(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】赤外線センサ用カバー
(51)【国際特許分類】
G01J 1/04 20060101AFI20240509BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20240509BHJP
G01S 7/481 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G01J1/04 E
G01J1/02 P
G01S7/481
(21)【出願番号】P 2019235649
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2019062636
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】奥村 晃司
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0093487(KR,A)
【文献】特開平10-230805(JP,A)
【文献】特開2004-301962(JP,A)
【文献】国際公開第2017/183145(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/052057(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/073144(WO,A1)
【文献】特開2018-124279(JP,A)
【文献】特開2018-031888(JP,A)
【文献】特表2015-506459(JP,A)
【文献】特開2011-113975(JP,A)
【文献】特開2005-257628(JP,A)
【文献】実開昭59-096702(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/02 - G01J 1/04
G01J 1/42
G01J 5/02
G01J 5/04 - G01J 5/0802
H05B 3/02 - H05B 3/18
H05B 3/40 - H05B 3/82
G01C 3/00 - G01C 3/32
G01S 7/48 - G01S 7/51
G01S 17/00 - G01S 17/95
G01V 8/10 - G01V 8/26
G02B 5/02
G08G 1/16
G12B 17/00
B60R 21/00
H01H 35/00
H01L 31/12
H03K 17/78
H04N 5/222- H04N 5/257
H04N 7/18
H04N 23/00
H04N 23/40 - H04N 23/76
H04N 23/90 - H04N 23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線センサによって送受信される赤外線の経路上に設けられるカバー基材と、そのカバー基材の
赤外線センサ側の表面に設けられて通電によって発熱するヒータ線と、を備える赤外線センサ用カバーにおいて、
前記ヒータ線は、前記赤外線センサに対し接近離間する方向に厚みを有する細く延びた平板状に形成されており、前記ヒータ線の表面における少なくとも前記赤外線センサ側の面には多数の凹凸が一体に形成されていることを特徴とする赤外線センサ用カバー。
【請求項2】
赤外線センサによって送受信される赤外線の経路上に設けられるカバー基材と、そのカバー基材の
赤外線センサ側とは反対側の表面に設けられて通電によって発熱するヒータ線と、を備える赤外線センサ用カバーにおいて、
前記ヒータ線は、前記赤外線センサに対し接近離間する方向に厚みを有する細く延びた平板状に形成されており、前記ヒータ線の表面における少なくとも前記赤外線センサ側の面には多数の凹凸が一体に形成されていることを特徴とする赤外線センサ用カバー。
【請求項3】
前記凹凸の最大深さは前記ヒータ線の厚みに対し30~80%の深さとされている請求項1又は2に記載の赤外線センサ用カバー。
【請求項4】
前記赤外線センサは、車両に搭載されて車外に向けて赤外線を送信する一方、車外の物体に反射した前記赤外線を受信するものであり、
前記カバー基材は、前記赤外線センサよりも車外側に設けられるものである請求項1から3のいずれか一項に記載の赤外線センサ用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサ用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、赤外線の送受信を行う赤外線センサが搭載されている。この赤外線センサは、赤外線を車外に向けて送信する一方、車外の物体に当たって反射した上記赤外線を受信し、そうした赤外線の送受信を通じて車外の物体を検知するためのものである。また、赤外線センサにおける赤外線の送信方向の前方側(車外側)には、同赤外線センサが車外側から直接的に見えないようにするための赤外線センサ用カバーが設けられている。
