IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マテリアルズ センター レオーベン フォルシャン ゲーエムベーハーの特許一覧

特許7484067複数のガスを決定し、場合によりその濃度を測定するためのセンサ機構、およびセンサ構造を製造する方法
<>
  • 特許-複数のガスを決定し、場合によりその濃度を測定するためのセンサ機構、およびセンサ構造を製造する方法 図1a
  • 特許-複数のガスを決定し、場合によりその濃度を測定するためのセンサ機構、およびセンサ構造を製造する方法 図1b
  • 特許-複数のガスを決定し、場合によりその濃度を測定するためのセンサ機構、およびセンサ構造を製造する方法 図2
  • 特許-複数のガスを決定し、場合によりその濃度を測定するためのセンサ機構、およびセンサ構造を製造する方法 図3
  • 特許-複数のガスを決定し、場合によりその濃度を測定するためのセンサ機構、およびセンサ構造を製造する方法 図4
  • 特許-複数のガスを決定し、場合によりその濃度を測定するためのセンサ機構、およびセンサ構造を製造する方法 図5
  • 特許-複数のガスを決定し、場合によりその濃度を測定するためのセンサ機構、およびセンサ構造を製造する方法 図6
  • 特許-複数のガスを決定し、場合によりその濃度を測定するためのセンサ機構、およびセンサ構造を製造する方法 図7
  • 特許-複数のガスを決定し、場合によりその濃度を測定するためのセンサ機構、およびセンサ構造を製造する方法 図8
  • 特許-複数のガスを決定し、場合によりその濃度を測定するためのセンサ機構、およびセンサ構造を製造する方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】複数のガスを決定し、場合によりその濃度を測定するためのセンサ機構、およびセンサ構造を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
G01N27/12 B
G01N27/12 C
G01N27/12 M
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019528623
(86)(22)【出願日】2017-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 AT2017060330
(87)【国際公開番号】W WO2018112486
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-10-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】A51174/2016
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】519186060
【氏名又は名称】マテリアルズ センター レオーベン フォルシャン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィマー-トーベンバッハー、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】コック、アントン
(72)【発明者】
【氏名】デーフレッガー、ステファン
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】櫃本 研太郎
【審判官】伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-66347(JP,A)
【文献】特開2011-112642(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第2527340(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクスに配置された導電素子と多数の接点とを有するセンサ構造を備え、前記導電素子は前記接点と接続されている、複数のガスを決定し、場合によりその濃度を測定するためのセンサ機構であって、
前記マトリクスに配置された前記導電素子は、格子状に配置された、異なる金属酸化物を有するストランドのマトリクスを有し、前記ストランドは、交差点で互いに重なり合い、これにより各交差点でセンサを形成し、
前記導電素子は、前記センサ機構が互いに結合可能な複数のセンサを形成するように配置され、前記複数のセンサは、混合ガス中で2つを超えるガスを互いに単離して決定または測定するために互いに接続される、センサ機構。
【請求項2】
