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特許7484076部材取付け構造、およびこの構造を備えた排水栓開閉操作装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】部材取付け構造、およびこの構造を備えた排水栓開閉操作装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 21/18 20060101AFI20240509BHJP
   E03C 1/22 20060101ALI20240509BHJP
   E03C 1/23 20060101ALI20240509BHJP
   A47K 1/14 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
F16B21/18 F
E03C1/22 C
E03C1/23 Z
A47K1/14 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020146675
(22)【出願日】2020-09-01
(65)【公開番号】P2022041461
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 洋明
(72)【発明者】
【氏名】市丸 秀仁
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-211891(JP,A)
【文献】特開2007-063783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 21/18
E03C 1/22
E03C 1/23
A47K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の位置に固定して取付けられ、かつ周壁部およびこの周壁部の外面部に設けられた第1の凹溝部を有する固定部材と、
前記周壁部に嵌合可能な嵌合部、およびこの嵌合部の外面部に設けられ、かつ前記第1の凹溝部に対して前記嵌合部の周方向に並んだ配置に設定可能な第2の凹溝部を有する取付け対象部材と、
両端部が間隔を隔てて対向する切欠きリング状であり、かつ前記両端部の対向方向に拡縮変形可能な係止部材と、
を備えており、
前記係止部材が、前記周壁部および前記嵌合部を囲み、かつ前記第1および第2の凹溝部に進入した係止状態に設定されることにより、前記固定部材に前記取付け対象部材が固定連結される構成とされている、部材取付け構造であって、
前記係止部材が前記係止状態の位置から前記嵌合部のラジアル方向としての第1の方向に位置ずれ操作されることにより、前記第1および第2の凹溝部の少なくとも一方から前記係止部材が脱出した位置ずれ状態に設定されたときに、前記係止部材の前記第1の方向へのさらなる位置ずれを防止するように前記両端部が係合し、前記係止部材を前記取付け対象部材または前記固定部材に保持可能とする係止部材ストッパ用の係合部を、さらに備えており、
前記固定部材の前記周壁部は、前記取付け対象部材の前記嵌合部に外嵌可能であり、
この周壁部は、前記係止部材が前記第2の凹溝部に進入するようにして前記嵌合部に外嵌されている状態において、前記係止部材の内側に進入させることが可能とされ、かつその先端部の外面部には、前記周壁部の先端側ほど外径が小さくなるように傾斜した傾斜面が形成されていることを特徴とする、部材取付け構造。
【請求項2】
所望の位置に固定して取付けられ、かつ周壁部およびこの周壁部の外面部に設けられた第1の凹溝部を有する固定部材と、
前記周壁部に嵌合可能な嵌合部、およびこの嵌合部の外面部に設けられ、かつ前記第1の凹溝部に対して前記嵌合部の周方向に並んだ配置に設定可能な第2の凹溝部を有する取付け対象部材と、
両端部が間隔を隔てて対向する切欠きリング状であり、かつ前記両端部の対向方向に拡縮変形可能な係止部材と、
を備えており、
前記係止部材が、前記周壁部および前記嵌合部を囲み、かつ前記第1および第2の凹溝部に進入した係止状態に設定されることにより、前記固定部材に前記取付け対象部材が固定連結される構成とされている、部材取付け構造であって、
