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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】分光装置、及び分光装置の駆動方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/26 20060101AFI20240509BHJP
   G01J 3/02 20060101ALI20240509BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20240509BHJP
   G02B 26/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G01J3/26
G01J3/02 C
G02B5/28
G02B26/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019211163
(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公開番号】P2021081376
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】廣久保 望
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-141209(JP,A)
【文献】特開2013-101071(JP,A)
【文献】特開2002-277640(JP,A)
【文献】特開2015-125083(JP,A)
【文献】特開平10-319359(JP,A)
【文献】特開平08-082554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00- G01J 3/51
G01J 1/02- G01J 1/04
G01J 1/42
G01M 11/00
G02B 5/28
G02B 26/00
G02F 1/00- G02F 1/01
G05D 25/00- G05D 25/02
H04B 10/60- H04B 10/69
H04B 17/20- H04B 17/29
H04J 14/00- H04B 14/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の反射膜と、静電アクチュエータ―と、を備え、前記静電アクチュエータ―に駆動電圧を印加することで一対の前記反射膜のギャップ寸法を変更し、前記ギャップ寸法に応じた分光波長の光を出力する干渉フィルターと、
前記干渉フィルターから出力された光を受光して、受光量を測定する受光部と、
前記受光部の測定処理を制御する受光制御部と、
前記ギャップ寸法を検出するギャップセンサーと、
前記ギャップセンサーにより検出された前記ギャップ寸法に対応する前記分光波長と、前記干渉フィルターから出力させる光の目標波長との差に基づいて、前記分光波長と前記目標波長との波長ずれを示すエラーを検出するエラー検出部と、
前記差の絶対値を時間軸上で積分した積分値に対応する積分信号を出力する積分部と、
を備え、
前記受光制御部は、前記ギャップ寸法の変動が収まるまでの所定の待機期間の間、前記受光部を待機状態とし、該待機期間の終了タイミングを測定開始タイミングとして、測定処理を開始させ、測定開始タイミングを示す開始トリガー信号、及び、測定期間の終了タイミングを示す終了トリガー信号を前記積分部に出力し、
前記積分部は、前記受光制御部から前記開始トリガー信号が入力されてから、前記終了トリガー信号が入力されるまでの間、前記積分信号を前記エラー検出部に出力し、
前記エラー検出部は、前記積分値が閾値を超えた場合に測定精度に影響を及ぼす波長ずれを示すエラーを検出する
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項2】
一対の反射膜と、静電アクチュエータ―とを備え、前記静電アクチュエータ―に駆動電圧を印加することで一対の前記反射膜のギャップ寸法を変更し、前記ギャップ寸法に応じた分光波長の光を出力する干渉フィルターと、
前記干渉フィルターから出力された光を受光して、受光量を測定する受光部と、
前記受光部の測定処理を制御する受光制御部と、
前記ギャップ寸法を検出するギャップセンサーと、
前記干渉フィルターから出力させる目標波長に対して所定の第一値を加算した第二値、前記目標波長に対して前記第一値を減算した第三値、及び前記ギャップセンサーにより検出された前記ギャップ寸法に対応する前記分光波長、に基づいて、前記分光波長と前記目標波長との波長ずれを示すエラーを検出するエラー検出部と、
前記第二値を超える前記分光波長と前記第二値との差の絶対値を積分した第一積分値、及び、前記第三値を下回る前記分光波長と前記第三値との差の絶対値を積分した第二積分値の和を出力する積分部と、
を備え、
前記受光制御部は、前記ギャップ寸法の変動が収まるまでの所定の待機期間の間、前記受光部を待機状態とし、該待機期間の終了タイミングを測定開始タイミングとして、測定処理を開始させ、測定開始タイミングを示す開始トリガー信号、及び、測定期間の終了タイミングを示す終了トリガー信号を前記積分部に出力し、
前記積分部は、前記受光制御部から前記開始トリガー信号が入力されてから、前記終了トリガー信号が入力されるまでの間、前記和を前記エラー検出部に出力し、
前記エラー検出部は、前記和が閾値を超えた場合に測定精度に影響を及ぼす波長ずれを示すエラーを検出する
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の分光測定装置において、
記エラー検出部は、前記受光部で光を受光する受光開始タイミングからの時間に応じて、前記閾値を増大させる
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の分光測定装置において、
前記干渉フィルターは、前記ギャップ寸法を変化させるギャップ変更部を備え、
前記ギャップセンサーにより検出される前記分光波長が前記目標波長に近づくように、前記ギャップ変更部をフィードバック制御するフィードバック制御部を備える
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項5】
