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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A45D 29/00 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
A45D29/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019171860
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021045502
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 修一
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-255013(JP,A)
【文献】特開平11-149317(JP,A)
【文献】特開2019-111583(JP,A)
【文献】特開2012-135600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の指と第2の指とを並べて置くための指置部と、
複数の印刷ノズルが列状に配置されたノズル列を有し、前記指置部に置かれた前記第1の指の爪の印刷領域に印刷を行い、次いで前記指置部に置かれた前記第2の指の爪の印刷領域に印刷を行う印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドを移動させる移動機構と、
前記第1の指の爪における印刷領域の印刷開始位置から主走査方向に移動しながら印刷を行うように前記印刷ヘッド及び前記移動機構を制御し、前記第1の指の爪について印刷終了後に、前記第2の指の爪の印刷領域の爪先側端部及び付根側端部のうち、前記第1の指の爪に対する印刷終了時の前記印刷ヘッドにおける前記ノズル列に含まれる前記複数の印刷ノズルのうち前記第1の指の爪の印刷領域と主走査方向において重なる位置にある前記印刷ノズルの位置に近い側の端部に設定された印刷開始位置から、前記第2の指の爪における前記印刷領域への印刷を開始させる印刷制御部と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記第2の指の爪における印刷領域の印刷開始位置は、前記爪先側端部及び前記付根側端部のうち、前記爪先側端部及び前記付根側端部の座標が前記第1の指の爪の前記印刷領域の印刷終了位置の座標に前記爪の長さ方向において近い側の端部に設定されることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第2の指の爪の前記印刷領域の前記爪先側端部及び前記付根側端部の、前記爪の長さ方向の座標を取得する座標取得部と、
前記座標取得部において取得された前記爪先側端部及び前記付根側端部の座標と、前記第1の指の爪の前記印刷領域の印刷終了位置の座標と、を比較する座標比較部と、
前記座標比較部における比較結果に基づいて、前記第2の指の爪の前記印刷領域の印刷開始位置を決定する印刷開始位置決定部と、
を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷開始位置は、前記印刷領域の前記爪先側端部及び前記付根側端部のいずれかに、前記指の載置順に交互に設定されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印刷開始位置を前記印刷領域の前記爪先側端部及び前記付根側端部のいずれに設定するかが、複数の前記指の組み合わせに応じて予め規定されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記印刷開始位置を前記印刷領域の前記爪先側端部及び前記付根側端部のいずれに設定するかが、前記指の長さに応じて予め規定されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記爪の情報を取得する爪情報取得部を有し、
前記第2の指の爪における前記印刷領域の前記爪先側端部及び前記付根側端部は、前記爪情報取得部によって取得された前記爪の輪郭から特定されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記爪の情報を取得する爪情報取得部を有し、
前記第2の指の爪における前記印刷領域の前記爪先側端部及び前記付根側端部は、前記爪情報取得部によって取得された前記爪表面の一部の領域から特定されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記印刷ヘッドは、インクを吐出させる複数のノズルを有し、
前記第2の指の爪における印刷領域の印刷開始位置は、前記第1の指の爪の前記印刷領域の印刷終了時の前記ノズルの位置及び前記第2の指の爪の前記印刷領域の印刷開始時の前記ノズルの位置から決定されることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項10】
第1の指と第2の指とを並べて置くための指置部と、複数の印刷ノズルが列状に配置されたノズル列を有する印刷ヘッドと、を備える印刷装置において、
前記指置部に置かれた第1の指の爪における印刷領域の印刷開始位置から主走査方向に移動しながら前記印刷ヘッドにより印刷を行う第1の印刷工程と、
前記第1の印刷工程の終了後に、前記指置部に置かれた第2の指の爪の印刷領域の爪先側端部及び付根側端部のうち、前記第1の指の爪に対する印刷終了時の前記印刷ヘッドにおける前記ノズル列に含まれる前記複数の印刷ノズルのうち前記第1の指の爪の印刷領域と主走査方向において重なる位置にある前記印刷ノズルの位置に近い側の端部に前記第2の指の爪の印刷開始位置を設定する開始位置設定工程と、
前記開始位置設定工程において設定された前記印刷開始位置から、前記第2の指の爪における前記印刷領域への印刷を開始させる第2の印刷工程と、
を含んでいることを特徴とする印刷方法。
【請求項11】
第1の指と第2の指とを並べて置くための指置部を備える印刷装置のコンピュータに、
前記指置部に置かれた第1の指の爪における印刷領域の印刷開始位置から主走査方向に移動しながら前記印刷ヘッドにより印刷を行う第1の印刷機能と、
前記第1の印刷機能による印刷の終了後に、前記指置部に置かれた第2の指の爪の印刷領域の爪先側端部及び付根側端部のうち、前記第1の指の爪に対する印刷終了時の前記印刷ヘッドにおける前記ノズル列に含まれる前記複数の印刷ノズルのうち前記第1の指の爪の印刷領域と主走査方向において重なる位置にある前記印刷ノズルの位置に近い側の端部に前記第2の指の爪の印刷開始位置を設定する開始位置設定機能と、
前記開始位置設定機能によって設定された前記印刷開始位置から、前記第2の指の爪における前記印刷領域への印刷を開始させる第2の印刷機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、指の爪等にネイルデザインを印刷する印刷装置(ネイルプリント装置)が知られている。
例えば、特許文献1には、両手の指を同時に装置内にセットできるように構成された装置が開示されている。
【0003】
一本の指の爪に印刷を行う場合は、例えば印刷ヘッドが爪幅方向(主走査方向)に移動しながら印刷を行い、爪の側端部まで印刷すると所定量爪の延在方向(主走査方向に直交する副走査方向)の、例えば下側に移動し、再び主走査方向に沿って戻りながら印刷を行うという往復動作を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2003-534083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の装置のように、複数の指を同時にセットすることができるとした場合、各指の爪の位置は、紙を印刷媒体とする場合と異なり、連続した領域ではなく爪の数だけの印刷領域が点在している状態となっている。このため、爪に対する印刷は各爪について順次に行われる。
【0006】
このとき、印刷時における、印刷ヘッドの移動方向(主走査方向)に直交する副走査方向の移動が、例えば爪先から付根に向かう方向等、一定方向に固定されていると、1つの爪について印刷が完了した後、次の爪の印刷を開始するためには、次の爪の爪先位置等、定められた印刷開始位置まで移動しなければならい。
このため、印刷ヘッドの移動距離が無駄に長くなり、効率が悪く、その分印刷に要する時間も長くなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、複数の指を同時にセットすることができる印刷装置において、複数の爪に効率よく印刷を行うことのできる印刷装置、印刷方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の印刷装置は、
第1の指と第2の指とを並べて置くための指置部と、
複数の印刷ノズルが列状に配置されたノズル列を有し、前記指置部に置かれた前記第1の指の爪の印刷領域に印刷を行い、次いで前記指置部に置かれた前記第2の指の爪の印刷領域に印刷を行う印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドを移動させる移動機構と、
前記第1の指の爪における印刷領域の印刷開始位置から主走査方向に移動しながら印刷を行うように前記印刷ヘッド及び前記移動機構を制御し、前記第1の指の爪について印刷終了後に、前記第2の指の爪の印刷領域の爪先側端部及び付根側端部のうち、前記第1の指の爪に対する印刷終了時の前記印刷ヘッドにおける前記ノズル列に含まれる前記印刷ノズルのうち前記第1の指の爪の印刷領域と主走査方向において重なる位置にある前記印刷ノズルの位置に近い側の端部に設定された印刷開始位置から、前記第2の指の爪における前記印刷領域への印刷を開始させる印刷制御部と、
を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の指を同時にセットすることができる印刷装置において、複数の爪に効率よく印刷を行うことができるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態におけるネイルプリント装置の外観構成を示す斜視図である。
図2】本実施形態におけるネイルプリント装置の制御構成を示した要部ブロック図である。
図3】各種の印刷指のY軸方向の端部の位置座標を示す説明図である。
図4】本実施形態における印刷処理を示すフローチャートである。
図5】印刷開始位置が爪のY軸方向上側に固定されている場合の印刷手順を説明する模式図である。
