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特許7484167医療用成形体、医療機器、神経再生誘導チューブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】医療用成形体、医療機器、神経再生誘導チューブ
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/08 20060101AFI20240509BHJP
   C08G 63/06 20060101ALI20240509BHJP
   A61L 31/06 20060101ALI20240509BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20240509BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20240509BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C08G63/08
C08G63/06
A61L31/06
A61L31/14 500
A61L27/18
A61L27/58
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019569515
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2019048392
(87)【国際公開番号】W WO2020122096
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2018233153
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】張本 乾一
(72)【発明者】
【氏名】坂口 博一
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-143781(JP,A)
【文献】国際公開第2013/146999(WO,A1)
【文献】特開2006-326088(JP,A)
【文献】特開2016-195642(JP,A)
【文献】特開2007-046050(JP,A)
【文献】特表2005-533148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/08
C08G 63/06
A61L 31/06
A61L 31/14
A61L 27/18
A61L 27/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体吸収性ポリエステルを含む医療用成形体であって、成形体の最も長さのある方向に引張り応力を加えて、初期長に対して100%の引張ひずみを生じさせる操作を繰り返した際の、初回操作の仕事量に対する10回目の操作の仕事量の割合として定義される仕事量保存率が55%以上であり、前記生体吸収性ポリエステルが、ヒドロキシカルボン酸残基およびラクトン残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーであり、前記ヒドロキシカルボン酸残基が乳酸残基であり、前記ラクトン残基がカプロラクトン残基であり、前記ポリエステルコポリマーはマクロマーがマルチ化されてなり、前記マクロマーはグラジエントマクロマーであり、前記マクロマーの連結数は2以上20以下であり、前記生体吸収性ポリエステルの、下記式で表されるR値が0.50以上0.99以下である医療用成形体。
R値=[AB]/(2[A][B])×100
[A]:ポリエステルコポリマー中の、ヒドロキシカルボン酸残基のモル分率(%)
[B]:ポリエステルコポリマー中の、ラクトン残基のモル分率(%)
[AB]:ポリエステルコポリマー中の、ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基が隣り合った構造(A-B、およびB-A)のモル分率(%)
【請求項2】
前記仕事量保存率が60%以上である請求項1に記載の医療用成形体。
【請求項3】
前記生体吸収性ポリエステルの、ヒドロキシカルボン酸残基またはラクトン残基の少なくとも一方の結晶化率が14%未満である、請求項1または2に記載の医療用成形体。
【請求項4】
前記生体吸収性ポリエステルの重量平均分子量が10万以上である、請求項1~のいずれかに記載の医療用成形体。
【請求項5】
JIS K6251(2010)に従った測定によるヤング率が10MPa以下かつ引張強さが5MPa以上である請求項1~のいずれかに記載の医療用成形体。
【請求項6】
前記ヤング率が0.1MPa以上である、請求項に記載の医療用成形体。
【請求項7】
JIS K6251(2010)に従った測定による破断伸度が200%以上である、請求項1~のいずれかに記載の医療用成形体。
【請求項8】
前記生体吸収性ポリエステルを80重量%以上含む、請求項1~のいずれかに記載の医療用成形体。
【請求項9】
フィルム状、繊維状またはチューブ状である、請求項1~のいずれかに記載の医療用成形体。
【請求項10】
請求項1~のいずれかに記載の医療用成形体を用いてなる、生体内外に留置される医療機器。
【請求項11】
請求項に記載のチューブ状の医療用成形体を用いてなる、神経再生誘導チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫合糸、ステント、人工血管、癒着防止フィルム、損傷保護フィルム、神経再生誘導管など、生体内外に留置して使用される医療機器の材料として用いられる、生体吸収性ポリエステルを含む医療用成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内外の組織が損傷した場合に、損傷により発生した空間の補填、損傷部の固定あるいは保護、損傷した組織同士の連結あるいは隔離等を目的として使用される医療機器として、樹脂をフィルム、チューブ、コイル、針、糸、ねじ等様々な形状に成形した医療用成形体が用いられている。中でも、生体吸収性材料からなる医療用成形体は、生体内に移植する場合であっても移植後に分解して自己組織に置き換わり、異物として認識されたり炎症反応の原因となったりしにくい。また、除去するための再手術が不要であることにより患者のQOLを向上させることができるため、近年では生体吸収性材料からなる医療用成形体が様々な医療機器として用いられるようになってきている。
【0003】