一対の反射膜と、静電アクチュエータ―とを備え、前記静電アクチュエータ―に駆動電圧を印加することで一対の前記反射膜のギャップ寸法を変更し、前記ギャップ寸法に応じた分光波長の光を出力する干渉フィルターと、前記干渉フィルターから出力された光を受光して、受光量を測定する受光部と、前記受光部の測定処理を制御する受光制御部と、前記ギャップ寸法を検出するギャップセンサーと、前記ギャップセンサーにより検出された前記ギャップ寸法に対応する前記分光波長と、前記干渉フィルターから出力させる光の目標波長との差に基づいて、前記分光波長と前記目標波長との波長ずれを示すエラーを検出するエラー検出部と、前記差の絶対値を時間軸上で積分した積分値に対応する積分信号を出力する積分部と、を備えた分光測定装置の駆動方法であって、
前記受光部を前記ギャップ寸法の変動が収まるまでの所定の待機期間の間待機状態とし、該待機期間の終了タイミングを測定開始タイミングとして測定処理を開始させ、
前記測定開始タイミングから前記受光部の測定期間の終了タイミングまでの期間の前記積分値が閾値を超えた場合に前記分光波長と前記目標波長との波長ずれであって、測定精度に影響を及ぼす波長ずれを示すエラーを検出する
ことを特徴とする分光測定装置の駆動方法。
【請求項6】
一対の反射膜と、静電アクチュエータ―とを備え、前記静電アクチュエータ―に駆動電圧を印加することで一対の前記反射膜のギャップ寸法を変更し、前記ギャップ寸法に応じた分光波長の光を出力する干渉フィルターと、前記干渉フィルターから出力された光を受光して、受光量を測定する受光部と、前記受光部の測定処理を制御する受光制御部と、前記ギャップ寸法を検出するギャップセンサーと、
前記ギャップセンサーにより検出された前記ギャップ寸法に対応する前記分光波長と、前記干渉フィルターから出力させる目標波長に対して所定の第一値を加算した第二値、前記目標波長に対して前記第一値を減算した第三値、及び前記ギャップセンサーにより検出された前記ギャップ寸法に対応する前記分光波長、に基づいて、前記分光波長と前記目標波長との波長ずれを示すエラーを検出するエラー検出部と、前記第二値を超える前記分光波長と前記第二値との差の絶対値を積分した第一積分値、及び、前記第三値を下回る前記分光波長と前記第三値との差の絶対値を積分した第二積分値の和を出力する積分部と、を備えた分光測定装置の駆動方法であって、
前記受光部を前記ギャップ寸法の変動が収まるまでの所定の待機期間の間待機状態とし、該待機期間の終了タイミングを測定開始タイミングとして測定処理を開始させ、
前記測定開始タイミングから前記受光部の測定期間の終了タイミングまでの期間の前記和が閾値を超えた場合に、前記分光波長と前記目標波長との波長ずれであって、測定精度に影響を及ぼす波長ずれを示すエラーを検出する
ことを特徴とする分光測定装置の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光装置、及び分光装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対向配置された一対の反射膜を有する干渉フィルターと、干渉フィルターを制御する制御部とを備えた分光装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の分光装置(可変干渉装置)は、干渉フィルター(ファブリーペロー干渉部)と、制御回路と、静電容量検出回路と、を備えている。干渉フィルターは、一対の反射膜と、一対の反射膜の間のギャップ寸法を変更する圧電素子と、静電容量検出用の電極を備えている。そして、分光装置の制御回路は、静電容量検出回路により検出された静電容量に基づいて、圧電素子に印加する電圧をフィードバック制御する。これにより、制御回路は、干渉フィルターを透過する光の実際の分光波長が、設定された目標波長に近づくように干渉フィルターを制御することができる。
【0003】
一方、特許文献1に記載のような分光装置では、フィードバック制御によって、波長ずれを抑制しているが、許容値以上の大きな衝撃力の外乱が加わると、反射膜間のギャップ寸法が変動して波長ずれが発生し、適正な処理が実施できない。
例えば、分光装置を分光測定装置として用いる場合、干渉フィルターで分光された光を受光する受光部を設ける。この場合、干渉フィルターから目標波長の光を分光し、受光部で分光された目標波長の光を受光することで目標波長に光の光量を測定できる。しかしながら、光量の測定中に、干渉フィルターに外乱が加わり、干渉フィルターで分光された光の波長が目標波長からシフトすると、受光部で受光される光の波長もシフトするので、目標波長の光の光量を適正に測定することができない。
そこで、従来では、分光装置では、静電容量検出回路によって反射膜間のギャップ寸法に応じた静電容量を検出し、当該静電容量が所定値以上変動した場合に、波長ずれが発生したと判定してエラーを出力するように制御していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平1-94312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、波長ずれ量に基づいてエラー検出を行う場合、波長ずれによる実際の影響と乖離する場合がある。例えば、分光装置を分光測定装置として用いる場合、受光部は、所定の測定期間の間、分光された光を受光し続けて光量を測定する。ここで、波長ずれ量のみによってエラー検出を行う場合、測定期間のうちの非常に短い期間だけ、所定値以上の波長ずれが発生した場合でも、エラーが検出される。しかしながら、測定期間に対して、波長ずれが発生した期間が十分に短ければ、測定精度に大きな影響はでない。逆に、測定期間のうちの多くの期間で、所定値以下の波長ずれが発生している場合、エラーは検出されないが、受光部で目標波長とは異なる波長の光が多く受光されることになるので、測定精度は低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様に係る分光装置は、一対の反射膜を備え、一対の前記反射膜のギャップ寸法に応じた分光波長の光を出力する干渉フィルターと、前記ギャップ寸法を検出するギャップセンサーと、前記ギャップセンサーにより検出された前記ギャップ寸法に対応する前記分光波長と、前記干渉フィルターから出力させる光の目標波長との差に基づいて、エラーを検出するエラー検出部と、を備え、前記エラー検出部は、前記差の絶対値を時間軸上で積分した積分値が閾値を超えた場合にエラーを検出する。
【0007】
第二態様に係る分光装置は、一対の反射膜を備え、一対の前記反射膜のギャップ寸法に応じた分光波長の光を出力する干渉フィルターと、前記ギャップ寸法を検出するギャップセンサーと、前記干渉フィルターから出力させる目標波長に対して所定の第一値を加算した第二値、前記目標波長に対して前記第一値を減算した第三値、及び前記ギャップセンサーにより検出された前記ギャップ寸法に対応する前記分光波長、に基づいてエラーを検出するエラー検出部と、を備え、前記エラー検出部は、前記第二値を超える前記分光波長と前記第二値との差の絶対値を積分した第一積分値、及び、前記第三値を下回る前記分光波長と前記第三値との差の絶対値を積分した第二積分値の和が、閾値を超えた場合にエラーを検出する。
