(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】体液及び創傷関連生体分子の分析システム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20240509BHJP
C12Q 1/37 20060101ALI20240509BHJP
C12Q 1/44 20060101ALI20240509BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20240509BHJP
G01N 33/84 20060101ALI20240509BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240509BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240509BHJP
G01N 33/52 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C12M1/34 E
C12Q1/37
C12Q1/44
C12Q1/68
C12M1/34 Z
G01N33/84 A
G01N33/68
G01N33/50 P
G01N33/52 A
(21)【出願番号】P 2021537212
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(86)【国際出願番号】 US2020014520
(87)【国際公開番号】W WO2020219130
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-11-18
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521278254
【氏名又は名称】プロジェニテック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PROGENITEC,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】フー、ウェンジン
(72)【発明者】
【氏名】ブー、ホン
(72)【発明者】
【氏名】ナイア、アシュウィン
(72)【発明者】
【氏名】タン、リーピン
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-515929(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0279339(US,A1)
【文献】国際公開第2017/173069(WO,A1)
【文献】特表2019-516525(JP,A)
【文献】特開昭56-008549(JP,A)
【文献】特表2016-522829(JP,A)
【文献】特表2010-516387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12Q 1/00-3/00
G01N 33/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷液を分析するためのシステムであって、
前記システムは、基層と、透明層と、指示薬層と、膜層とを備え、前記指示薬層はpH、亜硝酸塩、プロテアーゼ、エステラーゼ、活性酸素種、活性窒素種、核酸、又はそれらの組み合わせを検出するための比色又は蛍光指示薬を含み、
前記基層は、白又は明るい色であり、非多孔性かつ防水性であり、使用中に液体が前記システムから漏れるのを防止するためのものであり、前記膜層は、血餅及び細胞のデブリに対して不透過性であり、及び、創傷液に対して透過性であり、前記指示薬層は前記透明層と前記膜層との間に配置されており、
前記透明層、前記膜層及び前記基層は、縁に沿って結合されており、前記指示薬層は、前記縁まで延びておらず、前記透明層は非多孔性であって、前記透明層を通して比色又は蛍光指示試薬の色の変化を視覚化することができるように透明である、創傷液を分析するためのシステム。
【請求項2】
前記膜層の厚さは、5μm~1.0mmであり、5nm~50μmの孔径を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記膜層の厚さは、0.1mm~0.6mmであり、5μm~50μmの孔径を有する、請求項
2に記載のシステム。
【請求項4】
前記比色又は蛍光指示試薬は、前記指示薬層中に1ng/cm
2~1g/cm
2の量で存在する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記比色又は蛍光指示試薬は、前記指示薬層中に1μg/cm
2から1mg/cm
2の量で存在する、請求項
4に記載のシステム。
【請求項6】
前記膜層は、セルロース、ニトロセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセタート、セルロースアセタートブチラート、セルロースアセタートプロピオナート、セルロースニトラートナイロン、ナイロン、ビスコース、綿、レーヨン、ウール、シルク、(ポリ)ヒドロキシエチルメタクリラート、(ポリ)ヒドロキシプロピルメタクリラート、(ポリ)グリセロールメタクリラート、ヒドロキシエチルメタクリラート、ヒドロキシプロピルメタクリラート、又はグリセロールメタクリラートとメタクリル酸、アミノアクリラート及びアミノメタクリラートとの共重合体、(ポリ)ビニルピリジン、ポリビニルアセタート、ポリビニルアルコール、ポリ4-ビニルアセタートとポリビニルアルコールの共重合体、ビニルアセタートとビニルクロリドのヒドロキシル修飾共重合体、ポリエステル及び少なくとも10重量%のポリエチレンオキシドを含むポリウレタン、スチレン、メタクリル酸/ヒドロキシエチルメタクリラート共重合体、メチルメタクリラート/メタクリル酸共重合体、エチルメタクリラート/スチレン/メタクリル酸共重合体、エチルメタクリラート/メチルメタクリラート/スチレン/メタクリル酸共重合体、又はポリテトラフルオロエチレンのうちの1つ以上で形成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記膜層は、セルロース、ニトロセルロース、又はナイロンで形成される、請求項
