(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】食肉包装用多層フィルム及び包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20240509BHJP
B65D 85/50 20060101ALI20240509BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D85/50 110
B32B27/34
(21)【出願番号】P 2019077177
(22)【出願日】2019-04-15
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【氏名又は名称】福原 直志
(72)【発明者】
【氏名】越智 俊介
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-253028(JP,A)
【文献】特開2017-061325(JP,A)
【文献】米国特許第04656068(US,A)
【文献】特表2017-507042(JP,A)
【文献】特開2016-222259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/00-65/46
B65D 67/00-79/02
B65D 85/50
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーラント層と、保護層と、を備えた食肉包装用多層フィルムであって、
前記食肉包装用多層フィルムは、さらに、前記保護層の上に、前記シーラント層から遠ざかる方向に、酸素バリア層と、外層と、をこの順に備え、前記シーラント層の前記保護層側の面に直接積層された中間層を備えており、
前記保護層は、ナイロンを含み、
前記シーラント層はアイオノマーを含み、
前記酸素バリア層は、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物を含み、
前記外層はナイロンを含み、
前記中間層は、
エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体を含み、
前記中間層における、前記中間層の総質量に対する、前記
エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の含有量の割合が、85質量%以上である、食肉包装用多層フィルム。
【請求項2】
前記中間層の厚さが15~80μmである、請求項1に記載の食肉包装用多層フィルム。
【請求項3】
前記アイオノマーを構成する金属イオンが、亜鉛イオン又はナトリウムイオンである、請求項1又は2に記載の食肉包装用多層フィルム。
【請求項4】
前記アイオノマーが、エチレン系共重合体のアイオノマーである、請求項1~3のいずれか一項に記載の食肉包装用多層フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の食肉包装用多層フィルムを備えた、包装体。
【請求項6】
前記包装体が、蓋材及び底材を備え、
前記包装体が、前記蓋材及び底材のシールによって構成されており、
前記蓋材及び底材のいずれか一方又は両方が、前記食肉包装用多層フィルムからなる、請求項5に記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食肉包装用多層フィルム及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
食肉用の包装袋としては、従来、酸素バリア性やシール性を有する多層フィルムを用いたものが知られている。このような包装袋は、例えば、底材と蓋材を備えて構成されており、底材には、食肉収納用の収納部を構成するための凹部が形成されている。そして、底材と蓋材のいずれか一方又は両方が、前記多層フィルムを用いたものとなっている。
【0003】
食肉の包装時には、底材の前記凹部に食肉を収納し、さらに、この底材の食肉が露出している側の面と、蓋材の表面と、重ね合わせ、前記凹部内を真空引きした状態で、底材と蓋材の周縁部同士を加熱シールすることにより、収納部を形成するとともに食肉をこの収納部内に密封する。底材と蓋材のいずれか一方又は両方は、透明であるため、収納された食肉は、包装体の外部から容易に視認可能となっている(特許文献1及び2参照)。
【0004】
このように食肉が収納された包装袋のうち、周縁部においては、底材と蓋材がシールされているのに対し、このシール部位よりも収納部側で、かつ収納部に含まれない領域は、通常、シールされずに、又は軽度にシールされた状態で、収納部内の真空引きによる減圧の効果によって、底材と蓋材が密着した状態が維持される。本明細書においては、包装体のうち、このように底材と蓋材が密着している領域を、完全にはシールされていないという意味で「非シール部位」と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-127035号公報
【文献】特開2005-119282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
保存中の食肉からは、液体が漏出することがある。本明細書においては、このように食肉から漏出した液体を「ドリップ」と称する。そして、特に対策を行わない限り、包装体に収納された状態で保存中の食肉からも、ドリップが発生してしまうことがある。さらにその場合、包装体のうち、上述の非シール部位にはドリップが溜まってしまうことがある。このようにドリップが生じた場合、食肉の包装状態の見栄えが悪くなってしまうという外観上の問題点があった。
【0007】
本発明は、食肉を包装して保存中に、ドリップの発生を抑制できる包装体と、前記包装体を製造するためのフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1].シーラント層と、保護層と、を備え、前記保護層は、ナイロンを含み、前記シーラント層はアイオノマーを含む、食肉包装用多層フィルム。
[2].前記アイオノマーを構成する金属イオンが、亜鉛イオン又はナトリウムイオンである、[1]に記載の食肉包装用多層フィルム。
[3].前記アイオノマーが、エチレン系共重合体のアイオノマーである、[1]又は[2]に記載の食肉包装用多層フィルム。
[4].[1]~[3]のいずれか一項に記載の食肉包装用多層フィルムを備えた、包装体。
[5].前記包装体が、蓋材及び底材を備え、前記包装体が、前記蓋材及び底材のシールによって構成されており、前記蓋材及び底材のいずれか一方又は両方が、前記食肉包装用多層フィルムからなる、[4]に記載の包装体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、食肉を包装して保存中に、ドリップの発生を抑制できる包装体と、前記包装体を製造するためのフィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る多層フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る包装体を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<<食肉包装用多層フィルム>>
本発明の一実施形態に係る食肉包装用多層フィルムは、シーラント層と、保護層と、を備え、前記保護層は、ナイロンを含み、前記シーラント層はアイオノマーを含む。
本実施形態の食肉包装用多層フィルムは、アイオノマーを含むシーラント層を備えていることにより、この多層フィルムから構成された包装体において、収納した食肉からのドリップの発生を抑制できる。また、包装体は、非シール部位の密着性が安定して維持される、いわゆるセルフウエルド性が高い。ここで、「非シール部位」とは、先に説明したとおり、包装体における、シール部位よりも収納部側で、かつ収納部に含まれない領域を意味し、通常はシールされずに、又は軽度にシールされた状態で、収納部内の真空引きによる減圧の効果によって、底材と蓋材が密着した状態となっている領域である。
一方、本実施形態の食肉包装用多層フィルムは、ナイロンを含む保護層を備えていることにより、この多層フィルムをその厚さ方向に貫くピンホールの発生を抑制する、いわゆる耐ピンホール性が高い。したがって、この多層フィルムから構成された包装体は、食肉の包装効果が高い。
【0012】
