(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
H02K9/19 A
(21)【出願番号】P 2019174587
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】津田 圭一
(72)【発明者】
【氏名】中松 修平
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-135817(JP,A)
【文献】特開2019-146376(JP,A)
【文献】特開2017-147816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸を中心として回転可能なロータ、および前記ロータの径方向外側に位置するステータを有するモータと、
内部に冷媒が流れる冷媒流路と、
を備え、
前記ステータは、前記ロータを囲むステータコアを有し、
前記冷媒流路は、前記ステータコアの径方向外側において前記ステータコアに前記冷媒を供給する第1供給口および第2供給口を有し、
前記第2供給口は、前記ステータコアの鉛直方向上側に位置し、
前記モータ軸の軸方向に見て、前記第1供給口が開口する向きは、前記第1供給口を通り前記ステータコアの外周面と接する接線が、前記第1供給口から前記ステータコアの外周面に向かって延びる向きよりも径方向外側に傾く向きであり、
前記モータ軸の軸方向に見て、前記第2供給口が開口する向きは、前記第2供給口を通り前記ステータコアの外周面と接する接線が、前記第2供給口から前記ステータコアの外周面に向かって延びる向きよりも鉛直方向下側向きである、
駆動装置。
【請求項2】
モータ軸を中心として回転可能なロータ、および前記ロータの径方向外側に位置するステータを有するモータと、
内部に冷媒が流れる冷媒流路と、
を備え、
前記ステータは、前記ロータを囲むステータコアを有し、
前記冷媒流路は、前記ステータコアの径方向外側において前記ステータコアに前記冷媒を供給する第1供給口および第2供給口を有し、
前記モータ軸の軸方向に見て、前記第1供給口が開口する向きは、前記第1供給口を通り前記ステータコアの外周面と接する接線が、前記第1供給口から前記ステータコアの外周面に向かって延びる向きよりも径方向外側に傾く向きであり、
前記モータ軸の軸方向に見て、前記第2供給口が開口する向きは、前記第2供給口を通り前記ステータコアの外周面と接する接線が、前記第2供給口から前記ステータコアの外周面に向かって延びる向きよりも径方向内側に傾く向きである、
駆動装置。
【請求項3】
前記モータ軸は、鉛直方向と交差する方向に延び、
前記第1供給口は、前記ステータコアの鉛直方向上側の端部よりも鉛直方向下側に位置し、
前記モータ軸の軸方向に見て、前記第1供給口が開口する向きは、前記接線が前記第1供給口から前記ステータコアの外周面に向かって延びる向きよりも鉛直方向上側向きである、請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記冷媒流路は、
前記第1供給口が設けられた下側冷媒流路と、
前記第2供給口が設けられ、前記下側冷媒流路よりも鉛直方向上側に位置する上側冷媒流路と、
を含む、請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項5】
内部に前記モータを収容するハウジングをさらに備え、
前記第1供給口から前記接線が前記ステータコアの外周面と接する接点までの周方向の領域において、前記ハウジングの内周面と前記ステータコアの外周面との径方向の間には隙間が設けられる、請求項1から
4のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項6】
車両に搭載される駆動装置であり、
前記モータに接続され、前記車両の車軸に前記モータのトルクを伝達する伝達装置をさらに備える、請求項1から
5のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記ステータコアは、
ステータコア本体と、
前記ステータコア本体の外周面から径方向外側に突出する固定部と、
を有し、
前記冷媒流路は、前記ステータコアの径方向外側において前記ステータコアに前記冷媒を供給する第2供給口を有し、
前記固定部および前記第2供給口は、前記ステータコア本体の鉛直方向上側に設けられ、
前記固定部は、前記モータ軸に対して、軸方向および鉛直方向と交差する前後方向の一方側に設けられ、
前記第2供給口は、前記モータ軸に対して、前記前後方向の他方側に設けられる、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒が流れる冷媒流路によってステータを冷却する回転電機が知られている。例えば、特許文献1には、複数のパイプから冷却油を供給してステータを冷却する回転電機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような回転電機においては、冷媒流路から供給される冷媒によって、ステータをより効率的に冷却することが求められていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、ステータの冷却効率を向上できる構造を有する駆動装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置の一つの態様は、モータ軸を中心として回転可能なロータ、および前記ロータの径方向外側に位置するステータを有するモータと、内部に冷媒が流れる冷媒流路と、を備える。前記ステータは、前記ロータを囲むステータコアを有する。前記冷媒流路は、前記ステータコアの径方向外側において前記ステータコアに前記冷媒を供給する第1供給口および第2供給口を有する。前記第2供給口は、前記ステータコアの鉛直方向上側に位置する。前記モータ軸の軸方向に見て、前記第1供給口が開口する向きは、前記第1供給口を通り前記ステータコアの外周面と接する接線が、前記第1供給口から前記ステータコアの外周面に向かって延びる向きよりも径方向外側に傾く向きであり、前記モータ軸の軸方向に見て、前記第2供給口が開口する向きは、前記第2供給口を通り前記ステータコアの外周面と接する接線が、前記第2供給口から前記ステータコアの外周面に向かって延びる向きよりも鉛直方向下側向きである。
また、本発明の駆動装置の一つの態様は、モータ軸を中心として回転可能なロータ、および前記ロータの径方向外側に位置するステータを有するモータと、内部に冷媒が流れる冷媒流路と、を備える。前記ステータは、前記ロータを囲むステータコアを有する。前記冷媒流路は、前記ステータコアの径方向外側において前記ステータコアに前記冷媒を供給する第1供給口および第2供給口を有する。前記モータ軸の軸方向に見て、前記第1供給口が開口する向きは、前記第1供給口を通り前記ステータコアの外周面と接する接線が、前記第1供給口から前記ステータコアの外周面に向かって延びる向きよりも径方向外側に傾く向きである。前記モータ軸の軸方向に見て、前記第2供給口が開口する向きは、前記第2供給口を通り前記ステータコアの外周面と接する接線が、前記第2供給口から前記ステータコアの外周面に向かって延びる向きよりも径方向内側に傾く向きである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、駆動装置において、ステータの冷却効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態の駆動装置を模式的に示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のステータ、第1パイプ、および第2パイプを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1本実施形態の駆動装置の一部を示す断面図であって、
図1におけるIII-III断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の駆動装置の一部を示す断面図であって、