図6】複数の印刷指について印刷する場合の副走査方向の一例を示す説明図である。
図7】複数の印刷指について印刷する場合の副走査方向の一例を示す説明図である。
図8】複数の印刷指について印刷する場合の副走査方向の一例を示す説明図である。
図9】複数の印刷指について印刷する場合の副走査方向の一例を示す説明図である。
図10】複数の印刷指について印刷する場合の副走査方向の一例を示す説明図である。
図11】複数の印刷指について爪の一部分のみに印刷する場合の副走査方向の一例を示す説明図である。
図12】複数の印刷指について印刷する場合の主走査方向が爪の長さ方向である場合の次の印刷領域に移動する際のルートの一例を示す説明図である。
図13】複数の印刷指について印刷する場合の副走査方向の一例を示す説明図である。
図14】複数の印刷指について印刷する場合の副走査方向の一例を示す説明図である。
図15】複数の印刷指について印刷する場合の印刷方向を規定するテーブルの一例を示す図である。
図16】印刷ヘッドのノズルの配置に応じて複数の印刷指について印刷する場合の副走査方向を決定する手法を説明する説明図である。
図17】印刷ヘッドのノズルの配置に応じて複数の印刷指について印刷する場合の副走査方向を決定する手法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1から図13を参照しつつ、本発明に係る印刷装置及び印刷方法の一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
また、以下の実施形態では、印刷装置が手の指の爪を印刷対象としてこれに印刷するネイルプリント装置である場合を例に説明するが、本発明における印刷装置は手の指の爪に印刷を施すもの限るものではなく、例えば足の指の爪を印刷対象とするものでもよい。また、ネイルチップや各種アクセサリの表面等、爪以外のものを印刷対象とするものでもよい。
【0012】
図1は、本実施形態における印刷装置であるネイルプリント装置の外観構成を示す斜視図である。
なお、以下の実施形態において、上下、左右及び前後は、図1に示した向きをいうものとする。また、X軸方向、Y軸方向は、図1に示した方向をいうものとする。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のネイルプリント装置1は、ほぼ箱形に形成された筐体2を有している。
筐体2の上面(天板)には操作部21が設置されている。
操作部21は、ユーザが各種入力を行うものである。
操作部21には、例えば、ネイルプリント装置1の電源をONする電源スイッチ釦、動作を停止させる停止スイッチ釦、印刷開始を指示する印刷開始釦等、各種の入力を行うための操作釦が配置されている。
操作部21が操作されると操作信号が制御装置30に出力され、制御装置30が操作信号に従った制御を行い、ネイルプリント装置1の各部を動作させる。
また、後述する表示部22にタッチパネル式の入力部が設けられている場合には、操作部21はタッチパネル式の入力部を含んでもよい。
【0014】
また、筐体2の上面(天板)には表示部22が設置されている。
表示部22は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のフラットディスプレイ等で構成されている。
本実施形態の表示部22の表面には、タッチパネルが一体的に構成されていてもよい。この場合には、ユーザが指先や図示しない専用のペン等によって表示部22の表面をタッチするタッチ操作によって各種の入力を行うことができるように構成され、タッチパネル式の入力部が操作部21として機能する。
本実施形態において、この表示部22には、例えば、印刷指U(図3等参照)を撮影して得た爪画像(すなわち、爪Tの画像を含む印刷指Uの画像)、この爪画像中に含まれる爪Tの輪郭形状やそのうち印刷が予定されている範囲(印刷領域)等の画像、爪Tの印刷領域に印刷すべきネイルデザインを選択するためのデザイン選択画面、デザイン確認用のサムネイル画像、各種の指示を表示させる指示画面、告知画面、警告画面等が適宜表示される。
【0015】
さらに、筐体2の前面側(図1において手前側)であって装置のX軸方向(図1におけるX方向、ネイルプリント装置1の左右方向)のほぼ中央部には、ネイルプリント装置1による印刷時に指を挿入する開口部である指挿入口23が形成されている。指挿入口23は、後述の指置部6に対応する位置に設けられている。本実施形態では、指置部6に最大5本の指(すなわち片手の全指)を載置可能となっており、指挿入口23は、片手全体を装置内に挿入することができる程度の幅(X軸方向の長さ)及び高さに形成されている。
指挿入口23の大きさ等はこれに限定されず、装置内に一度に挿入可能な指の数に応じて設定される。例えば一度に挿入される指が4本(例えば親指を除く片手の4本)までしか想定されていない場合であれば、指挿入口23は、4本の指を挿入することが可能な幅及び高さに形成される。また、例えば一度に挿入される指が10本(すなわち両手の10本)と想定されている場合であれば、指挿入口23は、両手のすべての指を一度に挿入することが可能な幅及び高さに形成される。
【0016】
また筐体2の一部には、印刷ヘッド41を交換することができる開口部24が設けられている。開口部24には図示しないヒンジ等によって開閉可能に構成された蓋部25が設けられている。蓋部25を閉状態とすることで開口部24が塞がれて装置内部に埃等が浸入するのを防ぐことができる。
開口部24は、蓋部25が開状態となった場合に、ユーザが装置外から装置内部に対してアクセス可能となっている。
なお、開口部24を閉状態とする蓋部25は、ユーザが手動で開閉させるものでもよいし、図示しないボタン等を押すことで自動的に開閉するように構成されていてもよい。
開口部24が設けられる位置は、後述する印刷部40の印刷ヘッド41が対応位置まで移動してくることが可能な位置であり、本実施形態では図1に示すように、装置の上部右側に開口部24が形成されている。なお、開口部24の位置や大きさは適宜設定される。
すなわち、本実施形態の印刷ヘッド41はキャリッジ42から取り外して交換することが可能に構成されており、開口部24は、印刷ヘッド41の着脱、装置内からの取出し等を円滑に行うことができる位置及び大きさに形成される。
【0017】
筐体2の内部には、図示しない装置本体が収容されている。
装置本体は、基台上に各構成部が組み付けられて構成されている。
基台上であって装置手前側には、前述の指挿入口23に対応する位置に、指挿入口23から挿入された印刷指Uを載置する指置部6が設けられている。ここで印刷指Uとは、印刷部40による印刷対象となる爪Tに対応する指である。
【0018】
指置部6の下側面には、指置部6内に挿入される印刷指Uの腹部分を載置させる載置部材62が設けられている。
載置部材62は、指置部6内において印刷指Uを下側から支持するものであり、例えば柔軟性を有する樹脂等で形成されている。
本実施形態の載置部材62には、指置部6内に挿入可能な指の本数に応じてY軸方向に沿って窪んだ形状となった窪み部62aが形成されている(図1参照、なお、図3等において図示省略)。
【0019】
図1では、5本の印刷指Uが指挿入口23から挿入可能である場合を例示しており、指5本分の窪み部62aが設けられている。
これにより、印刷指Uを載置部材62上に載置した際に、印刷指Uの腹部分を窪み部62aが受けて、左右方向に各印刷指Uがガタつくのを防止することができる。また、各印刷指Uを1本ずつ分けて配置しやすくなり、各印刷指Uの位置決めも容易に行うことができる。
なお、載置部材62は上下動可能に構成されていてもよく、この場合には、印刷指Uの太さ等に応じて載置部材62の高さを調整することができる。
また、指置部6の天面奥側は開口しており、この開口部分からは指置部6内に挿入された印刷指Uの爪Tが露出するようになっている。本実施形態では、当該開口している領域において、後述の印刷部40により印刷が行われるようになっている。
【0020】
また、装置本体には、印刷指Uの爪T(爪Tの表面)に印刷を施す印刷部40と、爪Tを含む印刷指Uの撮影画像(爪Tを含む爪画像)を取得する撮影部50等が設けられている(図2参照)。
【0021】
印刷部40は、「印刷領域」に対して印刷を行うものであり、図示しないキャリッジ等に支持された印刷ヘッド41と、印刷ヘッド41をX軸方向(図1におけるX軸方向、ネイルプリント装置1の左右方向)、Y軸方向(図1におけるY軸方向、ネイルプリント装置1の奥行方向、前後方向)に移動させるためのヘッド移動機構49(図2参照)等を備えている。
ヘッド移動機構49は、印刷ヘッド41をX方向及びY方向に適宜移動させるための駆動部としてのX方向移動モータ46とY方向移動モータ48等で構成されている。
印刷部40は、後述する制御装置30の印刷制御部315(図2参照)に接続され、該印刷制御部315によって制御される。
【0022】
本実施形態において「印刷領域」とは印刷指Uの爪Tの表面に設定される領域であり、爪Tの領域の全部又は一部である。すなわち、「印刷領域」は、印刷指Uの爪Tの領域のうち印刷が予定されている領域であり、爪Tの表面全体にネイルプリントを印刷する場合には「印刷領域」は爪Tの全面に設定され、爪Tの輪郭と一致する。他方、例えばフレンチネイルやワンポイントデザイン等、爪Tの一部にネイルプリントを印刷する場合には「印刷領域」は爪Tの領域のうちの一部に設定され、爪Tの輪郭とは一致しない。
本実施形態では、印刷部40は複数本の印刷指Uの爪Tについてその「印刷領域」に順次に印刷を行う。なお、図3等では、爪Tの表面全体にネイルプリントを行う場合(「印刷領域」と爪Tの輪郭とが一致する場合)について図示している。
【0023】
本実施形態において、印刷ヘッド41は、指置部6に保持された印刷指Uの爪Tの上(すなわち、爪表面の上方)を移動しながら、爪Tの表面(後述する爪情報取得部313によって「印刷領域」と認識され設定された範囲)に印刷データに基づいて、ネイルデザインを印刷する。
本実施形態の印刷ヘッド41は、爪Tの表面に対向する面がインクを吐出させる複数のノズル口を備えたインク吐出面(いずれも図示せず)となっており、インクを微滴化し、インク吐出面から爪Tの表面に対して直接にインクを吹き付けて印刷を行うインクジェット方式のヘッドである。
印刷ヘッド41は、例えば、各色のインクを内蔵したカートリッジ一体型となっており、イエロー(Y;YELLOW)、マゼンタ(M;MAGENTA)、シアン(C;CYAN)のインクを吐出可能となっている。なお、印刷ヘッド41が吐出可能なインクはこれらに限定されない。例えば、黒色(K;BLACK)のインクをも内蔵し、黒色(K)のインクも吐出可能となっていてもよい。また、印刷ヘッド41の構成等もここに例示したものに限定されない。例えば、印刷ヘッド41はインクジェット方式以外の構成のものであってもよい。また、印刷ヘッド41はカートリッジと別体に構成されていてもよい。