前記マトリクスは金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルムを含む、請求項1に記載のセンサ機構。
【請求項3】
前記センサ構造はナノ繊維を含み、
前記ナノ繊維は、金属マトリクスの前記導電素子の上または間に配置され、
前記ナノ繊維は、トランスファープロセスを通じて基板の上に転移されるか、または、熱酸化によって形成される、
請求項1または2に記載のセンサ機構。
【請求項4】
接触部材であって、金属および/または金属酸化物の接触部材が前記導電素子に含まれ、前記ナノ繊維が前記接触部材の間に配置される、請求項3に記載のセンサ機構。
【請求項5】
前記ナノ繊維がドーピングされる、請求項3または4に記載のセンサ機構。
【請求項6】
前記センサ構造は、前記複数のセンサをそれぞれ異なるガスを決定または測定可能に別様に感応化するためにナノ粒子を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載のセンサ機構。
【請求項7】
前記マトリクスに配置された前記導電素子は少なくとも部分的に酸化錫および/または酸化亜鉛および少なくとも部分的に酸化銅から形成されており、酸化錫および/または酸化亜鉛はn型ドーピングされ、酸化銅はp型ドーピングされる、請求項1から6のいずれか1項に記載のセンサ機構。
【請求項8】
前記マトリクスは金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルムを含み、互いに垂直に配置された金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルムの間の交差点でそれぞれ異なるドーピングを含む領域の間の接合部が構成される、請求項1から7のいずれか1項に記載のセンサ機構。
【請求項9】
前記センサ機構の前記複数のセンサは、前記複数のガスの認識および測定をフレキシブルにコンフィグレーション可能である、請求項1から8のいずれか1項に記載のセンサ機構。
【請求項10】
前記センサ機構は前記センサ機構を規定された温度にするために、または定義された温度サイクルに暴露するために加熱装置および/または冷却装置を含む、請求項1から9のいずれか1項に記載のセンサ機構。
【請求項11】
縦方向の前記ストランドはn型及びp型の一方のドーピングを有し、横方向の前記ストランドにはn型及びp型の他方のドーピングを有し、
前記縦方向の前記ストランド及び前記横方向の前記ストランドは、前記交差点で互いに重なり合いp-n接合またはn-p接合を形成する、
請求項1から10のいずれか一項に記載のセンサ機構。
【請求項12】
それぞれ異なるガスを同時に決定するための、請求項1から11のいずれか1項に記載のセンサ機構の利用法。
【請求項13】
複数のガスを決定し、場合によりその濃度を測定するためのセンサ機構であって、請求項1から11のいずれか1項に記載のセンサ機構を製造する方法において、
基板が準備される段階と、
マトリクスに格子状に配置された前記導電素子と多数の前記接点とを含む、それぞれ異なる金属酸化物からなる前記センサ構造が前記基板に装着される段階と、
前記センサ構造に構成された前記センサが異なるガスを決定または測定可能に機能化される段階と、
前記複数のセンサを結合する段階であって、これにより互いに接続される、段階
の各段階を含む方法。
【請求項14】
前記センサ構造はナノ粒子によって機能化される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記マトリクスに配置された接触部材の間であって、金属および/または金属酸化物の接触部材の間で、ナノ繊維が前記基板の上に酸化される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルムが前記基板に装着される、請求項13から15のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリクスに配置された導電素子と多数の接点とを有するセンサ構造を備え、導電素子は接点と接続されている、複数のガスの濃度を決定および場合により測定するためのセンサ機構に関する。
【0002】
さらに本発明は、このようなセンサ機構の利用法に関する。
【0003】
さらに本発明は、複数のガスの濃度を決定および場合により測定するためのセンサ機構を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ガスセンサは従来技術から知られており、気体状の物質を検知するために構成される。特にガスを測定するために金属酸化物センサが利用される。これはたとえば一酸化炭素を検知するために利用される。しかし、従来技術から知られるこのようなセンサにおける欠点は、複数のガスに対して反応してしまうか、または、2つもしくはそれ以上のガス種類の間で区別をすることができないことにある。
