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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ポンプシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20240509BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20240509BHJP
   F04B 49/10 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
A61M5/142 530
A61M5/145 508
F04B49/10 311
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019230674
(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公開番号】P2021097832
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹▲崎▼ 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】羽畑 元晴
(72)【発明者】
【氏名】登川 哲哉
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/152294(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/187690(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/116864(WO,A1)
【文献】特開2012-090965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/145
F04B 49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポンプと、
前記第1のポンプとは異なる第2のポンプとを備える、ポンプシステムであって、
前記第1のポンプと前記第2のポンプとの各々は、液体が充填されている容器から前記液体を送出させ、
前記ポンプシステムを制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1のポンプによる前記液体の送出を停止した後に前記第2のポンプによる前記液体の送出を開始した場合に、前記第1のポンプにおいて前記容器が交換されたことを示す信号の入力を受けた後に、前記第2のポンプによる前記液体の送出を停止した後に前記第1のポンプによる前記液体の送出を開始する、ポンプシステム。
【請求項2】
前記第1のポンプと前記第2のポンプとの各々は、前記容器の取り付け状態を検知する検知部を有し、
前記制御部は、前記第1のポンプから前記容器が取り外され、新たに前記第1のポンプに前記容器が取り付けられたことを示す検知信号の入力を前記第1のポンプの前記検知部から受けた後に、前記第1のポンプによる前記液体の送出を開始する、請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項3】
前記検知部は、前記第1のポンプに取り付けられた前記容器の適否を検知する、請求項2に記載のポンプシステム。
【請求項4】
前記容器は、前記容器に関する情報を記憶する記憶部を有し、
前記第1のポンプと前記第2のポンプとの各々は、前記記憶部に記憶された前記情報を読み取る読取部を有し、
前記制御部は、前記第1のポンプに取り付けられた前記容器についての読み取り結果の入力を前記第1のポンプの前記読取部から受け、前記第1のポンプに取り付けられた前記容器が未使用であるか否かを判断し、前記第1のポンプに取り付けられた前記容器が未使用であると判断された場合に前記第1のポンプによる前記液体の送出を開始する、請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項5】
前記記憶部は、前記容器に充填されている前記液体に関する情報を記憶し、
前記制御部は、前記第1のポンプに取り付けられた前記容器に充填されている前記液体が使用可能か否かを判断する、請求項4に記載のポンプシステム。
【請求項6】
前記読取部は、前記記憶部に記憶された前記情報を更新可能である、請求項4または請求項5に記載のポンプシステム。
【請求項7】
前記第1のポンプにおいて前記容器が未交換であることを報知する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2016/152294号(特許文献1)には、順次の駆動によって薬剤の連続投与を実施するための2台の医療用ポンプを備える、医療用ポンプシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/152294号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薬液を投与するときに、2台のポンプを交互に切り替えて送液し続けることで、間隔を空けることなく薬液を連続投与することができる。この連続投与を確実に実現するには、1台目のポンプから2台目のポンプへと切り替えた後に、1台目のポンプの薬液容器を交換し、2台目のポンプから1台目のポンプへの再度の切替に備えることが求められる。薬液容器が未交換のまま1台目のポンプへ切り替えられると、投与される薬液が不足する可能性がある。
【0005】
本開示では、液体を連続して供給できる、ポンプシステムが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うと、第1のポンプと、第1のポンプとは異なる第2のポンプとを備える、ポンプシステムが提供される。第1のポンプと第2のポンプとの各々は、液体が充填されている容器から液体を送出させる。ポンプシステムは、ポンプシステムを制御する制御部をさらに備えている。制御部は、第1のポンプによる液体の送出を停止し第2のポンプによる液体の送出を開始した場合に、第1のポンプにおいて容器が交換されたことを示す信号の入力を受けた後に、第1のポンプによる液体の送出を開始する。
【0007】
上記のポンプシステムにおいて、第1のポンプと第2のポンプとの各々は、容器の取り付け状態を検知する検知部を有し、制御部は、第1のポンプから容器が取り外され、新たに第1のポンプに容器が取り付けられたことを示す検知信号の入力を第1のポンプの検知部から受けた後に、第1のポンプによる液体の送出を開始してもよい。
