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特許7484048固体酸化物型燃料電池およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】固体酸化物型燃料電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1213 20160101AFI20240509BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20240509BHJP
   H01M 8/1226 20160101ALI20240509BHJP
   H01M 8/124 20160101ALI20240509BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20240509BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20240509BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H01M8/1213
H01M8/12 101
H01M8/1226
H01M8/124
H01M4/86 U
H01M4/86 T
H01M4/88 T
H01M4/90 X
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020040846
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021144794
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】李 新宇
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-502113(JP,A)
【文献】特表2019-517098(JP,A)
【文献】特開2017-033799(JP,A)
【文献】特開2008-300269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86- 4/98
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子伝導性セラミックスおよび酸化物イオン伝導性セラミックスを含む電極骨格を有し、当該電極骨格にアノード触媒を有するアノードと、
前記アノード上に設けられ、酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物を含む電解質層と、
前記電解質層上に設けられ、電子伝導性セラミックスおよび酸化物イオン伝導性セラミックスを含む電極骨格を有し、当該電極骨格にカソード触媒を有するカソードと、を備え
前記アノードの電極骨格および前記カソードの電極骨格において、前記電子伝導性セラミックスは、組成式がABO で表されるペロブスカイト型酸化物であってAがCa、Sr、Ba、Laの群から選ばれる少なくとも1種であり、Bが少なくともCrを含むペロブスカイト型酸化物であることを特徴とする固体酸化物型燃料電池。
【請求項2】
前記カソード触媒は、Prの酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項3】
前記Prの酸化物の平均粒径は、100nm以下であることを特徴とする請求項2に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項4】
前記アノードの電極骨格および前記カソードの電極骨格における空隙率は、20%以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項5】
前記アノードおよび前記カソードの厚みは、1μm以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項6】
前記アノードの電極骨格および前記カソードの電極骨格において、前記電子伝導性セラミックスと前記酸化物イオン伝導性セラミックスとの断面積比は、1:3~3:1であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項7】
金属を主成分とする支持体を備え、
前記アノードは、前記支持体上に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項8】
前記支持体と前記アノードとの間に設けられた混合層を備え、
前記混合層は、金属材料とセラミックス材料とが混合された構造を有することを特徴とする請求項7に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項9】
電子伝導性セラミックス材料粉末および酸化物イオン伝導性セラミックス材料粉末を含むアノードグリーンシートと、酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物材料粉末を含む電解質グリーンシートと、電子伝導性セラミックス材料粉末および酸化物イオン伝導性セラミックス材料粉末を含むカソードグリーンシートと、が積層された積層体を準備する工程と、
前記積層体を焼成する工程と、を含むことを特徴とする固体酸化物型燃料電池の製造方法。
