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特許7484122白色シート、化粧シート及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】白色シート、化粧シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240509BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240509BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240509BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240509BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240509BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20240509BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20240509BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
B32B27/00 E
B32B27/20 A
C08L101/00
C08K3/013
C08L23/12
E04F13/07 B
E04F13/08 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019187821
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021063165
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】青木 英士
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-131661(JP,A)
【文献】特許第2611392(JP,B2)
【文献】特開2004-181705(JP,A)
【文献】特開平07-003225(JP,A)
【文献】特開2017-145338(JP,A)
【文献】特開2019-130906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 5/00-5/02
C08J 5/12-5/22
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
D65光源で測色した反射色度が、Lab表色系でL*が90以上100以下の範囲内であり、a*が-1.5以上+1.5以下の範囲内であり、b*が-1.5以上2.0以下の範囲内であり、
分光反射率が、500nm以上650nm以下の範囲内に極小値を持つ白色シートであって、
上記白色シートは、無機顔料と樹脂とを含む着色層を有し、
上記着色層に含まれる上記樹脂がポリプロピレンであり、
上記無機顔料として、酸化チタンと少なくとも1種類の青色顔料とを含有し、
上記青色顔料として、セルリアンブルー、及び呉須の中から選ばれる少なくとも1種類を含有することを特徴とする白色シート。
【請求項2】
D65光源で測色した反射色度が、Lab表色系でL*が90以上100以下の範囲内であり、a*が-1.5以上+1.5以下の範囲内であり、b*が-1.5以上2.0以下の範囲内であり、
分光反射率が、500nm以上650nm以下の範囲内に極小値を持つ白色シートであって、
上記白色シートは、無機顔料と樹脂とを含む着色層を有し、
上記着色層に含まれる上記樹脂がポリプロピレンであり、
上記着色層は、ステアリン酸亜鉛を含まないことを特徴とする白色シート。
【請求項3】
上記無機顔料として、酸化チタンと少なくとも1種類の青色顔料とを含有することを特徴とする請求項に記載した白色シート。
【請求項4】
上記青色顔料として、群青(ウルトラマリン)、紺青(ミロリーブルー)、コバルトブルー、セルリアンブルー、及び呉須の中から選ばれる少なくとも1種類を含有することを特徴とする請求項に記載した白色シート。
【請求項5】
上記青色顔料として、セルリアンブルー、及び呉須の中から選ばれる少なくとも1種類を含有することを特徴とする請求項に記載した白色シート。
【請求項6】
上記青色顔料の含有量が、酸化チタンを100質量部としたとき、1質量部以上2質量部以下の範囲内であることを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載した白色シート。
【請求項7】
上記白色シートは、上記着色層の少なくとも一方の面に形成されたスキン層をさらに有し、
上記スキン層は、ポリプロピレン樹脂を含むことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載した白色シート。
【請求項8】
上記白色シートの厚さが50μm以上150μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載した白色シート。
【請求項9】
上記着色層に含まれる上記ポリプロピレンが、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上のプロピレン単重合体であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載した白色シート。
【請求項10】
上記着色層に含まれる上記ポリプロピレンが、エチレンコンテンツを有するランダムポリプロピレン樹脂、または非晶性ポリプロピレン樹脂を含むことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載した白色シート。
【請求項11】
上記着色層は、ステアリン酸亜鉛を含まないことを特徴とする請求項1に記載した白色シート。
【請求項12】
少なくとも、請求項1から請求項1のいずれか1項に記載した白色シートと、トップコート層とを備えることを特徴とする化粧シート。
【請求項13】
上記トップコート層が、ヒンダードアミン系光安定化剤と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とを含み、
上記ヒンダードアミン系光安定化剤の含有量は、上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量と同じであることを特徴とする請求項1に記載した化粧シート。
