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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240509BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G03G21/00 370
G03G15/08 310
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019215747
(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公開番号】P2021086039
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】桑原 諄
(72)【発明者】
【氏名】富永 宜幸
(72)【発明者】
【氏名】山浦 正彰
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-114718(JP,A)
【文献】特開2003-091172(JP,A)
【文献】特開2014-074882(JP,A)
【文献】特開2004-070124(JP,A)
【文献】特開2011-118332(JP,A)
【文献】特開2016-099420(JP,A)
【文献】特開2006-201385(JP,A)
【文献】特開2009-086497(JP,A)
【文献】特開2002-023451(JP,A)
【文献】特開2010-231056(JP,A)
【文献】特開2005-031330(JP,A)
【文献】特開2011-018332(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0003324(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/02
13/08
13/095
13/14-13/16
13/34
15/00
15/02
15/08
15/095
15/14-15/16
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型成分を有するトナーで形成された画像であって、媒体への転写を目的とする画像と、媒体への転写を目的としない画像とを保持する像保持手段と、
前記媒体への転写を目的とする画像を媒体に転写する転写手段と、
前記媒体への転写を目的とする画像を前記像保持手段上に形成する印刷指示を受けた場合に、前記媒体への転写を目的とする画像が形成される前記像保持手段上の位置に、前記媒体への転写を目的とする画像の少なくとも1つの前に、前記媒体への転写を目的としない画像を形成する形成手段と、
を備え、
前記形成手段は、
前記像保持手段の回転方向において、前記媒体への転写を目的としない画像どうしの間に隙間をあけ、且つ、
前記像保持手段の回転方向に直交する方向において、前記像保持手段の端と前記媒体への転写を目的としない画像の間に隙間をあけ、
前記像保持手段の回転方向に直交する方向において、前記媒体への転写を目的とする画像が形成される範囲を覆う大きさの前記媒体への転写を目的としない画像を形成し、
前記像保持手段が複数周回転する期間、前記媒体への転写を目的としない画像を形成し、
前記像保持手段の次回以降の周回において、前記隙間に重複する領域において前回の周回における前記媒体への転写を目的としない画像の位置に対して所定距離ずらした位置に、前記媒体への転写を目的としない画像を形成する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
第1の媒体用の第1の形成モードと、前記第1の媒体よりも転写性感度が低い第2の媒体用の第2の形成モードとを有し、前記第1の形成モードの場合に、前記媒体への転写を目的とする画像を前記像保持手段上に形成する前に、前記媒体への転写を目的とする画像が形成される前記像保持手段上の位置に、前記媒体への転写を目的としない画像を形成する前記形成手段、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
利用者が入力可能な入力手段であって、前記媒体への転写を目的としない画像を前記像保持手段上に形成する動作の実行を、利用者が指示する入力が可能な前記入力手段、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記媒体への転写を目的としない画像は、前記像保持手段の回転方向に沿って予め定められた長さを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記媒体への転写を目的とする画像の一部分に対応する前記像保持手段上の位置に、前記媒体への転写を目的としない画像を形成する前記形成手段、
を備えたことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記媒体への転写を目的とする画像の全てに対応する前記像保持手段上の位置に、前記媒体への転写を目的としない画像を形成する前記形成手段、
を備えたことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記媒体への転写を目的とする画像とは異なる前記像保持手段上の位置にも前記媒体への転写を目的としない画像を形成する前記形成手段、
を備えたことを特徴とする請求項5または6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記媒体への転写を目的とする画像を形成可能な前記像保持手段上の領域の全域を覆う前記媒体への転写を目的としない画像を形成する前記形成手段、
を備えたことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記像保持手段の回転方向における前記媒体への転写を目的としない画像の長さは、前記像保持手段の回転方向における前記媒体への転写を目的としない画像どうしの間の隙間の長さより長い
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、FAX等の画像形成装置において、媒体への転写を目的としない画像を形成する技術に関して、以下の特許文献1-3に記載の技術が知られている。
【0003】
特許文献1としての特許第6340927号公報には、現像装置(14)の内部で消費されずに撹拌されて劣化したトナーを強制的に消費させるために、トナー像間の非画像領域に帯状トナー像を形成する技術が記載されている。特許文献1記載の技術では、記録媒体幅が最大幅寸法よりも小さい場合に、帯状トナー像の画像濃度を増加させたり、画像の長さを長くして、劣化したトナーを多く消費させている。
【0004】