このような生体吸収性材料として、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトンあるいはこれらの共重合体である生体吸収性ポリエステルが注目されている。しかし、一般にこのような生体吸収性ポリエステルの成形体は脆弱である。そのため、機械的特性を改善して実用に耐える強度や成形性を有する生体吸収性ポリマーを得る目的で、高分子量のポリマーや各種コポリマーの開発が試みられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、従来は重縮合により行われていたポリ乳酸やポリグリコール酸の合成において、より高分子量のポリマーを得るため、乳酸、グリコール酸からまずラクチド、グリコリドを製造し、これらを開環重合して合成する方法が開示されている。
【0005】
また、結晶性が高いため硬くて脆いポリ乳酸と、他の運動性の高いポリマーとを組み合わせた新たなマルチブロックコポリマーを開発する試みも数多くなされている。例えば、非特許文献1には、ラクチドとヘキサンジオールとを反応させて得られるポリ乳酸ベースのポリマーと、両末端が水酸基のポリカプロラクトンとを連結させて得られるマルチブロックコポリマーが記載されている。特許文献2には、両末端に水酸基を備えるポリ乳酸からなる第1ブロックと、ポリ乳酸よりも運動性の高いポリマーからなる第2ブロックとを有することによって、生体吸収性を損なうことなく機械的特性がより改善されたマルチブロックコポリマーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表平6-501045号公報
【文献】特開2006-183042号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】OjuJeon、etal.,Macromolecules2003、36、5585-5592
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
生体には筋肉や関節の動きによって屈曲、延伸、圧迫など複数の物理作用が働く部分が無数に存在している。このような環境で上記のような医療機器が求められる機能を発揮することを可能とするため、高い生体追従性を有する医療用成形体が求められている。しかし、特許文献2や非特許文献1に記載の生体吸収性ポリエステルを用いた成形体は、単純なポリ乳酸等のホモポリマーの成形体に比べると優れた機械強度を有するが、硬質であるがゆえに生体追随性に乏しく、留置箇所から脱落したり、却って周辺組織を傷つけたりする場合があった。
【0009】
本発明は、生体吸収性ポリエステルを含み、かつ生体追随性に優れた医療用成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、生体吸収性ポリエステルを含む医療用成形体であって、成形体の最も長さのある方向に引張り応力を加えて、初期長に対して100%の引張ひずみを生じさせる操作を繰り返した際の、初回操作の仕事量に対する10回目の操作の仕事量の割合として定義される仕事量保存率が55%以上である医療用成形体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の生体追随性に優れた生体吸収性ポリエステルを含む医療用成形体を用いることで、より生体適合性の高い医療機器を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例3の引張試験において変位に対して応力をプロットし、仕事保存率を示したグラフである。
図2】比較例2の引張試験において変位に対して応力をプロットし、仕事保存率を示したグラフである。
図3】比較例4の引張試験において変位に対して応力をプロットし、仕事保存率を示したグラフである。
図4】比較例5の引張試験において変位に対して応力をプロットし、仕事保存率を示したグラフである。
図5】実施例1で作製した医療用チューブの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の医療用成形体(以下、単に「成形体」という場合がある)は、成形体の最も長さのある方向に引張り応力を加えて、初期長に対して100%の引張ひずみを生じさせる操作を繰り返した際の、初回操作の仕事量に対する10回目の操作の仕事量の割合として定義される仕事量保存率が55%以上である。具体的には後述する測定例5に記載の引張試験により測定するものとする。
【0014】
医療用成形体は生体内外に留置されるものであるため、材料のヤング率が高すぎると、屈折や湾曲などの変形によって外力が成形体に加わった場合に、留置箇所周辺の組織を圧迫、擦傷、穿刺などして傷つける可能性がある。そのため、留置箇所周辺に骨などの硬組織がある場合を想定すると、成形体のヤング率は10MPa以下とするのが好ましい。留置箇所周辺に硬組織がない場合には、軟組織により近くなるよう、成形体のヤング率は5.0MPa以下がより好ましく、3.0MPa以下がさらに好ましい。一方、成形体のヤング率が低すぎると、屈折や湾曲などの変形によって外力が成形体に加わると形状を維持できなくなるため、ヤング率は0.1MPa以上が好ましく、0.5MPa以上がより好ましく、特に、組織同士を連結する目的で使用する成形体の場合には1.0MPa以上が好ましい。
【0015】
引張強さは、成形体の耐破断強度に直結する因子である。筋肉の膨張や収縮等の変形によって外力を受ける部位に用いることを想定すると、医療用成形体の引張強さは5MPa以上であることが好ましく、屈折や湾曲などのより激しい変形が生じる部位に用いる医療用成形体では、引張強さは20MPa以上であることが好ましい。
【0016】
破断伸度は成形体の耐破断強度を示す因子である。筋肉の膨張や収縮、振動等によって外力を受ける部位に用いることを想定すると、医療用成形体の破断伸度は、200%以上が好ましく、屈折や湾曲などのより激しい変形が生じる部位に用いる医療用成形体では、破断伸度は500%以上であることがより好ましく、関節など屈折や湾曲によって特に大きな変形が起きる部位用いる医療用成形体では、破断伸度は1000%以上であることがさらに好ましい。なお、破断伸度は、JIS K6251(2010)に従って測定した値(JIS中では「切断時伸び」と表記される)であり、具体的には後述する測定例3に記載の引張試験により測定するものとする。
【0017】
また、本発明の医療用成形体は、生体内外に留置して用いられるものであるため、筋肉や関節の動きよって外力を受けて変形しても、元の形状に戻る復元性を持つことが必要である。復元性は後述の測定例5のように仕事量保存率を求めることで定量的に評価することができる。仕事量保存率とは、成形体の最も長さのある方向に引張り応力を加えて、初期長に対して100%の引張ひずみを生じさせる操作を繰り返した際の、初回操作の仕事量に対する10回目の操作の仕事量の割合であり、具体的には後述する測定例5に記載の方法により算出できるものである。医療成形体の仕事量保存率が100%に近いほど、空間の補填、組織同士の固定、連結、隔離など医療用成形体が果たすべき機能が変形によって失われにくいことを示す。筋肉の近位に用いる医療用成形体は頻繁に変形を受けるため、本発明の医療用成形体は仕事量保存率が55%以上であり、関節など屈折や湾曲によって頻繁に大きな変形が起きる部位に用いる医療用成形体の仕事量保存率は60%以上が好ましい。