【0005】
特許文献1には、2つのガスを同時に検知するために構成されたガスセンサが開示されている。しかしこのようなガスセンサによっても、2つを超えるガス種類を互いに単離して測定することは可能でない。
【0006】
特許文献2は、混合ガス中の個々のガス成分を検知するためのガスセンサアレイを開示している。しかしこのようなガスセンサアレイは、2つまたはそれ以上のガスを同時に決定可能であるようにフレキシブルにコンフィグレーション可能ではない。1つのガスの決定が、センサ信号からの計算によってはじめて可能となるからである。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 米国特許出願公開第2011/0120866号明細書
[特許文献2] 欧州特許出願公開第0527258号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこの点に取り組む。本発明の課題は、フレキシブルにコンフィグレーション可能である、冒頭に述べた種類のセンサ機構を提供することにある。
【0008】
さらに別の目的は、このようなセンサ機構の利用法を提供することにある。
【0009】
さらに、フレキシブルにコンフィグレーション可能なセンサ機構を製造することができる、冒頭に述べた種類の方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は本発明によると、冒頭に述べた種類のセンサ機構において、混合ガス中で2つを超えるガスを互いに単離して測定するために、導電素子がそれぞれ異なる金属および/または金属酸化物を有するように形成されることによって解決される。
【0011】
本発明によって実現される利点は、特に、センサ構造の構成によって、特にマトリクスに配置された、またはマトリクスとして構成された導電素子の構成によって、混合ガスの2つまたはそれ以上のガスを認識可能または測定可能である、フレキシブルにコンフィグレーション可能なセンサ機構が創出されという点に見ることができる。導電素子は少なくとも部分的に、少なくとも2つのそれぞれ異なる金属および/または金属酸化物から形成される。本発明によるセンサ機構では、2つまたはそれ以上のそれぞれ異なるガスを個別に決定し、これに加えて場合により個々のガスの濃度を測定するために、個々の導電素子は、それぞれ異なる金属および/または金属酸化物からマトリクスとして、任意に外部から接点を介して互いに結合可能かつ場合により配線可能であるように配置され、または相互に配線される。各々の接点は、その後の過程でガスの存在を確認するために、少なくとも1つの導電素子と接続される。それぞれ異なる金属および/または金属酸化物からなるセンサ機構の構成により、このセンサ機構は、接点を介して個別に制御可能かつ相互に配線可能である、互いに結合可能な複数のセンサを構成する。これらのセンサは、特に2つまたは複数の導電素子の間の接触点に配置される。これに加えて、これらのセンサは互いに間隔をおいて配置される。
【0012】
特にセンサ構造または導電素子は、2つのそれぞれ異なる金属および/または金属酸化物、好ましくは酸化銅および/または酸化亜鉛および/または酸化錫から構成され、またはこれらを有するように構成される。センサ構造は、たとえばそれぞれ異なる金属および/または金属酸化物からなる格子状に配置されたストランドからなるマトリクスを含む。このときストランドは互いにほぼ垂直に配置され、それぞれ異なる金属および/または金属酸化物から構成されると好都合である。ストランドは交差点のところで相上下して延び、これらの交差点で互いに接続されていてよく、これらの交差点は互いに間隔をおいて配置される。それぞれ異なる2つの金属および/または金属酸化物のこのような垂直方向の配置は、たとえばp-n接合を形成することができる。ストランドは層および/またはナノ繊維から形成されていてよいのが好ましい。これに加えて、それぞれ異なる接触部材がマトリクス状に基板の上に配置されていてよく、これらの接触部材は部分的または全面的にそれぞれ異なる金属酸化物に転換させることもでき、互いに格子状に接続される。
【0013】