特許文献2としての特開2006-251138号公報には、画像形成領域以外にトナーバンドを形成する際に、クリーニング装置(18)へのトナーの供給量が一定になるように、印刷画像が濃いとトナーバンドを薄くし、印刷画像が薄いとトナーバンドを濃くする技術が記載されている。
【0005】
特許文献3としての特開2006-221106号公報には、単色画像形成モードにおいて、画像形成を行わない感光体ドラムでは、クリーニングブレードの潤滑性を維持するために、トナーバンドが形成されると共に、最上流の感光体ドラムのトナーバンドのトナー量を最も多くする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6340927号公報(特許請求の範囲、「0038」-「0053」、図6
【文献】特開2006-251138号公報(「0043」-「0050」、図4
【文献】特開2006-221106号公報(特許請求の範囲、「0023」-「0032」、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、媒体への転写を目的とする画像を形成する前に媒体への転写を目的としない画像を形成しない場合と比較して、媒体への転写不良の発生を抑制することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明の画像形成装置は、
離型成分を有するトナーで形成された画像であって、媒体への転写を目的とする画像と、媒体への転写を目的としない画像とを保持する像保持手段と、
前記媒体への転写を目的とする画像を媒体に転写する転写手段と、
前記媒体への転写を目的とする画像を前記像保持手段上に形成する印刷指示を受けた場合に、前記媒体への転写を目的とする画像が形成される前記像保持手段上の位置に、前記
媒体への転写を目的とする画像の少なくとも1つの前に、前記媒体への転写を目的としない画像を形成する形成手段と、
を備え、
前記形成手段は、
前記像保持手段の回転方向において、前記媒体への転写を目的としない画像どうしの間に隙間をあけ、且つ、
前記像保持手段の回転方向に直交する方向において、前記像保持手段の端と前記媒体への転写を目的としない画像の間に隙間をあけ、
前記像保持手段の回転方向に直交する方向において、前記媒体への転写を目的とする画像が形成される範囲を覆う大きさの前記媒体への転写を目的としない画像を形成し、
前記像保持手段が複数周回転する期間、前記媒体への転写を目的としない画像を形成し、
前記像保持手段の次回以降の周回において、前記隙間に重複する領域において前回の周回における前記媒体への転写を目的としない画像の位置に対して所定距離ずらした位置に、前記媒体への転写を目的としない画像を形成する
ことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
第1の媒体用の第1の形成モードと、前記第1の媒体よりも転写性感度が低い第2の媒体用の第2の形成モードとを有し、前記第1の形成モードの場合に、前記媒体への転写を目的とする画像を前記像保持手段上に形成する前に、前記媒体への転写を目的とする画像が形成される前記像保持手段上の位置に、前記媒体への転写を目的としない画像を形成する前記形成手段、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の画像形成装置において、
利用者が入力可能な入力手段であって、前記媒体への転写を目的としない画像を前記像保持手段上に形成する動作の実行を、利用者が指示する入力が可能な前記入力手段、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記媒体への転写を目的としない画像は、前記像保持手段の回転方向に沿って予め定められた長さを有する
ことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないしのいずれかに記載の画像形成装置において、
前記媒体への転写を目的とする画像の一部分に対応する前記像保持手段上の位置に、前記媒体への転写を目的としない画像を形成する前記形成手段、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないしのいずれかに記載の画像形成装置において、
前記媒体への転写を目的とする画像の全てに対応する前記像保持手段上の位置に、前記媒体への転写を目的としない画像を形成する前記形成手段、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の画像形成装置において、
前記媒体への転写を目的とする画像とは異なる前記像保持手段上の位置にも前記媒体への転写を目的としない画像を形成する前記形成手段、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないしのいずれかに記載の画像形成装置において、
前記媒体への転写を目的とする画像を形成可能な前記像保持手段上の領域の全域を覆う前記媒体への転写を目的としない画像を形成する前記形成手段、
を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記像保持手段の回転方向における前記媒体への転写を目的としない画像の長さは、前記像保持手段の回転方向における前記媒体への転写を目的としない画像どうしの間の隙間の長さより長い
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、媒体への転写を目的とする画像を形成する前に媒体への転写を目的としない画像を形成しない場合と比較して、媒体への転写不良の発生を抑制することができる。また、請求項1に記載の発明によれば、像保持手段が1周回転する期間だけ媒体への転写を目的としない画像を形成する場合に比べて、転写不良を安定して抑制できる。さらに、請求項1に記載の発明によれば、隙間に媒体への転写を目的としない画像を形成しない場合に比べて、像保持手段の全域において転写不良を抑制できる。
請求項2に記載の発明によれば、第2のモードでも媒体への転写を目的としない画像を形成する場合に比べて、現像剤の消費量を抑制できる。
請求項3に記載の発明によれば、入力手段への入力で、媒体への転写を目的としない画像を任意の時期に形成することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、回転方向に沿った長さ分の領域に安定して現像剤を付与できる。
請求項5に記載の発明によれば、媒体への転写を目的としない画像を形成する必要がない部分にまで媒体への転写を目的としない画像を形成する場合に比べて、現像剤の無駄な消費を抑制できる。
請求項6に記載の発明によれば、媒体への転写を目的とする画像に対応して媒体への転写を目的としない画像を形成する場合に比べて、現像剤の無駄な消費を抑制できる。
