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特許7484047積層セラミック電子部品の製造方法及び積層セラミック電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品の製造方法及び積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
H01G4/30 311F
H01G4/30 201K
H01G4/30 201N
H01G4/30 512
H01G4/30 517
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020011933
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021118302
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】田中 翔太
(72)【発明者】
【氏名】小林 譲二
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-106528(JP,A)
【文献】特開2017-147358(JP,A)
【文献】特開2016-001721(JP,A)
【文献】特開2019-016688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、前記複数のセラミック層の間に位置する複数の内部電極と、前記第1軸と直交する第2軸方向に対向し、前記複数の内部電極が露出する第1及び第2側面と、を有する積層体を用意し、
前記積層体の前記第1側面に第1サイドマージンシートを熱圧着し、
熱圧着された前記第1サイドマージンシートを前記積層体の前記第1側面で打ち抜くことによって第1サイドマージン部を形成し、
前記積層体の前記第2側面に、前記第1側面に形成された前記第1サイドマージン部よりも柔軟性が高い接着面を有するとともに、前記第1サイドマージンシートよりも柔軟性が高い第2サイドマージンシートを熱圧着し、
熱圧着された前記第2サイドマージンシートを前記積層体の前記第2側面で打ち抜くことによって第2サイドマージン部を形成する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記第2サイドマージンシートの熱圧着の前に、前記第1サイドマージン部の柔軟性を低下させる
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記第1及び第2サイドマージンシートセラミックシートを用いる
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記第2サイドマージンシートは、本体層と、前記本体層よりも柔軟性が高く、前記接着面を含む接着層と、を有する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記第1サイドマージンシート及び前記本体層に共通のセラミックシートを用いる
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項6】
第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、前記複数のセラミック層の間に位置する複数の内部電極と、前記第1軸と直交する第2軸方向に対向し、前記複数の内部電極の前記第2軸方向の端部が位置する第1及び第2側面と、を有する積層体と、
前記第1側面を被覆する単層構造の第1サイドマージン部と、
前記第2側面を被覆する複層構造の第2サイドマージン部と、
を具備する積層セラミック電子部品。
【請求項7】
請求項6に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記第2サイドマージン部は、本体層と、前記第2側面と前記本体層とを接着する接着層と、を有する
積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドマージン部を後付けする積層セラミック電子部品の製造方法及び積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサの製造過程においてサイドマージン部を後付けする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術は、薄いサイドマージン部によっても内部電極が露出した積層体の側面を確実に保護することができるため、積層セラミックコンデンサの小型化及び大容量化に有利である。
【0003】
一例として、特許文献1に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法では、内部電極が印刷されたセラミックシートを積層した積層シートを切断し、内部電極が露出した切断面を側面とする複数の積層体を作製する。そして、積層体の側面でセラミックシートを打ち抜くことにより、積層体の両側面にサイドマージン部を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-209539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の手法では、積層体の側面に対するサイドマージン部の接着性を高めるために、積層体の側面でセラミックシートを加熱しながら打ち抜いている。しかしながら、このような手法では、積層体の両側面における各サイドマージン部の厚みや接着性をそれぞれ制御することが難しい。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、打ち抜き法によって積層体の両側面にサイドマージン部を良好に形成可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法では、第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、上記複数のセラミック層の間に位置する複数の内部電極と、上記第1軸と直交する第2軸方向に対向し、上記複数の内部電極が露出する第1及び第2側面と、を有する積層体が用意される。
