IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特許7484121モーター駆動装置、画像形成装置および励磁周波数制御方法
<>
  • 特許-モーター駆動装置、画像形成装置および励磁周波数制御方法 図1
  • 特許-モーター駆動装置、画像形成装置および励磁周波数制御方法 図2
  • 特許-モーター駆動装置、画像形成装置および励磁周波数制御方法 図3
  • 特許-モーター駆動装置、画像形成装置および励磁周波数制御方法 図4
  • 特許-モーター駆動装置、画像形成装置および励磁周波数制御方法 図5
  • 特許-モーター駆動装置、画像形成装置および励磁周波数制御方法 図6
  • 特許-モーター駆動装置、画像形成装置および励磁周波数制御方法 図7
  • 特許-モーター駆動装置、画像形成装置および励磁周波数制御方法 図8
  • 特許-モーター駆動装置、画像形成装置および励磁周波数制御方法 図9
  • 特許-モーター駆動装置、画像形成装置および励磁周波数制御方法 図10
  • 特許-モーター駆動装置、画像形成装置および励磁周波数制御方法 図11
  • 特許-モーター駆動装置、画像形成装置および励磁周波数制御方法 図12
  • 特許-モーター駆動装置、画像形成装置および励磁周波数制御方法 図13
  • 特許-モーター駆動装置、画像形成装置および励磁周波数制御方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】モーター駆動装置、画像形成装置および励磁周波数制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 8/18 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
H02P8/18
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019185836
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021061714
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 光栄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一充
(72)【発明者】
【氏名】橘 優太
(72)【発明者】
【氏名】吉川 博之
(72)【発明者】
【氏名】宮島 聡司
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-099795(JP,A)
【文献】特開平06-245590(JP,A)
【文献】国際公開第2015/098261(WO,A1)
【文献】特開2006-136138(JP,A)
【文献】特開2000-217395(JP,A)
【文献】特開平07-298691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 8/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動周波数に基づいて回転する回転軸を有するステッピングモーターと、
前記ステッピングモーターの定電流制御のための励磁周波数を制御する駆動制御部と、
を備え、
前記駆動制御部は、
前記励磁周波数の設定値より大きい第1周波数であって、駆動周波数を変化させて前記ステッピングモーターの振動が所定の振動レベル以上となる第1周波数と、前記設定値より小さい第2周波数であって、前記駆動周波数を変化させて前記ステッピングモーターの振動が所定の振動レベル以下となる第2周波数とを決定し
前記第1周波数と前記第2周波数との範囲を前記励磁周波数の変化範囲として決定し、
前記第2周波数に対応する回転速度から前記第1周波数に対応する回転速度までの範囲を、前記変化範囲に対応する、前記ステッピングモーターの回転速度の範囲として決定し、
決定した前記変化範囲において、前記励磁周波数を時間変化させる、
モーター駆動装置。
【請求項2】
前記駆動制御部は、前記励磁周波数の時間変化を一定周期で繰り返す、
請求項1に記載のモーター駆動装置。
【請求項3】
前記駆動制御部は、前記励磁周波数を時間変化させない場合における前記ステッピングモーターの振動時間に応じて前記一定周期を決定する、
請求項2に記載のモーター駆動装置。
【請求項4】
前記駆動制御部は、時間変化させた前記励磁周波数に基づく励磁周期が整数個分収まるように前記一定周期を決定する、
請求項2または請求項3に記載のモーター駆動装置。
【請求項5】
前記整数は、2のべき乗である、
請求項4に記載のモーター駆動装置。
【請求項6】
前記駆動制御部は、時間経過につれ前記励磁周波数を大きくするように変化させる第1周期と、時間経過につれ前記励磁周波数を小さくするように変化させる第2周期とを交互に繰り返す三角波を構成するように前記励磁周波数を制御する、
請求項2~5の何れか1項に記載のモーター駆動装置。
【請求項7】
前記駆動制御部は、時間経過につれ前記励磁周波数を大きくする、または、小さくするように変化するノコギリ波を構成するように前記励磁周波数を制御する、
請求項2~5の何れか1項に記載のモーター駆動装置。
【請求項8】
前記駆動制御部は、時間経過につれ前記励磁周波数を大きくするように変化させる第1周期と、時間経過につれ前記励磁周波数を小さくするように変化させる第2周期とを交互に繰り返す正弦波を構成するように前記励磁周波数を制御する、
請求項2~5の何れか1項に記載のモーター駆動装置。
【請求項9】
前記駆動制御部は、時間経過につれランダムに変化するように前記励磁周波数を制御する、
請求項2~5の何れか1項に記載のモーター駆動装置。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載のモーター駆動装置を備える、
