(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】除細動器
(51)【国際特許分類】
A61N 1/39 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
A61N1/39
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021181048
(22)【出願日】2021-11-05
(62)【分割の表示】P 2018516053の分割
【原出願日】2017-01-13
【審査請求日】2021-12-02
(32)【優先日】2016-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504242032
【氏名又は名称】ゾール メディカル コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】ZOLL Medical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザイダ、ナヴィード
(72)【発明者】
【氏名】ゲヘブ、フレデリック ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】タン、チン
(72)【発明者】
【氏名】フリーマン、グレイ エー.
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-519448(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0213775(US,A1)
【文献】国際公開第2015/101911(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0094625(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0202100(US,A1)
【文献】特表2012-502670(JP,A)
【文献】国際公開第2014/141080(WO,A1)
【文献】特表2015-514500(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0352369(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0147471(US,A1)
【文献】特表2019-501678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
除細動器であって、
除細動ショックを患者に施すための1または複数のキャパシタと、
前記患者の心電図(ECG)を取得するための少なくとも1つのセンサから、信号を受信するための1または複数の電子ポートと、
1または複数の処理デバイス上で動作を実行するように構成された患者治療回路と、
を備え、
前記1または複数の処理デバイスは、
ECG信号を表わすデータを受信し、
前記患者への胸骨圧迫の供給を検出し、
前記胸骨圧迫の供給の最中に前記ECG信号を処理して、前記ECG信号が表すECGリズムがショック適応またはショック非適応であるかの第1の決定を生成し、
前記患者への前記胸骨圧迫の前記供給の一時停止を検出し、
前記胸骨圧迫の前記供給の前記一時停止の最中に前記ECG信号を処理して、前記ECG信号が表す前記ECGリズムがショック適応またはショック非適応であるかの第2の決定を生成し、
前記第1の決定と前記第2の決定とが一致するかどうかを判定し、
前記第1の決定と前記第2の決定とが一致するかどうかの前記判定に基づいて、前記ECGリズムがショック適応またはショック非適応であるかの最終決定を生成し、
前記除細動器が、前記最終決定に基づく出力を提供するように構成された出力回路を更に備え、
前記胸骨圧迫の前記供給の前記一時停止の最中に前記ECG信号を処理して、前記ECGリズムがショック適応またはショック非適応であるかの前記第2の決定を生成することは、前記患者への前記胸骨圧迫の前記提供の前記一時停止の開始の後、予め定められた停止期間が経過した後であって、かつ、予め定められた設定時間内に開始される、
除細動器。
【請求項2】
前記最終決定は、前記患者への前記胸骨圧迫への前記提供の前記一時停止から、6秒未満で提供される、請求項1に記載の除細動器。
【請求項3】
前記最終決定は、前記患者への前記胸骨圧迫への前記提供の前記一時停止から、3秒未満で提供される、請求項2に記載の除細動器。
【請求項4】
前記予め定められた設定時間は、少なくとも1.5秒である、請求項1から3のいずれか一項に記載の除細動器。
【請求項5】
前記患者への前記胸骨圧迫の前記供給の指標および前記患者への前記胸骨圧迫の前記供給の前記一時停止の指標を取得するための動きセンサを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の除細動器。
【請求項6】
前記動きセンサが、加速度計、速度センサまたは変位センサを有する、請求項5に記載の除細動器。
【請求項7】
前記少なくとも1つのセンサは、前記患者へ前記除細動ショックを送信するための電極パッドを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の除細動器。
【請求項8】
前記電極パッドは、前記患者への前記胸骨圧迫の前記供給の指標および前記患者への前記胸骨圧迫の前記供給の前記一時停止の指標を提供する、請求項7に記載の除細動器。
【請求項9】
前記1または複数の処理デバイスが、前記胸骨圧迫の供給の最中に前記ECG信号を処理して前記第1の決定を生成するための、胸骨圧迫アーチファクトを含む前記ECGリズムを処理する第1処理アルゴリズムを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の除細動器。
【請求項10】
前記第1処理アルゴリズムが、前記ECGリズムに対する周波数ベースの分析を有する、請求項9に記載の除細動器。
【請求項11】
前記動作が、
前記ECG信号が表すECGリズムがショック適応またはショック非適応であるかの前記第1の決定の生成後に、前記患者への前記胸骨圧迫の前記提供を一時停止するための初期プロンプトを生成すること、を含む、請求項9に記載の除細動器。
【請求項12】
前記動作が、
前記胸骨圧迫の前記提供を一時停止するための前記初期プロンプトが提供された後に、前記患者への前記胸骨圧迫の前記提供が継続されることを判定すること、を含む、請求項11に記載の除細動器。
【請求項13】
前記動作が、
前記第1処理アルゴリズムに基づいて前記第1の決定を生成するべく、前記胸骨圧迫の前記提供の最中に前記ECG信号を処理することを継続すること、を含む、請求項12に記載の除細動器。
【請求項14】
前記動作が、
前記初期プロンプトの後であって、前記患者への前記胸骨圧迫の前記供給を継続するとの前記判定の後に、前記患者への前記胸骨圧迫の前記供給を一時停止するための後続プロンプトを生成すること、を含む、請求項12に記載の除細動器。
【請求項15】
前記第1処理アルゴリズムに基づいて判定される前記第1の決定は、前記第2の決定の第2レベル精度よりも低い、第1レベル精度を有する、請求項11に記載の除細動器。
【請求項16】
前記第1レベル精度および前記第2レベル精度のそれぞれは、陽性適中率(PPV)または陰性適中率(NPV)を表し、
前記陽性適中率(PPV)が、以下の式で与えられ、
PPV=TP/(TP+FP)
前記陰性適中率(NPV)が、以下の式で与えられ、
NPV=TN/(TN+FN)、
ここで、TPが真陽性、FPが偽陽性、TNが真陰率、FNが偽陰性を表す、請求項15に記載の除細動器。
【請求項17】
前記1または複数の処理デバイスは、前記患者がショック適応状態である場合に、前記1または複数のキャパシタに、充電シーケンスを開始させるように構成される、請求項1から16のいずれか一項に記載の除細動器。
【請求項18】
前記1または複数の処理デバイスは、データを保持するように構成されたバッファに、前記第1の決定および前記第2の決定を格納するように構成される、請求項1から17のいずれか一項に記載の除細動器。
【請求項19】
前記除細動器は、自動体外式除細動器およびディスプレイデバイスの少なくとも1つを備える、請求項1から18のいずれか一項に記載の除細動器。
【請求項20】
前記患者がショック適応状態であるかどうかを示すフィードバックを提供するように構成されるユーザインタフェースを提示するように構成された患者治療モジュールを備える、請求項1から19のいずれか一項に記載の除細動器。
【請求項21】
前記動作が、
前記ECG信号が表す前記ECGリズムがショック適応またはショック非適応であるかの前記第2の決定を確認するために前記胸骨圧迫が一時停止されている期間の最中に、前記ECG信号のセグメントを処理すること、を含み、前記セグメントの継続時間が可変である、請求項1から20のいずれか一項に記載の除細動器。
【請求項22】
前記患者への前記除細動ショックの提供を開始するためのスイッチと、
前記最終決定の前記出力に基づいて、前記ECGリズムがショック適応またはショック非適応であるかを示すためのディスプレイと、
を備える、請求項1から
21のいずれか一項に記載の除細動器。
【請求項23】
前記動作が、
前記最終決定の前記出力に基づいて、前記患者へ前記除細動ショックを施すこと、を含む、請求項
22に記載の除細動器。
【請求項24】
前記胸骨圧迫の供給の最中に前記ECG信号を処理して前記第1の決定を生成することは、前記胸骨圧迫の前記供給の最中に取得された前記ECG信号の複数セグメントを処理することを含む、請求項1から
23のいずれか一項に記載の除細動器。
【請求項25】
前記胸骨圧迫の前記供給の前記一時停止の最中に前記ECG信号を処理して前記第2の決定を生成することは、前記ECG信号のセグメントを処理することを含み、前記セグメントの継続時間が可変である、請求項1から
24のいずれか一項に記載の除細動器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権の主張]
本願は、米国特許法§119(e)項の下、2016年1月16日に出願された米国特許出願第62/279,713号に基づく優先権を主張し、当該出願の内容全体は、本明細書に参照により援用される。
【0002】
本願は、心臓蘇生システムおよび技術に関し、具体的には、適切に配置された電極を通して、患者の心臓に除細動ショックを加える除細動器に関する。
【背景技術】
【0003】
心臓発作は、一般的な死因の1つである。心臓発作とは、心臓組織の一部が循環を失い、その結果、損傷を受ける(例えば、心臓血管系の閉塞を原因として)と生じる。心臓発作および他の異常は、心室細動(VF)に至る可能性があり、VFとは、心臓にポンプ能力を失わせる異常な心臓リズム(不整脈)のことである。VFは、正常で規則正しい電気的インパルスが、不規則で速いインパルスに置き換わったときに生じ、これによって、心筋の正常な収縮を停止させ、震えが始まる。正常な血流が止まり、正常な心臓の収縮が回復されないと、数分後には臓器障害または臓器死がもたらされ得る。傷病者は細動が差し迫っているという警告であることを認識していないため、必要な医療支援が到着する前に、しばしば死に至ることがある。他の不整脈としては、徐脈として知られる過度に遅い心拍数、または頻脈として知られる過度に速い心拍数を挙げることができる。心室細動、心室頻拍、無脈性電気活動(PEA)および心静止(心臓がすべての電気活動を停止する)等、各種の心臓不整脈によって、心臓が脳およびその他の生命維持のための重要な臓器に血流を十分に供給できない状態が患者に引き起こされると、心停止が生じ得る。かかる問題が早期に(通常、数分以内)治癒されない場合、身体の残余部分は酸素を奪われ、患者は死ぬ。従って、心室細動に遭遇している人に対する迅速な手当てが、かかる人に対し、前向きな結果をもたらす鍵となり得る。
【0004】
世界中で、主な死因は、心停止および他の心臓の健康状態に関する問題である。心停止中に、患者の生命を救うべく行われる様々な蘇生の取り組みは、身体の循環器系および呼吸器系を維持することを目的とするものである。これらの蘇生の取り組みが、より速やかに開始されるほど、患者の生存可能性は高くなる。植え込み型心臓除細動器/除細動器(ICD)または体外式除細動器(手動除細動器または自動体外式除細動器(AED)等)が、もしそれらがなければ、生命を脅かすことになるこれらの状態を治療する能力を大きく向上させた。かかるデバイスは、是正的電気パルスを患者の心臓に直接加えることで作動する。心室細動または心室頻拍は、例えば、正常なリズムを回復させるために、植え込み型除細動器または体外式除細動器によって、心臓に治療的ショックを施すことで治療できる。徐脈等の状態を治療すべく、植え込み型または体外式のペーシングデバイスは、本来の心臓の電気活動が戻るまでペーシング刺激を患者の心臓に施すことができる。既往歴を持つ人々に、心臓の状態を常時モニタリングし、必要時にショックを加える自動除細動器が植え込みされることがある。かかる人々のうち、ゾールメディカルコーポレーションが提供するZOLL(登録商標)LIFEVEST(登録商標)ウェアラブル除細動器製品のようなベストの形態のウェアラブル除細動器が与えられる人々もいる。その他に、病院内で見られるような、または、救急医療サービスで用いられるような、例えば、ゾールメディカルコーポレーション製のR SERIES製品(登録商標)またはX SERIES(登録商標)等の体外式除細動器/モニタを用いて治療される人々もいる。空港、公共の体育館、学校、ショッピングエリアおよび他の公共スペースで頻繁に見られるようなタイプの自動体外式除細動器(AED)を介して治療される人々もいる。このようなAEDの例としては、AED PLUS (登録商標)自動体外式除細動器またはAED PRO(登録商標)自動体外式除細動器があり、両方とも、マサチューセッツ州チェルムズフォードにあるゾールメディカルコーポレーション製である。本明細書で示すように、一般的に、AEDという用語は、心電図(ECG)信号を取得し、患者に除細動ショックを施すことが適切か否かに関しECGを分析する、いくつかの方法またはアルゴリズムが組み込まれた、除細動ショックを施すことができる、任意のデバイスまたはシステムを指す。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、介護者が、心臓を正常パターンおよび一定の強い心拍に戻すことを試み、電気ショックを心臓に施すことが有益であるかを識別すべく、心電図(ECD)データを分析する方法およびシステムを提供する。高い予測値を有すべく(例えば、低い偽陽性率で)、包括的患者データベースによって事前検証される条件に対する実行チェックを行うことによって、ショック適応リズムが高速(例えば、6秒未満、3秒未満、0.1~3秒の範囲内、0.1~2秒の範囲内、おそらくは1秒未満、0.1~1秒の範囲内)に識別されてよく、従来方法を用いる場合に必要とされるような、より長い時間セグメントにわたるECGデータを分析する必要はない。いくつかの実施例において、少なくとも閾値レベルの精度(例えば、高予測可能性を有すべく、患者データをゴールドスタンダードによって事前検証されたもの)で、患者のモニタリングされたECG信号が供給するECGリズムが、ショック適応(shockable)またはショック非適応(non‐shockable)であるかを判定するにあたり、可変長時間セグメントの1または複数の特徴が使用可能となるように、ECG信号の可変長時間セグメントが処理される。例えば、可変長時間セグメントは初期時間を含んでよく、初期時間は、ECG信号がショック適応またはショック非適応のリズムを生成しているかに関する最終判定をなすために、さらなるECG信号の処理が必要かどうかに応じ、1または複数の時間(例えば、3秒以下、0.1~3秒の範囲内、2.5秒以下、0.1~2.5秒の範囲内、2秒以下、0.1~2秒の範囲内、1.5秒以下、0.1~1.5秒の範囲内、1秒以下、0.1~1秒の範囲内、0.5秒以下、0.1~0.5秒の範囲内等)分、インクリメントして延長可能である。
【0006】
ECG信号が、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムを表わすかに関する決定に可及的早期に至るために、除細動システムは、CPR胸骨圧迫の中断が生じたかの識別を怠らないことが好ましくてよい。例えば、除細動システムは、胸骨圧迫を追跡するための1または複数のセンサ(例えば、ECG電極、加速度計、動きセンサ)を採用してよく、除細動システムが、胸骨圧迫の間隙または中断を検出し次第、除細動システムは、直ちにまたはその後まもなく、ECG分析を開始してよい。除細動システムが、胸骨圧迫の再開時より前に、ショック適応またはショック非適応の結論に至ることができない場合、除細動システムは、ECG分析を再度すぐに開始できるように、胸骨圧迫の次の中断が生じるときの検出を継続してよい。
【0007】
いくつかの実施例において、可変長時間セグメントの初期時間に、初期ルールセットが適用されてよく、その場合、初期時間内のECG信号の様々な特徴が評価される。初期ルールセットに基づくこのような評価は、患者がショック適応状態またはショック非適応状態にあるか、または、決定をするためにさらなる時間が必要かを判定するために有用である。可変長時間セグメントが延長される(適切な時間分)場合、当該調整された時間に、調整ルールセットが適用されてよく、当該調整された時間内のECG信号の様々な特徴がさらに評価される。その後、調整ルールセットに基づいて、患者がショック適応状態またはショック非適応状態にあるか、または、決定をするためにさらなる時間が必要かの判定がなされてよい。患者がショック適応状態またはショック非適応状態にあるかに関する決定がなされるまで、このプロセスが繰り返されてよい。
【0008】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の技術は、以下の利点のうちの1または複数をもたらしてよい。
【0009】
低い偽陽性率を有すべく、事前検証される条件に基づく実行チェックを提供することによって、患者のECGデータにおいてショック適応リズムを識別するために必要な時間が低減されてよい。識別時間のかかる低減が、潜在的に患者の救命となってよい。もたらされる早期のフィードバックは、介護者が、決定に至るまでにより多くの時間を与えることを可能にしてよく、従って、より速やかに特定の行動方針を遂行する準備ができてよい。例えば、除細動器の充電に5秒かかり、介護者が、充電時間の1秒以内にショック適応リズムの存在を通知される場合、介護者は充電が完了し次第、ショックを施すための準備に4秒以上を有することになる。あるいは、除細動器が、既に充電されており、本開示による方法を用いて、リズムがショック適応であると判定される場合、さらなる分析の必要性なく、または他の形態の遅延なく、直ちにショックが施されてよい。患者データに関する1または複数の大量データベースを用いて、条件を事前検証することは、高度な信頼性と共に用いられ得る、正確な条件を識別することに寄与できてよい。
【0010】
他の特徴および利点は、詳細な説明および図面、並びに特許請求の範囲から、自明となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】医療デバイスを用いて、手当てを受けている心停止の傷病者を示す。
【
図2】電極パッケージおよび圧迫パックを備えた除細動器を示すブロック図である。
【
図4A】ECGデータにおいて、ショック適応リズムの存在を識別するための例示的プロセスのフローチャートを示す。
【
図4B】ECGデータにおいて、ショック適応リズムの存在を識別するための例示的概略図を示す。
【
図4C】ECGデータにおいて、ショック適応リズムの存在を識別するための例示的概略図を示す。
【
図4D】ECGデータにおいて、ショック適応リズムの存在を識別するための例示的プロセスのフローチャートを示す。
