(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】クリーニング装置及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
B41J2/01 305
(21)【出願番号】P 2019175023
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】道下 恭弘
(72)【発明者】
【氏名】坂根 広規
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 剛史
(72)【発明者】
【氏名】臼井 将人
(72)【発明者】
【氏名】佐武 健一
(72)【発明者】
【氏名】大畑 志伸
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 俊介
(72)【発明者】
【氏名】為国 雄介
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 譲
(72)【発明者】
【氏名】玉井 宏篤
(72)【発明者】
【氏名】宮越 直人
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-161454(JP,A)
【文献】特開2019-136956(JP,A)
【文献】特開2014-065594(JP,A)
【文献】特開2005-288847(JP,A)
【文献】特開2019-043030(JP,A)
【文献】特開2020-200120(JP,A)
【文献】特開2012-020419(JP,A)
【文献】特開2007-196444(JP,A)
【文献】特開2012-020441(JP,A)
【文献】特開2006-102975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが吐出されたシートを搬送する搬送部材の搬送面にクリーニング液を供給する供給部と、
前記搬送面に付着した前記インクを前記クリーニング液とともに掻き取るブレードと、
前記ブレードにより掻き取られた前記インクと前記クリーニング液とを収容する容器と、
を備えるクリーニングユニットと、
前記供給部と前記ブレードとが前記搬送面に接触する清掃位置と、前記供給部と前記ブレードとが前記搬送面から離間する離間位置と、に前記クリーニングユニットを移動させるユニット移動機構と、を備え、
前記供給部は、前記容器の外部に配置され、
前記容器は、前記容器に収容された前記インクと前記クリーニング液とを前記供給部から隔離することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
前記容器は、
箱状に形成された本体部と、
前記ブレードの先端部の下方に設けられた開口部と、を備え、
前記本体部は、前記開口部を通じて前記本体部に収容された前記インクと前記クリーニング液とを前記供給部から隔離することを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項3】
前記供給部は、
管状に形成され、内部に前記クリーニング液を収容し、径方向に貫通する複数の貫通穴が形成され、軸心周りに回転可能な中空軸と、
前記中空軸の外周面に形成され、前記複数の貫通穴から流出した前記クリーニング液が含浸される含浸層と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のクリーニング装置。
【請求項4】
前記供給部は、前記クリーニング液が含浸された含浸ウェブを前記搬送面に押し当てる含浸ウェブ押圧部と、
前記含浸ウェブの未使用部分を前記含浸ウェブ押圧部に供給する含浸ウェブ駆動機構と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のクリーニング装置。
【請求項5】
前記クリーニング液は、潮解性付与剤を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項6】
前記インクを吐出することで前記シートに画像を形成する画像形成部と、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のクリーニング装置と、を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング装置及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンター等の画像形成装置は、シートを搬送する搬送ローラー(レジストローラーを含む)を備えているが、搬送ローラーの搬送面(シートが接触する面)に紙粉やインク等の異物が付着すると、搬送不良や画質不良が生じるおそれがある。そこで、従来、搬送ローラーの搬送面から異物を除去する技術が検討されている。例えば、特許文献1では、クリーニングウェブと、クリーニングウェブをレジストローラーに押圧する加圧ローラーと、加圧ローラーに紙粉等の帯電極性と逆極性でレジストローラーと同極性の電圧を印加する電圧印加手段を備える清掃装置が提案されている。特許文献2では、クリーニング液を供給する供給ローラーとクリーニング液を吸収する吸液ローラーとを搬送ローラー対に接触させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-117420号公報
【文献】特開2014-65594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インクジェット記録装置の高速化が進むにつれて、インクがシートに十分に定着していない(乾燥していない)状態でシートが搬送されることで搬送ローラーにインクが付着しやすくなるという問題がある。また、両面印刷においては、片面の印刷後に表裏反転されたシートがレジストローラーに搬送されてくるが、レジストローラーは、他の搬送ローラーと比べてニップ圧が高いため、シート上のインクが付着しやすい。また、シートが搬送される過程で水分がシートに吸収されたり蒸発したりするため、レジストローラーに付着したインクは、粘性が増加して付着力が強くなっている。
【0005】