【請求項10】
前記カソードグリーンシートを焼成することによって得られた電極骨格に対して、カソード触媒を含浸させる工程を含むことを特徴とする請求項9に記載の固体酸化物型燃料電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物型燃料電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アノードおよびカソードの電極骨格をセラミックスで構成した固体酸化物型燃料電池が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2004-512651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アノードとカソードとの間に構造の相違があることに起因して、カソードを除くハーフセルを先に焼成し、その後にカソードを印刷して焼成することがある。しかしながら、この場合、ハーフセルとカソードとの間に高い密着性を得ることが困難であるため、カソードに剥がれが生じ、燃料電池全体のオーム抵抗が高くなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、アノードとカソードとを同時に焼成することができる固体酸化物型燃料電池およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る固体酸化物型燃料電池は、電子伝導性セラミックスおよび酸化物イオン伝導性セラミックスを含む電極骨格を有し、当該電極骨格にアノード触媒を有するアノードと、前記アノード上に設けられ、酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物を含む電解質層と、前記電解質層上に設けられ、電子伝導性セラミックスおよび酸化物イオン伝導性セラミックスを含む電極骨格を有し、当該電極骨格にカソード触媒を有するカソードと、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記固体酸化物型燃料電池において、前記カソード触媒は、Prの酸化物としてもよい。
【0008】
上記固体酸化物型燃料電池において、前記Prの酸化物の平均粒径は、100nm以下としてもよい。
【0009】
上記固体酸化物型燃料電池において、前記アノードの電極骨格および前記カソードの電極骨格における空隙率は、20%以上としてもよい。
【0010】
上記固体酸化物型燃料電池において、前記アノードおよび前記カソードの厚みは、1μm以上としてもよい。
【0011】
上記固体酸化物型燃料電池において、前記アノードの電極骨格および前記カソードの電極骨格において、前記電子伝導性セラミックスと前記酸化物イオン伝導性セラミックスとの断面積比は、1:3~3:1としてもよい。
【0012】
上記固体酸化物型燃料電池において、前記アノードの電極骨格および前記カソードの電極骨格において、前記電子伝導性セラミックスは、組成式がABOで表されるペロブスカイト型酸化物であってAがCa、Sr、Ba、Laの群から選ばれる少なくとも1種であり、Bが少なくともCrを含むペロブスカイト型酸化物としてもよい。
【0013】
上記固体酸化物型燃料電池において、金属を主成分とする支持体を備え、前記アノードは、前記支持体上に設けられていてもよい。
【0014】
上記固体酸化物型燃料電池において、前記支持体と前記アノードとの間に設けられた混合層を備え、前記混合層は、金属材料とセラミックス材料とが混合された構造を有していてもよい。
【0015】
本発明に係る固体酸化物型燃料電池の製造方法は、電子伝導性セラミックス材料粉末および酸化物イオン伝導性セラミックス材料粉末を含むアノードグリーンシートと、酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物材料粉末を含む電解質グリーンシートと、電子伝導性セラミックス材料粉末および酸化物イオン伝導性セラミックス材料粉末を含むカソードグリーンシートと、が積層された積層体を準備する工程と、前記積層体を焼成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0016】
上記固体酸化物型燃料電池の製造方法において、前記カソードグリーンシートを焼成することによって得られた電極骨格に対して、カソード触媒を含浸させる工程を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アノードとカソードとを同時に焼成することができる固体酸化物型燃料電池およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】固体酸化物型の燃料電池の積層構造を例示する模式的断面図である。
図2】支持体、混合層、アノード、およびカソードの詳細を例示する拡大断面図である。
図3】SEM像を模式的に描いた図である。
図4】燃料電池の製造方法のフローを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0020】
図1は、固体酸化物型の燃料電池100の積層構造を例示する模式的断面図である。図1で例示するように、燃料電池100は、一例として、支持体10上に、混合層20、アノード30、電解質層40、およびカソード50がこの順に積層された構造を有する。複数の燃料電池100を積層させて、燃料電池スタックを構成してもよい。
