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特許7484077部材取付け構造、およびこの構造を備えた排水栓開閉操作装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】部材取付け構造、およびこの構造を備えた排水栓開閉操作装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 21/08 20060101AFI20240509BHJP
   E03C 1/22 20060101ALI20240509BHJP
   E03C 1/23 20060101ALI20240509BHJP
   A47K 1/14 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
F16B21/08
E03C1/22 C
E03C1/23 Z
A47K1/14 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020146677
(22)【出願日】2020-09-01
(65)【公開番号】P2022041463
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 洋明
(72)【発明者】
【氏名】市丸 秀仁
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-253423(JP,A)
【文献】特開2007-063783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 21/08
E03C 1/22
E03C 1/23
A47K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の位置に固定して取付けられ、かつ周壁部およびこの周壁部の外面部に設けられた第1の凹溝部を有する固定部材と、
前記周壁部に嵌合可能な嵌合部、この嵌合部の外面部に設けられ、かつ前記第1の凹溝部に対して前記嵌合部の周方向に並んだ配置に設定可能な第2の凹溝部、およびこの第2の凹溝部よりも下方に位置するようにして前記嵌合部の下部に連設され、かつ前記嵌合部よりも大径または幅広状の台部を有する取付け対象部材と、
両端部が間隔を隔てて対向する切欠きリング状であり、かつ前記両端部の対向方向に拡縮変形可能な係止部材と、
を備えており、
前記係止部材が、前記周壁部および前記嵌合部を囲み、かつ前記第1および第2の凹溝部に進入した係止状態に設定されることにより、前記固定部材に前記取付け対象部材が固定連結される構成とされている、部材取付け構造であって、
前記第2の凹溝部の上側に位置して前記嵌合部の外面部から半径方向外方側に延びる上側突起部を、さらに備えており、
この上側突起部は、前記半径方向において、先端部の位置が前記台部の外周縁の位置に到達し、または接近しており、
前記第2の凹溝部の下側に位置して前記嵌合部の外面部から前記半径方向外方側に延びる下側突起部を、さらに備えており、
この下側突起部も、前記半径方向において、先端部の位置が前記台部の前記外周縁の位置に到達し、または接近していることを特徴とする、部材取付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載の部材取付け構造であって、
前記上側突起部の先端部寄り領域の下面部には、基端部側ほど高さが低くなる傾斜面が設けられ、前記下側突起部の先端部寄り領域の上面部には、基端部側ほど高さが高くなる傾斜面が設けられている、部材取付け構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の部材取付け構造であって、
前記台部の上側に配され、前記第1および第2の凹溝部の周囲を囲む側壁部、およびこの側壁部の一部に設けられ、かつ前記係止部材を外部から前記第1および第2の凹溝部に向けて進行させるための係止部材挿入用の開口部が形成されているカバー部材を、さらに備えている、部材取付け構造。
【請求項4】
請求項に記載の部材取付け構造であって、
前記カバー部材の前記側壁部は、前記台部の前記外周縁の直上またはその近傍に位置しており、