請求項7に記載の発明によれば、媒体への転写を目的としない画像を形成する必要がある位置に、媒体への転写を目的としない画像を形成しない場合に比べて、転写不良を抑制できる。
請求項8に記載の発明によれば、媒体への転写を目的とする画像の全域を覆う媒体への転写を目的としない画像を形成する場合に比べて、転写不良を安定して抑制できる。
請求項9に記載の発明によれば、媒体への転写を目的としない画像の長さが隙間よりも短い場合に比べて、十分な長さの媒体への転写を目的としない画像を形成でき、前記媒体への転写を目的とする画像での転写不良の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は実施例1の画像形成装置の全体説明図である。
図2図2は実施例1の可視像形成装置の拡大説明図である。
図3図3は実施例1の画像形成装置の制御部が備えている各機能をブロック図で示した図である。
図4図4は実施例1のトナー供給画像の一例の説明図であり、図4Aは画像形成領域と非形成領域の説明図、図4Bは中間転写ベルトの奇数周目のトナー供給画像の説明図、図4Cは中間転写ベルトの偶数周目のトナー供給画像の説明図である。
図5図5は実施例1のトナー供給画像形成処理のフローチャートの説明図である。
図6図6は転写領域において作用する電圧の説明図であり、図6Aは低感度紙の一例の説明図、図6Bはエンボス紙の一例の説明図、図6Cは和紙の一例の説明図である。
図7図7は中間転写ベルトにおける現像剤の付着力の実験結果のグラフであり、縦軸に付着力を取ったグラフである。
図8図8は媒体への転写を目的とする画像の一例と、トナー供給画像との関係の説明図である。
図9図9はトナー供給画像の変更例の説明図であり、図9Aはトナー供給画像が転写を目的とする画像の全てに対応する場合の説明図、図9Bはトナー供給画像が転写を目的とする画像とは異なる位置にも形成されている場合の説明図、図9Cはトナー供給画像が転写を目的とする画像の一部分に対応する場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例(以下、実施例と記載する)を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,-X,Y,-Y,Z,-Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0021】
図1は実施例1の画像形成装置の全体説明図である。
図2は実施例1の可視像形成装置の拡大説明図である。
図1において、画像形成装置の一例としての複写機Uは、操作部の一例としてのユーザインタフェースUI、画像読取装置の一例としてのスキャナ部U1、媒体供給装置の一例としてのフィーダ部U2、画像記録装置の一例としての作像部U3、および媒体処理装置U4を有している。
【0022】
(ユーザインタフェースUIの説明)
ユーザインタフェースUIは、複写開始や複写枚数の設定などに用いられる入力ボタンUIaを有する。また、前記ユーザインタフェースUIは、前記入力ボタンUIaにより入力された内容や、複写機Uの状態が表示される表示部UIbを有する。
【0023】
(フィーダ部U2の説明)
図1において、フィーダ部U2は、媒体収容容器の一例としての複数の給紙トレイTR1,TR2,TR3,TR4を有している。また、前記フィーダ部U2は、前記各給紙トレイTR1~TR4に収容された画像記録用の媒体の一例としての記録用紙Sを取り出して、作像部U3に搬送する媒体供給路SH1等を有している。
【0024】
(作像部U3及び媒体処理装置U4の説明)
図1において、作像部U3は、前記フィーダ部U2から搬送された記録用紙Sにスキャナ部U1により読み取った原稿画像に基づいて画像記録を行う画像記録部U3aを有する。
図1図2において、作像部U3の潜像形成装置の駆動回路Dは、スキャナ部U1から入力された画像情報に基づいて、それに応じた駆動信号を予め設定された時期に、各色Y~Kの潜像形成装置ROSy,ROSm,ROSc,ROSkに出力する。各潜像形成装置ROSy~ROSkの下方には、像保持体の一例としての感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pkが配置されている。
【0025】
回転する感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pk表面は、それぞれ、帯電器の一例としての帯電ロールCRy,CRm,CRc,CRkにより一様に帯電される。表面が帯電された感光体ドラムPy~Pkの表面には、潜像形成装置ROSy,ROSm,ROSc,ROSkの出力する潜像書込光の一例としてのレーザビームLy,Lm,Lc,Lkにより静電潜像が形成される。感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pkの表面の静電潜像は、現像装置Gy,Gm,Gc,Gkによりイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の可視像の一例としてのトナー像に現像される。
なお、現像装置Gy~Gkにおいて、現像により消費された現像剤は、現像剤の収容容器の一例としてのトナーカートリッジKy,Km,Kc,Kkから補給される。トナーカートリッジKy,Km,Kc,Kkは、現像剤補給装置U3bに着脱可能に装着される。
【0026】
感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pk表面上のトナー像は、一次転写器の一例としての1次転写ロールT1y,T1m,T1c,T1kにより、中間転写体の一例としての中間転写ベルトB上に1次転写領域Q3y,Q3m,Q3c,Q3kで順次重ねて転写され、中間転写ベルトB上に多色可視像の一例としてのカラートナー像が形成される。中間転写ベルトB上に形成されたカラートナー像は、2次転写領域Q4に搬送される。
なお、K色の画像情報のみの場合はK色の感光体ドラムPkおよび現像装置Gkのみが使用され、K色のトナー像のみが形成される。
1次転写後の感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pkは、像保持体の清掃器の一例としてのドラムクリーナCLy,CLm,CLc,CLkにより、表面に付着した残留現像剤や
紙粉等の残留物が除去される。
【0027】
実施例1では、感光体ドラムPk、帯電ロールCRk、ドラムクリーナCLkが、像保持体ユニットの一例としてのK色の感光体ユニットUKとして一体化されている。そして、他の色Y,M,Cについても同様に、感光体ドラムPy,Pm,Pc、帯電ロールCRy,CRm,CRc、ドラムクリーナCLy,CLm,CLcにより、感光体ユニットUY,UM,UCが構成されている。