【0008】
上記のポンプシステムにおいて、検知部は、第1のポンプに取り付けられた容器の適否を検知してもよい。
【0009】
上記のポンプシステムにおいて、容器は、容器に関する情報を記憶する記憶部を有し、第1のポンプと第2のポンプとの各々は、記憶部に記憶された情報を読み取る読取部を有し、制御部は、第1のポンプに取り付けられた容器についての読み取り結果の入力を第1のポンプの読取部から受け、第1のポンプに取り付けられた容器が未使用であるか否かを判断し、第1のポンプに取り付けられた容器が未使用であると判断された場合に第1のポンプによる液体の送出を開始してもよい。
【0010】
上記のポンプシステムにおいて、記憶部は、容器に充填されている液体に関する情報を記憶し、制御部は、第1のポンプに取り付けられた容器に充填されている液体が使用可能か否かを判断してもよい。
【0011】
上記のポンプシステムにおいて、読取部は、記憶部に記憶された情報を更新可能であってもよい。
【0012】
上記のポンプシステムは、第1のポンプにおいて容器が未交換であることを報知してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示に従ったポンプシステムは、液体を連続して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に基づくポンプシステムの概略構成を示す正面図である。
図2】ポンプシステムに含まれるシリンジポンプと、シリンジポンプに装着されるシリンジとの各々の外観を示す斜視図である。
図3図2のシリンジポンプを矢印III方向から見た図である。
図4図2のシリンジポンプを矢印IV方向から見た図である。
図5図2のシリンジポンプを矢印V方向から見た図である。
図6】シリンジポンプにおいて、バレル保持部を上方に回動させた状態を示す部分斜視図である。
図7】シリンジポンプにおいて、バレル受け部にシリンジのバレルを載置した状態を示す部分斜視図である。
図8】シリンジポンプにおいて、第2フランジが可動爪部に保持された状態を示す部分斜視図である。
図9】シリンジポンプにおいて、バレル保持部を下方に回動させた状態を示す部分斜視図である。
図10】ポンプシステムの電気的構成を示すブロック図である。
図11】2台のシリンジポンプの連携動作を説明するための図である。
図12】ポンプシステムによる薬液の連続投与を実施するための制御手順を示すフローチャートである。
図13】シリンジ交換および送液可否判断の処理の詳細を示すフローチャートである。
図14】操作忘れ報知の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0016】
図1は、実施形態に基づくポンプシステム200の概略構成を示す正面図である。図1に示されるように、ポンプシステム200は、複数のシリンジポンプ100を備えている。図1に示されるポンプシステム200は、6台のシリンジポンプ100を備えている。ポンプシステム200に含まれるシリンジポンプ100の個数は、6台に限られない。ポンプシステム200は、2台以上5台以下のシリンジポンプ100を備えていてもよく、7台以上のシリンジポンプ100を備えていてもよい。
【0017】
複数のシリンジポンプ100は、第1のシリンジポンプ100A(以下、単にシリンジポンプ100Aと称する)と、シリンジポンプ100Aとは異なる第2のシリンジポンプ100B(以下、単にシリンジポンプ100Bと称する)とを含んでいる。図1に示される6台のシリンジポンプ100のうち、シリンジポンプ100Aが一番上に配置され、シリンジポンプ100Bが上から二番目に配置されている。シリンジポンプ100A,100Bは、図1に示される配置に限られず、任意の位置に配置されてもよい。
【0018】
ポンプシステム200は、複数のシリンジポンプ100を搭載するための搭載台210を備えている。搭載台210は、複数個の、典型的にはシリンジポンプ100の個数と同数の搭載部211を有している。搭載部211は、たとえば、略水平に延びる平板形状を有している。複数のシリンジポンプ100の各々は、搭載部211上に載せ置かれて搭載部211に取り付けられることにより、搭載台210に搭載される。複数の搭載台210の全てにシリンジポンプ100が搭載されていなくてもよい。
【0019】
ポンプシステム200は、通信制御部250を備えている。通信制御部250は、複数のシリンジポンプ100間の通信を仲介する。通信制御部250は、シリンジポンプ100Aとシリンジポンプ100Bとの間の通信を仲介する。通信制御部250は、シリンジポンプ100と外部との通信を仲介する。通信制御部250は、搭載台210に搭載されている。図1に示される通信制御部250は、搭載台210の下部に搭載されており、6台のシリンジポンプ100よりも下方に配置されている。通信制御部250は、図1に示される配置に限られず、任意の位置に配置されてもよい。
【0020】
搭載台210は、搭載台210の移動を容易にするための構成、たとえば持ち手または車輪などを有していてもよい。搭載台210は、たとえば搭載台210の上部に、ディスプレイを有していてもよい。
【0021】
図2は、ポンプシステム200に含まれるシリンジポンプ100と、シリンジポンプ100に装着されるシリンジ10との各々の外観を示す斜視図である。図3は、図2のシリンジポンプ100を矢印III方向から見た図である。図4は、図2のシリンジポンプ100を矢印IV方向から見た図である。図5は、図2のシリンジポンプ100を矢印V方向から見た図である。
【0022】
図2に示すように、シリンジポンプ100は、シリンジ10に適用されるシリンジポンプである。シリンジ10は、バレル20およびプランジャロッド30を含む。
【0023】
バレル20は、略円筒状の外形を有している。バレル20の先端に注液口22が設けられている。バレル20の後端に第1フランジ21が設けられている。バレル20の表面に、応答部40が設けられている。バレル20は、ポリプロピレンなどの透明または半透明の樹脂にて構成されている。バレル20の内周面に、シリコーンオイルなどの潤滑油が塗布されていてもよい。バレル20の内側に、薬液が充填される。
【0024】
応答部40は、バレル20の外周面に貼り付けられているRFID(Radio Frequency Identification)タグにより構成されている。RFIDタグは、回路チップと、回路チップに結線されたシート状のループアンテナとを有しており、回路チップに記録されているデータをループアンテナの電磁誘導により無線送信する。