6に記載のシステム。
【請求項8】
前記膜層は、5μm~1.0mmの厚さであり、5nm~50μmの孔径を有する、請求項
7に記載のシステム。
【請求項9】
前記比色又は蛍光指示試薬は、前記指示薬層中に1ng/cm
2~1g/cm
2の量で存在する、請求項
8に記載のシステム。
【請求項10】
pHを検出するための前記比色又は蛍光指示試薬は、ニトラジンイエロー、ブロモクレゾールグリーン、クロロフェノールレッド、ブロモチモールブルー、フェノールレッド、チモールブルー、メチルレッド、メチルオレンジ、メチルイエロー、プロピルレッド、リトマス、フェノールフタレイン、スルホンフタレイン指示薬から構成される群から選択される、請求項
9に記載のシステム。
【請求項11】
創傷液の分析するための方法において、
前記基層と、前記透明層と、
前記指示薬層と、第1の表
面及び前記第1の表面に対向する第2の表
面を有する
前記膜層とを備えた請求項1に記載のシステムを得る工程であって、前記指示薬層は、前記透明層と前記第2の表面との間に配置されている、請求項1に記載のシステムを得る工程と、
創傷浸出液を染み込ませた創傷被覆材を得る工程と、
前記膜層の前記第1の表面が前記創傷被覆材に接触するように前記膜層で前記創傷被覆材を覆う工程と、
前記指示薬層を前記膜層の
前記第2の表面に接触させる工程と、
前記創傷浸出液が前記膜層を通過して前記指示薬層に移動して、前記創傷浸出液の成分が前記比色又は蛍光指示薬試薬と反応するように、前記創傷被覆材を前記システムとインキュベートする工程と、
前記透明層を通して前記指示薬層の1つ以上の色の変化を視覚化する工程と、
を含み、
前記指示薬層における1つ以上の色の変化は、前記比色又は蛍光指標試薬と反応した前記創傷浸出液の成分の前記創傷被覆材における部位に対応する部位にそれぞれ存在する、創傷液を分析するための方法。
【請求項12】
pH5~11及び1~6Mの濃度を有する塩溶液で前記創傷被覆材を水和する工程をさらに含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記塩溶液は、NaCl、KCl、KI、KH
2PO
4、K
2HPO
4、又はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記水和する工程は、配置する工程に先立ち、前記塩溶液を前記創傷被覆材に適用することによって達成される、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記水和する工程は、前記覆う工程に先立ち、前記塩溶液を前記膜層の第1の表面に適用することによって達成される、請求項
13に記載の方法。
【請求項16】
前記指示薬層は、前記透明層と一体であり、及び前記透明層の縁まで延びていない、請求項
13に記載の方法。
【請求項17】
生体医療器具及び廃棄物上の生体液を検出する方法において、
前記基層と、前記透明層と、
前記指示薬層と、第1の表面
及び前記第1の表面に対向する第2の表
面を有する
前記膜層と、を含む請求項1に記載のシステムを得る工程であって、前記指示薬層は、前記透明層及び前記第2の表面の間に配置される、請求項1に記載のシステムを得る工程と、
前記生体液に接触した
前記生体医療器具又は廃棄物を獲得する工程と、
前記膜層の
前記第1の表面が前記生体医療器具又は廃棄物と接触するように、前記生体医療器具又は廃棄物を前記膜層で覆う工程と、
前記指示薬層を前記膜層の
前記第2の表面に接触させる工程と、
前記生体液が前記膜層を通過して
前記指示薬層に移動して前記比色又は蛍光指示薬試薬と反応するように、前記生体医療器具又は廃棄物を前記システムとインキュベートする工程と、
前記透明層を通して前記指示薬層の1つ以上の色の変化を視覚化する工程と、
を含み、
前記指示薬層における1つ以上の色の変化は、前記生体医療器具又は廃棄物上に存在する
前記生体液の成分に接触して前記比色又は蛍光標識試薬と反応した部位にそれぞれ存在する、生体医療器具又は廃棄物上の生体液を検出する為の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液及び創傷関連生体分子の分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
創傷浸出液としても知られる創傷液には、創傷治癒を監視するため、及び感染を検出するために分析可能な多くの生体分子が含まれている。創傷液を分析するためのいくつかの装置及び技術が現在使用されている。
【0003】
例えば、創傷床を覆う創傷被覆材からの創傷滲出液を集める吸引装置が利用可能である。収集された浸出液は、さまざまな生体分子分析キットを使用して分析される。この分析が完了するまでに数時間かかる場合がある。さらに、そのような装置は、創傷の異なる部位で異なる生体分子の存在を決定することができない。
【0004】
別例では、埋め込まれた診断試薬を含む装置が存在する。それらは、創傷被覆材として使用され、傷を覆うとともに、創傷液中の生体分子をその場で同時に識別及び測定する。これらの装置は、創傷被覆材に類似する材料で作られた創傷接触層を含み、単一時点で単一創傷の限られた個数の測定、通常は1個の測定を提供する。また、これらの装置は傷に直接触れるため、使用前に滅菌しなければならず、使用可能な診断薬が制限される。さらに、これらの装置は、創傷生体分子の有意義な分析を行う前に、数日間所定の部位に置かなければならない。
【0005】
