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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】眼底画像観察プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/14 20060101AFI20240509BHJP
   A61B 3/12 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
A61B3/14
A61B3/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019102349
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020195486
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】植村 晴香
(72)【発明者】
【氏名】藤生 賢士朗
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-108431(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0063453(US,A1)
【文献】特開2011-045549(JP,A)
【文献】特開2016-059399(JP,A)
【文献】特開2018-051244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータのプロセッサによって実行されることにより、
眼底撮影装置によって互いに異なる撮影方法で撮影された複数の眼底画像を取得する取得ステップと、
モニタ上に1枚以上の前記眼底画像を表示させる表示制御ステップと、を前記コンピュータに実行させる、眼底画像観察プログラムであって、
前記表示制御ステップでは、
互いに異なる撮影方法で撮影された複数の前記眼底画像のうち、いずれかの撮影方法による眼底画像が選択的に配置されると共に、配置された前記眼底画像毎に、前記眼底画像を登録画像として登録するための操作を受け付け可能な第1表示領域と、
撮影方法毎に登録された前記登録画像が一覧表示可能な第2表示領域と、を前記モニタ上に択一的に表示させると共に、
択一的に表示される表示領域を切換えるためのウィジェットを、前記モニタ上に表示させ、
前記ウィジェットに対する操作入力に基づいて前記第1表示領域と前記第2表示領域とを切換えて表示する眼底画像観察プログラム。
【請求項2】
請求項1記載の眼底画像観察プログラムであって、
前記表示制御ステップでは、前記ウィジェットに対するワンアクションの操作入力に基づいて、記第1表示領域と前記第2表示領域とが切換えられる。
【請求項3】
請求項1又は2記載の眼底画像観察プログラムであって、
異なる撮影方法で撮影された複数の前記眼底画像には、一連の蛍光造影撮影によって撮影された蛍光造影画像が、少なくとも含まれる。
【請求項4】
請求項3記載の眼底画像観察プログラムであって、
前記蛍光造影画像が表示される場合は、各々の前記蛍光造影画像と対応付けて造影時期を示す情報が表示される。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の眼底画像観察プログラムであって、
前記表示制御ステップにおいて、前記第1表示領域又は前記第2表示領域に表示される前記眼底画像は、共通する撮影範囲を含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼底画像観察プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼科分野の画像診断では、眼底撮影装置で撮影された眼底画像が広く利用されている。
【0003】
被検眼を多角的に診断および観察するうえで、撮影方法が互いに異なる複数の眼底画像を読影することは、有用である。例えば、特許文献1には、眼底における、カラー画像、赤外画像、フルオルセイン造影画像、インドシアニングリーン造影画像、および、自発蛍光画像、を、1台で撮影可能な装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-59399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の撮影方法で眼底画像が撮影されると、その中から読影に用いる画像を検者が選び出す作業における負担が、大きくなりやすい。
【0006】