【請求項14】
請求項1または請求項1に記載した化粧シートの製造方法であって、
分光反射率が500nm以上650nm以下の範囲内に極小値を持つように、無機顔料を樹脂に混合して白色シートを作製することを特徴とする化粧シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色シート、化粧シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護上の問題が懸念されているポリ塩化ビニル製の化粧シートに替わる化粧シートとして、オレフィン系樹脂を使用した化粧シート(例えば、ポリプロピレンシート)が数多く提案されている。オレフィン系樹脂を使用した化粧シートに関する技術としては、例えば、特許文献1に記載された技術がある。これらの化粧シートは、塩化ビニル樹脂を使用しないことで、焼却時における有毒ガス等の発生は抑制される。しかし、一般的にポリプロピレンシートは、弾性率が低いために耐傷性に劣ることや、印刷等のシート作製時等においてシートに張力を掛けたときに伸び易い等の課題があった。
【0003】
ところで化粧シートを、木質基板、金属基板、不燃基板等の基板表面に貼り付けることで化粧板となり、化粧シートは化粧板に対し目的に応じた意匠性を付与する。従って、化粧シートは、必要に応じて基板の表面が完全に見えなくなるように覆い隠す必要がある。この場合、少なくとも顔料によって着色され、隠蔽性が付与された化粧シートを用いる必要がある。そして、最も単純な化粧シートの構成としては、着色されたシート単体(単層)からなる基材層だけの構成が挙げられる。このような基材層だけからなる化粧シートの場合、通常は、付与できる意匠が柄の無い単色に限定されてしまうが、例えば顔料としてアルミフレークやパール顔料等の光輝材を添加することで光輝感を付与することはできるため、必要十分な意匠表現は可能である。また、更なる高意匠を付与したい場合は、基材層の表面に印刷等の加飾を施すことも有効である。
【0004】
化粧シートの中で白色シートはドア枠、巾木、各種収納等に用いられる。白色シートは基材の表面が透けて見え易く、隠蔽性を付与するために多量の顔料を添加する必要がある。しかしながら、多量の顔料を添加することで白色シート全体が硬くなり、破断し易くなる問題がある。特許文献2に、無機顔料をベシクル化された状態で配合し、顔料の添加量が増大しても隠蔽性が優れる化粧シートが提案されているが、顔料の添加量が増大することを回避することはできず、破断し易くなる問題は解消されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3271022号公報
【文献】特開2016-155233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、従来技術に比べて無機顔料の添加量を増大させることなく、隠蔽性が良好な白色シートや白色シートを基材層とした化粧シート、あるいはそれらの化粧シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは種々検討及び実験を重ね、例えば、酸化チタンと少なくとも1種類の青色顔料とを樹脂に添加することで、500nm以上650nm以下の範囲内に分光反射率の極小値を持つ隠蔽性に優れた白色シート、化粧シート及びその製造方法を提供できることを見出した。
【0008】
課題を達成するべく、本発明の一態様に係る白色シートは、D65光源で測色した反射色度が、Lab表色系でL*が90以上100以下の範囲内であり、a*が-1.5以上+1.5以下の範囲内であり、b*が-1.5以上2.0以下の範囲内である白色シートであって、分光反射率が、500nm以上650nm以下の範囲内に極小値を持つことを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、従来技術に比べて無機顔料の添加量を増大させる必要がないために曲げ加工性等の柔軟性に優れ、且つ、隠蔽性に優れた白色シート、化粧シート及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る化粧シートの構造を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る他の化粧シートの構造を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る他の化粧シートの構造を示す断面図である。
図4】酸化チタンのみを含有する白色シートの分光反射率を示すグラフである。
図5】青色顔料として、コバルトブルー、ウルトラマリンブルーをそれぞれ含有するシートの分光反射率を示すグラフである。
図6】同一の白色シートを、白下地、黒下地でそれぞれ測定した分光反射率を示すグラフである。
図7】実施例1~4、比較例1の分光反射率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状及び構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
「構成」
図1に示す実施形態の化粧シート1は、白色シート2だけの単層構造の場合の例である。また、本実施形態の白色シート2は、図2に示すように、無機顔料をポリプロピレン樹脂に混合してなる着色層3と、着色層3の少なくとも一方の面に形成され、ポリプロピレン樹脂からなるスキン層4とから構成されていてもよい。スキン層4は、着色層3に含まれる無機顔料がブリードし、製造工程において製造設備に付着し、製膜不良となることを防ぐ狙いがある。スキン層4には結晶化度を向上させるため、ナノサイズの造核剤を含有してもよい。結晶化度を向上させることにより、耐傷性が良化する。なお、本実施形態では、造核剤は、例えば、外膜で包含されてベシクル化した造核剤ベシクルの状態で含有されていてもよい。
【0013】
必要に応じて、白色シート2の一方の面に絵柄層5を形成(積層)して、意匠性を向上させてもよい。また、化粧シート1は、白色シート2の一方の面側に、透明樹脂層6及びトップコート層7の少なくとも一方の層が積層していてもよい。図3に例示した化粧シート1は、白色シート2の一方の面に、絵柄層5、透明樹脂層6及びトップコート層7がこの順に積層した例である。また、透明樹脂層6又はトップコート層7の一方が省略されていてもよい。また、絵柄層5を省略してもよい。