上記積層体の上記第1側面に第1サイドマージンシートが熱圧着される。
熱圧着された上記第1サイドマージンシートを上記積層体の上記第1側面で打ち抜くことによって第1サイドマージン部が形成される。
上記積層体の上記第2側面に、上記第1側面に形成された上記第1サイドマージン部よりも柔軟性が高い接着面を有する第2サイドマージンシートが熱圧着される。
熱圧着された上記第2サイドマージンシートを上記積層体の上記第2側面で打ち抜くことによって第2サイドマージン部が形成される。
【0008】
上記の製造過程において、第1サイドマージン部は、第1サイドマージンシートの第1熱圧着時に加え、第2サイドマージンシートの第2熱圧着時にも、加熱により変形しやすい状態で押圧力を受けることとなる。つまり、第1サイドマージン部には、2回の熱圧着の過程において、第2サイドマージン部より多くのエネルギが加わる。したがって、一般的な構成では、第1サイドマージン部に過剰なエネルギが加わることで、第1サイドマージン部における形状や物性の変化に起因する不良が発生しやすくなる。
この点、本発明の構成では、第2サイドマージンシートの接着面に高い柔軟性を持たせることにより、第2熱圧着の際に第2サイドマージンシートに加える熱及び押圧力を低減することができる。これにより、第2熱圧着において第1サイドマージン部に加わるエネルギが抑制されるため、第2熱圧着における第1サイドマージン部の形状や物性の変化を小さく留めることができる。
【0009】
上記第2サイドマージンシートは、上記第1サイドマージンシートよりも柔軟性が高くてもよい。
この構成では、柔軟性の異なる第1及び第2サイドマージンシートを用いることによって上記の構成を実現可能である。
【0010】
上記第2サイドマージンシートの熱圧着の前に、上記第1サイドマージン部の柔軟性を低下させてもよい。
上記第1及び第2サイドマージンシートに共通のセラミックシートを用いてもよい。
この構成では、第1及び第2サイドマージンシートの柔軟性を異ならせなくても、上記の構成を実現可能となる。
【0011】
上記第2サイドマージンシートは、本体層と、上記本体層よりも柔軟性が高く、上記接着面を含む接着層と、を有してもよい。
上記第1サイドマージンシート及び上記本体層に共通のセラミックシートを用いてもよい。
この構成では、接着層を用いることで、上記の構成を容易に実現可能となる。
【0012】
本発明の他の形態に係る積層セラミック電子部品は、第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、上記複数のセラミック層の間に位置する複数の内部電極と、上記第1軸と直交する第2軸方向に対向し、上記複数の内部電極の上記第2軸方向の端部が位置する第1及び第2側面と、を有する積層体と、上記第1側面を被覆する単層構造の第1サイドマージン部と、上記第2側面を被覆する複層構造の第2サイドマージン部と、を具備する。
上記第2サイドマージン部は、本体層と、上記第2側面と上記本体層とを接着する接着層と、を有してもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように、本発明によれば、打ち抜き法によって積層体の両側面にサイドマージン部を良好に形成可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。
図2】上記積層セラミックコンデンサの図1のA-A'線に沿った断面図である。
図3】上記積層セラミックコンデンサの図1のB-B'線に沿った断面図である。
図4】上記積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
図5】上記製造方法のセラミックシート準備工程で準備されるセラミックシートの平面図である。
図6】上記製造方法の積層工程を示す斜視図である。
図7】上記製造方法の切断工程を示す平面図である。
図8】上記切断工程を示す部分断面図である。
図9】上記製造方法のサイドマージン部形成工程で得られる未焼成のセラミック素体の斜視図である。
図10】上記サイドマージン部形成工程を示すフローチャートである。
図11】上記形成方法の第1熱圧着工程を示す部分断面図である。
図12】上記形成方法の第1打ち抜き工程を示す部分断面図である。
図13】上記形成方法の第2熱圧着工程を示す部分断面図である。
図14】一般的な手法でサイドマージン部が形成された未焼成のセラミック素体の断面図である。
図15】上記形成方法の第2打ち抜き工程を示す部分断面図である。
図16】本発明の第2の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの部分断面図である。
図17】上記積層セラミックコンデンサの製造方法の第2熱圧着工程を示す部分断面図である。
図18】上記積層セラミックコンデンサの製造方法の第2打ち抜き工程を示す部分断面図である。
図19】上記第2打ち抜き工程で得られる未焼成のセラミック素体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10について説明する。なお、図面には、適宜、相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は、積層セラミックコンデンサ10に対して固定された固定座標系を規定する。
【0016】
また、図面には、適宜、相互に直交するx軸、y軸、及びz軸が示されている。x軸、y軸、及びz軸は、上記のX軸、Y軸、及びZ軸とは異なり、実空間に対して固定された実空間座標系を規定する。x軸及びy軸は水平方向に延び、つまりx-y平面が水平面となる。z軸は、鉛直方向上下に延びる。