さらに、テストサンプルを非多孔性の試験紙に配置して、サンプル内のさまざまなパラメーター、例えばpH、エステラーゼ活性、及び亜硝酸塩レベルを分析する多くの市販の試験紙がある。これらの試験紙は、各サンプルの1個のパラメーターのテストごとに1個の値のみしか生成することができず、一般にそのパラメーターの累積値又は平均値を表す。創傷中の組織のデブリや血栓は、試験紙の表面に結合してテストの精度を妨げる可能性があるため、これらの試験紙は、創傷液を分析するために創傷に直接配置することはできない。
【0006】
上記欠点なしに、創傷の異なる領域に位置する複数の生体分子を同時に測定して、マッピングすることができるシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
上記必要性を満たすために、創傷液を分析するためのシステムが提供される。このシステムは透明層、膜層、及び指示薬層を含む。指示薬層はpH、亜硝酸塩、酵素、活性酸素種、活性窒素種、又は核酸を検出するための比色又は蛍光指示試薬を含む。膜層は、血餅及び細胞のデブリに対して不透過性であり、創傷液に対して透過性がある。透明層は、透明であり、比色又は蛍光指示試薬の色の変化は、透明層を通して容易に視覚化できる。
【0008】
また、上記システムを使用して創傷液を分析する方法も提供される。この方法は、(i)創傷浸出液を含浸させた創傷被覆材を得る工程と、(ii)膜層の一方の表面で創傷被覆材を覆う工程と、(iii)膜層の他方の表面に指示薬層を接触させる工程と、(iv)創傷浸出液が膜層を通って指示薬層に移動して創傷浸出液の成分が指示薬層内の比色又は蛍光標識試薬と反応するように、創傷被覆材をシステムとインキュベートする工程と、(v)透明層を通して指示薬層の1つ以上の色の変化を視覚化する工程と、を必要とする。指示薬層の色の変化は、比色又は蛍光標識試薬と反応した創傷浸出液の成分の創傷被覆材における位置に対応する位置に存在する。
【0009】
さらに、上記システムを使用する生物医学器具及び廃棄物上の生体液を検出する方法を開示する。この方法は、生体液、例えば汗、唾液、尿、血漿、及び便と接触した生体医療器具又は廃棄物を膜層の一方の表面で覆う工程と、膜層の他方の表面に指示薬層を接触させる工程と、生体液が膜層を通って指示薬層に移動して指示薬層内の比色又は蛍光指示試薬と反応するように、生体医療器具又は廃棄物をシステムとインキュベートする工程と、透明層を通して指示薬層における1つ以上の色の変化を視覚化する工程と、を含む。上記方法と同様に、指示薬層の色の変化は、比色又は蛍光指示薬と反応した生体液材料の成分と接触した位置に存在する。
【0010】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の図面及び説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、明細書、図面、及び添付の特許請求の範囲から理解できる。
【0011】
以下の説明は、次の添付図面を参照して行う。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】創傷液を分析するための本発明にかかるシステムの具体的な実施形態を示す図。
【
図2】創傷ガーゼ(I)からpH指示薬層(II)及びエステラーゼ活性指示薬層(III)に創傷液を移した後、ブタの創傷で感染が存在しない活動性炎症を検出したことを示す写真。
【
図3】創傷ガーゼ(I)からpH指示薬層(II)及びエステラーゼ活性指示薬層(III)に創傷液を移した後、ブタの創傷で、活動性炎症及び感染の存在を検出したことを示す写真。
【
図4】創傷ガーゼからpH指示薬層(I)及びエステラーゼ活性指示薬層(II)に創傷液を移した後、ヒト慢性皮膚創傷で、治癒しつつある創傷領域と治癒していない創傷領域、及び感染の不存在を検出したことを示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記のように、指示薬層及び膜層を含む、創傷液を分析するためのシステムが提供される。指示薬層はpH、亜硝酸塩、酵素、活性酸素種、活性窒素種、核酸、又はこれらの分析物の組み合わせを検出するための比色又は蛍光指示試薬を含む。比色又は蛍光指示試薬は、指示薬層に1ng/cm2~1g/cm2の量で存在し得る。特定の例では、比色又は蛍光指示試薬は、指示薬層に1μg/cm2~1mg/cm2の量で存在する。
【0014】
pHの検出のために、指示薬層は、ニトラジンイエロー(pH6~7.2)、ブロモクレゾールグリーン(pH3.8~5.4)、クロロフェノールレッド(pH4.8~6.7)、ブロモチモールブルー(pH6.0~7.6)、フェノールレッド(pH6.8~8.4)、チモールブルー(pH1.2~2.8、pH8.0~9.6)、メチルレッド(pH4.8~6.0)、メチルオレンジ(pH3.1~4.4)、メチルイエロー(pH2.9~4.0)、プロピルレッド(pH4.8~6.6)、コンゴレッド(pH3.0~5.0)、アリザリンレッドS(pH4.0~5.6)、リトマス、フェノールフタレイン、及びブロモクレゾールパープルなどのその他のスルホンフタレイン染料(pH5.2~6.8)、クレゾールレッド(pH0.2~1.8,pH7.2~8.8)、メタクレゾールパープル(pH1.2~2.8、pH7.4~9.0)のpH感受性指示薬を含むが、これに限定されない。
【0015】
亜硝酸塩の検出は、亜硝酸塩と反応できる化合物、例えばアニリン、4-クロロアニリン、4-ブロモアニリン、2,4,6-トリブロモアニリン、2,4,6-トリクロロアニリン、α-トリフルオロ-m-トルイジン、オルト-トルイジン、m-及びp-アミノフェノール、オルトトリジン、スルファニルアミド、p-アミノ安息香酸、1-アミノ-8-ヒドロキシナフタレン-3,6-ジスルホン酸、アミノアセトアニリド、アミノフェニルエーテル、p-アルサニル酸、及び4-アミノ-1-ナフタレンカルボニトリルであり得る、芳香族第一級アミンを指示薬層に含めることによって達成されるが、これに限定されない。
【0016】