このような事情から、搬送ローラー(レジストローラーを含む)に付着したインクを除去する技術の必要性が高まっているが、水系インクは、水分を含み、帯電しにくいため、特許文献1で提案された電荷勾配によるクリーニングは効果が期待できない。また、特許文献2で提案された吸水性を有する材料でのクリーニングは一定の効果があると考えられるが、吸収したクリーニング液が蓄積されることで吸水性が経時的に低下するため、クリーニング効果も経時的に低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮し、搬送ローラーに付着したインクを除去する能力の経時的な低下を抑制することのできるクリーニング装置及びインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るクリーニング装置は、インクが吐出されたシートを搬送する搬送部材の搬送面にクリーニング液を供給する供給部と、前記搬送面に付着した前記インクを前記クリーニング液とともに吸収するウェブを前記搬送面に押し当てるウェブ押圧部と、前記ウェブの未使用部分を前記ウェブ押圧部に供給するウェブ駆動機構と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るクリーニング装置において、前記ウェブ駆動機構は、前記ウェブの未使用部分を間欠的に前記ウェブ押圧部に供給するように構成されてもよい。
【0009】
また、本発明に係るクリーニング装置は、インクが吐出されたシートを搬送する搬送部材の搬送面にクリーニング液を供給する供給部と、前記搬送面に付着した前記インクを前記クリーニング液とともに掻き取るブレードと、前記ブレードにより掻き取られた前記インクと前記クリーニング液とを収容する容器と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るクリーニング装置において、前記供給部は、管状に形成され、内部に前記クリーニング液を収容し、径方向に貫通する複数の貫通穴が形成され、軸心周りに回転可能な中空軸と、前記中空軸の外周面に形成され、前記複数の貫通穴から流出した前記クリーニング液が含浸される含浸層と、を備えていてもよい。
【0011】
本発明に係るクリーニング装置において、前記供給部は、前記クリーニング液が含浸された含浸ウェブを前記搬送面に押し当てる含浸ウェブ押圧部と、前記含浸ウェブの未使用部分を前記含浸ウェブ押圧部に供給する含浸ウェブ駆動機構と、を備えていてもよい。
【0012】
本発明に係るクリーニング装置において、前記クリーニング液は、潮解性付与剤を含有していてもよい。
【0013】
また、本発明に係るインクジェット記録装置は、前記インクを吐出することで前記シートに画像を形成する画像形成部と、上記のいずれかのクリーニング装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、搬送ローラーに付着したインクを除去する能力の経時的な低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るプリンターの内部構成を模式的に示す正面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るレジストローラー装置、クリーニングユニット及びユニット移動機構の構成を模式的に示す正面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るクリーニングユニットの斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るクリーニングユニットの斜視図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るクリーニングユニット及びウェブ駆動機構の正面図である。
【
図6】クリーニングユニットが着脱位置に位置する様子を示す正面図である。
【
図7】クリーニングユニットが離間位置に位置する様子を示す正面図である。
【
図8】クリーニングユニットが清掃位置に位置する様子を示す正面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態の変形例に係るクリーニング装置の構成を模式的に示す正面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係るクリーニング装置の構成を模式的に示す正面図である。
【
図11】本発明の第2実施形態の変形例に係るクリーニング装置の構成を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
以下、図面を参照しつつ本発明の第1実施形態に係るクリーニング装置60及びプリンター1(インクジェット記録装置)について説明する。
【0017】
まず、
図1を参照して、プリンター1の全体の構成について説明する。
図1は、プリンター1の内部構成を模式的に示す正面図である。以下、
図1における紙面手前側をプリンター1の正面側(前側)とし、左右の向きはプリンター1を正面から見た方向を基準として説明する。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。以下の説明において、上流側、下流側とは、それぞれシートSの搬送方向上流側、搬送方向下流側を意味する。
【0018】
図1に示されるように、プリンター1は、インクを吐出してシートSに画像を形成するインクジェット式の画像形成装置であり、シートSに対して片面印刷及び両面印刷が可能である。プリンター1は、各種機器が収容される箱形のハウジング10を備える。ハウジング10内の下部にはシートSが収容される引き出し可能な給紙カセット15が設けられ、ハウジング10の右側面11にはシートSが手差しで積載される手差しトレイ16が設けられている。ハウジング10の左側面12の上部には、画像形成済みのシートSが積載される排紙トレイ17が設けられ、左側面12における排紙トレイ17の上方の部分には、シートSが排出される排紙口56が形成されている。シートSは、普通紙、コート紙等の枚葉シートである。
【0019】
ハウジング10内の中央部には、シートSに画像を形成する画像形成部41が設けられ、画像形成部41の下方には、画像が形成されるシートSを搬送する第1搬送ユニット44が設けられ、第1搬送ユニット44の左方には、画像形成済みのシートSを搬送する第2搬送ユニット50が設けられている。
【0020】
ハウジング10内の右側部には、給紙カセット15から第1搬送ユニット44に至る第1搬送路21と、手差しトレイ16から第1搬送路21に合流する手差し搬送路24が形成されている。ハウジング10内の左側部には、第2搬送ユニット50から排紙トレイ17に至る第2搬送路22が形成されている。ハウジング10内の上部には、第2搬送路22から分岐して第1搬送路21に合流する第3搬送路23が形成されている。
【0021】
第1搬送路21の上流側端部には、給紙部18が設けられ、第1搬送路21の給紙部18よりも下流側には、レジストローラー装置30が設けられている。給紙部18は、給紙カセット15に収容されたシートSを1枚ずつ第1搬送路21に送り出すローラーを備える。レジストローラー装置30は、上下に対向する一対のレジストローラー32、33を備える。一対のレジストローラー32、33が互いに当接することで、シートSが挟持されるニップ領域N1が形成される。
【0022】