画像形成装置。
【請求項11】
駆動周波数に基づいて回転する回転軸を有するステッピングモーターを備えるモーター駆動装置の励磁周波数制御方法であって、
前記ステッピングモーターの定電流制御のための励磁周波数を制御し、
前記励磁周波数の設定値より大きい第1周波数であって、駆動周波数を変化させて前記ステッピングモーターの振動が所定の振動レベル以上となる第1周波数と、前記設定値より小さい第2周波数であって、前記駆動周波数を変化させて前記ステッピングモーターの振動が所定の振動レベル以下となる第2周波数とを決定し、
前記第1周波数と前記第2周波数との範囲を前記励磁周波数の変化範囲として決定し、
前記第2周波数に対応する回転速度から前記第1周波数に対応する回転速度までの範囲を、前記変化範囲に対応する、前記ステッピングモーターの回転速度の範囲として決定し、
決定した前記変化範囲において、前記励磁周波数を時間変化させる励磁周波数制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーター駆動装置、画像形成装置および励磁周波数制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステッピングモーターを所定の速度領域で駆動させた場合、ステッピングモーターの振動が発生することが課題となっている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の構成では、ステッピングモーターの回転速度に応じてチョッピング周波数(励磁周波数)の設定値を変化させる構成が開示されている。また、特許文献2に記載の構成では、モーターの駆動周波数を拡散する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-298691号公報
【文献】特開2010-224476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、モーターの振動を検出する装置が必要になる。また、装置の負荷等の要素変動に起因して、モーター振動時の励磁周波数がずれた場合、変化後の励磁周波数で振動が発生するおそれがある。
【0006】
また、特許文献2に記載の構成では、モーターの駆動周波数を拡散させて変更すると、モーターの回転速度が変動して位置精度が悪化するおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、ステッピングモーターの回転速度を変動させることなく、ステッピングモーターにおける振動の発生を抑制することが可能なモーター駆動装置、画像形成装置および励磁周波数制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るモーター駆動装置は、
駆動周波数に基づいて回転する回転軸を有するステッピングモーターと、
前記ステッピングモーターの定電流制御のための励磁周波数を制御する駆動制御部と、
を備え、
前記駆動制御部は、
前記励磁周波数の設定値より大きい第1周波数であって、駆動周波数を変化させて前記ステッピングモーターの振動が所定の振動レベル以上となる第1周波数と、前記設定値より小さい第2周波数であって、前記駆動周波数を変化させて前記ステッピングモーターの振動が所定の振動レベル以下となる第2周波数とを決定し
前記第1周波数と前記第2周波数との範囲を前記励磁周波数の変化範囲として決定し、
前記第2周波数に対応する回転速度から前記第1周波数に対応する回転速度までの範囲を、前記変化範囲に対応する、前記ステッピングモーターの回転速度の範囲として決定し、
決定した前記変化範囲において、前記励磁周波数を時間変化させる。
【0009】
本発明に係る画像形成装置は、
上記のモーター駆動装置を備える。
【0010】
本発明に係る励磁周波数制御方法は、
駆動周波数に基づいて回転する回転軸を有するステッピングモーターを備えるモーター駆動装置の励磁周波数制御方法であって、
前記ステッピングモーターの定電流制御のための励磁周波数を制御し、
前記励磁周波数の設定値より大きい第1周波数であって、駆動周波数を変化させて前記ステッピングモーターの振動が所定の振動レベル以上となる第1周波数と、前記設定値より小さい第2周波数であって、前記駆動周波数を変化させて前記ステッピングモーターの振動が所定の振動レベル以下となる第2周波数とを決定し、
前記第1周波数と前記第2周波数との範囲を前記励磁周波数の変化範囲として決定し、
前記第2周波数に対応する回転速度から前記第1周波数に対応する回転速度までの範囲を、前記変化範囲に対応する、前記ステッピングモーターの回転速度の範囲として決定し、
決定した前記変化範囲において、前記励磁周波数を時間変化させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ステッピングモーターの回転速度を変動させることなく、ステッピングモーターにおける振動の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。
図2】本実施の形態に係る画像形成装置の制御系の主要部を示す図である。
図3】励磁周波数の時間変化を示す図である。
図4】励磁周波数に基づくパルス信号を示す図である。
図5】回転速度の振動の様子を示す図である。
図6】励磁周波数を設定値とした場合における回転速度の周波数解析結果を示す図である。
図7】励磁周波数を時間変化させた場合における回転速度の周波数解析結果を示す図である。
図8】励磁周波数の時間変化を一定周期毎に繰り返す様子を示す図である。
図9】励磁周波数の変化範囲の決定方法について説明するための図である。
図10】励磁周波数の一定周期の決定方法について説明するための図である。
図11】励磁周波数の時間変化の変形例を示す図である。
図12】励磁周波数の時間変化の変形例を示す図である。
図13】励磁周波数の時間変化の変形例を示す図である。