上記亜硝酸塩反応性化合物を含む指示薬層に亜硝酸塩を曝露すると、1-ジアゾ-2-ナフトール-4-スルホン酸塩、1-ジアゾフェニル-3-カルボナート、4-ジアゾ-3-ヒドロキシ-1-ナフチルスルホナート(DNSA)、4-ジアゾ-3-ヒドロキシ-7-ニトロ-1-ナフチルスルホナート(NDNSA)、4-ジアゾ-3-ヒドロキシ-1,7-ナフチルジスルホナート、2-メトキシ-4-(N-モルホリニル)ベンゼンジアゾニウムクロリド、4-ジアゾ-3-ヒドロキシ-7-ブロモ-1-ナフチルスルホナート、及び4-ジアゾ-3-ヒドロキシ-7-[1,オキソプロピル]-1-ナフチルスルホナートに限定されないジアゾニウム塩が形成される。ジアゾニウム塩は、テトラヒドロベンゾキノリンと反応してピンク色のアゾ生成物を形成する。
【0017】
上記のように、このシステムはプロテアーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、及びペルオキシダーゼなどの酵素の検出にも使用できる。例えば、このシステムはエラスターゼ、マトリックスメタロプロテイナーゼ、カタラーゼ、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、及びカテプシンGの検出に使用することができる。
【0018】
酵素の検出のために、指示薬層は、活性酵素の存在下で色又は蛍光信号を生成する酵素基質を含むことができる。一例では、基質は、基質に特異的なプロテアーゼによる切断時にシグナルを発する発色団を含むプロテアーゼ基質である。特定の例では、コラゲナーゼは、コラーゲンI、II、III、IV、IXの標識された断片によって検出することができ、これは、コラゲナーゼによる基質の切断時に蛍光を発する。同様に、N-メトキシスクシニル-Ala-Ala-Pro-Val p-ニトロアニリド(配列番号1)、及びN-(メトキシスクシニル)-Ala-Ala-Pro-Val-7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリンなどの標識エラスターゼペプチド基質が、エラスターゼの検出に使用される。
【0019】
エステラーゼ活性は、1-ジアゾ-2-ナフトール-4-スルホナート、1-ジアゾフェニル-3-カーボナート、DNSA、NDNSA、4-ジアゾ-3-ヒドロキシ-1,7-ナフチルジスルホナート、2-メトキシ-4-(N-モルホリニル)ベンゼンジアゾニウムクロリド、4-ジアゾ-3-ヒドロキシ-7-ブロモ-1-ナフチルスルホナート、及び4-ジアゾ-3-ヒドロキシ-7-[1,オキソプロピル]-1-ナフチルスルホナートなどのジアゾニウム塩と併せて、5-フェニル-3-ヒドロキシピロリルL-乳酸、L-アラニン-5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシルエステル、L-フェニルアラニンエチルエステル塩酸塩、3-ヒドロキシ-5-フェニルピロール、及びN-トシル-L-アラニン3-インドキシルエステルなどのアミノ酸エステルを含むペプチド基質を使用して検出することができる。一例では、ジアゾニウム塩をペプチドに組み込むことができる。
【0020】
別例では、指示薬層は、リゾチームによる加水分解時に染料を放出するキトサンの粒子を含む。さらなる例では、MPO基質が、グルコースオキシダーゼとグルコース、デンプン、及びガンマ-アミラーゼとともに指示薬層に含まれる。
【0021】
システムで検出することができる活性酸素種には、スーパーオキシド、一酸化窒素、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ヒドロキシルラジカル、及び次亜塩素酸塩が含まれるが、これに限定されない。活性酸素種の検出のために、指示薬層は、例えば、アンプレックスレッド(Amplex Red)、2-(2-ピリジル)-ベンゾチアゾリン、ビス-2,4-ジニトロベンゼンスルホニルフルオレセイン、2’,7’-ジクロロフルオレセチンジアセタート、シアニン(Cy2、Cy3、Cy5)ベースのヒドロシアニン又は重水素シアニン、及びルミノールを含む。
【0022】
このシステムは、指示薬層にHySOx又はアミノフェニルフルオレセイン及び誘導体を含めることにより、次亜塩素酸を検出するために使用することができる。指示薬層にMito-SOX又は4-クロロ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾールが含まれている場合には、システムによってスーパーオキシドが検出される。代替的には、次亜塩素酸塩を検出するために、指示薬層は、ナフトフルオレセインジスルホナート、ペンタフルオロベンゼンスルホニルフルオレセイン、ペルオキシフルオル-1(Peroxifluor-1)、ペルオキシクリムソン-1(Peroxycrimson-1)、ペルオキシレゾルフィン-1(Peroxyresorufin-1)、スコポレチン、Spy-HP、及びセミナフト-ホスファ-フルオレセインのうちの1つを含む。別例では、ヒドロペルオキシドは、MitoPY1又はジフェニル-1-ピレニルホスフィンによって検出され、ヒドロキシルラジカルはジヒドロカルセインによって検出される。
【0023】
システムによって検出できる活性窒素種には、一酸化窒素、二酸化窒素ラジカル、及びニトロソニウムカチオンが含まれるが、これらに限定されない。活性窒素種を検出するために、指示薬層は、例えばo-フェニレンジアミン、1,2-ジアミノアントラキノン、2,3-ジアミノナフタレン、4,5-ジアミノフルオレセインジアセタート、5,6-ジアミノフルオレセインジアセタート、ジアミノローダミン-4M AM、4,5-ジアミノローダミンB、ジアミノシアニン、ローダミンスピロラクタムを含む。
【0024】
