IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱瓦斯化学株式会社の特許一覧

特許7484150ポリアミドの製造方法およびモノマー組成物
<>
  • 特許-ポリアミドの製造方法およびモノマー組成物 図1
  • 特許-ポリアミドの製造方法およびモノマー組成物 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ポリアミドの製造方法およびモノマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/40 20060101AFI20240509BHJP
   C08G 69/28 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C08G69/40 ZAB
C08G69/28
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019223972
(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公開番号】P2021091816
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】木村 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】桐野 智明
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/063741(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるジアミン、ジカルボン酸および溶媒を含む組成物であって、前記組成物に含まれるジアミンのうち、式(1)で表されるジアミンの割合が、90質量%以上である組成物を加熱し、溶媒を除去してプレポリマーを得ること、
前記プレポリマーを減圧条件下で加熱してポリアミドを得ること、
を含むポリアミドの製造方法であって、
前記組成物に含まれる式(1)で表されるジアミンとジカルボン酸のモル比が、1.02≦式(1)で表されるジアミン/ジカルボン酸<1.08である、ポリアミドの製造方法。
式(1)
【化1】
(式(1)中、nは0~5の整数である。)
【請求項2】
前記式(1)で表されるジアミンが、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランである、請求項1に記載のポリアミドの製造方法。
【請求項3】
前記ジカルボン酸が、芳香族ジカルボン酸を含む、請求項1または2に記載のポリアミドの製造方法。
【請求項4】
前記ジカルボン酸が、脂肪族ジカルボン酸を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリアミドの製造方法。
【請求項5】
前記ジカルボン酸が、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グルタル酸、アジピン酸およびセバシン酸から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアミドの製造方法。
【請求項6】
式(1)で表されるジアミン、ジカルボン酸および溶媒を含むモノマー組成物であって、前記モノマー組成物に含まれるジアミンのうち、式(1)で表されるジアミンの割合が、90質量%以上であり、前記モノマー組成物に含まれる式(1)で表されるジアミンとジカルボン酸のモル比が、1.02≦式(1)で表されるジアミン/ジカルボン酸<1.08である、モノマー組成物。
式(1)
【化2】
(式(1)中、nは0~5の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアミドの製造方法および前記ポリアミドの製造方法に用いることができるモノマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化や石油資源枯渇の問題が深刻化しつつあり、地球環境保全の見地から、バイオマスプラスチックの利用が注目されている。バイオマスプラスチックとしては、ポリ乳酸やポリブチレンサクシネート、さらに最近ではバイオポリエチレン等も開発されている。しかしながら、これらのバイオマスプラスチックは融点が180℃未満で耐熱性に劣るものである。プラスチックの耐熱性を高める方法として、芳香族モノマーや脂環式モノマーを用いることが有効であるが、バイオマス由来の芳香族モノマーや脂環式モノマーは、その種類が限られている。その中で、近年、バイオマスから得られる2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを用いたポリアミドが検討されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】ウッドケミカルズの新展開、株式会社シーエムシー出版、2007年8月31日第1刷発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを原料ジアミンとするポリアミドの特性や改良については、十分に検討されているとはいえない。