【0024】
撮影部50(図2参照)は、撮像装置51と、照明装置52とを備えている。
撮像装置51は、例えば、200万画素程度以上の画素を有する固体撮像素子とレンズ(いずれも図示せず)等を備えて構成された小型カメラである。また、照明装置52は、例えば白色LED等で構成される照明灯である。
撮影部50は、指置部6に配置された印刷指Uの爪Tを照明装置52によって照明する。そして、撮像装置51によってその印刷指Uの爪Tに対応する領域を撮影して、爪画像(爪Tの画像を含む印刷指Uの画像)を得る。
撮影部50は、後述する制御装置30の撮影制御部312(図2参照)に接続され、該撮影制御部312によって制御されるようになっている。
撮影部50によって取得された撮影画像は、後述する記憶部32に記憶されてもよい。
【0025】
図2は、本実施形態におけるネイルプリント装置の制御構成の要部を示すブロック図である。
図2に示すように、ネイルプリント装置1は、制御装置30を備えている。
制御装置30は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成される制御部31と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)で構成される記憶部32とを備えるコンピュータである。
制御装置30は、例えば筐体2の天面の下面側等に配置された図示しない基板等に設置されている。
【0026】
記憶部32には、ネイルプリント装置1を動作させるための図示しない各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的には、例えば記憶部32のROMに、印刷処理を行うための印刷プログラム等の各種プログラムが格納されており、制御部31がこれらのプログラムを読み出してRAMのワークエリア等に展開し実行することによって、ネイルプリント装置1の各部が統括制御されるようになっている。
また、本実施形態の記憶部32には、ネイルデザインのデータを記憶するデザイン記憶領域321や、撮影部50によって取得された爪画像のデータ、後述の爪情報取得部313が爪画像を解析することで得られる各種のデータが記憶される爪情報記憶領域322等が設けられている。爪情報取得部313が爪画像を解析することで得られるデータとしては、例えば爪Tの領域を画する輪郭(爪Tの輪郭形状を示す座標等)や爪Tの領域内に含まれる印刷領域(印刷データにしたがってネイルデザインが印刷される領域)の範囲を画する座標、爪Tの曲率(湾曲度合を示すデータ)等がある。なお、記憶部32に記憶されるデータはここに例示したものに限定されない。
【0027】
制御部31は、機能的に見た場合、表示制御部311、撮影制御部312、爪情報取得部313、印刷データ生成部314、印刷制御部315等を備えている。これら表示制御部311、撮影制御部312、爪情報取得部313、印刷データ生成部314、印刷制御部315等としての機能は、制御部31のCPUと記憶部32のROMに記憶されたプログラムとの協働によって実現される。
【0028】
表示制御部311は、表示部22を制御して表示部22に各種の表示画面を表示させるものである。
例えば、表示制御部311は、爪Tに印刷したいネイルデザインを選択するようユーザに促すデザイン選択画面を表示部22に表示させる。デザイン選択画面にネイルデザインを表示させる場合、ネイルデザインは記憶部32に記憶されているものでもよいし、例えば外部の端末装置やクラウドコンピューティングサービスを提供するサーバ装置等から取得されるものであってもよい。表示制御部311は、デザイン選択画面においてネイルデザインを順次又は一覧に表示部22に表示させることが好ましい。
さらに、表示制御部311は、爪Tの画像に、ユーザが選択したネイルデザインを重畳した画像を表示部22に表示させて、実際の印刷開始前にユーザが仕上がりイメージを確認できるようにし、気に入らない場合にはネイルデザインを選び直すことができるようにしてもよい。
その他、表示制御部311は、ユーザに対する各種メッセージや各種指示等を表示部22に表示させてもよい。
【0029】
撮影制御部312は、撮影部50の撮像装置51及び照明装置52を制御して撮像装置51により、指置部6に載置された印刷指Uを撮影させ、爪Tの画像を含む爪画像を取得させるものである。
撮影部50により取得された爪画像のデータは記憶部32に記憶されてもよい。
【0030】
また、爪情報取得部313は、印刷指Uの爪Tの領域(輪郭形状)やこれに含まれる印刷領域を特定するための情報に基づいて爪Tの印刷領域を特定する。
本実施形態において「印刷領域を特定するための情報」は、撮影部50によって取得された爪画像である。爪情報取得部313は爪画像等を解析することにより、爪Tの領域(輪郭形状)を画する輪郭の座標や印刷領域を画する輪郭の座標を取得する爪輪郭取得部として機能する。
なお、第1の爪(例えば1本目に印刷される印刷指Uの爪T)の次に印刷される印刷指Uの爪T(第2の爪)の爪画像は、第1の爪について印刷終了後、第2の爪の印刷領域への印刷を開始する前に取得されることが好ましい。これにより、次に印刷が行われる爪Tに対応する印刷指U以外の印刷指Uは指置部6内で動いてしまっても、爪Tの輪郭形状の取得やその後の印刷に影響しない。
【0031】
また、本実施形態では、爪情報取得部313は、爪Tの印刷領域を画する座標のうち、爪先側端部のY軸方向(爪Tの長さ方向)の位置である座標Na(図3参照)及び爪Tの付根側端部のY軸方向(爪Tの長さ方向)の位置である座標Nb(図3参照)を取得する座標取得部としても機能する。
爪Tの輪郭形状等から各印刷指Uの爪T(第2の爪等)について、印刷領域の爪先側端部及び付根側端部が特定される。
【0032】
爪情報取得部313が印刷領域を検出する具体的な手法は特に限定されないが、例えば、爪T及び指(印刷指U)と異なる色の下地を塗布した爪Tを撮影して得られた爪画像を解析して下地が塗布されている領域を検出し、印刷領域として設定する。
すなわち、爪Tは、何も塗られていない状態では指等、周囲の皮膚の色と区別がつきづらい。このため、本実施形態では爪Tの表面に予め白色等の下地や白色インクを塗布しておき、爪情報取得部313は、爪画像について輝度や明度、色合い等を解析することにより、下地等の塗られている部分とそれ以外の部分とを区別して認識する。そして、爪情報取得部313は、下地等が塗られている領域を印刷領域(すなわち、印刷すべき範囲)として検出する。
【0033】
図3に、複数の指が指置部6に配置された場合における各指(印刷指Ua~Ud)の爪Tの印刷領域(図示例では爪Tの領域と一致)の輪郭をXY座標上に配置した場合の、各印刷領域の爪先側端部の座標Naと爪の付根側端部の座標Nbとを例示する。
図3及び後述する図5以下の印刷指Uの配置例では、指置部6に左手の小指から人差し指までの4指又は親指も含めた5指が配置された場合を示している。
すなわち、図3等に示す例において、一番左側に配置された印刷指Uaは左手の小指であり、その爪Tの印刷領域の爪先側端部のY軸方向の位置を座標Na1とし、爪Tの付根側端部のY軸方向の位置を座標Nb1とする。またその右側に配置された印刷指Ubは左手の薬指であり、その爪Tの印刷領域の爪先側端部のY軸方向の位置を座標Na2とし、爪Tの付根側端部のY軸方向の位置を座標Nb2とする。さらにその右側に配置された印刷指Ucは左手の中指であり、その爪Tの印刷領域の爪先側端部のY軸方向の位置を座標Na3とし、爪Tの付根側端部のY軸方向の位置を座標Nb3とする。また、一番右側に配置された印刷指Udは人差し指であり、その爪Tの印刷領域の爪先側端部のY軸方向の位置を座標Na4、爪Tの付根側端部のY軸方向の位置を座標Nb4とする。
【0034】
なお、指置部6に配置される指の種類や本数等は図示例に限定されない。
また、前述のように図3等では、爪Tの表面全体にネイルプリントを行う場合(「印刷領域」と爪Tの輪郭とが一致する場合)を例示しているため、印刷領域の爪先側端部及び爪Tの付根側端部は爪T自体の爪先側端部及び爪Tの付根側端部と一致している。これに対して、爪Tの一部のみが印刷領域となる場合(例えば爪先のみに印刷が施されるフレンチネイルの場合)には、爪TのY軸方向の中間付近等に印刷領域における、爪Tの付根側端部が位置する場合もある。この場合にも以下の実施形態と同様の手法により印刷処理を行うことができる。
また、爪情報取得部313が印刷指Uの爪Tについて印刷領域を特定するための情報は、爪画像に限定されない。例えば爪Tの配置されている領域を検出するセンサ等を設けた場合には、当該センサによる検出情報等であってもよい。
【0035】
また、爪情報取得部313は、撮像装置51によって撮影された印刷指Uの爪画像に基づいて、印刷指Uの爪Tについての各種爪情報を検出する。
ここで、爪情報とは、例えば、爪Tの輪郭(爪形状、爪Tの水平位置のXY座標等)、爪Tの表面の、XY平面に対する傾斜角度(爪Tの傾斜角度、爪曲率)等である。なお、撮像装置51によって撮影された画像等から爪Tの高さ(爪Tの垂直方向の位置)を取得できる場合には、爪Tの高さも爪情報に含まれる。
爪情報取得部313によって取得された印刷領域を画する輪郭の座標、爪Tの輪郭の座標や曲率等の情報は、記憶部32の爪情報記憶領域322に記憶される。
【0036】
印刷データ生成部314は、爪情報取得部313によって特定された爪Tの領域や印刷領域(各領域の輪郭を画する座標)に対応して印刷データを生成する。
具体的には、印刷データ生成部314は、爪情報取得部313により印刷領域(爪Tの領域のうち印刷が予定される領域)が設定(特定)されると、当該印刷領域に合わせてネイルデザインデータ(元データ)を切り出し、適宜形状やサイズ等を調整して合わせ込み、印刷データを生成する。
また、爪情報取得部313によって、爪Tの曲率等の爪情報が検出された場合には、印刷データ生成部314は、これら爪情報も加味して、曲面補正等適宜必要な補正等を行い、ネイルデザインデータ(元データ)から印刷部40が印刷領域に印刷を行うための印刷データを生成する。
【0037】
印刷制御部315は、印刷部40のヘッド移動機構49(ヘッド移動機構49を構成するX方向移動モータ46及びY方向移動モータ48等)、印刷ヘッド41等を制御する制御部である。
印刷制御部315は、印刷データ生成部314によって生成された印刷データに基づいて爪Tの「印刷領域」にネイルデザインを印刷するように印刷部40の各部を制御する。