【0021】
電解質層40は、酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物を主成分とし、ガス不透過性を有する緻密層である。電解質層40は、スカンジア・イットリア安定化酸化ジルコニウム(ScYSZ)などを主成分とすることが好ましい。Y+Scの濃度は6mol%~15mol%の間で酸化物イオン伝導性が最も高く、この組成の材料を用いることが望ましい。また、電解質層40の厚みは、20μm以下であることが好ましく、より望ましいのは10μm以下である。電解質は薄いほど良いが、両側のガスが漏れないように製造するためには、1μm以上の厚みが望ましい。
【0022】
図2は、支持体10、混合層20、アノード30、およびカソード50の詳細を例示する拡大断面図である。支持体10は、ガス透過性を有するとともに、混合層20、アノード30、電解質層40、およびカソード50を支持可能な部材である。支持体10は、金属多孔体であり、例えば、Fe-Cr合金の多孔体などである。
【0023】
アノード30は、アノードとしての電極活性を有する電極であり、セラミックス材料の電極骨格を有する。電極骨格には、金属成分が含まれていない。この構成では、高温還元雰囲気での焼成時に、金属成分の粗大化によるアノードの空隙率の低下が抑制される。また、支持体10の金属成分との合金化が抑制され、触媒機能低下が抑制される。
【0024】
アノード30の電極骨格は、電子伝導性および酸化物イオン伝導性を有している。アノード30は、電子伝導性セラミックス31を含有している。電子伝導性セラミックス31として、例えば、組成式がABOで表されるペロブスカイト型酸化物であって、AサイトがCa、Sr、Ba、Laの群から選ばれる少なくとも1種であり、BサイトがTi、Crから選ばれる少なくとも1種であるペロブスカイト型酸化物を用いることができる。AサイトとBサイトのモル比は、B≧Aであってもよい。具体的には、電子伝導性セラミックス31として、LaCrO系材料、SrTiO系材料などを用いることができる。
【0025】
また、アノード30の電極骨格は、酸化物イオン伝導性セラミックス32を含有している。酸化物イオン伝導性セラミックス32は、ScYSZなどである。例えば、スカンジア(Sc)が5mol%~16mol%で、イットリア(Y)が1mol%~3mol%の組成範囲を有するScYSZを用いることが好ましい。スカンジアとイットリアの添加量が合わせて6mol%~15mol%となるScYSZがさらに好ましい。この組成範囲で、酸化物イオン伝導性が最も高くなるからである。なお、酸化物イオン伝導性セラミックス32は、例えば、酸化物イオンの輸率が99%以上の材料である。酸化物イオン伝導性セラミックス32として、GDCなどを用いてもよい。図2の例では、酸化物イオン伝導性セラミックス32として、電解質層40に含まれる固体酸化物と同じ固体酸化物を用いている。
【0026】
図2で例示するように、アノード30において、例えば、電子伝導性セラミックス31と酸化物イオン伝導性セラミックス32とが電極骨格を形成している。この電極骨格によって、複数の空隙が形成される。空隙部分の電極骨格の表面には、アノード触媒が担持されている。したがって、空間的に連続して形成されている電極骨格において、複数のアノード触媒が空間的に分散して配置されている。アノード触媒として、複合触媒を用いることが好ましい。例えば、複合触媒として、酸化物イオン伝導性セラミックス33と、触媒金属34とが、電極骨格の表面に担持されていることが好ましい。酸化物イオン伝導性セラミックス33として、例えば、YがドープされたBaCe1-xZr(BCZY、x=0~1)、YがドープされたSrCe1-xZr(SCZY、x=0~1)、SrがドープされたLaScO(LSS)、GDCなどを用いることができる。触媒金属34として、Niなどを用いることができる。酸化物イオン伝導性セラミックス33は、酸化物イオン伝導性セラミックス32と同じ組成を有していてもよいが、異なる組成を有していてもよい。なお、触媒金属34として機能する金属は、未発電時には化合物の形態をとっていてもよい。例えば、Niは、NiO(酸化ニッケル)の形態をとっていてもよい。これらの化合物は、発電時には、アノード30に供給される還元性の燃料ガスによって還元され、アノード触媒として機能する金属の形態をとるようになる。
【0027】
混合層20は、金属材料21とセラミックス材料22とを含有する。混合層20において、金属材料21とセラミックス材料22とがランダムに混合されている。したがって、金属材料21の層とセラミックス材料22の層とが積層されたような構造が形成されているわけではない。混合層20においても、複数の空隙が形成されている。金属材料21は、金属であれば特に限定されるものではない。図2の例では、金属材料21として、支持体10と同じ金属材料が用いられている。セラミックス材料22として、電子伝導性セラミックス31、酸化物イオン伝導性セラミックス32などを用いることができる。例えば、セラミックス材料22として、ScYSZ、GDC、SrTiO系材料、LaCrO系材料などを用いることができる。SrTiO系材料およびLaCrO系材料は高い電子伝導性を有するため、混合層20におけるオーム抵抗を小さくすることができる。
