(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】熱交換器およびこれを備えた温水装置
(51)【国際特許分類】
F28D 7/16 20060101AFI20240509BHJP
F24H 8/00 20220101ALI20240509BHJP
F24H 9/00 20220101ALI20240509BHJP
F28D 1/047 20060101ALI20240509BHJP
F28F 1/32 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
F28D7/16 E
F24H8/00
F24H9/00 A
F28D1/047 B
F28F1/32 W
(21)【出願番号】P 2020030639
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】堀内 健吾
(72)【発明者】
【氏名】大東 健
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-021786(JP,U)
【文献】特開2002-267261(JP,A)
【文献】国際公開第2007/102653(WO,A1)
【文献】特開2018-165593(JP,A)
【文献】特開2019-128132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00 - 13/00
F24H 1/00 - 15/493
F28F 1/00 - 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱用気体が内部に供給されるケースと、
間隔を隔てて配列された複数の直管部が複数の曲管部を介して一連に繋がった蛇行状管体として構成され
、かつこの蛇行状管体の両端部を除く領域は前記ケース内に配されている複数の伝熱管と、
を備えている、熱交換器であって、
前記複数の伝熱管は、前記複数の直管部が加熱用気体流れ方向とは交差する方向に並ぶ姿勢に設定されて、加熱用気体流れ方向に複数段で積層され、かつ加熱用気体流れ方向上流側および下流側にそれぞれ位置する第1および第2の伝熱管に区別され、
前記第2の伝熱管は、前記第1の伝熱管と比べて、管外径および前記複数の直管部の配列ピッチが小さくされている
一方、前記複数の直管部および前記複数の曲管部の数は多くされ、前記第1および第2の伝熱管のそれぞれの両端部間ピッチは、略同一とされており、
前記第1および第2の伝熱管への加熱対象流体の流入および流出を行なわせるための手段として、互いに離間した配置の一対のヘッダ部を備えており、
これら一対のヘッダ部のうち、一方のヘッダ部は、前記第1および第2の伝熱管のそれぞれの一端部内に連通する流体流入用のチャンバを有し、かつ他方のヘッダ部は、前記第1および第2の伝熱管のそれぞれの他端部内に連通する流体流出用のチャンバを有しており、前記一対のヘッダ部は、前記第1の伝熱管用のヘッダ部と前記第2の伝熱管用のヘッダ部とを兼用していることを特徴とする、熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記第1および第2の伝熱管のそれぞれは、加熱用気体流れ方向に複数段で積層するように設けられ、かつ加熱用気体流れ方向において隣接するものどうしは、加熱用気体流れ方向とは交差する方向に位置ずれしている、熱交換器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱交換器であって、
前記ケース内のうち、前記第1および第2の伝熱管よりも加熱用気体流れ方向上流側に設けられ、かつ前記加熱用気体から顕熱を回収するための1次熱交換部を、さらに備えており、
前記第1および第2の伝熱管は、前記1次熱交換部によって顕熱が回収された後の加熱用気体から潜熱を回収する2次熱交換部を構成している、熱交換器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の熱交換器
