(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ゴルフボール及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20240509BHJP
A63B 45/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
A63B37/00 668
A63B37/00 324
A63B37/00 316
A63B37/00 512
A63B37/00 534
A63B37/00 536
A63B37/00 538
A63B45/00 B
(21)【出願番号】P 2019230467
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 潤
【審査官】池田 剛志
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-218873(JP,A)
【文献】特開平02-234776(JP,A)
【文献】特開2013-042960(JP,A)
【文献】特開2013-138840(JP,A)
【文献】特開2003-339912(JP,A)
【文献】特開昭58-165871(JP,A)
【文献】特開2014-090957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00-47/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1層または複数層で構成されるコアを含むゴルフボールであって、該コアの最外層が、基材ゴム及びα,β-不飽和カルボン酸金属塩を含むゴム組成物により形成されると共に、上記コアを直接被覆する包囲層は、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位を構成に含む熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により形成されるものであり、上記コアの最外層の表面部位をFT-IRのATR法に基づく赤外吸収スペクトルを測定したとき、上記表面部位の全部又は一部は、波数1700±40cm
-1付近の吸光度ピークの高さA(カルボン酸由来の吸光度ピークの高さ)と、波数1550±40cm
-1付近の吸光度ピークの高さB(カルボン酸金属塩由来の吸光度ピークの高さ)としたとき、A/(A+B)で表される値が0.4以上であることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
上記包囲層の樹脂組成物における、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位を構成に含む熱可塑性樹脂がアイオノマー樹脂である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記コアの最外層に含まれるα,β-不飽和カルボン酸金属塩がアクリル酸亜鉛である請求項1又は2記載のゴルフボール。
【請求項4】
上記コアの中心と表面との硬度差が、JIS-C硬度で13以上である請求項1又は2記載のゴルフボール。
【請求項5】
1層または複数層で構成されるコアを含むゴルフボールの製造方法であって、
基材ゴム及びα,β-不飽和カルボン酸金属塩を含むゴム組成物によりコアの最外層を形成する工程と、
上記コアの最外層の表面を、酸含有溶液により接触させて該最外層の表面処理を行う工程と、
上記の表面処理を施したコアの最外層に、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位を構成に含む熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を成形して包囲層を形成する工程と
を含むことにより、上記コアの最外層の表面部位をFT-IRのATR法に基づく赤外吸収スペクトルを測定したとき、上記表面部位の全部又は一部は、波数1700±40cm
-1付近の吸光度ピークの高さA(カルボン酸由来の吸光度ピークの高さ)と、波数1550±40cm
-1付近の吸光度ピークの高さB(カルボン酸金属塩由来の吸光度ピークの高さ)としたとき、A/(A+B)で表される値が0.4以上であることを特徴とするゴルフボールの製造方法。
【請求項6】
上記の酸含有溶液が塩酸を含有する溶液である請求項5記載のゴルフボールの製造方法。
【請求項7】
上記の酸含有溶液がアルコール類を含有する溶液である請求項5記載のゴルフボールの製造方法。
【請求項8】
上記の酸含有溶液を上記コアの最外層表面に接触する際の酸含有溶液の濃度が0.05mol/L以上である請求項5~7のいずれか1項記載のゴルフボールの製造方法。
【請求項9】
上記の酸含有溶液を上記コアの最外層表面に接触する手段が、コアを酸含有溶液に浸漬させることである請求項5~8のいずれか1項記載のゴルフボールの製造方法。
【請求項10】
1層または複数層で構成されるコアを含むゴルフボールの製造方法であって、
基材ゴム及びα,β-不飽和カルボン酸金属塩を含むゴム組成物によりコアの最外層を形成する工程と、