【
図4E】ECGデータにおいて、ショック適応リズムの存在を識別するための例示的プロセスのフローチャートを示す。
【
図4G】CPR治療と関連付けたECG波形の例を示す。
【
図4H】CPR治療と関連付けたECG波形の例を示す。
【
図4I】CPR治療と関連付けたECG波形の例を示す。
【
図4J】CPR治療と関連付けたECG波形の例を示す。
【
図4K】CPR治療と関連付けたECG波形の例を示す。
【
図4L】CPR治療と関連付けたECG波形の例を示す。
【
図5A】ECG波形およびそれらの特性の例を示す。
【
図5B】ECG波形およびそれらの特性の例を示す。
【
図6A】それぞれの句(clause)を満たすECG波形の例を示す。
【
図6B】それぞれの句を満たすECG波形の例を示す。
【
図6C】それぞれの句を満たすECG波形の例を示す。
【
図7】本明細書に記載の実施例において用いられてよい、医療デバイスの一例を示す。
【
図8】本明細書に記載の実施例において用いられてよい、医療デバイスの別の例を示す。
【
図9】本明細書に記載の技術で用いられてよい、コンピューティングシステムの一例を示す。様々な図面中の同様の参照符号は、同様の構成要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、心拍を正常パターンに戻すことを試み、電気ショックを患者の心臓に施すべきかどうかに関する、患者の治療に用いるフィードバックを介護者(例えば、救助隊員)および/または医療デバイス(例えば、除細動器)に提供するために、患者の心電図(ECD)データを分析する方法およびシステムを対象とする。特に、本開示は、高精度を有すべく、事前検証される条件に対する実行チェックを行うことについて、説明する。
【0013】
陽性適中率(PPV)は、本明細書において、以下の通り、規定される。
PPV=(真陽性の数)/(陰性判定の総数)
【0014】
式中、「真陽性」(TP)とは、テストが陽性予測をなし、被験者が包括的患者データベースから提供されるゴールドスタンダードの下、陽性結果を有する場合であり、「偽陽性」(FP)とは、テストが、陽性予測をなし、被験者がゴールドスタンダードの下、陰性結果を有する場合である。この場合において、陽性予測とは、ECGリズムがショック適応であることである。ゴールドスタンダードとは、典型的には、このアルゴリズムの開発段階中に、2人以上の独立した心臓専門医による、ECGリズムの精査を受けたものである。
【0015】
陰性適中率(NPV)は、以下の通り、規定される。
NPV=(真陰性の数)/(陰性判定の総数)
【0016】
式中、「真陰性」(TN)とは、テストが陰性予測をなし、被験者がゴールドスタンダードの下、陽性結果を有する場合であり、「偽陰性」(FN)とは、テストが陰性予測をなし、被験者がゴールドスタンダードの下、陰性結果を有する場合である。この場合において、陰性予測とは、ECGリズムがショック非適応であることである。
【0017】
本明細書で示すように、句(clause)とは、ECGデータの基礎となるECG波形の特徴に対する制約を定義する式である。句の基準が、分析されているECG波形の特徴によって満たされる場合、その句は満たされた(または成立した)と言える。特に、特定の句に応じ、基準が満たされる場合、ECGリズムは、ショック適応またはショック非適応であると言える。本発明の説明において、我々が、「句」単独に言及する場合は、一般的に、ショック適応の句およびショック非適応の句の両方を指す。
【0018】
いくつかの例において、ショック適応またはショック非適応の判定を行うために、特定の句が、特定レベルの精度を達成するために必要な閾値時間長(例えば、その特定の句に関連付けられた長さ)を満たすECG信号の部分に適用される場合、当該特定の句は、高精度の句である。さらに、当該特定の句が、その閾値時間長を満たさないECG信号の部分に適用される場合、この同一の句は、通常精度の句であってよい。例えば、ECG信号の当該部分が、その閾値時間長より短い長さを有する場合等である。このように、ECG信号部分の長さが増大するにつれ、精度も向上する傾向にある。つまり、最小時間セグメント長というものが存在し、それ未満では、句は通常精度の句に過ぎず、高精度の句ほど好適ではない。しかしながら、この最小時間長より長い時間セグメント長に対しては、当該句は、高精度の句とみなされることになる。
【0019】
ある時間に対し、十分な精度である句が、初期の長さを超えるすべての時間に対し、常に十分な精度であるとは限らない。故に、その句のルールセットが用いられることになるすべての継続時間の句について、句の精度がゴールドスタンダードデータベースに対し、テストされる必要がある。
【0020】
例えば、ECGリズムが、ショック適応またはショック非適応かの判定をなすための最小時間セグメント長が1秒である句が存在してよく、これらは「1秒の句」と称される。例えば、この判定を行うための最小時間セグメント長が2秒である句が存在してよく、これらは「2秒の句」と称される。例えば、この判定を行うための最小時間セグメント長が3秒である句が存在してよく、これらは「3秒の句」と称される。句が患者情報の包括的データベースのゴールドスタンダードに対し、どのようにテストされるかによって、句は、当該句が提供する関連付けられた確実性(例えば、感度および特異度を組み合わせた特定のレベル、またはPPVおよび/またはNPVに基づいてよい、精度)のレベルに従い、分類されてよい。例えば、PPVおよび/またはNPVに基づく精度等、例えば、高い予測確実性を示す句は、高精度の句として分類されてよく、より低い予測確実性を示す句は、高精度の句として分類されなくてよい。様々な実施例において、分析の特定時間(例えば、初期時間)の間に、高精度の句が満たされる場合、分析されたECG信号が表わすリズムがショック適応またはショック非適応であるかの決定は、さらなる分析の必要性なしに、直ちに行われてよい。これに対し、高精度の句が満たされない場合、時間が延長され且つ延長された時間のための新しい高精度の句を作成すべく、ルールが調整される。
【0021】
例えば、分析の特定時間(例えば、1秒、2秒、3秒等の初期時間)の間に、高精度の句が満たされない場合、ショック適応またはショック非適応の明確な決定を行うために、さらなる時間が必要であると判定されてよい。
【0022】
かかる例においては、十分なレベルの精度を達成するために、新しいルールまたは修正されたルールをより長い時間間隔にわたり、用いることになる。いくつかの場合においては、アルゴリズムは、延長された時間内の複数の時間セグメントにわたり、ショック適応またはショック非適応の投票を投稿してよい。従って、初期の高精度の句は、初期時間(例えば、0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5または3秒)のみを必要とする初期ルールセットを構成してよい。調整ルールセットは、初期時間と、1または複数の追加の時間(例えば、0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0秒、6~9秒)の両方を必要とする。
【0023】
句は、医学界が提供する研究結果に従って、作成されてよい。例えば、心臓が、血液を送り出すことを不能にする無秩序な心室筋の震えを伴う心室細動(VF)リズムは、ショック適応であることが周知である。また、不適切な心臓電気活動から生じる速い心拍を伴う心室頻拍(VT)リズムも、ショック適応であることも周知である。これに対し、心臓が、電気活動のない状態にある場合の平坦な線で特徴付けられる心静止リズムは、ショック非適応である。明瞭なQRSリズムを示すECG信号も、ショック非適応である。
【0024】
一般的に言えば、粗いVFから微細なVF、そして心静止までの連続性が存在する。例えば、およそ0.08~0.2mVの平均振幅において、微細なVFと心静止との間の境界が設定され得る。一方で、ショック適応VTリズムは、約160~180bpmより大きい心拍数で特徴付けられ得るが、患者ごとに異なる可能性がある。一般に、VTレートが高いほど、患者にショックを施すべき可能性は高くなる。従って、VTリズムの存在を評価するための基準は、ECG波形の1または複数の他の特徴(例えば、形態性)と連結される必要があってよい。
【0025】
ECG分析中、QRS波を示す規則正しい心拍を検出すると、それは、そのリズムがショック非適応であることを示すことになる。従って、短い継続時間の大きな振幅(R波)、例えば、160nsecより小さい幅狭の波および20mV/秒より大きい急傾斜を検出することは、QRS波を示し得る。また、正常洞調律(ショック非適応)は通常、比較的幅狭の等電点バンド内にかなりの割合の信号が存在することで特徴付けられる、高い等電点内容を有する。これに対し、VFまたはVT信号は、通常、著しくより低い等電点内容を有する。従って、様々な実施例において、ECG分析のための句は、上記説明に基づいてよい。
【0026】
例えば、ECGデータから計算された1または複数のパラメータで定義されたショック適応の句またはショック非適応の句の基準が、チェック実行時点まで収集されたデータによって満たされるかを周期的(例えば、実質的に継続的に)にチェックすることによって、セグメントがショック適応またはショック非適応であるかの判定がなされてよい。高NPVおよび高PPV(高精度の句とも称される)を持つ句が成立し次第、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムの存在が識別され、および出力が供給されてよい。例えば、適切なフィードバックが介護者に供給され、および/または、出力信号が医療デバイスに供給され、適宜それらが患者の治療に用いられてよい。
【0027】
リズムがショック適応であるかを判定するためのECG信号の分析を開始すべく、短い初期セグメント長、例えば、初期時間が選択され、分析を開始する。いくつかの実施例において、この長さは1秒であるが、初期分析セグメント長は、より短くてよい(例えば、100ミリ秒、500ミリ秒もの短さ等)。
【0028】
このように、ECGリズムの状態に関する非常に迅速且つ精度の高い判定が、既存の従来型の市販のAED分析アルゴリズムよりも、はるかに高速に達成されてよい。ECGリズムの状態の判定速度は、心停止の傷病者の生存における重要な決定要因である。従来技術を用いると、適切な評価に必要とされるECGセグメントの継続時間は、9~15秒であり、これに対し、この技術の本開示に係る様々な実施例では、1秒もの短い時間またはそれよりも短い時間で、ECGリズムの高精度な判定が達成されてよい。かかる短い分析継続時間により、除細動ショックの実施の直前等の胸骨圧迫の非常に短時間の一時停止の間の、または、ベンチレーションが供給されるときの胸骨圧迫の一時停止の間の、自動ECGリズム評価を可能にする。故に、ECGリズム状態を判定するために、胸骨圧迫の追加的な一時停止は必要ではない。胸骨圧迫の一時停止は、心停止の傷病者の生存性を下げることにつながることが知られている。
【0029】
句は、特定のセグメント長に対し定義されてよい。例えば、前の段落で上記した通り、その特定のセグメント長のためのショック適応の句またはショック非適応の句の基準が満たされた場合、適切なフィードバックが、介護者および/または医療デバイスに提供され、適宜患者の治療に用いられてよい。しかしながら、その特定のセグメント長のためのショック適応の句またはショック非適応の句が成立しない場合、システムは、可変長時間セグメントを1または複数の追加の時間分、延長するという判定をなす。追加の時間は、初期時間セグメントと異なる長さであってよい。例えば、第1のセグメントは500ミリ秒または1秒であってよい一方、さらなるインクリメントは、例えば、1ミリ秒、10ミリ秒、20ミリ秒、100ミリ秒、250ミリ秒のように、初期セグメントよりも短いインクリメントであってよい。
【0030】
例えば、インクリメント時間が20ミリ秒の場合、新しい分析時間は、初期と同一の500ミリ秒分のECGデータと共に、新しく20ミリ秒分のデータを用いた、520ミリ秒であってよい。かかる場合においては、データの元の500ミリ秒の句に対する複数の基準のうち少なくとも1つが修正されてよく、または、新しい句が、新しい長さ分析セグメント(例えば、520ミリ秒)に対し追加されてよい。
【0031】
代替的に、追加の時間は、例えば、500ミリ秒等、初期時間と実質的に同一の継続時間であってよい。前述と同様に、患者が、ショック適応状態またはショック非適応状態にあるかの判定を更新するために、可変長時間セグメントの複数の新しい値のうちの1または複数の特徴が、新しい調整された時間に対応する調整ルールセットに基づいて、識別されてよい。
【0032】
このように、それぞれの特定のリズムサブクラスに対し、ECGリズム状態の正確な評価をなすために、最小時間が費やされることになる。
【0033】
周期的チェックは、高度の時間的粒度(例えば、1ミリ秒、10ミリ秒、20ミリ秒、100ミリ秒、250ミリ秒)で、または、さもなければ実質的に継続的な態様で行われてよいので、いくつかの例において、最大15秒分のECGデータを待機する必要なく、ショック適応リズムまたはパターンが早期(例えば、従来の分析方法よりも高速に)に識別されてよい。本明細書でさらに説明するように、様々な実施例について、ECG信号は、可変長時間セグメントに従い処理されてよい。この場合、包括的患者データベースに対しテストされ、特定の閾値の精度または特定レベルの予測に到達する必要があれば、患者がショック適応状態またはショック非適応状態にあるかを判定すべく、分析の初期時間は、小さなインクリメント時間分、延長されてよい。
【0034】
例えば、患者を除細動ショックで治療すべきかに関するECG分析等、ショック適応リズム状態/ショック非適応リズム状態の評価のためのECGアルゴリズムの現行の最先端技術においては、システムは、感度および特異度、並びに、固定時間間隔の結論における感度および特異度の両方の高い値を達成することに重点を置く。例えば、典型的なAED ECG分析間隔は、3秒の継続時間で固定され、ショックまたは非ショックの判定を行う前に、少なくとも2つの連続的な間隔が必要とされる。感度は、除細動ショックを施すべき人、およびそのような識別が正しくなされた人のパーセンテージとして特徴付けられてよい。特異度は、除細動ショックを施すべきでない人、およびその識別が正しくなされた人のパーセンテージとして特徴付けられてよい。現行の最先端技術において、感度および特異度の両方が90%超になるように、データは少なくとも6秒間収集される。通常、特異度は95%を十分超過することを要求され、感度は92~95%より大きいことが必要とされる。高感度および高特異度のこの所望の組み合わせは、当業者にとって周知の受信者動作特性曲線(Receiver‐Operator Curve:ROC)の曲線より下の面積(Area Under the Curve:AUC)で説明されてよく、そこでは、高ROC AUCを達成するために、両方の値が高いものである必要がある。
【0035】
感度または真陽性率(TPR)は、以下によって与えられる。
TPR=TP/P=TP/(TP+FN)
【0036】
特異度(SPC)または真陰性率(TNR)は、以下によって与えられる。
SPC=TN/N=TN/(TN+FP)
【0037】
上記の式において、偽陽性が高まることを犠牲に、感度の上昇が実現でき、偽陰性が高まることを犠牲に、特異度の上昇が実現できることがわかる。従って、従来、精度は感度および特異度の両方の組み合わせの測定を必要とし、6~9秒を超えるより長い分析時間をもたらしていた。
【0038】
これに対し、本開示の実施は、ECGリズム状態の判定を大きく加速化させるべく、システムによる出力のために、より妥当な測定値としてのNPVおよびPPVが例証する精度に重点を置く。PPVおよびNPVの以下の式からわかる通り、PPVの変数は、陽性予測(例えば、「ショックの指示」)に関連し、NPVの変数は、陰性予測(例えば、「非ショックの指示」)に関連する。故に、陽性決定が、高PPVの結果となる場合、「良好な決定」とみなされてよく、陰性決定が、高NPVの結果となる場合、これもまた、「良好な決定」とみなされてよい。これは、感度および特異度では該当しない。本明細書に示される実施例においては、陰性決定は、高NPVまたは陰性予測の精度を測定するNPVに類似する他の尺度を達成するために必要な最小のECGデータセグメント長でなされる。陽性決定は、高PPVまたは陽性予測の精度を測定するPPVに類似する他の尺度を達成するために必要な最小のECGデータセグメント長でなされる。
【0039】
陽性適中率は、以下の式で与えられる。
PPV=TP/(TP+FP)
【0040】
陰性適中率は、以下の式で与えられる。
NPV=TN/(TN+FN)
【0041】
精度(ACC)は、以下の式で与えられる。
ACC=(TN+TP)/(TP+FP+FN+TN)
【0042】
閾値を超える感度を有する句は、場合によって、高感度の句と称されることがある。閾値を超える特異度を有する句は、場合によって、高特異度の句と称されることがある。高精度とは、NPVまたはPPVのいずれかが高い精度である。感度および特異度の観点から見る場合は、高精度の句とは、感度および特異度の両方が高いことが必要とされる。精度、感度および特異度のための上記の式を理由とし、高感度または高特異度のみのいずれかに限定される句は、必ずしも高精度の句ではない。精度の判定においては、当業者に既知の通り、関連付けられた受信者動作特性曲線(ROC)の曲線より下の面積(AUC)は、感度および特異度を検出アルゴリズムの識別力の単一の測定値に統合する。
【0043】
詳細に後述する予め定められた長さのセグメントの分析に基づく、投票スキームを用いた技術は、患者がショック適応状態にあるかの判定を行うために少なくとも6秒を要する可能性があるが、これに対し、いくつかの場合において、高精度の句に基づく本開示による高速分析技術を用いると、従来型の投票のみの技術において、典型的である6秒よりも短い時間で判定できる。できるだけ速やかに治療を施すことが、患者の生存に重要となり得る緊急蘇生の状況において、本明細書に記載の高速分析技術が、潜在的に救命の時間遅延の低減をもたらしてよい。複数の高精度の句が、患者データの大量データベースに対し、候補の句を事前検証することを介して識別されてよく、これにより、当該識別された句をショック適応リズムの高速識別において、高度な信頼性と共に用いることを可能にする。
【0044】
しかしながら、句のみの評価に基づいては、判定を行い得ない場合には、投票スキームが引き続き用いられてよいことを理解されたい。いくつかの実施例において、投票スキームを、高精度の句に基づく本明細書に記載の技術と連携して用いてよい。例えば、ある句が、短時間(例えば、1/2秒)内で成立する場合、分析は、別の句が成立するまで継続されてよい。これによって、例えば、判定の精度を犠牲にすることなく、比較的低い感度の句を用いることを可能にしてよい。
【0045】
後に詳しく説明するように、これらの技術を用いて、可変長のECG時間セグメントに基づいて、患者がショック適応状態またはショック非適応状態にあるかを判定してよい。ECG時間セグメントは、ECG信号の一部である。判定をなすために用いられる信号の時間の長さが分析に先立って選択される、固定長の技術に対し、可変長の技術を用いると、判定を行うために用いられる信号の長さはわかっていないか、または分析に先立って予め定められていない。代わりに、複数の時間セグメント、他のものとは異なる長さを有する複数の時間セグメントのうち少なくとも一部を適宜用いて、ショック適応の判定を行うにあたり、分析を可及的早期に完了させてよい。また、当該セグメントの長さは、どの句が用いられるかに依存してよい。例えば、信号のどの特徴を用いて、特定の句を評価するかに依存して、および/または、句の評価に用いられるパラメータの値に依存して、いくつかの句は、他の句よりも、より短いまたはより長い時間セグメントを用いてよい。このように、処理される時間セグメントの長さは、判定をなすために用いられる特徴の識別情報に基づいて変わってよい。