【0038】
また本実施形態では、印刷制御部315が各印刷指Uの印刷領域についてどこから印刷を開始するか、その印刷開始位置(図6等において印刷開始位置Spとする。)を設定するようになっている。
すなわち、印刷制御部315は、印刷対象である第1の爪(指置部6に配置された印刷指Uのうち、1本目に印刷される印刷指Uの爪T、例えば図6における印刷指Uaの爪T)における印刷領域の印刷開始位置Spから主走査方向に移動しながら印刷を行うように印刷ヘッド41及びヘッド移動機構49を制御し、第1の爪について印刷終了後に、次の印刷対象である第2の爪(指置部6に配置された印刷指Uのうち、次に印刷される印刷指Uの爪T、例えば図6における印刷指Ubの爪T)の印刷領域の爪先側端部及び付根側端部のうち、第1の爪の印刷領域の印刷終了位置(図6等において印刷終了位置Epとする。)に近い側の端部に設定された印刷開始位置Spから、第2の爪における印刷領域への印刷を開始させる。
【0039】
例えば図3に示すように、印刷領域の爪先側の端部を爪先側端部の座標Na(爪の長さ方向であるY軸方向の位置を示す座標Na1~Na4)とし、爪Tの付根側の端部を付根側端部の座標Nb(爪の長さ方向であるY軸方向の位置を示す座標Nb1~Nb4)としたとき、印刷制御部315は、爪先側端部の座標Na(座標Na1~Na4)及び付根側端部Nb(座標Nb1~Nb4)の座標と、第1の爪の印刷領域の印刷終了位置Epの座標と、を比較する座標比較部として機能する。さらに印刷制御部315は、両者の比較結果に基づいて、次に印刷する印刷指Uの爪T(第2の爪)の印刷領域の印刷開始位置Spを、爪先側端部(座標Na1~Na4)、付根側端部(座標Nb1~Nb4)のいずれに設定するかを判断・決定する。
なお、印刷制御部315による具体的な印刷開始位置Spの設定については後述する。
【0040】
次に、図4から図13等を参照しつつ、本実施形態のネイルプリント装置1の印刷方法について説明する。
図4は、本実施形態における印刷処理を示すフローチャートである。
【0041】
本実施形態のネイルプリント装置1の電源がONとなると、例えば表示部22にネイルデザインを選択するよう指示するメッセージ等が表示される。ユーザは、操作部21やタッチパネル等を操作することで爪Tに印刷するネイルデザインを選択する。
これにより、操作信号が制御装置30に送られ、図4に示すように、所望のネイルデザインが爪Tに印刷するネイルデザインとして選択される(ステップS1)。
【0042】
ユーザによってネイルデザインが選択されると、制御部31(表示制御部311)は、印刷したい爪Tに下地(又は白色が含まれる場合には白色インク)を塗布した上で、当該爪T(及びその印刷指U)をネイルプリント装置1の指置部6内に挿入するよう指示する指示画面を表示部22に表示させてユーザに印刷指Uをセットするように促す。
印刷指Uが指置部6にセットされると、制御部31は、1本目に印刷を行う印刷指U(例えば図3等において印刷指Uaである小指)の爪Tを第1の爪として、当該第1の爪を含む印刷指Uaを撮影部50により撮影させ、第1の爪(小指の爪T)の爪画像を取得する(ステップS2)。
【0043】
爪画像が取得されると、爪情報取得部313は当該爪画像について画像解析を行い、第1の爪の印刷領域を特定する。具体的には爪情報取得部313は、印刷領域を画する輪郭のXY座標を取得する(ステップS3)。
さらに爪情報取得部313は、第1の爪の印刷領域の爪先側端部のY座標Na1及び付根側端部のY座標Nb1を取得する(ステップS4)。
また、爪情報取得部313は、当該爪画像に基づいて爪Tの曲率等その他の爪情報を取得する。
【0044】
爪情報取得部313によって取得された印刷領域の輪郭のXY座標や爪先側端部のY座標Na1、付根側端部のY座標Nb1、その他各種の情報は爪情報記憶領域322に記憶される。爪情報取得部313によって各種の爪情報が取得されると、印刷データ生成部314がネイルデザインを印刷領域に合わせ込み、適宜補正等を行って印刷データを生成する。
印刷制御部315は、印刷対象である第1の爪について印刷領域の輪郭のXY座標が取得されると、第1の爪(図示例では印刷指Uaである左手の小指の爪T)の爪先側端部Na1又は付根側端部Nb1に印刷開始位置Spを設定し、この印刷開始位置Spから主走査方向(図6等ではX軸方向)に移動しながら、印刷データにしたがって印刷領域に印刷を行うように印刷ヘッド41及びヘッド移動機構49を制御する。これにより、第1の爪(左手の小指の爪T)の印刷領域(図6等では爪Tの全面)について印刷が行われる(ステップS5)。
例えば図6では、爪先側端部Na1に印刷開始位置Spが設定され、図6において白抜き矢印で示すように、Y軸方向の上から下に向かって(すなわち、爪先側から付根側に向かう方向で)副走査が行われる場合を例示している。
【0045】
なお、第1の爪について印刷開始位置Spを爪先側端部(Y軸方向の座標Na1)、付根側端部(Y軸方向の座標Nb1)のうちのいずれに設定するかは特に限定されない。
例えば、第1の爪に引き続いて印刷が予定される爪Tの印刷領域(例えば薬指や中指の爪T等の印刷領域)の位置等を、第1の爪についての印刷時点で印刷制御部315が把握できる場合には、指置部6にセットされている他の印刷指Uの配置等を考慮して、より円滑・迅速な印刷動作を行うことのできる側に印刷開始位置Spを設定することが好ましい。
【0046】
第1の爪(左手の小指の爪T)の印刷領域について印刷が終了すると、印刷制御部315は、次の印刷対象である印刷指Uの爪T(これを「第2の爪」とする)における印刷領域の爪先側端部の座標Na2及び爪Tの付根側端部の座標Nb2(図3参照)のうち第1の爪の印刷終了位置Ep(図6等参照)に近い側に、第2の爪の印刷領域についての印刷開始位置Spを設定する。そして、当該印刷開始位置Spから印刷を行うように印刷ヘッド41及びヘッド移動機構49を制御する。
【0047】
具体的には、制御部31は、2本目に印刷を行う印刷指U(例えばここに示す例では薬指)の爪Tを第2の爪として、当該第2の爪を含む印刷指Ubを撮影部50により撮影させ、第2の爪(薬指の爪T)の爪画像を取得する(ステップS6)。
爪画像が取得されると、爪情報取得部313が当該爪画像について画像解析を行い、第2の爪の印刷領域を特定する。具体的には爪情報取得部313は、印刷領域を画する輪郭のXY座標を取得する(ステップS7)。
さらに爪情報取得部313は、第2の爪の印刷領域の輪郭のうち、爪先側端部のY座標Na2及び付根側端部のY座標Nb2(図3参照)を取得する(ステップS8)。
【0048】
印刷制御部315は、次の印刷対象である第2の爪(左手の薬指Ubの爪T)における印刷領域の爪先側端部Na2及び爪の付根側端部Nb2(図3参照)のうち第1の爪(左手の小指の爪T)についての印刷終了位置Epに近い側を第2の爪の印刷開始位置Spとして印刷を行うように印刷ヘッド41及びヘッド移動機構49を制御する。
【0049】
ここで、本実施形態における印刷制御部315による第2の爪の印刷開始位置Spの設定の仕方について詳細に説明する。
【0050】
爪Tの印刷領域に印刷を施す場合には、例えば図5図6等に示すように、爪Tの印刷領域の爪先側端部の座標Na又は爪の付根側端部の座標Nbのいずれかの側に印刷開始位置Spを設定し、横向き矢印で示す主走査方向(X軸方向)に移動しながら印刷部40による印刷動作が行われ、印刷領域の主走査方向端部まで行くと、縦向き矢印で示す副走査方向(Y軸方向)に1ライン移動し、再び主走査方向に沿って印刷領域の逆側に戻るという往復移動を繰り返し、例えば2往復又は3往復で1つの爪Tの印刷領域について印刷動作を完了する。そして、次の印刷領域となる爪Tに移動して同様の動作を繰り返す。
このとき、従来は印刷開始位置Spが常にY軸方向の一方側(すなわち、爪先側端部の座標Na又は付根側端部の座標Nbのいずれか)に固定されていた。このため、例えば図5に示すように印刷開始位置Spが爪先側端部の座標Naに設定されている場合には、1本目の印刷指U(例えば図5における印刷指Ua)について印刷領域の印刷動作を完了した時点で印刷ヘッド41が爪Tの付根側端部の座標Nbに移動している場合でも、次の印刷指U(例えば図5における印刷指Ub)の印刷領域への印刷を開始する際には、印刷ヘッド41を爪先側端部の印刷開始位置Spに移動させるというY軸方向(副走査方向)への移動が行われ、各印刷指Uにおける副走査の際の移動方向はすべてY軸方向に沿って下向きとなっていた。
【0051】
しかし、図5に示すように印刷領域のY軸方向(副走査方向)における一端部(例えば爪先側端部Na1)から他端部(例えば爪Tの付根側端部Nb1)に移動しながら印刷を行っている場合、一般的には、印刷終了位置Epは、次に印刷する2本目の印刷指U(例えば図5における印刷指Ub)の爪Tの爪先側端部の座標Na2よりも付根側端部の座標Nb2により近い位置にあることが多い。逆に爪Tの付根側端部Nb1に印刷開始位置Spが設定されて付根側端部の座標Nb1から爪先側端部の座標Na1に向かって移動しながら印刷が行われた場合には、印刷終了位置Epは、次に印刷する2本目の印刷指U(例えば図5における印刷指Ub)の爪Tの付根側端部の座標Nb2よりも爪先側端部の座標Na2により近い位置にあることが多い。
このため、複数の印刷指Uの爪Tに順次印刷を行う場合には、図5に示すように印刷開始位置SpをY軸方向(副走査方向)における一方側の端部に固定するよりも、図6に示すように、Y軸方向(副走査方向)の上下(図6等において上下)交互に印刷開始位置Spを設定し、図6に白抜き矢印で示すように、Y軸方向に沿って互い違いに印刷した方が次に印刷する指の印刷開始位置Spに移動する移動距離が短くなる。
【0052】
ただ、人の手の形、各指の長さ等には個性があり、必ずしも一定のルールに収まらない。
例えば、図7に示す例では、4本の印刷指Uが指置部6にセットされている場合に、一番右側に配置されている印刷指Ud(例えば人差し指)のみがY軸方向において極端に低い位置に配置されている。
この場合には図6の場合と異なり、すべての印刷指UについてY軸方向(副走査方向)の上下(図6等において上下)交互に印刷開始位置Spを設定するよりも、図7に示すように、3本目の印刷指Uc(例えば中指)から4本目の印刷指Ud(例えば人差し指)に移動する場合には、どちらも爪先側端部の座標Naに印刷開始位置Spを設定し、印刷指Uc(例えば中指)及び印刷指Ud(例えば人差し指)をともに上から下(すなわち爪先側から付根側)に向かって移動させながら印刷を行う方が無駄な移動時間をなくして効率よく印刷処理を行うことができる。
【0053】