マトリクスが金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルムを含んでいると好都合である。金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルムは特に帯状に構成され、格子状またはマトリクス状に基板の上に配置される。帯状の金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルムのそれぞれの端部に接点が配置され、これらの接点を介して、それぞれ別様に構成されて互いに間隔をおいて配置されるセンサを制御可能である。これらのセンサは金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルムの交差点に、またはこれらの交差点の間に構成され、これらの交差点は互いに間隔をおいて配置される。特に金属フィルムはその後の過程で金属酸化物フィルムおよび/または金属酸化物ナノ繊維をなすように酸化可能であり、それによって金属フィルムからガス感応性の金属酸化物が生じる。このとき、金属フィルムの各々の行または列がたとえば熱酸化によって、それぞれ異なる金属酸化物へと転換可能であると好都合である。さらに、金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルムがナノ繊維のバンドルとして構成されることが意図されていてよい。
【0014】
センサ構造がナノ繊維を含んでいると好ましい。ナノ繊維は金属マトリクスの導電素子の上または間に配置され、ナノ繊維はトランスファープロセスを通じて基板の上に転移され、たとえば熱によってその上に酸化される。ナノ繊維は金属酸化物から、ならびにたとえばその導電性によってガス感応性に構成されるのが好ましく、それによってセンサ機構の感度がいっそう高くなる。ナノ繊維は適当な金属フィルムの酸化を通じて金属格子の上で製作されていてもよい。
【0015】
接触部材、特に金属および/または金属酸化物の接触部材が設けられていると特別に好ましく、ナノ繊維はそれぞれの接触部材の間に配置される。それぞれ2つのナノ繊維は、第2のナノ繊維が第1のナノ繊維に対して45°から135°の間の角度で、特別に好ましくはほぼ直角にアライメントされるように互いに向いているのが好ましい。ナノ繊維と接続される接触部材はそれによって格子を構成し、ナノ繊維のバンドルが設けられるのが好ましい。接触部材はほぼ長方形に、特に正方形に構成されて、基板の上でマトリクス状に配置されるのが好ましい。それによって形成されるマトリクスの外側の接触部材が、それぞれ1つの接点と接続される。接触部材は基板の上で直接成長させることができ、または基板の上に蒸着することができる。接触部材および/またはナノ繊維がそれぞれ異なる金属および/または金属酸化物から構成されることが意図されていてよい。
【0016】
ナノ繊維がドーピングされていると好都合である。金属および/または金属酸化物からなるそれぞれのナノ繊維に不純物原子が注入されて、これをそれぞれ異なるガスについて感受性にし、またはそれぞれ別様に感受性にする。
【0017】
さらに、センサにそれぞれ別様に感応化するために、センサ構造がナノ粒子を含んでいると好都合である。それによってセンサ構造をそれぞれ別様に機能化可能である。ナノ粒子によって、センサ構造で構成されるセンサにそれぞれ異なる特性および/または感応性を割当可能であり、それによってその後の過程で混合ガス中の2つまたはそれ以上のガスを互いに単離して、または個別的に高い信頼度で測定可能である。それにより、固有のガスに合わせた感度の適合化のために新たなパラメータ空間が開かれる。ナノ粒子は特にセンサ構造のマトリクスに印刷可能である。センサ構造またはマトリクスのそれぞれ異なる導電素子は、それぞれ相違する、またはそれぞれ異なるナノ粒子でドーピングされるのが好ましい。しかしながら同じナノ粒子が意図されていてもよい。
【0018】
マトリクスに配置されている導電素子が少なくとも部分的に酸化錫および/または酸化亜鉛および少なくとも部分的に酸化銅から形成されると好ましく、たとえば酸化錫および/または酸化亜鉛はn型ドーピングされ、酸化銅はp型ドーピングされる。それにより、電子供与体が酸化錫および/または酸化亜鉛へ注入され、電子受容体が酸化銅へ注入される。金属酸化物の真性ドーピングを、追加のドーピングによって逆転させることができる。導電素子は少なくとも部分的にこれ以外の金属酸化物から形成されていてもよい。マトリクスに配置された導電素子は、たとえば金属フィルムおよび/またはそれぞれ異なる金属酸化物からなる金属酸化物フィルムを含む。その代替として導電素子は、たとえばナノ繊維を介して相互に結合される、それぞれ異なる金属および/または金属酸化物からなる接触部材を含むことができる。さらに導電素子は、互いに格子状に配置されたナノ繊維を含むこともできる。ドーピングされた酸化錫および/または酸化亜鉛およびドーピングされた酸化銅からなるマトリクス、またはマトリクスに配置された導電素子を相互に配線可能であり、それによってダイオードが形成される。それにより、個々のセンサを相互に結合して場合により配線するという可能性に加えて、電流が一方の方向へは妨げられずに通過し、他方の方向へは遮蔽されるという効果ももたらされる。