前記係止部材が前記係止状態の位置から前記嵌合部のラジアル方向としての第1の方向に位置ずれ操作されることにより、前記第1および第2の凹溝部の少なくとも一方から前記係止部材が脱出した位置ずれ状態に設定されたときに、前記係止部材の前記第1の方向へのさらなる位置ずれを防止するように前記両端部が係合し、前記係止部材を前記取付け対象部材または前記固定部材に保持可能とする係止部材ストッパ用の係合部を、さらに備えており、
前記固定部材は、ナット部材が螺合装着されるネジ部が形成されたネジ形成部と、このネジ形成部の一端側に連設されたフランジ部と、を備えており、前記フランジ部と前記ナット部材との両者によって前記所望の位置をクランプすることにより、この位置に取付け可能であることを特徴とする、部材取付け構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の部材取付け構造であって、
前記係止部材の前記位置ずれ状態は、前記係止部材が前記第1の凹溝部には進入することなく、前記両端部が前記第2の凹溝部に進入している状態であり、
前記係止部材ストッパ用の係合部は、前記取付け対象部材に設けられている、部材取付け構造。
【請求項4】
請求項1または2に記載の部材取付け構造であって、
前記取付け対象部材は、前記嵌合部の下部に連設され、かつ前記嵌合部よりも大径または幅広の上面部を有する台部を備えており、
前記係止部材ストッパ用の係合部は、前記台部上に設けられている、部材取付け構造。
【請求項5】
請求項1または2に記載の部材取付け構造であって、
前記係止部材の前記両端部には、前記係止部材の外側に向けて湾曲または屈曲した曲げ部が形成されており、
前記係止部材ストッパ用の係合部は、前記第1の方向とは反対方向を向いて開口した凹部を有しており、
前記係止部材が前記位置ずれ状態に設定されたときには、前記曲げ部が前記凹部に進入し、かつこの進入によって前記曲げ部が前記第1の方向とは交差する方向に位置ずれすることも防止されるように構成されている、部材取付け構造。
【請求項6】
所望の排水栓の開閉を行なうための排水栓開閉操作装置であって、
請求項1ないし5のいずれかに記載の部材取付け構造を備えており、かつ前記取付け対象部材が、この排水栓開閉操作装置の構成部品であることを特徴とする、排水栓開閉操作装置。
【請求項7】
所望の排水栓の開閉を行なうための排水栓開閉操作装置であって、
所望の位置に固定して取付けられ、かつ周壁部およびこの周壁部の外面部に設けられた第1の凹溝部を有する固定部材と、
前記周壁部に嵌合可能な嵌合部、およびこの嵌合部の外面部に設けられ、かつ前記第1の凹溝部に対して前記嵌合部の周方向に並んだ配置に設定可能な第2の凹溝部を有する取付け対象部材と、
両端部が間隔を隔てて対向する切欠きリング状であり、かつ前記両端部の対向方向に拡縮変形可能な係止部材と、
を備えており、
前記係止部材が、前記周壁部および前記嵌合部を囲み、かつ前記第1および第2の凹溝部に進入した係止状態に設定されることにより、前記固定部材に前記取付け対象部材が固定連結される構成とされている、部材取付け構造であって、
前記係止部材が前記係止状態の位置から前記嵌合部のラジアル方向としての第1の方向に位置ずれ操作されることにより、前記第1および第2の凹溝部の少なくとも一方から前記係止部材が脱出した位置ずれ状態に設定されたときに、前記係止部材の前記第1の方向へのさらなる位置ずれを防止するように前記両端部が係合し、前記係止部材を前記取付け対象部材または前記固定部材に保持可能とする係止部材ストッパ用の係合部を、さらに備えている部材取付け構造を備えており、
かつ前記取付け対象部材が、この排水栓開閉操作装置の構成部品であることを特徴とする、排水栓開閉操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の位置に固定部材を利用して取付け対象部材を取付けるようにした部材取付け構造、およびこの部材取付け構造を備えた排水栓開閉操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、排水栓開閉操作装置の一例として、特許文献1に記載のものを先に提案している。