本明細書においては、本実施形態の「食肉包装用多層フィルム」を、単に「多層フィルム」と称することがある。本明細書において、「多層フィルム」との記載は、特に断りのない限り、本実施形態の「食肉包装用多層フィルム」を意味する。
【0013】
本実施形態の多層フィルムは、後述する包装体を構成するための蓋材及び底材のいずれとしても好適である。
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明について詳細に説明する。なお、以降の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0015】
図1は、本実施形態の多層フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
ここに示す多層フィルム1は、シーラント層11と、保護層14と、を備えている。
さらに、多層フィルム1は、シーラント層11と保護層14との間に、シーラント層11から保護層14へ向かう方向に、中間層12と、第1接着層131と、をこの順に備え、保護層14上に、シーラント層11から遠ざかる方向に、酸素バリア層15と、第2接着層132と、外層16と、をこの順に備えている。すなわち、多層フィルム1は、シーラント層11を備え、シーラント層11上に、中間層12と、第1接着層131と、保護層14と、酸素バリア層15と、第2接着層132と、外層16と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。
本明細書においては、第1接着層131、第2接着層132等の複数の接着層を包括して、単に「接着層」と称することがある。
【0016】
<シーラント層>
シーラント層11は、アイオノマーを含む。
シーラント層11は、多層フィルム1における一方の最表層であり、シーラント層11の、中間層12側とは反対側の露出面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)11aは、多層フィルム1における一方の最表面である。
シーラント層11の第1面11aはシール面であり、そのうち一部の領域は、他のフィルムの表面と重ね合わされ、加熱によりシールされ、その結果、包装体が形成される。一方、シールされない領域の一部は、包装体において、目的物である食肉の収納部を構成し、食肉と接触する。
【0017】
多層フィルム1を用いて得られた包装袋で食肉を包装することにより、収納部内の食肉の表面は、シーラント層11の第1面11aと接触する。したがって、前記包装袋で包装された食肉は、その表面が、アイオノマーを含むシーラント層11と接触した状態で保存される。このように保存されている食肉においては、ドリップの発生が抑制される。
また、食肉を包装後の包装袋のうち、前記非シール部位においては、シーラント層11の第1面11aが他のフィルムの表面と、又は、シーラント層11と同様のシーラント層の表面と、密着した状態が維持される。このように、密着面の一方又は両方が本実施形態におけるシーラント層(シーラント層11)であることにより、非シール部位の密着性が安定して維持される。そして、このように密着性が維持されることにより、ドリップが少量発生したとしても、非シール部位にドリップが溜まることがなく、食肉の包装状態の見栄えは、良好なまま維持される。
【0018】
シーラント層11は、アイオノマーのみを含んでいてもよい(すなわち、アイオノマーからなるものであってもよい)し、アイオノマーと、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、アイオノマーと、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0019】
前記アイオノマーは、ベース樹脂と金属イオンを含んで構成され、より具体的には、ベース樹脂中の酸部分(例えばカルボキシ基)と、金属イオンと、が塩を形成した橋かけ構造を有している。
【0020】
前記ベース樹脂としては、例えば、オレフィンから誘導された構成単位と、α,β-不飽和カルボン酸から誘導された構成単位と、を有する共重合体が挙げられる。
前記オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、スチレン等が挙げられる。
前記α,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様である。
【0021】
アイオノマーを構成する前記ベース樹脂は、オレフィンから誘導された構成単位と、α,β-不飽和カルボン酸から誘導された構成単位と、これらのいずれにも該当しない他の構成単位を有していてもよい。
【0022】
前記他の構成単位としては、例えば、α,β-不飽和カルボン酸エステルから誘導された構成単位、酢酸ビニルから誘導された構成単位等が挙げられる。
前記α,β-不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、マレイン酸エステル等が挙げられる。
前記α,β-不飽和カルボン酸エステル及びマレイン酸エステルを構成するアルコールとしては、例えば、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルコールが挙げられ、より具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール(sec-ブチルアルコール)、2-メチル-1-プロパノール(イソブチルアルコール)、2-メチル-2-プロパノール(tert-ブチルアルコール)、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール(イソアミルアルコール)、2-メチル-2-ブタノール(tert-アミルアルコール)、2,2-ジメチル-1-プロパノール(ネオペンチルアルコール)、1-ヘキサノール、1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-デカノール等が挙げられる。
【0023】
前記ベース樹脂が有するオレフィンから誘導された構成単位と、α,β-不飽和カルボン酸から誘導された構成単位と、他の構成単位は、いずれも、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0024】
好ましい前記ベース樹脂としては、例えば、エチレンから誘導された構成単位と、エチレン以外のモノマーから誘導された構成単位と、を有する共重合体(本明細書においては、「エチレン系共重合体」と称することがある);スチレンから誘導された構成単位と、スチレン以外のモノマーから誘導された構成単位と、を有する共重合体(本明細書においては、「スチレン系共重合体」と称することがある)が挙げられる。
【0025】
好ましい前記エチレン系共重合体としては、例えば、エチレンから誘導された構成単位と、(メタ)アクリル酸から誘導された構成単位と、を有する共重合体(本明細書においては、「エチレン-(メタ)アクリル酸共重合系樹脂」と称することがある)が挙げられる。
好ましい前記スチレン系共重合体としては、例えば、スチレンから誘導された構成単位と、(メタ)アクリル酸から誘導された構成単位と、を有する共重合体(本明細書においては、「スチレン-(メタ)アクリル酸共重合系樹脂」と称することがある)が挙げられる。
【0026】
好ましい前記エチレン-(メタ)アクリル酸共重合系樹脂としては、例えば、前記他の構成単位を有しないエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体;前記他の構成単位として、(メタ)アクリル酸エステルを有する、エチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体;前記他の構成単位として、マレイン酸エステルを有する、エチレン-(メタ)アクリル酸-マレイン酸エステル共重合体等が挙げられる。
好ましい前記スチレン-(メタ)アクリル酸共重合系樹脂としては、例えば、前記他の構成単位を有しないスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体;前記他の構成単位として、(メタ)アクリル酸エステルを有する、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体;前記他の構成単位として、マレイン酸エステルを有する、スチレン-(メタ)アクリル酸-マレイン酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0027】