前記上側突起部の前記先端部は、前記側壁部の内面部に接近または接触している、部材取付け構造。
【請求項5】
請求項1または2に記載の部材取付け構造であって、
前記上側突起部の前記先端部は、前記半径方向とは交差する幅方向の中央部が、前記幅方向の両端部よりも前記半径方向外方側に突出した形状である、部材取付け構造。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれかに記載の部材取付け構造であって、
前記固定部材の下部には、前記嵌合部の前記半径方向外方側に突出し、かつ前記第2の凹溝部に接近した配置で前記台部の上側に配される下側フランジ部が設けられており、
この下側フランジ部の上面部は、前記第2の凹溝部の下部と略同一の高さである、部材取付け構造。
【請求項7】
所望の排水栓の開閉を行なうための排水栓開閉操作装置であって、
請求項1ないし6のいずれかに記載の部材取付け構造を備えており、かつ前記取付け対象部材が、この排水栓開閉操作装置の構成部品であることを特徴とする、排水栓開閉操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の位置に固定部材を利用して取付け対象部材を取付けるようにした部材取付け構造、およびこの部材取付け構造を備えた排水栓開閉操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、排水栓開閉操作装置の一例として、特許文献1に記載のものを先に提案している。
同文献に記載の排水栓開閉操作装置は、浴槽の排水栓を遠隔操作によって開閉するための装置であり、浴槽フランジに取付けられている。その取付け手段としては、浴槽フランジに、固定部材を取付けてから、この固定部材に、ファスナと称される係止部材を用いて、排水栓開閉操作装置のハウジング部材(取付け対象部材)を固定連結させる手段が採用されている。前記固定部材は、外周面に設けられたネジ部に螺合されたナット部材と、前記固定部材の上部に設けられたフランジ部とを利用して所望の部位をクランプし、その部位に固定される。一方、前記固定部材にハウジング部材を固定連結させる手段としては、固定部材およびハウジング部材にそれぞれ設けられている第1および第2の凹溝部が、周方向に並ぶように設定された状態において、それら第1および第2の凹溝部に係止部材を進入(係入)させる手段が採用されている。係止部材は、拡縮変形可能なCリングなどの切欠きリング状である。
前記した手段によれば、固定部材と取付け対象部材との相対的な位置決め固定を、係止部材を用いて的確に図ることができる。係止部材の装着作業は容易であり、排水栓開閉操作装置の取付け作業性を良くすることも可能である。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、固定部材へのハウジング部材(取付け対象部材)の固定連結作業を行なう場合、作業者のミスにより、係止部材を第1および第2の凹溝部に適切に進入させていない状態で、不適切な部位に過誤装着する虞がある。第1および第2の凹溝部は、比較的浅い凹溝部であり、いずれの部位であるかを目視によって判別し難い場合があり、このようなことに起因して、前記したミスが発生し易い。排水栓開閉操作装置が浴槽フランジに取付けられている場合は、作業スペースが狭く、かつ薄暗い場合があるが、このような場合には第1および第2の凹溝部の位置が一層判り難く、作業ミスをより生じ易い。作業ミスによって不適切な組立状態が生じた場合、ハウジング部材は、固定部材に対して適切に固定されないこととなるため、排水栓開閉操作装置の主要部が浴槽フランジから落下し、故障する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5040085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、係止部材の装着ミスをなくし、または少なくすることができ、所望の取付け対象部材の適正な取付けを容易かつ的確に行なうことが可能な部材取付け構造、およびこの部材取付け構造を備えた排水栓開閉操作装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面により提供される部材取付け構造は、所望の位置に固定して取付けられ、かつ周壁部