上記コアの最外層の表面を、塩酸、硫酸及び硝酸の群から選ばれる酸含有溶液
(但し、ハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩を含む水溶液を除く。)により接触させて該最外層の表面処理を行う工程と、
上記の表面処理を施したコアの最外層に、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位を構成に含む熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を成形して包囲層を形成する工程と
を含むことを特徴とするゴルフボールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1層又は複数層からなるコアに1層又は複数層からなるカバーを被覆したゴルフボールに関するものであり、更に詳述すると、コアの最外層と隣接するカバー層との密着性を向上させたゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スリーピース以上の多層構造のソリッドゴルフボールが多く使用されている。これらの多層ゴルフボールは、通常、コアの周囲に合成樹脂のカバー材料を順次射出成形し、コアに各層を積層させるものであるが、ゴルフボールの各層の密着性が悪くなると、飛びやアプローチスピン、打感や割れ耐久性等のボール諸物性の低下を招くおそれがあるので、各層同士の密着性を向上させることは望まれている。
【0003】
ゴルフボールの打撃耐久性を向上させるため、各層の密着性を向上させる技術は多数存在するが、特に、コアは通常ゴム組成物により形成され、一方、カバー各層は、アイオノマー樹脂や熱可塑性エラストマー等の樹脂材料により形成されることが多い。このため、コアの最外層と隣接するカバー層とは互いに材料がゴムと樹脂とでは異なるため、コアの最外層を表面処理することにより層間の密着性を向上させる技術がいくつか提案されている。例えば、特開2017-099864号公報(特許文献1)には、異なる隣接層の間に良好な層間接着を有するために層間をシラン含有助長剤によって表面処理した技術が開示され、特開2013-132312号公報(特許文献2)及び特開2014-090957号公報(特許文献3)には、コア表面に対して水性スタップ処理が施された技術が開示されている。また、特開2013-150690号公報(特許文献4)には、コアの表面をウレタン樹脂エマルションにて処理した技術が提案されており、特開2013-150689号公報(特許文献5)には、コアの表面をゴムラテックスにて処理した技術が提案されている。また、そのほかの技術としては、特開2003-079766号公報(特許文献6)には、内側カバー層にハロゲン化,化学的表面処理またはUV照射等の表面処理を施す技術や特開2003-339912号公報(特許文献7)には、アイオノマー樹脂材料からなる中間層に対して酸処理を行い、最外層で使用されるポリウレタン樹脂材料との密着性を向上させた技術が提案されている。
【0004】
しかしながら、ゴム製コアに隣接するカバー層がアイオノマー樹脂等のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合体を含む樹脂材料により形成される場合、コアとカバー層との密着性が未だ不十分であり割れ耐久性を改善する余地があった。即ち、従来の技術では、ゴムを主成分とするコアと、該コアを直接被覆するアイオノマー樹脂層との密着性を改善し、最終的にゴルフボールの耐久性を向上させる有効な方法は十分提案されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-099864号公報
【文献】特開2013-132312号公報
【文献】特開2014-090957号公報
【文献】特開2013-150690号公報
【文献】特開2013-150689号公報
【文献】特開2003-079766号公報
【文献】特開2003-339912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ゴムを基材とするコアと、該コアを直接被覆し、アイオノマー樹脂等のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合体を含む樹脂材料により形成されるカバー層との密着性を改善し、ゴルフボールの耐久性を向上させることができるゴルフボール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、コアの最外層を、基材ゴム及びα,β-不飽和カルボン酸金属塩を含むゴム組成物により形成すると共に、上記コアを直接被覆する包囲層を、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位を構成に含む熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により形成し、上記コアの最外層の表面部位をFT-IRのATR法に基づく赤外吸収スペクトルを測定したとき、上記表面部位の全部又は一部について、波数1700±40cm-1付近の吸光度ピークの高さA(カルボン酸由来の吸光度ピークの高さ)と、波数1550±40cm-1付近の吸光度ピークの高さB(カルボン酸金属塩由来の吸光度ピークの高さ)としたとき、A/(A+B)で表される値が0.4以上であるように上記表面部位の全部又は一部を構成することにより、コア表面とその外側に位置する包囲層との密着性を向上させることを見出し、本発明に係るゴルフボールをなすに至ったものである。