【0014】
ここで、透明樹脂層6及びトップコート層7の少なくとも一方の層には、意匠性の要求によっては、エンボスによる凹凸模様(エンボス模様6a)を付与してもよい。エンボス模様6aには、インキを埋め込み、さらに意匠性を向上させることも可能である。また、絵柄層5と透明樹脂層6との密着性に問題があれば接着性樹脂層6bを適宜設けても構わない。接着性樹脂層6bを設ける場合、透明樹脂層6と接着性樹脂層6bとの共押出法で形成する。接着性樹脂層6bは、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル系等の樹脂に酸変性を施したもので形成されてもよい。接着性樹脂層6bの厚さは、接着力向上の目的から2μm以上であることが望ましい。更に、耐傷性等の要求から、透明樹脂層6及びトップコート層7の少なくとも一方の層を複数層積層することも可能であり、その他、公知の他の層を配置する構成としてもよい。
【0015】
図1図2及び図3中、符号Bは、基板を表している。基板Bは、化粧シート1が貼り合わせられる基板である。基板Bとしては、特に限定は無いが、例えば、木質ボード類、無機系ボード類、金属板、複数の材料からなる複合板等が例示できる。化粧シート1と基板Bとの間に、適宜、プライマー層8や隠蔽層(不図示)等を設けてもよい。
【0016】
本実施形態の化粧シート1の引張弾性率、特に白色シート2単体の引張弾性率の範囲が、1000MPa以上2200MPa以下であることが好ましい。引張弾性率が1000MPa未満の場合、耐傷性が悪くなる傾向がある。引張弾性率が2200MPaを超える場合、結晶性が高すぎるため、造核剤(例えば、造核剤ベシクル)を用いた場合でも、曲げ加工において白化や割れといった不具合が生じてしまうおそれがある。
【0017】
次に、化粧シート1を構成する各層について説明する。
【0018】
<白色シート2>
白色シート2は、D65光源で測色した反射色度がLab表色系でL*が90以上100以下の範囲内であり、a*が-1.5以上+1.5以下の範囲内であり、b*が-1.5以上2.0以下の範囲内となるように形成され、且つ分光反射率が、500nm以上650nm以下の範囲内に極小値を持つように形成されたシートであって、例えば、無機顔料を適当な配合で樹脂に混合してなる着色層3を有する。着色層3が最外層にあると、着色層3に含まれる顔料成分がブリードし、押出機のTダイや搬送中のロール等が汚染する可能性があるため、着色層3の両面にスキン層4を設けることが望ましい。スキン層4が薄いと着色層3に含まれる顔料成分がブリードしてくるため、スキン層4の厚さは3μm以上であることが好ましい。なお、スキン層4は、着色層3の少なくとも一方の面に形成されていればよい。
【0019】
また白色シート2の厚さは、50μm以上150μm以下の範囲内であることが好ましい。白色シート2の厚さが50μm未満の場合、下地の凹凸をカバーする性能(不陸性)が悪く、好ましくない。一方、白色シート2の厚さが150μmを超える場合、曲げ加工において白化や割れといった不具合が生じてしまうおそれがある。
【0020】
(無機顔料)
無機顔料は、白色シート2に隠蔽性を付与するため、例えば、酸化チタンを含有する。白色シート2は、基材Bの模様を隠蔽する役割を担う。化粧シート1の意匠性の観点から要求される隠蔽性を得るために、光透過率が40%以下であることが好ましい。隠蔽性が低いと絵柄層5と基材Bの模様が混在し、好ましくない。無機顔料を含有することにより、隠蔽性が良好な化粧シート1を得ることができる。無機顔料全体の混合量(添加量)は、樹脂材料を100質量部として、5質量部以上70質量部以下の範囲内とすることが好ましい。混合量が5質量部未満の場合は隠蔽性が悪く、また、混合量が70質量部超の場合は白色シート2の脆化が起こり、好ましくない。
【0021】
図4に酸化チタンのみ含有する白色シートの分光反射率のグラフを示す。短波長側は分光反射率が低いが、450nmから700nmの波長範囲では90%以上の反射率を示す。
白色シート2は、無機顔料として、上述した酸化チタン以外に、少なくとも1種類の青色顔料を含有する。
【0022】
青色顔料として、古来には美しい青紫色の顔料にラピスラズリ(瑠璃)を粉にしたものが用いられていた。これは遠い海の彼方から運ばれてきたのでウルトラマリンと呼ばれていた。現在では合成することができ、群青として知られている。ウルトラマリンは、例えば粘土鉱物のカオリンと硫黄、活性炭等を混ぜて焼いて作ることができる。ウルトラマリンを構成する3次元のアルミノシリケート格子中には、結合してイオンを形成した3つの硫黄原子が含まれる。顔料の青色は不対電子を持つラジカルアニオンによるもので、酸に弱いのが欠点となる。なお、ウルトラマリンには、例えば、硫黄を含んだケイ酸ナトリウムの錯体(Na8-10AlSi242-4)がある。
【0023】
また、紺青(ミロリーブルー)はドイツで生まれた最初の合成顔料プルシアンブルーとも呼ばれる顔料であり、明るい青色顔料としてコバルトブルーもある。その他にもセルリアンブルー、呉須等の無機顔料を用いることができる。なお、紺青(ミロリーブルー)は、例えば、Fe[Fe(CN)の組成式で示される顔料である。また、コバルトブルーは、例えば、CoAlやCoOAlの組成式で示される顔料である。また、セルリアンブルーは、例えば、CoO・nSnO・mMgO(n=1.5~3.5、m=2~6)の組成式で示される顔料である。また、呉須は、例えば、石英・ハロイサイト・リシオホライト鉱(Lithiopholite)である。
【0024】
図5に、青色顔料として、コバルトブルーとウルトラマリンをそれぞれ単独で含有するシートの分光反射率のグラフを示す。青色顔料の種類によって反射率の違いはあるが、定性的には、青色顔料は500nm~650nmの範囲内に極小値を持つ分光反射率を示す。
青色顔料の添加量は、酸化チタンを100質量部としたとき、1質量部以上2質量部以下の範囲内とすることが望ましい。青色顔料の添加量が1質量部よりも少ないと隠蔽性が良化する効果が得にくく、添加量が2質量部よりも多いと、青味が強く白色とは認識できなくなってしまう。
【0025】
白色シート2に含有する無機顔料として、上記、酸化チタン及び青色顔料以外にも公知の無機顔料を混合して用いることができる。混合する無機顔料としては、特に限定されないが、例えば天然無機顔料、合成無機顔料が挙げられる。天然無機顔料としては、例えば、土系顔料、焼成土、鉱物性顔料等が挙げられる。合成無機顔料としては、例えば、酸化物顔料、水酸化物顔料、硫化物顔料、珪酸塩顔料、燐酸塩顔料、炭酸塩顔料、金属粉顔料、炭素顔料等が挙げられる。また、フタロシアニン、カーボンブラックのような有機顔料を併用しても構わない。