【0018】
また、本発明の医療用成形体は、生体内外に留置して用いられるものであるため、筋肉や関節の動きよって繰り返し力を受け、変形と復元を繰り返すことが想定される。そのため、本成形体は繰り返す変形に対して耐久性が要求される。耐久性は前記仕事保存率を測定する際に発生した永久歪みを測定することで定量的に評価することができる。筋肉の近位に用いる医療用成形体は頻繁に変形を受けるため、本発明の医療用成形体は永久歪みが20%以下であり、関節など屈折や湾曲によって頻繁に大きな変形が起きる部位に用いる医療用成形体の永久歪みは15%以下が好ましい。
【0019】
本発明の成形体は、生体吸収性ポリエステルを含むことにより各々の用途において必要とされる程度の生体吸収性が発現する限り、その配合率は限定されないが、一般的には生体吸収性ポリエステルを50重量%以上含むことが好ましく、80重量%以上含むことがより好ましい。生体に適用した際に完全に消失することが求められる場合には、生体吸収性ポリエステルのみからなることが好ましく、さらに、本発明において要求される物性、すなわち、高い引張強さを維持しつつ低いヤング率を発現することにより、生体追従性に優れた成形体とするため、以下に説明するような生体吸収性ポリエステルを上記程度に含むことが好ましい。
【0020】
ここで、生体吸収性とは、生体内外に留置された後、加水分解反応や酵素反応によって自然に分解し、その分解物が代謝または排泄されることによって消失する性質である。このような生体吸収性ポリエステルとしては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸(D、L、DL体)、ポリε-カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシブチレート吉草酸、ポリオルソエステル、ポリヒドロキシバレリル酸、ポリヒドロキシヘキサン酸、ポリヒドロキシブタン酸、ポリコハク酸ブチレン、ポリブチレンサクシネート、ポリテレフタール酸トリメチレン、ポリヒドロキシアルカノエート、およびこれらの共重合体からなる群より選択されるポリエステルが挙げられる。なかでも、本発明の医療用成形体は、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸の共重合体、ポリグリコール酸とポリε-カプロラクトンとの共重合体、のいずれかを含むことがさらに好ましい。
【0021】
好ましい態様において、本発明の成形体は、生体吸収性ポリエステルとして、ヒドロキシカルボン酸残基およびラクトン残基から選択されるモノマー残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーを含み、より好ましい態様において、ヒドロキシカルボン酸残基およびラクトン残基の2種類のモノマー残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーを含む。ラクトンとは、ヒドロキシカルボン酸のヒドロキシ基とカルボキシル基が分子内脱水縮合した環状化合物である。ここで、あるモノマー残基を「主構成単位」とする、とは、当該モノマー残基が、その他のモノマー残基を含めたポリマー全体の残基数の50モル%以上であることを意味する。また、2種類のモノマー残基を「主構成単位」とする、とは、当該2種類のモノマー残基数の和が、その他のモノマー残基を含めたポリマー全体の残基数の50モル%以上であり、かつ2種類のそれぞれの残基が、ポリマー全体の残基数の20モル%以上であることを意味する。
【0022】
例えば、ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基とを主構成単位とする、とは、ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基の残基数の和が、ポリマー全体の残基数の50モル%以上であり、かつヒドロキシカルボン酸残基がポリマー全体の残基数の20モル%以上であり、かつラクトン残基がポリマー全体の残基数の20モル%以上であることを意味する。各モノマー残基のモル分率は、核磁気共鳴(NMR)測定により、それぞれの残基に由来するシグナルの面積値より決定できる。例えば、ヒドロキシカルボン酸残基が乳酸残基、ラクトン残基がカプロラクトン残基である場合には、後述する測定例2に記載の方法で測定することができる。
【0023】
ヒドロキシカルボン酸残基を形成するためのモノマーとしては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸が特に好ましい。脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等が挙げられ、特に、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸が好ましい。乳酸としては、-乳酸、-乳酸、及びそれらの混合体を用いることができるが、得られるポリマーの物性や生体適合性の面からは乳酸を用いることが好ましく、特に-乳酸を用いることがより好ましい。モノマーとして混合体を用いる場合、体の含有率が85%以上であることが好ましく、95%以上である方がより好ましい。
【0024】
ヒドロキシカルボン酸残基を形成するためのモノマーとして、2分子のヒドロキシカルボン酸の互いのヒドロキシ基とカルボキシル基が脱水縮合した環状化合物であるラクチドを用いてもよい。ラクチドとしては、乳酸2分子が脱水縮合したジラクチドや、グリコール酸2分子が脱水縮合したグリコリド、テトラメチルグリコリドを用いることができる。
【0025】
ラクトン残基を形成するためのモノマーとしては、ε-カプロラクトン、ジオキセパノン、エチレンオキザラート、ジオキサノン、1、4-ジオキサン-2、3-ジオン、β-プロピオラクトン、δ-バレロラクトン、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、ピバロラクトンが挙げられる。
【0026】
また、以上例示したモノマーの誘導体を用いることもできる。
【0027】
なお、本明細書において、ポリエステルコポリマーに含まれる「モノマー残基」とは、原則として、当該モノマーを含む重合原液から得られたポリエステルコポリマーの化学構造中における、当該モノマーに由来する化学構造の反復単位を言う。例えば、乳酸(CHCH(OH)COOH)と、カプロラクトン(ε-カプロラクトン:下記式)
【0028】
【化1】
【0029】
とを重合して乳酸とカプロラクトンのコポリマーとした場合、下記式で表される単位
【0030】
【化2】
【0031】
が乳酸モノマー残基であり、下記式で表される単位がカプロラクトンモノマー残基である。
【0032】
【化3】
【0033】
なお、例外として、モノマーとしてラクチド等の2量体を用いる場合には、「モノマー残基」は当該2量体に由来する2回繰り返し構造のうちの1つを意味するものとする。例えば、ジラクチド(-(-)-ラクチド:下記式)