また、蛍光造影撮影は、複数の造影時期で撮影が行われるので、一連の撮影において、複数枚の画像が撮影される。しかも、蛍光造影撮影は、造影剤を静注することで被検者へ負担が生じる撮影方法であるので、安易に撮り直しができない。このため、撮影ミスがあり得ることを前提として、比較的多数の画像が撮影される。しかし、多数の画像が撮影されても、読影に利用される画像はその中の少数なので、上記作業の負担が比較的大きい。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、互いに異なる撮影方法で撮影された複数の眼底画像の中から、検者によって選択された画像を好適に表示させる、眼底画像観察プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1態様係る眼底画像観察プログラムは、コンピュータのプロセッサによって実行されることにより、眼底撮影装置によって互いに異なる撮影方法で撮影された複数の眼底画像を取得する取得ステップと、モニタ上に1枚以上の前記眼底画像を表示させる表示制御ステップと、を前記コンピュータに実行させる、眼底画像観察プログラムであって、前記表示制御ステップでは、互いに異なる撮影方法で撮影された複数の前記眼底画像のうち、いずれかの撮影方法による眼底画像が選択的に配置されると共に、配置された前記眼底画像毎に、前記眼底画像を登録画像として登録するための操作を受け付け可能な第1表示領域と、撮影方法毎に登録された前記登録画像が一覧表示可能な第2表示領域と、を前記モニタ上に択一的に表示させると共に、択一的に表示される表示領域を切換えるためのウィジェットを、前記モニタ上に表示させ、前記ウィジェットに対する操作入力に基づいて前記第1表示領域と前記第2表示領域とを切換えて表示する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、互いに異なる撮影方法で撮影された複数の眼底画像の中から、検者によって選択された画像を好適に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例に係る眼底画像観察システムの概要を示すブロック図である。
図2】一連の蛍光造影撮影の流れを示した図である。
図3】第1の表示状態におけるビュワー画面の一例を示した図である。
図4】第2の表示状態におけるビュワー画面の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示における1つの実施形態を説明する。初めに、図1を参照して、実施形態に係る眼底画像観察システムを説明する。眼底画像観察システムは、互いに異なる複数の撮影方法で、眼底画像を撮影し、撮影された眼底画像を表示する。なお、説明の便宜上、特に断りが無い限り、実施形態の説明において、眼底画像は眼底の正面画像を指すものとする。
【0012】
なお、互いに異なる複数の撮影方法の間の相違点は、被検眼に照射される光の波長域であってもよいし、蛍光撮影と反射撮影との違いがあってもよいし、正面撮影と断層(断面)撮影との違いがあってもよいし、その他の違いがあってもよい。
【0013】
眼底画像観察システムは、コンピュータ1と、眼底撮影装置100と、を含む。コンピュータ1と、眼底撮影装置100とは、有線または無線で接続されている。これにより、コンピュータ1と、眼底撮影装置100とは、通信可能である。実施形態に係る眼底画像観察プログラムは、コンピュータ1のプロセッサによって読み出し可能な、不揮発性メモリに格納されている。以下、説明される本実施形態では、眼底撮影装置100と、コンピュータ1とが、別体である。ただし、2つの装置は、一体化されていてもよい。
【0014】
<眼底撮影装置>
眼底撮影装置100は、少なくとも、撮影光学系(図示せず)を有する。この撮影光学系では、被検眼の眼底を光で照射したのちに眼底からの戻ってくる光が受光素子によって受光される。本実施形態では、受光素子からの受光信号に基づいて眼底画像が形成される。眼底画像は、眼底撮影装置100の画像処理回路(例えば、ICおよびプロセッサ等)によって形成される。なお、画像処理回路は、眼底撮影装置100に備え付けされている必要はない。例えば、コンピュータ1の画像処理回路が、眼底撮影装置100の画像処理回路を兼ねていてもよい。
【0015】
本実施形態において、眼底撮影装置100は、互いに異なる複数の撮影方法で、眼底画像を撮影する。眼底画像の1種としての蛍光造影画像が撮影可能であってもよい。また、他の眼底画像としての反射画像が撮影可能であってもよい。蛍光造影画像は、眼底血管に投与された蛍光造影剤の蛍光発光による撮影画像である。反射画像は、眼底照射に用いられた照明光の眼底反射光による撮影画像である。
【0016】
眼底撮影装置100の撮影光学系により、蛍光造影画像と、反射画像とが、同時に撮影可能であってもよい。ここでいう同時とは、完全同時に限定されない。若干の時間差は、許容される。時間差は、例えば、2種類の眼底画像が撮影される間に、有意な眼の動きが生じない程度の範囲で設定されてもよい。