【0046】
典型的なシナリオにおいては、介護者(場合によって、救助者とも言う)は、除細動器の複数の電極を患者に装着する。次に、除細動器は、ECGデータを収集する。これは、場合によっては、介護者が患者に加えるCPR治療と並行して、または、1CPR治療サイクルの完了時若しくはCPR治療サイクル間の時点においてなされる。除細動器は、ECGデータを収集し、収集されたデータの時間セグメントに対し、句を評価することによって処理する。少なくとも1つの高信頼性の句が満たされる場合、除細動器は、当該句が示す状態(例えば、ショック適応またはショック非適応)を用いて、介護者または除細動デバイス自体に対し、ショックを施すことを指示する。場合によっては、ショック適応状態は、6秒未満で識別されてよい。場合によっては、句をデータの時間セグメントに適用した結果に基づき、患者がその状態に入ってから、2~3秒以内、1秒以下以内で識別されてよい。(他の場合においては、分析の前に予め定められた固定長時間セグメントを用いる3ステップ投票スキームが用いられ、この場合は、患者の現在の状態を識別するために、少なくとも6~9秒以上を要することがある)。
【0047】
いくつかの例において、介護者は、CPR治療を中止してよく(例えば、CPR治療を中止するようにとの明示の命令により、反復するCPR治療の自然な成り行きの間、および/またはベンチレーション中)、その間に、CPR治療の完了後のデータの一部が収集され、且つ、リズムがショック適応またはショック非適応かの初期判定に関するさらなる確認のために分析がなされる。ショック適応の初期判定に関する確認は、場合によって、再確認モード(これについては後述する)と呼ばれることがあり、再確認モードは、分析中の信号内のCPRアーチファクトをフィルタ、除去または低減することを可能にしてよいが、当該モードは、CPR治療が中止される時間の長さによっては、患者に対し潜在的危険を呈する可能性がある。故に、例えば、6秒未満といったように、比較的短時間の後に、患者の状態の判定におけるデータの時間セグメントに対する句の評価が成功すれば、CPR治療を比較的早期に再開でき、患者へのリスクは低減される。
【0048】
さらなる内容を説明するにあたり、心臓は、一連の秩序立った電気的インパルスに依拠し、有効に拍を打つ。この正常な一連の状態からの逸脱が、「不整脈」として知られる。特定の医療デバイスは、心室細動(VF)等の不整脈またはショック適応の心室頻拍(VT)が存在する場合を判定すべく、医療患者(例えば、緊急事態の現場の傷病者)から取得した心電図検査(ECG)信号を分析する信号処理ソフトウェアを含んでいる。これらのデバイスは、自動体外式除細動器(AED)、ECGリズム分類器、および心室性不整脈検出器を含む。AEDとは、除細動器、すなわち、制御した電気ショックを患者に施すデバイスであるが、使い方は比較的簡単である。AED治療に関し患者を評価し、AED治療器を患者に取り付け、およびAED治療をアクティブ化させるプロセスの間、手当てを行う人に対し、音声による指示を提供し、当該手当てを行う人に「話しかけ」るといった具合である。また、当該医療デバイスは、VTおよびVF等の複数の心電図波形を区別するように構成されてもよい。
【0049】
本明細書で説明する通り、VTとは、異所性心室焦点から生じるタキージスリズミア(tachydysrhythmia)であり、典型的には、120心拍数/分を超える速度および幅広QRS複合で特徴付けられる。VTは、単形性(通常、同一のQRS複合を持つ単一の焦点から生じる規則的なリズム)または多形性(不安定であり、変動するQRS複合を持つ不規則なリズムである可能性がある)である可能性がある。速度およびVTが持続する時間の長さによって、VT状態にある心臓は、脈拍を生成する場合としない場合とがある(例えば、循環系を流れる脈動血流)。VT状態にある心臓活動は、引き続き、一種の秩序性を有している。このVTリズムに関連する脈拍が存在しない場合、そのVTは、不安定であり、生命を脅かす状態にあるとみなされる。不安定なVTは、電気ショックまたは除細動で治療できる。
【0050】
上室性頻拍症(SVT)とは、心臓の下部のチャンバ(心室)の上方で発生する、速い心拍のことである。SVTは、房室(AV)結節と呼ばれる心臓の電気伝達系の部分である、心臓の上部の2つのチャンバ(心房)のうちの一方またはそれら両方で発生する、異常に速い心臓リズムのことである。SVTは、生命に関わることは滅多にないが、心臓のドキドキする感覚、胸部の粗動若しくは激しい高鳴り、または余分な心拍(動悸)あるいはめまいを含む、その兆候は、不快なものとなり得る。
【0051】
VFは、通常、差し迫る生命の脅威である。VFとは、不規則な無秩序の電気活動および心室の収縮を伴う無脈性不整脈であり、この場合、心臓がポンプとして機能する能力を直ちに失う。VFは、突然心臓死(SCD)の主な原因である。VF波形は、それに関連する脈拍を有していない。このリズムの是正措置は、電荷を用いて心臓の細動を除去することである。
【0052】
正常な心拍の波は、洞房結節(SAノード)で開始し、左心室のさらに下隅へ向かい進む。心臓への大きな電気ショックが、VFリズムおよび不安定なVTリズムを是正できる。この大きな電気ショックにより、心臓内のすべての心臓細胞を強制的に、同時に脱分極させることができる。その後、心臓細胞のすべては、短い休止期に入る。洞房結節(SAノード)が、他の細胞のいずれのものより前に、このショックから回復すること、および、結果として得られるリズムは、正常洞調律でないとしても、脈拍を生成するリズムであること、が望まれる。
【0053】
多くのAEDは、除細動および心肺機能蘇生(CPR)を用いての患者の救助活動の間の特定の時間に、ECG分析を実行することで、VT波形およびVF波形を認識するためのアルゴリズムを実施する。第1のECG分析は、除細動電極が患者に装着された後数秒以内、または、CPR治療の1サイクルが施された後数秒以内に開始されてよい。後続のECG分析は、第1の分析の結果に基づいて、開始されても開始されなくてもよい。通常、第1の分析が、ショック適応リズムを検出する場合、救助者は、除細動ショックを施すよう指示される。ショックを施した後、除細動治療が成功したか否か(例えば、ショック適応ECGリズムが、正常のリズムまたは他のショック非適応リズムに変換された)を判定するための第2の分析が、自動的に開始されてよい。この第2の分析が、ショック適応の不整脈が継続して存在することを検出する場合、AEDは、ユーザに対し、第2の除細動治療を施すよう指示する。その後、ショック適応リズムが存続するかどうかを識別するための第3の(および可能性として、第4、第5等)ECG分析が実行されてよく、救助者は、適宜、追加の除細動治療を施すように指示されてよい。
【0054】
ここで
図1を参照すると、適時に、除細動ショックを傷病者または患者に施すために用いられてよいAED100が図示されている。例示的な実施を示す
図1は、心臓蘇生中に、傷病者を自動的にモニタリングするためのAED100を使用している救助者を図示している。AED100は、測定されたECG信号を用いて、傷病者の心臓をモニタリングし、AED内の除細動デバイスを充電する。いくつかの実施例において、AEDは、ショック適応リズムが存在する場合、フィードバックを救助者に供給(例えば、ディスプレイデバイスまたはスピーカを用いて)するよう構成されてよい。本明細書に記載の技術を用いると、ショック適応リズムが存在するかの判定は、除細動デバイスの充電プロセスよりも、はるかに高速に実行されてよく、その結果、救助者は、除細動デバイスが作動可能になり準備が整うまでに、ショックを施す決定に対し準備が整っている。
【0055】
いくつかの実施例において、AED100が、危険な心臓リズムを検出する場合、AED100は、救助者に状態を通知するためのアラーム信号を生成する。救助者が、AED100に対し、かかるショックを指示するコマンドを発行すると、AED100は、傷病者に対する除細動ショックを生成してよい。除細動ショックは、傷病者の心臓の危険なリズムを治療するためのものである。本明細書において、かかる除細動ショックによって治療できる心臓リズムをショック適応リズムと言う。
【0056】
また、AED100は、AEDを充電するように構成された充電モジュールを含む。いくつかの実施例において、AED100は、モニタリングされたECG信号に基づいて、適合可能に充電されてよい。例えば、モニタリングされたECG信号の分析によって判定される通り、ショック適応リズムが存在する可能性がある場合にのみ、除細動器は予め充電されてよい。別の例においては、モニタリングされたECG信号に基づいて、デバイスの充電レベルが判定および設定されてよい。いくつかの実施例において、充電の方法(例えば、蘇生プロセスに対する充電速度、充電時間)は、電力の節約を試み、モニタリングされたECG信号に基づいて、変わってよい。例えば、時間が許す場合は、キャパシタは、電力を節約するために、通常よりもゆっくり充電されてよく、ただし、キャパシタは、救助者が除細動器を必要とするそのときには、フル充電に到達することを依然確保してよい。本明細書に記載の技術によって促進されてよいショック適応リズムの早期の識別は、充電方法の判定に用いられてよい。例えば、ショック適応リズムが識別されるとすぐに、高速充電プロセスがトリガされることによって、ショックを施す際における、潜在的に生命を脅かすことになる遅延をさらに低減してよい。一方で、ショック適応リズムが検出されない場合、節電を達成すべく、AED100は、よりゆっくりと充電されてよい。あるいは、ECGリズムはショック適応のように見えるが、まだ確認がなされていない場合、当該リズムがショック適応であると判明する場合に備えて、除細動器は先取り的に充電を開始してよい。胸骨圧迫中または再確認モード中に、ECG分析が行われる場合に、この機能は有用であってよく、この場合、胸骨圧迫後の短時間の分析を用いて、胸骨圧迫中に既に検出されたショック適応リズムの存在を確認する。かかる場合、ショック適応リズムの存在が確認されると、除細動器はすぐにショックを施すことができるように、胸骨圧迫の実施中に、除細動器は充電を開始してよい。
【0057】
AED100は、次のうちの1または複数のために、リズム指示方法を用いるよう構成されてよい。すなわち、a)ECG信号の様々な特徴(例えば、周波数領域特徴)の定量化、b)正常なECGリズムと、VF等の異常なECGリズムとの区別、c)異常なECGリズムの発現の検出、およびd)心臓の生理学的状態に関する決定、である。アナログECG信号は、1または複数のプロセッサを用いて、分析可能なデータに変換されてよい。このようなデータは、「ECGデータ」という用語で称されることがあり、この用語は、本明細書で、「ECG信号」という用語と交互に用いられる。AED100が、ECGデータに基づき、ショック適応リズムの存在を識別すると、AED100のディスプレイ(または別の出力デバイス)を用いて、適切なメッセージを救助者に伝えてよい。
【0058】
いくつかの例において、1または複数の治療実施デバイス110が、AED100に接続されてよい。治療実施デバイス110は、例えば、ポータブル胸骨圧迫デバイス、薬剤注入デバイス、ベンチレーションデバイスおよび/または除細動、胸骨圧迫、ベンチレーションおよび薬剤注入等の複数の治療を施すことができるデバイスを含んでよい。治療実施デバイス110は、除細動器AED100とは、物理的に分離されていてよく、1または複数の通信リンク120を介して制御されてよい。通信リンク120は、有線リンク(例えば、ケーブル)または無線リンク(例えば、Bluetooth(登録商標)またはWi‐Fi(登録商標)リンク)であってよい。
【0059】
いくつかの実施例において、蘇生プロセス全体の制御および調整の少なくとも一部、および/または様々な治療の実施は、デバイス130またはAED100の外部にある処理要素と連携して、行われてよい。例えば、デバイス130は、例えば、本明細書に記載のショック適応リズムの高速検出を実施するために、AED100からECGデータをダウンロードし、および処理してよい。また、デバイス130は、ECG信号を分析し、当該分析に基づいて、上記および後述のような関連する判定を実行し、且つ、AED100を含む他の治療デバイス110を制御するように構成されてよい。他の実施例においては、AED100は、ECG信号の分析を含む、ECGのあらゆる処理を実行してよく、制御デバイス130に、適切な治療の最終判定を送信してよく、すると即座に、制御デバイス130は、他のリンクされたデバイス110に対し、制御アクションを実行する。
【0060】
ここで
図2を参照すると、概略ブロックダイアグラム200は、除細動器100の一例を図示しており、そこには、一式の電極206および圧迫パック209(例えば、CPR治療中の胸骨圧迫の深度を測定するためのもの)が含まれる。一般に、除細動器100、および随意の電極206のうちの1または複数および圧迫パック209が、心臓の支援を必要とする患者、被験者または個人(例えば、傷病者)に手当てを施すための装置を画定する。
【0061】
AED100は、スイッチ202およびショックを被験者に選択的に供給または適用するための少なくとも1つのキャパシタ204を含む。さらに、除細動器は、ECG分析モジュール205、経胸壁インピーダンス(TTI)モジュール208およびCPRフィードバックモジュール210も含んでよい。CPRフィードバックモジュール210は、例えば、被験者に加える胸骨圧迫の頻度および大きさを制御するために用いられてよく、TTIモジュール208は、患者の経胸壁インピーダンス(例えば、測定されたTTI信号を介して受信される)を分析するために用いられてよい。また、AED100は、1または複数のスピーカ214、および1または複数のディスプレイ216等の入/出力モジュールも含む。
【0062】
また、AED100は、患者治療(PT)モジュール212も含む。PTモジュール212は、1または複数のプロセッサを含んでよく、PTモジュール212は、ECG分析モジュール205、TTIモジュール208およびCPRフィードバックモジュール210のうちの1または複数から入力を受信するように構成されてよい。PTモジュール212は、例えば、分析されたECGデータ内にショック適応リズムが存在するか否かの判定等、各種の機能を実行するために、少なくともECG分析モジュール205からの入力を用いてよい。
図2は、ECG分析モジュール205をPTモジュール212とは別個のエンティティとして図示するが、これら2つのモジュールは、単一のモジュールとして実施されてもよい。PTモジュール212は、ショック適応リズムの存在を判定するための1または複数の句を具現化したものにアクセスすべく、メモリデバイス(例えば、ハードドライブまたはランダムアクセスメモリまたはフラッシュメモリまたは別の種類のメモリデバイス)にアクセスするよう構成されてよい。また、PTモジュール212は、受信するECGデータを蓄積または保持するためのバッファ213も含んでよく、PTモジュール212(またはECG分析モジュール205)は、蓄積されたデータの1または複数のパラメータを計算すべく、当該ECGデータにアクセスする。いくつかの実施例において、バッファ213は、PTモジュールとは別個のコンポーネントであるか、またはバッファ213は、ECG分析モジュール205等、本明細書に記載の他のコンポーネントのうちの1つと統合されている。次に、PTモジュール212は、ショック適応リズムが存在するかを判定すべく、当該1または複数のパラメータを用いて定義された高精度の句が成立するかを判定してよい。ショック適応リズムが存在すると判定するとすぐに、PTモジュール212は、制御信号を1または複数の出力デバイス(例えば、スピーカ214および/またはディスプレイ216)に送信し、当該対応する出力デバイスにアラートが表示されるようにしてよい。
【0063】
この例において、ECG分析モジュール205、TTIモジュール208、CPRフィードバックモジュール210および患者治療(PT)モジュール212は、1つのロジカルモジュール218としてグループ化され、当該ロジカルモジュール218は、1または複数のコンピュータプロセッサによって実施されてよい。例えば、ロジカルモジュール218のそれぞれの要素は、(i)除細動器100の少なくとも1つのコンピュータプロセッサで実行される、一連のコンピュータ実装命令および(ii)除細動器100内の相互接続されたロジックまたはハードウェアモジュール、として実施されてよい。
【0064】
図2の例においては、異なる時点においては、異なるパッケージが接続されてよいように、電極パッケージ206は、除細動器100上のポートを介して、スイッチ202に接続されている。また、電極パッケージは、ポートを通して、ECG分析モジュール205およびTTIモジュール208に接続されてよい。この例においては、圧迫パック209は、CPRフィードバックモジュール210に接続されている。一実施例においては、ECG分析モジュール205は、ECG信号を受信するコンポーネントである。同様に、TTIモジュール208は、経胸壁インピーダンスを示す信号を受信するコンポーネントである。他の実施例も可能である。例えば、モジュール205、208および210の機能は、組み合わされ、または異なる態様で分散されてよい。さらに、これらのモジュールによって受信される信号は、異なるように分散されてよい。
【0065】
いくつかの実施例においては、PTモジュール212(可能性として、ロジカルモジュール218の他の部分(例えば、ECG分析モジュール205)と連携して)は、ショック適応リズムの存在または不存在を判定すべく、受信するECG波形を処理するよう構成されてよい。
図3は、ECG分析モジュール205およびPTモジュール212によって処理されてよいECGデータを表わす、ECG波形250の一例を示す。いくつかの例において、ショック適応リズムの存在または不存在は、ECG波形250の時間セグメントの特性に基づいて、判定される。例えば、
図3中、各々がECGデータの約3秒にあたる部分を表わす、可変長の3つの時間セグメント252、254、256が用いられてよい。例えば、句の評価に用いるパラメータの値に対応する、時間セグメント252の特性に基づいて、句が満たされたことを判定するために、時間セグメントのうちの1つ252が用いられてよい。句が満たされたことを判定するために、異なる時間セグメント254が用いられてよく、当該句は、第1の時間セグメント252または異なる時間セグメント(例えば、重複するまたは全く別個のもの)に適用されたものと同一の句であってよい。3つの時間セグメントに対する句の評価が、ショック適応リズムが存在することを示す場合、介護者および/または医療デバイスは、アラート通知されてよい。この例では3つの時間セグメントが示されているが、他の例は、特定の時点において当該判定をなすために、1つのみの時間セグメント、または、2つの時間セグメントまたは別の数の時間セグメントを用いてよい。
【0066】
図4Aは、ECGデータにおいてショック適応リズムの存在を識別するための例示的プロセスのプロセスフローチャート300を示す。プロセスは、例えば、
図2中に示すロジックモジュール218によって実施されてよく、
図3のECG波形250が表わすデータのようなECGデータに適用されてよい。
【0067】
プロセス300は、ECGデータを取得し、当該ECGデータをメモリバッファ内に格納302することを含む。メモリバッファは、電極206(
図2)によって収集されたECG信号に基づくデータを格納または保持するように構成されたストレージデバイスであってよい。例えば、電極206によって収集されたECG信号は、量子化およびデジタル化(例えば、アナログデジタルコンバータ(ADC)を用いて)されてよく、メモリバッファ内に格納されてよい。メモリバッファは、先入先出(FIFO)ベースで、複数のECGセグメントを格納するよう構成されてよい。例えば、ECG信号がバッファに入るとき、当該ECG信号は分析されてよい。いくつかの例において、信号は、およそ2~3秒分の格納されたECG信号データを用いて、分析されてよい。