【0025】
回路チップに記録されているデータとしては、バレル20およびプランジャロッド30の各々に関する情報、バレル20に充填される薬液に関する情報、および、薬液の投与条件に関する情報などが含まれている。
【0026】
プランジャロッド30は、バレル20の内側に嵌入され、後端に第2フランジ31を有する。プランジャロッド30の先端側には、バレル20の内周面と摺接するガスケット部32が設けられている。ガスケット部32は、加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマなどの弾性体で構成されている。プランジャロッド30におけるガスケット部32以外の部分は、ポリプロピレンなどの樹脂にて構成されている。
【0027】
図2図5に示すように、シリンジポンプ100は、バレル受け部110と、溝部111と、駆動部120とを備える。
【0028】
バレル受け部110には、バレル20が載置される。バレル受け部110は、バレル20の外周面の下側部分と接する凹面部を有している。溝部111は、バレル受け部110の後端に設けられている。溝部111には、第1フランジ21が挿入される。バレル受け部110および溝部111は、一体成形によって形成されている。
【0029】
バレル受け部110の内側に、読取書込部160が設けられている。読取書込部160は、バレル受け部110に載置されたバレル20の応答部40に対して電磁波を発信可能であるとともに、発信された電磁波に応答して応答部40から送信されるデータを受信可能である。
【0030】
読取書込部160は、シート状のループアンテナを有している。読取書込部160は、読取書込部160の厚み方向の一方側に向かって指向性を有する電磁波を発信する。よって、応答部40と読取書込部160とが対向するように、バレル受け部110にバレル20が載置される。読取書込部160の厚み方向の他方側は、電磁波を遮蔽可能な遮蔽部材で覆われている。読取書込部160は、応答部40から送信されるデータを電磁誘導により無線受信する。
【0031】
読取書込部160は、バレル20の応答部とデータ通信を行なう。読取書込部160は、応答部40に記憶された、シリンジ10に関する情報を読み取る。シリンジ10に関する情報は、バレル20およびプランジャロッド30の形状に関する情報を含み、バレル20内に充填されている薬剤に関する情報を含む。読取書込部160は、応答部40への情報の書き込みを行なう。読取書込部160は、応答部40に、新たに情報を追記する。読取書込部160は、応答部40に既に記憶されている情報を、最新の情報に上書き更新する。
【0032】
駆動部120は、押圧面121と、可動爪部122とを有している。押圧面121は、第2フランジ31を押圧する。可動爪部122は、第2フランジ31を押圧面121と挟持して保持する。可動爪部122は、ばねなどの付勢機構により押圧面121に接近する方向に付勢されている。駆動部120は、プランジャロッド30を駆動する。駆動部120は、プランジャロッド30を移動可能に保持する。駆動部120によって駆動されたプランジャロッド30が、バレル20内においてバレル20の軸方向にバレル20に向かって移動する。これにより、バレル20内の薬液がバレル20から送出されて、注液口22からチューブ内に注入される。
【0033】
駆動部120は、クラッチレバー123をさらに有している。クラッチレバー123は、プランジャロッド30を着脱する際に、プランジャロッド30の延在方向における、駆動部120自体の位置および可動爪部122の位置を、手動で調整するための構成である。具体的には、クラッチレバー123を一方向に回動させることにより、駆動部120は手動で移動することが規制されるロック状態になるとともに、可動爪部122は押圧面121側に付勢された状態で維持される。クラッチレバー123を他方向に回動させることにより、駆動部120はアンロック状態になるとともに、可動爪部122は付勢力に抗して押圧面121から離れるように移動する。
【0034】
駆動部120の構成は上記に限られない。駆動部120は、第2フランジ31を押圧する押圧面121、および、第2フランジ31を押圧面121との間に収容する固定爪部を有していてもよい。
【0035】
シリンジポンプ100は、バレル保持部112をさらに備えている。バレル保持部112は、バレル受け部110の上方において上下方向に回動するように回動軸113に接続されている。バレル保持部112は、回動して下りた状態において、バレル受け部110に載置されているバレル20を保持する。バレル保持部112は、必ずしも設けられていなくてもよい。読取書込部160が、バレル受け部110の内側ではなく、バレル保持部112の内周側に設けられていてもよい。
【0036】
図1に示される複数のシリンジポンプ100のうち、シリンジポンプ100A,100Bが連携動作して、薬液を連続注入する。シリンジポンプ100Aに取り付けられるシリンジ10の注液口22に接続されるチューブと、シリンジポンプ100Bに取り付けられるシリンジ10の注液口22に接続されるチューブとは、たとえば図示しない三方活栓またはY字管などを介して、接続されている。シリンジポンプ100Aによってシリンジ10から送出される薬液と、シリンジポンプ100Bによってシリンジ10から送出される薬剤とは、患者に投与される前に、合流する。
【0037】
シリンジポンプ100にシリンジ10を取り付ける際の動作について説明する。図6は、シリンジポンプ100において、バレル保持部112を上方に回動させた状態を示す部分斜視図である。シリンジポンプ100にシリンジ10を取り付ける際には、図6に示すように、まず、バレル保持部112を上方に回動させる。
【0038】
図7は、シリンジポンプ100において、バレル受け部110にシリンジ10のバレル20を載置した状態を示す部分斜視図である。図7に示すように、溝部111に第1フランジ21を挿入するとともに、バレル受け部110にバレル20を載置する。
【0039】
図8は、シリンジポンプ100において、第2フランジ31が可動爪部122に保持された状態を示す部分斜視図である。図8に示すように、クラッチレバー123を他方向に回動させて、駆動部120のロックを解除するとともに、可動爪部122を押圧面121から離れさせる。その状態で、押圧面121が第2フランジ31に接触するように駆動部120を手動で移動させつつ、第2フランジ31を押圧面121と可動爪部122との間に挿入する。
【0040】