特に、本発明者らが検討を行った結果、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを原料ジアミンとするポリアミドは、加熱後の外観が劣ったり、5%質量減少温度が低くなってしまう場合があることが分かった。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、加熱後の外観に優れ、かつ、耐熱性が高いポリアミドの製造方法、および、前記ポリアミドを製造するためのモノマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者らが検討を行った結果、ポリアミドの原料モノマーである2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン等のジアミンをジカルボン酸よりもやや過剰な状態で反応させることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>式(1)で表されるジアミン、ジカルボン酸および溶媒を含む組成物を加熱し、溶媒を除去してプレポリマーを得ること、前記プレポリマーを減圧条件下で加熱してポリアミドを得ること、を含むポリアミドの製造方法であって、前記組成物に含まれるジアミンとジカルボン酸のモル比が、1.00<ジアミン/ジカルボン酸である、ポリアミドの製造方法。
式(1)
【化1】
(式(1)中、nは0~5の整数である。)
<2>前記式(1)で表されるジアミンが、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランである、<1>に記載のポリアミドの製造方法。
<3>前記ジカルボン酸が、芳香族ジカルボン酸を含む、<1>または<2>に記載のポリアミドの製造方法。
<4>前記ジカルボン酸が、脂肪族ジカルボン酸を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載のポリアミドの製造方法。
<5>前記ジカルボン酸が、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グルタル酸、アジピン酸およびセバシン酸から選択される少なくとも1種を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載のポリアミドの製造方法。
<6>前記ジアミン/ジカルボン酸のモル比が1.00<ジアミン/ジカルボン酸≦1.10である、<1>~<5>のいずれか1つに記載のポリアミドの製造方法。
<7>前記ジアミン/ジカルボン酸のモル比が1.00<ジアミン/ジカルボン酸≦1.06である、<1>~<5>のいずれか1つに記載のポリアミドの製造方法。
<8>式(1)で表されるジアミン、ジカルボン酸および溶媒を含むモノマー組成物であって、前記モノマー組成物に含まれるジアミンとジカルボン酸のモル比が、1.00<ジアミン/ジカルボン酸である、モノマー組成物。
式(1)
【化2】
(式(1)中、nは0~5の整数である。)
【発明の効果】
【0006】
本発明により、加熱後の外観に優れ、かつ、耐熱性が高いポリアミドの製造方法、および、前記ポリアミドを製造するためのモノマー組成物を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例および比較例のポリアミドについて、ジアミンとジカルボン酸のモル比(A/C比)と5%質量減少温度との関係を示したグラフである。
図2】実施例および比較例のポリアミドについて、黄変度(ΔYI)と数平均分子量(Mn)の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、測定値、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
なお、本明細書における「質量部」とは成分の相対量を示し、「質量%」とは成分の絶対量を示す。
【0009】
本発明のポリアミドの製造方法は、式(1)で表されるジアミン、ジカルボン酸および溶媒を含む組成物(以下、「モノマー組成物」ということがある)を加熱し、溶媒を除去してプレポリマーを得ること、前記プレポリマーを減圧条件下で加熱してポリアミドを得ること、を含むポリアミドの製造方法であって、前記組成物に含まれるジアミンとジカルボン酸のモル比が、1.00<ジアミン/ジカルボン酸であることを特徴とする。
式(1)
【化3】
(式(1)中、nは0~5の整数である。)
このような構成とすることにより、加熱後の外観に優れ、かつ、耐熱性が高いポリアミドが得られる。より具体的には、黄変度(ΔYI)を低く保ちつつ、5%質量減少温度が高いポリアミドが得られる。
このメカニズムは、拘泥されるわけではないが、以下の通りであると推測される。すなわち、式(1)で表されるジアミンは、テトラヒドロフラン環を含むが、かかるテトラヒドロフラン環は、酸素原子にプロトンが配位しやすい。このため、ジアミンとジカルボン酸の重合時にテトラヒドロフラン環が開裂を伴い分解すると推測される。本発明では、ジアミンの比率をジカルボン酸よりも多くすることにより、テトラヒドロフラン環の開裂に伴う分解を抑制できたと推測される。
以下、本発明の製造方法を詳細に説明する。