と、
この熱交換器に加熱用気体を供給する加熱用気体供給手段と、
を備えていることを特徴とする、温水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼ガスなどの加熱用気体から伝熱管を利用して熱回収を行なうタイプの熱交換器、およびこれを備えた給湯装置などの温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温水装置の具体例として、特許文献1に記載のものがある。
同文献に記載の温水装置は、バーナと、熱交換器とを備えており、熱交換器は、前記バーナによって発生された燃焼ガスが内部に供給されるケースと、このケース内に配された複数の伝熱管とを備えている。複数の伝熱管としては、顕熱回収用および潜熱回収用のそれぞれの伝熱管があり、潜熱回収用の伝熱管として、蛇行状管体が用いられている。蛇行状管体は、複数の直管部が複数の曲管部を介して一連に繋がっているため、蛇行状管体の本数を少なくしつつ、燃焼ガスからの吸熱を行なうための伝熱面積(表面積)を大きくする上で好ましく、潜熱回収に適する。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように改善すべき余地がある。
【0004】
すなわち、熱交換器としては、全体の小型化および低コスト化を図りつつ、熱交換効率の向上をさらに図ることが要請される。これに対し、従来においては、複数の伝熱管(蛇行状管体)は、複数の直管部が燃焼ガス流れ方向に並ぶ姿勢に設定され、燃焼ガス流れ方向とは交差する方向に複数段で並べられているに過ぎない。したがって、熱交換効率を高めるべく複数の伝熱管による熱回収量を多くするには、伝熱管のサイズを大きくしたり、あるいは伝熱管の本数を多くする手段を採用せざるを得ない。ところが、そのような手段を採用したのでは、熱交換器全体の大型化および高コスト化を招いてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、全体の小型化および低コスト化を図りつつ、熱交換効率の向上を適切に図ることが可能な熱交換器、およびこれを備えた温水装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面により提供される熱交換器は、加熱用気体が内部に供給されるケースと、間隔を隔てて配列された複数の直管部が複数の曲管部を介して一連に繋がった蛇行状管体として構成され、かつこの蛇行状管体の両端部を除く領域は前記ケース内に配されている複数の伝熱管と、を備えている、熱交換器であって、前記複数の伝熱管は、前記複数の直管部が加熱用気体流れ方向とは交差する方向に並ぶ姿勢に設定されて、加熱用気体流れ方向に複数段で積層され、かつ加熱用気体流れ方向上流側および下流側にそれぞれ位置する第1および第2の伝熱管に区別され、前記第2の伝熱管は、前記第1の伝熱管と比べて、管外径および前記複数の直管部の配列ピッチが小さくされている一方、前記複数の直管部および前記複数の曲管部の数は多くされ、前記第1および第2の伝熱管のそれぞれの両端部間ピッチは、略同一とされており、前記第1および第2の伝熱管への加熱対象流体の流入および流出を行なわせるための手段として、互いに離間した配置の一対のヘッダ部を備えており、これら一対のヘッダ部のうち、一方のヘッダ部は、前記第1および第2の伝熱管のそれぞれの一端部内に連通する流体流入用のチャンバを有し、かつ他方のヘッダ部は、前記第1および第2の伝熱管のそれぞれの他端部内に連通する流体流出用のチャンバを有しており、前記一対のヘッダ部は、前記第1の伝熱管用のヘッダ部と前記第2の伝熱管用のヘッダ部とを兼用していることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
(1)第1および第2の伝熱管の双方の熱交換効率を高めることが可能である。
すなわち、下流側の第2の伝熱管は複数の直管部の配列ピッチが小さいため、それら複数の直管部の相互間領域を加熱用気体が通過する際の流速を速くすることが可能である。一般に、加熱用気体と伝熱管との熱交換効率は、加熱用気体の流速が速いほど高くなる。したがって、このような原理により、第2の伝熱管の熱交換効率が高められる。