【0026】
白色シート2は、酸化チタンと少なくとも1種類の青色顔料とを適当な配合比で含有することで、500nm以上650nm以下の範囲内に極小値を持つ分光反射率が得られる。隠蔽性は下地を白色、黒色にした時の色差で優劣を判断するが、図6に示すように、分光反射率は、500nm以上の長波長側で差が表れる。そのため、あらかじめ長波長側の分光反射率を青色顔料で低減させておけば、隠蔽性が良好なシートを得ることができる。
【0027】
(樹脂)
無機顔料と混合する樹脂は、環境保護の観点からオレフィン系樹脂が好ましい。オレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン単独重合体、エチレン-プロピレンのブロック共重合体、ランダム共重合体、エチレン及びプロピレンの少なくとも一種と、ブテン、ペンテン、ヘキセン等の少なくとも一種の他のオレフィンとの共重合体、エチレン及びプロピレンの少なくとも一種と、酢酸ビニル、ビニルアルコール等の少なくとも一種の他の単量体との共重合体等が挙げられる。なかでも、優れた耐傷性と良好な曲げ加工性とを得る観点から、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
【0028】
[ポリエチレン樹脂]
ポリエチレンは、エチレンの単独重合体であってもよいし、エチレンとエチレンと共重合可能な他のコモノマー(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のαオレフィン、酢酸ビニル、ビニルアルコール等)との共重合体であってもよい。ポリエチレン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、架橋ポリエチレン(PEX)等が挙げられる。これらのポリエチレンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
[ポリプロピレン樹脂]
ポリプロピレン樹脂は、後述する高結晶性ポリプロピレンを用いることが好ましいが、高結晶性ホモポリプロピレンに対し、例えば、所定の範囲内でエチレンコンテンツを有するランダムポリプロピレン樹脂や公知の非晶性ポリプロピレン樹脂を混合することができる。
本実施形態においては、ポリプロピレン樹脂として、結晶性の高いポリプロピレン樹脂を用いることが好適である。特に、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上のプロピレン単重合体である高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を全ポリプロピレン樹脂の質量に対して50質量%以上100質量%以下の範囲内で用いることが好ましい。
【0030】
ポリプロピレン樹脂の結晶化温度は、一般的に100℃~130℃の範囲内とされており、造核剤を添加すると110℃~140℃の範囲内とされる。また、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%未満のポリプロピレン樹脂を用いた場合、結晶性が不足するため、製造プロセスをコントロールしても引張弾性率が好適な範囲よりも低くなってしまうことがある。また、高結晶性ホモポリプロピレン樹脂が50質量%未満の場合も同様に、結晶性が不足するため、製造プロセスをコントロールしても引張弾性率が好適な範囲よりも低くなってしまうことがある。
【0031】
ここで、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、質量13の炭素C(核種)を用いた13C-NMR測定法(核磁気共鳴測定法)により、樹脂材料を所定の共鳴周波数にて共鳴させて得られる数値(電磁波吸収率)から算出されるものであり、樹脂材料中の原子配置、電子構造、分子の微細構造を規定するものである。そして、結晶性ポリプロピレン樹脂のペンタッド分率とは、13C-NMRにより求めたプロピレン単位が5個並んだ割合のことであって、結晶化度あるいは立体規則性の尺度として用いられる。ペンタッド分率は、主に表面の耐擦傷性を決定付ける重要な要因の一つであり、基本的にはペンタッド分率が高いほど結晶化度が高いことを表す。
【0032】
オレフィン系樹脂のような樹脂で形成された、表面が不活性な基材を化粧シート1に用いる場合は、白色シート2の表裏に、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等を行うことが望ましい。
更に、分散性の向上や、押出適性を改善するために脂肪酸金属塩等の添加剤を、ポリプロピレン樹脂等の樹脂に加えても構わない。
【0033】
<絵柄層5>
白色シート2の表面には、化粧シート1に柄模様を付加するための絵柄層5を設けることができる。柄模様としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形等を用いることができる。
更に、白色シート2と絵柄層5との間には、目的とする意匠の程度に応じて下地ベタインキ層(不図示)を設けるようにしてもよい。下地ベタインキ層は、例えば、白色シート2の全面を被覆するようにして設けられる。また、下地ベタインキ層は、隠蔽性等、必要に応じて2層以上の多層としてもよい。更に、絵柄層5は、求められる意匠を表現するために必要な分版の数だけ積層して形成してもよい。このように、絵柄層5と下地ベタインキ層とは、求められる意匠、つまり、表現したい意匠に応じて様々な組み合わせとなるが、特に限定されるものではない。
【0034】
下地ベタインキ層及び絵柄層5の構成材料は、特に限定されるものではない。下地ベタインキ層及び絵柄層5の構成材料としては、例えば、マトリックスと、染料や顔料等の着色剤とを溶剤中に溶解、分散してなる印刷インキやコーティング剤を用いることができる。マトリックスとしては、例えば、油性の硝化綿樹脂、2液ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂等の各種合成樹脂類、又はこれらの混合物、共重合体等を用いることができる。また、着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、黄鉛、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料、又はこれらの混合物を用いることができる。また、溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、水等、もしくはこれらの混合物等を用いることができる。