同文献に記載の排水栓開閉操作装置は、浴槽の排水栓を遠隔操作によって開閉するための装置であり、浴槽フランジに取付けられている。その取付け手段としては、浴槽フランジに、固定部材を取付けてから、この固定部材に、ファスナと称される係止部材を用いて、排水栓開閉操作装置のハウジング部材(取付け対象部材)を固定連結させる手段が採用されている。前記固定部材は、外周面に設けられたネジ部に螺合されたナットと、前記固定部材の上部に設けられたフランジ部とを利用して所望の部位をクランプすることにより、その部位に固定されるものである。一方、前記固定部材にハウジング部材を固定連結させる手段としては、固定部材およびハウジング部材にそれぞれ設けられている第1および第2の凹溝部が、周方向に並ぶように設定された状態において、それら第1および第2の凹溝部に係止部材を進入(係入)させる手段が採用されている。係止部材は、拡縮変形可能なCリングなどの切欠きリング状である。
前記した手段によれば、固定部材と取付け対象部材との相対的な位置決め固定が係止部材を用いて的確に図られる。係止部材の装着作業は、容易であり、排水栓開閉操作装置の取付け作業性を良くすることが可能である。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0004】
排水栓開閉操作装置を浴槽フランジに取付けて使用している場合において、そのメンテナンス作業を行なうときには、排水栓開閉操作装置を浴槽フランジから取り外すのが一般的である。この取り外し作業は、第1および第2の凹溝部に進入している係止部材を、固定部材やハウジング部材の横方向(ラジアル方向)に移動させて、第1および第2の凹溝部から脱出させて取り外すことにより行なわれる。ところが、このように係止部材を取り外してしまうと、その後の排水栓開閉操作装置のメンテナンス作業中に、前記係止部材を紛失する虞がある。また、係止部材を紛失しないように気を配る負担も大きくなる。したがって、このようなことが解消されることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5040085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、固定部材に対する取付け対象部材の固定連結を解除した際に、その固定連結に用いていた係止部材を紛失するといった不具合を適切に解消することが可能な部材取付け構造、およびこの部材取付け構造を備えた排水栓開閉操作装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面により提供される部材取付け構造は、所望の位置に固定して取付けられ、かつ周壁部およびこの周壁部の外面部に設けられた第1の凹溝部を有する固定部材と、前記周壁部に嵌合可能な嵌合部、およびこの嵌合部の外面部に設けられ、かつ前記第1の凹溝部に対して前記嵌合部の周方向に並んだ配置に設定可能な第2の凹溝部を有する取付け対象部材と、両端部が間隔を隔てて対向する切欠きリング状であり、かつ前記両端部の対向方向に拡縮変形可能な係止部材と、を備えており、前記係止部材が、前記周壁部および前記嵌合部を囲み、かつ前記第1および第2の凹溝部に進入した係止状態に設定されることにより、前記固定部材に前記取付け対象部材が固定連結される構成とされている、部材取付け構造であって、前記係止部材が前記係止状態の位置から前記嵌合部のラジアル方向としての第1の方向に位置ずれ操作されることにより、前記第1および第2の凹溝部の少なくとも一方から前記係止部材が脱出した位置ずれ状態に設定されたときに、前記係止部材の前記第1の方向へのさらなる位置ずれを防止するように前記両端部が係合し、前記係止部材を前記取付け対象部材または前記固定部材に保持可能とする係止部材ストッパ用の係合部を、さらに備えており、前記固定部材の前記周壁部は、前記取付け対象部材の前記嵌合部に外嵌可能であり、この周壁部は、前記係止部材が前記第2の凹溝部に進入するようにして前記嵌合部に外嵌されている状態において、前記係止部材の内側に進入させることが可能とされ、かつその先端部の外面部には、前記周壁部の先端側ほど外径が小さくなるように傾斜した傾斜面が形成されていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、取付け対象部材のメンテナンス作業を行なうことなどを目的として、固定部材に対する取付け対象部材の固定連結状態を解除する場合、係止部材を前記第1の方向に位置ずれさせて第1および第2の凹溝部の少なくとも一方から脱出させることとなる。その際、本発明においては、係止部材を、係止部材ストッパ用の係合部に係合させ、前記第1の方向にそれ以上に位置ずれしないようにし、前記係止部材ストッパ用の係合部に保持させることが可能である。したがって、前記従来技術とは異なり、係止部材を誤って紛失する虞をなくし、または少なくすることができる。係止部材を紛失しないように気を配る負担を少なくすることもできる。