また、K色の感光体ユニットUKと、現像剤保持体の一例としての現像ロールR0kを有する現像装置Gkとにより、K色の可視像形成装置UK+Gkが構成される。同様に、Y,M,C色の感光体ユニットUY,UM,UCと、現像ロールR0y,R0m,R0cを有する現像装置Gy,Gm,Gcとにより、それぞれ、Y,M,C色の可視像形成装置UY+Gy,UM+Gm,UC+Gcが構成される。
【0028】
感光体ドラムPy~Pkの下方には、中間転写装置の一例としてのベルトモジュールBMが配置されている。ベルトモジュールBMは、像保持手段の一例としての中間転写ベルトBと、中間転写体の駆動部材の一例としての駆動ロールRd、張力付与部材の一例としてのテンションロールRt、蛇行防止部材の一例としてのウォーキングロールRw、従動部材の一例としての複数のアイドラロールRfおよび対向部材の一例としてのバックアップロールT2aと、前記1次転写ロールT1y,T1m,T1c,T1kとを有する。中間転写ベルトBは矢印Ya方向に回転移動可能に支持されている。
【0029】
前記バックアップロールT2aの下方には、2次転写ユニットUtが配置されている。前記2次転写ユニットUtは、2次転写部材の一例としての2次転写ロールT2bを有する。前記2次転写ロールT2bが中間転写ベルトBと接触する領域により2次転写領域Q4が形成されている。また、2次転写ロールT2bには、中間転写ベルトBを挟んで、対向部材の一例としてのバックアップロールT2aが対向している。バックアップロールT2aには、給電部材の一例としてのコンタクトロールT2cが接触している。コンタクトロールT2cには、トナーの帯電極性と同極性の2次転写電圧が印加される。
前記バックアップロールT2a、2次転写ロールT2b及びコンタクトロールT2cにより、転写手段の一例としての2次転写器T2が構成されている。
【0030】
前記ベルトモジュールBMの下方には、媒体の搬送路SH2が配置されている。前記フィーダ部U2の媒体供給路SH1から給紙された記録用紙Sは、媒体の搬送部材の一例としての搬送ロールRaにより、搬送時期の調節部材の一例としてのレジロールRrに搬送される。レジロールRrは、中間転写ベルトB上に形成されたトナー像が2次転写領域Q4に搬送される時期に合わせて、記録用紙Sを下流側に搬送する。レジロールRrにより送り出された記録用紙Sは、レジ側の用紙ガイドSGr、転写前の用紙ガイドSG1で案内されて、2次転写領域Q4に搬送される。
中間転写ベルトB上のトナー像は、2次転写領域Q4を通過する際に、2次転写器T2により記録用紙Sに転写される。なお、カラートナー像の場合は中間転写ベルトB表面に重ねて1次転写されたトナー像が一括して記録用紙Sに2次転写される。
前記1次転写ロールT1y~T1k、前記2次転写器T2、中間転写ベルトBにより、実施例1の転写装置T1y~T1k+T2+Bが構成されている。
【0031】
2次転写後の中間転写ベルトBは、2次転写領域Q4の下流側に配置された中間転写体清掃器の一例としてのベルトクリーナCLBにより清掃される。除去手段の一例としてのベルトクリーナCLBは、2次転写領域Q4において、転写されずに残った現像剤や紙粉などの残留物を、中間転写ベルトBから除去する。
【0032】
トナー像が転写された記録用紙Sは、転写後の用紙ガイドSG2で案内されて、搬送部
材の一例としての媒体搬送ベルトBHに送られる。媒体搬送ベルトBHは、記録用紙Sを定着装置Fに搬送する。
定着装置Fは、加熱部材の一例としての加熱ロールFhと加圧部材の一例としての加圧ロールFpとを有する。記録用紙Sは、加熱ロールFhと加圧ロールFpとが接触する領域である定着領域Q5に搬送される。記録用紙Sのトナー像は、定着領域Q5を通過する際に、定着装置Fにより加熱および加圧されて、定着される。
前記可視像形成装置UY+Gy~UK+Gk、転写装置T1y~T1k+T2+B、定着装置Fにより、実施例1の画像形成手段の一例としての画像記録部U3aが構成されている。
【0033】
前記定着装置Fの下流側には、切替部材の一例としての切替ゲートGT1が設けられている。前記切替ゲートGT1は、定着領域Q5を通過した記録用紙Sを、媒体処理装置U4側の排出路SH3または反転路SH4のいずれかに、選択的に切り替える。排出路SH3に搬送された記録用紙Sは、媒体処理装置U4の用紙搬送路SH5に搬送される。用紙搬送路SH5には、反りの補正部材の一例としてのカール補正部材U4aが配置されている。カール補正部材U4aは、搬入された記録用紙Sの反り、いわゆるカールを補正する。カールが補正された記録用紙Sは、媒体の排出部材の一例としての排出ロールRhにより、媒体の排出部の一例としての排出トレイTH1に、用紙の画像定着面が上向きで排出される。
【0034】
前記切替ゲートGT1により作像部U3の反転路SH4側に搬送された記録用紙Sは、切替部材の一例としての第2のゲートGT2を通って作像部U3の反転路SH4に搬送される。
このとき、記録用紙Sの画像定着面を下向きに排出する場合には、第2のゲートGT2を記録用紙Sの搬送方向後端が通過した後に、記録用紙Sの搬送方向を逆転させる。ここで、実施例1の第2のゲートGT2は、薄膜状の弾性部材により構成されている。したがって、第2のゲートGT2は、反転路SH4に搬送されてきた記録用紙Sをそのまま一旦通過させ、通過した記録用紙Sが反転、いわゆるスイッチバックされてくると、搬送路SH3,SH5側に案内する。そして、スイッチバックされた記録用紙Sは、カール補正部材U4aを通過して、画像定着面が下を向いた状態で排出トレイTH1に排出される。
【0035】
前記作像部U3の反転路SH4には循環路SH6が接続されており、その接続部には、切替部材の一例としての第3のゲートGT3が配置されている。また、反転路SH4の下流端は、媒体処理装置U4の反転路SH7に接続されている。
前記切替ゲートGT1を通って反転路SH4に搬送された記録用紙Sは、第3のゲートGT3により前記媒体処理装置U4の反転路SH7側に搬送される。実施例1の第3のゲートGT3は、第2のゲートGT2と同様に、薄膜状の弾性部材により構成されている。したがって、第3のゲートGT3は、反転路SH4を搬送されてきた記録用紙Sを、一旦通過させ、通過した記録用紙Sがスイッチバックされてくると、循環路SH6側に案内する。
【0036】
前記循環路SH6に搬送された記録用紙Sは、媒体の搬送路SH2を通って2次転写領域Q4に再送され、二面目の印刷が行われる。
前記符号SH1~SH7で示された要素により用紙搬送路SHが構成されている。また、前記符号SH,Ra,Rr,Rh,SGr,SG1,SG2,BH,GT1~GT3で示された要素により、実施例1の用紙搬送装置SUが構成されている。
【0037】
(実施例1の制御部の説明)
図3は実施例1の画像形成装置の制御部が備えている各機能をブロック図で示した図である。