およびこの周壁部の外面部に設けられた第1の凹溝部を有する固定部材と、前記周壁部に嵌合可能な嵌合部、この嵌合部の外面部に設けられ、かつ前記第1の凹溝部に対して前記嵌合部の周方向に並んだ配置に設定可能な第2の凹溝部、およびこの第2の凹溝部よりも下方に位置するようにして前記嵌合部の下部に連設され、かつ前記嵌合部よりも大径または幅広状の台部を有する取付け対象部材と、両端部が間隔を隔てて対向する切欠きリング状であり、かつ前記両端部の対向方向に拡縮変形可能な係止部材と、を備えており、前記係止部材が、前記周壁部および前記嵌合部を囲み、かつ前記第1および第2の凹溝部に進入した係止状態に設定されることにより、前記固定部材に前記取付け対象部材が固定連結される構成とされている、部材取付け構造であって、前記第2の凹溝部の上側に位置して前記嵌合部の外面部から半径方向外方側に延びる上側突起部を、さらに備えており、この上側突起部は、前記半径方向において、先端部の位置が前記台部の外周縁の位置に到達し、または接近しており、前記第2の凹溝部の下側に位置して前記嵌合部の外面部から前記半径方向外方側に延びる下側突起部を、さらに備えており、この下側突起部も、前記半径方向において、先端部の位置が前記台部の前記外周縁の位置に到達し、または接近していることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、固定部材に取付け対象部材を固定連結する場合、固定部材の周壁部と取付け対象部材の嵌合部とを嵌合させた状態において、係止部材をそれらの側方から外嵌装着し、第1および第2の凹溝部に進入させる。ここで、第1および第2の凹溝部の下側には、台部が存在しているのに対し、第2の凹溝部の上側には、前記台部と略同様な幅で、嵌合部の半径方向に長く延びた上側突起部が設けられているため、これらの部位に基づき、第2の凹溝部の位置が判り易い。また、係止部材が第2の凹溝部よりも上側の位置を通過するように扱われていた場合、そのようなことが上側突起部によって阻止される効果も期待できる。このようなことから、本発明によれば、前記従来技術と比較すると、第1および第2の凹溝部の双方に係止部材を進入させる作業をより的確に行なうことが可能となり、係止部材の装着ミスをなくし、または少なくすることができる。
【0011】
またこのような構成によれば、第2の凹溝部の位置が、上側突起部および台部のみならず、下側突起部にも基づいて判別できることとなり、第2の凹溝部の位置が一層判り易くなる。したがって、係止部材の装着ミスをなくす上で一層好ましい。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記上側突起部の先端部寄り領域の下面部には、基端部側ほど高さが低くなる傾斜面が設けられ、前記下側突起部の先端部寄り領域の上面部には、基端部側ほど高さが高くなる傾斜面が設けられている。
【0013】
このような構成によれば、係止部材が、上側突起部および下側突起部の先端部寄り領域に、引っ掛かりを生じた不適切な状態に装着されないようにすることが可能である。上側突起部および下側突起部にそれぞれ設けられている傾斜面は、この傾斜面に係止部材の一部分が当接した際に、この一部分を第2の凹溝部側にガイドする役割も果たす。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記台部の上側に配され、前記第1および第2の凹溝部の周囲を囲む側壁部、およびこの側壁部の一部に設けられ、かつ前記係止部材を外部から前記第1および第2の凹溝部に向けて進行させるための係止部材挿入用の開口部が形成さ
れているカバー部材を、さらに備えている。
【0015】
このような構成によれば、第1および第2の凹溝部の形成箇所やその周辺部を、カバー部材を用いて覆い、保護することができる。一方、係止部材を第1および第2の凹溝部に進入させる装着作業は、係止部材挿入用の開口部から係止部材をカバー部材内に挿入させることにより適切に行なうことが可能である。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記カバー部材の前記側壁部は、前記台部の前記外周縁の直上またはその近傍に位置しており、前記上側突起部の前記先端部は、前記側壁部の内面部に接近または接触している。