さらにこのような構成によれば、固定部材に取付け対象部材を固定連結させる作業手順として、予め取付け対象部材の嵌合部に係止部材を外嵌させておき、その後に固定部材の周壁部を前記嵌合部に外嵌させ、かつその外嵌作業時に、前記周壁部を係止部材の内側に進入させることにより、係止部材を第1および第2の凹溝部に進入させる作業手順が可能となる。一方、前記周壁部の先端部の外面部には、この先端部を先細状とする所定の傾斜面が形成されているため、前記周壁部を係止部材の内側に進入させる作業を、円滑に、かつ的確に行なうことが可能となる。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記係止部材の前記位置ずれ状態は、前記係止部材が前記第1の凹溝部には進入することなく、前記両端部が前記第2の凹溝部に進入している状態であり、前記係止部材ストッパ用の係合部は、前記取付け対象部材に設けられている。
【0011】
このような構成によれば、係止部材を前記位置ずれ状態に設定した際には、係止部材の両端部が、取付け対象部材に設けられている第2の凹溝部に進入し、かつ係止部材ストッパ用の係合部に係合した状態となる。したがって、係止部材を取付け対象部材に適切に保持させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記取付け対象部材は、前記嵌合部の下部に連設され、かつ前記嵌合部よりも大径または幅広の上面部を有する台部を備えており、前記係止部材ストッパ用の係合部は、前記台部上に設けられている。
【0013】
このような構成によれば、係止部材を前記位置ずれ状態に設定した際には、この係止部材を取付け対象部材の台部の上面部によって受けるかたちで、取付け対象部材に保持させることが可能となる。したがって、係止部材の保持が一層確実化され、係止部材を紛失する虞をより少なくすることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記係止部材の前記両端部には、前記係止部材の外側に向けて湾曲または屈曲した曲げ部が形成されており、前記係止部材ストッパ用の係合部は、前記第1の方向とは反対方向を向いて開口した凹部を有しており、前記係止部材が前記位置ずれ状態に設定されたときには、前記曲げ部が前記凹部に進入し、かつこの進入によって前記曲げ部が前記第1の方向とは交差する方向に位置ずれすることも防止されるように構成されている。
【0015】
このような構成によれば、係止部材を、前記位置ずれ状態に設定し、係止部材の両端部を係止部材ストッパ用の係合部に係合させた場合に、この両端部の係合状態を安定させることができる。
【0018】
本発明の第2の側面により提供される部材取付け構造は、所望の位置に固定して取付けられ、かつ周壁部およびこの周壁部の外面部に設けられた第1の凹溝部を有する固定部材と、前記周壁部に嵌合可能な嵌合部、およびこの嵌合部の外面部に設けられ、かつ前記第1の凹溝部に対して前記嵌合部の周方向に並んだ配置に設定可能な第2の凹溝部を有する取付け対象部材と、両端部が間隔を隔てて対向する切欠きリング状であり、かつ前記両端部の対向方向に拡縮変形可能な係止部材と、を備えており、前記係止部材が、前記周壁部および前記嵌合部を囲み、かつ前記第1および第2の凹溝部に進入した係止状態に設定されることにより、前記固定部材に前記取付け対象部材が固定連結される構成とされている、部材取付け構造であって、前記係止部材が前記係止状態の位置から前記嵌合部のラジアル方向としての第1の方向に位置ずれ操作されることにより、前記第1および第2の凹溝部の少なくとも一方から前記係止部材が脱出した位置ずれ状態に設定されたときに、前記係止部材の前記第1の方向へのさらなる位置ずれを防止するように前記両端部が係合し、前記係止部材を前記取付け対象部材または前記固定部材に保持可能とする係止部材ストッパ用の係合部を、さらに備えており、前記固定部材は、ナット部材が螺合装着されるネジ部が形成されたネジ形成部と、このネジ形成部の一端側に連設されたフランジ部と、を備えており、前記フランジ部と前記ナット部材との両者によって前記所望の位置をクランプすることにより、この位置に取付け可能であることを特徴としている。
【0019】
このような構成によれば、固定部材を、ナット部材を利用したクランプ方式により、様々な位置に確実かつ強固に取付けることが可能である。