【0017】
眼底撮影装置100は、例えば、インドシアニングリーン造影撮影(ICGA)、および、フルオレセイン造影撮影(FA)、のいずれかの撮影方法で、蛍光造影画像を撮影してもよい。2種類の造影剤を同時に静注することにより、2種類の蛍光造影画像が同時に撮影されてもよい。また、眼底撮影装置100は、赤外光による反射画像(以下、IR画像と称する)、および、カラー画像を撮影可能であってもよい。また、更に、自発蛍光画像が撮影可能であってもよい。
【0018】
実施形態に係る眼底撮影装置100は、SLO(走査型レーザー検眼鏡:Scanning Laser Ophthalmoscope)であってもよい。但し、必ずしもこれに限定されるものではなく、眼底撮影装置100は、眼底カメラ等の他の眼底撮影装置であってもよい。なお、蛍光造影画像と反射画像とを同時に撮影可能なSLOの詳細構成については、例えば、本出願人による特開2016-59399号公報等を参照されたい。
【0019】
<コンピュータ>
コンピュータ1は、少なくとも、眼底撮影装置100によって撮影される各種の眼底画像を取得して、モニタ80に表示させる。コンピュータ1は、少なくとも、演算制御部70を備える。演算制御部70は、コンピュータ1のプロセッサである。演算制御部70は、図1に示すように、CPU、RAM、および、ROM等によって構成されてもよい。演算制御部70は、眼底画像の表示制御のほか、眼底画像に関する各種処理を、眼底画像観察プログラムに基づいて実行する。
【0020】
図1に示すように、コンピュータ1の演算制御部70は、データバス等を介して、メモリ71、操作部75、モニタ80、および、眼底撮影装置100等と接続される。
【0021】
本実施形態において、メモリ71は、不揮発性の記憶装置である。例えば、ハードディスクあるいはフラッシュメモリ等が、メモリ71として適用可能である。本実施形態において、眼底画像観察プログラムは、メモリ71に予め記憶されている。メモリ71は、書き換え可能であってもよい。この場合、以下の実施例において説明するように、メモリ71には、眼底撮影装置100から取得される各種の眼底画像が記憶されてもよい。但し、眼底画像は、眼底画像観察プログラムが記憶されたメモリとは、別体のメモリ(図示せず)に記憶されてもよい。
【0022】
操作部75は、コンピュータ1の入力インターフェイスである。演算制御部70は、操作部75への操作入力に応じた信号を受け付ける。操作部75としては、種々のデバイスが考えられる。例えば、タッチパッド、マウス、および、キーボードのうちの少なくともひとつが、操作部75として利用されてもよい。なお、操作部75は、眼底撮影装置100の入力インターフェイスとして兼用されてもよい。なお、眼底撮影装置100の入力インターフェイス(操作部)として、眼底撮影装置100に備え付けのジョイスティック、および、スイッチ等が、眼底撮影装置100に設けられていてもよい。
【0023】
モニタ80は、本実施形態において、眼底撮影装置100によって撮影された画像の表示部(表示デバイス)として利用される。モニタ80は、例えば、汎用のモニタあってもよいし、装置に備え付けのモニタであってもよい。モニタ80に代えて、ヘッドマウントディスプレイ等の他の表示デバイスが、表示部として利用されてもよい。
【0024】
<動作説明>
以下、上記のような構成を持つ、眼底画像観察システムの動作を説明する。
【0025】
同一日の検査において、複数の撮影方法で被検眼Eが撮影される場合がある。眼底撮影装置100は、検者の操作に応じて適宜撮影方法を切換え、眼底撮影装置100は、IR画像、カラー画像、自発蛍光画像、蛍光造影画像等を撮影する。撮影された眼底画像は、撮影方法を示す識別情報と対応付けて装置のメモリへ記憶される。
【0026】
<蛍光造影撮影>
ここで、蛍光造影撮影を例に、撮影の流れを、詳細に説明する。被検者に造影剤を静注した場合、眼底の血管内に流入する造影剤の量は、静注から一定時間経過後に急激に増大し、その後に徐々に減少する。静注直後の造影初期では、造影剤は、太い血管→細い血管の順で流入していく。このとき、眼底での蛍光発光の状態の変化は、大きく、且つ、速やかである。一方、造影剤が注入されてから、更に時間が経過した造影中期、および造影後期においては、造影剤が血管内に十分に行き渡っているので、眼底での蛍光発光の状態の変化は少なくなる。
【0027】
そこで、造影初期から造影後期までの一連の蛍光造影撮影において、造影初期では、蛍光造影画像の連続撮影が、撮影トリガ信号(本実施形態における第1トリガ信号)に基づいて開始されてもよい。連続撮影では、撮影トリガ信号が出力されてから、少なくとも10秒から数分間、或いは数十分の期間、継続的に蛍光造影画像が撮影される。つまり、当該期間の間、眼底に光が投光され、その戻り光が受光素子に受光される。連続撮影の結果、撮影画像群が、眼底撮影装置100によって取得される。