【0017】
このような構成によれば、カバー部材の側壁部が、台部の外方に大きくはみ出さないようにし、部材取付け構造全体のサイズが大きくなることを抑制することができる。一方、上側突起部については、カバー部材の側壁部との関係において、そのサイズを略最大限に長くすることができるため、上側突起部を利用した係止部材の装着ミス防止効果を適切に得ることが可能である。
【0018】
本発明において、好ましくは、前記上側突起部の前記先端部は、前記半径方向とは交差する幅方向の中央部が、前記幅方向の両端部よりも前記半径方向外方側に突出した形状である。
【0019】
このような構成によれば、係止部材が上側突起部の先端部に引っ掛かった状態で不適切に装着される虞を少なくすることが可能である。後述する図15図16の実施形態の説明からも理解されるように、上側突起部の先端部が、たとえば2つの角部をもつ形状であると、この2つの角部に対して係止部材が2点支持状態で引っ掛かりを生じた際に、その引っ掛かり状態が安定し易くなる。これに対し、前記構成によれば、係止部材が上側突起部の先端部に引っ掛かった場合に、この係止部材は1点支持状態となり、不安定であるため、係止部材が上側突起部の先端部に引っ掛かった状態は容易に解除される。したがって、係止部材が不適切な状態に装着され難くなる。
【0020】
本発明において、好ましくは、前記固定部材の下部には、前記嵌合部の前記半径方向外方側に突出し、かつ前記第2の凹溝部に接近した配置で前記台部の上側に配される下側フランジ部が設けられており、この下側フランジ部の上面部は、前記第2の凹溝部の下部と略同一の高さである。
【0021】
このような構成によれば、固定部材の下側フランジ部の上面部に基づき、第2の凹溝部の下部の高さを容易に判別することができる。したがって、第2の凹溝部の位置が一層明確となる。また、第2の凹溝部よりも高さが低い部分に、係止部材が不適切に装着される虞をなくすこともできる。したがって、係止部材の装着作業の適切化を促進することができる。
【0022】
本発明の第2の側面により提供される排水栓開閉操作装置は、所望の排水栓の開閉を行なうための排水栓開閉操作装置であって、本発明の第1の側面により提供される部材取付け構造を備えており、かつ前記取付け対象部材が、この排水栓開閉操作装置の構成部品であることを特徴としている。
【0023】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される部材取付け構造について述べたのと同様な効果が得られる。
【0024】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形
態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る部材取付け構造、およびこの構造を備えた排水栓開閉操作装置の一例を示す概略説明図である。
図2図1の要部概略断面図である。
図3】(a)は、図1および図2に示す部材取付け構造の要部概略断面図であり、(b)は、(a)のIIIb-IIIb断面図である。
図4図3に示した部材取付け構造の分解断面図である(図5のIV-IV断面に相当)。
図5図4のV-V断面図である(ハウジング部材は省略)。
図6図3(b)に示す部材取付け構造の設定前の構成を示す要部分解平面断面図である。
図7】(a)は、図1図3に示す部材取付け構造で用いられている固定部材の斜視図であり、(b)は、固定部材に螺合するナット部材の斜視図である。
図8図7(a)の断面図である。
図9】(a)は、図1図3に示す部材取付け構造で用いられている取付け対象部材としてのハウジング部材の斜視図であり、(b)は、(a)の要部拡大図である。
図10図9(a)に示すハウジング部材の平面図である。
図11図10のXI-XI断面図である。
図12】(a)は、図1図3に示す部材取付け構造で用いられているカバー部材の斜視図であり、(b)は、平面図であり、(c)は、平面断面図であり、(d)は、(b)のXIId-XIId断面図である。
図13】(a)は、図1図3に示す部材取付け構造で用いられている係止部材の平面図であり、(b)は、(a)の側面図である。
図14】本発明の他の例を示す要部斜視図である。
図15図14に示す構成の作用説明図である。