手差し搬送路24は、給紙部18とレジストローラー装置30との間で第1搬送路21に合流する。手差し搬送路24の上流側端部には、手差し給紙部19が設けられている。手差し給紙部19は、手差しトレイ16に積載されたシートSを1枚ずつ手差し搬送路24に送り出すローラーを備える。
【0023】
画像形成部41には、インクを吐出する複数のラインヘッド42Bk、42C、42M、42Yが設けられている。ラインヘッド42Bk、42C、42M、42Yは、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のインクを吐出する。
【0024】
第1搬送ユニット44は、複数の張架ローラー46a乃至46eに巻き掛けられた第1搬送ベルト45を備える。張架ローラー46aがモーター等の駆動源(図示省略)で駆動されることで、第1搬送ベルト45がY2方向に駆動される。第1搬送ベルト45には多数の貫通穴が形成されている。第1搬送ベルト45の内側の画像形成部41に対向する位置には、第1搬送ベルト45の貫通穴に負圧を生じさせる第1吸引部47が設けられている。
【0025】
第2搬送ユニット50は、複数の張架ローラー52a、52bに巻き掛けられた第2搬送ベルト51を備える。張架ローラー52aがモーター等の駆動源(図示省略)で駆動されることで、第2搬送ベルト51がY3方向に駆動される。第2搬送ベルト51には多数の貫通穴が形成されている。第2搬送ベルト51の内側の上部には、第2搬送ベルト51の貫通穴に負圧を生じさせる第2吸引部53が設けられている。
【0026】
第2搬送路22の上流側端部には、デカール装置54が設けられ、第2搬送路22の下流側端部には、排紙部55が設けられている。デカール装置54は、複数のローラーに巻き掛けられたベルトと、ベルトに当接するローラーとを備え、モーター等の駆動源(図示省略)で駆動される。排紙部55は、第2搬送路22から排紙トレイ17にシートSを排出するローラーを備える。第2搬送路22の上流側端部と下流側端部の間には案内部材25が設けられている。案内部材25は、モーター等の駆動源(図示省略)により揺動する楔状の部材であり、第2搬送路22と第3搬送路23とのいずれかを閉鎖する。
【0027】
第3搬送路23は、第2搬送路22から分岐する上流側搬送路23aと、上流側搬送路23aから分岐してレジストローラー装置30よりも上流側で第1搬送路21に合流する下流側搬送路23bとを備え、上流側搬送路23aと下流側搬送路23bとの分岐点に、反転ローラー26と案内部材27とを備える。反転ローラー26は、正回転と逆回転が可能である。案内部材27は、モーター等の駆動源(図示省略)により揺動する楔状の部材であり、上流側搬送路23aと下流側搬送路23bとのいずれかを閉鎖する。
【0028】
次に、プリンター1の画像形成動作について説明する。プリンター1に画像形成指示が入力されると、シートSが、給紙カセット15又は手差しトレイ16から送り出され、第1搬送路21に沿ってY1方向に搬送される。シートSがレジストローラー装置30に到達すると、回転を停止したレジストローラー装置30のニップ領域N1にシートSの先端部(下流側端部)が突き当てられることでシートSのスキューが矯正され、画像形成部41によるインクの吐出タイミングに同期させてレジストローラー装置30から第1搬送ユニット44にシートSが搬送される。シートSは、第1搬送ベルト45の貫通穴の負圧によって第1搬送ベルト45に吸着され、Y2方向に搬送される。そして、各ラインヘッド42Bk、42C、42M、42Yから第1搬送ベルト45に吸着されたシートSに向けてインクが吐出されることでシートSの第1面に画像が形成される。
【0029】
第1面に画像が形成されたシートSは、第1搬送ユニット44によって第2搬送ユニット50に搬送され、第2搬送ベルト51の貫通穴の負圧によって第2搬送ベルト51に吸着され、Y3方向に搬送される。続いて、シートSは、デカール装置54に搬送され、デカール装置54に挟持搬送されることでカールが矯正される。片面印刷動作時には、案内部材25が第3搬送路23を閉鎖することでシートSが第2搬送路22に沿ってY4方向に搬送され、排紙部55によってシートSが排紙トレイ17に排出される。
【0030】
一方、両面印刷動作時には、案内部材25が第2搬送路22を閉鎖することでシートSが第3搬送路23に案内され、案内部材27が下流側搬送路23bを閉鎖するとともに反転ローラー26が正回転することでシートSがY5方向に搬送される。シートSの左端部が反転ローラー26に到達すると、案内部材27が上流側搬送路23aを閉鎖するとともに反転ローラー26が逆回転することでシートSが下流側搬送路23bにスイッチバックされ、Y6方向に搬送される。そして、シートSは、表裏反転された状態でレジストローラー装置30に搬送される。シートSは、レジストローラー装置30によってスキューが矯正された後、第1搬送ユニット44に搬送され、シートSの第2面に画像が形成される。第2面に画像が形成されたシートSは、第2搬送ユニット50によりY3方向に搬送され、デカール装置54によってカールが矯正され、第2搬送路22に沿ってY4方向に搬送され、排紙部55によって排紙口56から排紙トレイ17に排出される。
【0031】
ところで、両面印刷動作においては、第1面に画像が形成された後、第1面を下向きにした状態でレジストローラー装置30にシートSが搬送される。このとき、第1面のインクが下側のレジストローラー33(搬送部材の一例)に付着し、付着したインクが後続のシートSに転写されて画質不良が発生するおそれがある。そこで、本実施形態に係るプリンター1は、レジストローラー33に付着したインクをクリーニング装置60によって除去するように構成されている。なお、上記の画質不良は、比較的シート上に色材が残存しやすい顔料系インクの場合に発生しやすい。従って、本実施形態では顔料系インクの使用を想定するが、染料系インクを用いるインクジェット記録装置に本発明が適用されてもよい。
【0032】
以下、
図2乃至8を参照して、レジストローラー装置30及びクリーニング装置60について説明する。
図2は、レジストローラー装置30、クリーニングユニット61及びユニット移動機構62の構成を模式的に示す正面図である。
図3及び4は、クリーニングユニット61の斜視図である。
図5は、クリーニングユニット61及びウェブ駆動機構63の正面図である。
図6は、クリーニングユニット61が着脱位置P3に位置する様子を示す正面図である。
図7は、クリーニングユニット61が離間位置P2に位置する様子を示す正面図である。
図8は、クリーニングユニット61が清掃位置P1に位置する様子を示す正面図である。
【0033】