【0008】
また、本発明者は、1層または複数層で構成されるコアを含むゴルフボールの製造方法であって、基材ゴム及びα,β-不飽和カルボン酸金属塩を含むゴム組成物によりコアの最外層を形成する工程と、上記コアの最外層の表面を、酸含有溶液により接触させて該最外層の表面処理を行う工程と、上記の表面処理を施したコアの最外層に、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位を構成に含む熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を成形して包囲層を形成する工程とを含むことにより、コア表面の化学的表面処理において比較的安価で簡便な方法で、且つ、コア表面の諸物性に悪影響を及ぼすことがなく外側に隣接する包囲層との密着性を向上させることができることを見出し、本発明に係るゴルフボールの製造方法をなすに至ったものである。
【0009】
従って、本発明は、下記のゴルフボール及びその製造方法を提供する。
1.1層または複数層で構成されるコアを含むゴルフボールであって、該コアの最外層が、基材ゴム及びα,β-不飽和カルボン酸金属塩を含むゴム組成物により形成されると共に、上記コアを直接被覆する包囲層は、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位を構成に含む熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により形成されるものであり、上記コアの最外層の表面部位をFT-IRのATR法に基づく赤外吸収スペクトルを測定したとき、上記表面部位の全部又は一部は、波数1700±40cm-1付近の吸光度ピークの高さA(カルボン酸由来の吸光度ピークの高さ)と、波数1550±40cm-1付近の吸光度ピークの高さB(カルボン酸金属塩由来の吸光度ピークの高さ)としたとき、A/(4.上記コアの中心と表面との硬度差が、JIS-C硬度で13以上である上記1又は2記載のA+B)で表される値が0.4以上であることを特徴とするゴルフボール。
2.上記包囲層の樹脂組成物における、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位を構成に含む熱可塑性樹脂がアイオノマー樹脂である上記1記載のゴルフボール。
3.上記コアの最外層に含まれるα,β-不飽和カルボン酸金属塩がアクリル酸亜鉛である上記1又は2記載のゴルフボール。
ゴルフボール。
5.1層または複数層で構成されるコアを含むゴルフボールの製造方法であって、
基材ゴム及びα,β-不飽和カルボン酸金属塩を含むゴム組成物によりコアの最外層を形成する工程と、
上記コアの最外層の表面を、酸含有溶液により接触させて該最外層の表面処理を行う工程と、
上記の表面処理を施したコアの最外層に、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位を構成に含む熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を成形して包囲層を形成する工程と
を含むことにより、上記コアの最外層の表面部位をFT-IRのATR法に基づく赤外吸収スペクトルを測定したとき、上記表面部位の全部又は一部は、波数1700±40cm-1付近の吸光度ピークの高さA(カルボン酸由来の吸光度ピークの高さ)と、波数1550±40cm-1付近の吸光度ピークの高さB(カルボン酸金属塩由来の吸光度ピークの高さ)としたとき、A/(A+B)で表される値が0.4以上であることを特徴とするゴルフボールの製造方法。
6.上記の酸含有溶液が塩酸を含有する溶液である上記5記載のゴルフボールの製造方法。
7.上記の酸含有溶液がアルコール類を含有する溶液である上記5記載のゴルフボールの製造方法。
8.上記の酸含有溶液を上記コアの最外層表面に接触する際の酸含有溶液の濃度が0.05mol/L以上である上記5~7のいずれかに記載のゴルフボールの製造方法。
9.上記の酸含有溶液を上記コアの最外層表面に接触する手段が、コアを酸含有溶液に浸漬させることである上記5~8のいずれかに記載のゴルフボールの製造方法。
10.1層または複数層で構成されるコアを含むゴルフボールの製造方法であって、
基材ゴム及びα,β-不飽和カルボン酸金属塩を含むゴム組成物によりコアの最外層を形成する工程と、
上記コアの最外層の表面を、塩酸、硫酸及び硝酸の群から選ばれる酸含有溶液(但し、ハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩を含む水溶液を除く。)により接触させて該最外層の表面処理を行う工程と、