【0020】
本発明の第の側面により提供される排水栓開閉操作装置は、所望の排水栓の開閉を行なうための排水栓開閉操作装置であって、本発明の第1または第2の側面により提供される部材取付け構造を備えており、かつ前記取付け対象部材が、この排水栓開閉操作装置の構成部品であることを特徴としている。
本発明の第4の側面により提供される排水栓開閉操作装置は、所望の排水栓の開閉を行なうための排水栓開閉操作装置であって、所望の位置に固定して取付けられ、かつ周壁部およびこの周壁部の外面部に設けられた第1の凹溝部を有する固定部材と、前記周壁部に嵌合可能な嵌合部、およびこの嵌合部の外面部に設けられ、かつ前記第1の凹溝部に対して前記嵌合部の周方向に並んだ配置に設定可能な第2の凹溝部を有する取付け対象部材と、両端部が間隔を隔てて対向する切欠きリング状であり、かつ前記両端部の対向方向に拡縮変形可能な係止部材と、を備えており、前記係止部材が、前記周壁部および前記嵌合部を囲み、かつ前記第1および第2の凹溝部に進入した係止状態に設定されることにより、前記固定部材に前記取付け対象部材が固定連結される構成とされている、部材取付け構造であって、前記係止部材が前記係止状態の位置から前記嵌合部のラジアル方向としての第1の方向に位置ずれ操作されることにより、前記第1および第2の凹溝部の少なくとも一方から前記係止部材が脱出した位置ずれ状態に設定されたときに、前記係止部材の前記第1の方向へのさらなる位置ずれを防止するように前記両端部が係合し、前記係止部材を前記取付け対象部材または前記固定部材に保持可能とする係止部材ストッパ用の係合部を、さらに備えている部材取付け構造を備えており、かつ前記取付け対象部材が、この排水栓開閉操作装置の構成部品であることを特徴としている。
【0021】
このような構成によれば、本発明の第1または第2の側面により提供される部材取付け構造について述べたのと同様な効果が得られる。
【0022】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る部材取付け構造、およびこの構造を備えた排水栓開閉操作装置の一例を示す概略説明図である。
図2図1のII-II概略断面図である。
図3】(a)は、図1および図2に示す部材取付け構造の要部概略断面図であり、(b)は、(a)のIIIb-IIIb断面図である。
図4】(a)は、図1および図2に示す部材取付け構造で用いられている固定部材の斜視図であり、(b)は、固定部材に螺合するナット部材の斜視図である。
図5図4(a)のV-V断面図である。
図6】(a)は、図1および図2に示す部材取付け構造で用いられている取付け対象部材としてのハウジング部材の斜視図であり、(b)は、(a)の要部拡大図である。
図7図6(a)に示すハウジング部材の平面図である。
図8図7のVIII-VIII断面図である。
図9】(a)は、図1および図2に示す部材取付け構造で用いられている係止部材の平面図であり、(b)は、(a)の側面図である。
図10】ハウジング部材に係止部材を装着した状態を示す断面図である。
図11図10に示す構成の変形例(本発明の他の実施形態)を示す要部断面図である。
図12図3に示すように固定部材にハウジング部材を連結する場合の作業途中状態を示す断面図である。
図13図3に示した設定状態から係止部材を位置ずれさせた状態を示す平面断面図である。
図14図13の要部側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0025】
図1に示す排水栓開閉操作装置Bは、浴室に設置された浴槽1の排水栓10を、遠隔操作により昇降させて、浴槽1の排水口11を開閉させるための装置である。この排水栓開閉操作装置Bの基本的な構成は、特許文献1に記載された排水栓開閉操作装置と共通しており、この共通する構成については、以下簡単な説明する。
【0026】