図1におけるIV-IV断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の第1パイプを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態のステータの一部、第1パイプ、および第2パイプを左側から見た図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態のステータの一部、第1パイプ、および第2パイプを左側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明では、各図に示す本実施形態の駆動装置1が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向である。+Z側は、鉛直方向上側であり、-Z側は、鉛直方向下側である。以下の説明では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置1が搭載される車両の前後方向である。以下の実施形態において、+X側は、車両の前側であり、-X側は、車両の後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。以下の実施形態において、+Y側は、車両の左側であり、-Y側は、車両の右側である。前後方向および左右方向は、鉛直方向と直交する水平方向である。
【0010】
なお、前後方向の位置関係は、以下の実施形態の位置関係に限られず、+X側が車両の後側であり、-X側が車両の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両の右側であり、-Y側は、車両の左側である。
【0011】
各図に適宜示すモータ軸J1は、鉛直方向と交差する方向に延びる。より詳細には、モータ軸J1は、Y軸方向、すなわち車両の左右方向に延びる。以下の説明においては、特に断りのない限り、モータ軸J1に平行な方向を単に「軸方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする周方向、すなわち、モータ軸J1の軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。なお、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向も含み、「直交する方向」は略直交する方向も含む。
【0012】
<第1実施形態>
図1に示す本実施形態の駆動装置1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両に搭載され、その動力源として使用される。
図1に示すように、駆動装置1は、モータ2と、減速装置4および差動装置5を含む伝達装置3と、ハウジング6と、オイルポンプ96と、クーラー97と、パイプ10と、を備える。なお、本実施形態において、駆動装置1はインバータユニットを含まない。言い換えると、駆動装置1はインバータユニットと別体構造となっている。
【0013】
ハウジング6は、内部にモータ2および伝達装置3を収容する。ハウジング6は、モータ収容部61と、ギヤ収容部62と、隔壁61cと、を有する。モータ収容部61は、内部に後述するロータ20およびステータ30を収容する部分である。ギヤ収容部62は、内部に伝達装置3を収容する部分である。ギヤ収容部62は、モータ収容部61の左側に位置する。モータ収容部61の底部61aは、ギヤ収容部62の底部62aより上側に位置する。隔壁61cは、モータ収容部61の内部とギヤ収容部62の内部とを軸方向に区画する。隔壁61cには、隔壁開口68が設けられる。隔壁開口68は、モータ収容部61の内部とギヤ収容部62の内部とを繋ぐ。隔壁61cは、ステータ30の左側に位置する。すなわち、本実施形態において隔壁61cは、ステータ30の軸方向一方側に位置する軸方向壁部に相当する。
【0014】
ハウジング6は、内部に冷媒としてのオイルOを収容する。本実施形態では、モータ収容部61の内部およびギヤ収容部62の内部に、オイルOが収容される。ギヤ収容部62の内部における下部領域には、オイルOが溜るオイル溜りPが設けられる。オイル溜りPのオイルOは、後述する油路90によってモータ収容部61の内部に送られる。モータ収容部61の内部に送られたオイルOは、モータ収容部61の内部における下部領域に溜まる。モータ収容部61の内部に溜まったオイルOの少なくとも一部は、隔壁開口68を介してギヤ収容部62に移動し、オイル溜りPに戻る。
【0015】
なお、本明細書において「ある部分の内部にオイルが収容される」とは、モータが駆動している最中の少なくとも一部において、ある部分の内部にオイルが位置していればよく、モータが停止している際には、ある部分の内部にオイルが位置していなくてもよい。例えば、本実施形態においてモータ収容部61の内部にオイルOが収容されるとは、モータ2が駆動している最中の少なくとも一部において、モータ収容部61の内部にオイルOが位置していればよく、モータ2が停止している際においては、モータ収容部61の内部のオイルOがすべて隔壁開口68を通ってギヤ収容部62に移動してしまっていてもよい。なお、後述する油路90によってモータ収容部61の内部へと送られたオイルOの一部は、モータ2が停止した状態において、モータ収容部61の内部に残っていてもよい。
【0016】
オイルOは、後述する油路90内を循環する。オイルOは、減速装置4および差動装置5の潤滑用として使用される。また、オイルOは、モータ2の冷却用として使用される。オイルOとしては、潤滑油および冷却油の機能を奏するために、比較的粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のオイルを用いることが好ましい。
【0017】
本実施形態においてモータ2は、インナーロータ型のモータである。モータ2は、ロータ20と、ステータ30と、ベアリング26,27と、を備える。ロータ20は、水平方向に延びるモータ軸J1を中心として回転可能である。ロータ20は、シャフト21と、ロータ本体24と、を有する。図示は省略するが、ロータ本体24は、ロータコアと、ロータコアに固定されるロータマグネットと、を有する。ロータ20のトルクは、伝達装置3に伝達される。
【0018】
シャフト21は、モータ軸J1を中心として軸方向に沿って延びる。シャフト21は、モータ軸J1を中心として回転する。シャフト21は、内部に中空部22が設けられた中空シャフトである。シャフト21には、連通孔23が設けられる。連通孔23は、径方向に延びて中空部22とシャフト21の外部とを繋ぐ。
【0019】
シャフト21は、ハウジング6のモータ収容部61とギヤ収容部62とに跨って延びる。シャフト21の左側の端部は、ギヤ収容部62の内部に突出する。シャフト21の左側の端部には、伝達装置3の後述する第1のギヤ41が固定される。シャフト21は、ベアリング26,27により回転可能に支持される。
【0020】
ステータ30は、ロータ20と径方向に隙間を介して対向する。より詳細には、ステータ30は、ロータ20の径方向外側に位置する。ステータ30は、ステータコア32と、コイルアセンブリ33と、を有する。ステータコア32は、ロータ20を囲む。ステータコア32は、モータ収容部61の内周面に固定される。
図2および
図3に示すように、ステータコア32は、ステータコア本体32aと、固定部32bと、を有する。
図3に示すように、ステータコア本体32aは、軸方向に延びる円筒状のコアバック32dと、コアバック32dから径方向内側に延びる複数のティース32eと、を有する。複数のティース32eは、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。
【0021】
固定部32bは、ステータコア本体32aの外周面から径方向外側に突出する。固定部32bは、ハウジング6に固定される部分である。固定部32bは、周方向に沿って間隔を空けて複数設けられる。固定部32bは、例えば、4つ設けられる。4つの固定部32bは、周方向の一周に亘って等間隔に配置される。
【0022】
固定部32bのうちの1つは、ステータコア本体32aから上側に突出する。固定部32bのうちの他の1つは、ステータコア本体32aから下側に突出する。固定部32bのうちのさらに他の1つは、ステータコア本体32aから前側(+X側)に突出する。固定部32bのうちの残りの1つは、ステータコア本体32aから後側(-X側)に突出する。
【0023】
なお、以下の説明においては、ステータコア本体32aから上側に突出する固定部32bを単に「上側の固定部32b」と呼び、ステータコア本体32aから前側に突出する固定部32bを単に「前側の固定部32b」と呼ぶ。
【0024】
図2に示すように、固定部32bは、軸方向に延びる。固定部32bは、例えば、ステータコア本体32aの左側(+Y側)の端部からステータコア本体32aの右側(-Y側)の端部まで延びる。固定部32bは、固定部32bを軸方向に貫通する貫通孔32cを有する。
図3に示すように、貫通孔32cには、軸方向に延びるボルト34が通される。ボルト34は、右側(-Y側)から貫通孔32cに通され、