図14】励磁周波数の時間変化の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。図2は、本実施の形態に係る画像形成装置1の制御系の主要部を示す図である。
【0014】
図1に示すように、画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、給紙トレイユニット51a~51cから送出された用紙Sに二次転写することにより、画像を形成する。
【0015】
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0016】
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60、制御部101およびモーター駆動装置200を備える。
【0017】
制御部101は、CPU(Central Processing Unit)102、ROM(Read Only Memory)103、RAM(Random Access Memory)104等を備える。CPU102は、ROM103から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM104に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロック等の動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
【0018】
制御部101は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部101は、例えば、外部の装置から送信された画像データ(入力画像データ)を受信し、この画像データに基づいて用紙Sに画像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
【0019】
図1に示すように、画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
【0020】
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11により、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることが可能となる。
【0021】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0022】
図2に示すように、操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21及び操作部22として機能する。表示部21は、制御部101から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部101に出力する。
【0023】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定又はユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部101の制御下で、階調補正データ(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0024】
図1に示すように、画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
【0025】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示すこととする。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0026】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、及びドラムクリーニング装置415等を備える。
【0027】
感光体ドラム413は、例えばドラム状の金属基体の外周面に、有機光導電体を含有させた樹脂よりなる感光層が形成された有機感光体よりなる。
【0028】
制御部101は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度で回転させる。
【0029】
帯電装置414は、例えば帯電チャージャーであり、コロナ放電を発生させることにより、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。
【0030】
露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。その結果、感光体ドラム413の表面のうちレーザー光が照射された画像領域には、背景領域との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0031】
現像装置412は、二成分逆転方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分の現像剤を付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0032】
現像装置412には、例えば帯電装置414の帯電極性と同極性の直流現像バイアス、または交流電圧に帯電装置414の帯電極性と同極性の直流電圧が重畳された現像バイアスが印加される。その結果、露光装置411によって形成された静電潜像にトナーを付着させる反転現像が行われる。
【0033】
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に当接され、弾性体よりなる平板状のドラムクリーニングブレード等を有し、中間転写ベルト421に転写されずに感光体ドラム413の表面に残留するトナーを除去する。
【0034】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
【0035】