上記の表面処理を施したコアの最外層に、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位を構成に含む熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を成形して包囲層を形成する工程と
を含むことを特徴とするゴルフボールの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴルフボールによれば、ゴムを基材とするコアと、該コアを直接被覆し、アイオノマー樹脂等のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合体を含む樹脂材料により形成されるカバー層との密着性を改善することができ、特に、コアの表面と中心との硬度差が大きいコアを使用した場合にゴルフボールの打撃耐久性を大きく改善させることができる。また、本発明のゴルフボールの製造方法によれば、ゴム組成物を加熱成形して得られたコアの最外層の表面を特定の表面処理を行い、該表面に含まれる金属塩を脱メタル化する方法であり、飛び性能やスピン性能等のゴルフボールの諸特性に悪影響を及ぼすことがなく、比較的簡便な方法により耐久性を十分に改善したゴルフボールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】コアの表面部位の赤外吸収スペクトルのチャートにおいて、吸光度ピークの高さA(カルボン酸由来の吸光度ピークの高さ)と吸光度ピークの高さB(カルボン酸金属塩由来の吸光度ピークの高さ)とを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボールは、1層または複数層で構成されるコアを具備する。即ち、本発明に用いられるコアは、単層であるほか、内層及び外層の2層コアやそれ以外の複数層に形成することができる。
【0013】
上記コアの最外層は、基材ゴム及びα,β-不飽和カルボン酸金属塩を含むゴム組成物により形成される。このゴム組成物として好適なものとして以下に示す配合のゴム組成物を例示することができる。
【0014】
上記の基材ゴムについては、特に制限されるものではないが、特にポリブタジエンを用いることが好適である。
【0015】
上記のポリブタジエンは、そのポリマー鎖中に、シス-1,4-結合を60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上有することが好適である。ポリブタジエン分子中の結合に占めるシス-1,4-結合が少なすぎると、反発性が低下する場合がある。
【0016】
また、上記ポリブタジエンに含まれる1,2-ビニル結合の含有量としては、そのポリマー鎖中に、通常2%以下、好ましくは1.7%以下、更に好ましくは1.5%以下である。1,2-ビニル結合の含有量が多すぎると、反発性が低下する場合がある。
【0017】
上記ポリブタジエンは、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が、好ましくは20以上、より好ましくは30以上であり、上限としては、好ましくは120以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは80以下である。
【0018】
なお、上記のムーニー粘度とは、回転可塑度計の1種であるムーニー粘度計で測定される工業的な粘度の指標(JIS K 6300)であり、単位記号としてML1+4(100℃)を用いる。また、Mはムーニー粘度、Lは大ロータ(L型)、1+4は予備加熱時間1分間、ロータの回転時間は4分間を示し、100℃の条件下にて測定したことを示す。
【0019】
上記ポリブタジエンは、希土類元素系触媒やVIII族金属化合物触媒を用いて合成したものを使用することができる。
【0020】
なお、基材ゴム中には、上記ランタン系列希土類元素化合物とは異なる触媒にて合成されたポリブタジエンゴムを配合してもよい。また、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等を配合してもよく、これら1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0021】
ゴム組成物の基材ゴム全体に占める上記ポリブタジエンの割合は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。また、基材ゴムの100質量%、即ち基材ゴムの全てが上記ポリブタジエンであってもよい。
【0022】
α,β-不飽和カルボン酸金属塩は、通常、共架橋剤として用いられるものである。この不飽和カルボン酸の炭素数は、3~8個であることが好適であり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸が挙げられる。上記の不飽和カルボン酸の金属として具体的には、亜鉛、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等が挙げられ、特に亜鉛が好ましい。従って、共架橋剤としては、アクリル酸亜鉛が最も好ましい。
【0023】