図4に示す雌ネジ穴35に締め込まれる。雌ネジ穴35は、隔壁61cに設けられる。ボルト34が雌ネジ穴35に締め込まれることで、固定部32bは、隔壁61cに固定される。このようにしてステータ30は、ボルト34によってハウジング6に固定される。
【0025】
図1に示すように、コイルアセンブリ33は、周方向に沿ってステータコア32に取り付けられる複数のコイル31を有する。複数のコイル31は、図示しないインシュレータを介してステータコア32の各ティース32eにそれぞれ装着される。複数のコイル31は、周方向に沿って配置される。より詳細には、複数のコイル31は、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。図示は省略するが、コイルアセンブリ33は、各コイル31を結束する結束部材等を有してもよいし、各コイル31同士を繋ぐ渡り線を有してもよい。
【0026】
コイルアセンブリ33は、ステータコア32から軸方向に突出するコイルエンド33a,33bを有する。コイルエンド33aは、ステータコア32から右側に突出する部分である。コイルエンド33bは、ステータコア32から左側に突出する部分である。コイルエンド33aは、コイルアセンブリ33に含まれる各コイル31のうちステータコア32よりも右側に突出する部分を含む。コイルエンド33bは、コイルアセンブリ33に含まれる各コイル31のうちステータコア32よりも左側に突出する部分を含む。
図2に示すように、本実施形態においてコイルエンド33a,33bは、モータ軸J1を中心とする円環状である。図示は省略するが、コイルエンド33a,33bは、各コイル31を結束する結束部材等を含んでもよいし、各コイル31同士を繋ぐ渡り線を含んでもよい。
【0027】
図1に示すように、ベアリング26,27は、ロータ20を回転可能に支持する。ベアリング26,27は、例えば、ボールベアリングである。ベアリング26は、ロータ20のうちステータコア32よりも右側に位置する部分を回転可能に支持するベアリングである。本実施形態においてベアリング26は、シャフト21のうちロータ本体24が固定される部分よりも右側に位置する部分を支持する。ベアリング26は、モータ収容部61のうちロータ20およびステータ30の右側を覆う壁部61bに保持される。
【0028】
ベアリング27は、ロータ20のうちステータコア32よりも左側に位置する部分を回転可能に支持するベアリングである。本実施形態においてベアリング27は、シャフト21のうちロータ本体24が固定される部分よりも左側に位置する部分を支持する。ベアリング27は、隔壁61cに保持される。
【0029】
伝達装置3は、ハウジング6のギヤ収容部62に収容される。伝達装置3は、モータ2に接続される。より詳細には、伝達装置3は、シャフト21の左側の端部に接続される。伝達装置3は、減速装置4と、差動装置5と、を有する。モータ2から出力されるトルクは、減速装置4を介して差動装置5に伝達される。
【0030】
減速装置4は、モータ2に接続される。減速装置4は、モータ2の回転速度を減じて、モータ2から出力されるトルクを減速比に応じて増大させる。減速装置4は、モータ2から出力されるトルクを差動装置5へ伝達する。減速装置4は、第1のギヤ41と、第2のギヤ42と、第3のギヤ43と、中間シャフト45と、を有する。
【0031】
第1のギヤ41は、シャフト21の左側の端部における外周面に固定される。第1のギヤ41は、シャフト21とともに、モータ軸J1を中心に回転する。中間シャフト45は、モータ軸J1と平行な中間軸J2に沿って延びる。中間シャフト45は、中間軸J2を中心として回転する。第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間シャフト45の外周面に固定される。第2のギヤ42と第3のギヤ43は、中間シャフト45を介して接続される。第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間軸J2を中心として回転する。第2のギヤ42は、第1のギヤ41に噛み合う。第3のギヤ43は、差動装置5の後述するリングギヤ51と噛み合う。
【0032】
モータ2から出力されるトルクは、シャフト21、第1のギヤ41、第2のギヤ42、中間シャフト45および第3のギヤ43をこの順に介して差動装置5のリングギヤ51へ伝達される。各ギヤのギヤ比およびギヤの個数等は、必要とされる減速比に応じて種々変更可能である。本実施形態において減速装置4は、各ギヤの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。
【0033】
差動装置5は、減速装置4を介しモータ2に接続される。差動装置5は、モータ2から出力されるトルクを車両の車輪に伝達するための装置である。差動装置5は、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、左右両輪の車軸55に同トルクを伝える。このように、本実施形態において伝達装置3は、減速装置4および差動装置5を介して、車両の車軸55にモータ2のトルクを伝達する。差動装置5は、リングギヤ51と、図示しないギヤハウジングと、図示しない一対のピニオンギヤと、図示しないピニオンシャフトと、図示しない一対のサイドギヤと、を有する。リングギヤ51は、モータ軸J1と平行な差動軸J3を中心として回転する。リングギヤ51には、モータ2から出力されるトルクが減速装置4を介して伝えられる。
【0034】
モータ2には、ハウジング6の内部においてオイルOが循環する油路90が設けられる。油路90は、オイル溜りPからオイルOをモータ2に供給し、再びオイル溜りPに導くオイルOの経路である。油路90は、モータ収容部61の内部とギヤ収容部62の内部とに跨って設けられる。
【0035】
なお、本明細書において「油路」とは、オイルの経路を意味する。したがって、「油路」とは、定常的に一方向に向かうオイルの流動を作る「流路」のみならず、オイルを一時的に滞留させる経路およびオイルが滴り落ちる経路をも含む概念である。オイルを一時的に滞留させる経路とは、例えば、オイルを貯留するリザーバ等を含む。
【0036】
油路90は、第1の油路91と、第2の油路92と、を有する。第1の油路91および第2の油路92は、それぞれハウジング6の内部でオイルOを循環させる。第1の油路91は、かき上げ経路91aと、シャフト供給経路91bと、シャフト内経路91cと、ロータ内経路91dと、を有する。また、第1の油路91の経路中には、第1のリザーバ93が設けられる。第1のリザーバ93は、ギヤ収容部62内に設けられる。
【0037】
かき上げ経路91aは、差動装置5のリングギヤ51の回転によってオイル溜りPからオイルOをかき上げて、第1のリザーバ93でオイルOを受ける経路である。第1のリザーバ93は、上側に開口する。第1のリザーバ93は、リングギヤ51がかき上げたオイルOを受ける。また、モータ2の駆動直後などオイル溜りPの液面Sが高い場合等には、第1のリザーバ93は、リングギヤ51に加えて第2のギヤ42および第3のギヤ43によってかき上げられたオイルOも受ける。
【0038】
シャフト供給経路91bは、第1のリザーバ93からシャフト21の中空部22にオイルOを誘導する。シャフト内経路91cは、シャフト21の中空部22内をオイルOが通過する経路である。ロータ内経路91dは、シャフト21の連通孔23からロータ本体24の内部を通過して、ステータ30に飛散する経路である。
【0039】
シャフト内経路91cにおいて、ロータ20の内部のオイルOには、ロータ20の回転に伴い遠心力が付与される。これにより、オイルOは、ロータ20から径方向外側に連続的に飛散する。また、オイルOの飛散に伴い、ロータ20内部の経路が負圧となり、第1のリザーバ93に溜るオイルOが、ロータ20の内部に吸引され、ロータ20内部の経路にオイルOが満たされる。
【0040】
ステータ30に到達したオイルOは、ステータ30から熱を奪う。ステータ30を冷却したオイルOは、下側に滴下され、モータ収容部61内の下部領域に溜る。モータ収容部61内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁61cに設けられた隔壁開口68を介してギヤ収容部62に移動する。以上のようにして、第1の油路91は、オイルOをロータ20およびステータ30に供給する。
【0041】
第2の油路92においてオイルOは、オイル溜りPから引き上げられてステータ30に供給される。第2の油路92には、オイルポンプ96と、クーラー97と、パイプ10と、が設けられる。第2の油路92は、第1の流路92aと、第2の流路92bと、第3の流路92cと、第4の流路94と、を有する。本実施形態においてパイプ10は、内部に冷媒としてのオイルOが流れる冷媒流路に相当する。