図16図15との対比例(ただし、本発明の実施形態に相当する)を示す作用説明図である。
図17】(a),(b)は、本発明の他の例を模式的に示す説明図である。
図18】(a),(b)は、本発明の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0027】
図1に示す排水栓開閉操作装置Bは、浴室に設置された浴槽1の排水栓10を、遠隔操作により昇降させて、浴槽1の排水口11を開閉させるための装置である。この排水栓開閉操作装置Bの基本的な構成は、特許文献1に記載された排水栓開閉操作装置と共通しており、特許文献1と共通する構成については、以下簡単な説明する。
【0028】
排水栓開閉操作装置Bは、排水栓10に接続されたワイヤ20の繰り出し動作、および引き戻し動作を生じさせることにより、排水栓10を昇降させる。
図2に示すように、ワイヤ20を昇降させるための手段として、ワイヤ20とカップリング21を介して接続されたスライド軸22、およびこのスライド軸22をネジ送り機構の原理を利用して往復動自在とするモータMを備えており、これらは互いに連結された上側および下側のハウジング部材3,3A内に収容されている。上側のハウジング部材3には、このハウジング部材3の上面部に取付けられた操作ボタン23が操作されることにより所定のスイッチング動作を行なうスイッチ24や、排水栓開閉操作装置Bの電源のオン・オフなどの状況をユーザに察知させるためのLED光源などの光源25が実装された回路基板26も組み込まれている。ハウジング部材3には、光源25から発せられた光を通
過させるための透光孔39a、および操作ボタン23の操作をスイッチ24に伝達させるための孔部39bが設けられたガイド管部39なども形成されている。
【0029】
下側のハウジング部材3Aは、前記した上側のハウジング部材3との組み合わせにより、排水栓開閉操作装置Bの前記した構成部品の全体を囲み込み、前記構成部品に水などが容易に掛からないようにするのに役立つ。
なお、排水栓開閉操作装置Bの前記構成部品は、図2以外の図においては省略している。
【0030】
排水栓開閉操作装置Bは、部材取付け構造Aを備えている。この部材取付け構造Aは、固定部材4、ナット部材49、係止部材5、およびカバー部材6を備えている。取付け対象部材として、前記した上側のハウジング部材3も備えている。
【0031】
図7および図8によく表れているように、固定部材4は、筒状の周壁部40の上端に中空円形状のフランジ部42が連設された構成である。周壁部40は、ネジ部が外周面に形成されているネジ形成部40aと、このネジ形成部40aの下側に位置する非ネジ形成部としての下端部寄り領域40bとに区分される。ネジ形成部40aには、図7(b)に示すような形態のナット部材49が螺合装着される。
【0032】
図2および図3(a)に示すように、固定部材4は、浴槽フランジ12に設けられた孔部12aに差し込まれ、かつフランジ部42とナット部材49との両者によって浴槽フランジ12を締め付けた状態に設定される。このことにより、浴槽フランジ12への固定部材4の取付けが図られる。排水栓開閉操作装置Bは、この固定部材4を利用して浴槽フランジ12に取付けられる。より具体的には、後述するように、固定部材4の周壁部40内に、ハウジング部材3の嵌合部30が嵌入された状態で、それらに設けられている第1および第2の凹溝部41,32に係止部材5が進入した状態とされることにより、固定部材4へのハウジング部材3の固定連結が図られる。
【0033】
周壁部40の下端部寄り領域40bには、下部開口状の複数の切欠き部43が形成され、かつこの切欠き部43が形成されていない領域には、係止部材5を進入させるための第1の凹溝部41が周方向に延びて形成されている。
【0034】
図7(a)の要部拡大図によく表れているように、周壁部40のうち、第1の凹溝部41よりも下側領域の外周面には、断面横向きV字状の溝48が形成されている。この溝48は、カバー部材6の後述する突起部61aを嵌入させ、固定部材4にカバー部材6を保持させるための部位である。
【0035】
ハウジング部材3は、既述したように、本発明でいう取付け対象部材の一例に相当する。このハウジング部材3の一部の構成は、図2を参照して説明したが、図9図11によく表れているように、嵌合部30、台部31、下側のハウジング部材3Aとの連結を図るためのフランジ片部33、第2の凹溝部32、上側突起部36、および下側突起部37を具備している。