【0034】
【化4】
【0035】
とカプロラクトンとを重合した場合、コポリマーの化学構造には、ジラクチド残基として上記式(R1)に示される構造が2回繰り返された構造が形成されるが、この場合にはそのうち1つの乳酸単位を「モノマー残基」と捉え、ジラクチドに由来して「モノマー残基」、すなわち乳酸残基が2つ形成されたと考えるものとする。
【0036】
本発明に用いる生体吸収性ポリエステルの重量平均分子量は、ポリマー鎖が絡み合うことによる引張強さの向上効果を得るために、好ましくは10万以上である。上限は特に限定されないが、粘度の上昇による製造方法の問題および成形性の低下の点を考えると、好ましくは160万以下であり、より好ましくは80万以下、更に好ましくは40万以下である。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により求めることができ、具体的には後述する測定例1に記載の方法で求めるものとする。
【0037】
以下、本発明において特に好ましい生体吸収性ポリエステルである、ヒドロキシカルボン酸残基およびラクトン残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーについて説明する。
【0038】
当該ポリエステルコポリマーにおいて、ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基の和は、前述の定義から、その他のモノマー残基を含めたポリマー全体の50モル%以上であり、75モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。また、ヒドロキシカルボン酸残基およびラクトン残基は、同じく前述の定義からそれぞれ20モル%以上であり、30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましい。ヒドロキシカルボン酸残基およびラクトン残基の和がポリマー全体の100%である、すなわちヒドロキシカルボン酸残基およびラクトン残基のみからなるポリマーは、特に好ましい態様として挙げられる。
【0039】
ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基のモル比は、一方が過剰に存在するとホモポリマー様の性質に近づくことから、好ましくは7/3から3/7であり、より好ましくは6/4から4/6である。
【0040】
また、ヒドロキシカルボン酸およびラクトンと共重合し得る別のモノマーを更に共重合させることもでき、リンカーとして機能するモノマーを共重合させることは好ましい態様である。リンカーとして機能するモノマーとしては、主構成単位を構成するヒドロキシカルボン酸とは別のヒドロキシカルボン酸や、ジアルコール、ジカルボン酸、アミノ酸、ジアミン、ジイソシアネート、ジエポキシド等が挙げられる。なお、本明細書においては、ヒドロキシカルボン酸およびラクトン以外のモノマー単位を構成単位に含むことにより、一部にエステル結合以外の結合で連結された構成単位を含むコポリマーも含めて「ポリエステルコポリマー」と表記するものとする。
【0041】
当該ポリエステルコポリマーは、ヒドロキシカルボン酸残基を形成するモノマー(「モノマーA」とする)とラクトン残基を形成するモノマー(「モノマーB」とする)を等モルで共重合させた場合の各モノマーの初期重合速度をそれぞれV、Vとしたとき、1.1≦V/V≦40を満たすものであることが好ましい。
【0042】
ここで、V、Vは以下の方法で求められる。モノマーAとモノマーBを等モル混合し、必要に応じて溶媒、触媒を添加し、最終的に合成された、あるいは合成しようとするポリエステルコポリマーにおける後述するR値と誤差10%の範囲内で同じR値になるように温度等の条件を調整し重合反応を開始する。重合中の試料から定期的にサンプリングを行い、モノマーAとモノマーBの残量を測定する。残量は、例えば、クロマトグラフィーや核磁気共鳴(NMR)測定で測定する。仕込み量から残量を差し引くことで、重合反応に供されたモノマー量が求められる。サンプリング時間に対して重合反応に供されたモノマー量をプロットすると、その曲線の初期勾配がV、Vである。
【0043】
このようなモノマーAとモノマーBとを反応させると、重合初期においてモノマーAが重合中のポリマー末端に結合する確率が高い。一方、モノマーAが消費され反応液中の濃度が減少する重合後期においては、モノマーBが重合中のポリマー末端に結合する確率が高くなる。その結果、一方の末端からモノマーA残基の割合が徐々に減少するグラジエントポリマーが得られる。このようなグラジエントポリマーは、結晶性が低くなり、ヤング率上昇も抑えられる。こうしたグラジエント構造が形成されやすくするため、V/Vは、1.3以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。一方、モノマーAとモノマーBの重合速度の差が大きすぎると、モノマーAのみが重合した後にモノマーBが重合したブロックポリマーに近い構造となり、結晶性が高くなってヤング率の上昇を招く場合があることから、V/Vは30以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましく、10以下であることが一層好ましい。
【0044】
このようなモノマーAとモノマーBの好ましい組み合わせとしては、ジラクチドとε-カプロラクトン、グリコリドとε-カプロラクトン、ジラクチドとジオキセパノン、ジラクチドとδ-バレロラクトン、グリコリドとδ-バレロラクトンが挙げられる。
【0045】
また、当該ポリエステルコポリマーは、下記式で表されるR値が0.45以上0.99以下であることが好ましい。ポリエステルコポリマー中のモル分率は、ポリエステルコポリマーを構成するモノマー残基全体100%に対する百分率である。
R値=[AB]/(2[A][B])×100
[A]:ポリエステルコポリマー中の、ヒドロキシカルボン酸残基のモル分率(%)
[B]:ポリエステルコポリマー中の、ラクトン残基のモル分率(%)
[AB]:ポリエステルコポリマー中の、ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基が隣り合った構造のモル分率(%)
R値は、2種類のモノマー残基、すなわちヒドロキシカルボン酸残基およびラクトン残基を主構成単位とするコポリマーにおける、モノマー残基の配列のランダム性を示す指標として用いられる。例えば、完全にモノマー配列がランダムなランダムコポリマーでは、R値は1となる。また、ブロックコポリマーではR値は0~0.44である。
【0046】