【0010】
本発明で用いるモノマー組成物は、ポリアミドの原料であり、ジアミン、ジカルボン酸、溶媒、必要に応じて配合されるその他の成分を含む。具体的には、モノマー組成物は、上述のとおり、式(1)で表されるジアミン、ジカルボン酸および溶媒を含み、前記組成物に含まれるジアミンとジカルボン酸のモル比(A/C比)が、1.00<ジアミン/ジカルボン酸である。このようなジアミンとジカルボン酸のモル比(A/C比)とすることにより、加熱後の外観に優れ、かつ、耐熱性が高いポリアミドが得られる。
前記A/C比は、その下限値が、1.01≦A/Cであることが好ましく、1.02≦A/Cであることが好ましく、1.02<A/Cであってもよい。また、前記A/C比の上限値は、A/C≦1.10であることが好ましく、A/C≦1.09であることがより好ましく、A/C≦1.08であることがさらに好ましく、A/C≦1.07であることが一層好ましく、A/C<1.07であることがより一層好ましく、A/C≦1.06であることがさらに一層好ましく、A/C<1.06であってもよい。前記上限値以下とすることにより、加熱後の外観をより改善しつつ、耐熱性をより向上させることができる。
特に、1.02≦A/C<1.07、さらには、1.02≦A/C≦1.06とすることにより、5%質量減少温度を390℃以上とすることができ、実用上価値が高い。
尚、本発明におけるA/C比は、小数第3位を四捨五入した値とする。よって、例えば、A/C比が1.01であるとは、1.005以上1.015未満をいう。
【0011】
次に、モノマー組成物に含まれる式(1)で表されるジアミンについて説明する。
式(1)
【化4】
(式(1)中、nは0~5の整数である。)
【0012】
上記式(1)において、nは、それぞれ独立に、1または2が好ましく、1がより好ましい。
また、式(1)で表されるジアミンは、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランであることが好ましい。
上記モノマー組成物は、式(1)で表されるジアミンを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0013】
上記モノマー組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、式(1)で表されるジアミン以外のジアミンを含んでいてもよい。式(1)で表されるジアミン以外のジアミンとしては、脂肪族ジアミン(脂環式ジアミンを含む)、および、芳香族ジアミンが例示される。
【0014】
脂肪族ジアミンの具体例としては、国際公開第2016/056340号の段落0016の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。芳香族ジアミンとしては、国際公開第2017/126409号の段落0052の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、他のジアミンとして、2,5-ビス(アミノメチル)フランも例示される。
本発明では、モノマー組成物に含まれるジアミンのうち、式(1)で表されるジアミンの割合が、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましく、実質的に100質量%であってもよい。実質的に100質量%とは、不純物等意図せずに含まれるジアミン以外のジアミンが、すべて、式(1)で表されるジアミンであることをいう。
【0015】
次に、モノマー組成物に含まれるジカルボン酸について説明する。
モノマー組成物に含まれるジカルボン酸の種類は特に定めるものではなく、公知のジカルボン酸を広く用いることができ、芳香族ジカルボン酸および/または脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
【0016】
脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキサン-1-カルボン酸)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキサン-1-カルボン酸)、デカヒドロ-1,4-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-オキソビス(シクロヘキサン-1-カルボン酸)および4,4’-チオビス(シクロヘキサン-1-カルボン酸)が例示され、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびドデカンジカルボン酸が好ましく、グルタル酸、アジピン酸およびセバシン酸がより好ましい。
【0017】
芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸および2,7-ナフタレンジカルボン酸が例示され、イソフタル酸およびテレフタル酸がより好ましく、テレフタル酸がさらに好ましい。
【0018】
本発明では特に、モノマー組成物に含まれるジカルボン酸が、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グルタル酸、アジピン酸およびセバシン酸から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、テレフタル酸がさらに好ましい。