【0028】
撮影画像群には、撮影トリガ信号(本実施形態における第1トリガ信号)の出力タイミング以降に一定周期で撮影された連続的な複数フレームの蛍光造影画像(蛍光による眼底画像)が含まれる。SLOでは、眼底の所定範囲が周期的に走査されることにより、所定範囲内が一通り(つまり、一周期分)走査される毎に、1フレームの撮影画像を得ることが可能である。撮影画像群は、撮影期間中の各周期の眼底走査で得られた蛍光造影画像で構成されていてもよい。あるいは、1周期とばし、(又は、2周期とばし、3周期とばし、・・・n周期とばし、でもよい)の眼底走査で得られた蛍光造影画像が撮影画像群を構成していてもよい。眼底撮影装置100によって、少なくとも毎秒、数フレームの撮影画像が得られる。
【0029】
なお、以下では、撮影画像群に含まれる各々の蛍光造影画像を、以下、便宜上フレーム画像と称する場合がある。
【0030】
また、一連の蛍光造影撮影において、造影中期および造影後期では、撮影トリガ信号(本実施形態における第2トリガ信号)の出力に基づき、蛍光造影画像が単発的に撮影されてもよい。この場合、撮影トリガ信号の出力直後に、蛍光造影画像の静止画像が単発的に撮影される。ここでいう、単発的な撮影とは、撮影トリガ信号の出力を契機に、少なくとも1枚の予め定められた枚数の蛍光造影画像が得られることである。なお、単発的な撮影では、連続撮影に比べて、短い時間で撮影が行われる。1回の撮影トリガ信号につき、得られる蛍光造影画像は、好ましくは、多くても十枚程度にとどめられる。単発的な撮影の結果として得られる蛍光造影画像を、以下、便宜上造影静止画像と称する。造影静止画像は、連続造影撮影で得られるフレーム画像よりも多くの画素数(例えは、高い解像度)を有する画像であってもよい。
【0031】
なお、蛍光造影撮影は、必ずしもこれら説明された手法に限られない。造影初期において造影静止画像の撮影が行われてもよく、また、造影後期において、連続造影撮影が行われてもよい。
【0032】
一連の蛍光造影撮影の結果として取得される複数の蛍光造影画像の一部または全部は、加算画像であってもよい。FA、ICGAのいずれにおいても、眼底からの蛍光は微弱であり、それは、造影初期、造影後期においては特に顕著である。このため、例えば、連続する複数フレーム分の蛍光造影画像を取得し、それらを加算(加算平均あるいは加重平均等でもよい)することにより、良好な蛍光造影画像を得るようにしてもよい。
【0033】
眼底撮影装置100は、各々の蛍光造影画像と同時に、反射画像を撮影する。反射画像は、各々の蛍光造影画像の位置関係を対応付けるために利用可能である。反射画像の詳細は、後述する。
【0034】
次に、図2を参照し、蛍光造影撮影における装置動作の具体例を説明する。
【0035】
[t0:アライメントおよび撮影条件の設定]
まず、検者は、被検眼に対する装置のアライメントを行い、併せて、撮影条件を設定する。この場合に設定される撮影条件には、励起光として眼底を照射する光の波長についての条件が少なくとも含まれる。例えば、FAの場合は、青色、又は、緑色の光が励起光として設定される。ICGAの場合は、赤外域の光が励起光として設定される。FAおよびICGAが同時に行われる場合、それぞれに対応した2種類の波長域が、励起光として設定される。更に、本実施形態では、第2の赤外域の光が、眼底に照射される光として、更に設定される。第2の赤外域の光は、眼底観察用の光、および、反射画像を得るための光として、兼用される。なお、第2の赤外域と、ICG励起用の赤外域とは、互いに異なる波長域に属する。
【0036】
[t1:蛍光造影撮影の開始]
アライメントおよび撮影条件の設定が完了したら、検者は、被検者に造影剤を静注する。また、同時に(又は直後に)、一連の蛍光造影撮影を開始させるための操作入力を、眼底撮影装置100の入力インターフェイスに対して行う。その結果、眼底撮影装置100において、蛍光造影撮影が開始される。
【0037】
蛍光造影撮影と共に、眼底撮影装置100において、造影タイマが作動される。造影タイマは、造影開始からの時間経過を計測する時間計測手段である。つまり、造影時期(時相ともいう)が、造影タイマによって管理される。造影タイマは、モニタ80へ表示されてもよい。本実施例では、一連の蛍光造影撮影で撮影される各々の眼底画像(蛍光造影画像および反射画像)には、撮影タイミングにおける造影タイマの計測時間が、対応付けてメモリに記憶される。
【0038】
一連の蛍光造影撮影の間、眼底は、継続的に、励起光で照射(SLOでは、更に、走査)され、更に、励起光による照射に起因する眼底からの蛍光による眼底画像が、眼底撮影装置100によって、逐次取得されてもよい。逐次取得される画像は、観察画像(リアルタイムな動画像)として、モニタ80に表示されてもよい。これにより、撮影範囲、および、固視のズレを、反射画像から確認できる。また、検者においては、蛍光による観察画像を確認することで、適切なタイミングで、トリガ操作を行うことが可能となる。