R値は核磁気共鳴(NMR)測定によって、隣り合う二つのモノマーの組み合わせ(A-A、B-B、A-B、B-A)の割合を定量することで決定でき、具体的には後述する測定例2に記載の方法で測定するものとする。R値が0.45未満であると、結晶性が高く、コポリマーの成形体は硬くなりヤング率が上昇する。一方、R値が0.99を超えると、コポリマー成形体は柔らかくなりすぎ粘着性を示すようになり、取扱性が低下する。同様の観点から、本発明で用いるポリエステルコポリマーのR値は0.50以上であることが好ましく、また0.80以下であることが好ましい。
【0047】
また、ポリマーの結晶性は、成形体の機械強度に大きな影響を与えることが知られている。一般に、低結晶性のポリマーは低ヤング率を示すため、柔軟性を得るためには結晶性が低いことが望ましい。ポリマーの結晶化率は、示差走査熱量(DSC)測定により融解熱から求められる。
【0048】
当該ポリエステルコポリマーにおいては、ヒドロキシカルボン酸残基またはラクトン残基の少なくとも一方の結晶化率が14%未満であることが好ましい。当該結晶化率が14%未満であれば、ヤング率の上昇が抑えられ、医療用成形体に適したポリエステルコポリマーを得ることができる。ヒドロキシカルボン酸残基および/またはラクトン残基の結晶化率は10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
【0049】
ここで言うモノマー残基の結晶化率とは、あるモノマー残基のみからなるホモポリマーの単位重量当たりの融解熱と、当該ポリエステルコポリマー中の当該モノマー残基の重量分率の積に対する、当該ポリエステルコポリマー中の当該モノマー残基単位重量当たりの融解熱の割合である。すなわち、ヒドロキシカルボン酸残基の結晶化率とは、そのヒドロキシカルボン酸のみからなるホモポリマーの単位重量あたりの融解熱とポリエステルコポリマー中のそのヒドロキシカルボン酸残基の重量分率の積に対する、ポリエステルコポリマー中のそのヒドロキシカルボン酸残基単位重量当たりの融解熱の割合である。ヒドロキシカルボン酸残基およびラクトン残基の結晶化率は、それぞれポリエステルコポリマーのヒドロキシカルボン酸残基もしくはラクトン残基の中で結晶構造を形成している割合を示す。結晶化率は、具体的には後述する測定例4に記載の方法で求めるものとする。
【0050】
上記のようなポリエステルコポリマーは、一例として、ヒドロキシカルボン酸残基を形成するモノマーAおよびラクトン残基を形成するモノマーBを、重合完了時においてヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基の和が全残基の50モル%以上、かつヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基がそれぞれ全残基の20モル%以上となるよう配合して重合させるマクロマー合成工程;
マクロマー合成工程で得られたマクロマー同士を連結するか、あるいはマクロマー合成工程で得られたマクロマー溶液にヒドロキシカルボン酸およびラクトンを追添加することによりマルチ化するマルチ化工程;
を有する合成方法により製造することができる。
【0051】
マクロマー合成工程では、ヒドロキシカルボン酸残基を形成するモノマーAおよびラクトン残基を形成するモノマーBを、理論上重合完了時においてヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基の和が全残基の50モル%以上、かつヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基がそれぞれ全残基の20モル%以上となるよう配合して重合を行う。これにより、ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基を主構成単位とするポリエステルコポリマーが得られるが、本製造方法においてはさらに後述するマルチ化工程を行うため、本明細書においては、本工程により得られるポリエステルコポリマーを「マクロマー」と表現する。
【0052】
ヒドロキシカルボン酸残基およびラクトン残基の分布のランダム性は、重合時のモノマーの反応性の違いにより変化する。すなわち、重合時に、当該2種類のモノマーのうち、一方のモノマーの後に、同じモノマーと他方のモノマーが同確率で結合すれば、モノマー残基が完全にランダムに分布したランダムコポリマーが得られる。しかし、一方のモノマーの後にいずれかのモノマーが結合し易い傾向がある場合は、モノマー残基の分布に偏りのあるグラジエントコポリマーが得られる。得られたグラジエントコポリマーは、その分子鎖にそって重合開始末端から重合終了末端にかけてモノマー残基の組成が連続的に変化している。
【0053】
ここで、一般にヒドロキシカルボン酸はラクトンよりも初期重合速度が大きいモノマーであるため、マクロマー合成工程においてヒドロキシカルボン酸とラクトンとを共重合させた場合、ヒドロキシカルボン酸の後にヒドロキシカルボン酸が結合し易い。そのため、合成されたマクロマーにおいては、重合開始末端から重合終了末端にかけてヒドロキシカルボン酸単位の割合が徐々に減少するグラジエント構造が形成される。すなわち、本工程で得られるマクロマーは、ヒドロキシカルボン酸とラクトンとの初期重合速度差により、ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基とが骨格中で組成勾配をなすグラジエント構造を有するマクロマーとなる。このようなマクロマーを、本明細書においては「グラジエントマクロマー」と呼ぶ場合がある。
【0054】
マクロマー合成工程においては、このようなグラジエント構造を実現するために、開始末端から一方向に起こる重合反応によりマクロマーを合成することが望ましい。このような合成反応としては、開環重合、リビング重合を利用することが好ましい例として挙げられる。
【0055】
本工程で得られるマクロマーは、最終的に上記(1)に示すR値を満たすポリエステルコポリマーを製造しやすくするため、上記(1)に記載したポリエステルコポリマーと同様のR値を有するもの、すなわち、下記式
R値=[AB]/(2[A][B])×100
[A]:マクロマー中の、ヒドロキシカルボン酸残基のモル分率(%)
[B]:マクロマー中の、ラクトン残基のモル分率(%)
[AB]:マクロマー中の、ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基が隣り合った構造(A-B、およびB-A)のモル分率(%)
で表されるR値が0.45以上0.99以下であることが好ましく、0.50以上0.80以下であることがより好ましい。
【0056】
また同様に、本工程で得られるマクロマーは、最終的に上記(2)に示すヒドロキシカルボン酸残基またはラクトン残基の結晶化率を有するポリエステルコポリマーを製造しやすくするため、上記(2)に記載したモノマー残基の結晶化率を有するもの、すなわち、ヒドロキシカルボン酸残基またはラクトン残基の少なくとも一方の結晶化率が14%未満であるものであることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