【0008】
第三態様に係る分光装置の駆動方法は、一対の反射膜を備え、一対の前記反射膜のギャップ寸法に応じた分光波長の光を出力する干渉フィルターと、前記ギャップ寸法を検出するギャップセンサーとを、備えた分光装置の駆動方法であって、前記ギャップセンサーにより検出された前記ギャップ寸法に対応する前記分光波長と、前記干渉フィルターから出力させる光の目標波長との差の絶対値の積分値が、閾値を超えた場合にエラーを検出する。
【0009】
第四態様に係る分光装置の駆動方法は、一対の反射膜を備え、一対の前記反射膜のギャップ寸法に応じた分光波長の光を出力する干渉フィルターと、前記ギャップ寸法を検出するギャップセンサーとを、備えた分光装置の駆動方法であって、前記干渉フィルターから出力させる目標波長に対して所定の第一値を加算した第二値、前記目標波長に対して前記第一値を減算した第三値、及び前記ギャップセンサーにより検出された前記ギャップ寸法に対応する前記分光波長、に基づいて、前記第二値を超える前記分光波長と前記第二値との差の絶対値を積分した第一積分値、及び、前記第三値を下回る前記分光波長と前記第三値との差の絶対値を積分した第二積分値の和が、閾値を超えた場合にエラーを検出する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第一実施形態の分光装置の概略構成を示す模式図。
図2】第一実施形態の分光装置の駆動方法を含む分光測定処理のフローチャート。
図3】第一実施形態において、干渉フィルターを透過する光の分光波長の変化の一例を示す図。
図4図3の測定期間で出力された検出信号に基づく積分信号を示す図。
図5】第二実施形態の分光装置の概略構成を示す模式図。
図6】第二実施形態において、干渉フィルターを透過する光の分光波長の変化の一例を示す図。
図7】第三実施形態における関係データの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第一実施形態]
以下、第一実施形態に係る分光装置について説明する。
図1は、本実施形態の分光装置100の概略構成を示す模式図である。
[分光装置100の全体構成]
分光装置100は、測定対象から入力された入射光から所望の目標波長の光を分光し、分光された光の光量を測定する装置である。この分光装置100は、図1に示すように、干渉フィルター110と、受光部120と、ギャップ検出部130と、フィルター駆動部140と、受光制御部150と、積分部160と、制御部170と、を含んで構成されている。
以下、各構成について詳細に説明する。
【0012】
[干渉フィルター110の構成]
干渉フィルター110は、図1に示すように、透光性の第一基板111および第二基板112を備えている。これらの第一基板111及び第二基板112は、例えばシロキサンを主成分とするプラズマ重合膜等の接合膜により接合されて、一体的に構成されている。
【0013】
第一基板111の第二基板112に対向する面には、一対の反射膜の一方を構成する第一反射膜114が設けられている。この第一反射膜114は、金属膜や金属合金膜により構成されていてもよく、誘電体多層膜により構成されていてもよい。
第一反射膜114の表面には、例えば、ITO等の透明電極により構成された第一容量電極114Aが設けられている。
【0014】
また、第一基板111の第二基板112に対向する面には、第一電極116Aが設けられている。この第一電極116Aは、例えば、第一反射膜114の外周を囲うように配置されており、第二基板112に設けられた第二電極116Bに対向する。第一電極116A及び第二電極116Bは、電圧が印加されることで、静電引力により第一反射膜114と第二反射膜115との間のギャップGの寸法(ギャップ寸法)を変化させる静電アクチュエーター116(ギャップ変更部)を構成する。
【0015】
第二基板112は、第一基板111とは反対側の面に、円環状の凹溝が形成されており、円環状の凹溝の内側である可動部112Aと、凹溝の底面であるダイアフラム部112Bと含んで構成されている。
可動部112Aの第一基板111に対向する面には、一対の反射膜の他方を構成する第二反射膜115が設けられている。この第二反射膜115は、第一基板111に設けられた第一反射膜114にギャップGを介して対向する。第二反射膜115は、第一反射膜114と同様の素材により構成され、例えば、金属膜や金属合金膜、誘電体多層膜により構成されている。また、第二反射膜115の第一反射膜114に対向する面には、第二容量電極115Aが設けられている。
【0016】
また、第二基板112の可動部112A及びダイアフラム部112Bの少なくともいずれかには、第一電極116Aに対向する面に第二電極116Bが設けられている。この第二電極116Bは、第一電極116Aとともに静電アクチュエーター116を構成する。
【0017】
以上のような干渉フィルター110では、第一電極116A及び第二電極116Bの間に電圧が印加されることで、電極間に静電引力が作用して可動部112Aが第一基板111側に変位する。これにより、ギャップGの寸法を変更することが可能となる。
なお、図1では、干渉フィルター110は、1つの静電アクチュエーター116を備える構成としたが、これに限定されない。例えば、干渉フィルター110は、第一反射膜114及び第二反射膜115の外側を囲って配置された内側静電アクチュエーターと、内側静電アクチュエーターの外側に設けられた外側静電アクチュエーターとを備える構成などとしてもよい。この場合、内側静電アクチュエーター及び外側静電アクチュエーターのいずれか一方に、バイアス電圧を印加して可動部112Aを粗動制御し、他方に制御電圧を印加して可動部を微動制御する構成とすることができる。
【0018】
[受光部120の構成]
受光部120は、干渉フィルター110を透過した光を受光する光電変換素子を含んで構成されている。受光部120は、複数の画素を有し、各画素で受光した光の光量を検出することで分光画像を出力する撮像素子により構成されていてもよい。受光部120として撮像素子を用いる場合、受光部120と干渉フィルター110との間に、干渉フィルター110を透過した光を、受光部120に結像させる光学系が設けられていることが好ましい。
受光部120は、干渉フィルター110を透過した光を受光すると、受光量に応じた受光信号を受光制御部150に出力する。この受光信号は、受光制御部150を介して制御部170に出力される。
【0019】
[ギャップ検出部130]