次に、クラッチレバー123を一方向に回動させて戻すことにより、第2フランジ31を押圧面121と可動爪部122とによって挟持して保持する。クラッチレバー123を一方向に回動させることにより、駆動部120は、手動で移動しないようにロックされる。
【0041】
図9は、シリンジポンプ100において、バレル保持部112を下方に回動させた状態を示す部分斜視図である。図9に示すように、バレル保持部112を下方に回動させることにより、バレル受け部110に載置されているバレル20が、バレル保持部112によって保持される。このようにして、シリンジポンプ100にシリンジ10が取り付けられる。
【0042】
図10は、ポンプシステム200の電気的構成を示すブロック図である。図10に示されるように、各々のシリンジポンプ100(100A,100B)は、第1検知部130と、第2検知部140と、第3検知部170と、第4検知部190と、個別制御部150と、読取書込部160と、操作パネル180と、駆動部120とを備えている。個別制御部150は、第1検知部130、第2検知部140、第3検知部170、第4検知部190、読取書込部160、操作パネル180および駆動部120の各々と、電気的に接続されている。
【0043】
図3,6に示されるように、第1検知部130は、バレル受け部110の上面の、バレル保持部112に対して下方の位置に設けられている。第1検知部130は、既定のサイズのバレル20がバレル受け部110に装着されていることを検知する。具体的には、第1検知部130は、バレル20によって押圧される押圧センサで構成されている。
【0044】
図7に示される、バレル受け部110にシリンジ10のバレル20を載置した状態で、第1検知部130は、押圧センサが完全に押圧されることにより、既定のサイズのバレル20がバレル受け部110に載置されたことを検知する。図10に示されるように、第1検知部130の検知信号は、個別制御部150に入力される。
【0045】
第1検知部130は、バレル20が不十分な状態でバレル受け部110に載置され、バレル20が押圧センサを全く押圧していない状態では、検知信号を出力しない。第1検知部130は、バレル20が押圧センサを不完全に押圧している状態では、設定条件を満たしていない不完全押圧であることを示す検知信号を出力する。第1検知部130が検知信号を出力しない場合、および、不完全押圧であることを示す検知信号を出力した場合、シリンジポンプ100に予め設定されたシリンジ10とは異なるシリンジが装着されている可能性、および、バレル20がバレル受け部110に正常な状態で保持されていない可能性がある。
【0046】
第1検知部130は、押圧センサが完全に押圧されたときのみ検知信号を出力するように構成されていてもよい。この場合は、第1検知部130が検知信号を出力した場合は、既定のサイズのバレル20がバレル受け部110に装着されていることになる。
【0047】
第1検知部130は、バレル20がバレル受け部110に載置されたことを検知できる構成であればよく、押圧センサ以外のセンサで構成されていてもよい。たとえば、第1検知部130は、バレル保持部112の回動角度α(図9)を検知可能なセンサ、具体的には回動軸113に取り付けられたエンコーダで構成されていてもよい。この場合、バレル保持部112の回動角度の検知信号の入力を受けた個別制御部150は、バレル20の外径に対応してバレル保持部112の回動角度に関して予め設定された閾値と、バレル保持部112の回動角度とを比較することにより、既定のサイズのバレル20がバレル受け部110に装着されているか否かを判断する。
【0048】
図3に示されるように、第2検知部140は、押圧面121と可動爪部122との間の位置に設けられている。第2検知部140は、押圧面121と可動爪部122との第2フランジ31の挟持間隔を検知する。具体的には、第2検知部140は、第2フランジ31によって押圧されたことを検知可能な押圧センサと、押圧面121と可動爪部122との第2フランジ31の挟持間隔D(図8)を検知可能な測位機構とを含んでいる。
【0049】
測位機構は、たとえば、可変抵抗部、リミットスイッチまたは光電センサなどを用いることにより、押圧面121に対する可動爪部122のスライド量を検知可能な機構で構成されている。
【0050】
図10に示されるように、第2検知部140の検知信号は、個別制御部150に入力される。押圧面121と可動爪部122との挟持間隔Dに関する第1閾値および第2閾値が、第2フランジ31の厚さに対応して予め各々設定されている。設定された第1閾値および第2閾値の各々は、個別制御部150に記憶されている。個別制御部150は、挟持間隔Dが第1閾値以上第2閾値以下である場合に、第2検知部140からの検知信号が設定条件を満たしていると判断する。
【0051】
挟持間隔Dが第1閾値未満である場合、および、挟持間隔Dが第2閾値より大きい場合、シリンジポンプ100に予め設定されたシリンジ10とは異なるシリンジが装着されている可能性、および、第2フランジ31が可動爪部122に正常な状態で保持されていない可能性がある。
【0052】
第3検知部170は、バレル20の後端の第1フランジ21が挿入される溝部111に設けられている。第3検知部170は、第1フランジ21によって押圧されたことを検知可能な押圧センサで構成されている。第3検知部170は、溝部111に第1フランジ21が挿入された際に、第1フランジ21によって押圧センサが完全に押圧されることにより、第1フランジ21が溝部111に装着されたことを検知する。第3検知部170の検知信号は、個別制御部150に入力される。
【0053】
第3検知部170は、バレル20が不十分な状態でシリンジポンプ100に取り付けられ、第1フランジ21が押圧センサを全く押圧していない状態では、検知信号を出力しない。第3検知部170は、第1フランジ21が押圧センサを不完全に押圧している状態では、設定条件を満たしていない不完全押圧であることを示す検知信号を出力する。第3検知部170が検知信号を出力しない場合、および、不完全押圧であることを示す検知信号を出力した場合、シリンジポンプ100に予め設定されたシリンジ10とは異なるシリンジが装着されている可能性、および、第1フランジ21が溝部111に正常な状態で収容されていない可能性がある。
【0054】
第3検知部170は、押圧センサが完全に押圧されたときのみ検知信号を出力するように構成されていてもよい。この場合は、第3検知部170が検知信号を出力した場合は、既定のサイズのバレル20がバレル受け部110に装着されていることになる。
【0055】