【0068】
いくつかの実施例において、取得中のECGデータの一部または全部が、CPR治療の再確認モード301の間に格納され、当該モードでは、CPR治療中およびCPR治療後の短時間中に、ECG分析が行われる。再確認モードでは、CPR治療が、除細動ショックを施すかに関する推奨を確認するために取得されている信号に影響を及ぼさないように、CPR治療は、一時的に中止されてよい。いくつかの例においては、十分なECGデータが取得されたとき、再確認モードは終了され、介護者はCPR治療を再開するように促される。
【0069】
プロセス300は、バッファ内に格納されたECGデータの少なくとも一部を処理304することを含んでよい。これには、ECG信号の時間セグメントに対応するデータを処理することが含まれてよく、その結果、少なくとも閾値レベルの精度で、患者がショック適応状態にあるかを判定するにおいて、識別される時間セグメントの1または複数の特徴が使用可能になる。いくつかの実施例において、これには、バッファ内に格納されたデータの一部にアクセスすること、および当該データのアクセスされた部分に基づき、1または複数のパラメータを計算すること、が含まれてよい。その後、これらのパラメータは、当該データのアクセスされた部分に基づいて、ショック適応リズム(またはショック非適応リズム)が識別できるかを判定すべく、句のテーブルまたは他のデータベースで用いられる。処理される時間セグメントの長さは、処理の特定の例で評価されるパラメータにより、変わってよい。
【0070】
プロセス300は、また、当該データのアクセスされた部分に基づいて計算された1または複数のパラメータに基づき定義される句のデータベースにアクセス306することを含む。1または複数のパラメータの様々な組み合わせを用いて、ECG信号の対応する部分内に、ショック適応状態またはショック非適応状態を表わす特定分類のECG波形の存在を、対応するレベルの精度で識別できるように、これらの句は定義される。
【0071】
いくつかの実施例については、ECG信号の時間セグメントの長さは、どの句がそれに適用されるかに依存する。例えば、ある句は、例えば、99%の閾値の精度を達成するために必要な最小時間に関連付けられて格納されてよい。換言すると、ECG信号の時間セグメントの長さは、どの句が適用されるかに応じて、変わってよい。一例として、ある句は、99%の精度値を達成するために、1秒分のECGデータを必要としてよい一方、別の句は、99%の精度値を達成するために、3秒分のECGデータを必要としてよい。このように、それぞれの句は、特有のパラメータに関連付けられているので、ECG信号の時間の長さは、所定の時間において評価されるパラメータの識別情報に依存してよい。プロセス300は、特定の句に関連付けられた時間長を取得すること(例えば、データストレージ内に格納された、その時間長の値を取得すること)、および、特定の句をその閾値の精度値で適用するために十分なECGデータが利用可能であるかを判定すること、を含んでよい。しかしながら、特定の実施例については、閾値レベルの精度を達成するために、ECG分析の複数の時間に対し、所定の句が利用可能であってよいことを理解されたい。
【0072】
いくつかの実施例において、アクセスされた句は、それらの特異度に基づいて、並べ替えられてよい。例えば、パラメータが、比較的より低い精度を持つ句に対しテストされる前に、高精度の句に対しテストされるように、所定セットのパラメータに対応する句は並べ替えられてよい。高精度の句に関連付けられた高レベルの信頼性に起因して(それに対応した低い偽陽性率を理由として)、高PPV句に基づき、ショック適応リズムが検出される場合、より低いPPVを持つ他の句は、テストされる必要がなくてよく、これにより、ショック適応リズムの存在の識別に必要な全体の時間を低減する。その特定の分析継続時間に対し、成立する句がない場合、ショック適応の存在または不存在についての最終決定をなす前に、ECGデータの追加セグメントに対応するデータが処理される必要があってよい。つまり、決定をなすために、ECG分析に、さらなる時間が割り当てられてよい。例えば、除細動ショックを施すかに関する好適な決定をなすべく、ECG分析の初期時間に、1または複数のインクリメント時間が追加されてよい。本明細書で説明する通り、インクリメント時間は、複数の要因に依存してよく、とりわけ、使用される句のタイプ、ECG信号パターン、ECG分析履歴が挙げられる。任意の適切なインクリメント時間が、ECG分析の可変長時間セグメントに追加されてよく、例えば、約3秒未満(例えば、1~3秒の範囲内、0.1~3秒の範囲内)、約2.5秒未満、約2秒未満(例えば、およそ2秒、1~2秒の範囲内)、約1.5秒未満、約1秒未満(例えば、およそ1秒、0.1~1秒の範囲内)、約0.5秒未満(例えば、およそ0.5秒、0.1~0.5秒の範囲内)、約0.1秒未満等といった具合である。
【0073】
従って、分析の時間全体を延長すべきであると判定される場合、追加のインクリメント時間は、初期時間および/または他のインクリメントとは異なってよい。従って、追加のインクリメント時間は、ECG分析の初期時間より短いまたは長くてよい。例えば、分析の初期時間は、0.1~3秒(例えば、0.1秒、0.5秒、1秒、1.5秒、2秒、2.5秒、3秒等)であってよいが、さらなる分析のためのインクリメント延長時間は、0.1~0.5秒、0.5~1秒、1~2秒間等であってよい。また、分析の後続のインクリメント時間延長は、異なってよい。一例として、分析のための第1のインクリメント時間延長は、0.1~0.5秒であってよく、分析のための後続のインクリメント時間延長は、1~2秒であってよい。時間とインクリメント延長の他の組み合わせが、可能であってよい。特定の場合については、追加のインクリメント時間は、初期時間と実質的に同一あってよいことも理解されたい。
【0074】
可変長時間セグメントのためのECG分析の任意の適切な初期時間が使用されてよい。例えば、分析の初期時間は、約0.1~0.3秒の範囲内、約0.5~1.5秒の範囲内(例えば、およそ1秒)、約1.5~2.5秒の範囲内(例えば、およそ2秒)、約2.5~3.5秒の範囲内(例えば、およそ3秒)、または任意の他の好適な時間であってよい。
【0075】
1または複数の句は、患者がショック適応状態またはショック非適応状態にあるかを判定するためのECG分析の特定の継続時間に対応するルールセットを構成してよい。本明細書で特記したように、句および/またはルールセットが特定レベルの精度に対応することは、統計的に判定されてよい。可変長時間セグメントのためのECG分析の初期時間は、初期ルールセット(高精度の句等、一式の句を含む)に適用されてよく、そこでは、リズムがショック適応またはショック非適応かを判定すべく、または、好適な決定をなすために可変長時間セグメントを延長すべきかを判定すべく、初期時間内のECG信号の様々な特徴が評価される。リズムがショック適応またはショック非適応かを判定すべく、または、決定をなすためにさらなる時間が必要かを判定すべく、調整された時間内のECG信号の様々な特徴をさらに評価するために、可変長時間セグメントを延長(例えば、インクリメントして)することによって、調整ルールセット(例えば、初期の高精度の句よりも長い継続時間を要求する句等の調整された一式の句を含む)が、調整された時間に適用されてよい。患者がショック適応状態またはショック非適応状態にあるかの好適な決定がなされるまで、このプロセスが繰り返されてよい(例えば、反復的に)。
【0076】
いくつかの実施例において、高精度を有してない句を用いて、ショック適応の存在または不存在を判定するために、句投票スキームを用いてよい。投票スキームは、例えば、可変長時間セグメント(例えば、いくつかの句のうちのいずれが、データに適用されるか、またはいずれが複数の投票セグメントに分割され得るかに応じて、変動可能な)ではなく、固定長時間セグメントを使用する。例えば、ECGデータの3つの別個のセグメントに対応するデータが処理され、当該セグメントが、ショック適応またはショック非適応のいずれかをラベル付け(分類)してよく、最終決定は、3つのラベルのうちの少なくとも2つに対応するラベルに基づいてよい。最初の2つのセグメントがショック適応であるとラベル付けされる場合、投票スキームは終了されてよく、ショック適応リズムの存在が識別されてよい。第1のセグメントがショック適応であるとラベル付けされ且つ第2のセグメントがショック非適応であるとラベル付けされる場合、第3のセグメントが評価される。かかる投票スキームにおいては、各セグメントは通常、例えば、3秒等の固定長である。故に、かかる投票スキームのみを用いる場合は、患者が、ショック適応状態またはショック非適応状態かに関する判定をなし得る前に、最小時間が経過する。例えば、3秒のセグメントが使用される場合、判定をなし得る前に、少なくとも6秒および最大9秒が経過する。
【0077】
これに対し、いくつかの実施例においては、例えば、ショック適応リズムの存在または不存在の判定において高精度の句を用いることで、投票スキームに本質的に存在する遅延が回避されてよい。高精度(例えば、低い偽陽性率)の句は、様々な方法で作成または定義されてよい。このような高精度の句を用いることで、短い時間ウィンドウ内(例えば、1秒未満)でのショック適応リズムの存在または不存在の識別を可能とし、それによって、例えば、投票スキームに関連する分析時間と比較した場合、分析時間が低減される。いくつかの実施例において、低い偽陽性率を有する句を判定すべく、精度のための各種候補の句を予め格納された患者データのデータベースに対しテストすることによって、高精度の句はヒューリスティックに判定される。いくつかの実施例において、例えば、低い偽陽性率で、ショック適応リズムの存在を示す条件を識別すべく、マシンラーニングプロセスをデータベースに使用することによって、句は判定されてよい。
【0078】
高精度の句を用いることは、投票スキームを用いた場合よりも、より高速となる傾向があるが、特定の状況においては、依然として投票スキームが用いられてよい。かかる状況は、例えば、高精度の句のいずれもが満たされないため、患者がショック適応状態またはショック非適応状態であるかの判定をなすために、それを用いることができないといったものが挙げられる。いくつかの実施例において、例えば、投票モデルは、本明細書に記載の他の(より高速)分析技術と並行して用いられてよい。
【0079】
特定の時間セグメント長に対する十分なレベルの精度を持つ句(以降、「高精度」の句と言う)、および特定の時間セグメント長に対する不十分なレベルの精度を持つ句(本明細書において、「通常の精度」とも言う)は、メモリバッファ内に格納されたECGデータを処理することによって計算されるパラメータを用いて、定義される。
【0080】
いくつかの例においては、高精度の句は、波形の特定の時間長(幅)に対し、99%の精度閾値を有するものとして定義される。換言すると、ある句が3秒の時間長と関連付けられ、少なくとも99%の精度を有する場合、当該句は、高精度の句である。
【0081】
いくつかの例において、特定の句が、特定レベルの精度を達成するために必要な閾値時間長(例えば、当該特定の句に関連付けられた長さ)を満たすECG信号の部分に適用される場合、当該句は高精度の句である。さらに、当該特定の句が、例えば、ECG信号の当該部分が、その閾値より短い長さを有する場合等、その閾値時間長を満たさないECG信号の部分に適用される場合、この同一の句は、通常精度の句であってよい。このように、ECG信号の部分の長さが増大するにつれ、精度も向上する傾向にある。つまり、最小時間セグメント長というものが存在し、それ未満では、句は通常精度の句に過ぎず、高精度の句ほど好適ではない。しかしながら、この最小時間長より長い時間セグメント長に対しては、当該句は、高精度の句である。
【0082】
例えば、最小時間セグメント長が1秒である句が存在してよく、それらは、「1秒の句」と称される。例えば、最小時間セグメント長が2秒である句が存在してよく、それらは、「2秒の句」と称される。例えば、最小時間セグメント長が3秒である句が存在してよく、それらは、「3秒の句」と称される。最小時間長が6秒であるセグメントは、「6秒の句」と称される。表1に、これらのいくつかの例が示されている。
【0083】
【0084】
表2に、いくつかの追加の3秒の句が、見い出される。
【0085】
【0086】
表3に、いくつかの追加の6秒の句が、見い出され得る。
【0087】
【0088】
本明細書に記載の様々な実施例によると、除細動器は、例えば、上記の例における1秒の句等、利用可能な最小間隔の句を分析することから開始する。しかしながら、この最小間隔は、100ミリ秒もの短さとなってよい。ECG測定値または特徴が、最小セグメントの句のルールセットのいずれかを満たすかを判定すべく、最小セグメントにおけるECGを分析した後、当該句またはルールセットのいずれの基準も満たされないことが判明した場合、初期時間は延長され、より短い間隔のための句またはルールセットが調整され、その延長時間間隔に対するショック/非ショック判定のために、予め定められた適切なレベルの精度を提供する。句の調整は、閾値の比較的軽微な修正という形態を取ってよく、または、代替的に、分析の異なる時間間隔に対し、適切な精度を維持するために、新しい句または副次的な句を追加するという形態を取ってよい。表1、2および3中に、このような句の例が見い出され得る。
【0089】
一例においては、上記説明のように、時間延長は、例えば、1秒の句、2秒の句、3秒の句のように、1秒間隔である。または代替的に、それは3秒であってよく、3秒の句および6秒の句の場合といった具合である。代替的に、時間延長インクリメントは、例えば、0.1秒等、最小インクリメントを細分したものであってよく、よって、1.1秒、1.2秒、1.3秒、1.4秒等の句のような追加の句を生成する。かかる方法においては、除細動器は、例えば、0.1秒等、ECGのすべてのサブインクリメント間隔を再分析することとなり、新しいショック/非ショックの決定は、0.1秒ごとである。
【0090】
ショック適応リズムまたはショック非適応リズムの存在は、1または複数の句により、判定308されてよい。いくつかの例において、ショック適応リズムの存在は、単一の時間セグメントに基づいて判定されてよい。例えば、その時間セグメントに基づいて、単一の句が満たされ、且つ、その句がショック適応状態と関連付けられている場合、判定は、その句単独に基づいてなされ、治療を遅延させ得るさらなる分析は必要ではない。いくつかの例においては、少なくとも2または3個の時間セグメントが、その判定に用いられる。例えば、ショック適応状態を示す少なくとも1つの句が、当該2または3個の時間セグメントの各々に対し、満たされない場合、句はそのデータで評価されることを継続する。特定の句が所定の時間において成立しない場合、ショックまたは非ショックの決定がなされるべきかの判定において、さらなる情報を得るために、計算されたパラメータに基づき定義された他の句が利用可能であるかどうかを確認するチェックが、実行309されてよい。この追加情報を提供できる1または複数の他の句が利用可能である場合、プロセスは、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムの存在のチェックを繰り返すために、当該句にアクセス306することを含む。一方、他の句が存在しない場合、バッファ内に格納されたECGデータの追加の部分が、処理304されてよい。いくつかの実施例において、これは、上記の処理の少なくとも一部を、処理の最後の回以来バッファに蓄積された追加のECGデータに対し、繰り返すことを含んでよい。いくつかの実施例において、これは、最後の回で既に処理されたデータと、蓄積された新しいデータとを共に含んでよい。いくつかの実施例において、これは、最後の回で処理されたセグメントと重複しないセグメントに対応するデータを処理することを含んでよい。
【0091】
ショック適応リズムまたはショック非適応リズムの存在を判定すると、プロセス300は、成立した句の精度が閾値を超えるかをチェック310することを含んでよい。いくつかの例において、閾値は、少なくとも99%の精度である。いくつかの実施例において、また、このチェックは、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムが存在するかを判定する前に実行されてもよい。句の精度が、閾値を超える場合(例えば、句が高精度の句または高信頼性の句の場合)、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムの存在に関するフィードバック信号が、介護者に提示(312)されてよいが、かかるフィードバック信号は、必要ではない(例えば、特定の設定に設定されている場合、除細動ショックが、ユーザの介入なしに自動的に施されてよい場合)。特定の例については必要でない一方、フィードバックは、フィードバックが、デバイス(例えば、AED100、介護者と関連付けられたモバイルデバイス、または介護者と関連付けられたウェアラブルデバイス)上に提示されるようにする制御信号を生成することを含んでよい。フィードバックは、例えば、ディスプレイスクリーン上の視覚的な指標、スピーカを介して提示される可聴音、またはウェアラブルデバイス若しくはモバイルデバイスを介して提示される触覚的なフィードバックの形態で提示されてよい。例えば、フィードバックが、患者がショック適応状態にあることを示す場合、介護者はフィードバックに応答し、患者にショックを施すことを選択してよい。いくつかの例において、可及的速やかにショックを施すことができるように、フィードバックは、除細動器のキャパシタが充電され次第、提供されてよい。例えば、キャパシタはおよそ5秒後に充電されてよく、これは、本明細書に記載の技術を用いて患者の状態を判定するために十分な時間であってよい。他のより低速な技術、例えば、予め定められた継続時間のECGセグメントの分析に基づく投票スキームのみを用いる技術は、かかる判定をなすためにさらなる時間を用いる可能性があり、その結果、キャパシタが充電される時間と、患者の状態の判定をなす時間との間にしばしば遅延が存在する。
【0092】
句の精度が、閾値を超えない場合、バッファ内に格納されたECGデータの追加の部分が処理304されてよい。いくつかの実施例において、これは、上記の処理の少なくとも一部を、処理の最後の回以降バッファに蓄積された追加のECGデータに対し繰り返すことを含んでよい。所望の精度で、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムが判定されるまで、これが継続されてよい。実質的に継続的(例えば、2~3のマシンサイクルごとに1回、または毎秒2~3回)にデータを処理することによって、プロセス300は、モニタリングされたECGデータにおいて、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムを高速に検出することを可能にする。処理は、予め定められた長さのデータの固定セグメントに依存しないので、予め定められた長さのデータが蓄積まで待機する必要がなく、判定を早期になすことができる。既知の特異度を持つ句を用いることによって、高信頼性の判定がなされ次第、判定のプロセスは終了してよく、これによって、貴重な時間を節約し、潜在的に、危機的状態にある患者に救命の利点を与えてよい。
【0093】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の技術を用いて、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムの存在を判定することを、予め定められた数のECGセグメントが分析され、ショック適応またはショック非適応としてラベル付けする投票スキームのみを用いる技術の代わりに用いてよい。以下の表は、同一の患者データのデータベースを用いて実行した例示セットの実験に基づく、これら2つの技術の性能比較を示す。以下の表中、本明細書に記載の技術を「高速分析」として示す。これに対し、ECGデータの最大3セグメントが使用される比較で用いた投票スキームを、以下の表中、「3のうち2の投票」として示す。