前記ベース樹脂は、前記エチレン系共重合体であることが好ましい。すなわち、前記アイオノマーは、エチレン系共重合体のアイオノマーであることが好ましい。
【0028】
アイオノマーを構成する前記金属イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、銀イオン(Ag+)、銅(I)イオン(Cu+)等の1価イオン;バリウムイオン(Ba2+)、亜鉛イオン(Zn2+)、銅(II)イオン(Cu2+)、鉄(II)イオン(Fe2+)等の2価イオン(多価イオン)等が挙げられる。
【0029】
これらの中でも、アイオノマーを構成する前記金属イオンは、亜鉛イオン又はナトリウムイオンであることが好ましく、亜鉛イオンであることがより好ましい。
【0030】
前記アイオノマーが含む金属イオンは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0031】
より好ましい前記アイオノマーとしては、例えば、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体とナトリウムイオンとを含むアイオノマー;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体と亜鉛イオンとを含むアイオノマー;エチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体とナトリウムイオンとを含むアイオノマー;エチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体と亜鉛イオンとを含むアイオノマー;エチレン-(メタ)アクリル酸-マレイン酸エステル共重合体とナトリウムイオンとを含むアイオノマー;エチレン-(メタ)アクリル酸-マレイン酸エステル共重合体と亜鉛イオンとを含むアイオノマー;スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体とナトリウムイオンとを含むアイオノマー;スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体と亜鉛イオンとを含むアイオノマー;スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体とナトリウムイオンとを含むアイオノマー;スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体と亜鉛イオンとを含むアイオノマー;スチレン-(メタ)アクリル酸-マレイン酸エステル共重合体とナトリウムイオンとを含むアイオノマー;スチレン-(メタ)アクリル酸-マレイン酸エステル共重合体と亜鉛イオンとを含むアイオノマー等が挙げられる。
【0032】
前記アイオノマーは、前記金属イオンが、亜鉛イオン又はナトリウムイオンである、エチレン系共重合体のアイオノマーであることがさらに好ましく、前記金属イオンが亜鉛イオンである、エチレン系共重合体のアイオノマーであることが特に好ましい。
【0033】
シーラント層11が含むアイオノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0034】
シーラント層11が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
【0035】
樹脂成分である前記他の成分は、前記アイオノマー以外の樹脂である。
非樹脂成分である前記他の成分としては、例えば、当該分野で公知の添加剤が挙げられる。
前記添加剤としては、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、減粘剤、増粘剤、熱安定化剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、防曇剤等が挙げられる。
【0036】
シーラント層11が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0037】
シーラント層11における、シーラント層11の総質量に対する、アイオノマーの含有量の割合は、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、例えば、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、多層フィルム1を用いて構成された包装体においては、シーラント層11のシール強度を損なうことなく、収納した食肉からのドリップの発生を抑制する効果と、非シール部位の密着性が安定して維持される効果と、がいずれもより高くなる。
前記割合の上限値は特に限定されない。例えば、前記割合は100質量%以下であってもよい。
【0038】
換言すると、シーラント層11における、シーラント層11の総質量に対する、前記他の成分の含有量の割合は、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、例えば、3質量%以下、及び1質量%以下のいずれかであってもよい。前記割合が前記上限値以下であることで、上述の効果がより高くなる。
前記割合の下限値は特に限定されない。例えば、前記割合は0質量%以上であってもよい。
【0039】
シーラント層11は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。シーラント層11が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0040】
なお、本明細書においては、シーラント層11の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0041】
シーラント層11の厚さは、多層フィルム1が後述する包装体の蓋材用及び底材用のいずれであるかによらず、3~100μmであることが好ましく、5~70μmであることがより好ましく、7~50μmであることがさらに好ましく、例えば、10~40μmであってもよい。シーラント層11の厚さが前記下限値以上であることで、シーラント層11によるシール強度がより高くなる。シーラント層11の厚さが前記上限値以下であることで、シーラント層11が過剰な厚さとなることが抑制される。
ここで、「シーラント層11の厚さ」とは、シーラント層11全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなるシーラント層11の厚さとは、シーラント層11を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0042】
<保護層>
保護層14は、ナイロンを含む。
保護層14は、多層フィルム1に強い突刺強度と耐ピンホール性等を付与する。
【0043】
保護層14は、ナイロンのみを含んでいてもよい(すなわち、ナイロンからなるものであってもよい)し、ナイロンと、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、ナイロンと、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0044】
前記ナイロンとしては、例えば、4-ナイロン、6-ナイロン、7-ナイロン、11-ナイロン、12-ナイロン、46-ナイロン、66-ナイロン、69-ナイロン、610-ナイロン、611-ナイロン、612-ナイロン、6T-ナイロン、6Iナイロン、6-ナイロンと66-ナイロンとのコポリマー(ナイロン6/66)、6-ナイロンと610-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと611-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと12-ナイロンとのコポリマー(ナイロン6/12)、6-ナイロンと612ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと6T-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと66-ナイロンとの610-ナイロンのコポリマー、6-ナイロンと66-ナイロンとの12-ナイロンのコポリマー(ナイロン6/66/12)、6-ナイロンと66-ナイロンと612-ナイロンとのコポリマー、66-ナイロンと6T-ナイロンとのコポリマー、66-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー、6T-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー、66-ナイロンと6T-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー等が挙げられる。