モノマー組成物は、ジカルボン酸を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0019】
本発明で用いるモノマー組成物は、上記ジアミンおよびジカルボン酸以外のポリアミドを構成する原料モノマーを含んでいてもよい。具体的には、ε-カプロラクタム、バレロラクタム、ラウロラクタム、ウンデカラクタム等のラクタム、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸等が例示できる。本発明で用いるモノマー組成物においては、ポリアミドの構成単位となる原料モノマー(ジアミン、ジカルボン酸、ラクタム、アミノカルボン酸等の原料モノマー)のうち、ジアミンとジカルボン酸の合計割合が、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、一層好ましくは95質量%以上、より一層好ましくは98質量%以上、さらに一層好ましくは実質的に100質量%である。実質的に100質量%とは、不純物等意図せずに含まれる原料モノマー以外のすべてが、ジアミンまたはジカルボン酸であることをいう。
【0020】
次に、モノマー組成物に含まれる溶媒について説明する。溶媒は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、公知のものを採用でき、水、メタノール、エタノールが例示され、水が好ましい。
本発明で用いるモノマー組成物における溶媒の割合は、例えば、20~80質量%である。本発明で用いるモノマー組成物は、溶媒中90質量%以上が水であることが好ましく95質量%以上が水であってもよく、99質量%以上が水であってもよい。
本発明で用いるモノマー組成物は、溶媒を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0021】
本発明で用いるモノマー組成物は、上記の他、ポリアミドの合成に通常用いられる添加剤等の他の成分を含んでいてもよい。具体的には、反応促進剤、酸化防止剤、触媒、染料、顔料、鎖制限剤、潤滑剤、難燃剤、光安定剤、可塑剤、成核剤などが例示される。また、他の成分として、ゲル化あるいはフィッシュアイ防止のため、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム等も例示される。モノマー組成物における前記他の成分の総量は、モノマー組成物に含まれる原料モノマー100質量部に対し、3質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましい。
【0022】
本発明の製造方法は、上述のとおり、式(1)で表されるジアミン、ジカルボン酸および溶媒を含む組成物(モノマー組成物)を加熱し、溶媒を除去してプレポリマーを得ることを含む。
すなわち、モノマー組成物を加熱し、溶媒を除くことにより、通常、溶融状態でジアミンとジカルボン酸が重合してプレポリマーとなる。溶媒の除去は、通常、モノマー組成物の加熱後に行うが、モノマー組成物の加熱途中から溶媒の除去を開始してもよい。また、溶媒を除去する際に、縮合水も一緒に除去することが好ましい。溶媒の除去は、反応系(例えば、反応容器)から溶媒を系外へ放出することによって行う。
【0023】
前記モノマー組成物のプレポリマーを得る段階における加熱温度は、最高加熱温度が、150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましく、190℃以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、プレポリマーの変色をより効果的に抑制しつつ、重合度を上げることができる。また、前記モノマー組成物の加熱温度は、260℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましく、230℃以下であることがさらに好ましく、220℃以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、プレポリマーの変色をより効果的に抑制できる。
前記加熱時間は、0.5時間以上であることが好ましく、1時間以上であることがより好ましく、また、加熱時間の上限は、4時間以下であることが好ましく、3時間以下であることがより好ましい。
【0024】
前記モノマー組成物は、前記プレポリマーを得る段階における加熱の際に加圧してもよく、この場合の圧力は、0.1MPa以上であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、ジアミンとジカルボン酸からのプレポリマーの形成をより効果的に進行させることができる。また、前記圧力は、5MPa以下であることが好ましい。
【0025】
ここで、プレポリマーの好ましい物性について説明する。
上記プレポリマーは、アミド結合を2つ以上有するポリマーであり、重量平均分子量が、通常、3,000以上であり、5,000以上であることが好ましく、また、通常、20,000以下であり、15,000以下であることがより好ましい。