そこで本実施形態では、印刷制御部315は、指置部6に載置されている印刷指Uの爪Tのうちのある印刷指Uの爪T(これを「第1の爪」とする)における印刷領域の爪先側端部Na1及び爪Tの付根側端部の座標Nb1(図3等参照)に設定された印刷開始位置Sp(図6等参照)から主走査方向Xに移動しながら印刷領域に印刷を行うように印刷ヘッド41及びヘッド移動機構49を制御し、当該「第1の爪」の印刷終了後に、次の印刷対象である印刷指Uの爪T(これを「第2の爪」とする)における印刷領域の爪先側端部の座標Na2及び爪Tの付根側端部の座標Nb2(図3等参照)のうち「第1の爪」の印刷終了位置Ep(印刷終了位置Epが位置する爪先側端部の座標Na1又は爪Tの付根側端部の座標Nb1、図6等参照)に近い側を「第2の爪」の印刷開始位置Spとして印刷を行うように印刷ヘッド41及びヘッド移動機構49を制御する。
【0054】
具体的には、印刷制御部315は、「第1の爪」の印刷が終了すると、「第1の爪」についての印刷時の副走査方向がY軸方向下向き(図6等における白抜き矢印;下向き)であるか否かを判断する(ステップS9)。
副走査方向が下向きである場合(ステップS9;YES)には、印刷制御部315は、「第1の爪」についての印刷終了位置Epが位置している爪Tの付根側端部の座標Nb1と「第2の爪」における印刷領域の爪先側端部の座標Na2との距離(間隔|Nb1-Na2|)が、付根側端部の座標Nb1と付根側端部の座標Nb2との距離(間隔|Nb1-Nb2|)よりも大きいか否かを判断する(ステップS10)。
【0055】
「第2の爪」における付根側端部の座標Nb2の方が「第1の爪」の印刷終了位置Epが位置する爪Tの付根側端部の座標Nb1に近い場合(すなわち、間隔|Nb1-Na2|が間隔|Nb1-Nb2|よりも大きい、ステップS10;YES)には、印刷制御部315は、「第2の爪」における印刷領域の印刷開始位置Spを付根側端部(座標Nb2)に設定し、印刷時の副走査方向Yを下から上への上向きとする(ステップS11)。
他方、「第2の爪」における爪先側端部の座標Na2の方が「第1の爪」の印刷終了位置Epが位置する爪Tの付根側端部の座標Nb1に近い場合(ステップS10;NO)には、印刷制御部315は、「第2の爪」における印刷領域の印刷開始位置Spを爪先側端部(座標Na2)に設定し、印刷時の副走査方向Yを上から下への下向きとする(ステップS12)。
【0056】
また、副走査方向が上向きである場合(ステップS9;NO)には、「第1の爪」についての印刷終了位置Epが位置している爪先側端部の座標Na1と「第2の爪」における印刷領域の爪先側端部の座標Na2との距離(間隔|Na1-Na2|)が、爪先側端部の座標Na1と付根側端部の座標Nb2との距離(間隔|Na1-Nb2|)よりも大きいか否かを判断する(ステップS13)。
【0057】
「第2の爪」における付根側端部の座標Nb2の方が「第1の爪」の印刷終了位置Epが位置する爪先側端部の座標Na1に近い場合(すなわち、間隔|Na1-Na2|が間隔|Na1-Nb2|よりも大きい、ステップS13;YES)には、印刷制御部315は、「第2の爪」における印刷領域の印刷開始位置Spを付根側端部(座標Nb2)に設定し、印刷時の副走査方向Yを下から上への上向きとする(ステップS14)。
他方、「第2の爪」における爪先側端部の座標Na2の方が「第1の爪」の印刷終了位置Epが位置する爪Tの付根側端部の座標Nb1に近い場合(ステップS13;NO)には、印刷制御部315は、「第2の爪」における印刷領域の印刷開始位置Spを爪先側端部(座標Na2)に設定し、印刷時の副走査方向Yを上から下への下向きとする(ステップS15)。
【0058】
図6から図14を参照しつつ、印刷開始位置Spの仕方について具体的に説明する。なお、爪先側端部のY軸方向の座標Na及び付根側端部のY軸方向の座標Nbの記載は、図3に例示したものを用いている。
【0059】
例えば図6では、1本目の印刷指Uaである小指の爪T(第1の爪)の印刷開始位置Spを爪先側端部(Y軸方向の座標Na1)に設定し、爪Tの表面を3回往復走査(スキャン)することにより、印刷領域の印刷が完了する例を示している。この場合、小指の爪T(第1の爪)の印刷領域への印刷は、爪先側端部に設定された印刷開始位置Spから付根側端部に向かって(すなわち、副走査方向は白抜き矢印に示すように下向きに、爪Tの爪先側から付根側に向かって)行われ、印刷終了位置EpのY軸方向の位置は、爪Tの付根側端部(Y軸方向の座標Nb1)となる。
そこで、印刷制御部315は、小指の爪T(第1の爪)の印刷終了位置Epのある付根側端部(Y軸方向の座標Nb1)と2本目の印刷指Ubである薬指の爪T(第2の爪)の爪先側端部(Y軸方向の座標Na2)との距離と、座標Nb1と薬指の爪Tの付根側端部(Y軸方向の座標Nb2)との距離とを比較する。図6に示すように、この場合には、座標Nb1には座標Nb2の方が近いため、印刷制御部315は、薬指の爪T(第2の爪)の印刷開始位置Spを薬指の爪Tの付根側端部に設定する。
そして、この場合に、薬指の爪T(第2の爪)の印刷領域への印刷は、付根側端部に設定された印刷開始位置Spから爪先側端部に向かって(すなわち、副走査方向は白抜き矢印に示すように上向きに)行われ、印刷終了位置Epは、爪Tの爪先側端部(Y軸方向の座標Na2)となる。
【0060】
そこでさらに、印刷制御部315は、薬指の爪T(第2の爪)の印刷終了位置Epのある爪先側端部(Y軸方向の座標Na2)と3本目の印刷指Ucである中指の爪T(次の第2の爪)の爪先側端部(Y軸方向の座標Na3)との距離(間隔)と、座標Na2と中指の爪Tの付根側端部(Y軸方向の座標Nb3)との距離(間隔)とを比較する。図6に示すように、この場合には、座標Na2には座標Na3の方が近いため、印刷制御部315は、中指の爪T(次の第2の爪)の印刷開始位置Spを中指の爪Tの爪先側端部に設定する。
そして、この場合に、中指の爪T(次の第2の爪)の印刷領域への印刷は、爪先側端部に設定された印刷開始位置Spから付根側端部に向かって(すなわち、副走査方向は白抜き矢印に示すように下向きに)行われ、印刷終了位置Epは、爪Tの付根側端部(Y軸方向の座標Nb3)となる。
同様に4本目の印刷指Udである人差し指の爪T、5本目の印刷指Ueである親指の爪Tについても「次の第2の爪」として印刷制御部315が同様の判断処理を繰り返し、すべての爪Tの印刷領域に印刷を行う。
【0061】
図6に示す例では、各印刷指Uの副走査方向(Y軸方向)の移動が「下上下上下」と上下交互となっている。
人の一般的な指では、爪Tに対して、上下方向(図6等における上下方向、爪Tの延在方向)の一端側から他端側に向かってに印刷する場合、印刷終了位置Epと同側の端部の方が、次の印刷領域に移動するための副走査方向(Y軸方向)の移動距離が少ない。
このため、効率よく印刷を行う上で印刷開始位置Spは、上下交互となる位置に設定されることが好ましいことが多く、1本目の印刷指Uaの副走査方向の印刷開始位置Spが決まるとこれに基づいて上下交互となるように印刷開始位置Spを設定するようにデフォルトで設定されていてもよい。このようにした場合、印刷制御部315が各指ごとに印刷開始位置Spを設定しなくても、適切な動線で印刷動作を行うことができる。
すなわち、この場合、1本目の印刷指Uaの副走査方向(Y軸方向)の印刷開始位置Spが爪先側端部に設定されたときには、図6の場合と同様に各印刷指Uにおける副走査の際の移動方向は「下上下上下」となり、これとは逆に1本目の印刷指Uaの副走査方向(Y軸方向)の印刷開始位置Spが付根側端部に設定されたときには、各印刷指Uの副走査の移動方向は「上下上下上」となる。
【0062】
次に図7に示す例では、図6と異なり、4本目の印刷指Ud(人差し指)が極端に短い場合を示している。この場合には、3本目の印刷指Uc(中指)の爪Tの印刷領域への印刷が付根側端部で終了しているが、次の4本目の印刷指Ud(人差し指)に移動する際に、同じ付根側端部に移動するよりも爪先側端部に移動した方が移動距離が短い。
このため、印刷制御部315はそれぞれ移動距離が短いと判断する側に印刷開始位置Spを設定し、これによりこの場合における各印刷指Uの副走査の移動方向は白抜き矢印に示すように「下上下下」となる。
【0063】
また図8に示す例は、図7の例にさらに親指が5本目の印刷指Ueとして想定された場合である。この場合、4本目の印刷指Ud(人差し指)と5本目の印刷指Ue(親指)とが同程度の短さである。このため、4本目の印刷指Udの爪Tへの印刷終了後、5本目の印刷指Ueの印刷領域に移動する際には、その印刷終了位置Epと同側の端部(図8では付根側端部)に移動した方が、副走査方向(Y軸方向)の移動距離が短い。
このため、印刷制御部315はそれぞれ移動距離が短いと判断する側に印刷開始位置Spを設定し、これによりこの場合における各印刷指Uの副走査の移動方向は白抜き矢印に示すように「下上下下上」となる。
【0064】
さらに図9に示す例は、1本目の印刷指Uaの副走査方向(Y軸方向)の印刷開始位置Spが付根側端部に設定されたときの例である。
1本目の印刷指Uaの印刷領域に印刷する際には白抜き矢印に示すように下から上に移動する。またこの例では、2本目の印刷指Ubが長く、爪Tの位置が副走査方向(Y軸方向)の上側にある。このため、1本目の印刷指Uaの印刷領域の印刷終了位置Epから2本目の印刷指Ubの印刷領域に移動するには、爪先側端部に移動するよりも付根側端部に移動した方が移動距離が短い。
また、図9の例では4本目の印刷指Udが3本目の印刷指Ucと比べてかなり短い。このため、3本目の印刷指Ucの印刷領域の印刷終了位置Epは付根側端部に来るが、3本目の印刷指Ucの印刷終了位置Epから4本目の印刷指Udの印刷領域に移動する際には、付根側端部に移動するよりも爪先側端部に移動した方が移動距離が短い。
このため、印刷制御部315はそれぞれ移動距離が短いと判断する側に印刷開始位置Spを設定し、これにより図9の場合における各印刷指Uの副走査の移動方向は白抜き矢印に示すように「上上下下」となる。
【0065】
さらに図10に示す例は、図9に示す例と違い、3本目の印刷指Ucと4本目の印刷指Udとがほぼ同じ長さである。このため、3本目の印刷指Ucの印刷終了位置Epは付根側端部に来ている場合に、3本目の印刷指Ucの印刷終了位置Epから4本目の印刷指Udの印刷領域に移動する際には、爪先側端部に移動するよりも付根側端部に移動した方が移動距離が短い。
このため、印刷制御部315はそれぞれ移動距離が短いと判断する側に印刷開始位置Spを設定し、これにより図10の場合における各印刷指Uの副走査の移動方向は図9の場合と異なり、白抜き矢印に示すように「上上下上」となる。
【0066】