ギャップ検出部130は、第一容量電極114A及び第二容量電極115Aに電気接続されており、第一容量電極114A及び第二容量電極115Aとともに、ギャップセンサーを構成する。このギャップ検出部130は、第一容量電極114A及び第二容量電極115Aの静電容量を検出する容量検出回路である。第一容量電極114A及び第二容量電極115Aの静電容量は、ギャップGの寸法に対して反比例するので、静電容量を検出することは、第一反射膜114及び第二反射膜115の間のギャップ寸法を検出することを意味する。
また、ギャップ検出部130は、検出した静電容量に応じた検出信号を、フィルター駆動部140、積分部160、及び制御部170に出力する。
【0020】
[フィルター駆動部140の構成]
フィルター駆動部140は、干渉フィルター110の静電アクチュエーター116に印加する駆動電圧を制御して、干渉フィルター110を透過する光の波長を変更させる。
このフィルター駆動部140は、ギャップ検出部130及び制御部170に接続されている。そして、フィルター駆動部140は、制御部170から入力される目標波長λを示す目標指令信号と、ギャップ検出部130から入力される検出信号との差分信号に基づいて、静電アクチュエーター116に印加する電圧をフィードバック制御する。つまり、フィルター駆動部140は、ギャップ検出部130で検出されるギャップ寸法に対応した、干渉フィルター110を透過する光の分光波長λが、目標指令信号で示される目標波長λとなるように、静電アクチュエーター116に印加する電圧をフィードバック制御するフィードバック制御部として機能する。
【0021】
なお、上述したように、干渉フィルター110が、第一静電アクチュエーターと、第二静電アクチュエーターとを備える構成としてもよい。この場合、フィルター駆動部140は、第一静電アクチュエーター及び第二静電アクチュエーターのいずれか一方にバイアス電圧を印加するバイアス電圧印加部と、他方に制御電圧を印加する制御電圧印加部とを備えることが好ましい。これにより、制御電圧印加部が、ギャップ検出部130からの検出信号と、制御部170からの目標指令信号との差に基づいて、制御電圧をフィードバック制御することができる。
【0022】
[受光制御部150の構成]
受光制御部150は、受光部120から入力された受光信号を信号処理して制御部170に出力する。つまり、図示は省略するが、受光制御部150は、受光信号の信号電圧を増幅するアンプ、アナログ信号をデジタル信号に変換するADコンバーター等を含む信号処理回路を備え、これらの信号処理回路により処理された受光信号を制御部170に出力する。
【0023】
また、受光制御部150は、制御部170の制御に基づいて、受光部120での測定処理を制御する。具体的には、受光制御部150は、所定の測定開始タイミングから所定の測定期間で受光した光の受光量に応じた受光信号を出力するように受光部120を制御する。
つまり、本実施形態では、静電アクチュエーター116に駆動電圧を印加することで、干渉フィルター110のギャップGの寸法を変更する。この際、可動部112Aは、ダイアフラム部112Bのばね力により、可動部112Aが振動し、ギャップGの寸法が変動する。このギャップGの寸法が変動している間は、干渉フィルター110を透過する光の波長も変動する。したがって、受光制御部150は、ギャップGの寸法の変動が収まるまでの所定の待機期間の間、受光部120を待機状態とし、待機期間の終了タイミングを測定開始タイミングとして、測定処理を開始させる。
また、受光制御部150は、測定開始タイミングを示す開始トリガー信号、及び、測定期間の終了タイミングを示す終了トリガー信号を、積分部160に出力する。
【0024】
[積分部160の構成]
積分部160は、ギャップ検出部130から検出信号が入力され、入力された検出信号に基づいて積分信号を生成して制御部170に出力する。
具体的には、積分部160は、受光制御部150から開始トリガー信号が入力されてから、終了トリガー信号が入力されるまでの間、ギャップ検出部130から入力される検出信号に基づいた積分信号を制御部170に出力する。この積分信号は、干渉フィルター110を透過した光の分光波長λと、目標波長λとの差の絶対値である波長ずれ量|λ-λ|を、時間軸上で積分した積分値Iを示す信号である。
なお、積分部160は、マイコンにより構成され、マイコンが、所定のプログラムを実行することで、検出信号に対応する分光波長を算出し、目標波長と分光波長との積分値を演算により算出する構成としてもよい。また、制御部170の演算部172を、積分部160として機能させてもよい。
あるいは、積分部160は、複数の演算回路によって構成されていてもよい。この場合、積分部160は、検出信号に対して所定の信号処理を行う信号処理回路、処理された検出信号と目標指令信号との信号値の差を求める減算回路、信号値の差の絶対値を算出する絶対値回路、及び信号値の差の絶対値を積分する積分回路により構成されていてもよい。
【0025】
[制御部170の構成]
制御部170は、演算回路や記憶回路により構成され、分光装置100の全体の動作を制御する。制御部170は、分光装置100と外部機器とを接続するインターフェイス(図示略)に接続され、外部機器からの信号を受信することも可能である。外部機器からの信号としては、例えば分光装置100により分光させる光の目標波長λを指定する信号等が例示できる。なお、分光装置100が、ユーザーによる入力操作を受け付ける操作部を有する構成としてもよく、この場合、操作部からの操作信号が制御部170に入力されるように構成する。
この制御部170は、図1に示すように、記憶部171と、演算部172とを備えている。
記憶部171は、各種データや各種プログラムを記憶する記憶装置であり、例えば半導体メモリー等により構成されている。
演算部172は、CPU等の演算回路により構成され、記憶部171に記憶されたプログラムを読み込み実行することで、波長設定部173、測定制御部174、及びエラー検出部175等として機能する。また、上述したように、演算部172を積分部160として機能させてもよい。
【0026】
波長設定部173は、干渉フィルター110により分光させる光の目標波長λを設定する。例えば、波長設定部173は、外部機器や操作部から分光装置100で分光させる光の波長が入力された場合、当該波長を目標波長λとして設定する。
【0027】
測定制御部174は、設定された目標波長λに対応する目標電圧を、記憶部171に記憶された駆動テーブルから読み出し、目標電圧を含む目標指令信号をフィルター駆動部140及び積分部160に出力する。
また、測定制御部174は、フィルター駆動部140への目標指令信号の出力と同時に、受光制御部150に対して、測定指令信号を出力する。これにより、受光部120は、干渉フィルター110での波長切替動作を行う待機期間の後、測定期間で干渉フィルター110を透過した分光波長λの光を受光する測定処理を実施する。