上記プレポリマーの数平均分子量は、通常、2,000以上であり、3,000以上であることが好ましく、また、通常、10,000以下であり、8,000以下であることがより好ましい。
【0026】
本発明のポリアミドの製造方法では、さらに、プレポリマーを減圧条件下で加熱してポリアミドを得ることを含む。プレポリマーを減圧条件下(好ましくは、真空条件下)で加熱することにより、追加の重合が進行し、より分子量が大きいポリアミドが得られる。
【0027】
プレポリマーの加熱温度(固相重合の際の加熱温度)は、最高加熱温度が、220℃以上であることが好ましく、230℃以上であることがより好ましく、240℃以上であることがさらに好ましく、245℃以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、プレポリマーの後期重縮合(固相重合)がより効果的に進行する傾向にある。また、プレポリマーの加熱温度は、300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましく、270℃以下であることがさらに好ましく、260℃以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、変性や変色をより効果的に抑制できる。
前記プレポリマーの加熱時間は、0.25時間以上であることが好ましく、0.5時間以上であることがより好ましい。また、前記加熱時間の上限は、5時間以下であることが好ましく、3時間以下であることがより好ましい。
【0028】
次に、本発明の製造方法で得られる固相重合後のポリアミドの好ましい物性について説明する
本発明の製造方法で得られる固相重合後のポリアミドの重量平均分子量は、30,000以上であることが好ましく、40,000以上であることがより好ましく、50,000以上であってもよく、60,000以上であってもよく、70,000以上であってもよく、80,000以上であってもよい。また、前記重量平均分子量は、例えば、300,000以下であり、200,000以下であってもよく、150,000以下であってもよい。
本発明の製造方法で得られる固相重合後のポリアミドの数平均分子量は、5,000以上であることが好ましく、8,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらに好ましく、11,000以上であってもよく、13,000以上であってもよい。また、前記数平均分子量は、例えば、50,000以下であり、30,000以下であってもよく、20,000以下であってもよい。
本発明の製造方法で得られる固相重合後のポリアミドの分散度(Mw/Mn)は、1.5以上であってもよく、2.0以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、得られるポリアミドの機械強度がより高くなる傾向にある。また、前記ポリアミドの分散度(Mw/Mn)は、10.0以下であることが好ましく、8.0以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、オリゴマーが少ないため耐熱性が高く、成形性も良好となる傾向にある。
重量平均分子量および数平均分子量は後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0029】
次に、本発明の製造方法で得られる固相重合後のポリアミドの好ましい物性について説明する。
本発明の製造方法で得られる固相重合後のポリアミドの5%質量減少温度は、371℃以上であることが好ましく、380℃以上であることがより好ましく、385℃以上であることがさらに好ましく、390℃以上であることが一層好ましい。前記下限値以上(特に、390℃以上)とすることにより、耐熱性が求められる用途に好ましく用いることができる。前記固相重合後のポリアミドの5%質量減少温度の上限は、特に定めるものではないが、例えば、410℃以下であり、400℃以下であってもよい。
5%質量減少温度は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0030】
本発明の製造方法で得られるポリアミドの黄変度(ΔYI)は、30以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、15以下であることがさらに好ましく、13以下であることが一層好ましく、12以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、より着色が抑制された成形品が得られる。前記ポリアミドのΔYIの下限値は特に定めるものではないが、例えば、1以上が実際的であり、5以上でも十分に要求性能を満たすものである。
ΔYIは、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0031】
次に、本発明の製造方法で得られるポリアミドの用途について述べる。
本発明の製造方法で得られるポリアミドは、ポリアミドを含む樹脂組成物、さらには、前記樹脂組成物を成形してなる成形品として用いることができる。