これらの中でも、好ましいナイロンとしては、6-ナイロン、ナイロン6/66が挙げられる。
【0045】
保護層14が含むナイロンは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0046】
保護層14が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
【0047】
樹脂成分である前記他の成分は、前記ナイロン以外の樹脂である。
非樹脂成分である前記他の成分としては、例えば、当該分野で公知の添加剤が挙げられる。
前記添加剤としては、例えば、シーラント層11が含んでいてもよい添加剤と同様のものが挙げられる。
【0048】
保護層14が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0049】
保護層14における、保護層14の総質量に対する、ナイロンの含有量の割合は、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、例えば、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、多層フィルム1を用いて構成された包装体において、耐ピンホール性がより高くなる。
前記割合の上限値は特に限定されない。例えば、前記割合は100質量%以下であってもよい。
【0050】
換言すると、保護層14における、保護層14の総質量に対する、前記他の成分の含有量の割合は、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、例えば、3質量%以下、及び1質量%以下のいずれかであってもよい。前記割合が前記上限値以下であることで、上述の効果がより高くなる。
前記割合の下限値は特に限定されない。例えば、前記割合は0質量%以上であってもよい。
【0051】
保護層14は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。保護層14が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0052】
保護層14の厚さは、多層フィルム1が後述する包装体の蓋材用及び底材用のいずれであるかによらず、3~100μmであることが好ましく、5~70μmであることがより好ましく、7~50μmであることがさらに好ましく、例えば、10~40μmであってもよい。保護層14の厚さが前記下限値以上であることで、多層フィルム1の耐ピンホール性がより高くなる。保護層14の厚さが前記上限値以下であることで、保護層14が過剰な厚さとなることが抑制される。
ここで、「保護層14の厚さ」とは、保護層14全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる保護層14の厚さとは、保護層14を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0053】
<中間層>
中間層12は、シーラント層11及び保護層14とは別に、多層フィルム1に機能を付与する。
本実施形態の多層フィルムにおいて、中間層は任意の構成であり、多層フィルムは中間層を備えていてもよいし、備えていなくてもよいが、多層フィルムがより高機能となる点においては、備えていることが好ましい。
【0054】
中間層12としては、例えば、多層フィルム1全体の厚さを一定値以上に厚くすることで、多層フィルム1の強度又は取り扱い性を向上させる層が挙げられる。
このような厚さを増大させる層としては、例えば、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン系アイオノマー、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等の樹脂を含む層が挙げられる。
【0055】
上述の中間層12(厚さを増大させる層)は、前記樹脂のみを含んでいてもよい(すなわち、前記樹脂からなるものであってもよい)し、前記樹脂と、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、前記樹脂と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0056】
中間層12が含む前記樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0057】
中間層12が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
前記他の成分としては、例えば、非樹脂成分である、当該分野で公知の添加剤が挙げられ、前記添加剤としては、シーラント層11が含んでいてもよい添加剤と同様のものが挙げられる。
【0058】
中間層12が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0059】
中間層12における、中間層12の総質量に対する、前記樹脂の含有量の割合は、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、例えば、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、多層フィルム1において、中間層12を備えたことによる効果が、より高くなる。
前記割合の上限値は特に限定されない。例えば、前記割合は100質量%以下であってもよい。
【0060】
換言すると、中間層12における、中間層12の総質量に対する、前記他の成分の含有量の割合は、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、例えば、3質量%以下、及び1質量%以下のいずれかであってもよい。前記割合が前記上限値以下であることで、上述の効果がより高くなる。
前記割合の下限値は特に限定されない。例えば、前記割合は0質量%以上であってもよい。
【0061】
中間層12は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。中間層12が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0062】
中間層12の厚さは、多層フィルム1が後述する包装体の蓋材用及び底材用のいずれであるかによらず、5~120μmであることが好ましく、10~100μmであることがより好ましく、15~80μmであることがさらに好ましく、例えば、15~65μmであってもよい。中間層12の厚さが前記下限値以上であることで、中間層12を備えていることにより得られる効果がより高くなる。中間層12の厚さが前記上限値以下であることで、中間層12が過剰な厚さとなることが抑制される。
ここで、「中間層12の厚さ」とは、中間層12全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる中間層12の厚さとは、中間層12を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0063】
<酸素バリア層>
酸素バリア層15は、多層フィルム1に強い酸素バリア性(換言すると、酸素ガスの透過を抑制する性質)を付与する。
本実施形態の多層フィルムにおいて、酸素バリア層は任意の構成であり、多層フィルムは酸素バリア層を備えていてもよいし、備えていなくてもよいが、酸素バリア性が顕著に向上する点においては、備えていることが好ましい。
【0064】
酸素バリア層15が含む樹脂成分としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(本明細書においては、「EVOH」と略記することがある)等の酸素バリア性樹脂が挙げられる。
【0065】
酸素バリア層15は、酸素バリア性樹脂のみを含んでいてもよい(すなわち、酸素バリア性樹脂からなるものであってもよい)し、酸素バリア性樹脂と、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、酸素バリア性樹脂と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0066】
酸素バリア層15が含む酸素バリア性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0067】