さらに、測定制御部174は、受光部120から受光制御部150を介して入力された受光信号に基づいて、測定対象の目標波長λに対する光量を測定する。
【0028】
エラー検出部175は、積分部160から入力される積分信号に基づいて、分光測定処理でのエラーを検出する。ここで述べるエラーとは、分光装置100を用いた分光測定処理で、測定精度に影響が出る波長ずれの発生を意味する。
干渉フィルター110を用いた分光測定では、受光部120での測定期間で、外乱等の衝撃力が加わると、干渉フィルター110を透過する光の分光波長λがシフトする。この場合、波長ずれによって、受光部120に、目標波長λとは異なる分光波長λの光が受光されてしまう。しかしながら、波長ずれが生じたとしても、測定精度に影響しない場合がある。例えば、波長ずれ量が大きい場合でも、波長ずれが発生した時間が測定期間に対して十分に短ければ、測定精度に対する影響は小さい。一般に、エラーが発生した場合は、再測定を実施することになり、上記のような測定精度に対する影響が小さい波長ずれをエラーとして検出すると、測定精度に影響がないにもかかわらず、再測定が高い頻度で実施されることになり、分光測定処理に係る時間が長くなる。
そこで、本実施形態のエラー検出部175は、積分信号で示される積分値が所定の閾値を超えたか否かを判定し、閾値を超えた場合に、エラーを検出する。これにより、測定精度の影響が大きくなる波長ずれのみを適正に検出できる。
【0029】
[分光装置100における動作]
次に、分光装置100の駆動方法について説明する。
図2は、本実施形態の分光装置100の駆動方法を含む分光測定処理のフローチャートである。
分光装置100で分光測定処理を実施する場合、まず、制御部170の波長設定部173は、目標波長λを設定する(ステップS1)。例えば、波長設定部173は、制御部170と通信可能に接続された外部機器から取得した目標波長λを設定してもよく、操作部から入力された目標波長λを設定してもよい。また、所定波長間隔の各波長の分光測定波長を設定する場合では、波長設定部173は、予め設定された目標波長λを設定して後述するステップS2からステップS12の処理を実施し、その後、再びステップS1に戻って、目標波長λを設定して分光測定処理を繰り返す。これにより、所定間隔毎の各波長に対する分光測定を行うことができる。
【0030】
次に、測定制御部174は、設定した目標波長λに応じた目標指令信号を、フィルター駆動部140及び積分部160に出力し、かつ、目標指令信号の出力と同時に、受光制御部150に測定指令信号を出力する(ステップS2)。
目標指令信号を受信したフィルター駆動部140は、干渉フィルター110の静電アクチュエーター116に目標電圧を印加し、かつ、ギャップ検出部130から入力される検出信号と目標指令信号とに基づいて、静電アクチュエーター116に印加する電圧をフィードバック制御する(ステップS3)。これにより、待機期間の間で、干渉フィルター110のギャップGの寸法が、目標波長λに対応した寸法となるように制御され、目標波長λの光が干渉フィルター110を透過する。
【0031】
また、受光制御部150は、測定指令信号を受信すると、測定指令信号を受信したタイミングからの時間をカウントする。そして、受光制御部150は、測定指令信号の受信タイミングから予め設定された時間が経過して待機期間が終了したか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4でNoと判定される場合、受光制御部150は、待機期間が終了するまで待機する。ステップS4でYesと判定される場合、受光制御部150は、受光部120での測定処理を開始させ、かつ開始トリガー信号を積分部160に出力する(ステップS5)。
【0032】
さらに、積分部160は、ステップS5で出力された開始トリガー信号を受信すると、積分値をリセットする(ステップS6)。そして、積分部160は、波長ずれ量|λ-λ|を時間軸上で積分し、その積分値Iに応じた積分信号を制御部170に出力する(ステップS7)。
図3は、本実施形態のエラー検出において、干渉フィルター110を透過する光の分光波長λの変化の一例を示す図である。図4は、図3の測定期間で出力された検出信号に基づく積分信号を示す図である。
図3に示す例では、干渉フィルター110に振動が加わり、時間tをピークとした波長ずれと、時間tをピークとした波長ずれが発生している。積分信号の積分値は、斜線部で囲われる面積となるので、積分信号で示される積分値Iは、図4に示すように、波長ずれが発生した場合に積算されていく。
【0033】
そして、エラー検出部175は、積分部160から出力される積分信号を監視し、積分値が所定の閾値Sを超えたか否かを判定する(ステップS8)。
ステップS8でYesと判定されると、エラー検出部175は、エラーを検出する(ステップS9)。つまり、エラー検出部175は、分光測定の測定精度に影響が出る波長ずれが発生した、と判断する。例えば、図4に示す例では、時間tで積分値が閾値Sを超えるので、時間tのタイミングで、エラー検出部175によりエラーが検出される。
この場合、測定制御部174は、受光制御部150に、再測定を指令する再測定指令信号を出力する(ステップS10)。これにより、受光制御部150は、ステップS4に戻り、測定指令信号を受信したタイミングからの時間をカウントし、測定期間になると、受光部120による受光量を再測定する。
【0034】
ステップS8でNoと判定される場合、受光制御部150は、測定期間が終了したか否かを判定する(ステップS11)。ステップS11でNoと判定される場合は、受光部120での測定処理を継続して、ステップS7に戻る。
ステップS11でYesと判定される場合、受光制御部150は、受光部120での測定処理を終了させ、受光部120から入力された受光量に応じた受光信号を信号処理し、制御部170に出力する。これにより、測定制御部174は、受光制御部150から受光信号に基づいて、目標波長λに対する光量を測定する(ステップS12)。
【0035】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の分光装置100は、ギャップGを介して対向する第一反射膜114及び第二反射膜115を備えた干渉フィルター110と、ギャップGの寸法を検出するギャップ検出部130と、制御部170とを備える。また、制御部170は、エラー検出部175を備える。このエラー検出部175は、ギャップ検出部130により検出されたギャップ寸法に対応する分光波長λと、干渉フィルター110から出力させる光の目標波長λとの差の絶対値|λ-λ|の積分値Iが、閾値Sを超える場合にエラーを検出する。