表4:性能比較
【表4】
表5:分析時間の比較
【表5】
【0094】
いくつかの実施例において、再確認分析モード(RAM)では、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムの存在の判定は、CPRの実施中に実行される。以下の表は、既存のRAM技術と、本明細書に記載の高速分析技術との性能比較を示す。実験において、高速分析は、CPRフリー波形の時間の前に、CPRアーチファクトを含むECG波形を含むデータベースを用いるRAM分析と再び比較された。
表6:性能比較
【表6】
表7:分析時間の比較
【表7】
【0095】
いくつかの実施例において、RAM分析は、本明細書に記載の高速分析と組み合わされてよい。かかる分析においては、CPR中の分析よりも、高精度の句に対しより高い優先度が付与されてよい。特定の一連の実験においては、CPR後の3秒のセグメントが分析され、パラメータが計算された。パラメータが、高信頼性の句を満たした場合、CPR結果中の分析からの結果は無視され、最終決定のために高精度の句が用いられた。特定の一連の実験の結果が、以下の表に記載されている。
表8:性能
【表8】
表9:分析時間
【表9】
【0096】
図4Bは、投票プロセス、または投票プロセスが完了する前に、高精度の句が満たされるか否かのいずれかによる、患者から測定したECG信号に基づき、患者がショック適応状態またはショック非適応状態にあるかを判定する技術320を表わす図を示す。上記の通り、高精度の句とは、PPV(陽性適中率)および/またはNPV(陰性適中率)に基づき、高い予測確実性を示す句である。技術320は、例えば、
図1に示すAED100等の除細動器の機能として実施されてよい。
【0097】
技術320は、2つのモードを含む。第1のモード322は、オプションモードであり、「継続的分析モード(CAM)」と呼ばれる場合がある。第1のモード322は、CPR(胸骨圧迫)が傷病者に加えられている間に、測定値が取得されるCPRウィンドウ324を含む。第2のモード326は、「再確認分析モード(RAM)」と呼ばれる場合があり、CPRなしのウィンドウ328中に実行される。例えば、CPRなしのウィンドウ328中は、CPR(胸骨圧迫)は傷病者に加えられない。いくつかの例において、CPRの実施は、「明瞭な」ECG信号の検出を妨げる可能性があるので(例えば、CPR治療によって誘導される信号不存在の大きなノイズ)、CPRなしの信号を検出するためには、第2のモード326が用いられてよい。技術320は、例えば、救助状況中に、第1のモード322と第2のモード326とを切り替えてよい。いくつかの例においては、AED100が、CPRが停止または開始されたことを検出(例えば、胸骨圧迫に関連付けられた動きが、停止または開始されたことを検出することによって)すると、モードが変わる。いくつかの例においては、AED100が、CPRを停止または開始する命令を救助者に提供(例えば、ディスプレイまたはオーディオ出力デバイス等の出力デバイスを用いて)すると、モードが変わる。
【0098】
第1のモード322において、CPR中のECG信号の連続するセグメント330a~cの分析が実行されてよい。例えば、CPR中のECG分析に用いられるいずれかの句が、セグメント330a~cのうちのいずれかによって満たされる場合、ECG信号がショック適応リズムまたはショック非適応リズムを表わすかに関する決定(例えば、CAM決定)が、保存332(例えば、判定を確定するため、CPRなしのウィンドウ中の分析との後からの比較のために)される。例えば、決定は、セグメント330a~cに適用される句に基づいてよい。CPR中の分析は、CPRが停止されたときになされる分析よりも信頼性が低い可能性があるので、保存された決定は、第2のモード326で確認されてよい。
【0099】
第2のモード326においては、CPRは中止され、CPR治療からの潜在的なノイズが不存在の状態で、ECG信号セグメント334a~cは分析されてよい。第1のセグメント334aは、例えば、第1のセグメント334aに、高精度の句を適用336することによって分析される。例えば、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムを示すことによって、高精度の句が満たされる場合、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムの決定に至り338、さらなる分析に取り組む必要はない。高精度の句が満たされない場合、他の通常精度の句が、第1のセグメント334aに適用340されてよい。他の句(例えば、通常精度の句)のうちの1つが、当該セグメントによって満たされ、且つ、その句が第1のモード322の保存された決定332(例えば、CAM決定)で示されたものと同一の結果(例えば、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムを示すRAM決定)を示す場合、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムの決定に至る342。言い換えると、これらの結果は一致するので、一致(例えば、CAM決定とRAM決定との間で)する結果を最終決定として用いてよい。しかしながら、他の通常精度の句が、保存された決定と異なる結果を示す場合、他の通常精度の句の結果が保存344され、技術320は、第2のセグメント334bの分析に進む。
【0100】
第2のセグメント334bの分析中、高精度の句が再び適用(346)されてよい。例えば、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムを示すことによって、高精度の句が満たされる場合、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムの決定に至り348、さらなる処理は必要とされない。高精度の句が満たされない場合、他の句が第2のセグメント334bに適用350されてよい。別の句(例えば、通常精度の句)が、第1のセグメント334aの分析の保存結果344と同一の結果(例えば、ショック適応リズムまたはショック非適応リズム)を示す場合、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムの決定に至る352。他の通常精度の句が、保存結果344と異なる結果を示す場合、他の通常精度の句の結果が保存354され、技術320は、第3のセグメント334cの分析に進む。
【0101】
第3のセグメント334cの分析中、高精度の句が再び適用356される。例えば、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムを示すことによって、高精度の句が満たされる場合、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムの決定に至る358。高精度の句が満たされない場合、他の通常精度の句が、第3のセグメント334cに適用360されてよく、「3のうち2」の投票が行われてよい。別の句(例えば、通常精度の句)が、第1のセグメント334aの分析の保存結果344、または、第2のセグメント334bの分析の保存結果354のいずれかと同一の結果(例えば、ショック適応リズムまたはショック非適応リズム)を示す場合、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムの決定に至る364。言い換えると、これら3つの結果のうち2つが一致するときは、これらの一致する結果(例えば、ショック適応またはショック非適応)を、患者がショック適応状態またはショック非適応状態にあるかの決定として用いる。
【0102】
図4Cは、投票プロセス、または投票プロセスが完了する前に、高精度の句が満たされるか否かのいずれかによる、患者から測定したECG信号に基づき、患者がショック適応状態またはショック非適応状態にあるかを判定する技術370を表わす図を示す。技術370は、例えば、
図1に示すAED100等の除細動器の機能として実施されてよい。
【0103】
技術370は、CPRウィンドウ374中に、CPRが傷病者に適用されている間に、測定値が取得される、単一モード372を含む。このモード372では、ECG信号セグメント376a~cが分析されてよい。第1のセグメント376aは、例えば、第1のセグメント376aに、高精度の句を適用378することによって分析される。例えば、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムを示すことによって、高精度の句が満たされる場合、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムの決定に至る380。高精度の句が満たされない場合、他の通常精度の句が、第1のセグメント376aに適用されてよい。通常精度の句が、リズムがショック適応またはショック非適応であることを示す場合、結果が保存382され、技術370は、第2のセグメント376bの分析に進む。
【0104】
第2のセグメント376bの分析中、高精度の句が再び適用384されてよい。例えば、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムを示すことによって、高精度の句が満たされる場合、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムの決定に至る386。高精度の句が満たされない場合、他の句が第2のセグメント376bに適用388されてよい。句(例えば、非高精度の句)が、第1のセグメント376aの分析の保存結果382と同一の結果(例えば、ショック適応リズムまたはショック非適応リズム)を示す場合、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムの決定に至る390。他の句を用いた分析が、保存結果382と異なる結果を示す場合、他の句の分析の結果が保存392され、技術370は、第3のセグメント376cの分析に進む。
【0105】
第3のセグメント376cの分析中、高精度の句が再び適用394される。例えば、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムを示すことによって、高精度の句が満たされる場合、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムの決定に至396。高精度の句が満たされない場合、他の句(例えば、通常精度の句)が第3のセグメント376cに適用398されてよく、「3のうち2」の投票が行われてよい。他の句(例えば、通常精度の句)が、第1のセグメント376aの分析の保存結果382、または、第2のセグメント376bの分析の保存結果392のいずれかと同一の結果(例えば、ショック適応リズムまたはショック非適応リズム)を示す場合、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムの決定に至る399。言い換えると、これらの結果のうち2つが一致するときは、これらの一致する結果(例えば、ショック適応またはショック非適応)を、測定されたECG信号に基づく、患者がショック適応状態またはショック非適応状態にあるかの決定として用いる。
【0106】
図4Dは、ECGデータにおいて、ショック適応リズムの存在を識別するための例示的プロセス400のフローチャートを示す。プロセスは、例えば、
図2中に示すロジックモジュール218によって実施されてよく、
図3のECG波形250が表わすデータのようなECGデータに適用されてよい。
【0107】
プロセス400は、例えば、患者が救助治療を受けている間等の、患者のECG信号を表わすデータを受信402することを含む。プロセス400は、ECG信号の可変長時間セグメントを処理404することを含む。可変長時間セグメントは、1または複数の追加の時間(例えば、0.1秒、0.5秒、1.0秒、1.5秒、2.0秒、2.5秒、3.0秒等)分、インクリメントして延長可能な初期時間(例えば、0.1秒から3.0秒の範囲内)を含む。このように、患者が、ショック適応状態またはショック非適応状態であるかの判定に必要な時間は、判定に先立って、わかってはいない。いくつかの例において、処理される時間セグメントの長さは、ECGリズムがショック適応またはショック非適応であるかの判定をなすために用いられる特徴の識別情報に基づいて変わる。
【0108】
処理は、初期時間に対応する初期ルールセットに基づいて、可変長時間セグメントの1または複数の特徴を識別406することを含む。いくつかの例において、初期ルールセットは、ECG信号の1または複数の特徴に対する制約を表わす1または複数の句を含み、当該ECG信号の1または複数の特徴の各々は、処理される時間セグメント内のECG信号の波形の特性を表わす。
【0109】
処理は、初期ルールセットに基づいて、ECG信号が表わすECGリズムが、ショック適応またはショック非適応であるか、または、さらなる分析のために可変長時間セグメントを延長すべきかを判定408することを含む(例えば、初期時間を用いて、正確な判定を行うことができない場合)。処理は、可変長時間セグメントの初期時間を、1または複数の追加の時間(例えば、0.1秒、0.5秒、1.0秒、1.5秒、2.0秒、2.5秒、3.0秒等)分、延長410することを含む。処理は、ECGリズムが、ショック適応またはショック非適応かの判定を更新するために、調整された時間に対応する調整ルールセットに基づいて、可変長時間セグメントの1または複数の特徴を識別412することを含む。いくつかの例において、初期ルールセットは、少なくとも1つの高精度の句を含んでよく、調整ルールセットは、少なくとも1つのより低い精度の句を含み、その結果、当該少なくとも1つの高精度の句は、当該少なくとも1つのより低い精度の句とは異なる。
【0110】
プロセス400は、例えば、出力回路または出力モジュール(例えば、出力スクリーン、オーディオ回路等)を用いることによって、判定に基づく、出力を提供414することを含む。
【0111】
いくつかの例において、CPRが実行されている間に、患者のECG信号を表わすデータが受信される。いくつかの例において、データは、CPRが一時的に中止されている間の患者のECG信号を表わす。例えば、プロセス400は、初期ルールセットにより、胸骨圧迫の中断が生じたかを識別すること、および胸骨圧迫の中断中のECG信号の可変長時間セグメントを分析すること、を含んでよい。いくつかの例において、胸骨圧迫の中断が生じたかを識別することは、ECG電極および動きセンサのうちの少なくとも一方から生成される信号を処理することを含む。
【0112】
図4Eは、ECGデータにおいてショック適応リズムの存在を識別するための例示的プロセス420のフローチャートを示す。プロセス420は、例えば、
図2中に示すロジックモジュール218によって実施されてよく、
図3のECG波形250が表わすデータのようなECGデータに適用されてよい。
【0113】
プロセス420は、例えば、患者が救助治療を受けている間等の、患者のECG信号を表わすデータを受信422することを含む。プロセス420は、0.1秒からおよそ3秒の範囲内の初期時間を含む、ECG信号の可変長時間セグメントを処理424することを含む。処理は、胸骨圧迫の中断が生じたかを識別426することを含み、それは、例えば、ECG電極および動きセンサのうちの少なくとも一方から生成される信号を処理することによるものである。処理は、初期時間に基づく初期ルールセットにより、胸骨圧迫の中断中のECG信号の可変長時間セグメントを分析428することを含む。当該分析は、ECG信号が表わすECGリズムが、ショック適応またはショック非適応であるかを判定するために用いられてよい。いくつかの例において、初期ルールセットは、ECG信号の1または複数の特徴に対する制約を表わす1または複数の句を含み、当該ECG信号の1または複数の特徴の各々は、処理される時間セグメント内のECG信号の波形の特性を表わす。
【0114】
処理は、初期ルールセットに基づいて、ECG信号が表すECGリズムが、ショック適応またはショック非適応であるか、または、さらなる分析のために可変長時間セグメントを延長すべきか(例えば、初期時間を用いて、正確な判定ができない場合)を判定430することを含む。処理は、ECG信号が表わすECGリズムがショック適応またはショック非適応であるかの判定に基づく出力を生成432することを含む。プロセス420は、例えば、出力回路または出力モジュール(例えば、出力スクリーン、オーディオ回路等)を用いることによって、判定に基づく出力を提供434することを含む。
【0115】
図4Fは、例えば、
図4B~4Cに示す技術320、370のうちの1つを用いて分析されてよい2つのセグメント438a~bを有する波形436の一例を示す。例えば、第1のセグメント438aは、いずれの高精度の句も決定的には満たさず、よって、例えば、技術320、370を用いて、分析は第2のセグメント438bの分析に進むことになる。図示の例においては、第2のセグメント438bは、高精度の句を決定的に満たし、よって、当該高精度の句が、波形436がショック適応またはショック非適応であることを示すか否かに基づく、決定に至ってよい。この場合、第2のセグメント438bは、ECGリズムがショック非適応であることのさらに強い指標を提供する。
【0116】
本明細書で説明する通り、ECG信号が表わすECGリズムが、ショック適応またはショック非適応であるかを可及的早期に判定することが関心事である場合、胸骨圧迫の間隔または中断の時間を可及的早期且つ効率的に分析することが好ましくてよい。例えば、たとえ、短時間であっても、胸骨圧迫が中止される任意の時点において、リズムがショック適応またはショック非適応であるかを判定するための、または、さらなる時間が必要であるかを判定するための、ECG分析を行うことが適切であってよい。いくつかの例において、胸骨圧迫の中断は、かなり短くてよい(例えば、およそ3秒未満)。例えば、救助者は、姿勢を変えたい、別の救助者と役割を変わりたい、気分転換したい、少し疲労傾向にあるかもしれず、あるいは別の理由で胸骨圧迫を一時停止する可能性がある。かかる場合、胸骨圧迫の再開時については不確定であり、患者の心臓状態を判定するためのその最小時間が無駄になるので、システムが、直ちにそのリズム分析を開始することが有益であってよい。いくつかの例において、胸骨圧迫の中断時間は、相当大きくよい(例えば、12~15秒より大きい)。例えば、救助者は、CPR胸骨圧迫を停止し、且つ、除細動システムがECG分析を実行するのを待機するよう命令されてよく、救助者は、ベンチレーションといった、全く別の蘇生活動に切り替えてよい。かかる場合、ECG分析はその通常コースを実行してよい。
【0117】
様々な実施例については、上記の通り、除細動器システムは、除細動器システムが、患者に実施されている胸骨圧迫の中断を識別し次第、またはその後まもなく、ECG分析を開始するよう構成されてよい。除細動器システムは、任意の好適な方法または技術によって、胸骨圧迫を追跡してよい。いくつかの実施例において、除細動器システムは、救助者が胸骨圧迫を施す箇所に、胸骨圧迫の存在を検出するための動きセンサ(例えば、加速度計、速度センサ、変位センサ)を組み込んでいる。例えば、加速度計は、胸骨圧迫センサに組み込まれてよく、救助者はCPR圧迫中に、患者の胸と両手との間に胸骨圧迫センサを配置してよい。胸骨圧迫センサによって生成される加速度信号は、適切に処理されてよい。さらに、かかる動きセンサを用いて、救助者に適切なCPRフィードバックを提供するために、胸骨圧迫の深さおよび速さを感知してよい。CPR胸骨圧迫が実施されない間の時間にあたるECG信号のみに基づいて、心臓リズムがショック適応であるかの判定をなす様々な実施例が、米国特許第6,961,612号(発明の名称「CPR Sensitive ECG Analysis in an Automatic External Defibrillator(自動体外式除細動器におけるCPR感知式ECG分析)」)に記載されており、当該内容はその全体が、本明細書に参照により援用されるものとし、本明細書に記載のシステムおよび方法と連携して用いられてよい。