【0035】
また、下地ベタインキ層及び絵柄層5には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
ここで、下地ベタインキ層及び絵柄層5は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷方法によって形成することができる。また、下地ベタインキ層は、白色シート2の全面を被覆しているため、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、マイクログラビアコート法、ダイコート法等の各種コーティング方法によっても形成することができる。これらの印刷方法、コーティング方法は、形成する層によって別々に選択してもよいが、同じ方法を選択して一括加工することが効率的である。
絵柄層5の厚さは、3μm以上20μm以下の範囲内であることが好ましい。絵柄層5の厚さがこの範囲内である場合、印刷を明瞭にすることができるとともに、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上し、かつ製造コストを抑制することができる。
【0036】
<透明樹脂層6>
透明樹脂層6の主成分として用いる樹脂材料は、オレフィン系樹脂からなることが好適であり、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4、4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等)を単独重合あるいは2種類以上を共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体等のように、エチレン又はαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。また、化粧シート1の表面強度の向上を図る場合には、高結晶性のポリプロピレンを用いることが好ましい。
ここで、本実施形態で主成分とは、特に特定が無い場合には、対象とする材料の90質量%以上を指す。
【0037】
透明樹脂層6を設ける場合、透明樹脂層6の層厚は50μm以上100μm以下の範囲内が好ましい。透明樹脂層6の層厚が50μm未満の場合、透明樹脂層6表面の耐傷性の向上効果が低く、透明樹脂層6を設ける意義が少なくなってしまう。また、透明樹脂層6の層厚が100μmを超える場合、化粧シート1の剛性が高すぎて、曲げ加工において白化や割れといった不具合が生じてしまうおそれがある。
もっとも、透明樹脂層6の上にトップコート層7を設ける場合には、透明樹脂層6の層厚は50μm未満としてもよい。
【0038】
なお、透明樹脂層6を構成する樹脂組成物には、必要に応じて、例えば、熱安定剤、光安定化剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種機能性添加剤を含有させてもよい。これらの各種機能性添加剤は、周知のものから適宜選択して用いることができる。
【0039】
また、絵柄層5と透明樹脂層6とを密着させるために用いる接着剤は、接着方法として任意の材料選定が可能であり、例えば、熱ラミネート、押出ラミネート、ドライラミネート等による積層方法がある。また、接着剤は、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系等の材料から選定できる。通常はその凝集力から、イソシアネートとポリオールとの反応を利用した2液硬化タイプのウレタン系材料が望ましい。なお、積層方法にも特に規制はないが、熱圧を応用した方法、押出ラミネート法、ドライラミネート法等が一般的である。また、エンボス模様6aを施す場合には、一旦各種方法でラミネートしたシートに後から熱圧によりエンボスを入れる方法や、冷却ロールに凹凸模様を設け押出ラミネートと同時にエンボスを施す方法がある。
【0040】
また、押出しと同時にエンボスを施した絵柄層5と透明樹脂層6とを熱あるいはドライラミネートで貼り合わせる方法等を用いることができる。
また、押出ラミネート法でさらなるラミネート強度を求める場合、透明樹脂層6と接着剤との間に接着性樹脂層6bを設けてもよい。接着性樹脂層6bを設ける場合、透明樹脂層6と接着性樹脂層6bとの共押出法でラミネートを行う。接着性樹脂層6bは、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル系等の樹脂に酸変性を施したもので形成してもよい。接着性樹脂層6bの厚さは、接着力向上の目的から2μm以上であることが望ましい。
【0041】
<トップコート層7>
更なる耐傷性の向上や艶の調整が必要な場合は、透明樹脂層6の表面にトップコート層7を設けることができる。
トップコート層7の主成分の樹脂材料としては、例えば、ポリウレタン系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系等の樹脂材料から適宜選択して用いることができる。樹脂材料の形態は、水性、エマルジョン、溶剤系など特に限定されるものではない。硬化法についても1液タイプ、2液タイプ、紫外線硬化法など適宜選択して行うことができる。
【0042】
トップコート層7の主成分として用いる樹脂材料としては、イソシアネートを用いたウレタン系のものが作業性、価格、樹脂自体の凝集力等の観点から好適である。イソシアネートには、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等の誘導体であるアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体等の硬化剤より適宜選定して用いることができるが、耐候性を考慮すると、直鎖状の分子構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)もしくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)をベースとする硬化剤が好適である。この他にも、表面硬度の向上を図る場合には、紫外線や電子線等の活性エネルギー線で硬化する樹脂を用いることが好ましい。なお、これらの樹脂は相互に組み合わせて用いることが可能であり、例えば、熱硬化型と光硬化型とのハイブリッド型とすることにより、表面硬度の向上、硬化収縮の抑制及び密着性の向上を図ることができる。