【0036】
これにより、エラー検出部175は、過剰なエラー検出を抑制することができる。
つまり、測定期間で、干渉フィルター110に外乱等の衝撃力が加わり、分光波長λが目標波長λからシフトする波長ずれが発生した場合でも、波長ずれの期間が非常に短い期間でのみ発生した場合は、波長ずれが測定精度に与える影響は小さい。このような場合に、波長ずれのエラーを検出し、再測定を行うと、測定時間が長くなる。これに対して、本実施形態では、分光波長λと目標波長λとの差の絶対値|λ-λ|を積分した積分値Iが、閾値Sを超えるか否かを判定する。この場合、測定期間内で、上記のように、非常に短い期間で所定値以上の波長ずれが発生した場合でも、積分値Iが閾値S以下であれば、測定精度に影響が出ないと判定される。すなわち、測定精度に影響を及ぼす波長ずれが発生した時のみエラーが検出されることになり、過剰なエラー検出を回避することができる。これにより、分光装置100は、所望の測定精度を維持しつつ、迅速な分光測定処理を実施することが可能となる。
【0037】
本実施形態の分光装置100では、干渉フィルター110は、ギャップGの寸法を変化させる静電アクチュエーター116を備える。そして、フィルター駆動部140は、ギャップ検出部130により検出される分光波長λが目標波長λに近づくように、静電アクチュエーター116に印加する電圧をフィードバック制御する。
これにより、分光装置100は、干渉フィルター110から高い精度で目標波長λの光を透過させることができる。また、干渉フィルター110に外乱等の衝撃が加わらなければ、フィルター駆動部140によるフィードバック制御で、干渉フィルター110を透過する光の波長が目標波長λに維持されるので、エラー検出部175によるエラー検出頻度も低下し、分光装置100は、迅速かつ精度の高い分光測定処理を実施することができる。
【0038】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態について説明する。
第一実施形態では、エラー検出部175は、ギャップ検出部130から出力される検出信号に基づいた分光波長λと、目標波長λとの差の絶対値を積分した積分値を用いて、エラー検出を行った。これに対して、第二実施形態では、目標波長λに所定の第一値を加算した第二値と分光波長との差、及び目標波長λに第一値を減算した第三値と分光波長との差の積分値に基づいて、エラー検出を行う点で、上記第一実施形態と相違する。
なお、以降の説明にあたり、既に説明した事項については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0039】
図5は、第二実施形態の分光装置100Aの概略構成を示す模式図である。
第二実施形態の分光装置100Aは、第一実施形態と略同様の構成を有し、図4に示すように、干渉フィルター110と、受光部120と、ギャップ検出部130と、フィルター駆動部140と、受光制御部150と、積分部160Aと、制御部170と、を含んで構成されている。
また、制御部170は、記憶部171と、演算部172とを備え、第一実施形態と同様に、演算部172は、波長設定部173、測定制御部174、及びエラー検出部175等として機能する。
【0040】
図6は、本実施形態のエラー検出において、干渉フィルター110を透過する光の分光波長の変化の一例を示す図である。
本実施形態では、積分部160Aは、第一積分部161と、第二積分部162と、加算部163とを備える。
ここで、本実施形態では、図6に示すように、目標波長λに対して第一値λを加算した値を第二値λ(=λ+λ)とし、目標波長λに対して第一値λを減算した値を第三値λ(=λ-λ)とする。
そして、第一積分部161は、第二値λを超える検出信号に基づく分光波長λと、第二値λとの差λ-λを、時間軸上で積分した第一積分値Iを算出する。また、第二積分部162は、第三値λと、第三値λを下回る検出信号に基づく分光波長λとの差λ-λを、時間軸上で積分した第二積分値Iを算出する。さらに、加算部163は、第一積分値Iと第二積分値Iとを加算して、波長ずれ量の積分値Iとする。
なお、第一積分部161、第二積分部162、及び加算部163は、第一実施形態と同様、マイコンにより構成されていてもよく、複数の演算回路により構成されていてもよく、制御部170の演算部172が積分部160Aとして機能してもよい。
【0041】
本実施形態の分光装置100Aでは、図2に示す第一実施形態と同様の駆動方法により分光測定処理を実施することができる。なお、本実施形態では、ステップS7で積分部160Aから出力される積分値Iは、第一積分値Iと第二積分値Iの和である。
その他の動作については、第一実施形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0042】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の分光装置100Aでは、ギャップGを介して対向する第一反射膜114及び第二反射膜115を備えた干渉フィルター110と、ギャップGの寸法を検出するギャップ検出部130と、制御部170とを備える。また、制御部170は、目標波長λに対して所定の第一値λを加算した第二値λと、目標波長λに対して第一値λを減算した第三値λと、ギャップ検出部130により検出されたギャップ寸法に対応する分光波長λと、に基づいてエラーを検出するエラー検出部175を備える。具体的には、このエラー検出部175は、第二値λを超える分光波長λと第二値λとの差の絶対値|λ-λ|を積分した第一積分値I、及び、第三値λを下回る分光波長と第三値λとの差の絶対値|λ-λ|を積分した第二積分値Iの和である積分値I(=I+I)が、閾値Sを超えた場合にエラーを検出する。
この場合、目標波長λを中心としたλ-λ~λ+λの波長域において発生した検出信号のノイズ成分は、積分値Iに積算されない。また、λ-λの差、及びλ-λの差が正の場合のみ積算し、負の場合は積算しない。したがって、ノイズ成分を除外して、エラー検出を行うことができ、過剰なエラー検出を回避した、より適切なエラー検出を実施することができる。これにより、分光装置100Aの分光測定処理をより迅速に行うことができる。
【0043】
[第三実施形態]
次に、第三実施形態について説明する。
第一実施形態及び第二実施形態では、エラー検出部175は、積分部160,160Aで算出される積分値Iが閾値Sを超えた場合に、測定精度に影響する波長ずれが発生したとするエラーを検出した。これに対して、第三実施形態では、測定時間に応じて、閾値Sを変更する点で、上記第一実施形態及び第二実施形態と相違する。