【0028】
カソード50は、カソードとしての電極活性を有する電極であり、セラミックス材料の電極骨格を有する。電極骨格には、金属成分が含まれていない。カソード50の電極骨格は、電子伝導性および酸化物イオン伝導性を有している。カソード50は、電子伝導性セラミックス51を含有している。電子伝導性セラミックス51として、例えば、組成式がABOで表されるペロブスカイト型酸化物であって、AサイトがCa、Sr、Ba、Laの群から選ばれる少なくとも1種であり、BサイトがTi、Crから選ばれる少なくとも1種であるペロブスカイト型酸化物を用いることができる。AサイトとBサイトのモル比は、B≧Aであってもよい。具体的には、電子伝導性セラミックス51として、LaCrO系材料、SrTiO系材料などを用いることができる。電子伝導性セラミックス51は、電子伝導性セラミックス31と同じ成分を含んでいることが好ましく、同じ組成比率を有していることが好ましい。
【0029】
また、カソード50の電極骨格は、酸化物イオン伝導性セラミックス52を含有している。酸化物イオン伝導性セラミックス52は、ScYSZなどである。例えば、スカンジア(Sc)が5mol%~16mol%で、イットリア(Y)が1mol%~3mol%の組成範囲を有するScYSZを用いることが好ましい。スカンジアとイットリアの添加量が合わせて6mol%~15mol%となるScYSZがさらに好ましい。この組成範囲で、酸化物イオン伝導性が最も高くなるからである。なお、酸化物イオン伝導性セラミックス52は、例えば、酸化物イオンの輸率が99%以上の材料である。酸化物イオン伝導性セラミックス52として、GDCなどを用いてもよい。酸化物イオン伝導性セラミックス52は、酸化物イオン伝導性セラミックス32と同じ成分を含んでいることが好ましく、同じ組成比率を有していることが好ましい。図2の例では、酸化物イオン伝導性セラミックス52として、電解質層40に含まれる固体酸化物と同じ固体酸化物を用いている。
【0030】
図2で例示するように、カソード50において、例えば、電子伝導性セラミックス51と酸化物イオン伝導性セラミックス52とが電極骨格を形成している。この電極骨格によって、複数の空隙が形成される。空隙部分の電極骨格の表面には、カソード触媒53が担持されている。したがって、空間的に連続して形成されている電極骨格において、複数のカソード触媒53が空間的に分散して配置されている。カソード触媒53として、酸化プラセオジム(PrO)などを用いることができる。
【0031】
燃料電池100は、以下の作用によって発電する。カソード50には、空気などの、酸素を含有する酸化剤ガスが供給される。カソード50においては、カソード50に到達した酸素と、外部電気回路から供給される電子とが反応して酸化物イオンになる。酸化物イオンは、電解質層40を伝導してアノード30側に移動する。一方、支持体10には、水素ガス、改質ガスなどの、水素を含有する燃料ガスが供給される。燃料ガスは、支持体10および混合層20を介してアノード30に到達する。アノード30に到達した水素は、アノード30において電子を放出するとともに、カソード50側から電解質層40を伝導してくる酸化物イオンと反応して水(HO)になる。放出された電子は、外部電気回路によって外部に取り出される。外部に取り出された電子は、電気的な仕事をした後に、カソード50に供給される。以上の作用によって、発電が行われる。
【0032】
以上の発電反応において、触媒金属34は、水素と酸化物イオンとの反応における触媒として機能する。電子伝導性セラミックス31は、水素と酸化物イオンとの反応によって得られる電子の伝導を担う。酸化物イオン伝導性セラミックス32は、電解質層40からアノード30に到達した酸化物イオンの伝導を担う。カソード触媒53は、酸素ガスと電子とから酸化物イオンが生成される反応における触媒として機能する。電子伝導性セラミックス51は、外部電気回路からの電子の伝導を担う。酸化物イオン伝導性セラミックス52は、電解質層40への酸化物イオンの伝導を担う。
【0033】
本実施形態に係る燃料電池100によれば、アノード30およびカソード50の両方とも、電子伝導性セラミックスと酸素イオン伝導性セラミックスとによって電極骨格が形成されている。この構成においては、アノード30とカソード50との間における構造上の相違が小さくなる。それにより、アノード30とカソード50とを同時に焼成できるようになる。その結果、電解質層40に対するアノード30およびカソード50の密着性が向上し、膜剥がれが抑制され、燃料電池100全体のオーム抵抗が低減される。
【0034】
また、燃料電池100は、金属を主成分とする支持体10を備えることから、熱衝撃、機械的衝撃等に強い構成を有している。また、混合層20は、金属材料21とセラミックス材料22とを含有することから、金属の材料性質とセラミックスの材料性質とを併せ持つ。したがって、混合層20は、支持体10との間に高い密着性を有するとともに、アノード30との間に高い密着性を有する。以上のことから、支持体10とアノード30との間の層間剥がれを抑制することができる。
【0035】
また、燃料電池100においては、アノード30の電極骨格に酸化物イオン伝導性セラミックス33が担持されている。この構造では、先に電極骨格を焼成によって形成し、その後に酸化物イオン伝導性セラミックス33を含浸させて低温で焼成することが可能となる。したがって、酸化物イオン伝導性セラミックス32と酸化物イオン伝導性セラミックス33とが同じ組成を有していなくても、酸化物間反応が抑制される。したがって、酸化物イオン伝導性セラミックス33として、複合触媒に適した酸化物を選択する自由度が大きくなる。