【0017】
<第1の実施形態>
[積層セラミックコンデンサ10の構成]
図1~3は、本発明の第1の実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。図2は、積層セラミックコンデンサ10の図1のA-A'線に沿った断面図である。図3は、積層セラミックコンデンサ10の図1のB-B'線に沿った断面図である。
【0018】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を備える。セラミック素体11は、X軸と直交する第1及び第2端面と、Y軸と直交する第1及び第2側面と、Z軸と直交する第1及び第2主面と、を有する6面体として構成される。
【0019】
セラミック素体11の第1及び第2端面、第1及び第2側面、及び第1及び第2主面はいずれも、平坦面として構成される。本実施形態に係る平坦面とは、全体的に見たときに平坦と認識される面であれば厳密に平面でなくてもよく、例えば、表面の微小な凹凸形状や、所定の範囲に存在する緩やかな湾曲形状などを有する面も含まれる。
【0020】
各外部電極14,15は、セラミック素体11の両端面を覆い、セラミック素体11を挟んでX軸方向に対向している。外部電極14,15は、セラミック素体11の各端面から主面及び側面に延出している。これにより、外部電極14,15では、X-Z平面に平行な断面、及びX-Y平面に平行な断面がいずれもU字状となっている。
【0021】
なお、外部電極14,15の形状は、図1に示すものに限定されない。例えば、外部電極14,15は、セラミック素体11の両端面から一方の主面のみに延び、X-Z平面に平行な断面がL字状となっていてもよい。また、外部電極14,15は、いずれの主面及び側面にも延出していなくてもよい。
【0022】
外部電極14,15は、電気の良導体により形成されている。外部電極14,15を形成する電気の良導体としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0023】
セラミック素体11は、誘電体セラミックスで形成され、積層体16と、第1及び第2サイドマージン部17a,17bと、を有する。積層体16は、Y軸方向に対向する第1及び第2側面S1,S2と、X軸方向に対向する第1及び第2端面と、Z軸方向に対向する第1及び第2主面と、を有する。
【0024】
積層体16は、X-Y平面に沿って延びる平板状の複数のセラミック層がZ軸方向に積層された構成を有する。積層体16は、容量形成部18と、カバー部19と、を有する。カバー部19は、容量形成部18をZ軸方向上下から被覆し、積層体16の第1及び第2主面を構成している。
【0025】
容量形成部18は、複数のセラミック層の間に配置され、X-Y平面に沿って延びるシート状の複数の第1及び第2内部電極12,13を有する。内部電極12,13は、Z軸方向に沿って交互に配置されている。つまり、内部電極12,13は、セラミック層を挟んでZ軸方向に対向している。
【0026】
第1内部電極12は、第1外部電極14に覆われた端面に引き出されている。一方、第2内部電極13は第2外部電極15に覆われた端面に引き出されている。これにより、第1内部電極12は第1外部電極14のみに接続され、第2内部電極13は第2外部電極15のみに接続されている。
【0027】
内部電極12,13は、容量形成部18のY軸方向の全幅にわたって形成され、積層体16の両側面S1,S2にそれぞれ露出している。つまり、セラミック素体11では、内部電極12,13のY軸方向の両端部が積層体16の両側面S1,S2にそれぞれ位置している。
【0028】
セラミック素体11では、第1サイドマージン部17aが積層体16の第1側面S1を覆い、第2サイドマージン部17bが積層体16の第2側面S2を覆っている。これにより、セラミック素体11では、積層体16の両側面S1,S2における内部電極12,13間の絶縁性を確保することができる。
【0029】
このような構成により、積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間に電圧が印加されると、第1内部電極12と第2内部電極13との間の複数のセラミック層に電圧が加わる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0030】
セラミック素体11では、内部電極12,13間の各セラミック層の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0031】
なお、セラミック層は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸カルシウム(CaTiO)、チタン酸マグネシウム(MgTiO)、ジルコン酸カルシウム(CaZrO)、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O)、ジルコン酸バリウム(BaZrO)、酸化チタン(TiO)などの組成系で構成してもよい。
【0032】
内部電極12,13は、電気の良導体により形成されている。内部電極12,13を形成する電気の良導体としては、典型的にはニッケル(Ni)が挙げられ、この他にも銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0033】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図4は、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。図5~9は積層セラミックコンデンサ10の製造過程を示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、図4に沿って、図5~9を適宜参照しながら説明する。
【0034】