核酸の検出のために、指示薬層はクリスタルバイオレット、臭化エチジウム、ヨウ化プロピジウム、7-アミノアクチノマイシンD、1,1’-(4,4,8,8-テトラメチル-4,8-ジアザウンデカメチレン)ビス[4-[(3-メチルベンゾ-1,3-オキサゾール-2-イル)メチリデン]-1,4-ジヒドロキノリニウム]テトラヨウ化物(YOYO-1(登録商標))、1-1’-[1,3-プロパンジイルビス[(ジメチルイミニオ)-3,1-プロパンジイル]]ビス[4-[(3-メチル-2(3H)-ベンゾチアゾリデン)メチル]]テトラヨウ化物(TOTO-1(登録商標))、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール、ヘキスト33258、33342、34580)アクリジンオレンジ、又はヒドロキシスチルバミジンを含むことができる。
【0025】
さらに、指示薬層は3,3’-ジアミノベンジジン、3,4ジアミノ安息香酸、ジクロロフェノールインドフェノール、N,N-ジメチル-p-フェニレンジアミン、o-ジアニシジン、4-クロロ-1-ナフトール、o-フェニレンジアミン、N-(4-アミノブチル)-N-エチルイソルミノール、3-アミノ-9-エチルカルバゾール、4-アミノフタルヒドラジド、5-アミノサリチル酸、2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)、インドキシル、インディゴ、Fast Blue RR、4-クロロ7-ニトロベンゾフラザンを含むことができる。
【0026】
さらに、指示薬層はアミノフェノール、アミノフェノールエーテル、中性染料、荷電染料、硫酸水素スルホニルエチル(sulfonyl ethyl hydrogen sulphate)反応基を含む反応染料、又はジクロロトリアジン系の反応染料を含むことができる。
【0027】
荷電染料は、レマゾールブリリアントブルーR、トルイジンブルー、リアクティブブラック5、リアクティブバイオレット5、及びリアクティブオレンジ16、又はそれらの加水分解又はアンモノリシス誘導体であり得る。
【0028】
ジクロロトリアジン系の反応染料は、リアクティブブルー4、リアクティブレッド10、リアクティブブルー2、リアクティブレッド120、リアクティブグリーン19、リアクティブブラウン10であり得る。ジクロロトリアジン系の反応染料は黒く見えることがある。
【0029】
指示薬層は、ナノ粒子又は金コロイド粒子を含むことができ、特定の分析物に反応するように機能化することができる。異なる比色又は蛍光指標試薬を含むナノ粒子又は金コロイド粒子を指示薬層に使用して、システムが複数の分析物を感知できるようにすることができる。
【0030】
上記のように、システムは指示薬層に加えて膜層を含む。膜層は、血餅及び細胞のデブリに対して不透過性であって、創傷液に対して透過性がある。膜層の厚さは、5μm~1.0mmで、孔径は5nm~50μmである。特定のシステムでは、膜層の厚さは0.1mm~0.6mmで、孔径は5μm~50μmである。特定のシステムでは、膜層の厚さは0.2mm~0.3mmで、孔径は20μm~30μmである。
【0031】
膜層は、生体液を試験アイテム、例えば創傷被覆材から、指示薬層に輸送するとともに、創傷被覆材内の血餅及び組織のデブリが指示薬層に直接接触することを防止するように設計されている。膜層はセルロース、ニトロセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセタート、セルロースアセタートブチラート、セルロースアセタートプロピオナート、セルロースニトラートナイロン、ナイロン、ビスコース、綿、レーヨン、ウール、シルク、(ポリ)ヒドロキシエチルメタクリラート、(ポリ)ヒドロキシプロピルメタクリラート、(ポリ)グリセロールメタクリラート、ヒドロキシエチルメタクリラート、ヒドロキシプロピルメタクリラート、又はグリセロールメタクリラートとメタクリル酸、アミノアクリラート及びアミノメタクリラートとの共重合体、ポリ4-ビニルピリジン、ポリビニルアセタート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタートとポリビニルアルコールの共重合体、ビニルアセタートとビニルクロリドのヒドロキシル修飾共重合体、ポリエステル及び少なくとも10重量%のポリエチレンオキシドを含むポリウレタン、スチレン、メタクリル酸/ヒドロキシエチルメタクリラート共重合体、メチルメタクリラート/メタクリル酸共重合体、エチルメタクリラート/スチレン/メタクリル酸共重合体、エチルメタクリラート/メチルメタクリラート/スチレン/メタクリル酸共重合体、及びポリテトラフルオロエチレンで形成することができる。特定のシステムでは、膜層はセルロース、ニトロセルロース、又はナイロンで形成される。
【0032】
このシステムには、指示薬層を覆う非多孔質の防水性の透明層も含まれる。透明層は、透明であり、透明層を通して比色又は蛍光指示試薬の色の変化を容易に視覚化することができる。透明層は、透明なプラスチック、ガラス、又はポリマーフィルムで形成できる。例えば、透明層は、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリビニルアルコール、セルロースアセタート、アクリル又はポリ(ビニルアセタート)ポリマー、ポリエチレンテレフタラート、ポリウレタン、ポリアクリラート、ポリカルボナート、エチレンビニルアセタート、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、又はこれらの材料の組み合わせであることができる。
【0033】
あるシステムでは、指示薬層は透明層と一体である。別のシステムでは、指示薬層は膜層と一体である。
指示薬層は、透明層又は膜層に1つ以上の指示薬を保持するために、接着剤によって透明層又は膜層と一体に形成することができる。使用できる接着剤には、アクリル系、エポキシ、ポリビニルアセタート、ポリウレタン、デキストリン、カゼイン、ラテックス、過酸化物、イソシアナート、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、アクリロニトリル、硝酸セルロース、ネオプレン系、ポリスルフィド、PVC、ゴム系の接着剤、シリコン系の接着剤、アルブミン接着剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0034】