【0036】
同様に、燃料電池100においては、カソード50の電極骨格にカソード触媒53が担持されている。この構造では、先に電極骨格を焼成によって形成し、その後にカソード触媒53を含浸させて低温で焼成することが可能となる。したがって、酸化物イオン伝導性セラミックス52とカソード触媒53とが同じ組成を有していなくても、酸化物間反応が抑制される。したがって、カソード触媒53として、好ましい酸化物を選択する自由度が大きくなる。
【0037】
カソード触媒53にPrOを用いる場合、PrOの平均粒径が大きいと、カソード骨格との接触面積が小さくなり、反応抵抗が増大し、発電特性が悪くなるといった不具合が生じるおそれがある。そこで、PrOの平均粒径に上限を設けることが好ましい。本実施形態においては、例えば、PrOの平均粒径は、500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。PrOの平均粒径は、電極の断面SEM像から50個以上のPrO粒子の粒径を計測し、平均値を計算するようにして算出することができる。
【0038】
アノード30の電極骨格およびカソード50の電極骨格において、空隙率が低いと、十分なガス透過性が得られないおそれがある。そこで、アノード30の電極骨格およびカソード50の電極骨格において、空隙率に下限を設けることが好ましい。本実施形態においては、例えば、アノード30の電極骨格およびカソード50の電極骨格における空隙率は、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。空隙率は、アノード全体の厚みがとらえられる倍率で三か所以上の試料断面SEM像(例えば、図3)に基づき、見積った空隙の面積と全体の面積の比によって計算した平均値である。
【0039】
アノード30の電極骨格およびカソード50の電極骨格において、空隙率が高いと、電子伝導およびイオン電導パスの数は少なくなり、つまりアノード30およびカソード50における反応が行う場所は少なくなるおそれがある。そこで、アノード30の電極骨格およびカソード50の電極骨格において、空隙率に上限を設けることが好ましい。本実施形態においては、例えば、アノード30の電極骨格およびカソード50の電極骨格における空隙率は、80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、60%以下であることがさらに好ましい。
【0040】
アノード30およびカソード50が薄いと、反応に寄与する三相界面の数は少なくなるおそれがある。そこで、アノード30およびカソード50の厚みに下限を設けることが好ましい。例えば、アノード30およびカソード50は、1μm以上の厚みを有していることが好ましく、5μm以上の厚みを有していることがより好ましく、10μm以上の厚みを有していることがさらに好ましい。
【0041】
一方、アノード30およびカソード50が必要以上に厚いと、電極のオーム抵抗が増大し、発電特性が悪くなるおそれがある。そこで、アノード30およびカソード50の厚みに上限を設けることが好ましい。例えば、アノード30およびカソード50は、50μm以下の厚みを有していることが好ましく、30μm以下の厚みを有していることがより好ましく、20μm以下の厚みを有していることがさらに好ましい。
【0042】
燃料電池100が良好な発電性能を実現するためには、アノード30の電極骨格およびカソード50の電極骨格の断面において、電子伝導パスおよびイオン伝導パスの面積に適切なバランスが取れていることが好ましい。例えば、アノード30の電極骨格の断面において、電子伝導性セラミックス31と酸化物イオン伝導性セラミックス32と断面積比は、1:3~3:1であることが好ましい。また、カソード50の電極骨格の断面において、電子伝導性セラミックス51と酸化物イオン伝導性セラミックス52との断面積比は、1:3~3:1であることが好ましい。断面積比は、SEM-EDSの断面から算出することができる。
【0043】
また、支持体10における空隙率、混合層20における空隙率、アノード30における空隙率との間には、(支持体10>混合層20>アノード30)の関係が成立することが好ましい。この関係が成立することで、支持体10においては十分なガス透過性が得られる。アノード30は、比較的低い空隙率を有することによって、ガス透過性を保ちつつ、高い電子伝導性と高い酸化物イオン伝導性が得られる。混合層20では、ガス透過性が得られるとともに、支持体10との接触面積が得られて支持体10との密着性が得られるようになる。
【0044】
電子伝導性セラミックス31および電子伝導性セラミックス51は、組成式がABOで表されるペロブスカイト型酸化物であって、AサイトがCa、Sr、Ba、Laの群から選ばれる少なくとも1種であり、Bサイトが少なくともCrを含むペロブスカイト型酸化物であることが好ましい。この場合、アノード30およびカソード50は強還元雰囲気で安定して焼成することができる。
【0045】