また、第2の伝熱管は、複数の直管部の配列ピッチが小さく、かつこのことにより第1および第2の伝熱管のそれぞれの直管部どうしは、加熱用気体流れ方向と交差する方向に位置ずれした配置となる。このため、第2の伝熱管は、後述の
図4および
図8を参照して説明する作用から理解されるように、第1の伝熱管の直管部に作用する加熱用気体が、第1の伝熱管の直管部の外周面の略全周の広い面積に対して作用する現象を生じさせる。このことにより、第1の伝熱管の熱交換効率を高めることが可能である。
このようなことから、複数の伝熱管全体(第1および第2の伝熱管の全体)の熱交換効率が高められ、熱交換器による熱回収量を多くすることが可能である。
(2)熱交換器の小型化および低コスト化が可能である。
すなわち、熱交換器による熱回収量を所定以上にするには、複数の伝熱管のトータルの伝熱面積をある程度大きくする必要があるが、本発明によれば、第1の伝熱管の管外径が大きいため、この第1の伝熱管を利用し、しかもその数を少なめにしながらも、複数の伝熱管全体の伝熱面積を効率よく大きくすることが可能である。
本発明とは異なり、たとえば複数の伝熱管の全てを管外径が小径のものにすると、その総数をかなり多くしなければ、伝熱管のトータルの伝熱面積を大きくすることができない。これでは、伝熱管全体の部品コスト、およびケースへの組み付けコストなどが嵩む。また、これとは異なり、複数の伝熱管の全てを管外径が大径のものにすると、本発明の先に述べたような熱交換効率向上の効果は得られないため、やはり伝熱管の総数を多くする必要が生じ、全体の大型化や高コスト化を生じる。これに対し、本発明によれば、そのようなことを適切に解消することが可能である。
(3)蛇行状管体としての第1および第2の伝熱管の双方の製造を適切に行なうことも可能である。
すなわち、蛇行状管体としての第1および第2の伝熱管を、直管状の原材料パイプに曲げ加工を施して製造する場合、第2の伝熱管は、第1の伝熱管よりも複数の直管部の配列ピッチが小さいため、本来的には、この第2の伝熱管を曲げ加工により製造することは困難化する。ところが、本発明においては、第2の伝熱管は管外径が小さいため、曲げ加工が容易となる他、曲げ部(曲管部)の曲率半径を小さくすることも可能となる。管外径が大きい場合には、曲げ部の曲率半径を小さくすることは困難となって、複数の直管部の配列ピッチが小さい蛇行状管体を製造することは容易ではないが、本発明によれば、そのような不具合もない。
その他、前記構成によれば、たとえば第1および第2の伝熱管のそれぞれにヘッダ部を個別に設ける場合と比較すると、熱交換器全体の構成を簡素にすることができる。
さらに、前記構成によれば、第1および第2の伝熱管の全体のサイズを略同一に揃え、これらをスペース効率よくケース内に配置させる上で好ましいものとなる。また、第1および第2の伝熱管のそれぞれの両端部を、互いに共通する一対のヘッダ部(入水用および出湯用のヘッダ部)に接続する場合に、その接続が容易になるなどの利点も得られる。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記第1および第2の伝熱管のそれぞれは、加熱用気体流れ方向に複数段で積層するように設けられ、かつ加熱用気体流れ方向において隣接するものどうしは、加熱用気体流れ方向とは交差する方向に位置ずれしている。
【0011】
このような構成によれば、第1および第2の伝熱管のそれぞれに対して加熱用気体が作用する度合いを一層高め、熱交換効率の向上などを図る上でより好ましいものとなる。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記ケース内のうち、前記第1および第2の伝熱管よりも加熱用気体流れ方向上流側に設けられ、かつ前記加熱用気体から顕熱を回収するための1次熱交換部を、さらに備えており、前記第1および第2の伝熱管は、前記1次熱交換部によって顕熱が回収された後の加熱用気体から潜熱を回収する2次熱交換部を構成している。