前記樹脂組成物の詳細、成形品の成形方法、成形品の用途等は、特開2019-026686号公報の段落0026~0040の記載、特開2018-165298号公報の段落0039の記載、特開2018-087319号公報の段落0045~0048の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0033】
<2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランの合成例>
容量300ccのオートクレーブ反応容器に、秤量した2,5-ビス(アミノメチル)フラン(カルボシンス社製、FB187031801)20.70g(0.1641mol)、テトラヒドロフラン120mL、Rh触媒含有物8.00g(N.E.ケムキャット社製、317-160042)を入れ、十分に窒素で置換した後、水素を6MPaGまで充填した。90℃で1時間反応させた後、反応溶液を反応容器から取り出し、Ar雰囲気下で加圧ろ過した。生成物を溶媒留去し粗生成物を得た後、1hPa、130℃の減圧蒸留にて蒸留精製した。
上記Rh触媒含有物は、Rh触媒の粉末を炭素に担持させたものであり、55質量%が水、45質量%がRh触媒であり、このRh触媒のうち5質量%がRhであり、40質量%が炭素である。
【0034】
比較例1
<ポリアミドの合成>
容量30ccのオートクレーブ反応容器に、秤量したテレフタル酸(富士フィルム和光純薬工業社製、PTM6633)0.740g(4.43mmol)、純水1.00g、上記で合成した2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン0.593g(4.43mmol)を入れ、十分に窒素で置換した後、系内を撹拌しながら200℃まで加熱した。1時間半後、生成した水、および、仕込んだ水を系外へ除去し、さらに30分続けて加熱した。反応後、プレポリマーを反応容器から取り出し、250℃の真空乾燥機にて1時間後期重縮合を行い、ポリアミドを得た。
【0035】
<重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の測定>
ポリアミドのMwおよびMnの測定は、ゲル浸透クロマトグラフィーにて行った。上記合成例で得られたポリアミド10mgに1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール5mLを添加し、メンブレンフィルター(孔径0.2μm)でろ過して、試料溶液とした。
尚、測定には、昭光サイエンティフィック社製、GPC-104(RI検出器使用)を用いた。カラムは、昭和電工社製、Shodex GPC LF-404を用いた。ゲル浸透クロマトグラフィー装置およびカラムは、上記装置等が廃番等入手困難な場合、同等の性能を有する他の機器を用いてもよい。
溶離液:1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール(+10mmolトリフルオロ酢酸ナトリウム)
測定条件を以下に示す。
流量:0.3mL/分
カラム温度:40℃
標準物質:ポリメチルメタクリレート
試料濃度:0.2重量/体積%
注入量:10μL
分散度(Mw/Mn)は、上記で測定されたMwおよびMnの値から算出した。
【0036】
<5%質量減少温度>
上記合成例で得られたポリアミドを、30℃から400℃まで昇温速度10.5℃/分で昇温した。リファレンスにはアルミニウムディスクを用いた。初めのポリアミドの質量を100%とし、その質量が95%となった温度を5%質量減少温度と定義した。単位は、℃で示した。
測定には、株式会社日立ハイテクサイエンス製のTGDTA7220を用いた。
【0037】
<黄変度(ΔYI)>
溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用い、上記合成例で得られたポリアミド42.5mgを溶媒60mLに溶解させ濃度を全て同一に調整し、試料溶液を得た。溶媒および試料溶液の黄色度(YI)を求め、試料溶液と溶媒の黄色度の差を黄変度(ΔYI)と定義した。
測定には、日本電色工業株式会社製Spectro Color Meter SE2000を用いた。
【0038】
実施例1~6
比較例1において、それぞれ、ジアミンとジカルボン酸のモル比(A/C比)を表1に示す通り変更し、他は同様に行った。
実施例2で得られたプレポリマーは、Mw5,732、Mn3,653、5%質量減少温度329℃であった。
結果を下記表1に示す。
【0039】
【表1】
上記表1において、「*」は、ポリアミドが溶媒に完全には溶解しなかったため、ろ過して得られた溶解分を用いて測定したことを意味している。
【0040】
また、上記結果を図1および図2に示す。
図1は、実施例および比較例のポリアミドについて、ジアミンとジカルボン酸のモル比(A/C比)と5%質量減少温度との関係を示したグラフである。左側から順に、比較例1、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6のプロットである。
図2は、実施例および比較例のポリアミドについて、ΔYIとMnの関係を示したグラフである。左側から順に、比較例1、実施例1、実施例2、実施例3、実施例5のプロットである。
図1
図2