【0057】
マクロマー合成工程で合成されるマクロマーの重量平均分子量は、好ましくは1万以上、より好ましくは2万以上である。また、結晶性を抑え柔軟性を保つためには15万以下であることが好ましく、10万以下であることがより好ましい。
【0058】
マルチ化工程では、マクロマー合成工程で得られたマクロマー同士を連結するか、あるいはマクロマー合成工程で得られたマクロマー溶液にヒドロキシカルボン酸およびラクトンを追添加することによりマルチ化する。本工程においては、一のマクロマー合成工程で得られたマクロマー同士を連結してもよいし、二以上のマクロマー合成工程で得られた複数のマクロマーを連結してもよい。なお、「マルチ化」とは、これらのいずれかの方法で、ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基とが骨格中で組成勾配を有するグラジエント構造を有する分子鎖が複数繰り返される構造を形成することを意味する。
【0059】
マルチ化するマクロマー単位の数は2以上であれば良いが、連結数が多いと分子鎖の絡み合いによる引張強さの向上効果が出ることから、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、6以上であることがさらに好ましい。一方、結果的にポリエステルコポリマーの分子量が過度に増大すると、粘度上昇により成形性に悪影響を及ぼす懸念があるため、マクロマー単位の数は80以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。
【0060】
マクロマー単位の連結数は、マルチ化行程において使用する触媒や反応時間によって調整することができる。マクロマー同士を連結させてマルチ化を行う場合、マクロマー単位の数は、最終的に得られたポリエステルコポリマーの重量平均分子量を、マクロマーの重量平均分子量で除して求めることができる。
【0061】
ポリエステルコポリマーは、マクロマー単位が直線状に連結した直鎖状ポリマーでも良いし、分岐して連結した分岐鎖状ポリマーであっても良い。
【0062】
直鎖状のポリエステルコポリマーは、例えば、グラジエントマクロマーの両末端に同様のグラジエントマクロマーを1分子ずつ、末端同士を介して結合させてゆくことで合成できる。
【0063】
グラジエントマクロマーがヒドロキシル基とカルボキシル基を各末端に有する場合は、末端同士を縮合剤により縮合させることで、マルチ化したポリエステルコポリマーが得られる。縮合剤としては、p-トルエンスルホン酸4、4-ジメチルアミノピリジニウム、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド、塩酸1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、N、N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N、N’-ジイソプロピルカルボジイミド、N、N’-カルボニルジイミダゾール、1、1’-カルボニルジ(1、2、4-トリアゾール)、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム=クロリドn水和物、トリフルオロメタンスルホン酸(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-(2-オクトキシ-2-オキソエチル)ジメチルアンモニウム、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロリン酸塩、(7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩、クロロトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロリン酸塩、ブロモトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩、3-(ジエトキシホスホリルオキシ)-1、2、3-ベンゾトリアジン-4(3H)-オン、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N、N、N’、N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N、N、N’、N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩、O-(N-スクシンイミジル)-N、N、N’、N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩、O-(N-スクシンイミジル)-N、N、N’、N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩、O-(3、4-ジヒドロ-4-オキソ-1、2、3-ベンゾトリアジン-3-イル)-N、N、N’、N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩、S-(1-オキシド-2-ピリジル)-N、N、N’、N’-テトラメチルチウロニウムテトラフルオロホウ酸塩、O-[2-オキソ-1(2H)-ピリジル]-N、N、N’、N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩、{{[(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデン)アミノ]オキシ}-4-モルホリノメチレン}ジメチルアンモニウムヘキサフルオロリン酸塩、2-クロロ-1、3-ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロリン酸塩、1-(クロロ-1-ピロリジニルメチレン)ピロリジニウムヘキサフルオロリン酸塩、2-フルオロ-1、3-ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロリン酸塩、フルオロ-N、N、N’、N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロリン酸塩等が使用可能である。
【0064】
また、重合反応がリビング性を有する場合、すなわち重合物の末端から連続して重合反応を開始しうる場合には、重合反応が終了した後のグラジエントマクロマー溶液にヒドロキシカルボン酸およびラクトンを追添加する操作を繰り返すことで、マルチ化することができる。
【0065】
あるいは、グラジエントマクロマー同士は、ポリマーの力学的特性に影響を与えない範囲においてリンカーを介してマルチ化しても良い。特に、複数のカルボキシル基および/または複数のヒドロキシ基を有するリンカー、例えば2、2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を使用すると、リンカーが分岐点となった分岐鎖状のポリエステルコポリマーを合成することができる。