レジストローラー装置30及びクリーニング装置60は、制御装置120によって制御される。制御装置120は、プロセッサーを用いてソフトウェアによって実現されてもよいし、集積回路等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。プロセッサーを用いる場合には、プロセッサーがメモリーに記憶されているプログラムを読み出して実行することで各種処理が実施される。プロセッサーとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)が使用される。メモリーは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体によって構成される。メモリーには、プリンター1の各部の制御に用いられる制御プログラムが記憶される。
【0034】
[レジストローラー装置]
レジストローラー装置30(
図2参照)は、シートSの搬送路が形成されたレジストハウジング31を有する。一対のレジストローラー32、33は、前後方向を軸方向として配置され、レジストハウジング31の前後の側壁に支持されている。上側のレジストローラー32は、金属で形成されている。下側のレジストローラー33は、ゴム製ローラーの外周面にPFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)チューブが被せられたものである。下側のレジストローラー33は、上側のレジストローラー32に対して僅かにシートSの搬送方向の上流側(右側)に位置している。
【0035】
ばね等の付勢手段(図示省略)によりレジストローラー32がレジストローラー33に押し当てられることで、レジストローラー33の搬送面34が部分的に潰れてレジストローラー32と面接触し、ニップ領域N1が形成される。一対のレジストローラー32、33には動力伝達機構(図示省略)を介してレジスト用モーター35が連結されている。ニップ領域N1において一対のレジストローラー32、33にシートSが挟み込まれ、レジスト用モーター35の駆動力によって一対のレジストローラー32、33が回転されることで、シートSが画像形成部41(
図1参照)に向けて搬送される。
【0036】
[クリーニング装置]
クリーニング装置60(
図2参照)は、レジストローラー装置30の下方に設けられている。クリーニング装置60は、インクが吐出されたシートSを搬送するレジストローラー33(搬送部材)の搬送面34にクリーニング液を供給する含浸ローラー83(供給部の一例)と、搬送面34に付着したインクをクリーニング液とともに除去する除去部と、を備える。除去部は、搬送面34に付着したインクをクリーニング液とともに吸収するウェブW1を搬送面34に押し当てる押圧ローラー67(ウェブ押圧部の一例)と、ウェブW1の未使用部分を押圧ローラー67に供給するウェブ駆動機構63と、を備える。
【0037】
具体的には、クリーニング装置60は、ハウジング10に対して着脱可能なクリーニングユニット61(
図2乃至5参照)と、ハウジング10に固定されたユニット移動機構62(
図2参照)及びウェブ駆動機構63(
図5参照)と、を備える。クリーニングユニット61がハウジング10に装着されることで、クリーニングユニット61にユニット移動機構62及びウェブ駆動機構63が連結される。ユニット移動機構62によってクリーニングユニット61が上下方向に移動し、ウェブ駆動機構63によってウェブW1の未使用部分が繰り出される。
【0038】
[クリーニングユニット]
クリーニングユニット61は、クリーニング液が含浸される含浸ローラー83と、ウェブW1を繰り出す繰り出しローラー66と、ウェブW1を搬送面34に押し当てる押圧ローラー67と、ウェブW1を巻き取る巻き取りローラー68と、を備える。
【0039】
図3及び4に示されるように、クリーニングユニット61は、全体として前後方向を長手方向とする形状のクリーニングフレーム71を備える。クリーニングフレーム71は、前後方向に対向する一対の支持フレーム72、73と、一対の支持フレーム72、73の下部を連結する下部フレーム74と、一対の支持フレーム72、73の右側部を連結する側部フレーム75とを備える。
【0040】
図2乃至4に示されるように、一対の支持フレーム72、73の左上部には、含浸ローラー83の前後両端部が支持されている。一対の支持フレーム72、73の右下部には、繰り出しローラー66の前後両端部が支持されている。一対の支持フレーム72、73の右上部には、押圧ローラー67の前後両端部が支持されている。一対の支持フレーム72、73の左下部には、巻き取りローラー68の前後両端部が支持されている。含浸ローラー83、繰り出しローラー66、押圧ローラー67、巻き取りローラー68が一対の支持フレーム72、73に支持されるとともに、下部フレーム74及び側部フレーム75によって一対の支持フレーム72、73が連結されることで、クリーニングフレーム71の剛性が確保されている。クリーニングフレーム71の上部は開放されており、含浸ローラー83と、押圧ローラー67に巻き掛けられたウェブW1が露出されている。
【0041】
[含浸ローラー]
含浸ローラー83(
図2参照)は、管状に形成され、内部にクリーニング液を収容し、径方向に貫通する複数の貫通穴85hが形成され、軸心周りに回転可能な中空軸85と、中空軸85の外周面に形成され、複数の貫通穴85hから流出したクリーニング液が含浸される含浸層84と、を備える。中空軸85は、アルミニウム合金製の円筒形の管であり、クリーニング液が通過可能な大きさの微細な複数の貫通穴85hが形成されている。含浸層84は、発泡体又は不織布で形成され、吸水性を有する。発泡体は、連続気泡を有する弾性材料であり、例えば、ウレタン、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、シリコーン等で形成される。不織布は、例えば、フェルト、レーヨン不織布等が用いられる。
【0042】
ハウジング10内には、クリーニング液を貯留するタンク86と、タンク86と含浸ローラー83の中空軸85とに接続された補給管87と、タンク86からクリーニング液を送り出すポンプ88と、が設けられている。クリーニング液は、潮解性付与剤を含有する水である。潮解性付与剤は、例えば、1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)-5,5-ジメチル-2,4-イミダゾリジンジオン(特開2019-43030号公報等参照)が用いられる。ポンプ88は、例えばギアポンプ、ダイヤフラムポンプ等である。
【0043】
[ウェブ]
ウェブW1は、吸水性を有する不織布や織布等の帯状の材料によって形成されている。繰り出しローラー66の外周面にはウェブW1がロール状に巻かれたウェブロールWR1が装着され、ウェブロールWR1から繰り出されたウェブW1が押圧ローラー67の外周面に巻き掛けられ、ウェブW1の先端が巻き取りローラー68の外周面に固定されている。ウェブW1は、押圧ローラー67によって下側のレジストローラー33の搬送面34に押圧されている。押圧ローラー67はゴム等の弾性材料によって形成されており、押圧ローラー67がレジストローラー33に押し当てられることで、押圧ローラー67の外周面が部分的に潰れてウェブW1とレジストローラー33の搬送面34とが面接触し、ニップ領域N2が形成される。