排水栓開閉操作装置Bは、排水栓10に接続されたワイヤ20の繰り出し動作、および引き戻し動作を生じさせることにより、排水栓10を昇降させる。図2に示すように、ワイヤ20を昇降させるための手段として、ワイヤ20とカップリング21を介して接続されたスライド軸22、およびこのスライド軸22をネジ送り機構の原理を利用して往復動自在とするモータMを備えており、これらは互いに連結された上側および下側のハウジング部材3,3A内に収容されている。上側のハウジング部材3には、このハウジング部材3の上面部に取付けられた操作ボタン23が操作されることにより所定のスイッチング動作を行なうスイッチ24や、排水栓開閉操作装置Bの電源のオン・オフなどの状況をユーザに察知させるためのLED光源などの光源25が実装された回路基板26も組み込まれている。ハウジング部材3には、光源25から発せられた光を通過させるための透光孔39a、および操作ボタン23の操作をスイッチ24に伝達させるための孔部39bが設けられたガイド管部39なども形成されている。
【0027】
下側のハウジング部材3Aは、前記した上側のハウジング部材3との組み合わせにより、排水栓開閉操作装置Bの前記した構成部品の全体を囲み込み、前記構成部品に水などが容易に掛からないようにするのに役立つ。
なお、排水栓開閉操作装置Bの前記構成部品は、図2以外の図においては省略している。
【0028】
排水栓開閉操作装置Bは、部材取付け構造Aを備えている。この部材取付け構造Aは、固定部材4、ナット部材49、および係止部材5を備えており、また取付け対象部材として、前記した上側のハウジング部材3も備えている。
【0029】
図4および図5によく表れているように、固定部材4は、筒状の周壁部40の上端に中空円形状のフランジ部42が連設された構成である。周壁部40は、ネジ部が外周面に形成されているネジ形成部40aと、このネジ形成部40aの下側に位置する非ネジ形成部としての下端部寄り領域40bとに区分される。ネジ形成部40aには、図4(b)に示すような形態のナット部材49が螺合装着される。
【0030】
図2および図3(a)に示すように、固定部材4は、浴槽フランジ12に設けられた孔
部12aに差し込まれ、かつフランジ部42とナット部材49との両者によって浴槽フランジ12を締め付けた状態に設定される。このことにより、浴槽フランジ12への固定部材4の取付けが図られる。排水栓開閉操作装置Bは、この固定部材4を利用して浴槽フランジ12に取付けられる。より具体的には、後述するように、固定部材4の周壁部40内に、ハウジング部材3の嵌合部30が嵌入された状態で、それらに設けられている第1および第2の凹溝部41,32に係止部材5が進入した状態とされ、固定部材4へのハウジング部材3の固定連結が図られる。
【0031】
周壁部40の下端部寄り領域40bには、下部開口状の複数の切欠き部43が形成され、かつこの切欠き部43が形成されていない領域には、係止部材5を進入させるための第1の凹溝部41が周方向に延びて形成されている。
【0032】
図4(a)の要部拡大図によく表れているように、周壁部40のうち、第1の凹溝部41よりも下側の先端部は、周壁部40の下端先端側ほど外径が小さくなるように傾斜した傾斜面44が外面部に形成された先細状とされている。傾斜面44は、後述する図12の組立作業時において、係止部材5の内側に周壁部40を配置させることを容易とする効果をもたらせる。
【0033】
ハウジング部材3は、既述したように、本発明でいう取付け対象部材の一例に相当する。このハウジング部材3の一部の構成は、図2を参照して説明したが、図6図8によく表れているように、嵌合部30、台部31、下側のハウジング部材3Aとの連結を図るためのフランジ片部33、第2の凹溝部32、および係止部材ストッパ用の係合部34を具備している。
【0034】
嵌合部30は、図2および図3に示すように、固定部材4の周壁部40に嵌入する部位であり、上壁部を有する略円筒状である。
台部31は、嵌合部30の下部に連設され、かつ嵌合部30よりも大径または幅広の上面部を有する部位である。
【0035】
第2の凹溝部32は、後述するように、係止部材5を進入させるための部位であり、嵌合部30の下部寄り領域の外面部に設けられている。具体的には、嵌合部30の外面部には、側面視略コ字状の横向きの凸状部35が設けられており、この凸状部35のうち高さ方向略中央の部分的に窪んだ箇所が、第2の凹溝部32である。凸状部35は、固定部材4の切欠き部43に対応した位置に同数(たとえば2箇所)設けられており、嵌合部30を固定部材4の周壁部40に嵌入させた状態においては、固定部材4の切欠き部43内に凸状部35を進入させ、第1および第2の凹溝部41,32を周方向に並んだ配置(環状に繋がった配置)とすることが可能である。
【0036】