【0066】
以上のような製造方法により得られるポリエステルコポリマーは、ヒドロキシカルボン酸残基とラクトン残基とが骨格中で組成勾配を有するマクロマー単位が2つ以上連結した構造のコポリマーとなる。本明細書においては、このような構造を便宜的に「マルチグラジエント」、マルチグラジエント構造を有するコポリマーを「マルチグラジエントコポリマー」と記載する場合がある。マルチグラジエントコポリマーとしては、ヒドロキシカルボン酸残基と前記ラクトン残基とが骨格中で組成勾配をなすグラジエント構造を有するマクロマー単位が2つ以上連結した構造を有することが好ましく、3つ以上連結した構造を有することが好ましい。
【0067】
前述の通り、ヒドロキシカルボン酸残基が乳酸残基、ラクトン残基がカプロラクトン残基またはバレロラクトン残基であるポリエステルコポリマーは、医療用成形体に適用するために特に好ましい態様である。このようなポリエステルコポリマーは、下記のような製造方法により好ましく製造される。
【0068】
まず、マクロマー合成工程において、触媒の存在下にてジラクチドとε-カプロラクトン(またはバレロラクトン。以下同じ)を重合させる。ジラクチド、ε-カプロラクトン単量体は、使用前に不純物を取り除くために、好ましくは精製される。ジラクチドの精製は、たとえばナトリウムによって乾燥されたトルエンからの再結晶で可能である。ε-カプロラクトンは、たとえばCaHからN雰囲気下で減圧蒸留によって精製される。
【0069】
ジラクチドとε-カプロラクトンの反応性は文献(D.W.Grijpmaetal.PolymerBulletin25、335、341)に記されているように大きく異なり、ジラクチドモノマーの方がε-カプロラクトンよりも初期重合速度が大きい。ジラクチドのVは、反応率(%)で示すと3.6%/hであり、ε-カプロラクトンのVは、0.88%/hであり、V/Vは4.1となる。そのため、ジラクチドとε-カプロラクトンを共重合して得られるマクロマーはグラジエントマクロマーとなる。
【0070】
乳酸残基とカプロラクトン残基とを有するマクロマー合成工程の触媒としては、通常のゲルマニウム系、チタン系、アンチモン系、スズ系触媒等のポリエステルの重合触媒が使用可能である。このようなポリエステルの重合触媒の具体例としては、オクチル酸スズ、三フッ化アンチモン、亜鉛粉末、酸化ジブチルスズ、シュウ酸スズが挙げられる。触媒の反応系への添加方法は特に限定されるものではないが、好ましくは原料仕込み時に原料中に分散させた状態で、あるいは減圧開始時に分散処理した状態で添加する方法である。触媒の使用量は使用するモノマーの全量に対して金属原子換算で0.01~3重量%、より好ましくは0.05~1.5重量%である。
【0071】
乳酸残基とカプロラクトン残基とを有するマクロマーは、ジラクチド、カプロラクトンおよび触媒を、撹拌機を備えた反応容器に入れ、150~250℃、窒素気流下で反応させることにより得ることができる。水を助開始剤として使用する場合は、重合反応に先立って、90℃付近で助触媒反応を行うことが好ましい。反応時間としては2時間以上、好ましくは4時間以上、更には重合度を上げるためにはより長時間例えば8時間以上が好ましい。ただし、長時間反応を行いすぎるとポリマーの着色の問題が生じるため、3~12時間が好ましい。
【0072】
次に、マルチ化工程において、乳酸残基とカプロラクトン残基とを有するグラジエントマクロマーの末端同士を縮合反応により連結し、マルチ化する。縮合反応の反応温度は10~100℃が好ましく、更に好ましくは20~50℃である。反応時間としては1日以上、更に好ましくは2日以上が好ましい。ただし、長時間反応を行いすぎるとポリマーの着色の問題が生じるため、2~4日が好ましい。
【0073】
このようなポリエステルを用いで、溶融成形法または溶媒成形法を用いて特定の形状に成形加工することで、生体吸収性を有し、かつヤング率が10MPa以下、かつ引張強さが5MPa以上の成形体を作製することができる。溶融成形法とは、ポリマーを加熱して溶融させ、鋳型や押出成形機、プレス機などを用いて成形する方法であり、繊維状、フィルム状、チューブ状などの医療用成形体を成形することができる。例えばφ1mmの口金をセットした押出成形機内で200℃まで本発明に記載のコポリマーを加熱し、押し出すことでポリマーを糸状に成形することができる。溶媒成形法とはポリマーを溶媒に溶解させ、鋳型や凝固浴に注入し、溶媒と溶質を分離することで成形する方法であり、繊維状やフィルム状の医療用成形体を成形することができる。溶媒成形法の例としてはクロロホルムに20%溶解させたポリマー溶液に、φ0.5~4mmの棒を浸漬させた後引き上げ、溶媒の揮発を待ってから再度浸漬させることを5~10回程度繰り返し、最後に芯となる棒を引き抜くことでチューブ状に成型することができる。チューブ状に成型した成形体は断裂した神経の両末端に装着させることで、神経再生を保護する神経再生誘導チューブとして用いることができる。
【実施例
【0074】
以下、具体的に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はそれらの実施例に限定的に解釈されるべきでなく、本発明の概念に接した当業者が想到し、実施可能であると観念するであろうあらゆる技術的思想およびその具体的態様が本発明に含まれるものとして理解されるべきものである。
【0075】
[測定例1:ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量の測定]
機器名:Prominence(株式会社島津製作所製)
移動相:クロロホルム(HPLC用)(和光純薬工業株式会社製)
流速:1mL/min
カラム:TSKgel GMHHR-M(φ7.8mmX300mm;東ソー株式会社製)
検出器:UV(254nm)、RI
カラム、検出器温度:35℃
標準物質:ポリスチレン
精製後のポリマーをクロロホルムに溶解し、0.45μmのシリンジフィルター(DISMIC-13HP;ADVANTEC社製)を通過させて不純物等を除去した後にGPCにより測定して、コポリマーの重量平均分子量を算出した。結果を表1に示す。
【0076】
[測定例2:核磁気共鳴(NMR)による各残基のモル分率およびR値の測定]
精製したコポリマーを重クロロホルムに溶解し、H-NMRにより測定してコポリマー中の乳酸モノマー残基及びカプロラクトンモノマー残基の比率をそれぞれ算出した。また、Hホモスピンデカップリング法により、乳酸のメチレン基(5.10ppm付近)、カプロラクトンのαメチレン基(2.35ppm付近)、εメチレン基(4.10ppm付近)について、隣り合うモノマー残基が乳酸もしくはカプロラクトンに由来するシグナルで分離し、それぞれのピーク面積を定量した。それぞれのピーク面積比から[A]、[B]、[AB]を計算し、R値を算出した。