【0044】
図7は、第三実施形態の記憶部171に記憶される関係データの一例を示す図である。
第三実施形態では、図1に示すような、第一実施形態と同様の構成を有する分光装置100において、記憶部171に、図7に示すような関係データが記憶されている。なお、ここでは、第一実施形態の記憶部171に関係データが記憶される例を用いるが、第二実施形態の記憶部171に、関係データが記憶される構成としてもよい。
この関係データは、測定期間における測定開始タイミングからの経過時間(測定時間)と、閾値Sとの関係を示すデータである。本実施形態では、図7に示すように、閾値Sは、測定時間の増加とともに、閾値Sが線形的に増加するように設定されている。
そして、本実施形態では、受光制御部150は、図2のステップS5で測定処理を開始するタイミングで、開始トリガー信号を積分部160と制御部170とに出力する。
また、エラー検出部175は、開始トリガー信号を受信した測定開始タイミングからの経過時間、つまり測定時間をカウントする。そして、ステップS8では、エラー検出部175は、記憶部171に記憶される関係データから、カウントされている測定時間に対応する閾値Sを読み出し、積分部160から入力された積分信号の積分値Iが、読み出した閾値Sを超えるか否かを判定する。
その他の処理については、既に説明した内容と同様である。
【0045】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の分光装置100では、エラー検出部175は、受光部120で光を受光する受光開始タイミングからの経過時間である測定時間に応じて、閾値Sを増大させる。
これにより、測定時間に応じた適切なエラー検出を実施できる。つまり、本実施形態では、エラー検出部175は、測定時間に対する波長ずれの発生頻度の割合に基づいて、エラーを検出することができ、より適正にエラー検出を行うことができる。
【0046】
[変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0047】
[変形例1]
上記実施形態では、ステップS9でエラー検出部175がエラーを検出すると、ステップS10により、測定制御部174が、受光制御部150に再測定指令信号を出力し、受光制御部150は、待機期間が終了した場合に、測定期間に移行して受光部120による測定処理を開始した。この場合、外乱によるギャップGの寸法変動が、待機期間の間で収まっている場合、再測定処理により、適切に目標波長の光の受光量を測定することができる。
これに対して、ステップS9でエラーを検出した場合、測定制御部174は、積分信号の積分値の単位時間当たりの変化量を監視し、変化量が許容値以内であるか否かをさらに判定してもよい。そして、積分値の変化量が許容値以内になったと判定された場合に、測定制御部174は、受光制御部150に再測定指令信号を出力してもよい。つまり、分光装置100は、干渉フィルター110のギャップGの寸法変動が収まったか否かを判定して、収まったと判定した場合に、再測定処理を指令してもよい。
この場合、受光制御部150は、待機期間を省略して、測定期間による測定処理を即座に開始してもよい。
【0048】
また、測定制御部174は、積分信号の積分値の単位時間当たりの変化量に代えて、ギャップ検出部130により検出される検出信号の単位時間当たりの変化量を監視してもよい。この場合でも、測定制御部174は、検出信号の単位時間当たりの変化量が所定の許容値以内となった場合に、再測定処理を実施する。
【0049】
[変形例2]
上記実施形態では、受光制御部150は、測定指令信号や再測定指令信号を受信したタイミングからの時間をカウントし、待機期間が終了したと判定された場合に、測定期間に移行して受光量の測定処理を開始したが、これに限定されない。例えば、受光制御部150は、検出信号の信号値の単位時間当たりの変化量、又は積分値の単位時間当たりの変化量を監視し、当該変化量が所定の許容値以下となった場合に、測定期間に移行して測定処理を実施してもよい。
【0050】
[変形例3]
第三実施形態では、測定開始タイミングからの経過時間を測定時間として、測定時間に応じて閾値Sを変更した。これに対して、例えば測定対象や測定環境に応じて、測定期間の長さが変更可能な受光部120を用い、受光部120での測定期間の長さを測定時間として、閾値Sを変更してもよい。つまり、エラー検出部175は、測定期間が短い場合は、閾値Sを小さくし、測定期間が長い場合は、閾値Sを大きくして、エラー検出を行ってもよい。測定期間が長い場合では、検出信号に含まれるノイズ等が多くなり、積分値Iも大きくなる傾向があり、測定期間が短い場合と同様の閾値Sを用いると、過剰にエラーが検出されることになる。また、測定期間が長ければ、目標波長λの光を受光している時間の割合も長くなるので、波長ずれによる測定精度への影響も小さくなる。したがって、測定期間の長さに応じて閾値Sを変更することで、過剰なエラー検出を抑制した適正な分光測定処理を実施することができる。
【0051】
[変形例4]
上記実施形態では、分光装置100,100Aは、分光測定装置であり、干渉フィルター110を透過した光を受光する受光部120を備える構成としたが、これに限定されない。
例えば、分光装置は、干渉フィルター110を透過した光を外部に出力する光源装置であってもよい。分光装置を光源装置として用いる場合では、受光部120は不要であり、代わりに、白色光源などの光源を設ける。そして、光源から出射された光を干渉フィルター110に導き、干渉フィルター110で所定の分光波長の光を分光させて出力する。この場合、分光装置は、干渉フィルター110のギャップGの寸法を設定した後、干渉フィルター110のギャップGの寸法を維持することで、分光波長の光を出力し続けることができる。
このように、分光装置を光源装置として機能させる場合では、エラー検出部175は、光を出力する照射期間における積分値Iの値が閾値Sを超えたか否かを判定すればよい。
なお、光源装置での照射期間は、分光測定装置における測定期間に比べて十分に長いことが多い。したがって、照射期間を複数の小期間に区分にし、各小期間でエラー検出を実施することが好ましい。
例えば、照射期間が、第一の小期間と、第一の小期間に続く第二の小期間を含む場合、第一の小期間の開始時に積分部の積分値Iをリセットし、エラー検出部は、第一の小期間で積分部から出力される積分信号に基づいて、エラーが発生しているか否かを判定するエラー検出処理を実施する。そして、第一の小期間が終了して、第二の小期間が開始されると、第二の小期間の開始時に積分値Iをリセットし、エラー検出部は、第二の小期間で積分部から出力される積分信号に基づいてエラー検出処理を実施する。