酸素バリア層15が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
【0068】
樹脂成分である前記他の成分は、酸素バリア性樹脂以外の樹脂である。
非樹脂成分である前記他の成分としては、例えば、当該分野で公知の添加剤が挙げられる。
前記添加剤としては、例えば、シーラント層11が含んでいてもよい添加剤と同様のものが挙げられる。
【0069】
酸素バリア層15が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0070】
酸素バリア層15における、酸素バリア層15の総質量に対する、酸素バリア性樹脂の含有量の割合は、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、例えば、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、多層フィルム1を用いて構成された包装体において、酸素バリア性がより高くなる。
前記割合の上限値は特に限定されない。例えば、前記割合は100質量%以下であってもよい。
【0071】
換言すると、酸素バリア層15における、酸素バリア層15の総質量に対する、前記他の成分の含有量の割合は、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、例えば、3質量%以下、及び1質量%以下のいずれかであってもよい。前記割合が前記上限値以下であることで、上述の効果がより高くなる。
前記割合の下限値は特に限定されない。例えば、前記割合は0質量%以上であってもよい。
【0072】
酸素バリア層15は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。酸素バリア層15が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0073】
酸素バリア層15の厚さは、多層フィルム1が後述する包装体の蓋材用及び底材用のいずれであるかによらず、2~20μmであることが好ましく、3~16μmであることがより好ましく、3~12μmであることがさらに好ましく、例えば、3~10μmであってもよい。酸素バリア層15の厚さが前記下限値以上であることで、多層フィルム1の酸素バリア性がより高くなる。酸素バリア層15の厚さが前記上限値以下であることで、酸素バリア層15が過剰な厚さとなることが抑制される。
ここで、「酸素バリア層15の厚さ」とは、酸素バリア層15全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる酸素バリア層15の厚さとは、酸素バリア層15を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0074】
<外層>
外層16は、多層フィルム1における他方の最表層であり、外層16の、第2接着層132側とは反対側の露出面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)16bは、多層フィルム1における他方の最表面である。
本実施形態の多層フィルムにおいて、外層は任意の構成であり、多層フィルムは外層を備えていてもよいし、備えていなくてもよいが、多層フィルムの強度が向上する点においては、備えていることが好ましい。
【0075】
外層16としては、例えば、多層フィルム1に適度な強度と耐ピンホール性を付与する層が挙げられ、ナイロンを含むものが好ましい。
【0076】
ナイロンを含む外層16は、厚さを除いて、上述の保護層14と同様であってよい。
【0077】
外層16の厚さは、多層フィルム1が後述する包装体の蓋材用及び底材用のいずれであるかによらず、2~20μmであることが好ましく、3~16μmであることがより好ましく、3~12μmであることがさらに好ましい。外層16の厚さが前記下限値以上であることで、外層16を備えていることによる効果がより高くなる。外層16の厚さが前記上限値以下であることで、外層16が過剰な厚さとなることが抑制される。
ここで、「外層16の厚さ」とは、外層16全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる外層16の厚さとは、外層16を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0078】
<接着層(第1接着層、第2接着層)>
第1接着層131及び第2接着層132は、いずれも接着剤を含み、これらの両面に隣接する2層を接着する。より具体的には、第1接着層131は中間層12と保護層14とを接着し、第2接着層132は酸素バリア層15と外層16とを接着している。
本実施形態の多層フィルムにおいて、接着層は任意の構成であり、多層フィルムは接着層を備えていてもよいし、備えていなくてもよいが、多層フィルムの構造がより安定する点においては、備えていることが好ましい。
【0079】
第1接着層131及び第2接着層132は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0080】
第1接着層131及び第2接着層132が含む前記接着剤は、接着対象の2層を十分な強度で接着できるものであれば、特に限定されない。
前記接着剤としては、例えば、オレフィン系樹脂(すなわち、1種又は2種以上のモノマーであるオレフィンの重合体)等の接着樹脂が挙げられる。
【0081】
前記オレフィン系樹脂として、より具体的には、例えば、エチレン系共重合体、プロピレン系共重合体、ブテン系共重合体等が挙げられ、極性基を有するポリオレフィンであってもよい。
前記エチレン系共重合体とは、エチレンと、エチレン以外のモノマーと、の共重合体である。
前記プロピレン系共重合体とは、プロピレンと、プロピレン以外のモノマーと、の共重合体である。
前記ブテン系共重合体とは、ブテンと、ブテン以外のモノマーと、の共重合体である。
【0082】
前記エチレン系共重合体としては、例えば、エチレンとビニル基含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。
エチレンとビニル基含有モノマーとの共重合体としては、例えば、無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリエチレン(本明細書においては、「LLDPE-g-MAH」と略記することがある)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(本明細書においては、「EVA」と略記することがある)、エチレン-メチルメタアクリレート共重合体(本明細書においては、「EMMA」と略記することがある)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(本明細書においては、「EEA」と略記することがある)、エチレン-メチルアクリレート共重合体(本明細書においては、「EMA」と略記することがある)、エチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体(本明細書においては、「E-EA-MAH」と略記することがある)、エチレン-アクリル酸共重合体(本明細書においては、「EAA」と略記することがある)、エチレン-メタクリル酸共重合体(本明細書においては、「EMAA」と略記することがある)、アイオノマー、エチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
第1接着層131及び第2接着層132が含む前記アイオノマーとしては、例えば、エチレンと少量のアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体が、その中の酸部分と、金属イオンと、の塩形成によって、イオン橋かけ構造を有しているものが挙げられる。
【0083】
第1接着層131及び第2接着層132は、それぞれ、接着剤のみを含んでいてもよい(すなわち、接着剤からなるものであってもよい)し、接着剤と、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、接着剤と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0084】
第1接着層131及び第2接着層132が含む接着剤は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0085】