【0036】
嵌合部30は、図2および図3に示すように、固定部材4の周壁部40に嵌入する部位であり、上壁部を有する略円筒状である。
台部31は、嵌合部30の下部に連設され、かつ嵌合部30よりも大径(または幅広)の上面部を有する部位である。
【0037】
第2の凹溝部32は、係止部材5を進入させるための部位であり、嵌合部30の下部寄り領域の外面部に設けられている。具体的には、嵌合部30の外面部には、側面視略コ字
状の横向きの凸状部35が設けられており、この凸状部35のうち高さ方向略中央の部分的に窪んだ箇所が、第2の凹溝部32である。凸状部35は、固定部材4の切欠き部43に対応した位置に同数(たとえば4箇所)設けられており、嵌合部30を固定部材4の周壁部40に嵌入させた状態においては、固定部材4の切欠き部43内に凸状部35を進入させ、第1および第2の凹溝部41,32を周方向に並んだ配置(環状に繋がった配置)とすることが可能である。
【0038】
上側突起部36および下側突起部37は、凸状部35のうち、第2の凹溝部32の上側および下側にそれぞれ位置する部位であって、嵌合部30の外面部から嵌合部30の半径方向外方側に向けて延びている。これら上側突起部36および下側突起部37は、長めのサイズであり、その先端部36a,37aは、前記半径方向において、台部31の外周縁31aの位置に接近した位置にある。上側突起部36は、たとえば平面視略矩形状である。これに対し、下側突起部37は、たとえば平面視凸字状または凹字状である(同一符号を付している)。下側突起部37を、上側突起部36と同様な形状に揃えてもよい。
【0039】
図12に示すように、カバー部材6は、略円筒状の側壁部60、底壁部61、係止部材挿入用の開口部62、および止めネジ装着部63を具備している。
カバー部材6は、係止部材5の装着箇所(第1および第2の凹溝部41,32の形成箇所)周辺部を覆い、保護するための部材であり、そのための主要部分として、側壁部60を備えている。
【0040】
底壁部61は、複数の領域に区分されており、それられの内側先端部には、突起部61aが形成されている。この突起部61aは、図7(a)に示した固定部材4の溝48に対応する部位である。
図4に示すように、カバー部材6は、固定部材4に取付けられている。この取付け手段として、底壁部61の突起部61aが、固定部材4の溝48に嵌入されている。なお、このような手段に代えて、たとえば固定部材4の下端部に半径方向外方側に向いて突出した部位を設け、かつこの部位の上に、カバー部材6の底壁部61を載せる手段を採用することも可能である。
【0041】
図4に示すカバー部材6の取付け状態においては、その後にハウジング部材3の嵌合部30が、固定部材4の周壁部40内に嵌入される。カバー部材6の底壁部61には、間隙が形成されているが、この間隙は、底壁部61がハウジング部材3の凸状部35と干渉することを回避するための部位である。
【0042】
止めネジ装着部63は、止めネジ88(ビスなどのネジ体)を挿通・保持させるための孔部が設けられた部位である。固定部材4へのカバー部材6の取付けを確実かつ安定なものとすべく、止めネジ装着部63には、止めネジ88が螺合装着される。この止めネジ88の先端部は、固定部材4の周壁部40に圧接した状態に設定されている(図3(b),図5も参照)。
【0043】
好ましくは、図4に示すように、カバー部材6を固定部材4に取付けた状態においては、側壁部60の上部がナット部材49に外嵌し、側壁部60の上部が開放状態にならないように設定される。このことにより、カバー部材6の内側領域への湯水やダスト類の進入は適切に抑制される。
【0044】
係止部材挿入用の開口部62は、カバー部材6の内側に、その外部から係止部材5を挿入させるための開口部であり、たとえば正面視扁平矩形状である。好ましくは、係止部材挿入用の開口部62は、側壁部60に連設された筒状または略筒状に形成されたガイド部68の内側に形成されており、このガイド部68の存在によって、係止部材5の挿入方向
などがある程度制限されるように構成されている(図6も参照)。
【0045】