また、α,β-不飽和カルボン酸金属塩は、金属塩として基材ゴムと混合することもでき、または、α,β-不飽和カルボン酸と金属酸化物等の金属供給源とを基材ゴム中で化学反応させて得ることもできる。この化学反応でα,β-不飽和カルボン酸金属塩を得る場合、α,β-不飽和カルボン酸の酸基を金属塩にするに十分な量の金属成分を反応させることが好ましく、十分な量でないと得られたコアの硬度が軟化したり、反発が低下することがある。
【0024】
上記α,β-不飽和カルボン酸金属塩は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上とすることができ、配合量の上限は好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは45質量部以下とすることができる。配合量が多すぎると、硬くなりすぎて耐え難い打感になる場合があり、配合量が少なすぎると、反発性が低下してしまう場合がある。
【0025】
上記ゴム組成物には、上記の必須成分以外に、上記以外の共架橋剤や、有機過酸化物、不活性充填剤、硫黄、老化防止剤、有機硫黄化合物等を含有させることができる。
【0026】
また、コアが単層の場合は、上述したゴム組成物により単層コアを作製することができる。コアが複数層の場合は、センターコア(内芯)の材料については、上記の最外層と同種のゴム材料のほか、配合成分の種類や配合量が異なるゴム組成物や公知の樹脂材料を採用することができる。
【0027】
上記ゴム組成物を加硫硬化させることにより加硫成形物(コア)を製造することができる。この加硫成形物は、特に、単層又は複数層のコアの全部又は一部に用いることができる。例えば、バンバリーミキサーやロール等の混練機を用いて混練し、コア用金型を用いて圧縮成形または射出成型し、有機過酸化物や共架橋剤が作用するのに十分な温度として、約100~200℃、10~40分の条件にて成形体を適宜加熱することにより、該成形体を硬化させて、加硫成形物であるコアを製造することができる。
【0028】
上記コアについては、ゴルフボールの良好なスピン特性を維持しつつ、耐久性を高めることができる点から、表面と中心との硬度差が大きな硬度傾斜を有することが好適である。
【0029】
コアの中心硬度については、特に制限はないが、JIS-C規格で、好ましくは30以上、より好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上であり、上限値としては、好ましくは80以下、より好ましくは70以下、さらに好ましくは60以下である。コアの中心硬度が上記範囲を逸脱すると、打感が悪くなり、または耐久性が低下してしまうことがあり、低スピン効果を得ることができない場合がある。
【0030】
コアの表面硬度については、特に制限はないが、JIS-C規格で、好ましくは50以上、より好ましくは60以上、さらに好ましくは70以上であり、上限値としては、好ましくは98以下、より好ましくは96以下、さらに好ましくは94以下である。コアの表面硬度が上記範囲よりも低すぎると、反発性が低くなり飛距離が十分に得られなくなることがある。また、コアの表面硬度が上記範囲よりも高すぎると、打感が硬くなり過ぎ、また、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。
【0031】
上記コアの硬度分布については、表面と中心との硬度差が大きいことがスピン性能の点から好ましく、具体的には、コアの表面と中心との硬度差がJIS-C硬度で13以上であることが好ましく、より好ましくは20以上、さらに好ましくは25以上であり、上限としては、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは40以下である。上記硬度差の値が小さすぎると、ドライバー(W#1)打撃時の低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなることがある。一方、上記硬度差の値が大きすぎると、ゴルフボールを実打したときのボール初速が低くなり飛距離が出なくなり、または、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。ここで、上記の中心硬度とは、コアを半分に(中心を通るように)切断して得た断面の中心において測定される硬度を意味し、表面硬度は上記コアの表面(球面)において測定される硬度を意味する。また、JIS-C硬度とは、JIS K 6301-1975に規定するスプリング式硬度計(JIS-C形)で測定された硬度を意味する。
【0032】
コアの直径としては、特に制限はなく製造するゴルフボールの層構造にも依るが、好ましくは30mm以上、より好ましくは35mm以上であり、上限として、好ましくは41mm以下、より好ましくは40mm以下である。コアの直径がこの範囲を逸脱すると、ボールの初速が低くなり、あるいは適切なスピン特性を得られない場合がある。
【0033】
本発明では、コアの最外層の表面部位をFT-IRのATR法に基づく赤外吸収スペクトルを測定したとき、上記表面部位の全部又は一部については、波数1700±40cm-1付近の吸光度ピークの高さA(カルボン酸由来の吸光度ピークの高さ)と、波数1550±40cm-1付近の吸光度ピークの高さB(カルボン酸金属塩由来の吸光度ピークの高さ)としたとき、A/(A+B)で表される値が0.4以上であることが好ましく、より好ましくは0.5以上であり、更に好ましくは0.6以上である。この値が0.4未満であると、即ち、カルボン酸由来の吸光度ピークの高さが相対的に低くなり、コアを直接被覆する包囲層との密着性が悪くなる。