【0017】
このような構成によれば、1つの熱交換器によって加熱用気体から顕熱および潜熱の双方を回収することが可能であるが、熱交換効率に優れた第1および第2の伝熱管は、潜熱回収に用いられているため、加熱用気体からのトータルの熱回収量を多くし、熱交換効率を高める上で好ましいものとなる。
【0018】
本発明の第2の側面により提供される温水装置は、本発明の第1の側面により提供される熱交換器と、この熱交換器に加熱用気体を供給する加熱用気体供給手段と、を備えていることを特徴としている。
【0019】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される熱交換器について述べたのと同様な効果が得られる。
【0020】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る熱交換器の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図1の熱交換器を用いて構成された温水装置の一例を示す断面図であり、同図に示された熱交換器は、
図1のIII-III断面図に相当する。
【
図7】(a)は、
図1~
図6に示す熱交換器の第1の伝熱管の平面図であり、(b)は、第2の伝熱管の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0023】
図3に示す温水装置WHは、加熱用気体としての燃焼ガスを発生させるバーナ1、および熱交換器HEを備えている。熱交換器HEは、ケース2、このケース2内に配された複数の胴パイプ3、複数のフィン5および伝熱管4を有する1次熱交換部A1、複数の伝熱
管6を有する2次熱交換部A2、ならびに
図1に示す複数のヘッダ部Ha~Hdを備えている。
【0024】
2次熱交換部A2の複数の伝熱管6は、蛇行状管体であって、本発明の主たる特徴的な構成を備えた部位である。複数の伝熱管6は、後述するように、第1および第2の伝熱管6A,6Bに区別される。また、複数のヘッダ部Ha~Hdのうち、ヘッダ部Ha,Hbは、2次熱交換部A2用である。
【0025】
バーナ1は、本発明でいう加熱用気体供給手段の一例に相当し、従来既知の逆燃式である。このバーナ1においては、ファン10から供給される燃焼用空気に燃料ガスが混合されて点火され、このことにより発生した燃焼ガス(加熱用気体)が、ケース2内の上部側から下向きに供給される。したがって、本実施形態においては、下向き方向が、燃焼ガス流れ方向(本発明でいう加熱用気体流れ方向に相当する)である。
【0026】
胴パイプ3は、略コ字状に屈曲しており、ケース2の側壁部2b~2dの上部内面に沿って上下複数段で設けられており(
図1および
図2も参照)、後述するように、その内部には湯水(本発明でいう加熱対象流体の一例に相当)が供給されて流通する。このことにより、ケース2の複数の側壁部2b~2dの上部を冷却する役割を果たし、また燃焼ガスからの湯水加熱用の吸熱も行なう。ケース2の側壁部2aの上部の冷却は、ヘッダ部Hdにより行なわれる。ヘッダ部Hdについては後述する。
【0027】
1次熱交換部A1は、燃焼ガスから顕熱を回収するための部位であり、胴パイプ3よりも低い位置に設けられている。この1次熱交換部A1は、いわゆるフィン付きチューブタイプであり、複数のフィン5および伝熱管4を備えている。複数の伝熱管4は、水平方向に延びるようにしてケース2内に配されている。各伝熱管4の両端部は、ケース2の側壁部2a,2cに支持され、ベンド管49、および複数のヘッダ部Hcを介して一連に接続されている(
図5も参照)。ヘッダ部Hcについては後述する。複数のフィン5は、各管体部4の軸長方向に並んだプレート状であり、複数の管体部4が貫通して接合されている。
【0028】
2次熱交換部A2は、ケース2内のうち、1次熱交換部A1の下方に設けられており蛇行状管体としての複数の伝熱管6が上下高さ方向に積層した構成である。複数の伝熱管6としては、