なお、ユーザによって選択されたネイルデザインが爪全体に施すものである場合には、図6等に示すように、印刷領域の輪郭は爪Tの領域の輪郭と一致する。このため、爪先側端部のY座標Naは、爪Tの領域の爪先側端部の座標となり、付根側端部のY座標Nbは、爪Tの領域の根本側端部の座標となる。
これに対してユーザによって選択されたネイルデザインがフレンチネイル等である場合には、印刷領域は爪Tの領域の一部となる。
【0067】
例えば図11は、爪先部分のみに印刷が施される場合の例を示したものである。図11において網掛けで示した部分が印刷の施される印刷領域である。
このように印刷領域場が爪Tの輪郭と一致しない場合にも、印刷領域における爪先側端部のY座標Naは、印刷領域内における、より爪Tの先端に近い側の端部の座標であり、付根側端部のY座標Nbは、印刷領域内における、より爪Tの付根側に近い側の端部の座標となる。
このため、この場合も、印刷開始位置Spを爪先側端部、付根側端部のいずれに設定するかの判断は、図3図6等におけるのと同様の処理となる。
【0068】
すなわち、1本目の印刷指Uaの副走査方向(Y軸方向)の印刷開始位置Spが爪先側端部に設定され、印刷終了位置Epが付根側端部にあり、2本目の印刷指Ubの長さが印刷指Uaと同程度である場合、2本目の印刷指Ubの印刷領域における印刷開始位置Spは、印刷終了位置Epと同側の端部である付根側端部に設定される。
なお、図11に示す例では、3本目の印刷指Ucの印刷領域の印刷終了位置Epは付根側端部に来るが、4本目の印刷指Udが3本目の印刷指Ucよりも短く、3本目の印刷指Ucの印刷終了位置Epから4本目の印刷指Udの印刷領域に移動する際には、付根側端部に移動するよりも爪先側端部に移動した方が移動距離が短い。
このため、印刷制御部315はそれぞれ移動距離が短いと判断する側に印刷開始位置Spを設定し、これにより図11の場合における各印刷指Uの副走査の移動方向は、白抜き矢印に示すように「下上下下」となる。このように、印刷指Uの全指の爪を考慮して全体として最短の移動経路となるように各指の印刷開始位置が設定されても良い。
【0069】
また、ここまでは、印刷領域に印刷を行う際のライン方向への走査方向(すなわち主走査方向)が、爪幅方向(X軸方向)であり、次のラインへの移動方向(すなわち副走査方向)が爪Tの延在方向(Y軸方向)である場合を例示したが、主走査方向、副走査方向が逆である場合にも同様に各印刷領域についての印刷開始位置Spを設定することができる。
図12は、印刷ヘッド41が印刷領域に印刷を行う際の主走査方向が爪の延在方向(Y軸方向)であり、副走査方向が爪幅方向(X軸方向)である場合の例である。図12では主走査方向を実線、副走査方向を点線で示している。
【0070】
主走査方向が爪の延在方向(Y軸方向)である場合には、副走査の移動方向は必ず未印刷の隣の印刷指Uに向かう一定の方向(印刷指Uの印刷順序にしたがった指の配列方向)であり、図12では白抜き矢印で示すように、左から右である。
しかし、印刷指Uの長さや爪Tの大きさ等により、印刷終了位置Epから次の印刷指Uの印刷領域に移動する際には、爪先側端部の方が移動距離が短い場合と付根側端部の方が移動距離が短い場合とがある。
例えば、図12において、1本目の印刷指Uaの印刷領域の印刷終了位置Epが爪先側端部にある場合に当該印刷終了位置Epから2本目の印刷指Ubの印刷領域に移動する際には、付根側端部に移動するよりも爪先側端部に移動した方が移動距離が短い。このため印刷制御部315は、2本目の印刷指Ubの印刷領域の印刷開始位置Spを爪先側端部に設定する。
一方、3本目の印刷指Ucは2本目の印刷指Ubよりもかなり長さが長く、2本目の印刷指Ubの印刷領域の印刷終了位置Epから3本目の印刷指Ucの印刷領域に移動する際には、爪先側端部に移動するよりも付根側端部に移動した方が移動距離が短い。また、4本目の印刷指Udは3本目の印刷指Ucよりもかなり長さが短く、3本目の印刷指Ucの印刷領域の印刷終了位置Epから4本目の印刷指Udの印刷領域に移動する際には、爪先側端部に移動するよりも付根側端部に移動した方が移動距離が短い。
そして印刷制御部315は、それぞれ移動距離が短いと判断する側に印刷開始位置Spを設定して、各印刷領域への印刷を行わせるようになっている。
このため、爪先側端部及び付根側端部のうち、前の印刷指Uの印刷終了位置Epから近い側に印刷開始位置Spを設定する点で図3図6等におけるのと同様の処理となる。
【0071】
さらに、印刷ヘッド41の大きさや撮像装置51の画角等によっては、ある印刷指Uの印刷領域について印刷が終了した後、次の印刷指Uの爪画像を撮影するためには印刷ヘッド41を一旦印刷終了位置Epから移動させなければならない場合もある。
この場合、図13に示すように、印刷ヘッド41をX軸方向に移動させれば、印刷時には再びX軸方向に移動して印刷開始位置Spに戻ればよく、Y軸方向において設定された印刷開始位置Spに影響しない。
【0072】
なお、図6及び図8では指置部6に5指を配置する場合に、小指から親指までの片手の5指(印刷指Ua~Ue)を配置する場合を例示したが、指置部6に配置される印刷指Uは、片手の指に限定されない。
人の手の構造上、親指を同じ手の他の指と並べて載置することは難しく、載置できたとしても、親指の爪Tを印刷ヘッド41のインク吐出面に適切に対向させることは難しい。また、親指は他の4指と長さが大きく異なることが多く、印刷部40による印刷可能範囲内、撮影部50による撮影可能範囲内(例えば指置部6において爪Tを露出させる開口部分の範囲内)に収まりきらないおそれもある。
【0073】
このため例えば、図13に示すように、左手の小指から人差し指までの4指の隣に右手の親指(図13において印刷指Uf)を配置するようにしてもよい。
印刷ヘッド41の移動をできるだけ少なくして迅速かつ効率よく印刷を行うためには、副走査方向(Y軸方向)における爪Tの位置ができるだけ揃っていることが好ましい。
このため、片手(例えば左手)の親指以外の4指(図13において印刷指Ua~Ue)と逆側の手(例えば右手)の親指(図13において印刷指Uf)を指置部6に配置する構成とする場合には、指先を配置すべき目標位置に爪Tを乗せる台を設ける等、親指の指先をできるだけ小指から人差し指の指先と近い位置に配置するようにユーザに促す構成とすることが好ましい。なお、この場合爪Tを乗せる台は、親指の配置に対応する位置のみに設けられてもよいし、他の4指の配置に対応する位置にも設けられてもよい。
【0074】
なお、ここまで「第2の爪」における印刷領域の爪先側端部、付根側端部のうち、印刷終了位置Epとの距離の近い側に、「第2の爪」における印刷領域の印刷開始位置Spを設定する場合について説明したが、印刷終了位置Ep(印刷終了位置Epの位置する爪先側端部又は付根側端部の座標Na,Nb、例えば座標Na1又はNb1)から爪先側端部の座標Na2までの距離と、座標Na1又はNb1から付根側端部の座標Nb2までの距離とが等しい又は同等である場合にどのように扱うかは適宜設定される。
例えば、このような場合には、爪先側端部に印刷開始位置Spを設定する又は付根側端部に印刷開始位置Spを設定する、と予めデフォルトで設定しておいてもよい。この場合、このデフォルトの設定をユーザが変更できるようにしてもよい。
【0075】
また例えば、印刷制御部315が、「第2の爪」の次に印刷が予定される爪Tの位置等、「第2の爪」における印刷領域以外の要素を、「第2の爪」について印刷開始位置Spを設定する以前に把握することができる場合には、これらの要素を考慮して、印刷ヘッド41の無駄な移動を極力減らしてより効率よく印刷するのに適した側を判断するようにしてもよい。
図14には、3本目の印刷指Ucの印刷終了位置EpのY軸方向の座標Nb3(図3参照)から4本目の印刷指Udの印刷領域の爪先側端部の座標Na4までの距離と印刷終了位置EpのY軸方向の座標Nb3から付根側端部の座標Nb4までの距離とがほぼ等しい場合を例示している。
この場合には、印刷制御部315は、印刷開始位置Spを設定する印刷指U(すなわち4本目の印刷指Ud)の次の5本目の印刷指Ueの印刷領域の位置を把握し、4本目の印刷指Udの印刷領域に印刷開始位置Spを設定するにおいて、4本目の印刷指Udの印刷領域の爪先側端部又は付根側端部のうちいずれに印刷開始位置Spを設定した方が5本目の印刷指Ueの印刷領域に効率よく印刷を行うことができるかを考慮する。
図14に示す場合には、4本目の印刷指Udの印刷領域への印刷において副走査方向が、爪先側から付根側に向かう下方向となった方が5本目の印刷指Ueの印刷領域に移動する際に印刷ヘッド41の移動距離が短くて済む。
このため、印刷制御部315は、印刷指Udの印刷領域について、爪先側端部に印刷開始位置Spを設定する。
【0076】
なお、ここまで、印刷制御部315が次に印刷する印刷領域の爪先側端部又は付根側端部の位置と、このうちどちらがより印刷終了位置Epに近いかを各印刷指Uについて判断する場合を例示したが、印刷開始位置Spを設定する手法はこれに限定されない。
【0077】
例えば、図15に示すようなテーブルを予め記憶部32等に記憶させておき、印刷制御部315がテーブルを参照して、各印刷指Uの印刷領域の印刷開始位置Spを設定してもよい。
テーブルの内容や持ち方は特に限定されない。
図15では、左手の4指(小指から人差し指)を指置部6に配置する場合の、各印刷指Uの長さ(各印刷指Uの配置の特徴)の異なる2つのタイプの例を示している。
例えば、左手タイプ1は、図9に図示したような、中指(印刷指Uc)が最も長く、人差し指(印刷指Ud)が中指(印刷指Uc)よりもかなり短いタイプである場合の副走査方向のパターンである。この場合、小指(印刷指Ua)の印刷開始位置Spが付根側端部に設定された場合には、印刷制御部315はテーブルを参照して、薬指(印刷指Ub)では付根側端部、中指(印刷指Uc)では爪先側端部、人差し指(印刷指Ud)では爪先側端部にそれぞれ印刷開始位置Spを設定して、副走査方向の移動は「上上下下」となる。
【0078】
また例えば、左手タイプ2は、図10に図示したような、中指(印刷指Uc)が最も長く、人差し指(印刷指Ud)が中指(印刷指Uc)と同程度の長さのタイプである場合の副走査方向のパターンである。この場合、小指(印刷指Ua)の印刷開始位置Spが付根側端部に設定された場合には、印刷制御部315はテーブルを参照して、薬指(印刷指Ub)では付根側端部、中指(印刷指Uc)では爪先側端部、人差し指(印刷指Ud)では付根側端部にそれぞれ印刷開始位置Spを設定する。