【0044】
押圧ローラー67のシャフトには、トルクリミッター76が設けられている(
図3、4参照)。シートSが一対のレジストローラー32、33に挟持された状態で詰まった場合、一対のレジストローラー32、33からシートSを引き抜く必要があるが、シートSを引き抜くときにシートSとの摩擦により押圧ローラー67が回転させられてしまう。トルクリミッター76は、押圧ローラー67に過度な回転力が伝わった場合に、押圧ローラー67をロックすることで、繰り出しローラー66からウェブW1が繰り出されることを防止する。
【0045】
一対の支持フレーム72、73の左下部の外面には、ユニット移動機構62(
図2参照)に連結される支持ピン77が設けられている。一対の支持フレーム72、73の右上部の外面には、ハウジング10に対するクリーニングユニット61の移動をガイドするガイドローラー78が設けられている。前側の支持フレーム72の右下部には、ウェブ駆動機構63(
図5参照)に連結される入力ギア79が設けられている。入力ギア79は、クリーニングフレーム71内に設けられた動力伝達機構(図示省略)を介して巻き取りローラー68に連結されている。
【0046】
下部フレーム74は、クリーニングフレーム71の底面を形成しており、ウェブW1等から落下したインクの受け皿になっている。側部フレーム75は、クリーニングフレーム71の右側面の上半部を覆っており、クリーニングフレーム71の右側面の下半部は開口している。この右側面の開口からウェブロールWR1を視認することで、ウェブロールWR1の残量の少ないクリーニングユニット61がハウジング10に誤装着されることが防止される。また、下部フレーム74には、クリーニングフレーム71の左側面を覆うことで第1搬送ベルト45(
図1参照)側へのインクの飛散を防止するシート部材80が取り付けられている。
【0047】
[ユニット移動機構]
ユニット移動機構62(
図2参照)は、清掃位置P1と、清掃位置P1の下方の離間位置P2(
図7参照)と、離間位置P2の下方の着脱位置P3(
図6参照)との間でクリーニングユニット61を移動させるように構成されている。清掃位置P1は、押圧ローラー67に巻き掛けられたウェブW1がレジストローラー33の搬送面34に接する位置であり、離間位置P2は、清掃位置P1からクリーニングユニット61が離間した位置であり、着脱位置P3はハウジング10にクリーニングユニット61が着脱可能な位置である。清掃位置P1ではクリーニングユニット61とウェブ駆動機構63(
図5参照)とが連結され、離間位置P2ではクリーニングユニット61とウェブ駆動機構63との連結が解除される。ハウジング10には、クリーニングユニット61がハウジング10に装着されたことを検知するセンサー(図示省略)が設けられている。
【0048】
ユニット移動機構62は、ハウジング10に支持された回転可能な支持シャフト91と、支持シャフト91に固定された前後一対(後側のみ図示)の揺動アーム92と、支持シャフト91に動力伝達機構(図示省略)を介して連結されたクリーニング用モーター94とを有している。揺動アーム92の基端部は支持シャフト91に固定されており、揺動アーム92の先端部にはクリーニングユニット61の支持ピン77を受け止めるフック93が形成されている。フック93は揺動アーム92の縁部に形成された切り欠きであり、フック93にクリーニングユニット61の支持ピン77が入り込むことで、クリーニングユニット61が、一対の揺動アーム92に支持され、一対の揺動アーム92に対して相対的に回転可能となる。
【0049】
図6に示されるように、ユニット移動機構62は、クリーニングユニット61を着脱位置P3から清掃位置P1(
図8参照)までガイドする前後一対(後側のみ図示)のガイド部115を有している。各ガイド部115には、クリーニングユニット61のガイドローラー78に接するガイド面116が形成されている。クリーニング用モーター94から支持シャフト91に駆動力が伝達されると、揺動アーム92が支持シャフト91を中心に揺動し、クリーニングユニット61が着脱位置P3、離間位置P2、清掃位置P1に位置決めされる。また、ユニット移動機構62には、クリーニングユニット61の位置を検知するための第1センサー95、第2センサー96が設けられている。
【0050】
第1センサー95及び第2センサー96は、例えばフォトインタラプターであり、光が遮られた場合と光が遮られない場合とで異なるレベルの信号を出力する。クリーニング用モーター94の出力軸には、複数のスリットが放射状に等間隔で形成されたパルス板97が固定されている。第1センサー95は、パルス板97の回転により交互にレベルが変化するパルス信号を出力する。制御装置120は、第1センサー95から出力されたパルス信号に基づいて、着脱位置P3を基準としたクリーニング用モーター94の回転量を求め、求められた回転量からクリーニングユニット61の位置を判定する。第2センサー96は、クリーニングユニット61が清掃位置P1に位置する場合にクリーニングユニット61に光を遮られる位置に配置されており、光を遮られていない場合に第1レベルの検知信号を出力し、光を遮られた場合に第2レベルの検知信号を出力する。制御装置120は、第2センサー96から出力された検知信号が第1レベルから第2レベルに変化した場合にクリーニングユニット61が清掃位置P1に移動したと判定する。
【0051】
クリーニング用モーター94には制御装置120が接続されている。制御装置120からクリーニング用モーター94に回転量がフィードバックされることで、クリーニング用モーター94がサーボ制御され、クリーニングユニット61の移動量が調整される。なお、第1センサー95は、クリーニング用モーター94の回転量を検知可能であればよく、第2センサー96は、清掃位置P1のクリーニングユニット61を検知可能であればよい。よって、第1センサー95及び第2センサー96は、フォトリフレクター等でもよい。
【0052】
[ウェブ駆動機構]
ウェブ駆動機構63(
図5参照)は、クリーニングユニット61に駆動力を伝達してレジストローラー33(
図2参照)の搬送面34と押圧ローラー67とのニップ領域N2にウェブW1の未使用部分を間欠的に供給する。上記したように、ウェブ駆動機構63は、クリーニングユニット61が清掃位置P1に位置決めされることで、クリーニングユニット61に連結され、クリーニングユニット61に動力を伝達する。ウェブ駆動機構63には駆動源としてウェブ用ソレノイド101(ソレノイドアクチュエーター)が設けられている。
【0053】