なお、本実施形態によれば、電解質層40とカソード50との間に、電解質層40とカソード50との反応を防止するための反応防止層を設けなくてもよい。電解質層40がScYSZを含有し、カソードがLSCを含有する場合には、反応防止層は、以下の反応を防止する。
Sr+ZrO→SrZrO
La+ZrO→LaZr
しかしながら、本実施形態においてLSCより安定な材料である電子伝導性セラミックス51を用いたため、上記の反応が進行しないため、反応防止層は不要である。それにより、燃料電池100全体のオーム抵抗を抑制することができる。
【0046】
以下、燃料電池100の製造方法について説明する。図4は、燃料電池100の製造方法のフローを例示する図である。
【0047】
(支持体用材料の作製工程)
支持体用材料として、金属粉末(例えば、粒径が10μm~100μm)、可塑剤(例えば、シートの密着性を調整するため、1wt%~6wt%まで調整)、溶剤(トルエン、2-プロパノール(IPA)、1-ブタノール、ターピネオール、酢酸ブチル、エタノールなどで、粘度に応じて20wt%~30wt%)、消失材(有機物)、バインダ(PVB、アクリル樹脂、エチルセルロースなど)を混合してスラリとする。支持体用材料は、支持体10を形成するための材料として用いる。有機成分(消失材、バインダ固形分、可塑剤)と金属粉末との体積比は、例えば1:1~20:1の範囲とし、空隙率に応じて有機成分量を調整する。
【0048】
(混合層用材料の作製工程)
混合層用材料として、セラミックス材料22の原料であるセラミックス材料粉末(例えば、粒径が100nm~10μm)、金属材料21の原料である小粒径の金属材料粉末(例えば、粒径が1μm~10μm)、溶剤(トルエン、2-プロパノール(IPA)、1-ブタノール、ターピネオール、酢酸ブチル、エタノールなどで、粘度に応じて20wt%~30wt%)、可塑剤(例えば、シートの密着性を調整するため、1wt%~6wt%まで調整)、消失材(有機物)、およびバインダ(PVB、アクリル樹脂、エチルセルロースなど)を混合してスラリとする。有機成分(消失材、バインダ固形分、可塑剤)と、セラミックス材料粉末および金属材料粉末と、の体積比は、例えば1:1~5:1の範囲とし、空隙率に応じて有機成分量を調整する。また、空隙の孔径は、消失材の粒径を調整することによって制御される。セラミックス材料粉末は、電子伝導性材料粉末と酸化物イオン伝導性材料粉末とを含んでいてもよい。この場合、電子伝導性材料粉末と酸化物イオン伝導性材料粉末との体積比率は、例えば、1:9~9:1の範囲とすることが好ましい。また、電子伝導性材料の代わりに電解質材料ScYSZ、GDCなどを用いても界面のはがれが無く、セルの作製が可能である。ただし、オーム抵抗を小さくする観点から、電子伝導性材料と金属粉末とを混合することが好ましい。
【0049】
(アノード用材料の作製工程)
アノード用材料として、電極骨格を構成するセラミックス材料粉末、溶剤(トルエン、2-プロパノール(IPA)、1-ブタノール、ターピネオール、酢酸ブチル、エタノールなどで、粘度に応じて20wt%~30wt%)、可塑剤(例えば、シートの密着性を調整するため、1wt%~6wt%まで調整)、消失材(有機物)、およびバインダ(PVB、アクリル樹脂、エチルセルロースなど)を混合してスラリとする。電極骨格を構成するセラミックス材料粉末として、電子伝導性セラミックス31の原料である電子伝導性材料粉末(例えば、粒径が100nm~10μm)、酸化物イオン伝導性セラミックス32の原料である酸化物イオン伝導性材料粉末(例えば、粒径が100nm~10μm)などを用いてもよい。有機成分(消失材、バインダ固形分、可塑剤)と電子伝導性材料粉末との体積比は、例えば1:1~5:1の範囲とし、空隙率に応じて有機成分量を調整する。また、空隙の孔径は、消失材の粒径を調整することによって制御される。電子伝導性材料粉末と酸化物イオン伝導性材料粉末との体積比率は、例えば、3:7~7:3の範囲とする。
【0050】
(カソード用材料の作製工程)
カソード用材料として、電極骨格を構成するセラミックス材料粉末、溶剤(トルエン、2-プロパノール(IPA)、1-ブタノール、ターピネオール、酢酸ブチル、エタノールなどで、粘度に応じて20wt%~30wt%)、可塑剤(例えば、シートの密着性を調整するため、1wt%~6wt%まで調整)、消失材(有機物)、およびバインダ(PVB、アクリル樹脂、エチルセルロースなど)を混合してスラリとする。電極骨格を構成するセラミックス材料粉末として、電子伝導性セラミックス51の原料である電子伝導性材料粉末(例えば、粒径が100nm~10μm)、酸化物イオン伝導性セラミックス52の原料である酸化物イオン伝導性材料粉末(例えば、粒径が100nm~10μm)などを用いてもよい。有機成分(消失材、バインダ固形分、可塑剤)と電子伝導性材料粉末との体積比は、例えば1:1~5:1の範囲とし、空隙率に応じて有機成分量を調整する。また、空隙の孔径は、消失材の粒径を調整することによって制御される。電子伝導性材料粉末と酸化物イオン伝導性材料粉末との体積比率は、例えば、3:7~7:3の範囲とする。なお、アノード用材料とカソード用材料とが共通する場合には、アノード用材料をカソード用材料として用いてもよい。
【0051】
(電解質層用材料の作製工程)