テーブルは、指置部6に配置される印刷指Uの本数や種類、1本目の印刷指U(本実施形態では小指)において印刷開始位置Spを爪先側端部、付根側端部のうちいずれに設定するか等に応じて複数種類、予め用意されることが好ましい。テーブルに設定される各印刷指Uごとの副走査方向のパターン(すなわち、印刷開始位置Spの設定パターン)は、外部サーバ等により一般的な人の指の配列パターン(例えば中指が最も長く、親指や小指が短い等)を取得して当該配列パターンに基づいて設定されたものでもよい。
【0079】
また、テーブルは、爪情報取得部313による解析結果等に基づいて印刷制御部315において自動的に選択されてもよいし、ユーザが自身が、自らの手のパターンに応じて、対応するものを選択してもよい。
一旦選択、適用されたテーブルは、当該ユーザに適用されるものとして登録され、次回からは自動的に同じテーブルが選択されるようにしてもよい。
なお、爪情報取得部313による解析結果等に基づいて設定されたパターンは当該ユーザと対応付けてテーブルとして記憶・登録されてもよい。この場合、登録済みのユーザが同じ種類・配列(例えば左手の小指から人差し指までの4指等)の印刷指Uに印刷を行う場合には次回からはテーブルを読み出すだけで適切な印刷処理を行うことができるように構成してもよい。
【0080】
「第2の爪」における印刷領域の印刷開始位置Spが設定されると、印刷制御部315は、当該印刷開始位置Spから「第2の爪」における印刷領域について印刷処理を行わせ(ステップS16)、印刷が終了すると、印刷制御部315は、印刷が予定されるすべての印刷指Uの爪Tへの印刷が終了したか否かを判断する(ステップS17)。そして、すべての印刷が終了している場合(ステップS17;YES)には、印刷処理を終了する。
他方、印刷が予定されるすべての印刷指Uの爪Tについて印刷が終了していない場合(ステップS17;NO)には、印刷が終了した「第2の爪」の次に印刷すべき爪Tを新たに「第2の爪」として、ステップS6からステップS17の処理を繰り返す。
【0081】
以上のように、本実施形態によれば、印刷制御部が、印刷対象である第1の爪における印刷領域の印刷開始位置Spから主走査方向に移動しながら印刷を行うように印刷ヘッド41及びヘッド移動機構49を制御し、第1の爪について印刷終了後に、次の印刷対象である第2の爪の印刷領域の爪先側端部及び付根側端部のうち、第1の爪の印刷領域の印刷終了位置Epに近い側の端部に設定された印刷開始位置Spから、第2の爪における印刷領域への印刷を開始させる。
このため、第1の爪における印刷領域の印刷終了後に効率よく次の爪Tの印刷領域に対して印刷を開始することができる。これにより、複数本の指の爪Tに対してネイルプリントを施す場合にも、ユーザの待ち時間をできる限り短くして、迅速な印刷処理を実現することができる。
【0082】
また本実施形態では、第2の爪における印刷領域の印刷開始位置Spは、第2の爪の印刷領域の爪先側端部及び付根側端部のうち、爪Tの長さ方向(図3図6等においてY軸方向)の座標Na,Nbが第1の爪の印刷領域の印刷終了位置Epの爪Tの長さ方向(Y軸方向)の座標Na,Nbと近い側の端部に設定される。
このように、本実施形態では、第1の爪の印刷領域の印刷終了位置EpのY軸方向における位置と次に印刷する爪Tの印刷領域のY軸方向に端部の座標とを比較して移動距離が近い側の端部に印刷開始位置Spを設定する。これにより次に印刷する爪に迅速にアクセスすることができ、複数本の印刷指Uの爪Tの印刷領域について効率よく印刷を完了させることができる。
【0083】
また本実施形態では、爪情報取得部313が、第2の爪の印刷領域の爪先側端部及び付根側端部の、爪Tの長さ方向の座標Na,Nbを取得して、爪先側端部及び前記付根側端部の座標Na2,Nb2と、第1の爪の印刷領域の印刷終了位置Epの座標Na1,Nb1と、を比較する。そして、印刷制御部315がこの比較結果に基づいて、第2の爪の印刷領域の印刷開始位置Spを決定する。
このため、ネイルプリント装置1内で、第2の爪の印刷領域の印刷開始位置Spを決定する処理を行うことができ、例えば各種の端末装置や外部サーバ等の外部装置と連携しなくても、ネイルプリント装置1単体で円滑な印刷動作を行うことができる。
【0084】
また本実施形態では、印刷開始位置Spは、印刷領域の爪先側端部及び付根側端部のいずれかに、印刷指Uの載置順に交互に設定される。
一般的な人の指の配置は、図6に示すように、中指が比較的長く、小指親指が比較的短く、全体に緩やかな弧を描くような配列パターンとなることが多い。このため、爪の長さ方向(Y軸方向)の上下交互に移動することで、ある印刷指Uの爪Tから次の印刷対象である印刷指Uの爪Tに移る際の印刷ヘッド41の副走査方向への移動距離を短くすることが可能である。このような多くの人に当てはまる配列パターンにしたがって印刷開始位置Spを設定することで、多くのケースで最も迅速かつ円滑な印刷処理を行うことが可能である。
そして、このようなパターンをデフォルトとして設定しておくことで、印刷開始位置Spの設定処理を簡易に行うことができる。
【0085】
また本実施形態では、印刷開始位置Spを印刷領域の爪先側端部及び付根側端部のいずれに設定するかが、装置内部に載置された複数の指の組み合わせに応じて予め規定される。
すなわち、このように複数の組み合わせパターンを予めテーブルとして記憶させておくことにより、印刷開始位置Spを設定する際にはいずれのパターンによるかを選択すれば足り、印刷開始位置Spの設定処理を簡易に行うことができる。
なお、複数のパターンには、人の指の配列に関するデータ等に基づいて優先順位が付けられていてもよい。また、指置部6に配置されたユーザの印刷指Uの配置状況を俯瞰的に撮影可能な撮影部(カメラユニット)等を設けて、これによって取得されたユーザの印刷指Uの配列パターンに最も近いものが選択されるようにしてもよい。この場合にはユーザ固有の特徴を反映させたより適切な印刷開始位置Spの設定処理を行うことが可能となる
【0086】
また本実施形態では、印刷開始位置Spを印刷領域の爪先側端部及び付根側端部のいずれに設定するかが、印刷指Uの長さに応じて予め規定される。
印刷指Uの長さが分かれば各印刷指Uの爪Tの印刷領域の爪先側端部及び付根側端部を詳細に取得しなくても、ある程度の爪Tの輪郭形状等を推定でき、印刷開始位置Spを簡易かつ適切に設定することができる。
また、一般的な人の指の長さには、例えば小指がこの程度の長さであれば中指はこの程度の長さである等、指種と長さについてある程度の対応関係が認められる。このため、例えば小指や人差し指等、1本目の印刷指Uの爪について印刷領域の爪先側端部及び付根側端部の座標を検出し、その他の指についてはその長さ等を推定してもよい。このため、印刷指Uの長さと印刷開始位置Spの設定位置について対応付けるテーブル等を用意しておくことで各印刷指Uの印刷開始位置Spを簡易かつ適切に設定することが可能となる。
【0087】
また本実施形態では、爪Tの輪郭形状を取得する爪輪郭取得部としての爪情報取得部313を有し、第2の爪における印刷領域の爪先側端部及び付根側端部は、爪情報取得部313によって取得された爪の輪郭形状から特定される。
このように、ネイルプリント装置1において爪Tの輪郭形状を取得することができるため、外部装置を介さず、簡易に印刷処理を行うことができる。
【0088】
また本実施形態では、爪輪郭取得部としての爪情報取得部313は、爪画像を解析することにより爪Tの輪郭形状を取得する。
このように画像解析を用いることにより、例えばセンサ等を用いる場合と比較して、爪Tの形状を簡易かつ高精度に特定することができる。これにより、印刷開始位置Spの設定も爪Tの輪郭形状に基づいて簡易かつ適切に行うことができるとともに、印刷すべき範囲に適切に印刷を行うことが可能となる。
【0089】
また本実施形態では、第2の爪の爪画像は、第1の爪について印刷終了後、第2の爪の印刷領域への印刷を開始する前に取得される。
このように、爪画像が、第2の爪の印刷領域への印刷前に撮影されることで、この撮影までは印刷指Uが動いてしまっても撮影や、撮影された爪画像によって特定される印刷領域の設定に影響しない。
このため、長時間印刷指Uを動かすことのできない苦痛をユーザに与えることなく適切な印刷処理を行うことができる。
【0090】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0091】
例えば、本記実施形態では、印刷済の爪T(第1の爪)の印刷領域の印刷終了位置Epと次に印刷する爪T(第2の爪)の印刷領域との位置関係から次に印刷する爪T(第2の爪)の印刷領域の印刷開始位置Sp(すなわち、印刷の際の副走査方向を爪先側から付根側への下向きとするか、付根側から爪先側への上向きとするか)を決定する場合について説明したが、印刷開始位置Spの設定の仕方はこれに限定されない。
例えば、印刷済の爪T(第1の爪)の印刷領域への印刷終了時のノズル位置と次に印刷する爪T(第2の爪)の印刷領域への印刷開始時のノズル位置から印刷開始位置Sp(すなわち、印刷の際の副走査方向を爪先側から付根側への下向きとするか、付根側から爪先側への上向きとするか)を決定してもよい。
すなわち、印刷済の爪T(第1の爪)の印刷領域への印刷終了時のノズル位置と次に印刷する爪T(第2の爪)の印刷領域への印刷開始時のノズル位置から印刷終了位置Epの座標を推定し、次に印刷する爪T(第2の爪)の印刷領域の爪先側端部と付根側端部の座標が印刷終了位置Epの座標に近いかを判断して印刷開始位置Spを決定してもよい。
【0092】
例えば、図16に、ある印刷指の爪T(第1の爪、例えば小指である印刷指Ua)の印刷領域(図16に示す例では爪Tの輪郭形状と一致)について副走査方向(図16においてY軸方向)の上から下(爪先側から付根側)に印刷したときの印刷終了時のノズル(ノズル列411)の停止位置の一例を示している。
印刷ヘッド41は、図示しないインク吐出面に複数のノズルが列状に配置されたノズル列411を備えており、このノズル列411から適宜インクが吐出されて印刷が行われるようになっている。
図16において、印刷領域である爪Tの爪先側端部を座標Na1と示し、付根側端部を座標Nb1と示している。
また、印刷ヘッドの停止位置におけるノズル列411の先端部のY軸方向における座標をEN1とする。なお、図16では、下から上(付根側から爪先側)に印刷したときの印刷終了時の停止位置におけるノズル列411の先端部のY軸方向における座標を(EN1)とする。いずれの場合にも、Y軸方向において印刷領域に、最後の走査で印刷を行った分だけノズル列411の一部が重なった状態で印刷ヘッドが停止する。
【0093】
次に図17では、次に印刷される印刷指の爪T(第2の爪、例えば薬指である印刷指Ub)の印刷領域(図17に示す例では爪Tの輪郭形状と一致)について副走査方向(図17においてY軸方向)の上から下(爪先側から付根側)に印刷するとしたときの場合のノズル列411の位置と、下から上(付根側から爪先側)に印刷するとした場合のノズル列411の位置を示している。