【0039】
[t1~t2:造影初期]
本実施形態では、一連の蛍光造影撮影の開始タイミングから、連続造影撮影が開始される。つまり、連続造影撮影の開始操作に基づいて、連続造影撮影の撮影トリガ信号が出力される。連続造影撮影の結果として、複数フレームの蛍光造影画像を含む撮影画像群が、メモリに記憶される。あわせて、本実施形態では、各々の蛍光造影画像と同時に撮影された反射画像が、メモリに記憶されてもよい。連続造影撮影は、開始から一定時間経過後に自動的に終了してもよいし、眼底撮影装置100の入力インターフェイスに対する所定操作に基づいて、手動で終了してもよいし、その他の終了条件を満たしたときに終了してもよい。
【0040】
本実施形態では、逐次取得されるフレーム画像(蛍光造影画像)が、モニタ80にリアルタイムな動画として表示される。併せて、各フレーム画像と共に撮影される、反射画像も動画として表示されてもよい。撮影範囲、および、固視のズレを、反射画像から検者が確認できる。
【0041】
連続造影撮影の結果として取得される撮影画像群のうち、読影等に利用される画像は、一部である場合が考えられる。このため、1つの撮影画像群のうち一部のフレーム画像が、キーフレームとして登録されてもよい。ここでいう「キーフレーム」は、連続造影撮影の結果として得られる複数のフレーム画像のうち、所望の造影状態を示す画像である。
【0042】
例えば、診断において有用である、CNV(脈絡膜新生血管)への造影剤が流入していく数秒間の間に形成されるフレーム画像等が、キーフレームの1つとして選択されてもよい。1回の連続造影撮影に対し、複数フレームのキーフレームが選択可能である。例えば、予め定められたタイミングで取得されたフレーム画像であってもよいし、連続造影撮影中に所定のトリガ操作が行われたタイミングで取得されるフレーム画像であってもよい。また、撮影の後で、事後的にキーフレームを選択可能であってもよい。
【0043】
本実施形態において、キーフレームは、撮影画像群の他のフレーム画像と比べて、後述のビュワー画面において優先的に表示される。例えば、他のフレーム画像は、ビュワー画面が起動されてから表示されるまでに、キーフレームと比べて多くの操作入力が要求されてもよいし、ビュワー画面において他のフレーム画像は非表示とされていてもよい。
【0044】
[t2~t3:造影中期および後期]
次いで、数分から数十分程度の時間を適宜おいて、造影静止画像の撮影が行われる。この撮影に際し、眼底撮影装置100は、観察画像を取得し、モニタ80に取得した画像を表示させる。造影中期、造影後期における任意のタイミングで、造影状態、又は、撮影範囲を、観察画像を用いて確認しながら、撮影操作が行われる(例えば、レリーズボタンを押下する)。撮影操作に基づいて、眼底撮影装置100には、撮影トリガ信号(第2トリガ信号)が入力される。これにより、眼底撮影装置100は、造影静止画像を取得する。このとき、励起光と共に、反射画像撮影用の光を眼底に投光することにより、造影静止画像と同時に、反射画像が得られる。このようして、撮影中期および後期では、撮影操作毎に、造影静止画像および反射画像が同時に取得されて、メモリに記憶される。
【0045】
造影中期、造影後期において撮影される造影静止画像の枚数は、造影初期において撮影される撮影画像群を構成するフレーム画像の枚数と比べて少ない。このため、本実施形態では、後述のビュワー画面において、各々の造影静止画像は、キーフレームと同等の優先度で表示されるものとする。
【0046】
<撮影結果の取得>
以上のようにして眼底撮影装置100によって撮影された、蛍光造影画像、および、反射画像は、コンピュータ1のプロセッサからアクセス可能なメモリ(ここでは、メモリ71)に記憶される。これにより、本実施形態では、互いに異なる複数の撮影方法で撮影された眼底画像が、コンピュータ1によって取得される。詳細には、一連の蛍光造影撮影で得られた複数フレームの蛍光造影画像が取得される。また、反射画像が更に取得されてもよい。
【0047】
また、前述したように、本実施形態では、各々の蛍光造影画像および反射画像が撮影された時の造影タイマの計測時間を示す情報が、更に、メモリ71に記憶される。
【0048】
<ビュワー画面の表示>
コンピュータ1の演算制御部70は、ビュワー画面をモニタ80へ表示させる。ビュワー画面において、眼底画像が表示される。このビュワー画面は、レポート等として出力される眼底画像を選定するため、又は、編集(画像の加工)するため、等に利用される。
【0049】