係止部材ストッパ用の係合部34は、係止部材5を後述する所定の位置ずれ状態に設定した際に、この係止部材5がそれ以上に位置ずれすることを防止し、係止部材5の脱落を回避するための部位である。台部31の上面部上のうち、第2の凹溝部32の外側方に離間した位置には、上向きの凸状部36が突設されているが、この凸状部36の一部が、係止部材ストッパ用の係合部34である。凸状部36の背後には、補強用リブ36aが適宜連設されている。
【0037】
本実施形態において、係止部材ストッパ用の係合部34は、より詳しくは、上向きの凸状部36のうち、横向き開口状の凹部34aが形成された箇所である。この凹部34aは、図13および図14を参照して後述するように、係止部材5の両端部50を進入させるための部位である。図13において、両端部50が進入している凹部34aの反対側に位置する凹部34a(34a’)は、係止部材5の装着方向が本実施形態とは反対にされた
場合に、係止部材5の両端部50を進入させるための部位となる。
【0038】
好ましくは、横向きおよび上向きの両凸状部35,36どうしを接続する接続部37が設けられている。この接続部37の上面部は、第2の凹溝部32の下壁面と面一状に繋がっている。この接続部37が設けられていれば、係止部材5が第2の凹溝部32の外方に配置された際に接続部37によって安定的に支持されることとなり、第2の凹溝部32よりも高さが低い箇所へ落ちることはない。
【0039】
図9に示すように、係止部材5は、細幅な金属製の帯状部材または線状部材に曲げ加工を施すことにより形成された止め具であり、両端部50が間隔を隔てて対向する切欠きリング状であって、両端部50の対向方向にバネ性をもった状態で拡縮変形可能である。この係止部材5の両端部50には、外側に向けて湾曲または屈曲した曲げ部50aが形成されている。係止部材5の基部側には、略コ字状の屈曲部51が形成されているが、これは係止部材5のバネ力を強くする上で好ましい。この屈曲部51は、省略することが可能である。
【0040】
係止部材5は、図3に示したように、第1および第2の凹溝部41,32の双方に進入させた状態に設定可能である。
この状態に設定するための手順としては、まず図10に示すように、ハウジング部材3が固定部材4に組み付けられていない状態において、係止部材5を第2の凹溝部32に進入させるようにして嵌合部30に外嵌させた状態に設定する。この設定は、係止部材5を嵌合部30の上方から下降させて行なう。変形例として、図11に示すように、横向きの凸状部35の上面部35aを傾斜させておけば、係止部材5を上面部35aに当接させた際に、係止部材5が拡大変形し易くなり、係止部材5の装着作業の容易化を図ることが可能である。
【0041】
図10に示した状態に設定した後においては、図12に示すように、ハウジング部材3の嵌合部30を、浴槽フランジ12に予め取付けられている固定部材4の周壁部40に嵌合させる作業を行なう。その際、周壁部40の先端部は、係止部材5の内側に進入し、係止部材5は、最終的には、図3に示すように、第1および第2の凹溝部41,32に進入し、固定部材4に対するハウジング部材3の固定連結が図られる。
【0042】
図3に示した組立状態においては、図13および図14に示すように、係止部材5を嵌合部30や周壁部40のラジアル方向である第1の方向N1に位置ずれさせた位置ずれ状態を設定することが可能である。係止部材5の前記位置ずれは、両端部50を適当な力Fで押圧することにより容易に生じさせることが可能である。このような位置ずれ状態においては、係止部材5は、第1の凹溝部41から脱出し、第1の凹溝部41には非進入である一方、両端部50は第2の凹溝部32に進入しつつ、係止部材ストッパ用の係合部34の凹部34aに進入し、係合した状態となっている。
【0043】
次に、前記した部材取付け構造A、およびこれを備えた排水栓開閉操作装置Bの作用について説明する。
【0044】
排水栓開閉操作装置Bは、通常時においては、図2および図3に示したような取付け状態にあるが、メンテナンスを行なう場合には、固定部材4を浴槽フランジ12に取付けたまま、ハウジング部材3を固定部材4から取り外す。この取り外しを行なうには、図13および図14を参照して説明したように、係止部材5の位置ずれ状態を設定する。この設定状態においては、係止部材5が第1および第2の凹溝部41,32の双方に跨がった状態で進入していないため、固定部材4に対するハウジング部材3の固定連結状態は解除されており、固定部材4からハウジング部材3を取り外すことが可能である。
【0045】