(ステップS01:セラミックシート準備)
ステップS01では、容量形成部18を形成するための第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102と、カバー部19を形成するための第3セラミックシート103と、を準備する。セラミックシート101,102,103は、誘電体セラミックスを主成分とする未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。
【0035】
セラミックシート101,102,103は、例えば、ロールコーターやドクターブレードなどを用いてシート状に成形される。セラミックシート101,102の厚みは、焼成後の容量形成部18におけるセラミック層の厚みに応じて調整される。第3セラミックシート103の厚みは適宜調整可能である。
【0036】
図5は、セラミックシート101,102,103の平面図である。この段階では、セラミックシート101,102,103が、個片化されていない大判のシートとして構成される。図5には、各積層セラミックコンデンサ10ごとに個片化する際の切断線Lx,Lyが示されている。切断線LxはX軸に平行であり、切断線LyはY軸に平行である。
【0037】
図5に示すように、第1セラミックシート101には第1内部電極12に対応する未焼成の第1内部電極112が形成され、第2セラミックシート102には第2内部電極13に対応する未焼成の第2内部電極113が形成されている。なお、カバー部19に対応する第3セラミックシート103には内部電極が形成されていない。
【0038】
内部電極112,113は、任意の導電性ペーストをセラミックシート101,102に塗布することによって形成することができる。導電性ペーストの塗布方法は、公知の技術から任意に選択可能である。例えば、導電性ペーストの塗布には、スクリーン印刷法やグラビア印刷法を用いることができる。
【0039】
内部電極112,113には、切断線Lyに沿ったX軸方向の隙間が、切断線Ly1本置きに形成されている。第1内部電極112の隙間と第2内部電極113の隙間とはX軸方向に互い違いに配置されている。つまり、第1内部電極112の隙間を通る切断線Lyと第2内部電極113の隙間を通る切断線Lyとが交互に並んでいる。
【0040】
(ステップS02:積層)
ステップS02では、ステップS01で準備したセラミックシート101,102,103を、図6に示すように積層することにより積層シート104を作製する。積層シート104では、容量形成部18に対応する第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102がZ軸方向に交互に積層されている。
【0041】
また、積層シート104では、交互に積層されたセラミックシート101,102のZ軸方向上下面にカバー部19に対応する第3セラミックシート103が積層される。なお、図6に示す例では、第3セラミックシート103がそれぞれ3枚ずつ積層されているが、第3セラミックシート103の枚数は適宜変更可能である。
【0042】
積層シート104は、セラミックシート101,102,103を圧着することにより一体化される。セラミックシート101,102,103の圧着には、例えば、静水圧加圧や一軸加圧などを用いることが好ましい。これにより、積層シート104を高密度化することが可能である。
【0043】
(ステップS03:切断)
ステップS03では、ステップS02で得られた積層シート104を、切断線Lx,Lyに沿って切断することにより、未焼成の積層体116を作製する。積層体116は、焼成後の積層体16に対応する。積層シート104の切断には、例えば、押し切り刃や回転刃などを用いることができる。
【0044】
図7,8は、ステップS03の一例を説明するための模式図である。図7は、積層シート104の平面図である。図8は、積層シート104のY-Z平面に沿った断面図である。積層シート104は、例えば発泡剥離シートなどの粘着性のカットシートCによって保持された状態で、切断線Lx,Lyに沿って押し切り刃BLで切断される。
【0045】
まず、図8(A)に示すように、押し切り刃BLを積層シート104のZ軸方向上方に、先端をZ軸方向下方の積層シート104に向けて配置する。次に、図8(B)に示すように、押し切り刃BLをZ軸方向下方に、カットシートCに到達するまで移動させ、積層シート104を貫通させる。
【0046】
そして、図8(C)に示すように、押し切り刃BLをZ軸方向上方に向けて移動させることにより、積層シート104から引き抜く。これにより、積層シート104がX軸及びY軸方向に切り分けられ、Y軸方向に内部電極112,113が露出する第1及び第2側面S1,S2を有する積層体116が形成される。
【0047】
(ステップS04:サイドマージン部形成)
ステップS04では、ステップS03で得られた積層体116に未焼成の第1及び第2サイドマージン部117a,117bを設ける。これにより、図9に示すように、内部電極112,113が露出した側面S1,S2がサイドマージン部117a,117bによって覆われた未焼成のセラミック素体111が得られる。
【0048】
本実施形態に係るステップS04は、積層体116の第1及び第2側面S1,S2に対して第1及び第2サイドマージン部117a,117bを両方とも良好に形成可能なように構成されている。ステップS04における第1及び第2サイドマージン部117a,117bの形成方法の詳細については後述する。
【0049】
(ステップS05:焼成)
ステップS05では、ステップS04で得られた図9に示すセラミック素体111を焼成することにより、図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11を作製する。つまり、ステップS05によって、積層体116が積層体16になり、サイドマージン部117a,117bがサイドマージン部17a,17bになる。