図3図4にビュワー画面の一例を示す。図3図4に示すビュワー画面は、少なくとも、検者によって指定された撮影日に撮影された眼底画像の表示に利用される。本実施例におけるビュワー画面上には、第1の表示領域201(図3参照)と、第2の表示領域202(図4参照)と、が、択一的に表示される。また、本実施例において、ビュワー画面には、各種ウィジェットが配置される。ここでいうウィジェットは、GUIのインタフェース部品(UIパーツ)の総称であり、コントロールとも称する。ウィジェットの具体例としては、ボタン、スライダー、チェックボックス、テキストボックス、等、多用なものが知られている。
【0050】
ビュワー画面に表示されるウィジェットの中には、少なくとも、ビュワー画面上の表示領域を切換えるために操作されるものが含まれる。ビュワー画面では、ウィジェットに対する操作入力に基づいて、第1の表示領域201(図3参照)と、第2の表示領域202(図4参照)と、が切換えて表示される。
【0051】
<ビュワー画面における各種ウィジェット>
図3図4のビュワー画面には、表示領域の切換操作に用いるウィジェットの一例として、複数のタブ211~216が、表示領域201,202の上部に配置されている。複数のタブ211~216のうちいずれかを、ポインティングデバイスを介して選択操作することで、表示領域201,202が切換えられる。また、各々の表示領域201,202に表示される眼底画像は、所定の操作に応じて、適宜、拡大できる。所定の操作に基づいて眼底画像が選択されることで、別画面(第2のビュワー画面)上での拡大観察が可能となってもよい。
【0052】
第1の表示領域201には、互いに異なる撮影方法で撮影された複数の眼底画像のうち、いずれかの撮影方法による眼底画像が選択的に配置される。つまり、第1の表示領域201には、単一の撮影方法で撮影された眼底画像が表示可能である。各撮影方法に対応するタブ212~216(一例として、ICGAタブ212、FAタブ213、Colorタブ214、FAFタブ215、および、IRタブ216)が、第1の表示領域201と対応する。これらのうち何れかが選択されることで、第1の表示領域201がビュワー画面上に表示される。第1の表示領域201には、選択したタブと対応する撮影方法による眼底画像が選択的に表示される。
【0053】
また、本実施例では、比較表示用のタブ(Comparisonタブ211)が選択されることで、第2の表示領域202がビュワー画面上に表示される。第2の表示領域202には、互いに異なる撮影方法で撮影された複数の眼底画像であって、事前に登録画像として登録された眼底画像が選択的に表示可能である。「登録画像」は、例えば、撮影方法が異なる他の眼底画像との比較に利用されてもよい。
【0054】
その他のウィジェットとして、図3図4に示すビュワー画面には、左右眼切換ボタン231、経過観察ボタン232、データ出力ボタン234、および、画像編集ボタン235等が配置されている。
【0055】
左右眼切換ボタン231は、ビュワー画面に表示される眼底画像を、右眼を撮影したものと、左眼を撮影したものとの間で切換えるために操作される。
【0056】
経過観察ボタン232は、撮影日の異なる眼底画像を、表示領域201,202上に並列表示するために操作される。経過観察ボタン232を操作した後、更に、撮影日を指定する操作を受付可能となる。本実施形態では、このとき指定された撮影日の眼底画像が、既に表示領域201,202へ表示されている眼底画像と並列表示される。経過観察に適したレポート等を、ビュワー画面を介して作成できる。
【0057】
データ出力ボタン233は、ビュワー画面において選定、編集等された眼底画像を、出力するために操作される。例えば、ボタン233を操作した場合、所定のレポート形式で出力されてもよい。出力は、表示出力であってもよいし、データ出力であってもよいし、印刷出力であってもよい。
【0058】
画像編集ボタン234は、表示領域に表示される眼底画像であって、検者によって選択された画像を、編集する際に操作される。画像編集ボタン234を介して、例えば、ブライトネス、コントラスト補正、および、ガンマ補正、鮮鋭化、および、平滑化等の各種画像処理の実行を受け付けてもよい。
【0059】
<第1の表示領域>
図3に示すように、第1の表示領域201には、単一の撮影方法による眼底画像が表示される。
【0060】
例えば、FAタブ212およびICGAタブ213のうちいずれかが選択されると、蛍光造影撮影による眼底画像が、第1の表示領域201内に表示される。この場合、各々の撮影トリガ信号毎に得られた複数フレームの蛍光造影画像から、任意の造影時期に撮影された蛍光造影画像を、登録画像として選択し、登録できる。
【0061】
本実施形態において、表示領域内には、一連の蛍光造影撮影で得られた多数の眼底画像のうち、キーフレーム、および、造影静止画像が表示される。これにより、登録画像の登録作業を、効率良く行うことができる。
【0062】