【0043】
トップコート層7には艶調整のために艶調整剤を添加することができる。艶調整剤は市販されている公知の物を用いればよい。艶調整剤としては、例えば、シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機材料からなる微粒子を用いてもよい。又は、アクリル等の有機材料からなる微粒子を用いることもできる。ただし、高い透明性が要求される場合には、透明性の高いシリカ、ガラス、アクリル等の微粒子を用いることが望ましい。特に、シリカやガラス等の微粒子のなかでも、中実の真球状粒子ではなく、微細な1次粒子が2次凝集してなる嵩密度の低い艶調整剤は添加量に対する艶消し効果が高い。それゆえ、このような艶調整剤を用いることで、艶調整剤の添加量を少なくすることができる。
【0044】
また、トップコート層7に各種機能を付与するために、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤を添加してもよい。また、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定化剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シアノアクリレート系を用いることができる。また、光安定化剤としては、ヒンダードアミン系を用いることができる。
トップコート層7の層厚は3μm以上15μm以下の範囲内が好ましい。トップコート層7の層厚が3μm未満の場合、耐傷性の向上効果が低く、トップコート層7を設ける意義が少なくなってしまう。また、トップコート層7の層厚が15μmを超える場合、曲げ加工時においてクラックや割れが生じてしまい、意匠上の問題や耐候性が悪化する問題が発生する。
【0045】
<プライマー層8>
プライマー層8の材料としては、基本的に絵柄層5と同じ材料を用いることができる。化粧シート1の裏面に施され、ウエブ状で巻取りを行うことを考慮すると、ブロッキングを避け、接着剤との密着を高めるために、プライマー層8には、例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機充填剤を添加させてもよい。プライマー層8の塗布厚さは、基材Bとの密着を確保することが目的であるので、0.1μm以上3.0μm以下の範囲内が好ましい。なお、プライマー層8は、白色シート2がオレフィン系材料のように表面が不活性なものである場合には必要であるが、表面が活性なものである場合には特に必要なものではない。
【0046】
「製造方法」
化粧シート1の製造例について説明する。
着色層3に使用するポリプロピレン樹脂は、後述する無機顔料を分散し易くするため、所定の範囲内でエチレンコンテンツを有するランダムポリプロピレン樹脂や公知の非晶性ポリプロピレン樹脂を混合することが望ましい。スキン層4に使用するポリプロピレン樹脂は、結晶性の高いホモポリプロピレン樹脂を用いることが好適である。ポリプロピレン樹脂は、単独で用いてもよいが、併用することもできる。
上記の白色シート用の樹脂材料を加熱溶融し、押出成形等によって、厚さが50μm以上150μm以下の範囲内であるシート状に成形して白色シート2とする。
更に、必要に応じて、白色シート2の上面に絵柄層5を印刷によって形成し、その上に透明樹脂層6及びトップコート層7の少なくとも一方の層を形成する。
【0047】
<作用その他>
(1)本実施形態の白色シート2は、D65光源で測色した反射色度が、Lab表色系でL*が90以上100以下の範囲内であり、a*が-1.5以上+1.5以下の範囲内であり、b*が-1.5以上2.0以下の範囲内であり、分光反射率が、500nm以上650nm以下の範囲内に極小値を持つ。
このような構成であれば、従来技術に比べて無機顔料の添加量を増大させる必要がないために柔軟性に優れ、且つ、隠蔽性に優れた白色シート2、及びその白色シート2を備えた化粧シート1を提供することができる。
【0048】
(2)本実施形態の白色シート2は、無機顔料と樹脂とを含む着色層3を有し、無機顔料として、酸化チタンと少なくとも1種類の青色顔料とを含有していてもよい。
このような構成であれば、白色性が優れた白色シート2、及びその白色シート2を備えた化粧シート1を確実に提供することができる。
【0049】
(3)本実施形態の白色シート2は、青色顔料として、群青(ウルトラマリン)、紺青(ミロリーブルー)、コバルトブルー、セルリアンブルー、及び呉須の中から選ばれる少なくとも1種類を含有していてもよい。
このような構成であれば、白色性がさらに優れた白色シート2、及びその白色シート2を備えた化粧シート1を確実に提供することができる。
【0050】
(4)本実施形態の白色シート2は、青色顔料の含有量が、酸化チタンを100質量部としたとき、1質量部以上2質量部以下の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、白色性がさらに優れた白色シート2、及びその白色シート2を備えた化粧シート1を確実に提供することができる。
【0051】
(5)本実施形態の白色シート2は、着色層3に含まれる樹脂がポリプロピレンであってもよい。
このような構成であれば、従来技術に比べて無機顔料の添加量を増大させる必要がないために柔軟性に優れ、且つ、隠蔽性に優れた白色シート2、及びその白色シート2を備えた化粧シート1を提供することができる。
【0052】
(6)本実施形態の白色シート2は、着色層3の少なくとも一方の面に形成されたスキン層4をさらに有し、そのスキン層4は、ポリプロピレン樹脂を含んでいてもよい。
このような構成であれば、無機顔料がブリードするのを低減することができる。
【0053】
(7)本実施形態の白色シート2は、その厚さが50μm以上150μm以下の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、白色シート2に不陸性と曲げ加工性の両方を付与することができる。
【0054】
[実施例]
以下に、本実施形態の化粧シート1の具体的な実施例について説明する。
【0055】
(実施例1)