中間転写ベルト421は無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0036】
中間転写ベルト421は、導電性および弾性を有するベルトであり、表面に高抵抗層を有する。中間転写ベルト421は、制御部101からの制御信号によって回転駆動される。
【0037】
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
【0038】
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
【0039】
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側、つまり一次転写ローラー422と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
【0040】
その後、用紙Sが二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙Sに二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙Sの裏面側、つまり二次転写ローラー424と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙Sに静電的に転写される。トナー像が転写された用紙Sは定着部60に向けて搬送される。
【0041】
ベルトクリーニング装置426は、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。
【0042】
定着部60は、用紙Sの定着面、つまりトナー像が形成されている面側に配置される定着面側部材を有する上側定着部60A、用紙Sの裏面つまり定着面の反対の面側に配置される裏面側支持部材を有する下側定着部60B、および加熱源等を備える。定着面側部材に裏面側支持部材が圧接されることにより、用紙Sを挟持して搬送する定着ニップが形成される。
【0043】
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙Sを定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙Sにトナー像を定着させる。定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。
【0044】
上側定着部60Aは、定着面側部材である無端状の定着ベルト61、加熱ローラー62および定着ローラー63を有する。定着ベルト61は、加熱ローラー62と定着ローラー63とによって張架されている。
【0045】
下側定着部60Bは、裏面側支持部材である加圧ローラー64を有する。加圧ローラー64は、定着ベルト61との間で用紙Sを挟持して搬送する定着ニップを形成している。
【0046】
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、及び搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類毎に収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53aを含む複数の搬送ローラー対を有する。レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部は、用紙Sの傾きおよび片寄りを補正する。
【0047】
給紙トレイユニット51a~51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。画像形成部40においては、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
【0048】
また、用紙搬送部50における複数の搬送ローラー対は、モーター駆動装置200によって駆動される。モーター駆動装置200は、ステッピングモーター210と、駆動制御部220とを有する。
【0049】
ステッピングモーター210は、制御部101から指令された駆動周波数に基づいて回転する回転軸を有し、所定の搬送ローラー対における駆動軸を駆動させる。駆動軸は、回転軸のギヤと噛み合うギヤを有しており、ステッピングモーター210の駆動力によって回転駆動する。
【0050】
駆動制御部220は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)および入出力回路を備えている。駆動制御部220は、予め設定されたプログラムに基づいて、ステッピングモーター210の駆動および励磁周波数を制御する。
【0051】
駆動制御部220は、制御部101から指令された駆動周波数の信号をステッピングモーター210に入力する。当該信号が入力されることでステッピングモーター210は回転駆動する。
【0052】
駆動制御部220は、ステッピングモーター210の定電流制御のための励磁周波数を制御する。駆動制御部220は、所定の設定値(例えば、48kHz)に設定された励磁周波数に基づくパルス信号を、ステッピングモーター210の図示しない駆動回路に入力する。当該パルス信号が入力されて駆動回路がオン/オフされることで、ステッピングモーター210の定電流制御が行われる。
【0053】
駆動制御部220は、励磁周波数を時間変化させる。具体的には、図3に示すように、駆動制御部220は、励磁周波数の設定値より大きい第1周波数から、設定値より小さい第2周波数までの変化範囲内において、一定周期の間、励磁周波数を時間変化させる。
【0054】
第1周波数は、例えば、設定値よりも所定値大きい値である。第2周波数は、例えば、設定値よりも所定値小さい値である。所定値は、例えば、設定値の2.4%程度の値であり、後述するステッピングモーター210の回転速度に基づく回転周波数の振動幅に応じて適宜設定される。
【0055】