【0003】
この赤外線センサ用カバーとしては、特許文献1に示されるように、赤外線センサによって送受信される赤外線の経路上に位置するカバー基材と、そのカバー基材の表面に設けられて通電によって発熱するヒータ線と、を備えるものが知られている。こうした赤外線センサ用カバーでは、上記ヒータ線の発熱を通じて赤外線センサ用カバー(カバー基材)に付着した氷雪が融解される。これにより赤外線センサ用カバーに対する氷雪の付着が原因で赤外線の透過が妨げられることに伴い、赤外線センサの検出性能が低下することは抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、赤外線センサ用カバーのカバー基材にヒータ線を設けると、赤外線センサから送信された赤外線がヒータ線で反射し、その反射した赤外線が赤外線センサによって受信されることに伴い、同赤外線センサの検出機能に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、赤外線センサから送信された赤外線がヒータ線で反射することに伴い、その赤外線センサの検出機能に悪影響を及ぼすことを抑制できる赤外線センサ用カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する赤外線センサ用カバーは、赤外線センサによって送受信される赤外線の経路上に設けられるカバー基材と、そのカバー基材の表面に設けられて通電によって発熱するヒータ線と、を備える。そして、上記ヒータ線の表面には多数の凹凸が形成される。
【0008】
この構成によれば、赤外線センサから送信された赤外線がヒータ線に当たったときには、そのヒータ線の表面に形成されている多数の凹凸によって上記赤外線が散乱する。このため、上記赤外線がヒータ線の表面で反射して赤外線センサによって受信されることを抑制できる。従って、ヒータ線で反射した赤外線が赤外線センサによって受信されることに伴い、同赤外線センサの検出機能に悪影響を及ぼすことは抑制される。
【0009】
なお、上記赤外線センサ用カバーにおいて、ヒータ線は細く延びた平板状に形成されており、凹凸の最大深さはヒータ線の厚みに対し30~80%の深さとされているものとすることが考えられる。
【0010】
上記赤外線センサ用カバーにおいて、赤外線センサは、車両に搭載されて車外に向けて赤外線を送信する一方、車外の物体に反射した前記赤外線を受信するものであり、上記カバー基材は、赤外線センサよりも車外側に設けられるものとすることが考えられる。更に、ヒータ線は、赤外線センサに対し接近離間する方向に厚みを有する細く延びた平板状に形成されているものとすることが考えられる。この場合において、上記凹凸は、ヒータ線の表面における少なくとも赤外線センサ側の面に形成される。
【0011】
上記構成によれば、赤外線センサから送信された赤外線は、ヒータ線の表面における赤外線センサ側の面に当たりやすい。そして、ヒータ線の表面のうちの少なくとも赤外線センサ側の面に多数の凹凸が形成されているため、赤外線センサから送信された赤外線がヒータ線に当たったときに同赤外線を散乱させやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)は車両に搭載される赤外線センサ及び赤外線センサ用カバーを示す模式図、(b)は(a)の赤外線センサ用カバーにおける二点鎖線で囲んだ部分を示す拡大断面図。
【
図2】ヒータ線を
図1(b)の右方から見た状態を示す正面図。
【
図4】赤外線センサから赤外線を送信した後の同赤外線センサの検出値の時間推移を示すタイムチャート。
【
図5】赤外線センサ用カバーの他の例を示す拡大断面図。
【
図6】赤外線センサ用カバーの他の例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、赤外線センサ用カバーの一実施形態について、
図1~
図4を参照して説明する。
図1(a)は、車両に搭載される赤外線レーダ装置1を模式的に示している。赤外線レーダ装置1は、ケース2内に収容された赤外線センサ3を備えている。赤外線センサ3は、赤外線を車外(
図1の左側)に向けて送信する一方、車外の物体に当たって反射した上記赤外線を受信し、そうした赤外線の送受信を通じて車外の物体を検知する。上記ケース2は、赤外線センサ3における赤外線の送信方向の前方(