【0042】
第1の流路92a、第2の流路92bおよび第3の流路92cは、ハウジング6の壁部に設けられる。第1の流路92aは、オイル溜りPとオイルポンプ96とを繋ぐ。第2の流路92bは、オイルポンプ96とクーラー97とを繋ぐ。第3の流路92cは、クーラー97と第4の流路94とを繋ぐ。第3の流路92cは、例えば、モータ収容部61の壁部のうち前側(+X側)の壁部に設けられる。
【0043】
第4の流路94は、隔壁61cに設けられる。第4の流路94は、パイプ10のうち後述する第1パイプ11と第2パイプ12とを繋ぐ。
図4に示すように、第4の流路94は、流入部94aと、第1分岐部94cと、第2分岐部94fと、を有する。流入部94aは、第4の流路94のうち第3の流路92cからオイルOが流入する部分である。流入部94aは、第3の流路92cから後側(-X側)に延びる。流入部94aは、シャフト21の前側(+X側)に位置し、径方向のうち前後方向に直線状に延びる。流入部94aの内径は、前側の端部において大きくなっている。本実施形態において流入部94aの前側の端部は、流入部94aの径方向外側の端部である。
【0044】
流入部94aの前側(+X側)の端部は、固定部32bよりも径方向外側に位置する。流入部94aの後側(-X側)の端部は、固定部32bよりも径方向内側に位置する。すなわち、本実施形態において流入部94aは、固定部32bよりも径方向外側から固定部32bよりも径方向内側まで前後方向に延びる。流入部94aは、前側(+X側)の固定部32bよりも上側に位置する。
【0045】
流入部94aの後側(-X側)の端部は、第1分岐部94cと第2分岐部94fとがそれぞれ繋がる接続部94bである。流入部94aの内径は、接続部94bにおいて大きくなっている。接続部94bは、固定部32bよりも径方向内側に位置する。
【0046】
流入部94aのうち接続部94bを除く部分は、例えば、ハウジング6の前側(+X側)からドリルで穴加工を施されて作られる。流入部94aの前側の端部は、ボルト95aが締め込まれることで塞がれる。流入部94aの接続部94bは、例えば、隔壁61cの左側(+Y側)からドリルで穴加工を施されて作られる。図示は省略するが、接続部94bの左側の端部は、ボルトが締め込まれることで塞がれる。
【0047】
第1分岐部94cは、流入部94aから分岐して後述する第1パイプ11まで延びる部分である。第1分岐部94cは、流入部94aの後側(-X側)の端部、すなわち接続部94bから上側斜め後方に延びる。第1分岐部94cは、隔壁61cのうち、上側の固定部32bよりも下側で、かつ、シャフト21の上側に位置する部分を通って、隔壁61cの上側の端部まで延びる。第1分岐部94cの上側の端部における径方向位置は、固定部32bの径方向位置とほぼ同じである。第1分岐部94cの上側の端部は、上側の固定部32bよりも後側に位置する。
【0048】
第1分岐部94cは、接続部94bから上側斜め後方に直線状に延びる延伸部94dと、延伸部94dの上側の端部に繋がる接続部94eと、を有する。接続部94eは、第1分岐部94cの上側の端部であり、後述する第1パイプ11が繋がる部分である。接続部94eの内径は、延伸部94dの内径よりも大きい。接続部94eは、例えば、ハウジング6の上側からドリルで穴加工が施されることで作られる。接続部94eの上側の端部は、ボルト95bが締め込まれることで塞がれる。延伸部94dは、例えば、ハウジング6の上側から接続部94eの内部を介して、ドリルで下側斜め前方に穴加工が施されることで作られる。
【0049】
第2分岐部94fは、流入部94aから分岐して後述する第2パイプ12まで延びる部分である。本実施形態において第2分岐部94fは、接続部94bから前側斜め上方に延びる。第2分岐部94fは、前後方向に対して右側(-Y側)に傾いて直線状に延びる。第2分岐部94fの前側(+X側)の端部における径方向位置は、固定部32bの径方向位置とほぼ同じである。第2分岐部94fの前側(+X側)の端部は、前側の固定部32bよりも上側に位置する。第2分岐部94fの前側の端部と前側の固定部32bとは、前後方向においてほぼ同じ位置に配置される。第2分岐部94fは、例えば、隔壁61cの左側(+Y側)から、接続部94bの内部を介してドリルで穴加工が施されることで作られる。
【0050】
第4の流路94において、流入部94aの後側部分、延伸部94dのうち上側の端部を除く部分、および第2分岐部94fの後側部分は、隔壁61cのうち固定部32bよりも径方向内側に位置する部分に設けられる。すなわち、本実施形態において第4の流路94は、固定部32bよりも径方向内側を通る部分を有する。
【0051】
図1に示すように、パイプ10は、軸方向に延びる。パイプ10の左側の端部は、隔壁61cに固定される。
図2に示すように、パイプ10は、第1パイプ11と、第2パイプ12と、を含む。すなわち、駆動装置1は、第1パイプ11および第2パイプ12を備える。本実施形態において第1パイプ11は、上側冷媒流路に相当し、第2パイプ12は、下側冷媒流路に相当する。
【0052】
本実施形態において第1パイプ11および第2パイプ12は、軸方向に直線状に延びる円筒状である。第1パイプ11と第2パイプ12とは、互いに平行である。
図3に示すように、第1パイプ11および第2パイプ12は、ハウジング6の内部に収容される。第1パイプ11および第2パイプ12は、ステータ30の径方向外側に位置する。第1パイプ11と第2パイプ12とは、互いに周方向に間隔を空けて配置される。第1パイプ11の径方向位置と第2パイプ12の径方向位置とは、例えば、同じである。
【0053】
なお、本明細書において「第1パイプおよび第2パイプがモータ軸の軸方向に直線状に延びる」とは、第1パイプおよび第2パイプが厳密に軸方向に直線状に延びる場合に加えて、第1パイプおよび第2パイプが略軸方向に直線状に延びる場合も含む。すなわち、本実施形態において「第1パイプ11および第2パイプ12が軸方向に直線状に延びる」とは、例えば、第1パイプ11および第2パイプ12が軸方向に対して僅かに傾いて延びていてもよい。この場合、第1パイプ11が軸方向に対して傾く向きと第2パイプ12が軸方向に対して傾く向きとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
本実施形態において第1パイプ11は、ステータ30の上側に位置する。第1パイプ11は、第2パイプ12よりも上側に位置する。本実施形態において第1パイプ11の径方向位置は、固定部32bの径方向位置と同じである。第1パイプ11は、上側の固定部32bの後側(-X側)に位置する。
図5に示すように、第1パイプ11は、第1パイプ本体部11aと、第1パイプ本体部11aの左側(+Y側)の端部に設けられた小径部11bと、第1パイプ本体部11aの右側(-Y側)の端部に設けられた小径部11cと、を有する。
【0055】
小径部11bは、第1パイプ11の左側(+Y側)の端部である。小径部11cは、第1パイプ11の右側(-Y側)の端部である。小径部11b,11cの外径は、第1パイプ本体部11aの外径よりも小さい。第1パイプ11は、小径部11bが隔壁61cに右側から挿し込まれて、隔壁61cに固定される。小径部11bは、左側に開口する。
図4に示すように、小径部11bは、第1分岐部94cの接続部94eに開口する。これにより、第1パイプ11は、第4の流路94と繋がる。
【0056】
図5に示すように、第1パイプ11の右側(-Y側)の端部には、取付部材16が設けられる。取付部材16は、板面が軸方向を向く長方形板状である。取付部材16は、左側(+Y側)の面から右側に窪む凹部16aを有する。凹部16aには、第1パイプ11の右側の端部、すなわち小径部11cが嵌め合わされて固定される。第1パイプ11の右側の端部は、取付部材16によって塞がれる。
【0057】
取付部材16は、取付部材16を軸方向に貫通する孔部16bを有する。
図2に示すように、孔部16bには、右側(-Y側)からボルト18が通される。ボルト18は、孔部16bを貫通して、
図3に示す突出部61dに右側から締め込まれる。突出部61dは、モータ収容部61の内周面において径方向内側に突出する。ボルト18が突出部61dに締め込まれることで、取付部材16は、突出部61dに固定される。これにより、第1パイプ11の右側の端部は、取付部材16を介してモータ収容部61に固定される。
【0058】
図5に示すように、第1パイプ11は、複数の第1上側供給口13と、複数の第2上側供給口14と、を有する。すなわち、冷媒流路としてのパイプ10は、第1上側供給口13と、第2上側供給口14と、を有する。本実施形態において第1上側供給口13および第2上側供給口14は、ステータ30に冷媒を供給する冷媒供給口に相当する。また、本実施形態において第2上側供給口14は、第2供給口に相当する。