【0118】
図4G~4Lは、除細動器システムが胸骨圧迫の中断が生じたかを早期に識別し、適切な分析アルゴリズムを適用する概略図を含む、説明としての実施例を示している。各実施例において、それぞれの概略図は、CPR胸骨圧迫を実施中の時間を示している。ここでさらに詳しく説明する通り、このCPRウィンドウ中、除細動器システムは随意で、胸骨圧迫から生じるアーチファクトを考慮しつつ、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムが検出されるかに関する継続的な分析指示を適用してよい。かかる継続的な分析指示は、ECG信号が表わすリズムがショック適応またはショック非適応であるかの指標を提供するために、適切なフィルタリング、周波数ベースの分析および/または他の好適な分析技術を含んでよい。この指標を用いて、除細動ショックを加えるべきかの判定をなしてよい(分析に続いて、または分析時点)。例えば、継続的な分析指示は、ECGリズムがショック適応である可能性を示してよく、かかる指標は、後続のハンズフリーECG分析を介して、後続的に確認されてよく、ハンズフリーECG分析では、CPR胸骨圧迫は行われない。一般に、ハンズフリーECG分析は、圧迫中の継続的なECG分析よりも、より正確なショック分析を提供してよい。(圧迫中に)用いられてよい好ましい継続的な分析指示アルゴリズムの例としては、米国特許第8,706,214号(発明の名称「ECG Rhythm Advisory Method(ECGリズム指示方法)」)および米国特許第8,880,166号(発明の名称「Defibrillator Display(除細動器ディスプレイ)」)に記載のものが挙げられる。これらの内容はそれぞれ、それらの全体が、本明細書に参照により援用されるものとする。
【0119】
上述の通り、患者から感知したECGリズムが、除細動ショックを加えるべきものであるかに関する最終判定をなすべく、よりクリーンなECG(例えば、CPR胸骨圧迫から生じるアーチファクトを有さない)を分析すべく、短時間の間、胸骨圧迫を停止する必要があってよい。従って、除細動システムは、例えば、除細動器のユーザインタフェースからのオーディオプロンプト(催促指示)および/またはビジュアルプロンプトを介して、ユーザにCPRの停止を促してよい。ユーザがこのプロンプトを認識し、CPR胸骨圧迫を加えるプロセスを中断すると、システムは、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムが存在するかを判定すべく、クリーンなECG(胸骨圧迫が不存在の)を分析することになる。しかしながら、ユーザが、CPRの停止のためのプロンプトを認識せず(例えば、見えていない/聞こえていない可能性がある、または除細動器からのプロンプトを無視する可能性がある)、胸骨圧迫を継続することがあり得る。胸骨圧迫の停止のプロンプトにも関わらず、ユーザが胸骨圧迫を継続する場合、システムは、ECGにおける胸骨圧迫アーチファクトを考慮した継続的な分析指示の適用を継続してよい。しかしながら、ユーザが胸骨圧迫を中止すると、システムは、直ちにまたは短時間内に、ECG分析のタイプを継続的な分析指示(圧迫を伴う)から、ショック適応リズムまたはショック非適応リズムが存在するかをより正確に確認可能なハンズフリー分析モード(圧迫を伴わない)へと切り替えてよい。
【0120】
図4Gに示す通り、除細動器システムが、ショックを加えるべきかの判定をなすためのECG信号の分析440のために、胸骨圧迫を中止すべきであると判定すると、救助者に対しCPRを停止し且つ患者から両手を放す(ハンズフリー)ようにとの命令プロンプト442が発行される。様々な実施例において、随意で、システムはハンズフリーECG分析の前に、短時間の間、一時停止してよい。いくつかの場合においては、この短い一時停止444は、ECG信号が、胸骨圧迫から生じた、存在または残存するアーチファクトを実質的に含んでいないことを確保するために、好ましくてよい。
図4Gの例は、ハンズフリーECG分析前の短い一時停止時間は、およそ1.5秒であることを示す一方、2秒未満、1.5秒未満、1秒未満、0.5秒未満、0.2秒未満、0.1秒未満等、任意の適切な一時停止時間が用られてよい。いくつかの実施例において、この図には示されていないものの、胸骨圧迫の中断を検出すると、ハンズフリーECG分析指示がただちに用いられてよい。
【0121】
図4Hは、命令プロンプトがシステムによって提供されるよりもさらに前に、胸骨圧迫が停止446される実施例を示す。早まった胸骨圧迫の中止は望ましくはない一方で、様々な理由のために、救助者がそのように行うことはよくあることである。かかる場合、この図には示されていないが、システムは、ハンズフリー分析を開始するために胸骨圧迫を中断すべきことを判定するまで、救助者に対し、胸骨圧迫を継続することを促してよく、またはどのくらいの間、救助者が圧迫を中止しているかを表示するアイドルタイマを表示させてよい。
図4Hの実施例は、CPRの停止のプロンプトの後、引き続き、短い時間の間、一時停止しているが、このような一時停止は必要ではないことを理解されたい。例えば、胸骨圧迫の中断が検出されると、システムは、このような一時停止をすることなく、自動的におよび/または直ちに、ハンズフリーECG分析指示を開始してよい。
【0122】
図4Iは、システムが、CPRの停止のための命令プロンプトを発行した時点を過ぎても、胸骨圧迫が、短い時間の間(例えば、1~2秒)、継続448される実施例を示す。この場合、システムは、圧迫が中止されるときまで、胸骨圧迫を追跡し、随意で、短い時間の間(例えば、およそ1.5秒)一時停止し、その後、本開示によるハンズフリーECG分析指示を開始する。
【0123】
図4Jは、
図4Iに示すものより長い時間450、胸骨圧迫が継続450される、別の実施例を示す。ここで、システムは、胸骨圧迫の追跡を継続し、十分に長い時間の後、システムは次に、救助者にCPRの停止をリマインドする後続の命令プロンプトを発行する。後続の命令プロンプトは、任意の好適な時点で提供されてよく、当該時点は、適切な時間間隔で予め定められてよいことを理解されたい。この特定の場合においては、システムは、およそ3秒後に後続のプロンプトを発行し、いくつかの場合において、この時間は、ECG分析の初期時間と同様であってよい。さらに図示される通り、胸骨圧迫が中断されるとき、システムは随意で、短時間の間(例えば、およそ1.5秒)一時停止し、その後、ハンズフリーECG分析指示を開始する。
【0124】
図4Kは、胸骨圧迫が、さらに長い時間継続454される実施例を示す。この例では、システムは、ユーザに胸骨圧迫を停止するよう命令する第1のプロンプト452を発行し、その後、十分長い時間間隔456(例えば、およそ3秒)の後、システムは次に、救助者にCPR圧迫の停止をリマインドする後続の命令プロンプト458を発行する。しかしながら、ここでは、システムは、後続の命令プロンプトの後、胸骨圧迫の感知を継続し、ハンズフリーCPR分析指示のさらなる遅延をもたらしている。様々な実施例において、ECG信号は、短い時間セグメント(例えば、およそ3秒)に従い追跡され、システムが胸骨圧迫の中断を識別すると、ハンズフリーCPR分析指示は、次の時間セグメントの開始時点で開始する。
図4Kにより具体的に図示される通り、システムは、CPR圧迫の停止の直近の命令プロンプトの後、およそ2秒経過して初めて、胸骨圧迫の中断を検出する。その後、ハンズフリーCPR分析指示が、およそ1秒後に開始され、つまり、3秒の時間経過の間隔が続く。しかしながら、特定の実施例については、後続の命令プロンプトの後、胸骨圧迫の中断が判定され次第、システムは随意の一時停止をすることなく、直ちにハンズフリーCPR分析指示を開始してよい。
【0125】
図4Lは、胸骨圧迫の停止の複数の命令プロンプト460、462にも関わらず、CPR胸骨圧迫の中断が検出されない別の説明としての実施例を示す。かかる場合、胸骨圧迫は中断されないままなので、ハンズフリーCPR分析指示を用いることはできない。この場合、継続的な分析指示アルゴリズム(胸骨圧迫アーチファクトを考慮するもの)が、胸骨圧迫が施される時間全体にわたり適用される。
【0126】
表10中に、句で用いられるパラメータのいくつか例が示されている。
【表10】
【0127】
図5A~5Bは、表10に示されるパラメータの一部に対応する特性を有する、波形500a~500bの例を示す。
【0128】
図5Aは、qrsr、widthvarおよびqrsvの値がどのように計算可能かを示す、例示的な波形500aを示す。例えば、この波形500aは、それぞれ幅1、幅2および幅3で識別される幅(ミリ秒で測定される)を有する3つのQRS複合502a~cを有する。さらに、QRS複合502a~c間の距離(RからRまでの測定)は、qrsr1およびqrsr2で識別される。パラメータqrsrは、例えば、qrsr1およびqrsr2等の複数のqrsr値の測定値を平均化することによって、計算されてよい。パラメータwidthvarは、例えば、width1、width2およびwidth3の測定値のばらつきを計算することによって、計算されてよい。パラメータqrsvは、例えば、qrsr1およびqrsr2等の複数のqrsr値のばらつきを計算することによって、計算されてよい。ばらつきは、関連する値(例えば、widthの値またはqrsrの値)を大きさの順序で並べ替え、それらを例えば20ミリ秒の間隔等の間隔でグループ化することで判定される。得られる間隔の数は、ばらつきに対応する。
【0129】
図5Bは、どのようにsvtbeatの値が計算されるかを示す、例示的な波形500bを示す。この波形500bは、8つの上室性頻拍症タイプの心拍510a~hを有する。
【0130】
ECGデータに基づき計算された1または複数のパラメータ(例えば、表10中に示されるパラメータ)は、ECGデータのセグメントにおける、ショック適応およびショック非適応リズムの識別に用いられる、様々な高精度の句および通常精度の句を定義するために用いられてよい。
図6A中に、心室頻拍のショック適応波形に係る例示的な波形600aが示されている。とりわけ、QRS幅が120msより大きく、且つ、幅のばらつきの度合いが限られているとき、これは、幅広複合リズムを表わしてよく、3秒の句が成立(満たされる)する。句は、ECG信号の特徴に対応するパラメータに対する一連の制約を表わす。いくつかの場合においては、400ms未満のR‐R間隔を持つ幅広複合リズムは、そのリズムがVTである場合、ショック適応であってよい。しかしながら、いくつかの場合については、高精度で、VTの存在を判定するためには、追加のチェックが必要であってよい。Svtbeat<3カウントが、そのリズムがSVTを表わすことを除外するかをチェックする。従って、句のすべての条件が満たされると、高精度で、ショック適応VTの存在が識別されてよい。
【0131】
図6B中に、3秒の句を満たす、ショック非適応の波形600bの一例が示されている。QRS複合の平均幅が小さく、且つ、幅のばらつきが限られているとき、この句が成立し、条件は、幅狭複合リズムを表わしてよい。平均振幅は、300μVより大きいので、QRS検出が誤りであったという可能性は低い。従って、幅狭複合およびR‐R間隔>265msの場合、基礎となるECGデータに対応するリズムは、高い特異度の精度で、ショック非適応であるとして識別されてよい。
【0132】
ショック非適応の結果を返す、ECG信号が正常洞調律の特性を示すかを判定するための句の別の実施例において、句は、ECG信号が、正常なQRSを示す単一のクリアなピークを有するかを評価する。句は、信号が、特定の閾値より大きい最大傾斜を有するか、および/または、信号が分析される時間セグメントの傾斜が、別の閾値未満のままであるような、かなりの時間にわたる平坦性を示すか、を識別してよい。例えば、その時間セグメントに50~100μVより大きい(例えば、または100~150μVより大きい、150~200μVより大きい等)最大傾斜が存在するように見える場合、および/または、分析される時間セグメントの傾斜が50msより長い時間(例えば、100msより長い、150msより長い、200msより長い等)にわたり、30μV/ms未満(例えば、または20マイクロボルト/ミリ秒未満、10μV/ms等)のままである場合、正常洞調律の特性であるピークが肯定的に識別されてよい。かかる句の例は、任意の好適な時間セグメント、例えばその中でも特に、0.5秒、1秒、1.5秒、2秒、2.5秒、3秒等に対し、評価されてよい。
【0133】
ショック非適応の結果を返す、ECG信号が、心静止タイプのリズムの特性を示すかを判定するための句のさらなる実施例においては、ECG信号は、かなり低い振幅に対し評価される。ここで、句は、信号の最大振幅または最小振幅の大きさが、特定の閾値未満であるかを識別してよい。例えば、最大振幅の大きさが、150μV未満である場合(例えば、または100μV未満、50μV未満等)、および/または、最小振幅の大きさが、150μV未満である場合(例えば、または100μV未満、50μV未満等)、平坦線リズムが判定されてよい。この句の例は、任意の好適な時間セグメント、例えば、その中でも特に、0.5秒、1秒、1.5秒、2秒、2.5秒、3秒等に対し、評価されてよい。
【0134】
ショック適応の結果を返す、ECG信号が、VFタイプのリズムの特性を示すかを判定するための句の実施例においては、ECG信号は、十分な時間にわたり持続する多数のピークに対し、評価される。句は、ECG信号の最大傾斜が、特定の閾値より大きいか、信号がほとんど平坦性を示さないか、および/または、波形が零位と複数回交差するか、を識別するよう構成されてよい。例えば、句は、時間セグメントの最大傾斜が、20μVより大きい(例えば、または50μVより大きい、100μVより大きい等)かを識別することを試行してよい。さらに、分析される時間セグメントの傾斜が、150ms未満(例えば、または100ms未満、50ms未満等)の時間にわたり、30μV/ミリ秒未満(例えば、または20マイクロボルト/ミリ秒未満、10μV/ms未満等)のままであるかを判定すべく、句は信号を分析してよい。また、波形が零位と5回より多い回数(例えば、または、10回より多く、20回より多く、30回より多く等)交差するかを判定すべく、句は信号を分析してよい。かかる句の例は、任意の適切な時間、例えば、その中でも特に、1秒、1.5秒、2秒、2.5秒、3秒等に対し、評価されてよい。
【0135】
ECG信号がVTタイプのリズムであるかについて、ECG信号を評価する別の句の実施例において、句は、ECG信号が幅広の複合波を持つ高周波数を示すかを判定する。特に、波形のピーク間の平均間隔が特定の閾値未満であるか、QRS複合の平均幅が閾値より大きいか、および/または、QRS複合の幅のばらつき全体が比較的一定であるかを識別すべく、句は信号を評価してよい。例えば、句は、分析の時間セグメントのECG信号のピーク間の平均間隔が、500ms未満(例えば、または400ms未満、350ms未満、300ms未満、250ms未満等)であるかを評価してよい。また、句は、QRS複合の平均幅が、50msより大きいか(または、例えば、100msより大きい、150msより大きい、200msより大きい等)を判定してよいことに加え、QRS複合の幅のばらつきが、実質的に一定であるかを評価してよい。
【0136】
ショック適応リズムを返す、ECG信号が、VTタイプのリズムの特性を示すかを判定するための句の別の実施例において、ECGは、4~8秒の時間(例えば、およそ6秒)にわたり、幅広QRS複合を持つ、速い心拍数について評価される。句は、心拍数が特定の閾値を超える(例えば、120bpmより大きい、130bpmより大きい、140bpmより大きい、150bpmより大きい、160bpmより大きい等)か、ピーク間の間隔が閾値未満であるか(例えば、600ms未満、500ms未満、400ms未満、300ms未満等)、QRS複合の幅が閾値より大きいか(例えば、120msより大きい、130msより大きい、140msより大きい、150msより大きい、160msより大きい等)、QRS複合の幅のばらつき全体が比較的一定か、および/または、信号がほとんど平坦性を示さないか(例えば、分析される時間セグメント中のECGが、100msより大きい時間にわたり50μV/ms未満のままである)、を識別するよう構成されてよい。また、本明細書で説明する通り、本明細書に記載の高速ECG分析のシステムおよび方法は、ECGリズムがショック適応またはショック非適応かについてECG分析が不確定な場合、ECG分析の時間をインクリメントして延長することを含んでよい。例えば、
図6Cを参照すると、ECG分析は、ECG信号600cの第1の領域602で開始してよく、第1の領域602は、およそ1秒間継続するものとして図示されている。しかしながら、この例においては、ECG信号は、ショック適応またはショック非適応の最終判定をなすために、1秒の時間セグメントに関連付けられた句に対し、十分な情報を提供しない可能性がある。従って、最終決定をなすためのさらなる情報を収集すべく、ECG分析の当該時間セグメントは、インクリメントして延長されてよい。
図6Cに図示する通り、第2の領域604において、当該可変長時間セグメントは、もう1秒間延長される。分析の延長ウィンドウにおいて、正常洞の特性を示すQRS波が識別され、ショック非適応ECGリズムの識別がもたらされる。
【0137】
上に特記した通り、表2は、初期ルールセットのための3秒の句として用いられてよい複数の例示的な句を含む。一例として、ECG分析の初期時間(例えば、3秒)の間に、高精度とラベル付けされた句のいずれかが満たされる場合、さらなる分析の必要性なしで、リズムがショック適応またはショック非適応であるかの決定がなされる。本明細書で説明する通り、初期時間は、任意の適切な時間にわたってよいことを理解されたい。例えば、分析の他の時間セグメントのための表1および表3に示されるものと同様の例示的な句が、適用されてよい。
【0138】
表3は、調整ルールセットのための、6秒の句として用いられてよい複数の例示的な句を含む。上記の例で説明を続けると、高精度の句のいずれもが満たされない場合、分析の時間はさらに進行し、調整ルールセットが適用される。従って、初期時間は、ECG分析の調整された時間(例えば、6秒)に延長されてよい。その調整された時間については、特定の実施例について上記した通り、延長された継続期間セグメントは、さらに細分化されてよく、新しい句またはルールセットは、当業者に既知の投票モデルのような技術を使用してよい。かかる場合、新しく調整された、より長い継続時間の句は、調整された時間にわたり、複数の時間セグメントに別個に適用されてよい(例えば、複数の3秒の時間セグメント、最大6~9秒または6~12秒分のECG分析を追加)。当該複数の時間セグメントの各々に対し、ショック適応またはショック非適応の投票が返され、ショックまたは非ショックかに関する決定は、当該投票の結果に基づく。
【0139】
様々な実施例において、追加情報がない場合よりも速やかに、患者がショック適応状態またはショック非適応状態であるかの判定に導く情報を提供すべく、心臓の電気活動の感知に用いられるセンサ以外のセンサからの入力が、分析アルゴリズムによって用いられてよい。例えば、心臓壁の運動を測定するために、動きセンサ(例えば、加速度計)が用いられてよく、動きセンサは、患者の心臓が正常洞調律を達成したか否かの指標をさらに提供してよいことが判明している。この概念は、2016年6月10日に出願された、国際特許出願第PCT/US16/37081号(発明の名称「Detection of Myocardial Contractions Indicative of Perfusion(灌流を示す心筋収縮の検出)」)に記載されており、当該出願は、本明細書にその全体が、参照により援用されるものとする。追加のセンサ入力が、心臓が機械的に規則正しく拍動しているという証拠を提供する場合、分析アルゴリズムは、除細動ショックを患者に加えるべきではないという結論により早期に至ってよい。代替的に、追加のセンサが、心臓が不規則に拍動していることを示す場合、分析アルゴリズムは、患者に除細動処理を行うべきかに関する最終判定をなすために、さらに多くの情報を必要としてよい。