【0050】
ステップS05における焼成温度は、セラミック素体111の焼結温度に基づいて決定することができる。例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系材料を用いる場合には、焼成温度は1000~1300℃程度とすることができる。また、焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0051】
(ステップS06:外部電極形成)
ステップS06では、ステップS05で得られたセラミック素体11のX軸方向両端部に外部電極14,15を形成することにより、図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10を作製する。ステップS06における外部電極14,15の形成方法は、公知の方法から任意に選択可能である。
【0052】
以上により、積層セラミックコンデンサ10が完成する。この製造方法では、内部電極112,113が露出した積層体116の側面S1,S2にサイドマージン部117a,117bが形成されるため、セラミック素体11における複数の内部電極12,13のY軸方向の端部の位置が、0.5μm以内の範囲で揃う。
【0053】
[サイドマージン部117a,117bの形成方法]
図10は、上記のステップS04におけるサイドマージン部117a,117bの形成方法を示すフローチャートである。図11~15はサイドマージン部117a,117bの形成方法を説明するための図である。以下、サイドマージン部117a,117bの形成方法について、図10に沿って、図11~15を適宜参照しながら説明する。
【0054】
(ステップS41:積層体向き変更)
ステップS41では、ステップS03後の複数の積層体116の向きを変更する。つまり、図8(C)に示すステップS03の直後の状態では、相互に隣接する積層体116の側面S1,S2がY軸方向に近接して対向しているため、各積層体116の側面S1,S2にサイドマージン部117を形成することが困難である。このため、ステップS41では、複数の積層体116の向きを、側面S1,S2が鉛直方向上下に向くように変更する。
【0055】
複数の積層体116の側面S1,S2の向きを変更する方法としては、例えば、転動法などの公知の方法を用いることができる。転動法では、まず積層体116をカットシートCから伸長性を有する第1粘着シートF1に貼り変え、第1粘着シートF1を伸長させることにより、積層体116の間隔を広げる。
【0056】
そして、複数の積層体116を第1粘着シートF1上において転動させる。このとき、例えば転動盤などを用いることによって、すべての積層体116を一括して転動させることができる。これにより、積層体116が90°回転し、側面S1,S2をそれぞれz軸方向上方及び下方を向けることができる(図11(A)参照)。
【0057】
より詳細に、ステップS41後の複数の積層体116ではいずれも、z軸方向下方を向いた第2側面S2が第1粘着シートF1に保持され、第1側面S1がz軸方向上方を向いている。これにより、すべての積層体116におけるz軸方向上方を向いた第1側面S1について一括して第1サイドマージン部117aを形成可能となる。
【0058】
(ステップS42:第1熱圧着)
ステップS42では、ステップS41においてz軸方向上方に向けられた複数の積層体116の第1側面S1に、第1サイドマージン部117aを構成する第1サイドマージンシート117s1を熱圧着する。図11(A)~(C)は、ステップS42における第1熱圧着の過程を示す図である。
【0059】
まず、図11(A)に示すように、第1粘着シートF1のz軸方向下面を、保持部材Hのz軸方向上面で保持する。そして、複数の積層体116の第1側面S1上に、これらを一括して被覆可能なようにx-y平面に沿って延びる一連の第1サイドマージンシート117s1を配置する。
【0060】
第1サイドマージンシート117s1は、未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。第1サイドマージンシート117s1の構成は、積層体116の形成のためにステップS01で準備されるセラミックシート101,102,103の構成と同様であっても異なっていてもよい。
【0061】
保持部材Hは、x-y平面に沿って延びる剛体である平板状であり、例えばステンレスやアルミニウムなどの一般的に剛体に分類される材料で形成することができる。なお、保持部材Hは、第1粘着シートF1を直接保持していなくてもよく、例えば離型シートなどの他のシートを介して第1粘着シートF1を保持していてもよい。
【0062】
また、第1サイドマージンシート117s1のz軸方向上方には、x-y平面に沿って延びる平板状の第1押圧部材E1が配置される。第1押圧部材E1は、弾性変形可能な材料で形成される。第1押圧部材E1を形成する材料としては、例えば、各種ゴムや各種エラストマーなどから任意に選択することができる。
【0063】
第1押圧部材E1は、押圧時に第1サイドマージンシート117s1に対して熱を加えるために、例えば内部に設けられたヒータなどによって、z軸方向下面を加熱可能に構成される。第1押圧部材E1のz軸方向下面の温度は、第1サイドマージンシート117s1の転移点以上とすることが好ましい。
【0064】
次に、図11(B)に示すように、第1押圧部材E1をz軸方向下方に移動させ、第1押圧部材E1によって第1サイドマージンシート117s1にz軸方向下方への押圧力を加える。このとき、第1サイドマージンシート117s1は、熱によって軟化した状態で各積層体116の第1側面S1に押し付けられる。
【0065】
これにより、第1サイドマージンシート117s1は、各積層体116の第1側面S1に対し、微細な凹凸形状に合わせて柔軟に変形することで密着する。したがって、第1サイドマージンシート117s1では、各積層体116の第1側面S1に対する高い接着性が得られる。