ウェブ用ソレノイド101の上部からは鉄芯と一体化されたロッド102の先端部が露出しており、制御装置120から出力される駆動指令に従ってロッド102が上下方向に出没する。ウェブ用ソレノイド101の左隣りにはロッド102の出没動作を回転動作に変換する揺動レバー103が設けられている。揺動レバー103は、支持シャフト104を介してハウジング10に支持され、時計回りに付勢されている。揺動レバー103は、支持シャフト104から側方に延びる側方レバー105と、支持シャフト104から下方に延びる下方レバー106とを有するL字状に形成されている。側方レバー105の下面にはロッド102の先端が当接し、下方レバー106の下端には検知片107が設けられている。
【0054】
支持シャフト104の後端には支持シャフト104と一体に回転する出力ギア108が設けられている。支持シャフト104にはワンウェイクラッチ(図示省略)を介して揺動レバー103が連結されており、ロッド102が下方に退避することで揺動レバー103が時計回りに揺動した場合に、支持シャフト104と出力ギア108が回転する。一方、ロッド102が上方に突出することで揺動レバー103が反時計回りに揺動した場合には、支持シャフト104と出力ギア108は回転しない。出力ギア108には、複数の伝達ギア111、112を介してクリーニングユニット61の入力ギア79が連結されている。入力ギア79は、動力伝達機構(図示省略)を介して巻き取りローラー68に連結されている。従って、
図5に示されるように、揺動レバー103が時計回りに揺動した場合にのみ、巻き取りローラー68が駆動されてウェブW1が巻き取られる。ウェブW1の巻き取り方向は一方向であり、ウェブW1の逆巻きや弛みを防止するために、繰り出しローラー66に制動機構(図示省略)が設けられ、巻き取りローラー68にワンウェイクラッチ(図示省略)が設けられている。
【0055】
下方レバー106の下方には、検知片107を検知する第3センサー109が設けられている。第3センサー109は、例えばフォトインタラプターであり、揺動レバー103が時計回りに揺動した場合には、検知片107に光を遮られないため第1レベルの検知信号を出力し、揺動レバー103が反時計回りに揺動した場合には、検知片107に光を遮られるため第2レベルの検知信号を出力する。なお、第3センサー109は、検知片107を検知可能であればよいため、フォトリフレクター等でもよい。
【0056】
[クリーニング装置の動作]
次に、
図5乃至8を参照して、クリーニング装置60の動作について説明する。
【0057】
[クリーニングユニットの移動動作]
ハウジング10にクリーニングユニット61が装着されたとき、クリーニングユニット61は着脱位置P3に位置する(
図6参照)。着脱位置P3においては、揺動アーム92の先端部が下方に向けられており、フック93によってクリーニングユニット61の支持ピン77が支持されている。また、クリーニングユニット61のガイドローラー78がガイド部115のガイド面116から離間している。
【0058】
ハウジング10にクリーニングユニット61が装着されたことが検知されると、制御装置120からの駆動指令によってクリーニング用モーター94が駆動され、支持シャフト91に固定された揺動アーム92が反時計回りに揺動する。揺動アーム92のフック93によってクリーニングユニット61の支持ピン77が押し上げられ、クリーニングユニット61のガイドローラー78がガイド部115のガイド面116上を転がることで、クリーニングユニット61が着脱位置P3から上方に移動する。このとき、クリーニングユニット61の支持ピン77が揺動アーム92のフック93に相対的に回転可能なため、揺動アーム92の揺動に従ってクリーニングユニット61がスムーズに持ち上げられる。
【0059】
制御装置120は、第1センサー95から出力されたパルス信号に基づいてクリーニングユニット61の位置を判定し、クリーニングユニット61が離間位置P2に到達したと判定すると、クリーニング用モーター94の駆動を停止し、クリーニングユニット61を離間位置P2に位置決めする(
図7参照)。制御装置120は、レジストローラー33の非清掃時には、クリーニングユニット61を離間位置P2に待機させる。
【0060】
プリンター1に両面印刷の指示が入力されると、制御装置120からの駆動指令によってクリーニング用モーター94が駆動され、揺動アーム92がさらに反時計回りに揺動し、第2センサー96によりクリーニングユニット61が検知されることでクリーニングユニット61が清掃位置P1に位置決めされる(
図8参照)。このとき、クリーニングユニット61とウェブ駆動機構63が連結される(
図5参照)。
【0061】
[清掃動作]
清掃位置P1においては、含浸ローラー83とウェブW1がレジストローラー33の搬送面34に押し当てられた状態で、レジストローラー33が
図8のA方向に回転する。レジストローラー33の回転に追従して含浸ローラー83が回転することで、クリーニング液が、遠心力により中空軸85の貫通穴85hから流出して含浸層84に含侵され、含浸層84から滲み出て搬送面34に付着し、搬送面34に付着したインクと混ざり合う。インクは、クリーニング液で希釈され、クリーニング液とともにウェブW1に吸収される。
【0062】
なお、クリーニングユニット61によるレジストローラー33の清掃中に、制御装置120からクリーニング用モーター94に励磁電流が供給され続けることで、揺動アーム92の下方への揺動が抑えられてクリーニングユニット61が清掃位置P1に保持される。
【0063】
搬送面34に付着したインクは、第1面の画像形成時にシートSに吐出されたインクがシートSから転写されたものであるが、第1面の画像形成後のシートSの搬送中に水分がシートSに吸収されたり蒸発したりするため、粘性が増加して付着力が強くなっている。本実施形態では、搬送面34に付着したインクは、含浸ローラー83から供給されたクリーニング液によって希釈されるため、粘性が減少して付着力が弱くなる。よって、インクをクリーニング液で希釈しない場合と比べて、インクがウェブW1に吸収されやすくなる。また、中空軸85にクリーニング液が収容されているから、クリーニング液が含浸層84に含侵された状態を持続させることができる。また、タンク86から含浸ローラー83にクリーニング液が補給されるから、クリーニング液の枯渇が起こりにくくなる。また、クリーニング液が潮解性付与剤を含有しているから、インクがクリーニング液に溶解しやすくなる。
【0064】
[ウェブの巻き取り動作]
両面印刷の実行中には、制御装置120からの駆動指令に従ってウェブ用ソレノイド101のロッド102が周期的に出没を繰り返す。ロッド102が突出した場合には、揺動レバー103が反時計回りに揺動し、ワンウェイクラッチによって支持シャフト104に対して揺動レバー103が空転する。一方で、ロッド102が退避した場合には、揺動レバー103が時計回りに揺動し、ワンウェイクラッチを介して揺動レバー103と支持シャフト104が一体に回転する。こうして、支持シャフト104の後端の出力ギア108から伝達ギア111、112を介してクリーニングユニット61の入力ギア79に駆動力が伝達される。