第4検知部190は、クラッチレバー123の状態を検知する。第4検知部190はたとえば、クラッチレバー123の回動軸に取り付けられた回転角センサ、たとえばエンコーダで構成されていてもよい。第4検知部190は、クラッチレバー123が一方向に回動されており、第2フランジ31が押圧面121と可動爪部122とによって挟持されるとともに駆動部120がロックされている状態か、または、クラッチレバー123が他方向に回動されており、可動爪部122が押圧面121から離れるとともに駆動部120のロックが解除されている状態か、を検知する。第4検知部190の検知信号は、個別制御部150に入力される。
【0056】
第4検知部190は、エンコーダに代表される回転角センサ以外のセンサで構成されていてもよい。たとえば第4検知部190は、クラッチレバー123が一方向に回動された位置とクラッチレバー123が他方向に回動された位置とに設けられた近接センサで構成され、近接センサがクラッチレバー123を検知することによりクラッチレバー123の状態を検知してもよい。
【0057】
第1検知部130、第2検知部140、第3検知部170および第4検知部190は、シリンジポンプ100へのシリンジ10の取り付け状態を検知する検知部を構成している。検知部は、シリンジ10がシリンジポンプ100に取り付けられたことを検知する。検知部は、シリンジ10がシリンジポンプ100から取り外されたことを検知する。検知部は、適切なシリンジ10がシリンジポンプ100に取り付けられているか否かを検知する。検知部は、シリンジ10がシリンジポンプ100に適切に取り付けられているか否かを検知する。
【0058】
操作パネル180は、図2,3に示されるように、シリンジポンプ100に装着されるシリンジ10と平行に位置するように設けられている。操作パネル180は、表示部181および操作入力部182を含む。表示部181は、たとえば液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどの表示装置を含む。表示部181には、個別制御部150から入力された情報が表示される。操作入力部182にて設定された操作信号は、個別制御部150に入力される。
【0059】
読取書込部160からの電磁波の発信は、個別制御部150によって制御される。応答部40から送信されて読取書込部160が受信したデータは、個別制御部150に入力される。
【0060】
各シリンジポンプ100A,100Bの個別制御部150と、通信制御部250とは、電気的に接続されている。通信制御部250は、シリンジポンプ100Aとシリンジポンプ100Bとの間の通信を仲介する。通信制御部250は、ポンプシステム200に各種の動作を実行させるためのプログラムである運転モードを記憶するメモリを有している。メモリは、不揮発性であり、必要なデータを記憶する領域として設けられている。
【0061】
通信制御部250は、メモリに記憶されている運転モードを、各シリンジポンプ100A,100Bに送信する。各シリンジポンプ100A,100Bの個別制御部150は、受け取った運転モードを、運転モード設定の選択肢として表示部181に表示する。表示部181に表示された運転モードを作業者が選択することで、各シリンジポンプ100A,100Bの個別制御部150は、通信制御部250から受信した運転モードに従って、各シリンジポンプ100A,100Bを動作させることが可能である。
【0062】
図10には、複数のシリンジポンプ100のうち、シリンジポンプ100A,100Bが代表的に図示されているが、他のシリンジポンプ100もシリンジポンプ100A,100Bと同様の構成を有し、同様に通信制御部250から運転モードを受信可能である。
【0063】
図11は、2台のシリンジポンプ100A,100Bの連携動作を説明するための図である。図11に示されるグラフは、2台のシリンジポンプ100A,100Bのうち1台目に使用されるシリンジポンプ100Aの流量と、シリンジポンプ100Aに続いて2台目に使用されるシリンジポンプ100Bの流量とを経時的に示している。グラフの横軸は時間を示し、グラフの縦軸はポンプの流量を示す。
【0064】
ポンプシステム200は、2台のシリンジポンプ100A,100Bを使用して、シリンジ10のバレル20内に充填された薬液を連続投与する。図11に示されるように、投与が開始された直後の時刻0から時刻T1までの期間は、シリンジポンプ100Aの流量が基準流量V0であり、シリンジポンプ100Bの流量が0である。時刻T1から時刻T2までの期間は、シリンジポンプ100Aの流量が0であり、シリンジポンプ100Bの流量が基準流量V0である。時刻T2から時刻T3までの期間は、シリンジポンプ100Aの流量が基準流量V0であり、シリンジポンプ100Bの流量が0である。
【0065】
シリンジポンプ100Aとシリンジポンプ100Bとを交互に駆動させることで、時刻0から時刻T3までの期間において、ポンプシステム200からの薬液の合計流量が基準流量V0に保たれている。2台のシリンジポンプ100A,100Bを使って、シリンジポンプ100Aとシリンジポンプ100Bとを交互に切り替えて薬液を送液し続けることで、一定量の薬液を連続注入できる。シリンジポンプ100A,100Bに充填されている薬液は、基本的には同一の薬液である。
【0066】
以下、ポンプシステム200の動作について、特にシリンジポンプ100A,100Bの駆動を切り替えるときの動作に着目して説明する。図12は、ポンプシステム200による薬液の連続投与を実施するための制御手順を示すフローチャートである。図12に示される「ポンプA」とは、薬液の投与開始時に駆動されるシリンジポンプ100A(図11も併せて参照)を示し、「ポンプB」とはシリンジポンプ100Aに続いて駆動されるシリンジポンプ100Bを示す。
【0067】
ポンプシステム200による薬液の投与を開始する前に、シリンジポンプ100Aには未使用のシリンジ10が取り付けられ、シリンジポンプ100Bにも未使用のシリンジ10が取り付けられる。
【0068】
図12に示されるように、ステップS11において、シリンジポンプ100Aを駆動させて、シリンジポンプ100Aに取り付けられたシリンジ10からの薬液の送液が開始される。シリンジポンプ100Aの個別制御部150は、駆動部120を駆動させて、プランジャロッド30をバレル20に向かって移動させる。これによりバレル20内の薬液が、プランジャロッド30によって押し出されて、注液口22からバレル20外に送出される。
【0069】
シリンジポンプ100Aに取り付けられたシリンジ10が空になると、ステップS12において、シリンジポンプ100Aに取り付けられたシリンジ10からの薬液の送液が停止される。シリンジポンプ100Aの個別制御部150は、駆動部120を停止させる。これによりプランジャロッド30が停止し、シリンジポンプ100Aによるシリンジ10からの薬液の送出が停止される。