【0066】
そして、図11(C)に示すように、第1押圧部材E1をz軸方向上方に移動させる。これにより、第1押圧部材E1が第1サイドマージンシート117s1から離間し、第1サイドマージンシート117s1が各積層体116の第1側面S1に密着した状態で保持される。
【0067】
(ステップS43:第1打ち抜き)
ステップS43では、ステップS42で熱圧着された第1サイドマージンシート117s1を各積層体116の第1側面S1で打ち抜く。図12(A)~(C)は、ステップS43における第1打ち抜きの過程を示す図である。
【0068】
まず、図12(A)に示すように、第1粘着シートF1のz軸方向下面を保持部材Hで保持する。また、第1サイドマージンシート117s1のz軸方向上方には、x-y平面に沿って延びる平板状の第2押圧部材E2が配置される。第2押圧部材E2は、弾性変形可能な材料で形成される。
【0069】
第2押圧部材E2は、良好な打ち抜き性を得るために、熱圧着のために用いる第1押圧部材E1よりも高い柔軟性が求められる。このため、第2押圧部材E2を形成する材料としては、例えば、各種ゴムや各種エラストマーなどから柔軟性が高いものを任意に選択することができる。
【0070】
次に、図12(B)に示すように、第2押圧部材E2をz軸方向下方に第1サイドマージンシート117s1に接触するまで移動させ、更に第2押圧部材E2で第1サイドマージンシート117s1をz軸方向下方に押し込む。
【0071】
このとき、第2押圧部材E2は、複数の積層体116の間の空間に食い込むことにより、第1サイドマージンシート117s1における積層体116の第1側面S1に保持されていない領域をz軸方向下方に押し下げる。これにより、第1サイドマージンシート117s1は、z軸方向に加わるせん断力によって、各積層体116の第1側面S1の輪郭に沿って切断される。
【0072】
そして、図12(C)に示すように、第2押圧部材E2をz軸方向上方に移動させることにより、第2押圧部材E2を第1サイドマージンシート117s1から離間させる。このとき、各積層体116の第1側面S1上に残った第1サイドマージンシート117s1が第1サイドマージン部117aとなる。複数の積層体116の間の空間に残った第1サイドマージンシート117s1は除去する。
【0073】
ステップS43では、第1サイドマージンシート117s1に熱を加えずに、ステップS42よりも低い温度に保持することで、第1サイドマージンシート117s1を打ち抜くために充分なせん断力が得られやすくなる。なお、ステップS43では、せん断力を更に有効に得るために、第1サイドマージンシート117s1を冷却してもよい。
【0074】
(ステップS44:転写)
ステップS44では、ステップS43で第1サイドマージン部117aが形成された複数の積層体116を第1粘着シートF1から第2粘着シートF2に転写する。具体的に、ステップS43後の状態から、まず、複数の積層体116の第1側面S1に形成された第1サイドマージン部117aに第2粘着シートF2を貼り付ける。
【0075】
次に、第1及び第2粘着シートF1,F2に挟まれた状態の第1サイドマージン部117aが形成された複数の積層体116をz軸方向上下に反転させる。そして、第1粘着シートF1を複数の積層体116の第2側面S2から剥離させる。これにより、複数の積層体116ではいずれも、第2側面S2がz軸方向上方を向く(図13(A)参照)。
【0076】
(ステップS45:第2熱圧着)
ステップS45では、ステップS44においてz軸方向上方に向けられた各積層体116の第2側面S2に、第2サイドマージン部117bを構成する第2サイドマージンシート117s2を熱圧着する。図13(A)~(C)は、ステップS45における第2熱圧着の過程を示す図である。
【0077】
まず、図13(A)に示すように、第2粘着シートF2のz軸方向下面を、保持部材Hのz軸方向上面で保持する。そして、複数の積層体116の第2側面S2上に、これらを一括して被覆可能なようにx-y平面に沿って延びる一連の第2サイドマージンシート117s2を配置する。
【0078】
第2サイドマージンシート117s2は、第1サイドマージンシート117s1よりも柔軟性が高い。したがって、第2サイドマージンシート117s2では、複数の積層体116の第2側面S2に接着されるz軸方向下方を向いた接着面Pが第1サイドマージン部117aよりも高い柔軟性を有する。
【0079】
第1及び第2サイドマージンシート117s1,117s2の柔軟性はヤング率で比較することができる。つまり、第2サイドマージンシート117s2では、接着面Pで測定されるヤング率が、第1サイドマージンシート117s1のz軸方向上面又は下面で測定されるヤング率よりも小さい。
【0080】
また、第2サイドマージンシート117s2のz軸方向上方には、第1押圧部材E1が配置される。なお、ステップS45の第2熱圧着で用いる第1押圧部材E1は、ステップS42の第1熱圧着で用いる第1押圧部材E1と同一でなくてもよく、第2サイドマージンシート117s2の物性や第2熱圧着の条件などに応じたものを適宜選択することができる。
【0081】
次に、図13(B)に示すように、第1押圧部材E1をz軸方向下方に移動させ、第1押圧部材E1によって熱を加えながら第2サイドマージンシート117s2にz軸方向下方への押圧力を加える。このとき、第2サイドマージンシート117s2は、熱によって軟化した状態で各積層体116の第2側面S2に押し付けられる。
【0082】
ステップS45の第2熱圧着では、第2サイドマージン部117bのみならず第1サイドマージン部117aにも熱及び押圧力が加わる。つまり、第1サイドマージン部117aには、第1サイドマージンシート117s1の段階におけるステップS43の第1熱圧着を含めて2回にわたって熱及び押圧力が加わる。
【0083】