【0065】
そして、クリーニングユニット61において、入力ギア79から動力伝達機構(図示省略)を介して巻き取りローラー68に駆動力が伝達され、巻き取りローラー68によって繰り出しローラー66のウェブロールWR1からウェブW1が巻き取られる。このように、ウェブ駆動機構63は、ウェブ用ソレノイド101のロッド102のストロークを利用して、ウェブW1の使用済み部分を間欠的に巻き取る。ウェブW1の使用済み部分が間欠的に巻き取られることで、繰り出しローラー66からウェブW1の未使用部分が間欠的に繰り出され、押圧ローラー67とレジストローラー33とのニップ領域N2にウェブW1の未使用部分が間欠的に供給される。
【0066】
制御装置120は、第3センサー109からの検知信号が第1レベルから第2レベルに変化した回数を、検知片107の検知回数として計数し、検知回数からウェブロールWR1の繰り出し量を算出する。繰り出し量が所定量に達した場合には、制御装置120は、クリーニングユニット61の交換を促すメッセージを操作パネル(図示省略)に表示させる。
【0067】
以上説明した本実施形態に係るクリーニング装置60によれば、搬送面34にウェブW1の未使用部分が供給されるから、搬送面34にウェブW1の未使用部分を供給する構成を備えない場合と比べて、搬送面34に押し当てられるウェブW1の吸水性の経時的な低下が抑制される。よって、本実施形態に係るクリーニング装置60によれば、レジストローラー33に付着したインクを除去する能力の経時的な低下を抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態に係るクリーニング装置60によれば、搬送面34にウェブW1の未使用部分が間欠的に供給されるから、搬送面34にウェブW1の未使用部分を間欠的に供給する構成を備えない場合と比べて、搬送面34に押し当てられるウェブW1の吸水性の経時的な低下が限定的な範囲内に抑制される。よって、本実施形態に係るクリーニング装置60によれば、レジストローラー33に付着したインクを除去する能力の経時的な低下を限定的な範囲内に抑制することができる。
【0069】
[第1実施形態の変形例]
次に、
図5及び9を参照して、第1実施形態の変形例に係るクリーニング装置160について説明する。
図9は、クリーニング装置160の構成を模式的に示す正面図である。なお、第1実施形態と同一の構成を有する構成要素は、第1実施形態と同一の符号を付与し、説明を省略する。
【0070】
クリーニング装置160が備えるクリーニングユニット161(
図9参照)は、第1実施形態の含浸ローラー83に代えて、含浸ウェブW2を繰り出す繰り出しローラー166と、含浸ウェブW2を搬送面34に押し当てる押圧ローラー167(含浸ウェブ押圧部の一例)と、搬送面34を通過した含浸ウェブW2を巻き取る巻き取りローラー168と、を備える。また、クリーニング装置160は、クリーニング液が含浸された含浸ウェブW2の未使用部分を押圧ローラー167に供給する含浸ウェブ駆動機構163を備える(
図5参照)。繰り出しローラー166、押圧ローラー167、巻き取りローラー168、含浸ウェブ駆動機構163は、供給部の一例である。
【0071】
一対の支持フレーム72、73の右上部には、押圧ローラー67の前後両端部が支持されている。一対の支持フレーム72、73の押圧ローラー67よりも下方の部分には、巻き取りローラー68の前後両端部が支持されている。一対の支持フレーム72、73の巻き取りローラー68よりも右下方の部分には、繰り出しローラー66の前後両端部が支持されている。一対の支持フレーム72、73の左上部には、押圧ローラー167の前後両端部が支持されている。一対の支持フレーム72、73の押圧ローラー167よりも下方の部分には、巻き取りローラー168の前後両端部が支持されている。一対の支持フレーム72、73の巻き取りローラー168よりも右下方の部分には、繰り出しローラー166の前後両端部が支持されている。
【0072】
含浸ウェブW2は、吸水性を有する不織布や織布等の帯状の材料によって形成され、クリーニング液が含浸されている。繰り出しローラー166の外周面には含浸ウェブW2がロール状に巻かれた含浸ウェブロールWR2が装着され、含浸ウェブロールWR2から繰り出された含浸ウェブW2が押圧ローラー167の外周面に巻き掛けられ、含浸ウェブW2の先端が巻き取りローラー168の外周面に固定されている。含浸ウェブW2は、押圧ローラー167によって下側のレジストローラー33の搬送面34に押圧されている。押圧ローラー167はゴム等の弾性材料によって形成されており、押圧ローラー167がレジストローラー33に押し当てられることで、押圧ローラー167の外周面が部分的に潰れて含浸ウェブW2とレジストローラー33の搬送面34とが面接触し、ニップ領域N3が形成される。含浸ウェブ駆動機構163(
図5参照)は、クリーニングユニット161に駆動力を伝達してニップ領域N3に向けて含浸ウェブW2の未使用部分を間欠的に供給する。
【0073】
本変形例に係るクリーニング装置160によれば、搬送面34に付着したインクは、含浸ウェブW2から供給されたクリーニング液によって希釈され、クリーニング液とともにウェブW1に吸収される。よって、本変形例に係るクリーニング装置260によれば、レジストローラー33に付着したインクを除去する能力の経時的な低下を抑制することができる。また、本変形例に係るクリーニング装置160によれば、搬送面34に含浸ウェブW2の未使用部分が間欠的に供給されるから、搬送面34へのクリーニング液の供給を持続させることができる。
【0074】
[第2実施形態]
次に、
図5及び10を参照して、第2実施形態に係るクリーニング装置260について説明する。
図10は、クリーニング装置260の構成を模式的に示す正面図である。クリーニング装置260が備えるクリーニングユニット261は、第1実施形態の繰り出しローラー66、押圧ローラー67、巻き取りローラー68及びウェブ駆動機構63に代えて、ブレード201及び容器202を備える(除去部の一例)。
【0075】
一対の支持フレーム72、73の右上部には、容器202の前後両端部が支持されている。容器202は、前後方向を長手方向とする箱状に形成されている。容器202の左上部には、開口部203が形成され、容器202の右上部には、ゴム製のブレード201が設けられている。開口部203がレジストローラー33の搬送面34に対向し、ブレード201の左端部がレジストローラー33の搬送面34に接触する。また、クリーニングユニット261は、第1実施形態の含浸ローラー83に代えて、繰り出しローラー166と、押圧ローラー167と、巻き取りローラー168と、を備える。クリーニング装置360は、含浸ウェブ駆動機構163を備える(