図7を参照して後述する第1および第2の伝熱管6A,6B(6)の2種類があるが、これらの両端部6a,6bは、ケース2の側壁部2aに支持され、かつヘッダ部Ha,Hbに取付けられている。ヘッダ部Ha,Hbの構成についても後述する。
【0029】
図1によく表れているように、ケース2は、上下両面部が開口した略矩形の筒状である。このケース2は、側壁部2b~2dを有する平面視略コ字状のケース本体部20、側壁部2aを構成する内側プレート24および外側プレート25を備えている。
【0030】
図2によく表れているように、内側プレート24は、ケース本体部20の一側面開口部を塞ぐようにケース本体部20に接合されている。この内側プレート24には、胴パイプ3の端部3a~3d、伝熱管4を構成する複数の管体部40の一端部40a、および複数の伝熱管6の両端部6a,6bが貫通し、かつ接続されている。外側プレート25は、内側プレート24の外面側に重ねられて接合されることにより、複数のヘッダ部Ha~Hdを構成するための部材である。この外側プレート25には、
図1に示す複数のヘッダ部Ha~Hdを構成するための膨出部として、ケース2の外方側に膨出した複数の膨出部21a~21dが設けられている。
【0031】
ヘッダ部Ha,Hbは、2次熱交換部A2の入水用および出湯用のヘッダ部であり、一
方のヘッダ部Haは、複数の伝熱管6の一端部6aの内部に連通するチャンバ7a(
図5および
図6も参照)を内部に形成しており、かつ入水口81aおよび管継手部81を有している。ヘッダ部Hbは、複数の伝熱管6の他端部6bの内側に連通するチャンバ7bを内部に形成しており、後述する接続管体80が接続される出湯口83を有している。
【0032】
ヘッダ部Hc(Hc1,Hc2)は、伝熱管4の複数の管体部40の内側どうしを連通させる連通路あるいは湯水路としての役割を果たすヘッダ部である。このヘッダ部Hcは、外側プレート25に膨出部21cが設けられていることにより形成され、その内側には、管体部40の一端部40aの内側に連通するチャンバ7cが形成されている(
図5も参照)。ただし、
図1に示すヘッダ部Hc2’は、下段の胴パイプ3の一端部3aの内側を、管体部40と連通させるものである。
【0033】
ヘッダ部Hdは、上段の胴パイプ3の一端部3bと、下段の胴パイプ3の他端部3cとを連通させる通連路としての役割を果たすヘッダ部である。このヘッダ部Hdは、外側プレート25に膨出部21dが設けられていることにより形成され、その内側には、チャンバ7dが形成されている(
図5も参照)。
図1および
図2に示すように、膨出部21dの途中箇所は、二股状に分岐しているが、これはヘッダ部Hdの面積を大きくし、ヘッダ部Hdによる側壁部2aの冷却効果を高めるのに役立つ。
外側プレート25には、接続管体80の上端を接続するための開口部82も設けられている。この開口部82は、胴パイプ3に対する入水口に相当する。
【0034】
熱交換器HEにおいては、入水口81aに水道水などの湯水が供給される。この湯水は、その後に
図1の矢印に示すように進行する。すなわち、入水口81aに供給された湯水は、ヘッダ部Haに流れ込んでから複数の伝熱管6を通過し、ヘッダ部Hbに到達する。その後、この湯水は接続管体80を通過して胴パイプ3に流れ込み、この胴パイプ3を通過した後には、伝熱管4を流れる。その際、湯水は、管体部40に加えて、複数のヘッダ部Hcやベンド管49を流れることとなり、最終的には、伝熱管4の出湯口59に到達し、出湯する。前記した湯水の流通過程において、前記湯水は燃焼ガスにより加熱され、温水が生成される。
【0035】
2次熱交換部A2の構成について、以下さらに詳述する。
2次熱交換部A2を構成する複数の伝熱管6として、既述したように、
図7に示すように、一定方向に間隔を隔てて配列された複数の直管部60が、複数の曲管部61を介して一連に繋がった蛇行状管体が用いられている。ただし、第2の伝熱管6Bの管外径Dbは、第1の伝熱管6Aの管外径Daよりも小さい。また、第2の伝熱管6Bの直管部60の配列ピッチPbは、第1の伝熱管6Aの直管部60の配列ピッチPaよりも小さい。両端部間ピッチLa,Lbは略同一であり、幅Wa,Wbも略同一である。第2の伝熱管6Bは、第1の伝熱管6Aよりも直管部60の数が多い構成となっている。