図16及び図17に例示する印刷ヘッドでは、ノズル列411の端部の一部分が重なるように位置をずらしながら複数回の走査で印刷領域の全域を埋めていく、いわゆるシングリング印刷が行われる。なお、実際のシングリング印刷では、ノズル列411中に実際にインクを吐出させる使用ノズルと吐出させない非使用ノズルとが生じるが、ここでは使用ノズルを前提に説明する。
【0094】
例えば、上から下(爪先側から付根側)に印刷するときには、印刷領域である爪Tの上側(すなわち座標Na2である爪先側端部)からWUだけ下がった位置にノズル列411の後端SNU2が位置する。またこの場合のノズル列411の先端をSNU1として示す。この場合1回目の走査で印刷幅WUが印刷される。
逆に、下から上(付根側から爪先側)に印刷するとしたときには、ノズル列411の先端位置SNDが印刷領域である爪Tの下側(すなわち座標Nb2である付根側端部)からからWDだけ上がった位置となる。この場合1回目の走査で印刷幅WDが印刷される。
なお、上から下に印刷する場合の最初の印刷幅WUと、下から上に印刷する場合の最初の印刷幅WDとは同じ値をとることが多い。
【0095】
爪Tの輪郭座標、印刷幅WU及び印刷幅WDの値、ノズル列411の長さNLはすべて装置側で把握されているため、SNU1とSNDの値は計算で求めることができる。
このため、第2の爪(例えば薬指である印刷指Ub)に対して下から上(付根側から爪先側)に印刷した場合のノズル列411の先端位置SNDと第1の爪(例えば小指である印刷指Ua)の印刷領域に対して印刷を行った場合の印刷ヘッドの停止位置におけるノズル列411の先端部のY軸方向における位置(座標EN1)との距離(間隔)と、上から下(爪先側から付根側)に印刷した場合のノズル列411の先端位置SNU1と座標EN1との距離(間隔)とを比較して、座標EN1が先端位置SNU1に近い場合は、第2の爪について上から下(爪先側から付根側)に印刷し、座標EN1が先端位置SNDに近い場合は、第2の爪について下から上(付根側から爪先側)に印刷する。
なお、第1の爪について下から上(付根側から爪先側)に印刷して、印刷終了時の停止位置におけるノズル列411の先端部がY軸方向における座標(EN1)にある場合にも、上記と同様の計算により、第2の爪について上下どちらの位置から印刷する方が座標(EN1)との距離(間隔)が近いかを算出することができる。
【0096】
このように、印刷時のノズル列411の位置によって次に印刷する印刷指Uの爪Tの印刷領域における印刷開始位置Spを決定するとした場合には、より高精度に、効率のよい移動ルートを選択して印刷ヘッド41を移動させることができる。
これにより、ネイルプリントにかかる時間をより短くすることができる場合があり、迅速な印刷処理を実現してユーザの負担を軽くすることが期待できる。
【0097】
また、本実施形態では、印刷開始位置Spを決定する手法として、次に印刷する印刷指Uの爪Tの印刷領域における爪先側端部の座標Na2及び爪Tの付根側端部の座標Nb2のうちいずれの座標が第1の爪の印刷終了位置Epに近いかを制御部31において判断する手法、印刷開始位置Spを指の載置順に爪先側端部、付根側端部に交互に設定する手法、指種の組み合わせや、ユーザの指の長さに応じて各印刷指Uについて印刷開始位置Spを爪先側端部、付根側端部のどちらに設定するかを予め規定しておく手法(すなわち、テーブル等を用意しておく手法)、ノズル位置により印刷終了位置Epに近い側の座標を推定する手法等、各種の手法を例示したが、これらは互いに排除するものではない。
例えば、1つの装置においてこれらの全部又は一部の手法を実現可能に構成し、ユーザがこれらのうち、所望の手法を選択できるようにしてもよい。また、装置側で最適な手法(モード)が選択されるようにしてもよい。なお、装置側で最適なモードを選択・適用するとした場合に、何をもって最適と判断するかは特に限定されない。例えば、印刷領域を特定するために爪情報取得部313が取得したユーザの爪情報等からいずれの手法を適用するのが最適であるかを制御部が決定してもよい。
【0098】
また、本実施形態では、印刷装置であるネイルプリント装置1が爪情報取得部313、印刷データ生成部314を備え、印刷制御部315が印刷領域への印刷を開始させる印刷開始位置Spを決定する場合を例示したが、これらの機能をネイルプリント装置1の制御装置30が備えることは必須ではない。
例えば、例えばスマートフォン等の携帯端末装置等、外部装置とネイルプリント装置1とを連携させ、爪情報取得部313、印刷データ生成部314の機能及び、印刷部40に印刷処理を実行させる以外の機能を外部装置において行ってもよい。
この場合には、ネイルプリント装置1は、印刷部40を動作させて、外部装置において設定指示された印刷開始位置Spから、外部装置において生成された印刷データに基づいて印刷領域に対し印刷を行わせる。
このような構成とした場合には、ネイルプリント装置1の制御装置30の負担を減らすことができ、処理に必要なデータ等を備える必要もないため、記憶部32のメモリ容量も少なくて済む。また、外部装置に各種処理を委ねることで、高精度な処理を迅速に行うことができる。
これにより、簡易な構成で迅速かつ高精細なネイルプリントを実行することが可能となる。
【0099】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
指の第1の爪の印刷領域に印刷を行い、次いで指の第2の爪の印刷領域に印刷を行う印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドを移動させる移動機構と、
前記第1の爪における印刷領域の印刷開始位置から主走査方向に移動しながら印刷を行うように前記印刷ヘッド及び前記移動機構を制御し、前記第1の爪について印刷終了後に、前記第2の爪の印刷領域の爪先側端部及び付根側端部のうち、前記第1の爪の前記印刷領域の印刷終了位置に近い側の端部に設定された印刷開始位置から、前記第2の爪における前記印刷領域への印刷を開始させる印刷制御部と、
を有することを特徴とする印刷装置。
<請求項2>
前記第2の爪における印刷領域の印刷開始位置は、前記爪先側端部及び前記付根側端部のうち、前記爪先側端部及び前記付根側端部の座標が前記第1の爪の前記印刷領域の印刷終了位置の座標に前記爪の長さ方向において近い側の端部に設定されることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
<請求項3>
前記第2の爪の前記印刷領域の前記爪先側端部及び前記付根側端部の、前記爪の長さ方向の座標を取得する座標取得部と、
前記座標取得部において取得された前記爪先側端部及び前記付根側端部の座標と、前記第1の爪の前記印刷領域の印刷終了位置の座標と、を比較する座標比較部と、
前記座標比較部における比較結果に基づいて、前記第2の爪の前記印刷領域の印刷開始位置を決定する印刷開始位置決定部と、
を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
<請求項4>
前記印刷開始位置は、前記印刷領域の前記爪先側端部及び前記付根側端部のいずれかに、前記指の載置順に交互に設定されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項5>
前記印刷開始位置を前記印刷領域の前記爪先側端部及び前記付根側端部のいずれに設定するかが、複数の前記指の組み合わせに応じて予め規定されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項6>
前記印刷開始位置を前記印刷領域の前記爪先側端部及び前記付根側端部のいずれに設定するかが、前記指の長さに応じて予め規定されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項7>
前記爪の情報を取得する爪情報取得部を有し、
前記第2の爪における前記印刷領域の前記爪先側端部及び前記付根側端部は、前記爪情報取得部によって取得された前記爪の輪郭から特定されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項8>
前記爪の情報を取得する爪情報取得部を有し、
前記第2の爪における前記印刷領域の前記爪先側端部及び前記付根側端部は、前記爪情報取得部によって取得された前記爪表面の一部の領域から特定されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項9>
前記印刷ヘッドは、インクを吐出させる複数のノズルを有し、
前記第2の爪における印刷領域の印刷開始位置は、前記第1の爪の前記印刷領域の印刷終了時の前記ノズルの位置及び前記第2の爪の前記印刷領域の印刷開始時の前記ノズルの位置から決定されることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項10>
第1の爪における印刷領域の印刷開始位置から主走査方向に移動しながら印刷を行う第1の印刷工程と、
前記第1の印刷工程の終了後に、第2の爪の印刷領域の爪先側端部及び付根側端部のうち、前記第1の爪の前記印刷領域の印刷終了位置に近い側の端部に前記第2の爪の印刷開始位置を設定する開始位置設定工程と、
前記開始位置設定工程において設定された前記印刷開始位置から、前記第2の爪における前記印刷領域への印刷を開始させる第2の印刷工程と、
を含んでいることを特徴とする印刷方法。
<請求項11>
印刷装置のコンピュータに、
第1の爪における印刷領域の印刷開始位置から主走査方向に移動しながら印刷を行う第1の印刷機能と、
前記第1の印刷機能による印刷の終了後に、第2の爪の印刷領域の爪先側端部及び付根側端部のうち、前記第1の爪の前記印刷領域の印刷終了位置に近い側の端部に前記第2の爪の印刷開始位置を設定する開始位置設定機能と、
前記開始位置設定機能によって設定された前記印刷開始位置から、前記第2の爪における前記印刷領域への印刷を開始させる第2の印刷機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0100】
1 ネイルプリント装置
6 指置部
40 印刷部
41 印刷ヘッド
31 制御部
32 記憶部
50 撮影部
313 爪情報取得部
314 印刷データ生成部
315 印刷制御部
Sp 印刷開始位置
Ep 印刷終了位置
T 爪
U 印刷指
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