図5参照)。
【0076】
第2実施形態に係るクリーニング装置260によれば、搬送面34に付着したインクは、含浸ウェブW2から供給されたクリーニング液によって希釈され、クリーニング液とともにブレード201によって掻き取られ、容器202に収容される。よって、第2実施形態に係るクリーニング装置260によれば、レジストローラー33に付着したインクを除去する能力の経時的な低下を抑制することができる。
【0077】
[第2実施形態の変形例]
次に、
図5及び11を参照して、第2実施形態の変形例に係るクリーニング装置360について説明する。
図11は、クリーニング装置360の構成を模式的に示す正面図である。
【0078】
クリーニング装置360が備えるクリーニングユニット361は、第2実施形態の繰り出しローラー166、押圧ローラー167、巻き取りローラー168及び含浸ウェブ駆動機構163に代えて、含浸ローラー83(供給部の一例)を備える。一対の支持フレーム72、73の左上部には、含浸ローラー83の中空軸85の前後両端部が支持されている。
【0079】
本変形例に係るクリーニング装置360によれば、搬送面34に付着したインクは、含浸ローラー83から供給されたクリーニング液によって希釈され、クリーニング液とともにブレード201によって掻き取られ、容器202に収容される。よって、本変形例に係るクリーニング装置360によれば、レジストローラー33に付着したインクを除去する能力の経時的な低下を抑制することができる。
【0080】
[実験結果]
次に、
図12を参照して、クリーニング装置60及びクリーニング装置260を用いた実験結果について説明する。
図12は、実験結果を示す一覧表とグラフである。この実験では、両面印刷実行後のレジストローラー33の搬送面34に透明な粘着テープが貼り付けられ、剥がされた粘着テープの透過濃度が透過濃度計で計測された。搬送面34に残留したインクは、剥がされた粘着テープによって剥ぎ取られるが、搬送面34に残留したインクが少ないほど、粘着テープに付着するインクも少なくなるため、透過濃度が低くなる。つまり、透過濃度が低いほど、クリーニング装置60、260のインク除去能力が高いということになる。
【0081】
一覧表におけるケース1は、レジストローラー33の清掃を行わなかったケースである。ケース2は、乾式ウェブをレジストローラー33に押圧する従来の構成を用いて清掃を行ったケースである。乾式ウェブとは、クリーニング液が含浸されていないウェブであり、上記実施形態のウェブW1に相当する。本実験では、乾式ウェブとして、旭化成株式会社SD140コットン生地が使用された。ケース3及び4は、第1実施形態のクリーニング装置60を用いて清掃を行ったケースである。このうち、ケース3は、含浸層84がEPDMの発泡体で構成されており、ケース4は、含浸層84が不織布で構成されている。ケース5は、第2実施形態のクリーニング装置260を用いて清掃を行ったケースである。ケース6は、クリーニング液を供給せずに、ゴム製のブレード201を用いて清掃を行った参考例である。
【0082】
各ケースで、連続の両面印刷が実行され、累積の通紙枚数が100枚、1000枚、3000枚に達した時点で透過濃度が計測された。また、通紙枚数が3000枚に達した時点でのレジストローラー33のトルクが計測された。なお、ケース3とケース4の実験結果が近似しているため、グラフでは、ケース4が省略されている。
【0083】
ケース2では、乾式ウェブでインクが除去されたため、ケース1と比べて透過濃度が低くなっているが、実用に供せられる水準に達しないため、インク除去能力は、不良と判定された。
【0084】
ケース3乃至5では、ケース2と比べて透過濃度が10分の1程度に低下したことから、クリーニング液でインクが希釈されたことでインク除去能力が高まっていると考えられる。よって、ケース3乃至5のインク除去能力は、良と判定された。また、ケース3乃至5では、通紙枚数の増加に伴う透過濃度の増加率がケース2と比べて小さいことから、ケース3及び4におけるウェブ駆動機構63、ケース5におけるブレード201と容器202の効果により、インク除去能力の低下が抑制されていると考えられる。
【0085】
ケース6では、クリーニング液が供給されないにもかかわらず、インク除去能力はケース3乃至5と比べて若干の低下に留まっている。しかし、ケース6では、レジストローラー33のトルクがケース3乃至5よりも高くなっている。これは、粘性が増加したインクがクリーニング液で希釈されないため、ブレード201とインクとの摩擦による負荷が高くなっていることが原因と考えられる。よって、ケース6のインク除去能力は、やや不良と判定された。
【0086】
以上のことから、第1実施形態に係るクリーニング装置60及び第2実施形態に係るクリーニング装置260の効果が確認された。
【0087】
上記実施形態が以下のように変形されてもよい。
【0088】
上記実施形態では、クリーニング装置60がレジストローラー33に付着したインクを除去する例が示されたが、クリーニング装置60は、レジストローラー33以外の搬送部材に付着したインクを除去するように構成されてもよい。レジストローラー以外の搬送部材とは、第1搬送ベルト45、第2搬送ベルト51、デカール装置54に備えられたローラー及びベルト、第2搬送路22及び第3搬送路23に備えられた搬送ローラー、反転ローラー26等である。なお、上記実施形態では、レジストローラー33に対しては両面印刷時にのみシートSからインクが転写され得ることから、両面印刷時にのみユニット移動機構62がクリーニングユニット61を離間位置P2から清掃位置P1に移動させるように構成されているが、片面印刷時にもシートSからインクが転写され得る搬送部材に対しては、片面印刷時にもクリーニングユニット61を離間位置P2から清掃位置P1に移動させるように構成されてもよい。
【0089】
上記実施形態では、水性インクの使用が想定されているが、油性インクを使用するインクジェット記録装置に本発明が適用されてもよい。その場合、クリーニング液としてパラフィンオイル、ベジソル、大豆油等が使用される。
【0090】
上記実施形態では、潮解性付与剤を含有する水をクリーニング液として用いる例が示されたが、潮解性付与剤を含有しない水がクリーニング液として用いられてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 プリンター(インクジェット記録装置)
33 レジストローラー(搬送部材)
34 搬送面
41 画像形成部
60 クリーニング装置
63 ウェブ駆動機構
67 押圧ローラー(ウェブ押圧部)
84 含浸層
85 中空軸
85h 貫通穴
163 含浸ウェブ駆動機構
167 押圧ローラー(含浸ウェブ押圧部)
201 ブレード
202 容器