また、第1の表示領域201においては、眼底画像を登録画像として登録するための操作を、第1の表示領域201へ表示される眼底画像毎に受け付け可能である。図3に示すように、第1の表示領域201における各々の眼底画像の周囲(図では上部)に、チェックボックス237(第2のウィジェットの一例)が配置されてもよい。チェックボックス237を選択して、チェックが付いた眼底画像が、登録画像として登録される。
【0063】
ビュワー画面に蛍光造影画像が表示される場合、各々の蛍光造影画像と対応付けて造影時期を示す情報が表示される。造影時期を示す情報は、撮影時における造影タイマの値であってもよいし、撮影日時であってもよい。一例として、図3図4に示したビュワー画面では、造影バー240を用いて、造影時期がグラフィカルに示されている。造影バー240における塗りつぶしと余白との比率によって、経過時間と残り時間との比率が示される。これによって、検者は、各眼底画像における造影時期を直感的に把握できる。
【0064】
また、例えば、Colorタブ214を選択するとカラー画像が、FAFタブ215を選択すると自発蛍光画像が、IRタブ216を選択すると赤外画像が、それぞれ表示される。この場合も、FAタブ212またはICGAタブ213が選択された場合と同様の操作で、登録画像を登録可能であってもよい。なお、これらのタブは一例に過ぎず、撮影方法に応じて、適宜別のタブが設けられていてもよい。例えば、広角の眼底画像と対応するタブが設けられていてもよい。広角の眼底画像と対応するタブは、更に、詳細な撮影方法毎(例えば、それぞれ、広角での、FA、ICGA、Color撮影、FAF撮影、IR撮影等)に設けられていてもよい。
【0065】
<第2の表示領域>
図4に示すように、第2の表示領域202には、撮影方法毎に事前に登録されている登録画像が、第2の表示領域202において並べて表示可能である。このとき、第2の表示領域202には、撮影方法が互いに異なる複数の眼底画像が混在して並べられ得る。各々の眼底画像は、第1の表示領域201において、撮影方法毎にピックアップされたものであるので、第2の表示領域202において、撮影方法が互いに異なる複数の眼底画像が混在しても、閲覧しやすい。従って、本実施形態のビュワー画面によれば、互いに異なる撮影方法で撮影された複数の眼底画像の中から、検者によって選択された画像が好適に表示される。
【0066】
図3図4に示すビュワー画面上における各々の眼底画像には、撮影方法を示す識別情報が付される。一例として、各々の眼底画像における枠部分(例えば、ヘッダ部分)へ、撮影方法と対応する色が付される。また、更に、タブ212~216も、撮影方法と対応する色が付される。これにより、第2の表示領域202において表示される各々の眼底画像における撮影方法を、検者が直感的に把握しやすくなる。なお、撮影方法を示す識別情報は、例えば、撮影方法を示すテキストであってもよいし、その他であってもよい。
【0067】
図3図4に示すビュワー画面において、表示領域を切換えるための操作は、タブ211~216の選択操作で足りる。つまりは、ワンアクションの操作入力で充足する。表示状態がワンアクションで切替わるため、検者が、第1の表示領域201において登録画像を選択し、選択した画像同士を第2の表示領域202において比較等する作業において、作業性が向上する。なお、ここでいうワンアクションの操作は、表示領域を切換えるうえで求められる唯一の操作である。換言すれば、表示領域を切換るうえで、該操作が行われてから確認が要求されない。
【0068】
<登録結果の再利用>
左右眼の間で、登録作業による登録結果を、再利用してもよい。より詳細には、制御部70は、片眼について登録画像として登録された眼科画像と、同条件で撮影された反対眼についての眼底画像を、反対眼における登録画像として、自動的に登録してもよい。例えば、片眼について登録画像の登録が行われた後、左右眼切換ボタン231が操作されることによって、自動的に反対眼についての登録画像が設定されてもよい。なお、同条件とは、撮影方法および撮影タイミング(例えば、造影時期)の一方または両方についての条件が同じことを指す。本実施例においては、左右両眼を同時に撮影できないので、撮影タイミングについての厳密な同一性は要求されない。例えば、所定時間内に撮影された各眼の画像が、撮影タイミングに関して同条件で撮影された画像として扱われてもよい。これにより、左右両眼についての登録画像を登録する作業を、効率よく進めることができる。
【0069】
また、これに限らず、あるときの登録作業による登録結果を、その後の登録作業において再利用してもよい。すなわち、あるときに第2の表示領域202内に配置された各々の眼底画像と同条件で撮影された眼底画像が、新たな登録作業の際に、登録画像として自動的に設定されてもよい。
【0070】
「変容例」