【0070】
シリンジポンプ100Aの個別制御部150は、通信制御部250に、シリンジポンプ100Aからの送液が停止したことと、宛先がシリンジポンプ100Bであることとを示す信号を、通信制御部250へ送信する。通信制御部250は、宛先として指定されたシリンジポンプ100Bへ、シリンジポンプ100Aからの送液が停止したことを示す信号を転送する。
【0071】
シリンジポンプ100Aに取り付けられたシリンジ10からの送液を停止した後、ステップS21において、シリンジポンプ100Bを駆動させて、シリンジポンプ100Bに取り付けられたシリンジ10からの薬液の送液が開始される。シリンジポンプ100Bの個別制御部150は、駆動部120を駆動させて、プランジャロッド30をバレル20に向かって移動させる。これによりバレル20内の薬液が、プランジャロッド30によって押し出されて、注液口22からバレル20外に送出される。
【0072】
シリンジポンプ100Bに取り付けられたシリンジ10が空になると、ステップS22において、シリンジポンプ100Bに取り付けられたシリンジ10からの薬液の送液が停止される。シリンジポンプ100Bの個別制御部150は、駆動部120を停止させる。これによりプランジャロッド30が停止し、シリンジポンプ100Bによるシリンジ10からの薬液の送液が停止される。
【0073】
シリンジポンプ100Bの個別制御部150は、通信制御部250に、シリンジポンプ100Bからの送液が停止したことと、宛先がシリンジポンプ100Aであることとを示す信号を、通信制御部250へ送信する。通信制御部250は、宛先として指定されたシリンジポンプ100Aへ、シリンジポンプ100Bからの送液が停止したことを示す信号を転送する。
【0074】
各シリンジポンプ100A,100Bの個別制御部150は、駆動部120の駆動状況、たとえば駆動部120の駆動時間もしくは駆動部120によって駆動されて移動するプランジャロッド30の移動距離を検出することで、シリンジ10が空になったことを判断できる。または、バレル20から送出された薬液の量を検出することで、個別制御部150はシリンジ10が空になったことを判断できる。
【0075】
ステップS21でシリンジポンプ100Bによる送液を開始してからステップS22でシリンジポンプ100Bによる送液を停止するまでの間の、シリンジポンプ100Aが停止している間に、ステップS13において、シリンジポンプ100Aのシリンジ10が交換される。ステップS14において、シリンジポンプ100Aに新たに取り付けられたシリンジ10からの薬液の送液の可否が判断される。これらの処理の詳細は後述する。
【0076】
ステップS14でシリンジポンプ100Aに取り付けられたシリンジ10からの送液が可能と判断された状態で、シリンジポンプ100Bに取り付けられたシリンジ10からの送液を停止(ステップS22)した後、ステップS15において、シリンジポンプ100Aを駆動させて、シリンジポンプ100Aに取り付けられたシリンジ10からの薬液の送液が開始される。シリンジポンプ100Aに取り付けられたシリンジ10が空になると、ステップS16において、シリンジポンプ100Aに取り付けられたシリンジ10からの薬液の送液が停止される。
【0077】
シリンジポンプ100Aによる送液を開始してから送液を停止するまでの間に、ステップS23において、シリンジポンプ100Bのシリンジ10が交換される。ステップS24において、シリンジポンプ100Bに新たに取り付けられたシリンジ10からの薬液の送液の可否が判断される。
【0078】
ステップS24でシリンジポンプ100Bに取り付けられたシリンジ10からの送液が可能と判断された状態で、シリンジポンプ100Aに取り付けられたシリンジ10からの送液を停止(ステップS16)した後、ステップS25において、シリンジポンプ100Bを駆動させて、シリンジポンプ100Bに取り付けられたシリンジ10からの薬液の送液が開始される。
【0079】
このように、シリンジポンプ100Aとシリンジポンプ100Bとが交互に駆動されることで、ポンプシステム200からの一定量の薬液の送液が継続される。2台のシリンジポンプ100A,100Bを連携させて動作させることで、シリンジポンプ100Aからの薬液の送液が終わった後に、送液を中断させることなく、一定量の薬液の送液が維持される。
【0080】
図13は、シリンジ交換および送液可否判断の処理の詳細を示すフローチャートである。図13を参照して、図12に示されるステップS13,S14における、シリンジポンプ100Aにおいて行なわれる処理について詳細に説明する。なお、図12に示されるステップS23,S24においては、シリンジポンプ100Bについて、以下と同様の処理が行なわれる。
【0081】
図13に示されるように、まずステップS101において、シリンジポンプ100Aからシリンジ10が取り外されたか否かが判断される。シリンジポンプ100Aの第4検知部190がクラッチレバー123が他方向に回動されて駆動部120のロックが解除されたことを検知し、さらに、第1検知部130がバレル20を検知しなくなり、第2検知部140が第2フランジ31を検知しなくなり、第3検知部170が第1フランジ21を検知しなくなることで、シリンジポンプ100Aの個別制御部150は、シリンジポンプ100Aからシリンジ10が取り外されたと判断する。
【0082】
ステップS101の判断においてシリンジ10が取り外されたと判断された場合(ステップS101においてYES)、ステップS102において、新たにシリンジポンプ100Aにシリンジ10が取り付けられたか否かが判断される。シリンジポンプ100Aの第1検知部130がバレル20を検知し、第2検知部140が第2フランジ31を検知し、第3検知部170が第1フランジ21を検知し、さらに、第4検知部190がクラッチレバー123が一方向に回動されて駆動部120がロックされたことを検知することで、シリンジポンプ100Aの個別制御部150は、シリンジポンプ100Aにシリンジ10が取り付けられたと判断する。
【0083】
ステップS102の判断においてシリンジ10が取り付けられたと判断された場合(ステップS102においてYES)、ステップS103において、シリンジポンプ100Aに取り付けられたシリンジ10の適否が判断される。
【0084】