【0059】
第1上側供給口13および第2上側供給口14からは、第1パイプ11内に流入したオイルOが吐出される。第1上側供給口13および第2上側供給口14は、第1パイプ11の外周面に設けられる。第1上側供給口13および第2上側供給口14は、第1パイプ11を内周面から外周面まで貫通する孔である。第1上側供給口13および第2上側供給口14は、例えば、円形状である。
図2および
図5に示すように、第1上側供給口13および第2上側供給口14は、下側を向く。
【0060】
本実施形態において第1上側供給口13は、第1パイプ本体部11aの軸方向の両端部に複数ずつ設けられる。第1上側供給口13は、例えば、第1パイプ本体部11aの軸方向の両端部に4つずつ設けられる。第1パイプ本体部11aの右側(-Y側)の端部に設けられた4つの第1上側供給口13は、周方向に沿ってジグザグに配置される。第1パイプ本体部11aの右側の端部に設けられた4つの第1上側供給口13は、真下に開口する1つの第1上側供給口13と、下側斜め前方に開口する2つの第1上側供給口13と、下側斜め後方に開口する1つの第1上側供給口13と、を含む。第1パイプ本体部11aの左側(+Y側)の端部に設けられた4つの第1上側供給口13は、軸方向の位置を除いて、第1パイプ本体部11aの右側の部分に設けられた4つの第1上側供給口13と同様に配置される。
【0061】
図2に示すように、複数の第1上側供給口13のうち右側(-Y側)に設けられる4つの第1上側供給口13は、コイルエンド33aの上側に位置する。複数の第1上側供給口13のうち左側(+Y側)に設けられる4つの第1上側供給口13は、コイルエンド33bの上側に位置する。そのため、第1上側供給口13から吐出されたオイルOは、コイルエンド33a,33bに上側から供給される。すなわち、本実施形態において第1上側供給口13は、コイルエンド33a,33bにオイルOを供給する供給口である。
【0062】
第2上側供給口14は、第1パイプ11の軸方向の中央部分に設けられる。本実施形態において第2上側供給口14は、第1パイプ本体部11aの軸方向の中央部分に、軸方向に間隔を空けて2つ設けられる。
図3に示すように、本実施形態において第2上側供給口14は、下側斜め前方に開口する。
図2および
図3に示すように、第2上側供給口14は、ステータコア32の上側に位置する。そのため、第2上側供給口14から吐出されたオイルOは、ステータコア32に上側から供給される。これにより、オイルOをステータコア32の上側から下側に重力を利用して流すことができる。したがって、ステータコア32の広い範囲に容易にオイルOを供給しやすく、ステータ30の冷却効率を向上できる。
【0063】
本実施形態では、第2上側供給口14から下側斜め前方に噴射されたオイルOは、例えば、上側の固定部32bに堰き止められ、ステータコア32の後側部分の外周面に沿って、後側かつ下側に流れる。このように、本実施形態において第2上側供給口14は、ステータコア32の径方向外側においてステータコア32にオイルOを供給する供給口である。本実施形態において第2上側供給口14は、上側の固定部32bの後側(-X側)に位置する。なお、第2上側供給口14から下側斜め前方に噴射されたオイルOは、上側の固定部32bに接触せずに、後側に流れてもよい。
【0064】
なお、本明細書において「供給口が鉛直方向下側を向く」とは、供給口の向きが、下方向成分を含んでいればよく、供給口が真下を向いていてもよいし、供給口が真下に対して傾いた向きを向いていてもよい。上述したように、本実施形態において第1上側供給口13は、真下を向く第1上側供給口13と、真下に対して前方に斜めに傾いた向きを向く第1上側供給口13と、真下に対して後方に斜めに傾いた向きを向く第1上側供給口13と、を含む。また、本実施形態において第2供給口としての第2上側供給口14は、真下に対して前方に斜めに傾いた向きを向く。本実施形態において「第2上側供給口14が下側を向く」とは、第2上側供給口14が、例えば、真下を向いていてもよいし、真下に対して後方に斜めに傾いた向きを向いていてもよい。
【0065】
図6に示すように、軸方向に見て、第2上側供給口14が開口する向きDI1は、第2上側供給口14を通りステータコア32の外周面と接する接線TL1aが、第2上側供給口14からステータコア32の外周面に向かって延びる向きよりも径方向内側に傾く向きである。そのため、第2上側供給口14から噴射されるオイルOが、オイルOを供給したい部分から外れて遠くへ飛ぶことを抑制できる。これにより、ステータコア32に好適にオイルOを供給できる。したがって、ステータ30の冷却効率をより向上できる。
【0066】
本実施形態では、軸方向に見て、第2上側供給口14が開口する向きDI1は、第2上側供給口14を通りステータコア32の外周面と接する接線TL1aが、第2上側供給口14からステータコア32の外周面に向かって延びる向きよりも下側向きである。そのため、ステータコア32の上側に位置する第2上側供給口14から噴射されるオイルOが、ステータコア32の上側部分から外れて遠くへ飛ぶことを抑制できる。本実施形態では、第2上側供給口14から噴射されるオイルOが上側の固定部32bを乗り越えて前方に飛ぶことを抑制できる。これにより、第2上側供給口14からのオイルOをステータコア32の上側部分に好適に供給できる。したがって、ステータ30の冷却効率をより向上できる。なお、第2上側供給口14から噴射されるオイルOは、上側の固定部32bに対して供給されてもよいし、供給されなくてもよい。
【0067】
本実施形態において接線TL1aは、例えば、円形の第2上側供給口14のうち第1パイプ11の外周面に設けられた端部における中心点CP1を通り、上側の固定部32bの外周面と接する接線である。第2上側供給口14が開口する向きDI1は、第2上側供給口14が第1パイプ11の内周面から外周面までを貫通する向きである。接線TL1aが第2上側供給口14からステータコア32の外周面に向かって延びる向きに対する、第2上側供給口14が開口する向きDI1のなす角度θ1aは、例えば、20°以上、45°以下程度である。角度θ1aは、軸方向に見て、中心点CP1を通り第2上側供給口14が第1パイプ11を貫通する方向と平行に延びる仮想線L1と接線TL1aとがなす角度のうち小さい方の角度である。
【0068】
軸方向に見て、第2上側供給口14が開口する向きDI1は、第2上側供給口14を通りステータコア本体32aの外周面と接する接線TL1bが、第2上側供給口14からステータコア本体32aの外周面に向かって延びる向きよりも径方向内側に傾く向きである。本実施形態では、軸方向に見て、第2上側供給口14が開口する向きDI1は、第2上側供給口14を通りステータコア本体32aの外周面と接する接線TL1bが、第2上側供給口14からステータコア本体32aの外周面に向かって延びる向きよりも下側向きである。そのため、第2上側供給口14からステータコア本体32aに向けてオイルOを噴射しやすい。これにより、第2上側供給口14から噴射されたオイルOが上側の固定部32bをより乗り越えにくくできる。したがって、第2上側供給口14からステータコア32に供給されたオイルOをステータコア32の後側部分に好適に流すことができる。
【0069】
本実施形態において接線TL1bは、例えば、第2上側供給口14の中心点CP1を通り、円筒状のステータコア本体32aの外周面と接する接線である。なお、本実施形態において接線TL1bがステータコア本体32aと接する位置には上側の固定部32bが設けられている。そのため、
図6では、上側の固定部32bが設けられた位置に、二点鎖線でステータコア本体32aの外周面を仮想的に示している。接線TL1bは、当該二点鎖線で仮想的に示されたステータコア本体32aの外周面に接する。
【0070】
接線TL1bが第2上側供給口14からステータコア本体32aの外周面に向かって延びる向きに対する、第2上側供給口14が開口する向きDI1のなす角度θ1bは、例えば、10°以上、30°以下程度である。角度θ1bは、軸方向に見て、仮想線L1と接線TL1bとがなす角度のうち小さい方の角度である。
【0071】
図2および
図3に示すように、第2パイプ12は、ステータ30の前側(+X側)に位置する。本実施形態において第2パイプ12の径方向位置は、固定部32bの径方向位置と同じである。第2パイプ12は、前側の固定部32bの上側に位置する。第1パイプ11と第2パイプ12との周方向の間には、上側に位置する固定部32bが位置する。すなわち、第1パイプ11と第2パイプ12とは、周方向に固定部32bを挟んで配置される。