図4に示すように、設定値のままの励磁周波数であると、同じ幅のパルス信号となるが、励磁周波数を時間変化させると、パルス信号の幅が徐々に変化していく。
【0056】
ステッピングモーター210が1回転する時間内において、上記のパルス信号は、設定値に応じた個数分、駆動回路に入力される。しかし、何らかの要因等により、ステッピングモーター210が1回転する時間と、上記のパルス信号のタイミングがずれて、当該時間内におけるパルス信号の個数が変動する場合がある。
【0057】
何らかの要因としては、モーター駆動装置200にかかる負荷の変動、ステッピングモーター210への印加電圧、印加電流のバラツキ、モーター駆動装置200の周囲の環境の変化等が挙げられる。
【0058】
ステッピングモーター210が中速で駆動される場合、ステッピングモーター210が1回転する時間内において、設定値である励磁周波数に基づくパルス信号の個数がばらつくと、ステッピングモーター210の振動が発生するおそれがある。
【0059】
ステッピングモーター210が中速で駆動される範囲は、ステッピングモーター210が1回転する時間内において、設定値の励磁周波数に基づくパルス信号が所定個(例えば、5個等)、駆動回路に入力されるような範囲である。
【0060】
例えば、ステッピングモーター210の回転速度が中速より遅い低速で駆動される場合、ステッピングモーター210の1回転毎の時間が長くなる分、当該時間内に上記のパルス信号が所定個より多くの数(例えば、20個等)が駆動回路に入力される。
【0061】
そのため、設定値の励磁周波数に基づくパルス信号の個数がずれたとしても、パルス信号の変動率が、中速の場合と比較すると、十分に小さいものとなる。言い換えると、中速の場合、低速よりもパルス信号の変動率が十分に大きいものとなるので、ステッピングモーター210の振動の発生が顕著なものとなる。
【0062】
また、ステッピングモーター210の回転速度が中速より速い高速で駆動される場合、ステッピングモーター210の1回転毎の時間が短くなる分、当該時間内に上記のパルス信号が所定個より少ない数(例えば、1個等)が駆動回路に入力される。
【0063】
そのため、設定値の励磁周波数に基づくパルス信号の個数がずれにくいので、ステッピングモーター210の振動が発生しない。
【0064】
このように、回転速度を、低速と高速との間である中速でステッピングモーター210を駆動する場合、ステッピングモーター210の振動が発生しやすい。
【0065】
このような振動は、例えば、図5に示すように、時間が経過するにつれ、振動が大きくなることが実験的に確認されている。図5では、ステッピングモーター210が中速に到達した時間T1以降、徐々に振動が大きくなっている例を示している。
【0066】
また、ステッピングモーター210の励磁周波数を変更すると、ステッピングモーター210の振動が発生する回転速度が変動することが実験的に確認されている。
【0067】
例えば、図6に示すように、ステッピングモーター210の回転速度の変動において周波数解析(FFT(Fast Fourier Transform)解析)を施した場合、励磁周波数を変動させることで、振動の発生を示すピークの位置が変わることが確認されている。
【0068】
図6に示す例では、励磁周波数を設定値よりも小さくした場合、回転速度(回転周波数)が小さい側でピークが発生し、励磁周波数を設定値よりも大きくした場合、回転速度(回転周波数)が大きい側でピークが発生している。つまり、励磁周波数を変化させることで、ピークの発生位置がずれる現象が実験的に確認されている。
【0069】
この現象に基づいて、本実施の形態では、ステッピングモーター210の励磁周波数を時間変化させることで、中速で回転する際の振動(ピーク)が大きくなる前に、励磁周波数が変化する。
【0070】
こうすることで、図7に示すように、ステッピングモーター210の振動レベルが大きくなる前に、励磁周波数が変化するので、当該振動レベルが大きくなることを抑制することができ、ひいてはステッピングモーター210の振動の発生を抑制することができる。
【0071】
また、励磁周波数の設定値が変化するだけだと、何らかの要因に起因して、変化後の励磁周波数において、ステッピングモーター210の振動が発生する場合がある。例えば、図6に示す破線部分のピークに対応する励磁周波数に設定値を変化させた際に、ピークの発生位置がずれることにより当該破線のピークが発生したような場合である。
【0072】
しかし、本実施の形態では、励磁周波数を時間変化させるので、振動の発生位置が変化した場合でも、当該発生位置で振動(ピーク)が大きくなる前に、励磁周波数が変化する。これにより、ステッピングモーター210の振動の発生を抑制することができる。
【0073】
また、図8に示すように、駆動制御部220は、上記の励磁周波数の時間変化を一定周期毎に繰り返す。具体的には、駆動制御部220は、時間経過につれ励磁周波数を小さくするように変化するノコギリ波を構成するように前記励磁周波数を制御する。
【0074】
このようにすることで、励磁周波数が特定の周波数で固定されることがなくなるので、振動の発生位置が変化しても、当該発生位置に対応する周波数に励磁周波数が設定されることがなくなる。その結果、ステッピングモーター210の振動の発生を抑制することができる。
【0075】
また、駆動制御部220は、ステッピングモーター210の回転数に基づく回転周波数の振動幅に基づいて、励磁周波数の変化範囲を決定する。振動幅は、例えば図9に示すように、FFT解析に基づく振動レベルが所定レベル以上となる部分の周波数幅を示す。
【0076】
所定レベルは、例えば、ステッピングモーター210の振動をユーザーが認識可能な程度の振動レベルであり、適宜設定可能である。また、振動幅は、例えば、予め実験等で定められた値である。
【0077】
駆動制御部220は、上記の振動幅より広く、かつ、当該振動幅を含む範囲を励磁周波数の変化範囲に対応する回転速度の範囲として決定する。本実施の形態では、上記したように、変化範囲は、設定値より所定値大きい第1周波数から、設定値より所定値小さい第2周波数までの範囲である。