シリンジポンプ100Aの個別制御部150は、たとえば押圧センサである第1検知部130が不完全押圧であることを示す検知信号を出力した場合、取り付けられたシリンジ10が予め設定されたシリンジ10とは異なり適したものでないと判断する。シリンジポンプ100Aの個別制御部150は、第2検知部140が、挟持間隔Dが第1閾値未満または第2閾値より大きいことを示す検知信号を出力した場合、取り付けられたシリンジ10が予め設定されたシリンジ10とは異なり適したものでないと判断する。シリンジポンプ100Aの個別制御部150は、押圧センサである第3検知部170が不完全押圧であることを示す検知信号を出力した場合、取り付けられたシリンジ10が予め設定されたシリンジ10とは異なり適したものでないと判断する。
【0085】
ステップS103の判断において取り付けられたシリンジ10が適したシリンジ10であると判断された場合(ステップS103においてYES)、ステップS104において、バレル20の表面に設けられた応答部40に記憶されている情報を読み取る。シリンジポンプ100Aの個別制御部150は、読取書込部160に制御信号を出力する。制御信号を受けた読取書込部160は、応答部40から送信されるデータを受信して、応答部40に記憶された情報を読み取る。読取書込部160は、シリンジポンプ100Aに取り付けられたシリンジ10についての情報の読み取り結果を、個別制御部150に出力する。
【0086】
次に、ステップS105において、シリンジポンプ100Aに取り付けられたシリンジ10が未使用であるか否かが判断される。シリンジポンプ100Aの個別制御部150は、先のステップS104で読み取られた、シリンジ10についての情報の読み取り結果を参照する。当該情報が、シリンジ10が未使用であることを示している場合、個別制御部150は、シリンジポンプ100Aに取り付けられたシリンジ10が未使用であると判断する。
【0087】
ステップS105の判断においてシリンジ10が未使用であると判断された場合(ステップS105においてYES)、ステップS106において、バレル20に充填されている薬液が使用可能な薬剤であるか否かが判断される。シリンジポンプ100Aの個別制御部150は、先のステップS104で読み取られた、シリンジ10についての情報の読み取り結果に基づいて、バレル20に充填されている薬液の薬剤名を参照する。個別制御部150は、薬剤名が予め設定されたものと合致している場合、使用可能な薬剤であると判断する。
【0088】
典型的には、シリンジポンプ100Aに取り付けられているシリンジ10のバレル20に、ステップS101において取り外されたシリンジ10のバレル20に充填されていた薬液と同一の薬液が充填されている場合、シリンジポンプ100Aの個別制御部150は、使用可能であると判断する。
【0089】
ステップS106の判断において使用可能な薬剤であると判断された場合(ステップS106においてYES)、ステップS107において、シリンジポンプ100Aからの薬液の送液が可能であるとされる。これにより、図12に示されるステップS15の薬液の送液が可能とされる。そして、処理を終了する。
【0090】
ステップS101の判断においてシリンジ10が取り外されていないと判断された場合(ステップS101においてNO)、および、ステップS102の判断においてシリンジ10が取り付けられていないと判断された場合(ステップS102においてNO)、ステップS108に進み、所定時間が経過したか否かの判断がなされる。この所定時間は、任意に設定が可能である。所定時間が未だ経過していないと判断された場合(ステップS103においてNO)、制御フローはリターンされて、ステップS101の判断に戻る。
【0091】
ステップS103の判断において所定時間が経過したと判断された場合(ステップS103においてYES)、ステップS109において、操作忘れが報知される。図14は、操作忘れ報知の一例を示す模式図である。操作忘れ報知は、シリンジポンプ100Aにおいてシリンジ10が未交換であることを示す。作業者が、操作忘れ報知を認識することで、シリンジ10の交換が促される。図14に示される操作忘れ報知は、たとえば、シリンジポンプ100Aの操作パネル180の表示部181に表示される。シリンジポンプ100Aが搭載される搭載台210がディスプレイを有する場合には、図14に示される操作忘れ報知が当該ディスプレイに表示されてもよい。
【0092】
図14に示される操作忘れ報知を表示部181などに表示する視覚的な報知に加えて、ランプなどによる発光を併用して、作業者の注意を促してもよい。ブザー、スピーカなどの聴覚的な報知を併用して、作業者の注意をさらに促すようにしてもよい。
【0093】
ステップS103の判断において取り付けられたシリンジ10が適したものではないと判断された場合(ステップS103においてNO)、ステップS105の判断においてシリンジ10が未使用でなく使用済であると判断された場合(ステップS105においてNO)、および、ステップS106の判断においてバレル20に使用可能な薬剤が充填されていないと判断された場合(ステップS106においてNO)、シリンジポンプ100Aに一旦はシリンジ10が取り付けられたものの、取り付けられたシリンジ10を再度交換する必要がある状況である。そのためこの場合にも、ステップS109に進み、操作忘れが報知される。
【0094】
操作忘れが報知された後、制御フローはリターンされて、ステップS101の判断に戻る。
【0095】
上述した説明と一部重複する記載もあるが、実施形態のポンプシステム200の特徴的な構成および作用効果について、以下に列挙する。
【0096】
図1に示されるように、実施形態のポンプシステム200は、第1のシリンジポンプ100Aと、シリンジポンプ100Aとは異なる第2のシリンジポンプ100Bとを備えている。シリンジポンプ100Aとシリンジポンプ100Bとの各々は、薬液が充填されているシリンジ10から薬液を送出させる。図10に示されるように、各シリンジポンプ100A,100Bは、個別制御部150を有している。図12に示されるように、個別制御部150は、シリンジポンプ100Aによる薬液の送出を停止しシリンジポンプ100Bによる薬液の送出を開始した場合に、シリンジポンプ100Aにおいてシリンジ10が交換されたことを示す信号の入力を受けた後に、シリンジポンプ100Aによる薬液の送出を開始する。
【0097】