これにより、一般的な構成では、図14に示す不良が発生しやすくなる。つまり、図14(A)に示すように、第1サイドマージン部117aが過度に変形することにより、サイドマージン部117a,117bの厚みに大きい差異が生じることがある。また、図14(B)に示すように、熱による物性の変化によって第1サイドマージン部117aの積層体116の第1側面S1に対する接着性が損なわれ、第1サイドマージン部117aが積層体116の第1側面S1から剥離することがある。
【0084】
これに対し、本実施形態では、第2サイドマージンシート117s2の柔軟性が、第1サイドマージンシート117s1よりも高い。このため、ステップS45の第2熱圧着では、ステップS42の第1熱圧着よりも低いエネルギで、第2サイドマージンシート117s2の接着面Pを積層体116の第2側面S2に密着させることができる。
【0085】
つまり、ステップS45では、第2サイドマージンシート117s2に加える熱及び押圧力を低減することができる。これにより、ステップS45において第1サイドマージン部117aに加わる熱及び押圧力が低減されるため、ステップS45における第1サイドマージン部117aの変形量を小さく留めることができる。
【0086】
また、ステップS45では、第2サイドマージンシート117s2に加える熱を低減することにより、第1サイドマージン部117aの熱による物性の変化を抑制することができる。これにより、ステップS45において第1サイドマージン部117aの積層体116の第1側面S1に対する接着性が良好に維持される。
【0087】
そして、図13(C)に示すように、第1押圧部材E1をz軸方向上方に移動させる。これにより、第1押圧部材E1が第2サイドマージンシート117s2から離間し、第2サイドマージンシート117s2が各積層体116の第2側面S2に密着した状態で保持される。
【0088】
(ステップS46:第2打ち抜き)
ステップS46では、ステップS45で熱圧着された第2サイドマージンシート117s2を複数の積層体116の第2側面S2で打ち抜く。図15(A)~(C)は、ステップS46における第2打ち抜きの過程を示す図である。ステップS46の第2打ち抜きは、ステップS43の第1打ち抜きと同様の要領で実施可能である。
【0089】
まず、図15(A)に示すように、第2粘着シートF2のz軸方向下面を保持部材Hで保持し、第2サイドマージンシート117s2のz軸方向上方に第2押圧部材E2を配置する。次に、図15(B)に示すように、第2押圧部材E2をz軸方向下方に移動させ、各積層体116の第2側面S2で第2サイドマージンシート117s2を打ち抜く。
【0090】
なお、ステップS46の第2打ち抜きで用いる第2押圧部材E2は、ステップS43の第1打ち抜きで用いる第2押圧部材E2と同一でなくてもよく、第2サイドマージンシート117s2の物性や第2打ち抜きの条件に応じたものを適宜選択することができる。
【0091】
そして、図15(C)に示すように、第2押圧部材E2をz軸方向上方に移動させることにより、第2押圧部材E2を第2サイドマージンシート117s2から離間させる。このとき、各積層体116の第2側面S2上に残った第2サイドマージンシート117s2が第2サイドマージン部117bとなる。複数の積層体116の間の空間に残った第2サイドマージンシート117s2は除去する。
【0092】
これにより、複数の積層体116の第1及び第2側面S1,S2に第1及び第2サイドマージン部117a,117bが形成され、図9に示す未焼成のセラミック素体111が得られる。以上により、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の製造方法におけるサイドマージン部形成工程が完了する。
【0093】
(変形例)
第2サイドマージンシート117s2は、ステップS45の第2熱圧着の時点で第1サイドマージン部117aよりも柔軟性が高ければよく、第1サイドマージンシート117s1よりも柔軟性が高くなくてもよい。つまり、本変形例では、各サイドマージンシート117s1,117s2をそれぞれ任意に選択可能である。
【0094】
このため、本変形例では、例えば、サイドマージンシート117s1,117s2として、共通のセラミックシートを用いることができる。これにより、サイドマージンシート117s1,117s2を低コストで作製可能となるため、積層セラミックコンデンサ10の製造コストを低減することができる。
【0095】
この場合、ステップS45の第2熱圧着よりも前に、第1サイドマージン部117aの柔軟性を低下させる必要がある。第1サイドマージン部117aの柔軟性を低下させるためには、例えば、加熱によって第1サイドマージン部117a中の有機成分(溶剤やバインダなど)を蒸発させることができる。
【0096】
第1サイドマージン部117aの柔軟性を低下させるタイミングは、ステップS45より前であれば任意に選択可能であり、例えば、ステップS43の第1打ち抜き後であってもよく、またステップS43の第1打ち抜きより前の第1サイドマージンシート117s1の段階であってもよい。
【0097】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10について説明する。図16は、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の断面図である。なお、本実施形態では、第1の実施形態と対応する構成には同様の符号を付し、第1の実施形態と同様の構成についての説明を適宜省略する。
【0098】
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10は、第1サイドマージン部17aと第2サイドマージン部17bとが相互に異なる構成を有する点で第1の実施形態と異なる。具体的に、積層セラミックコンデンサ10では、第1サイドマージン部17aが単層構造を有し、第2サイドマージン部17bが複層構造を有する。
【0099】