【0072】
図2に示すように、第2パイプ12は、第2パイプ本体部12aと、第2パイプ本体部12aの左側(+Y側)の端部に設けられた小径部12bと、を有する。また、図示は省略するが、第2パイプ12は、第1パイプ11と同様に、第2パイプ本体部12aの右側(-Y側)の端部に設けられた小径部を有する。
【0073】
小径部12bは、第2パイプ12の左側(+Y側)の端部である。小径部12bの外径は、第2パイプ本体部12aの外径よりも小さい。第2パイプ12は、小径部12bが隔壁61cに右側(-Y側)から挿し込まれて、隔壁61cに固定される。小径部12bは、左側に開口する。
図4に示すように、小径部12bは、第2分岐部94fの前側(+X側)の端部に開口する。これにより、第2パイプ12は、第4の流路94と繋がる。したがって、第1パイプ11と第2パイプ12とは、第4の流路94を介して互いに繋がる。より詳細には、第1パイプ11と第2パイプ12とは、第1分岐部94c、接続部94b、および第2分岐部94fを介して互いに繋がる。
【0074】
図2に示すように、第2パイプ12の右側(-Y側)の端部には、取付部材17が設けられる。取付部材17は、板面が軸方向を向く長方形板状である。第2パイプ12の右側の端部は、第1パイプ11と同様にして、取付部材17に固定される。第2パイプ12の右側の端部は、取付部材17によって塞がれる。図示は省略するが、取付部材17は、取付部材16と同様に、
図3に示す突出部61eにボルトで固定される。これにより、第2パイプ12の右側の端部は、取付部材17を介してモータ収容部61に固定される。突出部61eは、モータ収容部61の内周面において径方向内側に突出する。
【0075】
図2に示すように、第2パイプ12は、複数の下側供給口15を有する。すなわち、冷媒流路としてのパイプ10は、下側供給口15を有する。本実施形態において下側供給口15は、ステータ30に冷媒を供給する冷媒供給口に相当する。また、本実施形態において下側供給口15は、第1供給口に相当する。下側供給口15からは、第2パイプ12内に流入したオイルOが吐出される。下側供給口15は、第2パイプ12の外周面に設けられる。より詳細には、下側供給口15は、第2パイプ本体部12aの外周面に設けられる。複数の下側供給口15は、軸方向に沿って間隔を空けて配置される。下側供給口15は、例えば、6つ設けられる。下側供給口15は、第2パイプ12を内周面から外周面まで貫通する孔である。下側供給口15は、例えば、円形状である。
【0076】
図3に示すように、下側供給口15は、上側を向く。そのため、下側供給口15から上側に吐出されるオイルOをステータ30の上側部分に供給できる。これにより、第2パイプ12からのオイルOをステータ30の上側から下側に重力を利用して流すことができ、ステータ30全体を冷却しやすい。本実施形態において下側供給口15は、上側斜め後方を向く。そのため、ステータ30の前側に位置する下側供給口15から吐出されたオイルOをステータ30の上側部分へと到達させやすい。これにより、第2パイプ12から吐出されたオイルOによってステータ30をより冷却しやすい。なお、下側供給口15から噴射されるオイルOは、上側の固定部32bに対して供給されてもよいし、供給されなくてもよい。
【0077】
下側供給口15は、ステータコア32の前側(+X側)に位置する。本実施形態において下側供給口15は、ステータコア32の上側の端部よりも下側に位置する。本実施形態においてステータコア32の上側の端部とは、例えば、上側の固定部32bの上側の端部である。本実施形態において下側供給口15は、ステータコア本体32aの上側の端部よりも下側に位置し、モータ軸J1よりも上側に位置する。
【0078】
図6に示すように、下側供給口15から吐出されたオイルOは、上側斜め後方に噴射されて、ステータコア本体32aの外周面に供給される。すなわち、本実施形態において下側供給口15は、ステータコア32の径方向外側においてステータコア32にオイルOを供給する供給口である。
【0079】
なお、本明細書において「供給口が上側を向く」とは、供給口の向きが、上方向成分を含んでいればよく、供給口が真上を向いていてもよいし、供給口が真上に対して傾いた向きを向いていてもよい。上述したように本実施形態の下側供給口15は、真上に対して後方に斜めに傾いた向きを向く。本実施形態において下側供給口15が上側を向く」とは、下側供給口15が、例えば、真上を向いていてもよいし、真上に対して前方に斜めに傾いた向きを向いていてもよい。
【0080】
軸方向に見て、下側供給口15が開口する向きDI2は、下側供給口15を通りステータコア32の外周面と接する接線TL2が、下側供給口15からステータコア32の外周面に向かって延びる向きよりも径方向外側に傾く向きである。そのため、
図6に示すように、下側供給口15から噴射されるオイルOを、接線TL2とステータコア32の外周面との接点TP1よりも遠くに飛ばしやすい。これにより、下側供給口15から噴射されるオイルOをステータコア32の広い範囲に供給しやすくできる。したがって、ステータ30の冷却効率を向上できる。
【0081】
本実施形態において接線TL2は、例えば、円形の下側供給口15のうち第2パイプ12の外周面に設けられた端部における中心点CP2を通り、ステータコア本体32aの外周面と接する接線である。下側供給口15が開口する向きDI2は、下側供給口15が第2パイプ12の内周面から外周面までを貫通する向きである。接線TL2が下側供給口15からステータコア32の外周面に向かって延びる向きに対する、下側供給口15が開口する向きDI2のなす角度θ2は、例えば、5°以上、15°以下程度である。角度θ2は、軸方向に見て、中心点CP2を通り下側供給口15が第2パイプ12を貫通する方向と平行に延びる仮想線L2と接線TL2とがなす角度のうち小さい方の角度である。
【0082】
本実施形態では、軸方向に見て、下側供給口15が開口する向きDI2は、接線TL2が、下側供給口15からステータコア32の外周面に向かって延びる向きよりも上側向きである。これにより、ステータコア32の上側の端部よりも下側に位置する下側供給口15から噴射されるオイルOを、ステータコア32のうち、接線TL2とステータコア32の外周面との接点TP1よりも上側に位置する部分まで到達させやすい。これにより、ステータコア32の上側部分にオイルOを好適に供給しやすくでき、ステータ30を冷却しやすい。したがって、ステータ30の冷却効率をより向上できる。
【0083】
このように本実施形態では、冷媒流路としてのパイプ10は、第1供給口としての下側供給口15が設けられた第2パイプ12と、第2供給口としての第2上側供給口14が設けられ、第2パイプ12よりも上側に位置する第1パイプ11と、を含む。そのため、下側供給口15と第2上側供給口14とによって、ステータコア32の上側部分に好適にオイルOを供給できる。これにより、ステータコア32の全体にオイルOを供給しやすく、ステータ30の冷却効率をより向上できる。
【0084】
具体的に本実施形態では、第1パイプ11が、上側の固定部32bの後側に位置する。そのため、第1パイプ11の第2上側供給口14から吐出されるオイルOは、上側の固定部32bよりも後側に流れやすい。これにより、第1パイプ11によってステータコア32の後側部分にオイルOを供給しやすい。一方、第2パイプ12は、上側の固定部32bよりも前側に位置する。そのため、第2パイプ12の下側供給口15から上側に吐出されるオイルOは、上側の固定部32bよりも前側の部分に供給されやすい。これにより、第2パイプ12によってステータコア32の前側部分にオイルOを供給しやすい。したがって、第1パイプ11と第2パイプ12とによって、ステータコア32の前後方向両側にオイルOを供給しやすく、ステータコア32全体を冷却しやすい。そのため、ステータ30の冷却効率をより向上できる。
【0085】
図3に示すように、下側供給口15から接線TL2がステータコア32の外周面と接する接点TP1までの周方向の領域において、ハウジング6の内周面とステータコア32の外周面との径方向の間には隙間Gが設けられる。そのため、下側供給口15から噴射されたオイルOが通る経路が隙間Gによって確保されやすい。これにより、下側供給口15から噴射されたオイルOを、隙間Gを通して、接点TP1よりも遠くに到達させることができる。したがって、下側供給口15から噴射されたオイルOをステータコア32の広い範囲に好適に供給することができる。そのため、ステータ30の冷却効率をより向上できる。本実施形態では、下側供給口15から噴射されたオイルOを、隙間Gを介して、接点TP1よりも上側に位置するステータコア32の部分に好適に供給することができる。そのため、ステータコア32の上側部分にオイルOを好適に供給できる。