或いは、照射期間において、一定周期にエラー判定タイミングを設け、各エラー判定タイミングから所定時間の間で、エラー検出処理を実施してもよい。この場合、照射期間において、断続的に、エラー検出処理が行われることになる。
【0052】
[変形例5]
上記実施形態では、干渉フィルター110は、静電アクチュエーター116を備え、ギャップGの寸法が変更可能な構成としたが、波長固定側の干渉フィルターであってもよい。つまり、予め設定された所定の目標波長λのみを透過可能な干渉フィルターを用いてもよい。
【0053】
[その他の変形例]
干渉フィルター110は、ギャップ変更部として、静電アクチュエーター116を備える構成を例示したが、ギャップ変更部の構成はこれに限定されない。例えば、第一基板111と第二基板112との間のピエゾ素子等の圧電アクチュエーターを配置し、圧電アクチュエーターへの電圧印加によってギャップGの寸法を変化させるように構成してもよい。
【0054】
受光部120は、干渉フィルター110を透過した光を受光する構成としたがこれに限定されない。例えば、干渉フィルターとして、ギャップGの寸法に応じた分光波長の光を反射させる反射型のもフィルターを用いてもよく、この場合、受光部120は、干渉フィルター110を反射した光を受光すればよい。
【0055】
[本発明のまとめ]
本発明の第一態様に係る分光装置は、一対の反射膜を備え、一対の前記反射膜のギャップ寸法に応じた分光波長の光を出力する干渉フィルターと、前記ギャップ寸法を検出するギャップセンサーと、前記ギャップセンサーにより検出された前記ギャップ寸法に対応する前記分光波長と、前記干渉フィルターから出力させる光の目標波長との差に基づいて、エラーを検出するエラー検出部と、を備え、前記エラー検出部は、前記差の絶対値を時間軸上で積分した積分値が閾値を超えた場合にエラーを検出することを特徴とする。
これにより、測定精度に影響を及ぼす波長ずれが発生した時のみエラーが検出されることになり、過剰なエラー検出を回避することができる。
【0056】
本発明の第二態様に係る分光装置は、一対の反射膜を備え、一対の前記反射膜のギャップ寸法に応じた分光波長の光を出力する干渉フィルターと、前記ギャップ寸法を検出するギャップセンサーと、前記干渉フィルターから出力させる目標波長に対して所定の第一値を加算した第二値、前記目標波長に対して前記第一値を減算した第三値、及び前記ギャップセンサーにより検出された前記ギャップ寸法に対応する前記分光波長、に基づいてエラーを検出するエラー検出部と、を備え、前記エラー検出部は、前記第二値を超える前記分光波長と前記第二値との差の絶対値を積分した第一積分値、及び、前記第三値を下回る前記分光波長と前記第三値との差の絶対値を積分した第二積分値の和が、閾値を超えた場合にエラーを検出することを特徴とする。
これにより、第一態様の分光装置と同様、測定精度に影響を及ぼす波長ずれが発生した時のみエラーが検出されることになり、過剰なエラー検出を回避することができる。また、ギャップセンサーでの検出ノイズを抑制することができ、より適正にエラー検出を行うことができる。
【0057】
第一態様及び第二態様の分光装置は、前記干渉フィルターから出力された光を受光して、受光量を測定する受光部を備え、前記エラー検出部は、前記受光部で光を受光する受光開始タイミングからの時間に応じて、前記閾値を増大させることが好ましい。
これにより、エラー検出部は、受光部により測定を実施する時間に対する、波長シフトの発生頻度の程度に基づいて、エラーを検出することができ、より適正にエラー検出を行うことができる。
【0058】
第一態様及び第二態様に係る分光装置において、前記干渉フィルターは、前記ギャップ寸法を変化させるギャップ変更部を備え、前記ギャップセンサーにより検出される前記分光波長が前記目標波長に近づくように、前記ギャップ変更部をフィードバック制御するフィードバック制御部を備えることが好ましい。
これにより、干渉フィルターの一対の反射膜の間のギャップ寸法が、常に目標波長となるようにフィードバック制御されることになり、分光波長が目標波長からずれる波長ずれが抑制され、エラー検出の頻度を低下させることができる。
【0059】
本発明に係る第三態様の分光装置の駆動方法は、一対の反射膜を備え、一対の前記反射膜のギャップ寸法に応じた分光波長の光を出力する干渉フィルターと、前記ギャップ寸法を検出するギャップセンサーとを、備えた分光装置の駆動方法であって、前記ギャップセンサーにより検出された前記ギャップ寸法に対応する前記分光波長と、前記干渉フィルターから出力させる光の目標波長との差の絶対値の積分値が、閾値を超えた場合にエラーを検出することを特徴とする。
これにより、第一態様と同様に、第一態様の分光装置と同様、測定精度に影響を及ぼす波長ずれが発生した時のみエラーが検出されることになり、過剰なエラー検出を回避することができる。
【0060】
本発明に係る第四態様の分光装置の駆動方法は、一対の反射膜を備え、一対の前記反射膜のギャップ寸法に応じた分光波長の光を出力する干渉フィルターと、前記ギャップ寸法を検出するギャップセンサーとを、備えた分光装置の駆動方法であって、前記干渉フィルターから出力させる目標波長に対して所定の第一値を加算した第二値、前記目標波長に対して前記第一値を減算した第三値、及び前記ギャップセンサーにより検出された前記ギャップ寸法に対応する前記分光波長、に基づいて、前記第二値を超える前記分光波長と前記第二値との差の絶対値を積分した第一積分値、及び、前記第三値を下回る前記分光波長と前記第三値との差の絶対値を積分した第二積分値の和が、閾値を超えた場合にエラーを検出することを特徴とする。
これにより、第二態様の分光装置と同様、過剰なエラー検出を回避することができるとともに、ギャップセンサーでの検出ノイズを抑制することができ、より適正にエラー検出を行うことができる。
【符号の説明】
【0061】
100,100A…分光装置、110…干渉フィルター、111…第一基板、112…第二基板、112A…可動部、112B…ダイアフラム部、114…第一反射膜、114A…第一容量電極、115…第二反射膜、115A…第二容量電極、116…静電アクチュエーター、116A…第一電極、116B…第二電極、120…受光部、130…ギャップ検出部、140…フィルター駆動部、150…受光制御部、160,160A…積分部、161…第一積分部、162…第二積分部、163…加算部、170…制御部、171…記憶部、172…演算部、173…波長設定部、174…測定制御部、175…エラー検出部、G…ギャップ、S…閾値、λ…分光波長、λ…目標波長、λ…第一値、λ…第二値、λ…第三値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7