【0019】
マトリクスが金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルムを含んでいるセンサ機構では、ほぼ互いに垂直に配置された金属フィルムの間の交差点に、それぞれ異なるドーピングを含む領域の間の接合部が構成されるのが好都合である。p-n接合またはn-p接合が構成されていてよい。マトリクス配線により、n-p-n接合またはp-n-p接合も生成可能であり、それによってトランジスタが形成される。このように、それぞれ異なるドーピングを含む領域の間でさまざまな接合部を作成可能である。金属フィルムは、それぞれ異なる金属酸化物を有する、またはそれぞれ異なる金属酸化物を含むナノ繊維を有するストランドとして構成され、または金属酸化物フィルムへと転換され、金属酸化物フィルムがそれぞれ別様にドーピングされる。
【0020】
さらに、センサ機構がフレキシブルにコンフィグレーション可能であるという利点がある。センサ構造は互いに間隔をおく複数のセンサを構成し、各々のセンサがそれぞれ異なるガスに対して感応化され、または反応するのが好ましい。個々の接点がどのようにタップオフされるかに関わりなく、それぞれ異なるガスを認識可能かつ測定可能である。フレキシブルで個別的にコンフィグレーション可能なセンサ機構を、たとえばスマートセンサとして利用可能である。これは特に建物の制御や空調設備の制御で適用可能である。
【0021】
追加的に特定のガスの測定のためにセンサ機構を感応化できるようにするために、センサ機構は、センサ機構を定義された温度にするために、または定義された温度サイクルに暴露するために、加熱装置および/または冷却装置を有しているのが好ましい。
【0022】
本発明によるセンサ機構の利用は、それぞれ異なるガスを同時に決定するために行われるのが好ましい。
【0023】
冒頭に述べた種類の方法が次の各ステップを有していると、さらに別の目的が達成される。
-基板が準備されること、
-マトリクスに配置された導電素子と多数の接点とを含む、それぞれ異なる金属および/または金属酸化物からなるセンサ構造が基板に装着されること、
-センサ構造に構成されたセンサが機能化されること。
【0024】
これに伴って得られる利点は、特に、マトリクスに配置された導電素子および複数の接点を含むセンサ構造の装着と、センサ構造の機能化との組み合わせが、混合ガス中の2つまたはそれ以上のガスの単離された測定をするためのセンサ機構の製造を可能にするという点に見ることができる。本発明の方法によって製造されるセンサ機構では、互いに間隔をおく個々のセンサを、これらを任意に外部から互いに制御および配線することができるように、マトリクスで相互に結合することができる。特に、異なる種類のセンサを互いに結合し、場合により配線することができ、それにより、混合ガス中で2つを超えるそれぞれ異なるガスを認識し、個別に測定することができる。
【0025】
センサ構造またはマトリクスはそれぞれ異なる金属および/または金属酸化物から形成され、たとえば酸化銅および/または酸化錫および/または酸化亜鉛から形成される。特にセンサ構造は、それぞれ異なる金属および/または金属酸化物からなる、格子状に配置されたストランドから形成される。このとき、ストランドが互いにほぼ垂直に配置されると好都合である。さらに、ストランドがそれぞれ異なる金属酸化物から製作されると好ましい。ストランドはナノ繊維から構成されていてもよいのが好ましい。これに加えて、接触部材も基板の上でマトリクス状に配置することができる。このとき、これらの接触部材がそれぞれ異なる金属酸化物から構成されて、格子状に互いに接続されると好都合である。
【0026】
さらに、センサ構造がnドーピングされた酸化錫および/または酸化亜鉛およびpドーピングされた酸化銅から形成されると好ましい場合がある。そのために、電子供与体が酸化錫および/または酸化亜鉛へ注入され、電子受容体が酸化銅へ注入される。センサ構造のマトリクスは、たとえばそれぞれ異なる金属および/または金属酸化物からなる金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルムを含んでいる。たとえばマトリクスは、またはマトリクスのドーピングされた酸化亜鉛および/または酸化錫およびドーピングされた酸化銅からなる素子を互いに、または相互に配線することができ、それによってダイオードが形成される。それにより、個々のセンサを互いに結合して場合により配線するという可能性に加えて、電流が一方の方向へは妨げられずに通過し、他方の方向へは遮蔽されるという効果ももたらされる。