特定のシステムでは、接着剤は中性pHのアクリル系接着剤である。別の特定のシステムでは、接着剤はポリビニルアセタートである。
代替的なシステムでは、透明層、指示薬層、及び膜層とともに、基層も含まれる。基層は非多孔性で防水性があり、使用中に創傷滲出液などのあらゆる液体がシステムから漏れるのを防止する。基層は、指示薬層の色の変化を容易に確認できるように、白又は明るい色である。
【0035】
基層は、硬質又は軟質であってもよく、例えばプラスチック、セラミック、アルミニウム、ナイロン、PVC、ポリ(ビニリデンフルオライド)、ポリ(ビニリデンクロリド)、フェノキシ樹脂、ブタジエン/スチレン共重合体、ブタジエン/メチルスチレン共重合体、ポリ(メタ)アクリラート、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(オキシ-2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)、ポリ(オキシカルボニルオキシ-1,4-1,4-フェニレンイソプロピリデン-1,4-フェニレン)、アクリロニトリルスチレン共重合体、アクリロニトリル/メチルアクリラート/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/スチレン-ブタジエン共重合体、ポリ-1-ビニルナフタレン、ポリビニルフェニルケトン、ポリ-pキシリレンドデカンジオアート(poly-p xylylenedodecanedioate)、ポリ-テトラメチレンオクテンジアミド、ポリ-(テトラメチレンテレフタレン)、ポリ-(トリメチレン3,3’-ジベンゾエート)、ポリ-(テレフタル酸無水物)、ポリ-(4-メチル-ジアミン)、ポリビニレンカルボナート、ポリビニルラウラート、ポリ(イソプロペニルアセタート)、ポリ(アリルベンゼン)、ポリ(ビニルブチルエーテル)、ポリビニルホルマート(polyvinyl formate)、ポリビニルフェニルエーテル、ポリノルボルネン、ポリカルボナート、疎水性ポリエステル及びポリウレタン、及びこれらの材料の混合物で形成される。例示的なシステムでは、基層はPVCである。
【0036】
3つの層、すなわち透明層、指示薬層、及び膜層を有するシステムの特定の例では、全ての層は、縁に沿って物理的に結合されている。特定の例では、透明層と膜層とは縁に沿って結合されているが、指示薬層はその縁まで延びていない。
【0037】
別例では、システムは4つの層、すなわち透明層、指示薬層、膜層、及び基層を備えており、それら全ては、縁に沿って物理的に結合されている。特定の配置では、透明層、膜層、及び基層は縁に沿って結合されているが、指示薬層はその縁まで延びていない。
【0038】
このシステムは、
図1Aを参照してさらに説明することができる。
図1Aは、創傷液を分析するためのシステム100を示す。システム100は、膜層102、透明層104、及び膜層102と透明層104との間の指示薬層103を含む。図に示す特定の構成では、透明層104と膜層102とは縁105に沿って結合されている。別の構成では、全ての層、すなわち透明層104、膜層102、及び指示薬層103は、縁105まで延びて、縁105に沿って結合されている。
【0039】
図1Bに示すシステム200も本発明の範囲に含まれる。このシステムは、基層201、膜層102、透明層104、及び膜層102と透明層104との間の指示薬層103を含む。図に示す構成では、基層201、透明層104、及び膜層102は、縁205に沿って結合されている。別の構成では、基層201、透明層104、膜層102、及び指示薬層103は縁205まで延びて、縁205に沿って結合されている。
【0040】
指示薬層103に目を向けると、この層は、上記のように、pH、亜硝酸塩、プロテアーゼ(例えばエステラーゼ)、活性酸素種、及び活性窒素種を比色又は蛍光で検出するための指示試薬を含む。システム100及びシステム200では、指示薬層103は、分離可能な別個の層であってもよいし、透明層104に一体化されていてもよいし、又は膜層102に一体化されていてもよい。例えば、指示試薬は、接着剤を用いて透明層104に取り付けられて、指示薬層103を形成することができる。別例では、指示試薬は、接着剤で膜層102に取り付けられる。代替的には、指示試薬は、透明層104又は膜層102のいずれか一方に化学的に架橋することができる。さらなる代替例では、指示試薬は膜層102に含浸され、物理的捕捉と静電力とによってその場に保持される。
【0041】
透明層104は、指示薬層103中の指示薬が流出されることを防止する保護層である。透明層は、透明であり、指示薬層103の染料の色の変化を視覚化することができる。透明層104は、創傷液が浸透しないように防水性でありかつ非多孔性でもあることにより、システム100,200の使用者に安全性を確保する。透明層104は、上記列挙した透明な材料で形成することができる。
【0042】
基層201に目を向けると、基層201は、システム200に機械的支持を設けるように設計されている。透明層104と同様に、基層201は、分析中の生体液の漏れ及び汚染を防止するために、防水性であり、かつ非多孔性である。上記のように、基層201は、指示薬層103における色の変化の視覚化を高めるために白色又は淡い色である。基層201を形成するために使用できる材料は、上記に説明されている。
【0043】
上記で詳細に説明したシステムは、創傷液を分析する方法に使用することができる。この方法は、指示薬層及び膜層を含むシステムを得る工程と、創傷浸出液を含浸させた創傷被覆材を得る工程と、創傷被覆材を膜層で覆う工程と、指示薬層を膜層に接触させる工程と、創傷浸出液が膜層を貫通して指示薬層に移動して創傷滲出液の成分、例えば生体分子が比色又は蛍光指標試薬と反応するように創傷被覆材をシステムとインキュベートする工程と、透明層を通して指示薬層の色の変化を視覚化する工程とによって、実施される。