一方、係止部材5の前記した位置ずれ状態においては、係止部材5の両端部50が係合部34に係合しており、係止部材5が第1の方向N1にさらに位置ずれすることは適切に防止される。また、両端部50は、第2の凹溝部32の形成箇所と係合部34との相互間に挟まれた状態にある。さらに、両端部50と係合部34との係合は、横向き開口状の凹部34aに両端部50が進入した状態で行なわれており、両端部50が上下高さ方向に位置ずれすることも規制されている。このようなことから、係止部材5は、ハウジング部材3によって適切に保持されることとなり、ハウジング部材3から脱落しないようにすることができる。係止部材5は、台部31上に位置するため、ハウジング部材3からの脱落は、一層生じ難くなる。このようなことから、係止部材5を誤って紛失する虞をなくし、または少なくすることができる。
【0046】
排水栓開閉操作装置Bのメンテナンスが終了し、ハウジング部材3を固定部材4に再度連結固定させる場合には、予め係止部材5を前記した第1の方向N1とは反対方向に変位させ、図10の実線で示した状態に設定しておけばよい。その作業も容易であり、便利である。
【0047】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る部材取付け構造、およびこの構造を備えた排水栓開閉操作装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0048】
上述の実施形態においては、係止部材ストッパ用の係合部34が、横向き開口状の凹部34aを有する構成とされており、係止部材5の両端部50を係合させる上で好ましいが、本発明はこれに限定されず、凹部34aを省略した構成とすることもできる。
【0049】
係止部材ストッパ用の係合部34は、上述の実施形態のように、ハウジング部材3(取付け対象部材)に設けることが容易であり、好ましいものの、本発明はこれに限定されない。余り実用的ではないが、係止部材ストッパ用の係合部34を、固定部材4側に設け、固定部材4からハウジング部材3(取付け対象部材)を取り外した際に、係止部材5が固定部材4側に保持される構成とすることも可能である(ただし、この場合、係止部材5は、少なくとも第2の凹溝部32には進入していない状態とし、ハウジング部材3の取り外しが可能な状態にある必要がある)。
【0050】
上述の実施形態においては、取付け対象部材(ハウジング部材)の嵌合部が、固定部材の周壁部内に嵌入する構成とされているが、これとは反対に、取付け対象部材の嵌合部が、固定部材の周壁部に外嵌する構成とすることも可能である。
固定部材および取付け対象部材に設けられる第1および第2の凹溝部は、複数ずつ設けられることが好ましいが、これらは少なくとも1つずつ設けられていればよい。
係止部材は、両端部が間隔を隔てて対向する切欠きリング状(C字状、コ字状など)であって、前記両端部の対向方向に拡縮変形可能であればよく、その具体的形状、サイズ、材質などは限定されない。
【0051】
固定部材は、ナット部材とフランジ部とを利用して所望の位置をクランプするものに限定されない。要は、何らかの手段を利用して所望の位置に取付けられればよい。本発明に係る部材取付け構造は、固定部材に対する取付け対象部材の着脱が係止部材を利用して簡易に行なうことが可能であり、固定部材自体を所望の位置に対して着脱させることは殆どないため、固定部材を所望の位置に取付けるための手段としては種々の手段(たとえば、ビス止め、接着剤などを利用した接合手段など)を採用することが可能である。
【0052】
取付け対象部材は、排水栓開閉操作装置のハウジング部材に限定されない。本発明は、
様々な装置・機器類、および物品を取付け対象部材とすることが可能である。
本発明に係る排水栓開閉操作装置は、浴槽用の排水栓に限らず、たとえば洗面所の排水栓などを開閉操作するための装置として構成することもできる。
【符号の説明】
【0053】
A 部材取付け構造
B 排水栓開閉操作装置
N1 第1の方向
3 ハウジング部材(取付け対象部材)
30 嵌合部
31 台部
32 第2の凹溝部
34 係止部材ストッパ用の係合部
34a 凹部
36 凸状部
4 固定部材
40 周壁部
40a ネジ形成部
41 第1の凹溝部
42フランジ部
44 傾斜面
49 ナット部材
5 係止部材
50 両端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14