【0086】
図1に示すオイルポンプ96は、冷媒としてのオイルOを送るポンプである。本実施形態においてオイルポンプ96は、電気により駆動する電動ポンプである。オイルポンプ96は、第1の流路92aを介してオイル溜りPからオイルOを吸い上げて、第2の流路92b、クーラー97、第3の流路92c、第4の流路94、およびパイプ10を介して、オイルOをモータ2に供給する。すなわち、オイルポンプ96は、ハウジング6の内部に収容されたオイルOを、第4の流路94、第1パイプ11、および第2パイプ12に送る。そのため、第1パイプ11および第2パイプ12に容易にオイルOを送ることができる。
【0087】
オイルポンプ96によって第3の流路92cまで送られたオイルOは、流入部94aから第4の流路94に流入する。
図4に示すように、流入部94aに流入したオイルOは、後側(-X側)に流れて、第1分岐部94cと第2分岐部94fとのそれぞれに分岐して流入する。第1分岐部94cに流入したオイルOは、第1パイプ11の左側(+Y側)の端部から第1パイプ11に流入する。第1パイプ11に流入したオイルOは、第1パイプ11内を右側(-Y側)に流れ、第1上側供給口13および第2上側供給口14からステータ30に供給される。一方、第2分岐部94fに流入したオイルOは、第2パイプ12の左側の端部から第2パイプ12に流入する。第2パイプ12に流入したオイルOは、第2パイプ12内を右側に流れ、下側供給口15からステータ30に供給される。
【0088】
このようにして、第1パイプ11および第2パイプ12からステータ30にオイルOを供給でき、ステータ30を冷却できる。また、流入部94aに流入したオイルOを第1分岐部94cと第2分岐部94fとに分岐させて第1パイプ11と第2パイプ12とにそれぞれ供給できる。そのため、第1パイプ11と第2パイプ12との一方のパイプ10から他方のパイプ10へとオイルOが流れる場合に比べて、第1パイプ11に供給されるオイルOの量と第2パイプ12に供給されるオイルOの量とに偏りが生じることを抑制しやすい。また、各パイプ10にオイルOが供給されるまでの経路を共に短くしやすいため、ステータ30に供給されるオイルOの温度を比較的低いままに維持しやすい。したがって、ステータ30を好適に冷却しやすい。
【0089】
第1パイプ11および第2パイプ12からステータ30に供給されたオイルOは、下側に滴下され、モータ収容部61内の下部領域に溜る。モータ収容部61内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁61cに設けられた隔壁開口68を介してギヤ収容部62のオイル溜りPに移動する。以上のようにして、第2の油路92は、オイルOをステータ30に供給する。
【0090】
図1に示すクーラー97は、第2の油路92を通過するオイルOを冷却する。クーラー97には、第2の流路92bおよび第3の流路92cが接続される。第2の流路92bおよび第3の流路92cは、クーラー97の内部流路を介して繋がる。クーラー97には、図示しないラジエータで冷却された冷却水を通過させる冷却水用配管98が接続される。クーラー97の内部を通過するオイルOは、冷却水用配管98を通過する冷却水との間で熱交換されて冷却される。
【0091】
本実施形態によれば、第1パイプ11と第2パイプ12とは、第4の流路94によって繋がれる。そのため、例えば、本実施形態のように第4の流路94の流入部94aにオイルOを送ることで、第1パイプ11と第2パイプ12との両方にオイルOを供給することができる。すなわち、第1パイプ11と第2パイプ12とのそれぞれに対してオイルOを供給する別々の油路を設ける場合に比べて、ハウジング6に設ける油路を少なくできる。そのため、ハウジング6が大型化することを抑制できる。
【0092】
また、第4の流路94は、ステータ30の左側に位置する隔壁61cに設けられる。そのため、ステータ30と軸方向に重なる位置に第4の流路94を配置できる。これにより、ステータ30の固定部32bと干渉を避けて第4の流路94を配置しやすい。また、例えば第4の流路94をステータ30の径方向外側に設ける場合に比べて、ハウジング6が径方向に大型化することを抑制できる。また、第4の流路94はハウジング6の隔壁61cに設けられるため、ハウジング6の外側に配管等によって第1パイプ11と第2パイプ12とを繋ぐ流路を設ける場合に比べて、駆動装置1全体を小型化しやすい。したがって、本実施形態によれば、駆動装置1が大型化することを抑制できる。
【0093】
また、本実施形態によれば、第4の流路94は、固定部32bよりも径方向内側を通る部分を有する。そのため、第4の流路94を、より固定部32bを避けて配置しやすく、かつ、ハウジング6が径方向に大型化することをより抑制できる。したがって、駆動装置1が大型化することをより抑制できる。
【0094】
また、本実施形態によれば、第1パイプ11と第2パイプ12とは、周方向に固定部32bを挟んで配置される。そのため、第1パイプ11および第2パイプ12を固定部32bに干渉しない位置に配置しつつ、かつ、第1パイプ11および第2パイプ12をステータコア本体32aに対して径方向に近づけて配置できる。したがって、第1パイプ11および第2パイプ12からステータ30にオイルOを供給しやすくでき、かつ、駆動装置1が径方向に大型化することを抑制できる。
【0095】
また、本実施形態によれば、第1パイプ11および第2パイプ12は、軸方向に直線状に延びる。そのため、第1パイプ11および第2パイプ12が径方向に曲がって延びる等の場合に比べて、駆動装置1が径方向に大型化することを抑制できる。また、第1パイプ11の形状および第2パイプ12の形状を単純な形状にできるため、第1パイプ11および第2パイプ12を作りやすい。また、第1パイプ11および第2パイプ12を、軸方向の広範囲に亘ってステータ30と対向させて配置しやすい。そのため、第1パイプ11および第2パイプ12からステータ30の軸方向の広範囲にオイルOを供給しやすい。したがって、ステータ30をより好適に冷却できる。
【0096】
また、本実施形態によれば、モータ軸J1は、鉛直方向と直交する水平方向に延びる。そのため、パイプ10からステータ30の上側にオイルOを供給することで、オイルOをステータ30の上側から下側に重力を利用して流すことができる。これにより、ステータ30全体に容易にオイルOを供給しやすく、ステータ30全体をオイルOによって冷却しやすい。
【0097】
また、本実施形態によれば、第1パイプ11の第1上側供給口13は、コイルエンド33a,33bにオイルOを供給する供給口である。そのため、第1パイプ11から供給されるオイルOによってコイルエンド33a,33bを好適に冷却できる。本実施形態では、第1パイプ11は、ステータ30の上側に位置するため、第1上側供給口13からのオイルOをコイルエンド33a,33bの上側から供給できる。これにより、第1上側供給口13からのオイルOをコイルエンド33a,33bの上側から下側に重力を利用して流すことができる。したがって、コイルエンド33a,33b全体にオイルOを供給しやすく、コイルエンド33a,33b全体を冷却しやすい。
【0098】
また、本実施形態によれば、第1パイプ11の第1上側供給口13は、各コイルエンド33a,33bの上側に複数ずつ配置される。そのため、第1パイプ11からコイルエンド33a,33bに供給されるオイルOの量を多くできる。これにより、発熱体であるコイル31を好適に冷却でき、ステータ30をより好適に冷却できる。
【0099】
また、本実施形態によれば、各コイルエンド33a,33bの上側に位置する複数の第1上側供給口13は、周方向に沿ってジグザグに配置される。そのため、周方向に沿って配置される複数の第1上側供給口13の軸方向位置が交互にずれて配置される。これにより、各コイルエンド33a,33bの上側に位置する複数の第1上側供給口13の軸方向位置が互いに同じである場合よりも、各コイルエンド33a,33bの全体にオイルOを供給しやすい。
【0100】
また、本実施形態によれば、各コイルエンド33a,33bの上側に位置する第1上側供給口13は、下側斜め前方を向く第1上側供給口13と、下側斜め後方を向く第1上側供給口13と、を含む。そのため、複数の第1上側供給口13から供給されるオイルOをコイルエンド33a,33bの前側部分および後側部分の両方に供給しやすく、コイルエンド33a,33bの全体にオイルOを供給しやすい。これにより、コイルエンド33a,33bをより好適に冷却でき、ステータ30をさらに好適に冷却できる。
【0101】