第1接着層131及び第2接着層132が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
【0086】
第1接着層131及び第2接着層132が含む前記他の成分は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0087】
第1接着層131における、第1接着層131の総質量に対する、接着剤の含有量の割合は、例えば、85~100質量%であってもよい。
換言すると、第1接着層131における、第1接着層131の総質量に対する、前記他の成分の含有量の割合は、0~15質量%であってもよい。
これら接着剤の含有量の割合、前記他の成分の含有量の割合は、第2接着層132においても同様である。
【0088】
第1接着層131及び第2接着層132は、それぞれ、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。第1接着層131又は第2接着層132が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0089】
多層フィルム1が後述する包装体の蓋材用及び底材用のいずれであるかによらず、第1接着層131及び第2接着層132の厚さは、それぞれ、2~20μmであることが好ましく、3~17μmであることがより好ましく、4~14μmであることがさらに好ましい。接着層131及び第2接着層132の厚さが前記下限値以上であることで、接着対象の2層の接着強度がより高くなる。接着層131及び第2接着層132の厚さが前記上限値以下であることで、接着層131及び第2接着層132が過剰な厚さとなることが抑制される。
ここで、「第1接着層131の厚さ」とは、第1接着層131全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる第1接着層131の厚さとは、第1接着層131を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
「第2接着層132の厚さ」も、上記と同様である。
【0090】
<他の層>
多層フィルム1は、本発明の効果を損なわない範囲内において、シーラント層11と、中間層12と、第1接着層131と、保護層14と、酸素バリア層15と、第2接着層132と、外層16と、のいずれにも該当しない、他の層を備えていてもよい。
前記他の層は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
多層フィルム1は、前記他の層を備えている場合、前記他の層をそれ以外の層と接着するための接着層(例えば、第1接着層131又は第2接着層132と同様の層等)をさらに備えていてもよい。
【0091】
本実施形態の多層フィルムは、上述のものに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
例えば、
図1に示す多層フィルム1においては、シーラント層11側から外層16側へ向けて、中間層12、保護層14及び酸素バリア層15がこの順に積層されているが、これらの積層順は、上記の逆など、他の積層順であってもよい。
【0092】
多層フィルム1の厚さは、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
例えば、多層フィルム1が後述する包装体の蓋材用及び底材用のいずれであるかによらず、多層フィルム1の厚さは、40~230μmであってもよい。
【0093】
底材用の多層フィルム1の厚さは、100~230μmであることが好ましく、115~200μmであることがより好ましく、130~170μmであることがさらに好ましい。底材用の多層フィルム1の厚さが前記下限値以上であることで、包装体の剛性がより高くなる。底材用の多層フィルム1の厚さが前記上限値以下であることで、包装体が過剰な厚さとなることが抑制される。
【0094】
蓋材用の多層フィルム1の厚さは、40~140μmであることが好ましく、55~125μmであることがより好ましく、70~110μmであることがさらに好ましい。蓋材用の多層フィルム1の厚さが前記下限値以上であることで、包装体の剛性がより高くなる。蓋材用の多層フィルム1の厚さが前記上限値以下であることで、包装体が過剰な厚さとなることが抑制される。
包装体については、後ほど詳しく説明する。
【0095】
多層フィルム1は、透明であることが好ましい。透明である多層フィルム1を、蓋材及び底材のいずれか一方又は両方として用いた包装体は、包装している目的物(収納物)を、包装体の外部から容易に視認できる点で有用である。
【0096】
<<多層フィルムの製造方法>>
本実施形態の多層フィルムは、例えば、数台の押出機を用いて、各層の形成材料となる樹脂や樹脂組成物等を溶融押出するフィードブロック法や、マルチマニホールド法等の共押出Tダイ法、空冷式又は水冷式共押出インフレーション法等により、製造できる。
【0097】
また、本実施形態の多層フィルムは、その中のいずれかの層の形成材料となる樹脂や樹脂組成物等を、多層フィルムを構成するための別の層の表面にコーティングして、必要に応じて乾燥させることにより、多層フィルム中の積層構造を形成し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、製造できる。
【0098】
また、本実施形態の多層フィルムは、そのうちのいずれか2層以上を構成するための2枚以上のフィルムをあらかじめ別々に作製しておき、接着剤を用いてこれらフィルムを、ドライラミネート法、押出ラミネート法、ホットメルトラミネート法及びウェットラミネート法のいずれかによって貼り合わせて積層し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、製造できる。このとき、接着剤として、前記接着層を形成可能なものを用いてもよい。
【0099】
また、本実施形態の多層フィルムは、上記のように、あらかじめ別々に作製しておいた2枚以上のフィルムを、接着剤を用いずに、サーマル(熱)ラミネート法等によって貼り合わせて積層し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、製造できる。
【0100】
本実施形態の多層フィルムを製造するときには、ここまでに挙げた、多層フィルム中のいずれかの層(フィルム)の形成方法を、2以上組み合わせてもよい。
【0101】
<<包装体>>
本発明の一実施形態に係る包装体は、上述の本発明の一実施形態に係る食肉包装用多層フィルムを備えたものである。
本実施形態の包装体は、前記多層フィルムを備えていることにより、包装して保存中の食肉からのドリップの発生を抑制できる。また、本実施形態の包装体においては、前記非シール部位の密着性が安定して維持される、いわゆるセルフウエルド性が高い。また、本実施形態の包装体においては、耐ピンホール性が高い。したがって、本実施形態の包装体は、食肉の包装効果が高い。
【0102】
図2は、本発明の一実施形態に係る包装体を模式的に示す断面図である。
なお、
図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0103】
ここに示す包装体101は、蓋材3と、底材2と、を備えて構成されている。
蓋材3はシート状であり、通常は、透明であることが好ましい。
底材2には、凹部20が形成されている。底材2は、フィルムを深絞り成形することで得られたものであり、通常は、透明であることが好ましい。
蓋材3及び底材2のいずれか一方又は両方が透明であることにより、包装体101で包装されている収納物9を、包装体101の外部から容易に視認できる。
【0104】
包装体101において、底材2の凹部20を除く領域の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)2aと、蓋材3の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)3aとは、いずれもシール面であり、互いに対向している。底材2の第1面2aは、包装体101を構成せずに、前記凹部20内に収納物9を収納した状態で、収納物9が露出する側の面となる。
【0105】
さらに、包装体101は、蓋材3及び底材2のシールによって構成されている。より具体的には、底材2の凹部20を除く領域の第1面2aと、蓋材3の第1面3aは、重ね合わされ、互いにこれらの周縁部においてシールされており、その結果、底材2の凹部20の領域において、底材2の第1面2aと、蓋材3の第1面3aと、の間に、収納部101aが形成されている。そして、この収納部101a内には、収納物9が収納されている。収納物9としては、食肉が好適である。
