆するように部材72を形成するために好適なモールド方法を説明する。部材72の材料、即ち被覆材料は、あらかじめ混錬装置によって気泡が入らないように主剤と硬化補助剤を混錬し、適当な流動を保つように一定の温度に保持されうる。エポキシ系樹脂の場合、その温度は、例えば100℃前後であるが、その温度は使用する材料に応じて適宜決定されうる。被覆対象であるX線発生管1よりも一回り大きな容器に被覆材料が流し入れられうる。その際、容器と被覆材料との温度差により被覆材料が急冷されて被覆材料の流動性が低下しうる。これを防止するために容器を事前に加熱することが望ましい。容器に流し入れられた被覆材料を容器からオーバーフローさせた後、引けなどの問題が生じないよう適当な冷却速度および温度分布において被覆材量が固化されうる。
【0020】
X線発生管1では、アノード20とカソード30との間に高電圧が印加されるので、被覆材料で構成される部材72に誘電率が小さい気泡が存在すると、そこに電界が集中し、これが異常放電を誘発しうる。これを避けるため、被覆材料を充填する処理が行われる空間は、真空ポンプを用いて数百~数千Pa程度の真空度になるまで事前に排気されうる。また、被覆材料とX線発生管1との密着性を高めるために、X線発生管1の表面にプライマー材を塗布したり、ブラスト処理によって凹凸を形成したりした後に部材72による被覆が行われてもよい。部材72の厚さは、X線発生管1の放熱の観点から薄いことが望ましい。部材72の厚さは、例えば、5mm以下が好ましく、3mm以下が更に好ましい。部材72の厚さは、例えば、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上が更に好ましい。
【0021】
図3には、第2実施形態のX線発生装置100の構成が例示的かつ模式的に示されている。第2実施形態の説明として言及しない事項は、第1実施形態、または
図1を参照しながら説明した基本構成に従いうる。部材72は、カソード30と絶縁管10との接触部Cを覆うように配置されうる。また、部材72は、カソード30を覆うように配置されうる。第2実施形態も、絶縁管10の外側表面14、カソード30および絶縁性液体60が三重点を形成することを回避するために有効で、これにより異常放電の発生が低減されうる。
【0022】
図4には、第3実施形態のX線発生装置100の構成が例示的かつ模式的に示されている。第3実施形態の説明として言及しない事項は、第1又は第2実施形態、または
図1を参照しながら説明した基本構成に従いうる。第3実施形態では、部材72と絶縁管10との間に中間層75が設けられている。中間層75は、絶縁材料で構成されうる。中間層75は、絶縁管10を被覆するように構成されうる。部材72は、中間層75を被覆するように構成されうる。中間層75は、例えば、コバールガラス、ナイロン、および、シリカを主成分とする金属酸化物を含む混合物の少なくとも1つで構成されうる。中間層75を設けることは、例えば、絶縁管10の外側表面14を覆うように平滑面を形成するために有利である。また、中間層75を形成することは、絶縁管10を構成する粒子間に異物が入り込むことを抑制するために有利である。その結果、絶縁管10の覆うように配置された部材72の表面における沿面耐電圧を向上させることができる。これにより異常放電を防止し、X線発生装置100を長寿命化することができる。
【0023】
図5には、第4実施形態のX線発生装置100の構成が例示的かつ模式的に示されている。第4実施形態の説明として言及しない事項は、第1乃至第3実施形態、または
図1を参照しながら説明した基本構成に従いうる。第3実施形態では、部材72は、リング形状部を含みうる。あるいは、部材72は、リング形状部でありうる。リング形状部は、絶縁管10の外側表面14の軸方向(絶縁管10の軸方向であり、電子放出部32から電子線が放射される方向でもある)における一部を全周にわたって取り囲みうる。絶縁管10の外側表面14は、部材72によって囲まれた領域以外の領域において、絶縁性液体60と接触しうる。部材72とカソード30との最短距離は、部材72とアノード20との最短距離より小さいことが好ましい。絶縁管10は、複数の部材72(リング形状部)によって取り囲まれてもよい。複数の部材72は、絶縁管10の軸方向に関して互いに離隔して配置されうる。部材72は、例えば、バイトンで構成されうる。絶縁管10の外側表面14が正極性側に帯電しても、部材72が負極性側に帯電することによって、絶縁管10の外側表面14の全体における正極性側への帯電量を減らすことができる。これによって異常放電の発生が低減されうる。
【0024】
図8には、一実施形態のX線撮像装置200の構成が示されている。X線撮像装置200は、X線発生装置100と、X線発生装置100から放射され物体106を透過したX線104を検出するX線検出装置110を備えうる。X線撮像装置200は、制御装置120および表示装置130を更に備えてもよい。X線検出装置110は、X線検出器112と、信号処理部114とを含みうる。制御装置120は、X線発生装置100およびX線検出装置110を制御しうる。X線検出器112は、X線発生装置100から放射され物体106を透過したX線104を検出あるいは撮像する。信号処理部114は、X線検出器112から出力される信号を処理して、処理された信号を制御装置120に供給しうる。制御装置120は、信号処理部114から供給される信号に基づいて、表示装置130に画像を表示させる。
【0025】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【要約】
X線発生装置は、X線発生管を備えうる。前記X線発生管は、第1開口端および第2開口端を有する絶縁管と、前記絶縁管の前記第1開口端を閉塞するように配置され、電子放出部を含むカソードと、前記第2開口端を閉塞するように配置され、前記電子放出部からの電子が衝突することによってX線を発生するターゲットを含むアノードとを有しうる。前記X線発生装置は、前記X線発生管を収容する収容容器を備えうる。前記収容容器は、第3開口端を有し、前記アノードは、前記第3開口端を閉塞するように配置されうる。前記アノードの一部に接するように前記収容容器の中に絶縁性液体が充填されうる。前記絶縁管を介した前記カソードと前記アノードとの間の異常放電が低減されるように、少なくとも前記絶縁管の外側表面の一部が部材によって取り囲まれうる。