図3において、複写機Uの制御手段の一例としての制御部(コントローラ)Cは、外部との信号の入出力等を行う入出力インターフェースI/Oを有する。また、制御部Cは、必要な処理を行うためのプログラムおよび情報等が記憶されたROM:リードオンリーメモリを有する。また、制御部Cは、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM:ランダムアクセスメモリを有する。また、制御部Cは、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU:中央演算処理装置を有する。したがって、実施例1の制御部Cは、小型の情報処理装置、いわゆるマイクロコンピュータにより構成されている。よって、制御部Cは、ROM等に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0038】
(制御部Cに接続された信号出力要素)
制御部Cは、ユーザインタフェースUI等の信号出力要素からの出力信号が入力されている。
ユーザインタフェースUIは、入力手段の一例として、コピースタートキーやテンキー、矢印等の入力を行う入力ボタンUIaや、表示部UIb、回復モードを開始する入力が可能な回復モード開始ボタンUIc等を有する。
回復モード開始ボタンUIcは、記録用紙Sへの転写を目的としない画像であるトナー供給画像を像保持手段の一例としての中間転写ベルトB上に形成する動作である回復モードの実行を、利用者が指示する入力が可能である。
なお、各種入力ボタンUIaや回復モード開始ボタンUIcは、ハードウェアとしてのボタンとして設ける場合に限定されず、タッチパネル等の入力が可能な表示部UIbに画像として表示されるボタンの形態とすることも可能である。
【0039】
(制御部Cに接続された被制御要素)
制御部Cは、主駆動源の駆動回路D1や、電源回路E、その他の図示しない制御要素に接続されている。制御部Cは、各回路D1,E等へ、それらの制御信号を出力している。D1:主駆動源の駆動回路
主駆動源の駆動回路D1は、主駆動源の一例としてのメインモータM1を介して、感光体ドラムPy~Pkや中間転写ベルトB等を回転駆動する。
【0040】
E:電源回路
電源回路Eは、現像用の電源回路Ea、帯電用の電源回路Eb、転写用の電源回路Ec、定着用の電源回路Ed等を有している。
Ea:現像用の電源回路
現像用の電源回路Eaは、現像装置Gy~Gkの現像ロールに現像電圧を印加する。
Eb:帯電用の電源回路
帯電用の電源回路Ebは、帯電ロールCRy~CRkそれぞれに感光体ドラムPy~Pk表面を帯電させるための帯電電圧を印加する。
【0041】
Ec:転写用の電源回路
転写用の電源回路Ecは、1次転写ロールT1y~T1kやバックアップロールT2aに転写電圧を印加する。
Ed:定着用の電源回路
定着用の電源回路Edは、定着装置Fの加熱ロールFhのヒータに電力を供給する。
【0042】
(制御部Cの機能)
制御部Cは、前記信号出力要素からの入力信号に応じた処理を実行して、前記各制御要素に制御信号を出力する機能を有している。すなわち、制御部Cは次の機能を有している。
C1:画像形成の制御手段
画像形成の制御手段C1は、ユーザインタフェースUIへの入力や外部のパーソナルコンピュータ等からの画像情報の入力に応じて、スキャナ部U1や作像部U3の各部材の駆動や各電圧の印加時期等を制御して、画像形成動作であるジョブを実行する。
【0043】
C2:駆動源の制御手段
駆動源の制御手段C2は、主駆動源の駆動回路D1を介して、メインモータM1の駆動を制御し、感光体ドラムPy~Pk等の駆動を制御する。
C3:電源回路の制御手段
電源回路の制御手段C3は、各電源回路Ea~Edを制御して、各部材へ印加される電圧や、各部材へ供給される電力を制御する。
【0044】
C4:媒体種類の記憶手段
媒体種類の記憶手段C4は、使用される媒体の一例としての記録用紙Sの種類を記憶する。実施例1の媒体種類の記憶手段C4は、フィーダ部U2の各給紙トレイTR1~TR4に収容された記録用紙Sの種類を、給紙トレイTR1~TR4ごとに記憶する。なお、実施例1では、各給紙トレイTR1~TR4に収容された記録用紙Sの種類は、ユーザインタフェースUIからの入力で設定、登録されたものが記憶される。記録用紙Sの種類は、「薄紙」、「普通紙」、「厚紙」、「エンボス紙」、「和紙」、「コート紙」等から選択して設定することも可能であるし、例えば、「用紙坪量」を直接入力して記録用紙Sの種類を設定することも可能である。
【0045】
C5:媒体種類の判別手段
媒体種類の判別手段C5は、印刷に使用される記録用紙Sの種類を判別する。実施例1の媒体種類の判別手段C5は、媒体種類の記憶手段C4に記憶されている各給紙トレイTR1~TR4の記録用紙Sの種類の情報と、印刷に使用される給紙トレイTR1~TR4とに基づいて、記録用紙Sの種類を判別する。さらに、実施例1の媒体種類の判別手段C5は、転写性感度の高い媒体の一例としてのエンボス紙または和紙であるか、転写性感度の低い媒体の一例としての薄紙、普通紙、厚紙、コート紙であるかの判別を行う。
【0046】
なお、本願明細書および特許請求の範囲において、「転写性感度」とは、画像の記録用紙Sへの転写されにくさ、裏を返せば転写されやすさ、を表すものであり、温度、湿度等の環境や印加電圧の変動、搬送速度等が少し変化した場合でも転写不良が発生しやすいものを「転写性感度が高い」とし、逆に転写不良が発生しにくいものを「転写性感度が低い」として説明を行う。したがって、表面が平滑でパルプ等の繊維の密度がほぼ均一な薄紙や普通紙、厚紙、コート紙は、転写性感度が低い。一方で、表面に凹凸が形成されているエンボス紙や、パルプ等の密度にムラがあって内部に空隙を多く含む和紙(低密度の媒体)では、転写性感度が高くなる。図6で後述するが、エンボス紙や和紙では、転写電圧が作用する際に、凹部や空隙の部分(繊維の無い部分)と、繊維のある部分とで電気抵抗値が異なったり、凹部や空隙で放電が発生したりすると、転写電圧が変動して転写不良が発生しやすいためである。
なお、以下の説明において、エンボス紙や和紙を包括して第1の媒体の一例としての「高感度紙」と表記し、普通紙等を第2の媒体の一例としての「低感度紙」と表記する場合がある。
【0047】
なお、実施例1では、媒体種類の記憶手段C4に記憶された情報に基づいて媒体の種類を判別する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、フィーダ部U2の給紙トレイTR1~TR4や、給紙トレイTR1~TR4からレジロールRrまでの搬送路SH1,SH2上に、媒体の厚さや光透過率、光反射率、偏光特性、表面粗さ等で媒体の種類を検知する検知部材の一例としてのセンサを設置して、印刷に使用される記録用紙Sの種類を検知、判別する構成とすることも可能である。したがって、例えば、センサで検知され
た記録用紙Sの表面粗さが、予め定められた値(閾値)よりも大きい場合、すなわち、凹凸が大きな場合は、高感度紙と判別することが可能である。また、センサで検知された記録用紙Sの密度(=重量/(厚さ×面積))が予め定められた値(閾値)よりも小さい場合、すなわち、記録用紙Sの内部に空隙が多い場合は、高感度紙と判別することが可能である。