【0106】
包装体101の周縁部は、シール部位1011となっている。そして、包装体101において、前記シール部位1011よりも収納部101a側で、かつ収納部101aに含まれない領域は、非シール部位1012となっている。非シール部位1012においては、底材2と蓋材3は、シールされていないか、又は軽度にシールされた状態となっており、包装時の収納部101a内の真空引きによる減圧の効果によって、密着した状態となっている。
包装体101を、その蓋材3側の上方、又はその底材2側の上方、から見下ろして平面視したとき、包装体101において、非シール部位1012は収納部101aを取り囲むように存在し、シール部位1011は非シール部位1012を取り囲むように存在する。
【0107】
包装体101において、蓋材3と、底材2と、のいずれか一方又は両方は、上述の本発明の一実施形態に係る食肉包装用多層フィルムからなる。前記多層フィルムとしては、例えば、
図1に示す多層フィルム1を用いることができるが、これに限定されない。
なお、
図2においては、蓋材3と、底材2と、のいずれか一方又は両方が前記多層フィルムである場合、その多層フィルム中での各層の区別を省略している。
【0108】
例えば、蓋材3が多層フィルム1からなる場合には、蓋材3の第1面3aは、多層フィルム1中のシーラント層11の第1面11aに相当し、蓋材3の第1面3aとは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)3bは、多層フィルム1中の
外層16の第2面16bに相当する。
同様に、底材2が多層フィルム1からなる場合には、底材2の第1面2aは、多層フィルム1中のシーラント層11の第1面11aに相当し、底材2の第1面2aとは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)2bは、多層フィルム1中の
外層16の第2面16bに相当する。
【0109】
蓋材3と、底材2と、のいずれか一方又は両方が、前記多層フィルムである包装体101を用いることにより、収納物9が食肉である場合には、収納部101a内で保存中の収納物(食肉)9からのドリップの発生が抑制される。さらに、包装体101においては、非シール部位1012の密着性が安定して維持される。さらに、包装体101のうち、前記多層フィルムで構成されている部位は、耐ピンホール性が高い。
これらの効果がより高くなる点では、包装体101において、蓋材3と底材2との両方が、上述の本発明の一実施形態に係る食肉包装用多層フィルムからなることが好ましい。
【0110】
包装体101においては、典型的には、蓋材3と収納物9とは直接接触している。そして、底材2の凹部20の領域、特に凹部20の底部の領域(例えば、凹部20の蓋材3と対抗している領域)と、収納物9と、は直接接触している。
図2においては、底材2の凹部20の領域のうち、側面部と、収納物9と、は直接接触せず、隙間が見られるが、直接接触していることもある。
すなわち、収納物9は、アイオノマーを含む前記シーラント層と直接接触しており、このアイオノマーの作用により、収納物9が食肉である場合には、収納部101a内で保存中の収納物(食肉)9からのドリップの発生が抑制されると推測される。
【0111】
また、包装体101の非シール部位1012においては、底材2と蓋材3とが密着しており、これらの一方又は両方の密着面がアイオノマーを含んでおり、このアイオノマーの作用により、非シール部位1012の密着性が安定して維持されると推測される。
【0112】
包装体101において、蓋材3が、上述の本発明の一実施形態に係る食肉包装用多層フィルムからなるものでない場合、蓋材3は、通常の深絞り包装袋で使用可能なものであればよい。このような蓋材3としては、例えば、単層又は多層の樹脂フィルムからなるものが挙げられる。
包装体101において、底材2が、上述の本発明の一実施形態に係る食肉包装用多層フィルムからなるものでない場合、底材2は、通常の深絞り包装袋で使用可能なものであればよい。このような底材2としては、例えば、単層又は多層の樹脂フィルムが深絞り成形されたものが挙げられる。
【0113】
包装体101において、蓋材3又は底材2が、上述の本発明の一実施形態に係る食肉包装用多層フィルムからなる場合、蓋材3又は底材2の厚さは、先に説明した前記多層フィルムの厚さと同じである。
包装体101において、蓋材3及び底材2が、ともに前記多層フィルムからなる場合、蓋材3及び底材2の厚さは、先に説明した前記多層フィルムの厚さの数値範囲内であり、かつ、蓋材3の厚さが底材2の厚さよりも薄いことが好ましい。
蓋材3又は底材2が、前記多層フィルムではなく、他のフィルムからなる場合には、蓋材3又は底材2の厚さは、前記多層フィルムの厚さと同じであってもよい。
【0114】
本実施形態の包装体は、上述のものに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
【0115】
<<包装体の製造方法>>
本実施形態の包装体は、前記蓋材と前記底材とを、前記収納部を形成するように、重ね合わせ、加熱シールすることにより、製造できる。
包装体の製造時には、蓋材と底材との加熱シール前に、前記収納部に収納物を収納する。そして、前記収納部内を真空引きした状態で、蓋材と底材とを加熱シールする。
【実施例】
【0116】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0117】
<<多層フィルム及び包装体の製造>>
[実施例1]
以下に示す手順で、
図1に示す構造の多層フィルム、及び、
図2に示す構造の包装体を製造した。
【0118】
<底材用多層フィルムの製造>
シーラント層を構成する樹脂として、ベース樹脂がエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体(EMAA)であり、金属イオンが亜鉛イオン(Zn2+)であるアイオノマー(三井・デュポンポリケミカル社製「ハイミラン1855」)を準備した。
中間層を構成する樹脂として、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製「ニュクレルAN4901-1C」)を準備した。
第1接着層及び第2接着層を構成する接着樹脂として、酸変性ポリエチレン組成物(三井化学社製「アドマーNF536」)を準備した。
保護層及び外層を構成する樹脂として、6-ナイロン(宇部興産社製「UBEナイロン1030B2」)を準備した。
酸素バリア層を構成する樹脂として、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(クラレ社製「エバールJ171B」)を準備した。
【0119】
次いで、シーラント層、中間層、第1接着層、保護層、酸素バリア層、第2接着層及び外層を、この順で共押出成形することにより、底材用多層フィルムを製造した。
得られた多層フィルムは、シーラント層(厚さ30μm)、中間層(厚さ49.5μm)、第1接着層(厚さ10.5μm)、保護層(厚さ30μm)、酸素バリア層(厚さ7.5μm)、第2接着層(厚さ12μm)及び外層(厚さ10.5μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、厚さが150μmのものである。
【0120】
<蓋材用多層フィルムの製造>
各層を構成するための樹脂の使用量を変更した点以外は、上記の底材用多層フィルムの製造時と同じ方法で、蓋材用多層フィルムを製造した。
得られた多層フィルムは、シーラント層(厚さ18μm)、中間層(厚さ29.7μm)、第1接着層(厚さ6.3μm)、保護層(厚さ18μm)、酸素バリア層(厚さ4.5μm)、第2接着層(厚さ7.2μm)及び外層(厚さ6.3μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、厚さが90μmのものである。
【0121】
<包装体の製造>
上記で得られた底材用多層フィルムを深絞り成形し、底材を製造した。収納部となる底材中の凹部の外形は、大きさが15cm×11cm×2.5cmの四角柱状とした。