電解質層用材料として、酸化物イオン伝導性材料粉末(例えば、ScYSZ、YSZ、GDCなどであって、粒径が10nm~1000nm)、溶剤(トルエン、2-プロパノール(IPA)、1-ブタノール、ターピネオール、酢酸ブチル、エタノールなどで、粘度に応じて20wt%~30wt%)、可塑剤(例えば、シートの密着性を調整するため、1wt%~6wt%まで調整)、およびバインダ(PVB、アクリル樹脂、エチルセルロースなど)を混合してスラリとする。有機成分(バインダ固形分、可塑剤)と酸化物イオン伝導性材料粉末との体積比は、例えば6:4~3:4の範囲とする。
【0052】
(焼成工程)
まず、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に、支持体用材料を塗工することで、支持体グリーンシートを作製する。別のPETフィルム上に、混合層用材料を塗工することで、混合層グリーンシートを作製する。別のPETフィルム上に、アノード用材料を塗工することで、アノードグリーンシートを作製する。別のPETフィルム上に、電解質層用材料を塗工することで、電解質層グリーンシートを作製する。別のPETフィルム上にカソード用材料を塗工することで、カソードグリーンシートを作製する。例えば、支持体グリーンシートを複数枚、混合層グリーンシートを1枚、アノードグリーンシートを1枚、電解質層グリーンシートを1枚、カソードグリーンシートを1枚の順に積層し、所定の大きさにカットし、酸素分圧が10-16atm以下の還元雰囲気において1100℃~1300℃程度の温度範囲で焼成する。それにより、支持体10、混合層20、アノード30の電極骨格、電解質層40、およびカソード50の電極骨格を備えるセルを得ることができる。炉内に流す還元ガスは、H(水素)を不燃ガス(Ar(アルゴン)、He(ヘリウム)、N(窒素)など)で希釈したガスであってもよく、Hが100%のガスであってもよい。安全を考慮して、爆発限界までの上限を設けることが好ましい。例えば、HとArの混合ガスの場合には、Hの濃度は4体積%以下であることが好ましい。
【0053】
(アノード含浸工程)
次に、酸化物イオン伝導性セラミックス33および触媒金属34の原料を、アノード30の電極骨格内に含浸させる。例えば、還元雰囲気で所定の温度で焼成するとGdドープセリアあるいはSc,YドープジルコニアとNiが生成するように、Zr、Y、Sc、Ce、Gd、Niの各硝酸塩または塩化物を水またはアルコール類(エタノール、2-プロパノール、メタノールなど)に溶かし、アノード30の電極骨格内に含浸、乾燥させ、熱処理を必要回数繰り返す。
【0054】
(カソード含浸工程)
次に、PrOなどのカソード触媒53をカソード50の電極骨格内に含浸させる。例えば、Prの硝酸塩または塩化物を水またはアルコール類(エタノール、2-プロパノール、メタノールなど)に溶かし、カソード50の電極骨格内に含浸、乾燥させ、熱処理を必要回数繰り返す。以上の工程により、燃料電池100を作製することができる。
【0055】
本実施形態に係る製造方法によれば、アノード30およびカソード50を焼成する際に、両方とも電子伝導性材料および酸化物イオン伝導性材料を用いているため、アノード30の電極骨格とカソード50の電極骨格との間の構造上の相違が小さくなる。それにより、アノード30とカソード50とを同時に焼成できるようになる。その結果、電解質層40に対するアノード30およびカソード50の密着性が向上し、膜剥がれが抑制され、燃料電池100全体のオーム抵抗が低減される。
【0056】
また、混合層用材料に金属材料とセラミックス材料とが含まれていることから、焼成後の混合層20は、金属材料21とセラミックス材料22とを含有するようになる。それにより、混合層20は、金属の材料性質とセラミックスの材料性質とを併せ持つ。したがって、焼成工程の際に、支持体10とアノード30との間の層間剥がれを抑制することができる。
【0057】
支持体10における空隙率、混合層20における空隙率、アノード30における空隙率との間に、(支持体10>混合層20>アノード30)の関係が成立するように、支持体用材料、混合層用材料、およびアノード用材料における消失材の量を調整することが好ましい。この関係が成立することで、支持体10においては十分なガス透過性が得られる。アノード30は、緻密になって高い酸化物イオン伝導性が得られる。混合層20では、ガス透過性が得られるとともに、支持体10との接触面積が得られて支持体10との密着性が得られるようになる。
【0058】
また、本実施形態に係る製造方法では、先に電極骨格を焼成によって形成し、その後に複合触媒を含浸させて低温(例えば、850℃以下)で焼成することが可能である。したがって、アノード30の電極骨格とアノード触媒との反応が抑制される。また、カソード50の電極骨格とカソード触媒との反応が抑制される。したがって、アノード触媒およびカソード触媒を選択する自由度が大きくなる。
【実施例
【0059】
上記実施形態に係る製造方法に従って、燃料電池100を作製した。
【0060】
(実施例1)