第2サイドマージン部17bは、相互に異なるセラミックシートで形成された本体層Mと接着層mとを含む。第2サイドマージン部17bでは、本体層Mが主要な機能を果たす本体として構成される。接着層mは、本体層Mと積層体16の第2側面S2との間に位置し、本体層Mと積層体16の第2側面S2とを接着している。
【0100】
第2サイドマージン部17bには、低いエネルギで積層体16の第2側面S2に対する充分な接着性が得られるように接着層mが設けられる。これにより、第2サイドマージン部17bでは、積層体16の第2側面S2に直接接触しない本体層Mを構成するセラミックシートを任意に選択することが可能となる。
【0101】
したがって、本実施形態では、例えば、第2サイドマージン部17bの本体層Mを、第1サイドマージン部17aと共通のセラミックシートを用いて形成することができる。これにより、サイドマージン部117a,117bを低コストで形成可能となるため、積層セラミックコンデンサ10の製造コストを低減することができる。
【0102】
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の製造方法は、ステップS04(サイドマージン部形成工程)が第1の実施形態と異なる。本実施形態に係るステップS04では、第1サイドマージンシート117s1と、本体層M及び接着層mを含む第2サイドマージンシート117s2と、を用いる。
【0103】
本実施形態に係るステップS41~S44は、第1の実施形態と同様である。つまり、ステップS41で積層体116の向きを変更した後に、ステップS42,43で第1サイドマージンシート117s1を用いて第1サイドマージン部117aを形成し、ステップS44で積層体116を転写する。
【0104】
図17(A)~(C)は、本実施形態に係るステップS45における第2熱圧着の過程を示す図である。ステップS45では、まず、図17(A)に示すように、複数の積層体116の第2側面S2上に、第2サイドマージンシート117s2を、接着層mが第2側面S2と接するように配置する。
【0105】
第2サイドマージンシート117s2では、接着層mが、本体層M及び第1サイドマージンシート117s1よりも高い柔軟性を有する。つまり、本実施形態に係る第2サイドマージンシート117s2では、柔軟性の高い接着層mのz軸方向下面が、積層体116の第2側面S2に対する接着面Pとなる。
【0106】
次に、図17(B)に示すように、第1押圧部材E1をz軸方向下方に移動させ、第1押圧部材E1によって熱を加えながら第2サイドマージンシート117s2にz軸方向下方への押圧力を加える。これにより、第2サイドマージンシート117s2の接着層mが、熱によって軟化した状態で各積層体116の第2側面S2に密着する。
【0107】
本実施形態では、接着層mを含む第2サイドマージンシート117s2の第2熱圧着を、接着層mを含まない第1サイドマージンシート117s1の第1熱圧着よりも低いエネルギで行うことができる。これにより、本実施形態に係るステップS45では、第1サイドマージン部117aに加わる熱及び押圧力を低減することができる。
【0108】
そして、図17(C)に示すように、第1押圧部材E1をz軸方向上方に移動させる。これにより、第1押圧部材E1が第2サイドマージンシート117s2から離間し、第2サイドマージンシート117s2の接着層mが各積層体116の第2側面S2に密着した状態で保持される。
【0109】
図18(A)~(C)は、本実施形態に係るステップS46における第2打ち抜きの過程を示す図である。ステップS46では、まず、図18(A)に示すように、第2粘着シートF2のz軸方向下面を保持部材Hで保持し、第2サイドマージンシート117s2の本体層M上に第2押圧部材E2を配置する。
【0110】
次に、図18(B)に示すように、第2押圧部材E2をz軸方向下方に移動させ、第2サイドマージンシート117s2をz軸方向下方に押し下げる。これにより、サイドマージンシート117s2に加わるせん断力によって、各積層体116の第2側面S2で本体層M及び接着層mが同時に打ち抜かれる。
【0111】
そして、図18(C)に示すように、第2押圧部材E2をz軸方向上方に移動させることにより、第2押圧部材E2を第2サイドマージンシート117s2から離間させる。このとき、各積層体116の第2側面S2上に残った第2サイドマージンシート117s2が第2サイドマージン部117bとなる。
【0112】
これにより、複数の積層体116の第1及び第2側面S1,S2に第1及び第2サイドマージン部117a,117bが形成され、図19に示す未焼成のセラミック素体111が得られる。以上により、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の製造方法におけるサイドマージン部形成工程が完了する。
【0113】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0114】
例えば、上記実施形態では積層セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサ10の製造方法について説明したが、本発明の製造方法は積層セラミック電子部品全般に適用可能である。このような積層セラミック電子部品としては、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0115】
10…積層セラミックコンデンサ
11…セラミック素体
12,13…内部電極
14,15…外部電極
16…積層体
17a,17b…サイドマージン部
18…容量形成部
19…カバー部
111…セラミック素体
112,113…内部電極
116…積層体
117a,117b…サイドマージン部
117s1,117s2…サイドマージンシート
S1,S2…側面
P…接着面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19