【0034】
上記のFT-IRのATR法の測定方法については、JIS K0117(2000)に準じて行うことができる。
【0035】
上記のA/(A+B)で表される値を0.4以上とするためには、特に制限されるものではないが、例えば、コアの最外層の表面を、酸含有溶液により接触させて該最外層の表面処理を行うことが好適に採用される。通常、コア用ゴム組成物の加熱成形後は、アクリル酸亜鉛等の共架橋剤の配合により不飽和カルボン酸は金属イオンにより中和されており、フリーな不飽和カルボン酸の含有率は多くない。コアの最表層表面に酸含有溶液を接触させることで表面部のみ脱メタル化した十分な量のカルボキシル基が生じ、隣接する包囲層に含まれる酸基を中和する金属イオンとの間で新たな化学的結合が生じることにより、未処理と比較して密着性が向上すると考えられる。
【0036】
図1は、コアの表面部位の赤外吸収スペクトルのチャートが表面処理により変化する事例を示すものである。カルボン酸由来の吸光度ピークを示す波数1700±40cm
-1付近の吸光度ピークの高さA’は、コアの表面処理した後は増加しており、吸光度ピーク高さAの位置に変化する。一方、カルボン酸金属塩由来の吸光度ピークを示す波数1550±40cm
-1付近の吸光度ピークの高さB’は、コアの表面処理した後は減少しており、吸光度ピーク高さBの位置に変化することが分かる。
【0037】
ここで、酸処理に用いる酸は、コア最表層表面のα,β-不飽和カルボン酸金属塩の金属イオンを脱離し、カルボン酸をプロトン化させ得る酸であれば特に制限は無いが、例えば塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。特に作業性の観点から、塩酸が好適に用いられる。使用する際の酸濃度についても特に制限は無いが、酸濃度が好ましくは0.05mol/L以上、より好ましくは0.1mol/L以上であり、上限値としては、好ましくは10mol/L以下、より好ましくは5mol/L以下、さらに好ましくは3mol/L以下、最も好ましくは1mol/L以下である。酸濃度が低すぎると、コア表面と包囲層との密着性改良効果が見られない場合がある。酸濃度が高すぎと、コア表面物性の改質よりボール特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0038】
また、上記の酸含有溶液については、アルコール類を含有する溶液とすることが、コア材料であるゴムや樹脂の内部まで酸が浸透して親和性が高まる点から好適である。その結果、酸処理によるコア表面の金属塩の脱メタル処理が迅速に進行させることができる。上記アルコール類として具体的には、エタノールや2-プロパノール等の炭素数4以下のアルコール(低級アルコール)を用いることが好適である。
【0039】
酸処理の方法としては、例えば、コアの最外層の表面部位に対して、浸漬法、塗装法(スプレー法)、熱や圧力を掛けた浸透法、滴下法などを好適に採用することができ、特に、浸漬法が好適に採用される。例えば上記コアを酸含有溶液に浸漬させた場合、1~60分間、特に1~10分間の浸漬時間で浸漬することができる。
【0040】
なお、上記酸処理の温度は10~30℃、特に20~25℃とすることができるが、通常、室温又は雰囲気温度で十分である。上記のように、酸処理(酸洗浄)した後は、十分に水洗し、酸が表面に残らないように洗浄を行うことができる。水洗方法としては特に制限されないが、例えば大量の水での洗浄等の方法を採用し得る。
【0041】
また、上記酸処理の前には、コアの最外層の表面を研磨することが好ましい。研磨方法としては、例えばダイヤモンドホイール内でのランダム回転による方法、ダイヤモンドペーパーを用いた方法、サンドブラスト法等が挙げられる。
【0042】
本発明のゴルフボールは、上記コアを直接被覆する包囲層を具備する。この包囲層は、カバーの全部または一部を構成するものである。即ち、カバーが単層の場合は、この包囲層(カバー層)がゴルフボールの層構造のうちの最外層となり、カバーが複数層の場合は、この包囲層の外側に更に1層又は複数層の別のカバー層が形成される。
【0043】
上記包囲層は、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位を構成に含む熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により形成される。
【0044】
α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位を構成に含む熱可塑性樹脂としては、特に制限はないが、具体的には、(a)エチレン-α,β不飽和カルボン酸共重合体及び/又はその金属塩、あるいは(b)エチレン-α,β不飽和カルボン酸-α,β不飽和カルボン酸エステル共重合体及び/又はその金属塩の(a)及び(b)成分のいずれかを含むものであることが好適である。
【0045】