【0027】
センサ構造がナノ粒子により機能化されると好ましい。機能化は感応化によって行うことができ、ナノ粒子が特にセンサ構造のマトリクスに装着され、特に、たとえばインクジェットプリンタによって印刷される。それによってセンサ構造をそれぞれ別様に機能化可能である。ナノ粒子により、構成されるセンサにそれぞれ異なる特性および/または感応性が割り当てられ、それによってその後の過程で2つまたは複数のガスを互いに単離して確実に測定することができる。このように、固有のガスに合わせた感応性の適合化のための幅広いパラメータ空間が開かれる。センサ構造またはマトリクスのそれぞれ異なる各要素が、相違するナノ粒子によって感応化またはドーピングされるのが好ましい。しかしながら、ただ1つの種類のナノ粒子をセンサ構造の感応化のために利用することもできる。
【0028】
さらに、旧来式のドーピングによって機能化を行うことができる。旧来式のドーピングのほか、その代替または追加として別の不純物原子またはナノ粒子、たとえばパラジウム、白金などの貴金属をセンサ構造の各要素に、これらをそれぞれ異なるガスについて感受性にするために埋設または装着することもできる。
【0029】
マトリクスに配置された接触部材の間で、特に金属および/または金属酸化物の接触部材の間で、ナノ繊維が基板の上に酸化されると好ましい。接触部材は基板の上で直接成長するか、または、たとえば蒸着によって基板の上に装着される。ナノ繊維は、各接触部材の間で互いにほぼ垂直に、熱によって基板の上に酸化される。ナノ繊維と結合された接触部材によって格子が構成され、ナノ繊維のバンドルが設けられる。接触部材はほぼ長方形に、特に正方形に構成されて、基板の上でマトリクス状に配置されるのが好ましい。それによって形成されるマトリクスの外側の接触部材が、それぞれ1つの接点と接続される。その代替として、ナノ繊維を基板の上に印刷することもできる。
【0030】
金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルムが基板の上に蒸着されると好都合であり得る。金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルムは特に帯状に構成され、格子状またはマトリクス状に基板の上に蒸着される。帯状の金属フィルムのそれぞれの端部のところに接点が配置され、これらの接点を介して、それぞれ別様に構成されたセンサを制御することができる。これらのセンサは導電素子の交差点に、および/または交差点の間に構成され、交差点は互いに間隔をおきながらセンサ構造の上に配置される。1つの行または列の導電素子が少なくとも部分的にそれぞれ異なる金属酸化物から形成されると好都合である。金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルムがナノ繊維のバンドルとして構成されるのも好都合であり得る。
【0031】
その他の構成要件、利点、および作用は以下に掲げる実施例から明らかとなる。その際に参照する図面には次のものが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1a】センサ機構である。
図1b】2つの接点を示す模式図である。
図2】本発明によるセンサ機構である。
図3】本発明による別のセンサ機構である。
図4】本発明による別のセンサ機構である。
図5】接触部材の図像である。
図6】接触部材の別の図像である。
図7】接触部材の別の図像である。
図8】接触部材の別の図像である。
図9】接触部材の二次元の接続の図像である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1aは、本発明によるセンサ機構1のためのセンサ構造2を示している。センサ構造2は、マトリクス3に配置された導電素子と、たとえば銀またはチタンから構成される複数の接点4とを含んでいる。図1aでは、マトリクス3は金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルム5を含んでおり、または、マトリクス3は金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルム5から形成される。金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルム5は格子状に配置されており、各々の金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルム5の2つの端部に接点4が設けられ、または、金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルム5として構成された導電素子と接続される。