図2および図3に示すように、カバー部材6の側壁部60は、台部31の外周縁31aの直上またはその近傍に位置するように取付けられる。ハウジング部材3の上側突起部36および下側突起部37のそれぞれの先端部36a,37aは、側壁部60の内面部に接近または接触した配置となっている。
【0046】
図13に示すように、係止部材5は、細幅な金属製の帯状部材または線状部材に曲げ加工を施すことにより形成された止め具であり、外向き状に曲げられた両端部50が間隔を隔てて対向する切欠きリング状であって、両端部50の対向方向にバネ性をもった状態で拡縮変形可能である。係止部材5の基部側には、略コ字状またはこれに近い形態の屈曲部51が形成されている。この屈曲部51は、係止部材5の摘まみ部として役立たせることができる。
【0047】
係止部材5は、図3に示したように、固定部材4の周壁部40およびハウジング部材3の嵌合部30を囲み、かつ第1および第2の凹溝部41,32の双方に進入した状態に設定される。このことにより、ハウジング部材3は、固定部材4に固定される。
このような状態に設定するための手順としては、まず図4を参照して説明したように、固定部材4へのカバー部材6およびハウジング部材3の取付けを図る。次いで、図6に示したように、カバー部材6内に係止部材挿入用の開口部62から係止部材5を挿入させる手順を踏むこととなる。
【0048】
次に、前記した部材取付け構造A、およびこの構造を備えた排水栓開閉操作装置Bの作用について説明する。
【0049】
排水栓開閉操作装置Bを浴槽フランジ12に組み付けるには、図6などを参照して説明したように、係止部材5を第1および第2の凹溝部41,32に進入させる装着作業を行なう。ここで、ハウジング部材3に設けられている上側突起部36および下側突起部37は、嵌合部30の半径方向に長く延びており、それらの先端部36a,37aは、台部31の外周縁31aと半径方向の位置が略一致している。このため、係止部材挿入用の開口部62からカバー部材6内を覗き込んだ際に、上側突起部36および下側突起部37の存在に基づき、第2の凹溝部32の位置、ひいては第1および第2の凹溝部41,32の双方の位置が判り易いものとなる。第2の凹溝部32の下側周辺には、台部31の上面部が存在しているため、この台部31の上面部から上方に離れて長く延びた上側突起部36は、第2の凹溝部32の位置を判り易くする上で、かなり有効である。このようなことから、係止部材5が、第1および第2の凹溝部41,32に進入しない不適切な状態でハウジング部材3に装着されてしまうミスをなくし、または少なくすることができる。
【0050】
上側突起部36および下側突起部37の先端部36a,37aは、カバー部材6の側壁部60の内面部に接近または接触しているため、それらの先端部36a,37aに係止部材5が不当に引っ掛からないようにすることも可能である。
【0051】
図14図18は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付すこととし、重複説明は省略する。
【0052】
図14に示す実施形態においては、上側突起部36Aの平面視形状が、図15に示すような凸字状、すなわち先端部寄り領域のうち、幅方向の中央部が両端部よりも半径方向外方に突出した形状とされている。
図16に示す上側突起部36は、平面視略矩形状であり、これは先の実施形態と同様な
構成である。この上側突起部36の場合には、係止部材5の装着作業時において、上側突起部36の先端部36aの2箇所の角部Cに係止部材5が当接した場合に、係止部材5が角部Cによって2点支持された状態となる。
これに対し、図14および図15に示した上側突起部36Aにおいては、先端部36aに係止部材5が当接した場合に、係止部材5は、1点支持の状態となる。この1点支持状態は、図16に示した2点支持状態と比較すると、係止部材5が外れ易くなる。したがって、上側突起部36Aの構成によれば、先端部36aに係止部材5が引っ掛かった不適切な状態に装着され難くする効果が得られる。
【0053】
図17(a)は、先端部36aを鋭角に尖らせた上側突起部36Bを示している。同図(b)は、先端部36aを湾曲面とした上側突起部36Cを示している。これらのいずれの場合においても、図14および図15に示した上側突起部36Aと同様な効果が得られる。
【0054】