【0048】
C6:印刷枚数の計数手段
転写回数の計数手段の一例としての印刷枚数の計数手段C6は、転写回数の一例としての印刷枚数を計数する。すなわち、印刷枚数の計数手段C6は、転写を目的とする画像の一例としての印刷画像を何回記録用紙Sに転写したのかを計数する。なお、実施例1では、後述する転写を目的としない画像の一例としてのトナー供給画像を形成すると、印刷枚数は初期化、いわゆるリセットされる。
【0049】
C7:トナー供給の開始判別手段
トナー供給の開始判別手段C7は、トナー供給画像を形成する時期になったか否かを判別する。実施例1のトナー供給の開始判別手段C7は、予め定められた中間転写ベルトBの表面に現像剤の一例としてのトナーを供給する条件が満足された場合に、トナー供給画像を形成する時期になったと判別する。一例として、トナー供給の開始判別手段C7は、エンボス紙等の高感度紙が使用される場合に、ジョブ(一連の印刷動作)の開始前に、トナー供給画像の形成時期になったと判別する。すなわち、高感度紙に印刷画像(転写を目的とする画像)を形成する印刷指示を複写機Uが受けた場合に、トナー供給画像を形成する時期になったと判別する。また、ジョブの実行に伴って前回のトナー供給から、印刷枚数の計数手段C6が計数した枚数が予め定められた枚数に達した場合に、トナー供給画像の形成時期になったと判別する。予め定められた枚数は、一例として10枚とすることが可能であるが、設計や仕様、使用する紙種の感度等に応じて任意に変更可能であり、1枚ずつとしたり、100枚毎とする等、任意の変更が可能である。また、実施例1のトナー供給の開始判別手段C7は、回復モード開始ボタンUIcの入力がされた場合にも、トナー供給画像の形成時期になったと判別する。したがって、実施例1では、中間転写ベルトBの表面にトナーを供給する条件として、高感度紙が使用されるジョブ開始前と、高感度紙が使用されるジョブ中に印刷枚数が予め定められた枚数に達した場合と、回復モード開始ボタンUIcの入力がされた場合、の3つの場合が一例として設定されている。
【0050】
図4は実施例1のトナー供給画像の一例の説明図であり、図4Aは画像形成領域と非形成領域の説明図、図4Bは中間転写ベルトの奇数周目のトナー供給画像の説明図、図4Cは中間転写ベルトの偶数周目のトナー供給画像の説明図である。
C8:供給画像の形成手段(形成手段の一例)
供給画像の形成手段C8は、転写を目的としない画像の一例としてのトナー供給画像1を形成する。供給画像の形成手段C8は、トナー供給の開始判別手段C7で、トナー供給画像1を形成する時期になったと判別された場合に、トナー供給画像1を形成して、中間転写ベルトBに転写させ、記録用紙Sにはトナー供給画像1を転写させずに、ベルトクリーナCLBでトナー供給画像1を除去する。
図4において、実施例1のトナー供給画像1の大きさは、中間転写ベルトB上の画像形成領域の一例としてのイメージ領域2と、イメージ領域2の間の非形成領域の一例としてのインターイメージ領域3に対して、図4Bに示すように、イメージ領域2と同一の大きさの画像で構成されている。すなわち、実施例1のトナー供給画像1は、中間転写ベルトBの回転方向に沿って予め定められた長さの一例としてのイメージ領域2の長さL1と同一の長さを有する。そして、トナー供給画像1は、インターイメージ領域3の長さL2を同じ間隔をあけて形成される。
【0051】
また、実施例1では、中間転写ベルトBが、一例として5周回転する期間、トナー供給
画像1が形成されるように設定されている。なお、中間転写ベルトBの何周分トナー供給画像1を形成するのかは、5周に限定されず、設計や仕様等に応じて変更可能である。そして、実施例1では、図4B図4Cに示すように、中間転写ベルトBの奇数周目では、イメージ領域2に対応する位置にトナー供給画像1が形成され、偶数周目では、奇数周目でのトナー供給画像1どうしの隙間に相当する位置、すなわち、インターイメージ領域3をカバーする(重複する)位置にトナー供給画像1が形成される。なお、奇数周目でイメージ領域2をカバーし、偶数周目でインターイメージ領域3をカバーする構成を例示したが、これに限定されない。例えば、2周目は、1周目の位置に対して、距離(L1+L2)/3だけずらし、3周目は、2周目に対して距離(L1+L2)/3だけずらすといったように、2周で1セットではなく、3周で1セットとすることも可能である。同様にして、4周で1セット、5周で1セット等の変更も可能である。
【0052】
さらに、実施例1のトナー供給画像1の濃度は、一例として、Y,M,C,Kがそれぞれ50%ずつの合計200%の濃度の画像が使用されている。なお、トナー供給画像1の濃度は、例示した濃度に限定されず、任意の濃度とすることが可能である。また、使用するトナーの色も4色に限定されず、3色以下とすることも可能である。また、使用するトナーの色は、4色の中で劣化が進んだ色、すなわち、累積の印刷枚数に対して予め定められた低密度の画像の比率が、予め定められた比率よりも高い色とすることも可能である。この場合、劣化が進んだトナーでトナー供給画像1を形成しつつ、劣化したトナーを強制的に消費して新たなトナーを補給して入れ替えることが可能である。
【0053】
(実施例1の流れ図の説明)
次に、実施例1の複写機Uにおける制御の流れを流れ図、いわゆるフローチャートを使用して説明する。
(トナー供給画像形成処理のフローチャートの説明)
図5は実施例1のトナー供給画像形成処理のフローチャートの説明図である。
図5のフローチャートの各ステップSTの処理は、前記複写機Uの制御部Cに記憶されたプログラムに従って行われる。また、この処理は複写機Uの他の各種処理と並行して実行される。したがって、ジョブ開始に伴って各記録用紙Sに画像が形成される処理は、図5のフローチャートとは並行して実行される。
図5に示すフローチャートは複写機Uの電源投入により開始される。
【0054】
図5のST1において、ジョブが開始されたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST2に進み、ノー(N)の場合はST11に進む。
ST2において、開始されるジョブの記録用紙Sは高感度紙であるか否かを判別する。ノー(N)の場合はST3に進み、イエス(Y)の場合はST4に進む。
ST3において、第2の形成モードの一例としての低感度紙モード、すなわち、通常の画像形成動作を実行して、ST1に戻る。
ST4において、次の処理(1)、(2)を実行して、ST5に進む。
(1)ジョブを一時停止する。すなわち、ジョブを開始しない。
(2)累積印刷枚数をリセット、すなわち、初期化する。
【0055】
ST5において、トナー供給画像1の形成を開始する。そして、ST6に進む。