【0034】
図1bは、結節点51でのn-p接合による2つの接点4の配線の例を示している。
【0035】
センサ構造2または導電素子は、それぞれ異なる金属および/または金属酸化物によって、たとえば酸化銅および/または酸化亜鉛および/または酸化錫から形成される。接点4は金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルム5を介して互いに接続され、接点4は互いに任意に結合可能かつ配線可能であり、それによってその後の過程で2つを超えるガスを測定可能となる。
【0036】
図2は、本発明によるセンサ機構1を示している。このセンサ機構は、マトリクス3に配置された導電素子と、基板9の上に配置された多数の接点4とを含むセンサ構造2を有している。センサ構造2は、図1aに示すセンサ構造2に相当する。導電素子は、やはり格子状に配置された金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルム5から形成されている。金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルム5は、これに加えてナノ粒子8により感応化されている。
【0037】
図3には、金属および/または金属酸化物から形成されてマトリクス3に配置された導電素子と接点4とを有する、センサ構造2を含む本発明による別のセンサ機構1が示されている。マトリクス3は、金属酸化物のナノ繊維6を介して互いに接続された、それぞれ異なる金属フィルムおよび/または金属酸化物フィルム5からなる接触部材7を含んでいる。ナノ繊維6はナノ粒子8によって感応化または機能化されている。接触部材7は基板9の上に直接配置されており、それに対してナノ繊維6は基板9またはウェーハの上に酸化される。
【0038】
本発明による別のセンサ機構1が図4に示されている。このセンサ機構1は、図3に示すセンサ機構1に基本的に相当する。ここでは接触部材7が基板9の上に装着され、ナノ繊維6が接触部材7の間でこれらを接続するように基板9に印刷されている。
【0039】
本発明によるセンサ機構1のいずれの実施態様においても、マトリクス3の導電素子は少なくとも部分的にそれぞれ異なる金属および/または金属酸化物から、たとえば酸化銅および/または酸化亜鉛および/または酸化錫から形成される。これに加えて、センサ構造2の導電素子はn型ドーピングおよび/またはp型ドーピングされていてよい。
【0040】
図5図6図7および図8は、走査型電子顕微鏡で撮影されたナノ繊維6を含む接触部材7の図像をそれぞれ示している。ナノ繊維6は、このようなマトリクス3の製造にあたって接触部材7の間で熱により酸化され、それに対して接触部材7は、たとえば蒸着、印刷、スパッタ、または電解などによって、基板9の上に直接装着される。図5から7では、ナノ繊維6またはマトリクス3を介しての接触部材7のマトリクス配線が結像されており、それに対して図8は、ナノ繊維6を介しての接触部材7の純粋な接続を示している。ただし、これらの写真は例示であるにすぎない。ナノ繊維6はここではそれぞれ1つの金属酸化物だけで形成されているからである(図5,6および7では酸化銅、図8では酸化亜鉛)。本発明によるセンサ機構1では、マトリクス3は、混合ガスの2つまたはそれ以上のガスを決定および測定できるようにするために、それぞれ異なる金属酸化物から形成されていてよい。
【0041】
図9には、走査型電子顕微鏡で撮影された接触部材7の二次元の接続の図像が示されている。センサ機構1の支持体はたとえばマイクロ熱プレートであってよく、これによってセンサ機構1を定義された温度にし、または定義された温度サイクルに暴露することができる。
【0042】
複数のガスを決定するためのセンサ機構1を製造する本発明の方法では、基板9が準備され、その上に、導電素子からなるマトリクス3と多数の接点4とを含むセンサ構造2が装着される。その次のステップで、センサ構造2が特にナノ粒子8によって複数のガスについて感応化される。
【0043】
本発明につながる研究は、欧州連合第7次フレームワーク計画(FP7/2007-2013)により助成合意書番号611887号のもとで助成を受けた。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9