【0044】
指示薬層の色の変化は、指示試薬と反応した創傷浸出液成分の創傷被覆材の元の部位に対応する部位に存在する。色の変化は、創傷のさまざまな領域におけるこれらの成分の量と部位とを反映する。このようにして、特定の属性、例えばアルカリ性pH、又は生体分子、例えばエステラーゼの創傷における特定の部位を示すマップが作成される。このようにして作成されたマップは、写真撮影又はデジタルスキャンによって保存することができる。
【0045】
乾燥した創傷被覆材を分析するために、特定の方法を実行することができる。この方法では、創傷被覆材を塩溶液で水和する工程を追加して、上記段落で説明した工程が実施される。
【0046】
塩溶液は、高いpH(pH7~11)を有する高いモル濃度(0.5~6M)の溶液である。塩溶液は、1~6MのNaCl、0.5~3.5MのKCl、3mM~3MのKI、1.7~17MのKH2PO4、9mM~9MのK2HPO3、0.3~3.5MのNa2CO3、又は0.5~4Mのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンであってよいがこれに限定されない。
【0047】
創傷被覆材の水和は、創傷被覆材を膜層で覆うのに先立ち、損傷被覆材に塩溶液を、例えば噴霧によって付着させることによって行うことができる。代替的には、創傷被覆材を覆うのに先立ち、塩溶液を膜層に付着させることができる。
【0048】
特定の方法では、使用されるシステムは透明層、膜層、及び指示薬層に加えて、基層を含む。全ての層は、1つの縁に沿って結合され得る。
上記システムは、生体医療器具及び廃棄物上の体液を検出する方法にも使用し得る。この方法は、指示薬層及び膜層を含むシステムを取得する工程と、生体液に接触した生体医療器具又は廃棄物を取得する工程と、生体医療器具又は廃棄物を膜層で覆う工程と、指示薬層を膜層に接触させる工程と、生体液が膜層を通って指示薬層に移動して比色又は蛍光指示試薬と反応するように、生体医療器具又は廃棄物をシステムとインキュベートする工程と、指示薬層の色の変化を視覚化する工程とによって実施される。
【0049】
指示薬層の色の変化は、生体医療器具又は廃棄物に存在する生体液の成分と接触して比色又は蛍光指示試薬と反応した部位に対応する部位に存在する。検出結果は、写真撮影、又はデジタルスキャンで保存することができる。
【0050】
さらに詳細に説明しなくとも、当業者であれば、本明細書の開示に基づいて本開示を最大限に利用できる。したがって、以下の特定の例は、単に説明的なものであり、いかなる意味においても本開示の残りの部分を限定するものではないと解釈されるべきである。
(実施例)
実施例1 非感染のブタの皮膚創傷の分析
システムの有効性を、ブタの皮膚の傷から新しく回収した綿ガーゼ被覆材で調べた。
【0051】
活発な治癒反応及び急性炎症反応を起こしている創傷は、酸性環境を有し、上記pH検出システムで検出することができた。一方、慢性的で治癒していない傷は、アルカリ性環境を示し、これも上記pH検出システムで検出することができた。
【0052】
筋膜からその下にある筋肉の表面まで全層の皮膚組織を除去することにより、動物に切除創を作製した。創傷を綿ガーゼ被覆材で覆い、綿ガーゼ被覆材は、創傷後1,3,5,7,14,21,及び28日目に交換した。新しく取り出したガーゼを、上記システムの2例を使用して創傷のpH及びエステラーゼ活性を調べた。
【0053】
使用した特定の2例は、ともに基層、膜層、指示薬層、及び透明層を有していた。基層及び透明層は、ともにポリエチレンテレフタラートを用いて形成されていた。膜層は、0.25mmの厚さと、20~35μmの孔径とを有するセルロースで形成されていた。
【0054】
pHの検出のために、システムは、10x10cm2のセルロース膜層にコートされた、5mgのイエローニトラジン(yellow nitrazine)を指示薬層として含んでいた。
【0055】
エステラーゼ活性を検出するために、システムは、10x10cm2セルロース膜上にコートされた指示薬層として1.4mMのN-トシル-L-アラニン3-インドキシルエステル及び10mMの1-ジアゾ-2-ナフトール-4-スルホン酸のエタノール溶液を使用した。
【0056】
創傷の2日後、ガーゼを回収して、pH検出試薬としてイエローニトラジンでコートされた上記膜層に対して最大10秒間検出システムに置いた。ガーゼ上の創傷浸出液のpHは約6の酸性であり、これは、治癒しつつある創傷に一般に見られる活発な炎症反応を示すものであった。
図2のパネルIIを参照のこと。
【0057】
次に、同一のガーゼをエステラーゼ検出システム上に最大10秒間置いて、感染が存在するか否かを調べた。その結果、エステラーゼ検出試薬を含む膜層に色の変化は見られず、感染していないことが示された。
図2のパネルIIIを参照のこと。
【0058】
創傷の作成から21日後、7日間留置したガーゼを傷から除去して、上記pH検出システム上に最大10秒間置いた。pH検出システムは、ガーゼ内の創傷液がアルカリ性(pH約8)であり、炎症活性が低いことを示した。同一のガーゼをエステラーゼ検出システムで調べたところ、低いエラスターゼ活性を示し、これは、感染が存在しないことと一致していた。
【0059】
実施例2 感染したブタの皮膚創傷の分析
感染した創傷からの組織液には、高レベルのエステラーゼ酵素活性が含まれており、エステラーゼ検出システムによって検出することができた。対照的に、非感染創傷からの液体にはエステラーゼ活性がほとんど又は全く含まれておらず、上記エステラーゼ検出システムで反応性がないことによって示された。
【0060】
実施例1に記載のように、ブタに全層皮膚創傷を作成した。これらの創傷は、綿ガーゼ被覆材を配置するのに先立ち、緑膿菌(アメリカンタイプカルチャーコレクション27853)の2000コロニー形成単位で処理した。実施例1と同様に、ガーゼは、1,3,5,7,14,21,28日目に交換した。