着色層3の原料として、ポリプロピレン樹脂59.6質量部に対し、無機顔料として酸化チタン顔料40質量部、コバルトブルー顔料0.4質量部となるように添加して混合した。スキン層4の原料として、ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、ヒンダードアミン系光安定化剤(BASF社製「キマソーブ944」)0.5質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF社製「チヌビン328」)0.5質量部となるように添加して混合した。着色層3の混合物、スキン層4の混合物を、スキン層4、着色層3、スキン層4の順に、10μm:120μm:10μmの厚さになるように溶融押出機を用いて共押出しして、白色シート2を製膜した。
【0056】
(実施例2)
上述の着色層3に添加するコバルトブルー顔料を0.8質量部となるように添加した以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、白色シート2を製膜した。
(実施例3)
上述の着色層3に添加する青色顔料に関して、ウルトラマリンブルー顔料を0.4質量部となるように添加した以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、白色シート2を製膜した。
【0057】
(実施例4)
上述の着色層3に添加するコバルトブルー顔料を0.2質量部となるように添加した以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、白色シート2を製膜した。
(実施例5)
実施例1と同様の着色層3の混合物、スキン層4の混合物を用いて、スキン層4、着色層3、スキン層4の順に、3μm:44μm:3μmの厚さになるように溶融押出機を用いて共押出しして、白色シート2を製膜した。
【0058】
(実施例6)
実施例1と同様の着色層3の混合物、スキン層4の混合物を用いて、スキン層4、着色層3、スキン層4の順に、3μm:94μm:3μmの厚さになるように溶融押出機を用いて共押出しして、白色シート2を製膜した。
(実施例7)
実施例1と同様の着色層3の混合物、スキン層4の混合物を用いて、スキン層4、着色層3、スキン層4の順に、3μm:34μm:3μmの厚さになるように溶融押出機を用いて共押出しして、白色シート2を製膜した。
【0059】
(実施例8)
実施例1と同様の着色層3の混合物、スキン層4の混合物を用いて、スキン層4、着色層3、スキン層4の順に、10μm:160μm:10μmの厚さになるように溶融押出機を用いて共押出しして、白色シート2を製膜した。
(実施例9)
実施例1と同様に作製した、厚さ140μmの白色シート2の表面に絵柄印刷を施して絵柄層5を形成した。絵柄層5は、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ株式会社製)に、当該インキのバインダー樹脂分に対してヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.5質量部添加したインキを用いて形成した。また、白色シート2の裏面にプライマー層8を形成した。プライマー層8は絵柄層5と同様の2液型ウレタンインキを印刷することにより形成した。さらに、2液硬化型ウレタントップコート(DICグラフィックス社製「W184」)を塗布量3g/mで塗布して、トップコート層7を形成した。こうして、図3に示す、厚さ145μmの化粧シート1を得た。
【0060】
(実施例10)
実施例2と同様に作製した、厚さ140μmの白色シート2に対し、実施例9と同様にトップコート層7を形成し、厚さ145μmの化粧シート1を得た。
(実施例11)
実施例3と同様に作製した、厚さ140μmの白色シート2に対し、実施例9と同様にトップコート層7を形成し、厚さ145μmの化粧シート1を得た。
【0061】
(実施例12)
実施例4と同様に作製した、厚さ140μmの白色シート2に対し、実施例9と同様にトップコート層7を形成し、厚さ145μmの化粧シート1を得た。
(実施例13)
実施例5と同様に作製した、厚さ50μmの白色シート2に対し、実施例9と同様にトップコート層7を形成し、厚さ55μmの化粧シート1を得た。
【0062】
(実施例14)
実施例6と同様に作製した、厚さ100μmの白色シート2に対し、実施例9と同様にトップコート層7を形成し、厚さ105μmの化粧シート1を得た。
(実施例15)
実施例7と同様に作製した、厚さ40μmの白色シート2に対し、実施例9と同様にトップコート層7を形成し、厚さ45μmの化粧シート1を得た。
【0063】
(実施例16)
実施例8と同様に作製した、厚さ180μmの白色シート2に対し、実施例9と同様にトップコート層7を形成し、厚さ185μmの化粧シート1を得た。
(実施例17)
上述の着色層3に添加するコバルトブルー顔料を1.0質量部となるように添加した以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、白色シート2を製膜した。
【0064】
(実施例18)
実施例17と同様に作製した厚さ140μmの白色シート2に対し、実施例9と同様にトップコート層7を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例19)
上述の着色層3の原料としてポリプロピレン樹脂をポリエチレン樹脂とした以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、白色シート2を製膜した。
【0065】
(実施例20)
上述の着色層3の原料として、ポリプロピレン樹脂69.7質量部、酸化チタン顔料を30質量部、コバルトブルー顔料を0.3質量部となるようにした以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、白色シート2を製膜した。
(実施例21)
スキン層4を形成しなかった以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、白色シート2を製膜した。
(実施例22)
上述の着色層3の原料として、ポリプロピレン樹脂79.8質量部、酸化チタン顔料を20質量部、コバルトブルー顔料を0.2質量部となるようにした以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、白色シート2を製膜した。
【0066】
(比較例1)
上述の青色顔料を添加しない以外は実施例5と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、白色シート2を製膜した。
(比較例2)