以上、実施形態に基づいて説明を行ったが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。本開示は、上記実施形態に対する種々の変容形態を含みうる。
【0071】
<第1表示領域201と第2表示領域202との同時表示>
上記実施形態では、第1表示領域201と第2表示領域202とが、タブ201~206の操作に基づいて、ビュワー画面において択一的に表示された。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、第1表示領域201と第2表示領域202とが、ビュワー画面上において同時に(換言すれば、並列的に)表示されてもよい。この場合、第1表示領域201に表示される眼底画像を、第2表示領域202へドラッグ&ドロップすることで、ドラッグ&ドロップされた眼底画像を登録画像として登録する登録操作が行われてもよい。
【0072】
<登録画像に登録する条件の事前設定>
上記実施形態では、コンピュータ1によって取得される各種眼底画像を登録画像として登録するためには、ビュワー画面上での登録操作が、画像毎に要求される。
【0073】
これに対し、事前に登録画像として登録すべき条件を設定しておくことによって、コンピュータ1によって取得される眼底画像のうち、条件に合致する画像が、事前に登録画像として登録されてもよい。このような画像は、ビュワー画面を介した登録操作を要することなく、ビュワー画面上で登録画像として表示されてもよい。
【0074】
事前に設定される条件は、例えば、以下の3つの条件から選択可能であってもよい。これらの条件は、撮影方法毎に設定可能であってもよい。
第1の条件:特定の撮影方法で撮影されたすべての画像を、登録画像として登録する。
第2の条件:蛍光造影画像において所定の経過時間で得られた画像を、登録画像として登録する。
第3の条件:登録画像の事前登録は行わない。
【0075】
第1の条件は、カラー画像、自発蛍光画像、IR画像に適している。1日の撮影におけるこれらの画像の撮影回数は、蛍光造影画像と比べて、一般的に、少ないので、各眼底画像は、いずれも、デフォルト設定において、登録画像として登録されていることで、登録画像の設定作業に要する検者の負担が軽減される。
【0076】
第2の条件は、施設において造影検査がルーチンワーク化される際に有用である。なお、第2の条件における経過時間は、任意の時間が設定可能であってもよいし、複数設定可能であってもよい。
【0077】
<位置合わせ>
例えば、上記実施形態において、ビュワー画面に表示される各々の眼底画像は、互いに位置合わせ(位置ズレが補正)された状態で表示されてもよい。このときの位置合わせ処理は、例えば、本出願人による特開2016-59400号公報に開示された技術を利用してもよい。
【0078】
<不良判定>
例えば、上記実施形態において、コンピュータ1は、メモリ71に記憶される眼底画像が、撮影不良か否かを判定し、撮影不良と判定される画像を、ビュワー画面における表示対象から除外してもよい。蛍光造影画像が撮影不良である場合、同時に撮影される反射画像も撮影不良となる。そのため、反射画像に基づいて、上記判定が行われてもよい。特に、造影初期では、造影状態の変化が大きく、早い。そのため、蛍光造影画像自体からは、撮影不良の判定が困難であることが考えられる。しかし、反射画像の撮影条件は一定であるので、容易に撮影不良を判定することができる。
【0079】
<他のモダリティへの適用>
また、実施形態の眼底画像観察プログラムは、蛍光造影撮影への適用に限られず、一連の撮影(例えば、同日における撮影)で、複数回の撮影トリガ信号が出力される結果、取得される多数の被検眼の撮影画像から、所望の画像を抽出する場合にも適用可能である。例えば、適用可能な被検眼の画像は、多岐にわたる。その具体的な例としては、OCT画像、機能OCT画像(具体例としては、モーションコントラスト画像)、OCT画像又は機能OCT画像に基づくEnface画像、眼底画像、および前眼部画像が挙げられる。また、薬剤を投与し、それに対する被検眼における経時的な反応を評価する際に、実施形態の眼底画像観察プログラムが利用されてもよい。
【0080】
また、上記実施形態において、コンピュータ1が取得し、ビュワー画面に表示される複数枚の眼底画像は、単一の撮影光学系によって撮影されたものであってもよい。コンピュータ1が取得し、ビュワー画面に表示される眼底画像には、追加的に、別の撮影光学系で撮影された眼底画像が、更に含まれてもよい。例えば、コンピュータ1が、図示なきOCT光学系を介して取得した被検眼のOCT画像を、更に取得し、SLO画像と共に、ビュワー画面に表示してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 コンピュータ
70 演算制御部(プロセッサ)
80 モニタ
100 眼底撮影装置
201 第1の表示領域
202 第2の表示領域

図1
図2
図3
図4