図14に示した実施形態においては、上側突起部36の先端部寄り領域の下面部には、基端部側ほど高さが低くなる傾斜面36bが設けられている。また、下側突起部37の先端部寄り領域の上面部には、基端部側ほど高さが高くなる傾斜面37bが設けられている。
このような構成によれば、傾斜面36b,37bが設けられているため、係止部材5の装着作業時において、係止部材5の一部が上側突起部36および下側突起部37の先端部36a,37aに引っ掛かりを生じ難くなる。したがって、係止部材5が不適切な状態に装着されることがより徹底して防止される。
【0055】
図18に示す実施形態においては、固定部材4の下部に、下側フランジ部47が設けられている。この下側フランジ部47は、周壁部40の半径方向(嵌合部30の半径方向と同方向)の外方側に突出しており、同図(b)に示すように、複数の凸状部35の相互間に位置し、第2の凹溝部32に接近した配置で台部31の上側に配される。下側フランジ部47の上面部の高さは、第2の凹溝部32の下部の高さと略同一である。
【0056】
本実施形態によれば、下側フランジ部47に基づき、作業者は、第2の凹溝部32の下部の高さ、ひいては第2の凹溝部32の位置を容易に察知することが可能となる。また、下側フランジ部47は、係止部材5の装着作業時に、第2の凹溝部32よりも高さが低い部分に、係止部材5が不適切に装着される虞をなくす作用も生じさせる。したがって、係止部材5の装着作業のミスをなくし、作業の適正化を促進する上で一層好ましい。
【0057】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る部材取付け構造、およびこの構造を備えた排水栓開閉操作装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0058】
上述の実施形態においては、カバー部材6を用いており、第1および第2の凹溝部41,32の形成箇所周辺部を保護することが可能であるが、本発明はこれに限定されず、カバー部材6を具備しない構造とすることもできる。
【0059】
上述の実施形態においては、取付け対象部材(ハウジング部材)の嵌合部が、固定部材の周壁部内に嵌入する構成とされているが、これとは反対に、取付け対象部材の嵌合部が、固定部材の周壁部に外嵌する構成とすることも可能である。
固定部材および取付け対象部材に設けられる第1および第2の凹溝部の数、ならびに上側突起部や下側突起部の数は限定されない。これらは複数ずつ設けられることが好ましいが、少なくとも1つずつ設けられていればよい。
係止部材は、両端部が間隔を隔てて対向する切欠きリング状(C字状、コ字状など)で
あって、前記両端部の対向方向に拡縮変形可能であればよく、その具体的形状、サイズ、材質などは限定されない。
【0060】
固定部材は、ナット部材とフランジ部とを利用して所望の位置をクランプするものに限定されない。要は、何らかの手段を利用して所望の位置に取付けられればよい。本発明に係る部材取付け構造は、固定部材に対する取付け対象部材の着脱が係止部材を利用して簡易に行なうことが可能であり、固定部材自体を所望の位置に対して着脱させることは殆どないため、固定部材を所望の位置に取付けるための手段としては種々の手段(たとえば、ビス止め、接着剤などを利用した接合手段など)を採用することが可能である。
【0061】
取付け対象部材は、排水栓開閉操作装置のハウジング部材に限定されない。本発明は、様々な装置・機器類、および物品を取付け対象部材とすることが可能である。
本発明に係る排水栓開閉操作装置は、浴槽用の排水栓に限らず、たとえば洗面所の排水栓などを開閉操作するための装置として構成することもできる。
【符号の説明】
【0062】
A 部材取付け構造
B 排水栓開閉操作装置
3 ハウジング部材(取付け対象部材)
30 嵌合部
31 台部
31a 外周縁(台部の)
32 第2の凹溝部
36 上側突起部
36a 先端部
36b 傾斜面
37 下側突起部
37a 先端部
37b 傾斜面
4 固定部材
40 周壁部
40a ネジ形成部
41 第1の凹溝部
42 フランジ部
49 ナット部材
5 係止部材
50 両端部
6 カバー部材
60 側壁部
62 係止部材挿入用の開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18