上記(a)及び(b)成分のα,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特に、アクリル酸、メタクリル酸であることが好ましい。また、上記(b)成分のα,β-不飽和カルボン酸エステルとしては、上記の不飽和カルボン酸の低級アルキルエステルが好適であり、具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等を挙げることができ、特にアクリル酸ブチル(n-アクリル酸ブチル、i-アクリル酸ブチル)であることが好ましい。
【0046】
上記(a)及び(b)成分の上記共重合体の金属イオン中和物は、上記オレフィン-不飽和カルボン酸(-不飽和カルボン酸エステル)共重合体の酸基を部分的に金属イオンで中和することによって得ることができる。酸基を中和する金属イオンとしては、例えば、Na+、K+、Li+、Zn++、Cu++、Mg++、Ca++、Co++、Ni++、Pb++等が挙げられ、特に、Na+、Li+、Zn++、Mg++、Ca++等が好適に用いられる。このような中和物は公知の方法で得ることができ、例えば、上記共重合体に対して、上記金属イオンのギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物、水酸化物及びアルコキシド等の化合物を使用して中和物を得ることができる。
【0047】
上記(a)及び(b)成分としては、公知のものを用いることができる。例えば、市販品としては、酸共重合体として、ニュクレルN1560、同N1214、同N1035、同AN4221C、同AN4311、同AN4318、同AN4319(いずれも三井・ダウポリケミカル社製)等を挙げることができる。また、酸共重合体の金属イオン中和物として、例えば、ハイミラン1554、同1557、同1601、同1605、同1706、同AM7311、同1855、同1856、同AM7316(いずれも三井・ダウポリケミカル社製)、サーリン7930、同6320、同8320、同9320、同8120(DuPont社製)等をそれぞれ挙げることができる。
【0048】
また、上記包囲層の樹脂組成物は、上述したα,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位を構成に含む熱可塑性樹脂以外の公知の樹脂や各種の添加材を適宜配合することができる。
【0049】
カバーが複数層の場合は、この包囲層の外側に更に1層又は複数層の別のカバー層が形成されることとなるが、このカバー層の材料としては、アイオノマーや熱可塑性ポリウレタンエラストマー等の公知の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーを主材として用いることができる。
【0050】
本発明におけるカバー各層(包囲層及び該包囲層以外の別カバー層)を得るには、例えば、ボールの種類に応じて予め作製した単層又は2層以上の多層コアを金型内に配備し、上記混合物を加熱混合溶融し、射出成形することにより、コアの周囲に所望のカバー各層を被覆する方法等を採用できる。また、カバー各層の形成方法は、上記のほかに、例えば、カバー材により予め一対の半球状のハーフカップを成形し、このハーフカップでコアを包んで120~170℃、1~5分間、加圧成形する方法などを採用することもできる。
【0051】
上記カバーが1層の場合、即ち、カバーが包囲層のみの場合、その厚さは0.3~3mmとすることができる。上記カバーが2層の場合、包囲層の外側のカバー層(最外層)の厚さは0.3~2.0mmであり、包囲層(内側カバー層)の厚さは0.3~2.0mmの範囲とすることができる。また、上記カバーを構成する各層(カバー層)のショアD硬度は、特に制限はないが、40以上とすることが好ましく、より好ましくは45以上であり、上限としては、好ましくは70以下、より好ましくは65以下である。
【0052】
なお、上記カバーの最外層の表面には、多数のディンプルが形成されるものであり、更にカバー最外層の表面には下地処理、スタンプ、塗装等種々の処理を行うことができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0054】
〔実施例1~5,比較例1~4〕
下記表1に示す3種類(X,Y,Z)のポリブタジエンを主成分とするコア材料を用い、表1に示すゴム配合によりコア組成物を調製した後、155℃で20分間加硫を行い、コア表面の研磨工程を経て、直径38.6mmのコアを作製した。
【0055】
【0056】
上記の配合についての詳細は下記のとおりである。
・ポリブタジエンゴム:商品名「BR01」(JSR社製)
・アクリル酸亜鉛:商品名「ZN-DA85S」(85%アクリル酸亜鉛/15%ステアリン酸亜鉛)、日本触媒社製
・有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド):商品名「パークミルD」(日油社製)
・酸化亜鉛:商品名「三種酸化亜鉛」(堺化学社製)
・プロピレングリコール(2価アルコール):分子量76.1(林純薬工業社製)
・水:蒸留水
・老化防止剤(1):商品名「ノクラックNS-6」(大内新興化学工業社製)
・老化防止剤(2):商品名「ノクラックMB」(大内新興化学工業社製)