【0036】
前記した複数の伝熱管6(第1および第2の伝熱管6A,6B)は、複数の直管部60が水平方向(燃焼ガス流れ方向と交差する方向)に並ぶ姿勢に設定された上で、上下高さ方向に互いに接近するようにして積層している(
図3~
図6を参照)。ただし、複数の第1の伝熱管6Aが上側(燃焼ガス流れ方向上流側)領域に位置し、かつその下側領域に複数の第2の伝熱管6Bが位置するように設定されている。
図3および
図4によく表れているように、複数の第1の伝熱管6Aおよび第2の伝熱管6Bは、上下高さ方向において互いに隣接するものどうしは、水平方向において互いに適当な寸法Lc,Ldで位置ずれした配列(たとえば、千鳥配列)とされている。
【0037】
第1および第2の伝熱管6A,6Bは、既述したように、直管部60の配列ピッチPa,Pbが相違している。このため、第1および第2の伝熱管6A,6Bは、それらの直管
部60どうしが水平方向において位置ずれした配置となっている。換言すると、第1および第2の伝熱管6A,6Bは、これらの平面視において、第1の伝熱管6Aの複数の直管部60どうしの相互間に、第2の伝熱管6Bの複数の直管部60の一部が露見する構成となっている。第1および第2の伝熱管6A,6Bの相互間には、これらの部分を遮る部材(仕切部材など)は設けられていない。
【0038】
次に、前記した熱交換器HEおよびこれを備えた温水装置WHの作用について説明する。
【0039】
この温水装置WHにおいては、燃焼ガスから熱交換器HEを利用して顕熱および潜熱を回収し得るため、熱回収量を多くし、熱交換効率が高いものとなるが、このことに加え、2次熱交換部A2においては、以下に述べるような作用が得られることにより、熱交換器HE全体の熱交換効率は一層高くなる。
【0040】
すなわち、
図4において、第2の伝熱管6Bは、これらの直管部60の配列ピッチPbが小さく、直管部60の相互間領域の幅も小さいため、燃焼ガスが直管部60の相互間領域を通過する際の流速vは速くなる。ここで、一般に、燃焼ガスと伝熱管との熱交換効率は、燃焼ガスの流速vが速いほど高くなる。したがって、第2の伝熱管6Bの熱交換効率は、前記した燃焼ガスの流速の高速化により向上する。
【0041】
また、複数の第2の伝熱管6Bが設けられた領域は、複数の第1の伝熱管6Aが設けられた領域よりも燃焼ガス流れに対する抵抗が大きい。しかも、第1および第2の伝熱管6A,6Bの直管部60どうしは水平方向において位置ずれしている。このため、第1の伝熱管6Aに作用する燃焼ガスは、
図4の矢印Nbで示すように、この第1の伝熱管6Aの外周面の略全周に沿って流れ易くなる。
【0042】
この点をより具体的に説明する。
図8は、本実施形態との対比例を示している。この対比例においては、第1の伝熱管6Aの下方に、燃焼ガス流れの抵抗となる第2の伝熱管6Bは設けられていない。この対比例では、第1の伝熱管6Aに対してその上方から進行した燃焼ガスは、矢印Ncで示すように、第1の伝熱管6Aの下面部69に対して効果的に作用することなく、第1の伝熱管6Aよりも下方に向けて進行していく。
これに対し、
図4に示す本実施形態においては、第2の伝熱管6Bの存在が、燃焼ガスを第1の伝熱管6Aの下面部69に廻り込ませる作用を生じさせる。したがって、
図8の対比例と比較して、本実施形態においては、第1の伝熱管6Aの熱交換効率も高められる。
このように、本実施形態によれば、第1および第2の伝熱管6A,6Bの双方の熱交換効率を高めることが可能となり、温水装置WHの熱効率を優れたものとすることが可能である。
【0043】
また、熱交換器HEの小型化および低コスト化も可能である。