ST6において、所定周回分(実施例1では5周分)のトナー供給画像1が形成されたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST7に進み、ノー(N)の場合はST6を繰り返す。
ST7において、トナー供給画像1の形成を終了する。そして、ST8に進む。
ST8において、次の処理(1)、(2)を実行して、ST9に進む。
(1)ジョブを開始、または、再開する。
(2)累積印刷枚数の計数を開始する。
【0056】
ST9において、トナー供給画像の形成時期であるか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST4に戻り、ノー(N)の場合はST10に進む。
ST10において、ジョブが終了したか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST1に戻り、ノー(N)の場合はST9に戻る。
ST11において、回復モード開始ボタンUIcの入力がされたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST12に進み、ノー(N)の場合はST1に戻る。
ST12において、トナー供給画像1の形成を開始する。そして、ST13に進む。
ST13において、所定周回分(実施例1では5周分)のトナー供給画像1が形成されたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST14に進み、ノー(N)の場合はST13を繰り返す。
ST14において、トナー供給画像1の形成を終了する。そして、ST1に戻る。
【0057】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1の複写機Uでは、低感度紙が使用される場合には、低感度紙モードで画像が形成され、高感度紙が使用される場合には、第1の形成モードの一例として、ST4~ST10からなる高感度紙モードで画像が形成される。
【0058】
図6は転写領域において作用する電圧の説明図であり、図6Aは低感度紙の一例の説明図、図6Bはエンボス紙の一例の説明図、図6Cは和紙の一例の説明図である。
図6において、普通紙等の低感度紙(第2の媒体)S1では、表面が平滑であり、内部に空隙もほとんどないため、2次転写領域Q4において、ほぼ均一に2次転写電圧V1が作用する。
一方、図6Bに示すように、高感度紙(第1の媒体)の一例としてのエンボス紙S2では、表面に凹凸があり、凹部S2aでは、中間転写ベルトBとの間に隙間12が形成される。したがって、隙間12のない凸部S2bと、隙間12がある凹部S2aとでは、厚さ方向の電気抵抗値が変化する。よって、隙間12で放電が発生しやすくなり、凹部S2aでは作用する2次転写電圧V1aが変化する恐れがある。したがって、凹部S2aにおいて、低感度紙S1に比べて転写不良がさらに発生しやすくなる。
図6Cにおいて、高感度紙の一例としての和紙S3では、内部に空隙(隙間)13が発生しやすく、空隙13のある部分では、空隙13が無い部分に比べて、エンボス紙S2の場合と同様に転写不良が発生しやすくなる。すなわち、和紙に限らず、内部に空隙が存在する低密度の記録用紙Sでは、同様に転写不良が発生しやすい。
【0059】
したがって、高感度紙を使用する場合には、トナーが転写されにくい問題がある。転写は、中間転写ベルトBに静電気力や粘着力等で保持されたトナーが記録用紙Sに移動する現象であるが、トナーの中間転写ベルトBに対する付着力が弱まると、転写されやすくなる。
本発明者は、研究の結果、中間転写ベルトBの画像が形成される領域に、事前にトナー供給画像1で現像剤を付与することで、転写性が向上することを見出した。詳細な原理は不明であるが、現像剤に含まれる離型成分の一例としてのシリコーンオイルが中間転写ベルトBに供給されているものと考えられる。中間転写ベルトBに付着したシリコーンオイルの表面に記録用紙Sに転写される画像(印刷画像)が形成されると、印刷画像を構成する現像剤と中間転写ベルトBとの付着力がシリコーンオイルで弱まり、高感度紙でも転写性が向上するものと考えられる。
したがって、実施例1では、記録用紙Sとして高感度紙が使用される印刷指示を受けた場合に、記録用紙Sに転写される画像(媒体への転写を目的とする画像)が形成される前に、トナー供給画像1が形成されている。よって、記録用紙Sに転写される印刷画像と中間転写ベルトBとの付着力が弱まる。したがって、事前にトナー供給画像1が形成されない従来の構成に比べて、転写不良が抑制される。
【0060】
(実験例)
次に、本発明の効果を確認する実験を行った。
(実験例1)
実験例1では、中間転写ベルトBにおいて、画像が形成された画像部と、画像が形成されていない非画像部において、現像剤の付着力を測定した。実験では、トナー供給画像1を形成しない状態(回復モード前の状態)で付着力を測定すると共に、画像部に対応する領域と非画像部に対応する領域の両方にトナー供給画像1を形成した後(ST12、ST13の回復モード後)の状態で付着力を測定した。
付着力の測定は、中間転写ベルトBに現像剤が付着している状態で中間転写ベルトBを停止させ、現像剤に空気を吹き付けて、目視で現像剤が吹き飛ぶ際の吹き付ける空気の圧力(風圧)を付着力指標(Pa)とした。
実験結果を図7に示す
【0061】
図7は中間転写ベルトにおける現像剤の付着力の実験結果のグラフであり、縦軸に付着力を取ったグラフである。
図7において、回復モードの実行前では、非画像部の付着力が高い状態であったが、トナー供給画像1を供給した回復モード後では、付着力が低下している。なお、画像部でも、回復モード前に比べて回復モード後の方が付着力が低下している。また、回復モード後では、画像部と非画像部との付着力の段差も解消している。
【0062】
図8は媒体への転写を目的とする画像の一例と、トナー供給画像との関係の説明図である
図8において、1ページ分の画像の領域21の中で、文字や図、写真等の現像剤が転写される領域22と、現像剤が転写されない領域23がある。先行ジョブにおいて現像剤が転写されない領域23aでは、中間転写ベルトBにおける付着力は、図7における回復モード前の非画像部の状態のように付着力が高い状態となる。したがって、図8において、先行ジョブで現像剤が転写されない領域23aが、後続ジョブで現像剤が転写される領域22bになると、現像剤の付着力が高くなり、転写不良が発生する恐れがある。また、後続ジョブで現像剤が転写される領域22b′のように、領域22b′が、先行ジョブでの現像剤が転写される領域22aと重なる領域22b-1′と、先行ジョブでの現像剤が転写されない領域23aと重なる領域22b-2′とを含む場合、回復モードが実行されないと、付着力の段差で、部分的な転写不良が発生して、画質の欠陥が目立つ恐れもある。
これに対して、本願では、後続ジョブで高感度紙が使用される場合は、後続ジョブの前にトナー供給画像1が形成される。したがって、図7の回復モード後のように、現像剤の付着力が低下すると共に、段差も解消した状態で、後続ジョブが実行される。したがって、高感度紙が使用される後続ジョブで転写不良が抑制される。