図1の左方)に向けて開口している。このケース2の開口部には、赤外線センサ3が車外側から直接的に見えないようにするための赤外線センサ用カバー4が取り付けられている。
【0014】
図1(b)は、赤外線センサ用カバー4における
図1(a)の二点鎖線で囲んだ部分の断面を拡大して示している。
図1(b)から分かるように、赤外線センサ用カバー4のカバー基材5は、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の透明樹脂によって形成されるベース層6と、同ベース層6における赤外線センサ3と反対側の面(
図1(b)の左側の面)を覆う透明フィルム7と、を備えている。このカバー基材5は、赤外線センサ3(
図1(a))によって送受信される赤外線の経路上であって、同赤外線センサ3よりも車外側に位置している。
【0015】
カバー基材5(透明フィルム7)における赤外線センサ3と反対側の表面には、通電によって発熱する銅製のヒータ線8が設けられており、且つ、PET等の透明樹脂によって形成されてヒータ線8及び透明フィルム7を覆う保護層9が設けられている。そして、保護層9における赤外線センサ3と反対側の面には、反射防止コーティングによってARコート層10が形成されている。なお、赤外線センサ用カバー4におけるカバー基材5、保護層9、及びARコート層10は、赤外線センサ3によって送受信される赤外線を透過させることが可能となっている。
【0016】
次に、ヒータ線8について詳しく説明する。
赤外線センサ用カバー4において、氷雪が付着したときには、通電によるヒータ線8の発熱を通じて、上記氷雪の融解が行われる。このように赤外線センサ用カバー4に付着した氷雪を融解することにより、同氷雪の付着が原因で赤外線の透過が妨げられて赤外線センサ3の検出性能が低下することは抑制される。
【0017】
図1(b)に示すように、ヒータ線8は、赤外線センサ3(
図1(a))に対し接近離間する方向、すなわち
図1(b)の左右方向に厚みを有する平板状に形成されている。なお、
図1(b)では、ヒータ線8を見やすくするため、図中の左右方向の厚みを実際よりも大きく描いている。
図2は、ヒータ線8を
図1(b)の左方から見た状態を示している。
図2から分かるように、ヒータ線8は、
図2の左右方向に細長く延びるように、且つ、その左右方向に往復して延びるように設けられている。そして、ヒータ線8における平行となる部分同士の間には所定の間隔がおかれている。
【0018】
図3は、ヒータ線8の断面を拡大して示している。
図3から分かるように、ヒータ線8の表面には多数の凹凸が形成されている。詳しくは、多数の凹凸は、ヒータ線8の表面における少なくとも赤外線センサ3側の面、すなわち
図3の右面に形成されている。この例では、ヒータ線8における赤外線センサ3側の面、及び、同ヒータ線8における幅方向(
図3の上下方向)の両側面にそれぞれ、多数の上記凹凸が形成されている。一方、ヒータ線8における赤外線センサ3と反対側の面、すなわち
図3の左面には上記凹凸は形成されていない。
【0019】
ヒータ線8における上記多数の凹凸の形成は、エッチング加工によって実現されている。このように形成された多数の凹凸の最大深さは、ヒータ線8の厚みに対し30~80%の深さとすることが考えられ、50~75%の深さとすることが好ましく、40~70%の深さとすることがより好ましい。ちなみに、この実施形態では、上記多数の凹凸の最大深さがヒータ線8の厚みに対し60%の深さとされている。
【0020】
次に、赤外線センサ用カバー4の作用について説明する。
赤外線センサ3から車外に向けて送信された赤外線の一部は、赤外線センサ用カバー4を透過せずに、例えば
図3に矢印Y1で示すようにヒータ線8に当たるようになる。仮に上記赤外線がヒータ線8に当たって例えば
図3に矢印Y2で示すように反射したとすると、その反射した赤外線が赤外線センサ3によって受信されることに伴い、同赤外線センサ3の検出機能に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0021】
図4は、赤外線センサ3から赤外線を送信した後の同赤外線センサの検出値の時間推移を示している。
図4において、赤外線センサ3から赤外線を送信したタイミングをT0とすると、その赤外線が車外の物体に反射した場合、反射した赤外線を赤外線センサ3が例えばタイミングT1やタイミングT2で受信することにより、赤外線センサ3の検出値が大きくなる。従って、赤外線を送信した後の赤外線センサ3の検出値に基づき、車外の物体の有無等を検出することが可能となる。