シリンジポンプ100Aに取り付けられたシリンジ10の薬液を使い切るときに、シリンジポンプ100Bによる送液へと切り替えることで、間隔を空けることなく薬液の送液が続けられる。その後、シリンジポンプ100Bに取り付けられたシリンジ10からの薬液を使い切るときに、送液を停止中のシリンジポンプ100Aにおいてシリンジ10が交換されたことが検出された後に、シリンジポンプ100Aによる送液へと切り替えられる。これにより、間隔を空けることなくシリンジポンプ100Bにより送液からシリンジポンプ100Aによる送液へと切り替えられる。シリンジ10が未交換のままシリンジポンプ100Aへと切り替えられて送液される薬液の量が不足する事態が、回避されている。したがって、実施形態のポンプシステム200は、一定量の薬液を連続して供給することができる。
【0098】
図10に示されるように、シリンジポンプ100A,100Bの各々は、第1検知部130、第2検知部140、第3検知部170および第4検知部190を有している。第1検知部130、第2検知部140、第3検知部170および第4検知部190は、ポンプへのシリンジ10の取り付け状態を検知する。図13に示されるように、シリンジポンプ100Aの個別制御部150は、シリンジポンプ100Aからシリンジ10が取り外され、新たにシリンジポンプ100Aにシリンジ10が取り付けられたことを示す検知信号の入力を、第1検知部130、第2検知部140、第3検知部170および第4検知部190から受ける。図12に示されるように、個別制御部150は、その検知信号の入力を受けた後に、シリンジポンプ100Aによる薬液の送出を開始する。
【0099】
シリンジポンプ100Aからシリンジ10が一旦取り外されて再び取り付けられたことを検知することで、シリンジポンプ100Aの個別制御部150は、シリンジポンプ100Aにおいてシリンジ10が交換されたことを、確実に検出することができる。この検出を受けて、個別制御部150は、シリンジポンプ100Bからシリンジポンプ100Aへと、送液を切り替えることができる。
【0100】
図13に示されるように、第1検知部130、第2検知部140、第3検知部170および第4検知部190は、シリンジポンプ100Aに取り付けられたシリンジ10の適否を検知する。シリンジポンプ100Aに取り付けられたシリンジ10が適さないものであると、シリンジポンプ100Aへ送液を切り替えたときに、一定量の薬液の送出が維持できない可能性がある。シリンジポンプ100Aに適したシリンジ10が取り付けられていることを検知し、その上でシリンジポンプ100Aへ送液を切り替えるようにすれば、一定量の薬液の送出を確実に維持することができる。
【0101】
図2に示されるように、シリンジ10は、応答部40を有している。応答部40は、シリンジ10に関する情報を記憶している。図2,10に示されるように、シリンジポンプ100A,100Bの各々は、応答部40に記憶された情報を読み取る読取書込部160を有している。図13に示されるように、シリンジポンプ100Aの個別制御部150は、シリンジポンプ100Aに取り付けられたシリンジ10についての読み取り結果の入力を、シリンジポンプ100Aの読取書込部160から受ける。個別制御部150は、シリンジポンプ100Aに取り付けられたシリンジ10が未使用であるか否かを判断する。
【0102】
シリンジポンプ100Aのシリンジ10を交換するときに、既に使用済のシリンジ10をシリンジポンプ100Aに取り付けてしまうと、シリンジポンプ100Aへ送液を切り替えたときに、一定量の薬液の送出が維持できない可能性がある。シリンジポンプ100Aに取り付けられたシリンジ10が未使用であると判断し、その上でシリンジポンプ100Aへ送液を切り替えるようにすれば、一定量の薬液の送出を確実に維持することができる。
【0103】
図13に示されるように、応答部40は、シリンジ10に充填されている薬液に関する情報を記憶し、シリンジポンプ100Aの個別制御部150は、シリンジポンプ100Aに取り付けられたシリンジ10に充填されている薬液が使用可能か否かを判断する。
【0104】
シリンジポンプ100Aのシリンジ10を交換するときに、意図した薬剤とは異なる薬液が充填されたシリンジ10をシリンジポンプ100Aに取り付けてしまうと、本来注入すべきでない薬液を注入する可能性がある。シリンジ10に充填されている薬液が使用可能であると判断し、その上でシリンジポンプ100Aへ送液を切り替えるようにすれば、適切な薬液の送出を継続することができる。
【0105】
読取書込部160は、応答部40に記憶された情報を更新可能である。シリンジポンプ100A,100Bからの薬液の送液を終了するときに、薬液を使い切ったシリンジ10の応答部40の情報を更新して、シリンジ10が使用済であることを応答部40に記憶させることが可能である。これにより、シリンジ10が未使用であるか否かを、正確に判断することができる。
【0106】
図13,14に示されるように、シリンジポンプ100Aにおいてシリンジ10が未交換である場合に、操作忘れが報知される。操作忘れ報知を認識した作業者は、シリンジポンプ100Aのシリンジ10の交換が必要であることを認識する。これにより、シリンジ10を確実に交換することができる。
【0107】
上記の実施形態のポンプシステム200の説明においては、2台のシリンジポンプ100A,100Bに同一の薬液が充填されている例について説明した。シリンジポンプ100Aに充填されている薬液と、シリンジポンプ100Bに充填されている薬液とが、同時投与が禁忌でなく投与上問題なければ、異種の薬液であっても構わない。
【0108】
実施形態では、ポンプシステム200を構成する各シリンジポンプ100の個別制御部150が、各シリンジポンプ100の動作を制御する例について説明した。この例に代えて、通信制御部250がポンプシステム200の動作を制御する構成とし、通信制御部250から各シリンジポンプ100の個別制御部150に各シリンジポンプ100を動作させる制御信号が出力される構成としてもよい。
【0109】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0110】
10 シリンジ、20 バレル、21 第1フランジ、22 注液口、30 プランジャロッド、31 第2フランジ、32 ガスケット部、40 応答部、100,100A,100B シリンジポンプ、110 バレル受け部、111 溝部、112 バレル保持部、113 回動軸、120 駆動部、121 押圧面、122 可動爪部、123 クラッチレバー、130 第1検知部、140 第2検知部、150 個別制御部、160 読取書込部、170 第3検知部、180 操作パネル、181 表示部、182 操作入力部、190 第4検知部、200 ポンプシステム、210 搭載台、211 搭載部、250 通信制御部。
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