【0140】
本開示の教示は、概して、体外式医療モニタリングデバイスおよび/または治療デバイス(例えば、患者の身体に完全に植え込みされないデバイス)に適用されてよいことを理解されたい。すなわち、心臓に除細動ショックを加えることが適切かを早期に判定すべく、患者のECGを分析するための本明細書に記載のアルゴリズムは、体外式医療モニタリングデバイスおよび/または治療デバイスに適用可能である。体外式医療デバイスとしては、例えば、患者が自身の日常業務に取り組む際、患者と共に移動可能な且つそのように設計された携帯型医療デバイスが挙げられてよい。携帯型医療デバイスの一例としては、ウェアラブル除細動器(WCD)、ウェアラブル心臓モニタリングデバイス等のウェアラブル医療デバイス、院内ウェアラブル除細動器等の院内デバイス、短期ウェアラブル心臓モニタリングデバイスおよび/または治療デバイス、モバイルテレメトリデバイス並びに他の同様のウェアラブル医療デバイスが挙げられる。
【0141】
ウェアラブル医療デバイスは、患者による継続的(例えば、実質的にまたは略継続的)な使用が可能である。いくつかの実施例において、継続的な使用は、本質として、実質的にまたは略継続的であってよい。つまり、ウェアラブル医療デバイスの使用が一時的に中止される散発的な期間(例えば、患者が入浴する間、患者が新しいおよび/または異なるガーメントに着替える間、バッテリが充電/取り替えられる間、ガーメントを洗濯する間等)を除き、ウェアラブル医療デバイスは、継続的に用いられてよい。本明細書に記載のかかる実質的にまたは略継続的な使用は、なおも継続的な使用と称されてよい。例えば、ウェアラブル医療デバイスは、一日に24時間もの間、患者に着用されるように構成されてよい。いくつかの実施例において、患者は、当該ウェアラブル医療デバイスを一日のうち短い部分(例えば、入浴のために30分間)取り外してよい。
【0142】
さらに、ウェアラブル医療デバイスは、長期使用または長時間使用の医療デバイスとして構成されてよい。かかるデバイスは、数日、数週間、数か月、または数年さえもの長時間にわたり患者に使用されるよう構成されてよい。いくつかの例において、ウェアラブル医療デバイスは、少なくとも1週間の長時間にわたり患者に使用されてよい。いくつかの例において、ウェアラブル医療デバイスは、少なくとも30日の長時間にわたり患者に使用されてよい。いくつかの例において、ウェアラブル医療デバイスは、少なくとも1か月の長時間にわたり患者に使用されてよい。いくつかの例において、ウェアラブル医療デバイスは、少なくとも2か月の長時間にわたり患者に使用されてよい。いくつかの例において、ウェアラブル医療デバイスは、少なくとも3か月の長時間にわたり患者に使用されてよい。いくつかの例において、ウェアラブル医療デバイスは、少なくとも6か月の長時間にわたり患者に使用されてよい。いくつかの例において、ウェアラブル医療デバイスは、少なくとも1年の長時間にわたり患者に使用されてよい。いくつかの実施例において、長時間の使用は、医師または他の介護者が、ウェアラブル医療デバイスの使用の停止のための特定の命令を患者に与えるまで中断されなくてよい。
【0143】
長時間の着用に関わらず、ウェアラブル医療デバイスの使用は、上記のような、患者による継続的または略継続的な着用を含んでよい。例えば、継続的な使用は、モニタリング期間、および、デバイスはモニタリングされていない可能性があるが、別の事情で依然として患者に着用されている、または、別の事情で患者に取り付けられている期間の両方に期間における、例えば、本明細書に記載したような1または複数の電極を通しての、患者へのウェアラブル医療デバイスの継続的な着用または取り付けを含んでよい。ウェアラブル医療デバイスは、心臓関連の情報(例えば、不整脈情報等を含む、ECG情報)および/または心臓以外の情報(例えば、血液酸素、患者の体温、グルコースレベル、組織の液体レベルおよび/または肺の音)のために患者を継続的にモニタリングするよう構成されてよい。ウェアラブル医療デバイスは、そのモニタリングを周期的または非周期的な間隔または時間で実行してよい。例えば、当該間隔または時間の間のモニタリングは、ユーザアクションまたは別のイベントによってトリガされてよい。
【0144】
上に特記した通り、ウェアラブル医療デバイスは、心臓関連パラメータに加え、患者の他の生理的パラメータをモニタリングするよう構成されてよい。例えば、ウェアラブル医療デバイスは、例えば、その中でも特に、肺の音(例えば、マイクおよび/または加速度計を用いて)、呼吸の音、睡眠関連パラメータ(例えば、いびき、睡眠時無呼吸)、組織液(例えば、無線周波数送信機およびセンサ)をモニタリングするよう構成されてよい。
【0145】
他のウェアラブル医療デバイスの例としては、戦闘地帯または緊急車両内等、一定の特殊な条件および/または環境での使用のための自動心臓モニタおよび/または除細動器が含まれる。かかるデバイスは、救命救急において直ちに(または実質的に直ちに)使用できるように構成されてよい。いくつかの例において、本明細書に記載のウェアラブル医療デバイスは、例えば、患者に治療的なペーシング(歩調取り)脈拍を供給可能といった具合に、ペーシングが有効化されてよい。
【0146】
実施例において、例示的な治療用医療デバイスとしては、例えば、院内ウェアラブル除細動器といった、院内継続的モニタリング除細動器および/またはペーシングデバイスが含まれてよい。かかる例において、電極は、患者の皮膚に粘着式にて取り付けられてよい。例えば、電極としては、使い捨ての粘着性電極を含んでよい。例えば、電極には、別個の感知および治療電極粘着性パッチ上に配置された感知コンポーネントおよび治療コンポーネントが含まれてよい。いくつかの実施例において、感知コンポーネントおよび治療コンポーネントの両方は、統合され且つ同一の電極粘着性パッチ上に配置されてよく、パッチが患者に取り付けられてもよい。例示的な実施例においては、電極は、前面粘着性取り付け可能治療電極、背面粘着性取り付け可能治療電極、および複数の粘着性取り付け可能感知電極を含んでよい。例えば、前面粘着性取り付け可能治療電極は、患者の胴部の前面に取り付けられ、ペーシング治療または除細動治療を施す。同様に、背面粘着性取り付け可能治療電極は、患者の胴部の背面に取り付けられる。一例のシナリオにおいては、少なくとも3つのECG粘着性取り付け可能感知電極が、熟練した専門家による処方に従い、少なくとも患者の右腕近くの胸の上方、および患者の左腕近くの胸の上方、および患者の胸の下方へと向けて取り付けられてよい。
【0147】
院内除細動器および/またはペーシングデバイスによって、モニタリングされている患者は、かなりの時間(例えば、患者の病院内の滞在期間の90%以上にわたり)、病院のベッドまたは部屋にとどめられてよい。よって、ユーザインタフェースは、患者以外のユーザ、例えば看護師と、デバイスの初期基線設定、患者パラメータの設定および調整、並びにデバイスバッテリの交換等、デバイス関連機能のために、やり取りするよう構成されてよい。
【0148】
実施例において、治療用医療デバイスの一例としては、例えば、短期外来患者用ウェアラブル除細動器等、短期継続的モニタリング除細動器および/またはペーシングデバイスが含まれてよい。例えば、かかる短期外来患者用ウェアラブル除細動器は、失神を呈する患者用に医師が処方してよい。ウェアラブル除細動器は、例えば、異常な生理的機能を示す可能性のある異常パターンに関し、患者の心臓活動を分析することによって、失神を呈する患者をモニタリングするよう構成されてよい。例えば、かかる異常パターンは、症状の発現の前、間、または後に生じ得る。短期ウェアラブル除細動器のかかる例示的な実施例においては、電極アセンブリは、患者の皮膚に粘着式に取り付けられてよく、上記の院内除細動器と同様の構成を有してよい。
【0149】
いくつかの実施例において、医療デバイスは、治療機能または治療機能を有さない患者モニタリングデバイスであってよい。かかる患者モニタリングデバイスは、患者が、除細動等の電気療法を必要としているかを判定するために、本明細書に記載のアルゴリズムを備えてよい。例えば、かかる患者モニタリングデバイスは、例えば、患者の状態をリモートでモニタリングおよび/または診断するために、患者の1または複数の心臓生理的パラメータをモニタリングするよう構成された心臓モニタリングデバイスまたは心臓モニタを含んでよい。例えば、かかる心臓生理的パラメータは、患者の心電図(ECG)情報および他の関連する心臓情報を含んでよい。心臓モニタリングデバイスは、患者が、日常業務に従事する際、持ち運び可能なポータブルデバイスである。心臓モニタは、複数の心臓感知電極を通して、患者のECGを検出するよう構成されてよい。例えば、心臓モニタは、患者の胴部の周囲に配置された、少なくとも3つの粘着性心臓感知電極を介して、患者に取り付けられてよい。かかる心臓モニタは、例えば、不規則な心臓症状および/または状態を報告する患者集団において、モバイル心臓テレメトリ(MCT)および/または継続的心臓イベントモニタリングアプリケーションで用いられる。例示的な心臓状態としては、心房細動、徐脈、頻脈、房室ブロック、LGL(Lown‐Ganong‐Levine)症候群、心房粗動、洞房結節機能不全、脳虚血、失神、心房一時停止および/または心臓動悸が含まれてよい。例えば、かかる患者は、例えば、10~30日またはそれ以上といったような、長時間にわたる心臓モニタリングを処方されてよい。いくつかのモバイル心臓テレメトリアプリケーションにおいては、ポータブル心臓モニタは、患者を心臓の異常に関し、実質的に継続的にモニタリングするよう構成されてよく、かかる異常が検出されると、当該モニタは、自動的にその異常に関連するデータをリモートサーバに送信してよい。リモートサーバは、24時間体制のモニタリングセンタ内に設置されてよく、そこでは、データは専門の心臓に熟練したレビューワおよび/または介護者によって解釈され、フィードバックが、患者および/または指定の介護者に、詳細な周期的またはイベントリガ式レポートを介して提供される。特定の心臓イベントモニタリングアプリケーションにおいては、心臓モニタは、患者が心臓モニタ上のボタンを手動で押して、症状を報告できるよう構成される。例えば、患者は、結滞、息切れ、軽いふらつき、激しい心拍数、疲労、卒倒、胸部不快感、衰弱、めまい、および/または、ふらつき等の症状を報告してよい。心臓モニタは、予め定められた時間(例えば、報告された症状の1~30分前および1~30分後)にわたり、患者の予め定められた生理的パラメータ(例えば、ECG情報)を記録してよい。心臓モニタは、患者の心臓関連パラメータ以外の生理的パラメータをモニタリングするよう構成されてよい。
【0150】
[例示的なウェアラブル医療デバイス]
【0151】
図7は、本明細書に記載の1または複数の構成を実施するよう構成された、患者702が着用可能な体外式携帯型の例示的な医療デバイス700を示す。例えば、医療デバイス700は、患者に実質的に体外式に配置されるよう構成された非侵襲的医療デバイスであってよい。かかる医療デバイス700は、例えば、患者が自身の日常業務に従事する際、患者と共に移動可能な且つそのように設計された携帯型医療デバイスであってよい。例えば、ゾール(登録商標)メディカルコーポレーションから入手可能なLifeVest(登録商標)ウェアラブル除細動器等、本明細書に記載の医療デバイス700は、患者に身体取り付けされてよい。かかるウェアラブル除細動器は通常、一度に2~3月にわたり、略継続的に、または、実質的に継続的に着用される。当該除細動器が患者に着用されている時間の間中、ウェアラブル除細動器は、患者の生命兆候を継続的に、または実質的に継続的にモニタリングするよう構成されてよく、治療が必要であるとの判定がなされるとすぐに、1または複数の治療電気パルスを患者に供給するよう構成されてよい。例えば、かかる治療的ショックは、ペーシング、除細動、または経皮的電気神経刺激(TENS)パルスであってよい。
【0152】
医療デバイス700は、以下のうちの1または複数を含んでよい。すなわち、ガーメント710、1または複数の感知電極712(例えば、ECG電極)、1または複数の治療電極714、医療デバイスコントローラ720、接続ポッド730、患者インタフェースポッド740、ベルト750またはこれらの任意の組み合わせ、である。いくつかの例において、医療デバイス700の複数のコンポーネントのうちの少なくとも一部は、ガーメント710に取り付ける(または、いくつかの例においては、ガーメント710に永久的に統合される)よう構成されてよく、ガーメント710は、患者の胴の周りで着用されてよい。
【0153】
医療デバイスコントローラ720は、ガーメント710に取り付けられてよい感知電極712に作動可能に連結されてよく、例えば、感知電極712が、ガーメント710に組み込まれる、または、例えば、面ファスナを用いて、ガーメントに取り外し可能に取り付けされる。いくつかの実施例において、感知電極712は、ガーメント710に永久的に統合されてよい。医療デバイスコントローラ720は、治療電極714に作動可能に連結されてよい。例えば、また、治療電極714はガーメント710に組み込まれてもよく、あるいは、いくつかの実施例において、治療電極714は永久的にガーメント710に統合されてよい。
【0154】
図7に示すもの以外のコンポーネント構成も可能である。例えば、感知電極712は、患者702の身体の周囲の様々な箇所に取り付けられるよう構成されてよい。感知電極712は、接続ポッド730を介して、医療デバイスコントローラ720に作動可能に連結されてよい。いくつかの実施例において、感知電極712は、患者702に粘着式に取り付けられてよい。いくつかの実施例において、感知電極712および治療電極714は、単一の統合パッチ上に含まれてよく、患者の身体に粘着式に取り付けられてよい。
【0155】
感知電極712は、1または複数の心臓信号を検出するよう構成されてよい。かかる信号の例としては、ECG信号、胸壁運動、および/または患者からの他の感知された心臓の生理的信号が含まれる。また、感知電極712は、組織の液体レベル、肺の音、呼吸音、患者の動き等といった、他のタイプの患者の生理的パラメータを検出するよう構成されてもよい。例示的な感知電極712は、例えば、2001年6月26日発行の米国特許第6,253,099号(発明の名称「Cardiac Monitoring Electrode Apparatus and Method(心臓モニタリング電極装置および方法」)に記載された五酸化タンタル電極等の酸化物被膜を備えた金属電極を含んでよい。当該内容は、本明細書に参照により援用されるものとする。
【0156】
いくつかの例において、また、治療電極714は、ECG信号および患者の他の生理的信号を検出するよう構成されたセンサを含むよう構成されてもよい。いくつかの例において、接続ポッド730は、心臓信号を医療デバイスコントローラ720に送信する前に、これらの心臓信号を増幅、フィルタリングおよびデジタル化するよう構成された信号プロセッサを含んでよい。1または複数の治療電極714は、医療デバイス700が、かかる治療が、感知電極712によって検出され、且つ、医療デバイスコントローラ720によって処理された信号に基づいて保証されることを判定するとき、1または複数の治療的除細動ショックを患者702の身体に施すよう構成されてよい。例示的な治療電極714には、特定の実施例において、治療的ショックを施す前に、導電性ゲルを金属電極に供給するよう構成された1または複数の導電性ゲル配置デバイスを含む、ステンレス鋼電極等の導電性金属電極を含んでよい。いくつかの実施例において、本明細書に記載の医療デバイスは、治療用医療デバイスと、患者をモニタリングのみするよう構成されたモニタリング医療デバイス(例えば、治療的機能を施さない、または実行しない)との間で切り替わるよう構成されてよい。例えば、随意で、治療電極714等の治療コンポーネントおよび関連回路は、医療デバイスから切り離され(または医療デバイスに連結され)てよく、または、医療デバイスからオフ(または医療デバイスへのオン)に切り替えられてよい。例えば、医療デバイスは、治療モードで動作するよう構成されたオプションの治療要素(例えば、除細動電極および/またはペーシング電極、コンポーネントおよび関連回路)を有してよい。治療用医療デバイスを、特定用途(例えば、モニタリングモードのみでの動作)または特定患者のためのモニタリング医療デバイスに変換する手段としてのオプションの治療要素は、医療デバイスから物理的に切り離されていてよい。代替的に、オプションの治療要素は、非アクティブ化(例えば、物理的切り替えまたはソフトウェア切り替えにより)され、実質的に、治療用医療デバイスを特定の生理学的目的または特定の患者のためのモニタリング医療デバイスにしてよい。ソフトウェア切り替えの一例としては、医療デバイスの治療要素を非アクティブ化すべく、権限を付与された人が、医療デバイスの保護されたユーザインタフェースにアクセスし、且つ、予め構成されたオプションを選択すること、または、ユーザインタフェースを介して、特定の他のユーザアクションを実行することを行ってよい。
【0157】
[WMD/WCDコントローラの説明]
【0158】
図8は、医療デバイスコントローラ720のサンプルのコンポーネントレベルのビューを示す。
図8中に示される通り、医療デバイスコントローラ720は、治療供給回路802、データストレージ804、ネットワークインタフェース806、ユーザインタフェース808、少なくとも1つのバッテリ810、センサインタフェース812、アラームマネージャ814および少なくとも1つのプロセッサ818を含んでよい。患者モニタリング医療デバイスは、上記に説明したものと同様のコンポーネントを含むが、治療供給回路802(点線で示す)を含まない、医療デバイスコントローラ720を含んでよい。
【0159】
治療供給回路802は、治療を患者に施すよう構成された1または複数の電極820(例えば、
図7に関し上記したような、治療電極714a~b)に連結されてよい。例えば、治療供給回路802は、治療的ショックを生成および施すよう構成された回路コンポーネントを含んでよく、または当該回路コンポーネントに作動可能に接続されてよい。回路コンポーネントは、例えば、レジスタ、キャパシタ、リレーおよび/またはスイッチ、hブリッジ等の電気ブリッジ(例えば、複数の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、すなわちIGBTを含む)、電圧および/または電流測定コンポーネント、並びに、回路コンポーネントが、治療供給回路と協働して、且つ1または複数のプロセッサ(例えば、プロセッサ818)の制御下、動作し、例えば、1または複数のペーシングまたは除細動治療パルスを提供するように構成および接続された他の同様の回路コンポーネントを含んでよい。
【0160】
ペーシングパルスは、例えば、固定レートペーシング、デマンドペーシング、抗頻脈ペーシング等を用いて、徐脈(例えば、30脈拍数/分未満)および頻脈(例えば、150脈拍数/分より多い)等の不整脈を治療するために用いられてよい。除細動パルスを用いて、心室頻拍および/または心室細動を治療してよい。
【0161】
キャパシタは、複数のキャパシタ(例えば、2、3、4以上のキャパシタ)から成る並列接続されたキャパシタバンクを含んでよい。これらのキャパシタは、除細動パルスの放電中に、直列接続に切り替えられてよい。例えば、およそ650のマイクロファラッドの4個のキャパシタが用いられてよい。キャパシタは、350ボルトから500ボルトの範囲内のサージ定格を有してよく、バッテリパックからおよそ15~30秒で充電されてよい。