すなわち、2次熱交換部A2による熱回収量を多くするには、複数の伝熱管6のトータルの伝熱面積をある程度大きくする必要がある。これに対し、第1の伝熱管6Aは、その管外径Daが大きく、その表面積が広いため、第1の伝熱管6Aを利用し、しかもその総数を少なめにしながらも、複数の伝熱管6の全体の伝熱面積をある程度の面積に設定することが可能である。たとえば、複数の伝熱管6の全てを管外径が小径のものにすると、その総数をかなり多くする必要があり、大型化を生じる。また、その部品コスト、およびケース2への組み付けコストなどの製造コストが嵩む。一方、複数の伝熱管6の全てを管外径が大径のものにすると、先に述べた2次熱交換部A2の熱交換効率が高められる効果が得られないため、伝熱管6の総数を多くする必要が生じる結果、やはり大型化や製造コストの上昇を招く。
これに対し、本実施形態によれば、そのようなことを解消し、2次熱交換部A2、ひいては熱交換器HE全体の小型化や低コスト化を適切に図ることができる。
【0044】
第1および第2の伝熱管6A,6Bは、ともに1本の直管状の原材料パイプに曲げ加工を施すことにより製造することが可能である。ここで、第2の伝熱管6Bは、直管部60の配列ピッチPbが小さく、曲管部61の曲率半径が小さいため、本来的には、曲管部61を形成するための曲げ加工が困難化する。ただし、本実施形態においては、第2の伝熱管6Bは、その管外径Dbが小径のものであるため、曲管部61の曲げ加工は容易であり、第2の伝熱管6Bの製造が困難化する不具合もない。
【0045】
図9は、本発明の他の実施形態を示している。同図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付すこととし、重複説明は省略する。
【0046】
図9に示す熱交換器HEaは、ケース2A内に設けられる複数の伝熱管として、前記した2次熱交換部A2に相当する複数の伝熱管6(第1および第2の伝熱管6A,6B)のみが設けられている。1次熱交換部A1や胴パイプ3は設けられていない。
本発明に係る熱交換器としては、このような構成にすることも可能である。
【0047】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る熱交換器、および温水装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0048】
第1および第2の伝熱管は、ともに蛇行状管体として形成され、かつこれらは、第1の伝熱管よりも第2の伝熱管の方が管外径が小さく、かつ直管部の配列ピッチが小さい相対関係にあればよい。第1および第2の伝熱管の具体的なサイズ、直管部や曲管部の数、材質などは限定されない。
また、第1および第2の伝熱管は、それぞれ1以上具備されていればよく、それらの具体的な数は限定されない。上述の実施形態においては、第1および第2の伝熱管のそれぞれの数が同一とされているが、これらの数は同数でなくてもよく、相違していてもよい。全体の小型化を図りつつ、熱交換効率を高める観点からすると、第1および第2の伝熱管の数を同数とし、あるいは第2の伝熱管を第1の伝熱管よりも多数とすることが好ましい。
【0049】
上述の実施形態においては、加熱用気体が下向きに流れる逆燃式とされているが、本発明はこれに限定されず、たとえば加熱用気体が上向きに流れる正燃式としたり、あるいは略水平に流れる構成とすることもできる。
加熱用気体は、燃焼ガスに限定されず、たとえばコージェネレーションシステムにおいて発生する高温の排ガスとすることもできる。
本発明に係る熱交換器は、温水装置の構成要素として用いる以外の他の用途に用いることも可能である。したがって、加熱対象流体は、湯水以外の流体とすることもできる。
本発明に係る温水装置は、湯水を加熱して温水を生成する機能を備えたものであり、一般的な給湯装置の他、たとえば風呂給湯装置、暖房用温水装置、融雪用の温水装置などとして構成することができる。
【符号の説明】
【0050】
WH 温水装置
HE,HEa 熱交換器
Ha,Hb ヘッダ部
Da,Db 管外径(第1および第2の伝熱管の)
La,Lb 両端部間ピッチ(第1および第2の伝熱管の)
1 バーナ(加熱用気体供給手段)
2,2A ケース
6 伝熱管
6A,6B 第1および第2の伝熱管
60 直管部
61 曲管部
7a,7b チャンバ