次いで、上記で得られた底材中の前記凹部に、食肉として、この凹部より一回り小さい大きさの生の馬肉を収納した。この状態で、底材の食肉が露出している側の面(すなわち、前記第1面)と、蓋材の表面(すなわち、前記第1面)と、を重ね合わせ、前記凹部内を真空引きしながら、底材と蓋材の周縁部同士を115℃で加熱シールすることにより、収納部を形成するともに食肉をこの収納部内に密封した。このとき、加熱シールした周縁部と、収納部と、の間の領域を、非シール部位とした。
以上により、収納部に食肉が収納された包装体を製造した。
【0122】
[実施例2]
<底材用多層フィルムの製造>
シーラント層を構成する樹脂として、ベース樹脂がエチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)であり、金属イオンが亜鉛イオン(Zn2+)であるアイオノマーに代えて、ベース樹脂がエチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)であり、金属イオンがナトリウムイオン(Na+)であるアイオノマー(三井・デュポンポリケミカル社製「ハイミラン1707」)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、底材用多層フィルムを製造した。
得られた多層フィルムは、シーラント層(厚さ30μm)、中間層(厚さ49.5μm)、第1接着層(厚さ10.5μm)、保護層(厚さ30μm)、酸素バリア層(厚さ7.5μm)、第2接着層(厚さ12μm)及び外層(厚さ10.5μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、厚さが150μmのものである。
【0123】
<蓋材用多層フィルムの製造>
シーラント層を構成する樹脂として、ベース樹脂がエチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)であり、金属イオンが亜鉛イオン(Zn2+)であるアイオノマーに代えて、ベース樹脂がエチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)であり、金属イオンがナトリウムイオン(Na+)であるアイオノマー(三井・デュポンポリケミカル社製「ハイミラン1707」)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、蓋材用多層フィルムを製造した。
得られた多層フィルムは、シーラント層(厚さ18μm)、中間層(厚さ29.7μm)、第1接着層(厚さ6.3μm)、保護層(厚さ18μm)、酸素バリア層(厚さ4.5μm)、第2接着層(厚さ7.2μm)及び外層(厚さ6.3μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、厚さが90μmのものである。
【0124】
<包装体の製造>
上記で得られた底材用多層フィルム及び蓋材用多層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、包装体を製造した。
【0125】
[比較例1]
<底材用多層フィルムの製造>
シーラント層を構成する樹脂として、ベース樹脂がエチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)であり、金属イオンが亜鉛イオン(Zn2+)であるアイオノマーに代えて、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(宇部丸善ポリエチレン社製「ユメリット1520F」)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、底材用多層フィルムを製造した。
得られた多層フィルムは、シーラント層(厚さ30μm)、中間層(厚さ49.5μm)、第1接着層(厚さ10.5μm)、保護層(厚さ30μm)、酸素バリア層(厚さ7.5μm)、第2接着層(厚さ12μm)及び外層(厚さ10.5μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、厚さが150μmのものである。
【0126】
<蓋材用多層フィルムの製造>
シーラント層を構成する樹脂として、ベース樹脂がエチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)であり、金属イオンが亜鉛イオン(Zn2+)であるアイオノマーに代えて、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(宇部丸善ポリエチレン社製「ユメリット1520F」)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、蓋材用多層フィルムを製造した。
得られた多層フィルムは、シーラント層(厚さ18μm)、中間層(厚さ29.7μm)、第1接着層(厚さ6.3μm)、保護層(厚さ18μm)、酸素バリア層(厚さ4.5μm)、第2接着層(厚さ7.2μm)及び外層(厚さ6.3μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、厚さが90μmのものである。
【0127】
<包装体の製造>
上記で得られた底材用多層フィルム及び蓋材用多層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、包装体を製造した。
【0128】
<<包装体の評価>>
<ドリップの発生の抑制効果の評価>
上記で得られた、食肉を収納済みの包装体を、20℃で48時間静置保存した。
次いで、この保存後の包装体を目視観察し、食肉からのドリップの発生の程度を、下記基準で評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:ドリップの発生がほぼ又は全く認められない。
B:ドリップの発生が少量認められるが、食肉の包装状態の外観は損なわれていない。
C:ドリップの発生が多量に認められ、食肉の包装状態の外観が損なわれている。
【0129】
<包装体中の非シール部の密着性の評価>
上記の「ドリップの発生の抑制効果の評価」時に、同時に目視観察により、包装体中の非シール部位の密着性を、下記基準で評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:非シール部位の密着が維持されている。
B:非シール部位のごく一部に剥離が認められるが、剥離部位にドリップの溜まりは、ほぼ又は全く認められない。
C:非シール部位に明らかな剥離が認められ、剥離部位にドリップの溜まりが明らかに認められる。
【0130】
<包装体におけるピンホールの発生の抑制効果の評価>
上記の「ドリップの発生の抑制効果の評価」時に、同時に目視観察により、包装体におけるピンホールの発生の抑制効果を、下記基準で評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:ピンホールが全く認められない。
B:ピンホールが1個以上認められる。
【0131】
【0132】
上記結果から明らかなように、実施例1~2の包装体においては、ドリップの発生の抑制効果と、包装体中の非シール部の密着性と、の評価結果がいずれも良好であり、特に実施例1の包装体は、実施例2の包装体よりも評価結果が優れていた。実施例1及び実施例2のいずれにおいても、底材用多層フィルムのシーラント層と、蓋材用多層フィルムのシーラント層は、ともにアイオノマーからなるが、実施例1におけるアイオノマーは、ベース樹脂がEMAAであり、金属イオンがZn2+であるアイオノマーであった。
【0133】
これに対して、比較例1の包装体においては、ドリップの発生の抑制効果と、包装体中の非シール部の密着性と、の評価結果がいずれも劣っていた。比較例1においては、底材用多層フィルムのシーラント層と、蓋材用多層フィルムのシーラント層は、ともにアイオノマーを含んでいなかった。
【0134】
一方、実施例1~2及び比較例1の包装体においては、ピンホールの発生の抑制効果が良好であった。これら実施例及び比較例においては、保護層がナイロンを含んでいた。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、食肉の保存時に用いる包装体に利用可能である。
【符号の説明】
【0136】
1・・・食肉包装用多層フィルム
11・・・シーラント層
12・・・中間層
131・・・第1接着層
14・・・保護層
15・・・酸素バリア層
132・・・第2接着層
16・・・外層
101・・・包装体
2・・・底材
3・・・蓋材
1011・・・包装体のシール部位
1012・・・包装体の非シール部位
101a・・・包装体の収納部
9・・・収納物(食肉)
20・・・底材の凹部