【0057】
コアの中心及び表面硬度
上記3種類の直径38.6mmのコアについて、下記の方法により、表面硬度及び中心硬度を測定した。
23±1℃の温度で、球状のコアの表面部分に硬度計の針を垂直になるようにセットし、JIS-C硬度により、コアの表面の4点をランダムに測定し、その平均値を1個のボールの測定値とし、測定個数3個のコアの平均値を求めた。また、断面がコアの中心を通るようにコアを平面状にカットして、23±1℃の温度で、上記平断面に硬度計の針を垂直になるようにセットし、JIS-C硬度計により、半球コアの中心硬度を測定し、1個のボールの測定値とし、測定個数3個のコアの平均値を求めた。その測定値を表1に記載する。
【0058】
コアの圧縮硬度
各例のコアを、23±1℃の温度で、10mm/sの速度で圧縮し、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)に負荷した時までのコアの圧縮硬度(変形量)(mm)を計測し、測定個数10個の平均値を求めた。
【0059】
コアの表面処理
上記の3種類のコアに対して、下記の(1)~(5)の5種類の表面処理を行った。
・コア表面処理(1) ・・・ 研磨後のコアを水で洗浄
・コア表面処理(2) ・・・ 研磨後のコアをエタノール溶液で洗浄
・コア表面処理(3) ・・・ 研磨後のコアを0.1mol/Lの塩酸水溶液に23℃,3分の条件で浸漬し、その後、浸漬したコアをエタノール溶液で洗浄
・コア表面処理(4) ・・・ 研磨後のコアを1mol/Lの2-プロパノール性塩酸処理液に23℃,3分の条件で浸漬し、その後、浸漬したコアをエタノール溶液で洗浄
・コア表面処理(5) ・・・ 研磨後のコアを0.1mol/Lの2-プロパノール性塩酸処理液に23℃,3分の条件で浸漬し、その後、浸漬したコアをエタノール溶液で洗浄
【0060】
FT-IR吸光度
得られた実施例及び比較例の各ゴルフボールについて、上記表面処理(1)~(5)を施したコアの表面部について、コアの断面を切り出して、該コアの表面部位の、FT-IRのATR法で測定される赤外吸収スペクトルチャート(吸光度表示)を得た。
また、FT-IRの分析機器は、フーリエ変換赤外分光光度計「Perkin Elmer Spectrum 100/ユニバーサルATR(ダイヤモンド/ZnSe)」(Perkin Elmer社製)を使用し、下記条件に従って試料を測定した。
・測定方法 :全反射法(ATR法:Attenuated total reflection)
・分解能 :4cm-1
・積算回数 :4回
・測定波数範囲:4000cm-1~650cm-1
・測定箇所 :コア表面部位
・データ処理ソフト :PerkinElmer software package/Spectrum Version 6.3.4.0164
【0061】
包囲層及び最外層の形成
次に、射出成形用金型を用いて、上記のコア表面の周囲に、表2に示す包囲層の材料(アイオノマー樹脂材料)を射出成形し、厚さ1.25mm、ショアD硬度64の包囲層を形成した。次いで、別の射出成形用金型を用いて、上記の包囲層被覆球体の周囲に、表2に示す最外層材料(ウレタン樹脂材料)を射出成形し、厚さ0.8mm、ショアD硬度41の最外層を形成した。
【0062】
【0063】
上記表中の配合成分の詳細は下記のとおりである。
・「ハイミラン1706」、「ハイミラン1557」及び「ハイミラン1605」:三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー樹脂
・「TPU」:ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」、エーテルタイプの熱可塑性ポリウレタン「ショアD硬度41」
・「ポリエチレンワックス」:商品名「サンワックス161P」(三洋化成社製)
・イソシアネート化合物:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
【0064】
得られたゴルフボールについて、圧縮硬度及び割れ耐久性を下記方法で評価した。その結果を表3に示す。すべてのボール圧縮硬度及び割れ耐久性については、上記各例のボール製品完成後に23℃で1か月放置後に測定した。
【0065】
圧縮硬度
各例のゴルフボールを、23±1℃の温度で、10mm/sの速度で圧縮し、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)に負荷した時までのゴルフボールの圧縮硬度(変形量)(mm)を計測し、測定個数10個の平均値を求めた。
【0066】
割れ耐久性
米国Automated Design Corporation製のADC Ball COR Durability Testerにより、ボールの耐久性を評価した。この試験機は、ゴルフボールを空気圧で発射させた後、平行に設置した2枚の金属板に連続的に衝突させる機能を有する。金属板への入射速度は43m/sとした。ゴルフボールが割れるまでに要した発射回数を測定し、ゴルフボール10個の測定値の平均値を算出した。比較例1のボールが割れた平均回数を100(基準値)とした場合の指数を求め、表3に記載した。
【0067】