また、本実施形態によれば、第1パイプ11の右側の端部は、取付部材16によって塞がれ、第2パイプ12の右側の端部は、取付部材17によって塞がれる。本実施形態において第1パイプ11の右側の端部は、第1パイプ11にオイルOが流入する側と逆側の端部である。第2パイプ12の右側の端部は、第2パイプ12にオイルOが流入する側と逆側の端部である。すなわち、各パイプの軸方向端部のうち、オイルOが流入する側と逆側の端部は、塞がれる。そのため、各パイプの軸方向端部のうちオイルOが流入する側と逆側の端部が開放される場合に比べて、各パイプ内を流れるオイルOの圧力を大きくしやすい。これにより、各パイプのオイル供給口からオイルOを勢いよく噴射させやすい。したがって、各オイル供給口から吐出されるオイルOをステータ30に好適に供給しやすい。
【0102】
特に、本実施形態の第2パイプ12では下側供給口15が上側を向く。そのため、下側供給口15から上側に勢いよくオイルOを噴射できる。これにより、下側供給口15から吐出されたオイルOを、ステータコア32のうち、より上側に位置する部分まで到達させやすい。したがって、第2パイプ12から吐出されるオイルOをステータコア32の広範囲に亘って供給しやすく、ステータコア32をより好適に冷却できる。
【0103】
<第2実施形態>
図7に示すように、本実施形態の駆動装置101のステータ130において、ステータコア132は、径方向外側に突出する固定部32bを有しない。本実施形態のパイプ110は、例えば、第2パイプ112のみを含む。第2パイプ112は、鉛直方向において、ステータコア132の上側の端部とほぼ同じ位置に配置される。本実施形態においてステータコア132の上側の端部は、ステータコア本体32aの上側の端部である。本実施形態においてパイプ110は、冷媒流路に相当する。
【0104】
第2パイプ112の供給口115は、ステータコア132の上側の端部よりも僅かに下側に位置する。本実施形態において供給口115は、第1供給口に相当する。供給口115は、前側斜め上方を向く。軸方向に見て、供給口115が開口する向きDI3は、供給口115を通りステータコア132の外周面と接する接線TL3が、供給口115からステータコア132の外周面に向かって延びる向きよりも上側向きである。そのため、供給口115から噴射されるオイルOを、ステータコア132のうち、接線TL3とステータコア132の外周面との接点TP2よりも上側に位置する部分まで到達させやすい。本実施形態では、供給口115から噴射されるオイルOを接点TP2よりも後側に到達させやすい。そのため、ステータ130の冷却効率を向上できる。
【0105】
本実施形態では、供給口115から噴射されたオイルOは、ステータコア本体32aの頂部に供給される。ここで、本実施形態のステータコア132は、径方向外側に突出する固定部32bを有しない。そのため、供給口115からステータコア本体32aの外周面に供給されたオイルOが、固定部32bに阻害されることなく、ステータコア本体32aの外周面上を周方向に移動可能である。そのため、ステータコア本体32aの頂部に供給されたオイルOがステータコア本体32aの外周面に沿って前後方向の両側に流れやすく、オイルOをステータコア132の全周に行きわたらせやすくできる。したがって、ステータ130の冷却効率をより向上できる。また、第2パイプ112のみによってステータコア132の全体を好適に冷却できるため、パイプ110の数を少なくでき、駆動装置101の部品点数を低減できる。
【0106】
本実施形態において接線TL3は、例えば、円形の供給口115のうち第2パイプ112の外周面に設けられた端部における中心点CP3を通り、ステータコア本体32aの外周面と接する接線である。供給口115が開口する向きDI3は、供給口115が第2パイプ112の内周面から外周面までを貫通する向きである。接線TL3が供給口115からステータコア132の外周面に向かって延びる向きに対する、供給口115が開口する向きDI3のなす角度θ3は、例えば、15°以上、45°以下程度である。角度θ3は、軸方向に見て、中心点CP3を通り供給口115が第2パイプ112を貫通する方向と平行に延びる仮想線L3と接線TL3とがなす角度のうち小さい方の角度である。
【0107】
なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、第1パイプ11が設けられていてもよい。また、第2パイプ112に、コイルエンド33a,33bにオイルOを供給する供給口が設けられてもよい。
【0108】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成を採用することもできる。上述した実施形態では、冷媒がオイルOである場合について説明したが、これに限られない。冷媒は、ステータに供給されてステータを冷却できるならば、特に限定されない。冷媒は、例えば、絶縁液であってもよいし、水であってもよい。冷媒が水である場合、ステータの表面に絶縁処理を施してもよい。
【0109】
冷媒流路は、第1供給口を有するならば、どのような形状であってもよいし、どのように配置されてもよい。第1供給口の数は、1つ以上であれば、特に限定されない。第2供給口の数は、特に限定されない。第2供給口は、設けられなくてもよい。第1供給口の形状および大きさは、第2供給口の形状および大きさと異なっていてもよい。
【0110】
上述した実施形態では、第1供給口としての下側供給口15と第2供給口としての第2上側供給口14とがそれぞれ異なるパイプ10に設けられる構成としたが、これに限られない。第1供給口と第2供給口とは、同じパイプに設けられてもよい。冷媒流路には、ロータ等のベアリングに潤滑剤としてのオイルを供給する供給口が設けられてもよい。冷媒流路は、パイプでなくてもよい。この場合、冷媒流路は、ハウジングに設けられた孔によって構成される流路であってもよい。
【0111】
上側冷媒流路としての第1パイプの形状および下側冷媒流路としての第2パイプの形状は、特に限定されない。第1パイプおよび第2パイプは、角筒状であってもよい。第1パイプおよび第2パイプは、屈曲して延びてもよいし、曲線状に延びてもよい。第1パイプおよび第2パイプにおいて、冷媒が流入する側と逆側の端部は開放されていてもよい。
【0112】
第1パイプと第2パイプとを繋ぐ流路は、どのような形状であってもよいし、どのような位置に設けられてもよい。例えば、上述した実施形態において、ステータ30の右側に位置する壁部61bに、第1パイプ11と第2パイプ12とを繋ぐ流路が設けられてもよい。第1パイプと第2パイプとを繋ぐ流路は、例えば、分岐するパイプであってもよい。第1パイプと第2パイプとを繋ぐ流路は、設けられなくてもよい。この場合、第1パイプと第2パイプとには、それぞれ別々に冷媒が流入されてもよい。第1パイプと第2パイプとの一方に流入した冷媒が、第1パイプと第2パイプとの他方に流入する構成であってもよい。ポンプは、メカポンプであってもよい。ポンプは、設けられなくてもよい。
【0113】
駆動装置は、モータを動力源として対象となる物体を動かすことができる装置であれば、特に限定されない。駆動装置は、伝達機構を備えなくてもよい。モータのトルクがモータのシャフトから直接対象に出力されてもよい。この場合、駆動装置は、モータそのものに相当する。モータ軸が延びる方向は、特に限定されない。モータ軸は、鉛直方向に延びてもよい。なお、本明細書において「モータ軸が鉛直方向と直交する水平方向に延びる」とは、モータ軸が厳密に水平方向に延びる場合に加えて、モータ軸が略水平方向に延びる場合も含む。すなわち、本明細書において「モータ軸が鉛直方向と直交する水平方向に延びる」とは、モータ軸が水平方向に対して僅かに傾いていてもよい。また、上述した実施形態では、駆動装置がインバータユニットを含まない場合について説明したが、これに限られない。駆動装置は、インバータユニットを含んでいてもよい。言い換えると、駆動装置がインバータユニットと一体構造となっていてもよい。
【0114】
駆動装置の用途は、特に限定されない。駆動装置は、車両に搭載されなくてもよい。本明細書において説明した構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0115】
1,101…駆動装置、2…モータ、3…伝達装置、6…ハウジング、10,110…パイプ(冷媒流路)、11…第1パイプ(上側冷媒流路)、12…第2パイプ(下側冷媒流路)、14…第2上側供給口(第2供給口)、15…下側供給口(第1供給口)、20…ロータ、30,130…ステータ、32,132…ステータコア、55…車軸、115…供給口(第1供給口)、G…隙間、J1…モータ軸、O…オイル(冷媒)、TL1a,TL1b,TL2,TL3…接線、TP1,TP2…接点