【0063】
また、実施例1では、高感度紙が使用される場合に、トナー供給画像1が形成されており、トナー供給画像1の形成の必要性が低い低感度紙でもトナー供給画像1を形成する場合に比べて、全体として現像剤の消費量を抑制することが可能である。
さらに、実施例1では、高感度紙が使用される場合だけでなく、所定枚数印刷する度にトナー供給画像1が形成される。したがって、画像形成に伴って現像剤の付着力が上昇していっても、トナー供給画像1の形成で付着力を再び下げることができ、多数枚の連続印刷が行われる場合でも、印刷の前期と後期で転写不良を安定して抑制可能である。また、回復モード開始ボタンUIcの入力でトナー供給画像1の形成も実行可能である。したがって、利用者が印刷された画質を確認して回復モードを行いたい場合に、手動で開始することも可能である。よって、手動で開始できない場合に比べて、利用者の要求に臨機応変に対応可能である。
【0064】
また、実施例1では、トナー供給画像1として、イメージ領域2の全域をカバーする画像が使用されている。したがって、先行するジョブや後続のジョブにおける画像が転写される領域22や転写されない領域23を考慮する必要がなく、各領域22,23を記憶、演算する場合に比べて、処理負荷を軽減できる。また、各領域22,23の頻度や大きさ等に関わらず、イメージ領域2の全域の付着力を安定して低減することが可能である。
さらに、実施例1では、トナー供給画像1が中間転写ベルトBの複数周回の間形成されている。中間転写ベルトBの1周分だけの場合、現像剤の離型成分の供給が不十分になる恐れがあるが、複数周分トナー供給画像1が供給されると、離型成分を十分に供給することが可能である。したがって、転写不良を安定して抑制可能である。
また、実施例1では、中間転写ベルトBが複数周する間に、トナー供給画像1はインターイメージ領域3に対応する位置にも形成される。したがって、中間転写ベルトBの表面の全域にわたって付着力を均等に低下させることが可能である。
【0065】
(変更例)
図9はトナー供給画像の変更例の説明図であり、図9Aはトナー供給画像が転写を目的とする画像の全てに対応する場合の説明図、図9Bはトナー供給画像が転写を目的とする画像とは異なる位置にも形成されている場合の説明図、図9Cはトナー供給画像が転写を目的とする画像の一部分に対応する場合の説明図である。
前述の実施例1では、トナー供給画像1がイメージ領域2の全域をカバーする画像、すなわち、転写を目的とする画像の全域を覆う画像の場合を例示したが、これに限定されない。
図9Aに示すように、後続のジョブの画像31における画像部32の全てに対応する位置37に現像剤を供給するようなトナー供給画像36とすることも可能である。図9Aのようなトナー供給画像36とすることで、転写不良が発生すると画質に問題がある画像部32における現像剤の付着力は抑制されることとなる。したがって、記録用紙Sに転写される画像において問題はなくなる。また、実施例1の場合に比べて、トナー供給画像1,36を形成する現像剤の使用量を抑制することも可能である。
【0066】
図9Bにおいて、後続のジョブの画像31における画像部32の全てに対応する位置37に加えて、画像部32とは異なる位置38にも現像剤を供給するようなトナー供給画像36′とすることも可能である。例えば、位置38に、過去のジョブにおいて画像が長期間形成されず、付着力が高くなりすぎて、1回のトナー供給画像1の付与では付着力を抑制しきれない恐れがあるくらい付着力が高くなりすぎたような場合に、画像部32とは異なっていても、位置38に現像剤を供給するようなトナー供給画像36′を形成することも可能である。このようにすることで、現像剤の付着力が高くなりすぎないようにすることが可能である。
図9Cにおいて、後続のジョブの画像31における画像部32に対応する位置37の一部のみ現像剤を供給するようなトナー供給画像36″とすることも可能である。すなわち、画像部32に対応しても現像剤を供給しない位置37″を有するトナー供給画像36″とすることも可能である。例えば、位置37″に、過去のジョブにおいて継続的に画像が形成され、付着力が十分に低下している場合には、位置37″に現像剤を供給しても、無駄になってしまう可能性が高い。したがって、このような位置37″に現像剤を供給しないようなトナー供給画像36″とすることも可能である。このようにすることで無駄な現像剤の消費を抑制可能である。
【0067】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)~(H05)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、画像形成装置の一例としての複写機Uを例示したが、これ
に限定されず、FAXに適用したり、FAXや、プリンタ、複写機などの複数の機能を備えた複合機等に適用可能である。また、多色現像の画像形成装置に限定されず、単色、いわゆるモノクロの画像形成装置により構成することも可能である。
(H02)前記実施例において、例示した具体的な数値は、設計や仕様の変更に応じて適宜変更可能である。
【0068】
(H03)前記実施例において、高感度紙でトナー供給画像1を形成する場合を例示したが、これに限定されない。低感度紙でもトナー供給画像1を形成することも可能である。他にも、現像剤の付着力が上昇する場合、例えば、高湿度の場合や劣化した現像剤の比率が高くなった場合、中間転写ベルトB等の像保持手段が経時的に劣化した場合に、後続ジョブの画像に応じてトナー供給画像1を形成するようにすることも可能である。
【0069】
(H04)前記実施例において、回復モード開始ボタンUIcの入力でトナー供給画像1を形成する回復モードを実行することが望ましいが、回復モード開始ボタンUIcを設けず、回復モードを実行しない構成とすることも可能である。
【0070】
(H05)前記実施例において、トナー供給画像の一例として、図4図9A図9Cに例示した構成に限定されない。例えば、画像部が文字の場合、文字を囲む四角形状の画像にするとか、画像部32よりも一回り大きな画像にするとか、画像部32を含む円形や多角形等の特定の形状の画像とする等、適宜変更が可能である。また、色や濃度等も適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0071】
1,37,38…媒体への転写を目的としない画像、
3…隙間、
22,32…媒体への転写を目的とする画像、
B…像保持手段、
C8…形成手段、
S…媒体、
S1…第2の媒体、
S2…第1の媒体、
T2…転写手段、
U…画像形成装置、
UIc…入力手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9