支持体用材料として、SUS(ステンレス)の粉末を用いた。電解質層として、ScYSZを用いた。アノードの電子伝導性セラミックスにLaCrO系材料を用いて、酸化物イオン伝導性セラミックスにはScYSZを用いた。カソードの電子伝導性セラミックスにLaCrO系材料を用いて、酸化物イオン伝導性セラミックスにはScYSZを用いた。混合層のセラミックス材料には、LaCrO系材料を用いた。混合層の金属材料には、SUSを用いた。支持体グリーンシート上に、混合層グリーンシート、アノードグリーンシート、電解質層グリーンシート、およびカソードグリーンシートを積層し、所定の大きさにカットし、酸素分圧が10-16atm以下の還元雰囲気下で焼成した。GDCおよびNiをアノードの電極骨格に含浸させた後に大気雰囲気下で850℃以下の温度にて焼成した。カソードの電極骨格に硝酸Prの溶液含浸させた後、700℃の大気雰囲気で焼成することによって、カソード触媒としてPrOを導入した。焼成後のPrOの平均粒径は、100nmであった。アノードおよびカソードの電極骨格における空隙率は、50%であった。アノードおよびカソードの厚みは、10μmであった。アノードおよびカソードの電極骨格において、電子伝導性セラミックスと酸化物イオン伝導性セラミックスとの断面積比は、1:1であった。
【0061】
(実施例2)
アノードの電子伝導性セラミックスおよびカソードの電子伝導性セラミックスにLaTiO系材料を用いた。その他の条件は、実施例1と同様とした。焼成後のPrOの平均粒径は、100nmであった。アノードおよびカソードの電極骨格における空隙率は、50%であった。アノードおよびカソードの厚みは、10μmであった。アノードおよびカソードの電極骨格において、電子伝導性セラミックスと酸化物イオン伝導性セラミックスとの断面積比は、1:1であった。
【0062】
(比較例1)
実施例1と同様の支持体グリーンシート、混合層グリーンシート、アノードグリーンシートを用いた。支持体グリーンシート上に、混合層グリーンシート、アノードグリーンシート、電解質グリーンシートを積層し、所定の大きさにカットし、酸素分圧が10-16atm以下の還元雰囲気下で焼成した。GDCおよびNiをアノードの電極骨格に含浸させた後に大気雰囲気下で850℃以下の温度にて焼成した。電解質層上に、反応防止層として、PVDにより、Ce0.8Gd0.22-xを成膜し、その後にLa0.8Sr0.2CoOを印刷して空気雰囲気で800℃にて焼成した。
【0063】
(比較例2)
カソード用の材料として、Pr11を用いた。カソードの焼成後にカソード触媒は含浸させなかった。その他の条件は、実施例1と同様とした。焼成後のPrOの平均粒径は、500nmであった。アノードおよびカソードの電極骨格における空隙率は、50%であった。アノードおよびカソードの厚みは、5μmであった。アノードの電極骨格において、電子伝導性セラミックスと酸化物イオン伝導性セラミックスとの断面積比は、1:1であった。
【0064】
(発電評価)
実施例1,2および比較例1,2の燃料電池に対してインピーダンス測定を行うことで、各抵抗値を分離し、燃料電池全体のオーム抵抗およびカソードの反応抵抗を測定した。結果を表1に示す。
【表1】
【0065】
実施例1では、オーム抵抗は0.25Ω・cmであった。また、実施例2でも、オーム抵抗は0.25Ω・cmであった。このように、実施例1および実施例2では、オーム抵抗が低くなった。これは、アノードおよびカソードの両方とも電子伝導性セラミックスおよび酸化物イオン伝導性セラミックスを含む電極骨格を有していることから同時に焼成することが可能であり、その結果として膜剥がれなどが抑制されたからであると考えられる。
【0066】
また、実施例1では、カソードにおける反応抵抗は0.27Ω・cmであった。実施例2では、カソードにおける反応抵抗は0.27Ω・cmであった。このように、実施例1および実施例2では、カソードにおける反応抵抗が低くなった。これも、カソードの膜剥がれなどが抑制されたからであると考えられる。
【0067】
一方、比較例1では、オーム抵抗は0.43Ω・cmであり、カソードにおける反応抵抗は1.23Ω・cmであった。このように、比較例1では、オーム抵抗も反応抵抗も高くなった。そこで、発電後のセルの表面を光学顕微鏡で確認したところ、カソードの表面にひび割れが確認され、大面積の剥がれが見られる。剥がれたカソードの下を確認したところ、光沢を示した電解質が見られ、電解質との密着性がよくないことが分かった。更に、断面をSEMで観察した結果、カソードと電解質層との間において、一部の界面に剥がれが生じたことも確認できた。カソードの焼成温度が低いため、カソード層と電解質層との密着性が悪く、発電後に層間剥離が発生したものと考えられる。また、層間剥離の影響で発電特性のオーム抵抗および反応抵抗が増大したものと考えられる。
【0068】
比較例2では、オーム抵抗は2.3Ω・cmであり、カソードにおける反応抵抗は5.1Ω・cmであった。このように、比較例2では、オーム抵抗も反応抵抗も大幅に高くなった。発電後のセルの断面をSEMで観察した結果、PrO材料と電解質層とは反応しなかったことが確認できた。しかしながら、PrO系材料の電子伝導性およびイオン伝導性が低く、この材料のみを用いた場合に電子伝導パスとイオン伝導パスが十分に形成できないため、オーム抵抗と反応抵抗両方とも大きい値を示したものと考えられる。
【0069】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 支持体
20 混合層
21 金属材料
22 セラミックス材料
30 アノード
31 電子伝導性セラミックス
32 酸化物イオン伝導性セラミックス
33 酸化物イオン伝導性セラミックス
34 触媒金属
40 電解質層
50 カソード
51 電子伝導性セラミックス
52 酸化物イオン伝導性セラミックス
53 カソード触媒
100 燃料電池
図1
図2
図3
図4