【0061】
創傷を形成して緑膿菌で感染させてから2日後に、感染した傷からガーゼを取り除いて、前の段落で説明したシステムの中に挿入した。ガーゼのpHは、酸性であって、pHは約6であった。これは、炎症反応が進行中であることを示していた。
図3のパネルIを参照のこと。同一のガーゼを、感染の有無を決定するエステラーゼ検出システム上に置いた。エステラーゼ検出試薬はガーゼの創傷滲出液に強く反応し、感染に対応する高いエステラーゼ活性を示した。
図3のパネルIIIを参照のこと。
【0062】
創傷の形成、及び感染から14日後、7日間留置していたガーゼを創傷から取り除いて、上記pH検出システム上に最大10秒間置いた。pH検出システムは、ガーゼ内の創傷液がアルカリ性(pH約8)であり、炎症活性が低いことを示していた。同一のガーゼをエステラーゼ検出システムで調べたところ、低いエステラーゼ活性を示し、感染が存在しないことと一致していた。
【0063】
実施例3 ヒトの治癒しつつある慢性皮膚創傷の分析
上記システムを使用して、ヒト患者の治癒の兆候を示す慢性皮膚創傷を分析した。pH感知システムに置いた創傷ガーゼは、酸性pHの黄色の領域を示した。これは、
図4のパネルIでは明るい領域として見え、暗青色アルカリ性を示す斑点が点在し、同図に暗い領域として視認される。
図4のパネルIを参照のこと。酸性パッチは、正常な炎症及び治癒活動を示す領域に対応し、アルカリ性パッチは、治癒が停止又は遅い領域に対応する。
【0064】
治癒し始めた同一の慢性創傷を、創傷被覆材をエステラーゼ検出システムに置くことにより、感染について調べた。結果は、色の変化を示さず、慢性創傷が感染していないことを表していた。
図4のパネルIIを参照のこと。
【0065】
実施例4 治癒していないヒトの皮膚創傷の分析
治癒していないヒト皮膚創傷から除去した創傷被覆材についても分析を行った。被覆材を創傷から除去して、上記pH検出システム上に置いた。結果は、被覆材全体で均一なアルカリ性を示し、創傷治癒過程に対応する炎症がないことと相関していた。
【0066】
同一の被覆材を、上記エステラーゼ検出システムでエステラーゼ活性について調べた。分析は、創傷内のエステラーゼ活性に起因する紫色の明確な領域を示し、感染部位を表していた。創傷の感染は、標準的な実験室で調べることにより確認された。
【0067】
実施例5 システムを通過する血液の移動防止
血液及び細胞のデブリが膜層を通過して指示薬層に入り込むのを防止する能力に関して、システムの膜層を調べた。膜層の片面は、実施例1で上述したように、pH指示薬層で被覆した。指示薬層で被覆した膜層の表面の反対側の表面に血まみれの創傷被覆材を付着させた。指示薬層は、創傷被覆材を膜表面に付着させてから10秒以内に暗青色に変わり、赤色の染色は示さなかった。この結果から、創傷浸出液は、被覆材から膜層を通過して指示薬層に移動するが、被覆材の血球は移動しないことが示された。対照的に、創傷被覆材に接触する膜層の表面は、被覆材からの血球によって赤色に染色された。
【0068】
実施例6 水和後の乾燥した創傷被覆材の分析
上記のように、システムは、水和溶液で創傷被覆材を水和することにより、乾燥した創傷被覆材に使用することができる。水和溶液は、乾燥した創傷液成分を溶解し、それらをシステムに転送可能にする。
【0069】
次の2つの水和溶液、pH10.6の6MのNaCl溶液及びpH10.6の4MのKCl溶液について、各溶液の200μLのサンプルをpH検出システムの膜層にスポットすることにより調べた。指示薬層に色の変化は見られず、いずれのサンプルもシステムで検出されなかった。
【0070】
ヒトの皮膚の傷から剥がしたばかりのガーゼをpH検出システムの膜層に置いたところ、色の変化は見られなかった。同一のガーゼをシステムから取り出して、pH10.6の4MのKCL溶液を噴霧して水和させ、膜層に戻した。指示薬層に水色が現れ、アルカリ性のpHを示した。
【0071】
ヒトの第2の乾燥した皮膚の傷から新たにガーゼを除去して、pH検出システムの膜層に置いたところ、指示薬層上にいくつかの大きく離れた青い斑点が見られた。ガーゼをシステムから取り外し、pH10.6の6MのNaCl溶液で噴霧して、システムに戻した。水和したガーゼは、広範囲に青色を示し、創傷内のアルカリ性環境であることを示した。
【0072】
実施例7 ブタの乾燥ガーゼにおけるpH検出
傷の作成後から17日後にブタの皮膚の傷からガーゼを除去して、風乾させた。乾燥したガーゼをpH検出システムに入れたところ、pH指示薬層の色に変化は生じなかった。pH10.6の4MのKCL溶液でガーゼを水和した後、ガーゼをシステムに戻した。水和ガーゼは、指示薬層に明青色を誘発した、アルカリ性の創傷液と一致していた。
【0073】
2回目のテストでは、17日間のブタの傷からガーゼを除去して、前の段落で説明したように乾燥させた。乾燥したガーゼをpH検出システムで調べたところ、pH指示薬層の色は変化しなかった。乾燥したガーゼに、pH10.6の4MのKCL溶液を噴霧して水和させた。水和したガーゼをシステムに戻したところ、明青色/黄色のパターンがシステムの指示薬層に現れ、酸性/アルカリ性が混在する創傷液であること、創傷に活発な炎症の領域があることを示した。
(別の実施形態)
本明細書に開示されたすべての特徴は、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書に開示された各機能は、同一、同等又は類似の目的を果たす代替機能に置き換え得る。したがって、特に明記しない限り、開示された各機能は、包括的な一連の同等又は類似の機能の単なる例である。
【0074】
上記説明から、当業者であれば、本発明の本質的な特徴を容易に理解することができ、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明を様々な用途及び条件に適合させるために様々な変更及び修正を加えることができる。したがって、別の実施形態もまた、特許請求の範囲内に含まれる。