比較例1と同様に作製した、厚さ50μmの白色シート2の表面に絵柄印刷を施して絵柄層5を形成した。絵柄層5は、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ株式会社製)に、当該インキのバインダー樹脂分に対してヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.5質量部添加したインキを用いて形成した。また、白色シート2の裏面にプライマー層8を形成した。プライマー層8は絵柄層5と同様の2液型ウレタンインキを印刷することにより形成した。さらに、2液硬化型ウレタントップコート(DICグラフィックス社製「W184」)を塗布量3g/mで塗布して、トップコート層7を形成した。こうして、図3に示す、厚さ55μmの化粧シート1を得た。
(比較例3)
上述の着色層3に添加するコバルトブルー顔料を1.2質量部となるように添加した以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、白色シート2を製膜した。
【0067】
[評価]
以上の実施例1~22、比較例1~3について、分光反射率、色相、隠蔽性及び曲げ加工適性の評価を行った。
【0068】
<分光反射率>
分光反射率測定は、コニカミノルタ株式会社製蛍光分光濃度計(FD-7)を用い、400~700nmの分光反射率を得た。隠蔽性の低い白色シートは下地の色の影響を受けてしまうので、全てのシートに関して、BYK-GARDNER社製の隠蔽試験紙(byko-chart高明度2A)の白下地の上で測定した。
実施例1~4、比較例1の分光反射率を図7に示す。実施例1~4は青色顔料を添加しているので、500nm~650nmに極小値をもつが、比較例1は青色顔料を添加していないので、単調減少な分光反射率を示す。
【0069】
<色相>
色相の評価は、X-rite社の分光測色計(530JP/LP)を用い、D65光源で、BYK-GARDNER社製の隠蔽試験紙(byko-chart高明度2A)の白下地上で測定した色度で評価した。
【0070】
<隠蔽性>
隠蔽性の評価は、X-rite社の分光測色計(530JP/LP)を用い、BYK-GARDNER社製の隠蔽試験紙(byko-chart高明度2A)の白下地と黒下地で測定した色差で判断した。色差が小さい程、隠蔽性が良好で、0.5以下の場合を「◎」、0.5超0.7以下の場合を「○」、0.7超1.0以下の場合を「△」、1.0超の場合を「×」とした。なお、「△」以上の評価であれば、実用上問題ない。
【0071】
<曲げ加工適性>
曲げ加工適性試験においては、まず、基板Bとして中質繊維板(MDF)の一方の面に対して、上記の方法により得られた実施例1~22及び比較例1~3の各シートをウレタン系の接着剤を用いて貼り付けた。基板Bの他方の面に対して、反対側の化粧シート1にキズが付かないようにV型の溝を基板Bと化粧シート1とを貼り合わせている境界まで入れる。次に、化粧シート1の面が山折りとなるように基板Bを当該V型の溝に沿って90度まで曲げ、化粧シート1の表面の折れ曲がった部分に白化や亀裂等が生じていないかを光学顕微鏡を用いて観察し、曲げ加工性の状態について評価を行った。
白化や亀裂等が全く見られない場合を「◎」、一部に僅かに白化が見える場合を「○」、一部に白化が見える場合を「△」、全面に白化が見えるか一部に亀裂が見える場合を「×」とした。なお、「△」以上の評価であれば、実用上問題ない。
【0072】
これらの評価結果を表1に示す。
【表1】
【0073】
表1から分かるように、実施例1~3、実施例9~11の各化粧シートでは、隠蔽性が非常に良好で、曲げ加工についても問題ない仕上がりであった。更に、実施例9~11の各化粧シートは、実施例1~3の各化粧シートに絵柄層5、トップコート層7を積層し、高意匠を付与しながら、隠蔽性と曲げ加工についても両立できていることが分かる。
実施例4、12の各化粧シートは、青色顔料の添加量が0.2と少ない配合で作製したので、隠蔽性が若干悪いが、実用上問題のないレベルであった。
実施例5、13の各化粧シートは、着色層の厚さが44μmと薄くなるように作製したので、隠蔽性が若干悪いが、実用上問題のないレベルであった。
【0074】
実施例6、14の各化粧シートは、着色層の厚さが94μmと薄くなるように作製したので、隠蔽性が若干悪いが、実用上問題のないレベルであった。
実施例7、15の各化粧シートは、着色層の厚さが34μmとかなり薄くなるように作製したので、隠蔽性が非常に悪いが、実用上問題のないレベルであった。
実施例8、16の各化粧シートは、着色層の厚さが160μmとかなり厚くなるように作製したので、隠蔽性は非常に良好であるが、曲げ加工性が悪化した。しかし、実用上問題のないレベルであった。
【0075】
実施例17、18の各化粧シートは、青色顔料の添加量が1.0と多い配合で作製したので色相が青味(b*がマイナス側)に寄ったが、実用上問題のないレベルであった。
実施例19の化粧シートは、ポリプロピレン樹脂の代わりにポリエチレン樹脂を用いたが、問題のない仕上がりであった。
実施例20の化粧シートは、酸化チタン濃度が30質量部と実施例1に比べて少ないので隠蔽性が若干悪化するが、実用上問題のないレベルであった。
実施例21の化粧シートは、スキン層を備えていないため、隠蔽性が若干悪化するが、実用上問題のないレベルであった。
実施例22の化粧シートは、酸化チタン濃度が20質量部と実施例1に比べてかなり少ないので隠蔽性が若干悪化するが、実用上問題のないレベルであった。
【0076】
比較例1、2の化粧シートは、青色顔料を含まないため500nm~650nmの分光反射率に極小値を持たず、結果として隠蔽性が見劣りする化粧シートになった。
比較例3の化粧シートは、青色顔料の添加量が1.2と非常に多い配合で作製したので色相が青く(b*の値が-1.75)、白色シートとは呼べないレベルであった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明したように、本発明は、特に、建築物の外装及び内装用の建装材、建具の表面、家電品の表面材等に用いられる化粧シートに好適な技術である。
【符号の説明】
【0078】
1…化粧シート、2…白色シート、3…着色層、4…スキン層、5…絵柄層、6…透明樹脂層、6a…エンボス模様、6b…接着性樹脂層、7…トップコート層、8…プライマー層、B…基材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7