【0162】
例えば、各除細動パルスは、60~180ジュールの範囲内のエネルギーを供給してよい。いくつかの実施例において、除細動パルスは、二相性切断指数波形であってよく、それにより、信号は、正の部分と負の部分とを(例えば、帯電方向)を切り替えてよい。このタイプの波形は、他のタイプの除細動パルス(例えば、単相パルス等)と比べた場合、より低いエネルギーレベルでの患者の除細動に有効であってよい。例えば、エネルギー波形の2相の振幅および幅は、患者の身体インピーダンスに関わらず、正確なエネルギー量(例えば、150ジュール)を供給するように自動的に調整されてよい。治療供給回路802は、例えば、プロセッサ818の制御下、切り替えおよびパルス供給の動作を実行するよう構成されてよい。エネルギーが患者に供給される際、供給されるエネルギー量は、追跡されてよい。例えば、パルス波形が、パルスが供給されている患者の身体インピーダンス等の要因に基づき、動的に制御される場合であっても、エネルギー量は予め定められた一定値に保持されてよい。
【0163】
データストレージ804は、フラッシュメモリ、ソリッドステートメモリ、磁気メモリ、光メモリ、キャッシュメモリ、これらの組み合わせおよびその他等の複数の非一時的コンピュータ可読媒体のうちの1または複数を含んでよい。データストレージ804は、医療デバイスコントローラ720の動作に用いられる、実行可能命令およびデータを格納するよう構成されてよい。特定の実施例において、データストレージは実行可能命令を含んでよく、当該命令は、実行時に、プロセッサ818に、1または複数の機能を実行させるよう構成される。
【0164】
いくつかの例において、ネットワークインタフェース806は、通信ネットワークを介した、医療デバイスコントローラ720と、1または複数の他のデバイス若しくはエンティティとの間の情報通信を促進させてよい。例えば、医療デバイスコントローラ720が、携帯型医療デバイス(医療デバイス700等)内に含まれる場合、ネットワークインタフェース806は、リモートサーバまたは他の同様のコンピューティングデバイス等のリモートコンピューティングデバイスと通信するよう構成されてよい。
【0165】
特定の実施例においては、ユーザインタフェース808は、入力デバイス、出力デバイス、および入/出力デバイスと、デバイスの動作を駆動するよう構成されたソフトウェアスタックとの組み合わせ等の1または複数の物理的インタフェースデバイスを含んでよい。これらのユーザインタフェース要素は、位置特有の処理に関連する内容を含む、視覚的、聴覚的および/または触知的内容をレンダリングしてよい。故に、ユーザインタフェース808は入力を受信または出力を供給してよく、これにより、ユーザが、医療デバイスコントローラ720と対話できるようにする。
【0166】
医療デバイスコントローラ720は、また、医療デバイスコントローラ720に統合された1または複数のコンポーネントに電力を供給するよう構成された少なくとも1つのバッテリ810を含んでもよい。バッテリ810は、再充電可能なマルチセルバッテリパックを含んでよい。例示的な一実施例において、バッテリ810は、電力を医療デバイスコントローラ720内の他のデバイスコンポーネントに電力を供給する3個以上の2200mAhリチウムイオン電池を含んでよい。例えば、バッテリ810は、20mA~1000mA出力の範囲内(例えば、40mA)でその電力出力を供給してよく、充電と充電との間の24時間、48時間、72時間またはそれ以上の実行時間をサポートしてよい。特定の実施例においては、バッテリ容量、実行時間およびタイプ(例えば、リチウムイオン、ニッケルカドミウムまたはニッケル水素)は、医療デバイスコントローラ720の特定の用途に最も適合するように変更されてよい。
【0167】
センサインタフェース812は、患者の1または複数の生理的パラメータをモニタリングするよう構成された1または複数のセンサに連結されてよい。図示の通り、センサは、有線接続または無線接続を介して、医療デバイスコントローラ720に連結されてよい。センサは、1または複数の心電図(ECG)電極822(例えば、
図7に関連して上記した感知電極712と同様のもの)、他の生理的センサまたは動きセンサ824、および組織液モニタ826(例えば、ウルトラワイドバンド無線周波数デバイスに基づく)を含んでよい。
【0168】
ECG電極822は、患者のECG情報をモニタリングしてよい。例えば、ECG電極822は、患者のECG情報を測定するため、患者の電気生理学の変化を測定するよう構成された導電性電極および/または静電容量電極であってよい。ECG電極822は、上記のようなアルゴリズムを用いる後続の分析のために、ECG信号を記述した情報をセンサインタフェース812に送信してよい。かかる分析は、プロセッサ818またはシステムに関連付けられた別のプロセッサによって実行されてよい。
【0169】
組織液モニタ826は、患者の身体組織における液体レベルおよび蓄積を評価すべく、無線周波数(RF)ベースの技術を用いてよい。例えば、組織液モニタ826は、心不全の患者の肺水腫または肺鬱血の診断およびフォローアップに典型的な、肺の中の液体含有量を測定するよう構成されてよい。組織液モニタ826は、RF波を患者の組織を通るように向け、波が組織を通過したことに応答して、出力RF信号を測定するよう構成された、1または複数のアンテナを含んでよい。特定の実施例において、出力RF信号は、患者の組織内の液体レベルを示すパラメータを含む。組織液モニタ826は、後続の分析のために、組織の液体レベルを示す情報をセンサインタフェース812に送信してよい。
【0170】
センサインタフェース812は、患者パラメータを示す他の患者データを受信すべく、感知電極/他のセンサのうちの任意のものまたはこれらの組み合わせに連結されてよい。センサからのデータが、センサインタフェース812によって受信されると、データは、プロセッサ818によって、医療デバイスコントローラ720内の適切なコンポーネントに宛てられてよい。例えば、心臓データが、センサ824によって収集され、センサインタフェース812に送信される場合、センサインタフェース812は、データをプロセッサ818に送信してよく、するとプロセッサ818が、データを心臓イベント検出器にリレーする。また、心臓イベントデータは、データストレージ804上に格納されてもよい。
【0171】
特定の実施例においては、アラームマネージャ814は、アラームプロファイルを管理し且つ1または複数の目的の受信者に対し、アラームプロファイル内で当該目的の受信者にとって関心があるものとして指定されたイベントを通知するよう構成されてよい。これら目的の受信者には、ユーザ(患者、医師およびモニタリング人員)およびコンピュータシステム(モニタリングシステムまたは緊急応答システム)等の外部エンティティが含まれてよい。アラームマネージャ814は、ハードウェアまたはハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせを用いて実施されてよい。例えば、いくつかの例において、アラームマネージャ814は、データストレージ804内に格納され、且つプロセッサ818によって実行されるソフトウェアコンポーネントとして実施されてよい。この例においては、アラームマネージャ814内に含まれる命令は、プロセッサ818に、アラームプロファイルを構成すること、および、アラームプロファイルを用いて目的の受信者に通知すること、を実行させてよい。他の例においては、アラームマネージャ814は、プロセッサ818に連結され、且つ、アラームプロファイルを管理するように、および、アラームプロファイル内で指定されたアラームを用いて目的の受信者に通知するように構成された、特定用途向け集積回路(ASIC)であってよい。故に、アラームマネージャ814の例は、特定のハードウェアまたはソフトウェアによる実施に限定はされない。
【0172】
いくつかの実施例において、プロセッサ818は、それぞれが、操作されたデータをもたらす一連の命令を実行するように、および/または、医療デバイスコントローラ720の他のコンポーネントの動作を制御するように構成された1または複数のプロセッサ(または、1または複数のプロセッサコア)を含む。いくつかの実施例において、特定のプロセス(例えば、心臓モニタリング)を実行するとき、プロセッサ818は、受信された入力データに基づき、特定のロジックベースの判定をなすよう構成されてよい。さらに、プロセッサ818は、プロセッサ818および/または他のプロセッサ若しくはプロセッサ818が通信可能に連結された回路によって実行されるべき、後続の処理を制御または通知するために使用されてよい、1または複数の出力を提供するよう構成されてよい。故に、プロセッサ818は、特定の入力刺激に対し、特定の方法で反応し、その入力刺激に基づく対応する出力を生成する。いくつかの場合において、プロセッサ818は、一連のロジカル遷移を経てよく、当該ロジカル遷移においては、様々な内部レジスタ状態および/またはプロセッサ818の内部または外部の他のビットセル状態を高ロジックまたは低ロジックに設定してよい。本明細書でプロセッサ818に言及するとき、プロセッサ818は、ソフトウェアが、プロセッサ818に連結されたデータストアに格納される機能を実行するよう構成されてよく、当該ソフトウェアは、プロセッサ818が、当該機能が実行されることをもたらす一連の様々なロジック決定を経るよう構成されている。本明細書にプロセッサ818によって実行可能なものとして記載された様々なコンポーネントは、特別なハードウェア、ソフトウェアまたはこれらの組み合わせといった様々な形態で実施されてよい。例えば、プロセッサは、24ビットDSPプロセッサ等のデジタル信号プロセッサ(DSP)であってよい。プロセッサは、例えば、2または2より多い処理コアを有するマルチコアプロセッサであってよい。プロセッサは、32ビットARMプロセッサ等のアドバンストRISCマシン(ARM)プロセッサであってよい。プロセッサは、埋め込みオペレーティングシステムを実行してよく、プロセッサは、ファイルシステム操作、表示およびオーディオ生成、基本的ネットワーク機能、ファイヤウォール機能、データ暗号化および通信のために用いられてよいオペレーティングシステムによって提供されるサービスを含んでよい。
【0173】
本明細書に記載の特定の技術は、コンピューティング能力を含む除細動器等のコンピュータ実施医療デバイスを用いることで補助されてよい。かかる除細動器または他のデバイスは、
図9に示すようなコンピュータシステム900を含んでよく、上述の動作を実行するにあたり、コンピュータシステム900と通信してよく、および/または、コンピュータシステム900を組み込んでよい。例えば、ECG分析モジュール905、TTIモジュール908、CPRフィードバックモジュール910、PTIモジュール912、およびロジックモジュール918のうちの1または複数は、コンピューティングシステム900の少なくとも一部を含んでよい。システム900は、コンピュータ化された除細動器ラップトップ、パーソナルデジタルアシスタント、タブレットおよび他の適切なコンピュータを含む、様々な形態のデジタルコンピュータで実施されてよい。また、システムは、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブ等のポータブルストレージ媒体を含んでよい。例えば、USBフラッシュドライブは、オペレーティングシステムおよび他のアプリケーションを格納してよい。USBフラッシュドライブは、無線送信器または別のコンピューティングデバイスのUSBポートに挿入されてよいUSBコネクタ等の入/出力コンポーネントを含んでよい。
【0174】
システム900は、プロセッサ910、メモリ920、ストレージデバイス930および入/出力デバイス940を含む。コンポーネント910、920、930および940の各々は、システムバス950を用いて、相互接続される。プロセッサ910は、システム900内で、実行される命令を処理可能である。プロセッサは、複数のアーキテクチャのうちの任意のものを用いて設計されてよい。例えば、プロセッサ910は、CISC(複合命令セットコンピュータ)プロセッサ、RISC(縮小命令セットコンピュータ)プロセッサ、またはMISC(最小命令セットコンピュータ)プロセッサであってよい。
【0175】
一実施例において、プロセッサ910は、シングルスレッドのプロセッサである。別の実施例においては、プロセッサ910は、マルチスレッドのプロセッサである。プロセッサ910は、入/出力デバイス940上のユーザインタフェースのために、グラフィカル情報を表示すべく、メモリ920またはストレージデバイス930内に格納された命令を処理可能である。
【0176】
メモリ920は、システム900内に情報を格納する。一実施例において、メモリ920は、コンピュータ可読媒体である。一実施例において、メモリ920は、揮発性メモリユニットである。別の実施例において、メモリ920は、不揮発性メモリユニットである。
【0177】
ストレージデバイス930は、システム900に大量ストレージを供給可能である。一実施例において、ストレージデバイス930は、コンピュータ可読媒体である。様々な異なる実施例においては、ストレージデバイス930は、フロッピー(登録商標)ディスクデバイス、ハードディスクデバイス、光ディスクデバイス、またはテープデバイスであってよい。
【0178】
入/出力デバイス940は、システム900に対し、入/出力操作を提供する。一実施例において、入/出力デバイス940は、キーボードおよび/またはポインティングデバイスを含む。別の実施例においては、入/出力デバイス940は、グラフィカルユーザインタフェースを表示するためのディスプレイユニットを含む。
【0179】
本明細書に記載の特徴は、デジタル電子回路において、またはコンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアにおいて、またはこれらの組み合わせにおいて実施されてよい。装置は、情報担体(例えば、プログラマブルプロセッサによる実行のための機械可読ストレージデバイス内)に、有形に具現化されたコンピュータプログラムプロダクトにおいて実施されてよく、方法の段階は、入力データに対し処理を行い且つ出力を生成することによって、本明細書に記載の実施例に係る機能を実行すべく、複数の命令から成るプログラムを実行するプログラマブルプロセッサによって実行されてよい。記載された特徴は、プログラム可能なシステム上で実行可能な1または複数のコンピュータプログラムにおいて有利に具現化されてよく、プログラム可能なシステムとしては、データストレージシステムとの間でデータおよび命令を送受信するために連結された少なくとも1つのプログラマブルプロセッサ、少なくとも1つの入力デバイスおよび少なくとも1つの出力デバイスが含まれる。コンピュータプログラムは、特定の動作を実行するために、または、特定の結果をもたらすために、コンピュータにおいて、直接または間接に使用されてよい一連の命令である。コンピュータプログラムは、コンパイル型言語または解釈型言語を含む任意の形態のプログラミング言語で記述されてよい。コンピュータプログラムは、スタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、若しくはコンピューティング環境での使用に好適な他のユニットを含む、任意の形態で配備されてよい。
【0180】
複数の命令からなるプログラムの実行のために好適なプロセッサの例示としては、汎用マイクロプロセッサおよび専用マイクロプロセッサ、並びに単独のプロセッサまたは任意の種類のコンピュータの複数のプロセッサのうちの1つの両方が含まれる。概して、プロセッサは、リードオンリメモリ若しくはランダムアクセスメモリまたはこれらの両方から、命令およびデータを受信することになる。コンピュータの重要な要素は、命令を実行するためのプロセッサおよび命令およびデータを格納するための1または複数のメモリである。概して、また、コンピュータは、データファイルを格納するための1または複数の大量ストレージデバイスを含んでもよく、または当該大量ストレージデバイスと通信するために作動可能に連結されてもよい。かかるデバイスとしては、磁気ディスク(内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスク等)、光磁気ディスク、および光ディスクが含まれる。コンピュータプログラム命令およびデータを有形に具現化するために好適なストレージデバイスは、あらゆる形態の不揮発性メモリを含み、当該不揮発性メモリの例示としては、半導体メモリデバイス(EPROM、EEPROM等)およびフラッシュメモリデバイス、内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスク、光磁気ディスクおよびCD‐ROMおよびDVD‐ROMディスク等の磁気ディスクが含まれる。プロセッサおよびメモリは、ASIC(特定用途向け集積回路)によって補完されてよく、またはASICに組み込まれてよい。
【0181】
ユーザとの対話を提供すべく、特徴は、LCD(液晶ディスプレイ)または情報をユーザに表示するためのLEDディスプレイ、キーボード、およびユーザが入力をコンピュータに提供可能なマウスまたはトラックボール等のポインティングデバイスを有するコンピュータで実施されてよい。
【0182】
特徴は、バックエンドコンポーネント(データサーバ等)またはミドルウェアコンポーネント(アプリケーションサーバまたはインターネットサーバ等)、フロントエンドコンポーネント(グラフィカルユーザインタフェースまたはインターネットブラウザを有するクライアントコンピュータ等)またはこれらの任意の組み合わせを含むコンピュータシステムにおいて実施されてよい。システムのコンポーネントは、通信ネットワーク等の任意の形態または媒体のデジタルデータ通信によって接続されてよい。通信ネットワークの例としては、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアエリアネットワーク(WAN)、ピアツーピアネットワーク(アドホック部材またはスタティック部材を有する)、グリッドコンピューティングインフラストラクチャ、およびインターネットが含まれる。
【0183】
コンピュータシステムは、クライアントおよびサーバを含んでよい。概して、クライアントおよびサーバは、互いにリモートに配置されており、通常は、上記のようなネットワークを通してやり取りする。クライアントおよびサーバの関係は、それら各々のコンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムによって生じ、互いに、クライアントサーバ関係を有する。
【0184】
本明細書に含まれる発明の主題は、説明の目的で、詳細に記載されているが、このような具体的な内容は専ら説明の目的のためのものであること、および本開示は開示された実施例に限定されることはなく、むしろ対照的に、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に属する、修正形態および均等構成を包含する意図であることを理解されたい。例えば、本開示は、任意の実施例に係る1または複数の特徴が、可能な限りにおいて、任意の他の実施例に係る1または複数の特徴と組み合わされてよいことを想定していることを理解されたい。
【0185】
他の例は、詳細な説明および特許請求の範囲に係る範囲および精神に属する。また、上記した特定の特徴は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、ハードワイヤリング、またはこれらのうち任意のものの組み合わせを用いて実施されてよい。また、機能を実施する特徴は、様々な位置に物理的に配置されてよく、機能の一部が、物理的に異なる位置に実施されるような分散を含む。
【0186】
本明細書に記載されたもの以外の他の実施例が用いられてよく、以下の特許請求の範囲に含まれてよい。