【0022】
ちなみに、タイミングT2での検出値の増大は赤外線センサ3から遠い場所に存在する物体で赤外線が反射した場合に生じるものであり、タイミングT2よりも早いタイミングT1での検出値の増大は赤外線センサ3から近い場所に存在する物体で赤外線が反射した場合に生じるものである。
【0023】
ここで、赤外線センサ3から送信された赤外線が、上述したようにヒータ線8で反射したとすると、その反射した赤外線を赤外線センサ3が受信してしまい、
図4に二点鎖線で示すように検出値が増大する。その結果、タイミングT1で実線で示すように検出値が増大したとしても、それが二点鎖線で示される検出値の増大によって判別できなくなってしまい、同赤外線センサ3の検出機能に悪影響を及ぼす。
【0024】
しかし、赤外線センサ3から車外に向けて送信された赤外線の一部がヒータ線8に当たったときには、そのヒータ線8の表面に形成されている多数の凹凸によって
図3に矢印Y3で示すように上記赤外線が散乱する。このため、上記赤外線がヒータ線8で反射して赤外線センサ3によって受信されることは抑制される。従って、ヒータ線8で反射した赤外線が赤外線センサ3によって受信されることに伴い、
図4に二点鎖線で示すように赤外線センサ3の検出値が増大することは抑制され、その検出値の増大が赤外線センサ3の検出機能に悪影響を及ぼすことは抑制される。
【0025】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)赤外線センサ3から送信された赤外線がヒータ線8で反射することを抑制できるため、その反射した赤外線が赤外線センサ3によって受信されることも抑制でき、そうした赤外線の受信が赤外線センサ3の検出機能に悪影響を及ぼすことを抑制できるようになる。
【0026】
(2)赤外線センサ3から送信された赤外線は、ヒータ線8の表面のうち赤外線センサ3側の表面に当たりやすい。そして、ヒータ線8の表面のうちの少なくとも赤外線センサ3側の表面には多数の凹凸が形成されているため、赤外線センサ3から送信された赤外線がヒータ線8に当たったときに同赤外線を散乱させやすくなる。
【0027】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・ヒータ線8は、必ずしも銅によって形成されている必要はなく、銀、アルミニウム、及びカーボンといった他の導電体を採用することもできる。
【0028】
・
図5に示すように、赤外線センサ用カバー4のカバー基材5は、透明フィルム7を省略してベース層6のみによって形成されていてもよい。また、ARコート層10を省略することも可能である。
【0029】
・赤外線センサ用カバー4として赤外線レーダ装置1のケース2に取り付けられるものを例示したが、
図6に示すようにケース2とは別に設けられるものであってもよい。この場合、赤外線レーダ装置1のケース2には、その開口部を塞ぐための別のカバー11が取り付けられる。なお、上記赤外線センサ用カバー4の断面構造、例えば
図6の二点鎖線で囲んだ部分の断面構造は、
図1(b)と同様の構造となっている。
【0030】
・ヒータ線8は、必ずしもカバー基材5における車外側の表面に設けられている必要はなく、カバー基材5における車内側の表面(
図1(b)の右面)に設けられていてもよい。
【0031】
・ヒータ線8の表面における赤外線センサ3と反対側の表面(
図3の左面)に多数の凹凸を形成してもよい。
・ヒータ線8における幅方向(
図3の上下方向)の両側面については、必ずしも多数の上記凹凸が形成されている必要はない。
【0032】
・多数の上記凹凸の最大深さについては適宜変更可能である。
・多数の上記凹凸の加工方法としてエッチング加工を例示したが、それ以外の加工方法、例えばレーザーエッチングやサンドブラストといった加工方法を採用してもよい。
【0033】
・
図7に示すように、ヒータ線8の表面に、多数の凹凸を有する反射構造体12を設けることにより、同ヒータ線8の表面に多数の凹凸を形成するようにしてもよい。なお、多数の凹凸を有する上記反射構造体12に関しては、印刷、塗装、ディスペンサー等によって形成することが考えられる。
【0034】
・ヒータ線8の形状については、必ずしも細い平板状である必要はない。
・カバー基材5に対するヒータ線8の延ばし方を適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…赤外線レーダ装置、2…ケース、3…赤外線センサ、4…赤外線センサ用カバー、5…カバー基材、6…ベース層、7…透明フィルム、8…ヒータ線、9…保護層、10…ARコート層、11…カバー、12…反射構造体。