【0078】
第1周波数に対応する回転速度は、振動幅の上限よりも大きい回転周波数となり、第2周波数に対応する回転速度は、振動幅の下限よりも小さい回転周波数となる。
【0079】
こうすることで、ステッピングモーター210の振動が発生する可能性がある振動幅の外側に励磁周波数に対応する回転速度が位置する期間が確実に発生する。その結果、励磁周波数に対応する回転速度を振動幅の外側に確実に移動させることができ、ひいてはステッピングモーター210の振動の発生を抑制することができる。
【0080】
また、駆動制御部220は、励磁周波数を時間変化させない場合におけるステッピングモーター210の振動時間に応じて一定周期を決定する。駆動制御部220は、例えば、図10におけるステッピングモーター210の振動の2回分に相当する時間よりも小さくなるように一定周期を決定する。なお、一定周期は、これに限定されず、適宜設定しても良い。
【0081】
例えば、一定周期を、ステッピングモーター210の振動開始から、振動が十分に大きくなる時間までの間とすると、励磁周波数を時間変化させても、励磁周波数の時間変化量が小さくなる。そのため、励磁周波数がステッピングモーター210の振動幅内に止まる時間も長くなるので、ステッピングモーター210の振動が発生するおそれがある。
【0082】
それに対し、本実施の形態では、一定周期を、ステッピングモーター210の振動開始から、振動がさほど大きくならない程度の時間までの間とするので、励磁周波数を時間変化させた場合の時間変化量が大きくなる。そのため、励磁周波数がステッピングモーター210の振動幅内に止まる時間も短くなるので、ステッピングモーター210の振動が発生することを抑制しやすくすることができる。
【0083】
また、駆動制御部220は、時間変化させた励磁周波数に基づく1周期分のパルス信号(励磁周期)が2のべき乗個(整数個)分収まるように一定周期を決定する。
【0084】
例えば、励磁周波数の設定値が48kHzである場合、パルス信号の1周期に相当する時間は、1/48k=0.02083msecとなる。
【0085】
ここで、パルス信号の数を2の6乗個である、64個とすると、一定周期は、0.02083mと64の積である、1.333msecとなる。
【0086】
このように一定周期を決定することで、1つのパルス信号の周期の途中で、一定周期が終わることを抑制することができる。また、パルス信号を2のべき乗個とすることで、CPU等により処理しやすくすることができる。
【0087】
以上のように構成された本実施の形態によれば、励磁周波数を時間変化させることで、ステッピングモーター210の回転周波数における振動レベルのピークの発生位置から、設定される励磁周波数を変化させることができる。
【0088】
すなわち、ステッピングモーター210の振動レベルが大きくなる前に励磁周波数を変化させることができるので、ステッピングモーター210の振動の発生を抑制することができる。
【0089】
また、励磁周波数を時間変化させるので、ある特定の励磁周波数で固定されることがなくなる。その結果、何らかの要因によりステッピングモーター210の振動の発生位置が変化した場合でも、ステッピングモーター210の振動の発生を抑制することができる。
【0090】
なお、上記実施の形態では、時間経過につれ励磁周波数を小さくするように変化するノコギリ波を構成するように励磁周波数を制御していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図11に示すように、時間経過につれ励磁周波数を大きくするように変化するノコギリ波を構成するように励磁周波数を制御しても良い。
【0091】
また、上記実施の形態では、時間経過につれノコギリ波を構成するように励磁周波数を制御していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図12に示すように、駆動制御部220は、第1周期と、第2周期とを交互に繰り返す三角波を構成するように励磁周波数を制御しても良い。また、図13に示すように、駆動制御部220は、第1周期と、第2周期とを交互に繰り返す正弦波を構成するように励磁周波数を制御しても良い。
【0092】
駆動制御部220は、第1周期においては、時間経過につれ励磁周波数を大きくするように変化させる。駆動制御部220は、第2周期においては、時間経過につれ励磁周波数を小さくするように変化させる。
【0093】
このようにしても、励磁周波数を時間変化させて、ステッピングモーター210の振動の発生を抑制することができる。
【0094】
また、図14に示すように、駆動制御部220は、時間経過につれランダムに変化するように励磁周波数を制御しても良い。
【0095】
このようにしても、励磁周波数を時間変化させて、ステッピングモーター210の振動の発生を抑制することができる。
【0096】
また、上記実施の形態では、駆動制御部220がステッピングモーター210を駆動させていたが、本発明はこれに限定されず、制御部101がステッピングモーター210を駆動させても良い。
【0097】
また、上記実施の形態では、モーター駆動装置200が用紙搬送部50を駆動させていたが、本発明はこれに限定されず、その他の部分を駆動させても良い。
【0098】
また、上記実施の形態では、モーター駆動装置200が画像形成装置1に設けられていたが、本発明はこれに限定されず、画像形成装置以外の装置に設けられていても良い。
【0099】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 画像形成装置
101 制御部
200 モーター駆動装置
210 ステッピングモーター
220 駆動制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14