機器名:JNM-EX270(日本電子株式会社製)
Hホモスピンデカップリング照射位置:1.66ppm
溶媒:重クロロホルム
測定温度:室温。
【0077】
[測定例3:引張試験]
各実施例・比較例で作製したフィルム(厚さ約0.1mm)を50mm×5mmに切り出し、テンシロン万能試験機RTM-100(株式会社オリエンテック製)でJIS K6251(2010)に従い、下記の条件で引張試験を測定し、破断伸度、引張強さを算出した。さらに、変位に対して応力をプロットしたグラフにおいて、応力の発生開始から5点のデータから近似できる1次式の傾きをヤング率として算出した。
機器名:テンシロン万能引張試験機RTM-100(株式会社オリエンテック製)
初期長:10mm
引張速度:500mm/min
ロードセル:50N
試験回数:5回。
【0078】
[測定例4:示差走査熱量(DSC)による乳酸残基の結晶化率の測定]
精製後のポリマーを減圧乾燥し、これを濃度が5重量%になるようにクロロホルムに溶解させ、その溶液を“テフロン”(登録商標)製シャーレ上に移して、常圧、室温下で1昼夜乾燥させた。これを減圧乾燥させて、コポリマーフィルムを得た。得られたコポリマーフィルムをアルミナPANに採取し、示差走査熱量計でDSC法により下記の条件で測定し、温度条件(D)から(E)の測定結果から融解熱を算出した。結晶化率は下記式から算出した。結果を表1に示す。
結晶化率=(ポリエステルコポリマーの乳酸残基単位重量当たりの融解熱)/{(乳酸残基のみからなるホモポリマーの単位重量当たり融解熱)×(ポリエステルコポリマー中の乳酸残基の重量分率)}×100
機器名:EXSTAR 6000(セイコーインスツル株式会社製)
温度条件:(A)25℃→(B)250℃(10℃/min)→(C)250℃(5min)→(D)-70℃(10℃/min)→(E)250℃(10℃/min)→(F)250℃(5min)→(G)25℃(100℃/min)
標準物質:アルミナ。
【0079】
[測定例5:仕事量保存率および永久歪みの測定]
各実施例・比較例で作製したフィルム(厚さ約0.1mm)を短冊状(50mm×5mm)に切り出し、テンシロン万能試験機RTM-100(株式会社オリエンテック製)で下記の条件でフィルムを10回伸縮させながら、引張応力と変位の変化を記録する。フィルムの形状ではない成形体の場合には例えばクロロホルムなど、成形体を溶解できる溶媒に溶解させたのち、前記記載のサイズのフィルム成形後に測定を行う。
機器名:テンシロン万能引張試験機RTM-100(株式会社オリエンテック製)
初期長(L):10mm
引張長(L):10mm
初期長(L)と引張長(L)が同じ長さなので、100%の引張ひずみを生じさせることになる。
保持時間:1s
引張速度:500mm/min
復元速度:500mm/min
ロードセル:50N
変位(X,X,・・・)に対する応力が(N,N,・・・)の時、100%の引張ひずみを生じさせる仕事量(W)は図1~4で示す変位-応力曲線下部の面積に相等し、下記の式により算出される。
W=ΣN(X-Xn-1)ただし X=0とする。
【0080】
初回のWをW、10回目のWをW10としたとき、仕事量保存率=W10/W×100となる。図1~4において初回の変位-応力曲線は点線、10回目の応力曲線は実線で示しており、斜線部の面積が保存された仕事量である。
【0081】
仕事保存率測定後再度同じ引張速度で伸長させ引張応力と変位の変化を記録し、応力が発生した変位量をL1とする。図1~4においては10回目の変位-応力曲線がX軸から上昇した位置における変位量である。永久歪みは下記式により計算できる。
永久歪み(%)=L/L×100。
【0082】
[実施例1]
50.0gの-ラクチド(PURASORB L;PURAC社製)と、38.5mLのεーカプロラクトン(和光純薬工業株式会社製)とを、モノマーとしてセパラブルフラスコに採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、14.5mLのトルエン(超脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解した触媒である0.81gのオクチル酸スズ(II)(和光純薬工業株式会社製)、助開始剤としてイオン交換水をモノマー/助開始剤比が142.9となるよう添加し、90℃で、1時間助触媒反応を行ったあと、150℃で、6時間、共重合反応させて、粗コポリマーを得た。
【0083】
得られた粗コポリマーを100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1400mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を3回繰り返し、沈殿物を70℃で減圧乾燥してマクロマーを得た。
【0084】
当該マクロマー7.5gと、触媒である0.28gのp-トルエンスルホン酸4、4-ジメチルアミノピリジニウム(合成品)と、0.10gの4、4-ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業株式会社製)を採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、30%となるようジクロロメタン(脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解し、5mLのジクロロメタンに溶解した縮合剤である0.47gのアミレン(東京化成工業社製)を添加し、室温で2日間縮合重合させた。
【0085】
反応混合物に30mLのクロロホルムを添加し、攪拌状態にある500mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この沈殿物を50mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある500mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を2回繰り返し、沈殿物として精製ポリエステルコポリマーを得た。
【0086】
精製ポリエステルコポリマーを減圧乾燥し、濃度が5重量%になるようにクロロホルムに溶解させ、その溶液の一部を“テフロン”(登録商標)製シャーレ上に移して、常圧、室温下で1昼夜乾燥させた。これを減圧乾燥させて、厚さ約0.1mmのフィルムを得た。
【0087】
また、精製ポリエステルコポリマーを減圧乾燥し、濃度が20重量%となるようにクロロホルムに溶解させた。ポリビニルアルコール(シグマアドリッチ社)の10重量%水溶液を調整し、φ4mmの金属棒を浸漬させて表面をPVAでコーティングした。PVAコーティングされた金属棒の先端を前記の精製ポリエステルコポリマー溶液に浸してから取り出し、10分間ドラフト内で乾燥するために静置した。その後コポリマー溶液への浸漬と乾燥を5回繰り返し、最後は一晩ドラフト内で静置した。ポリマーの乾燥後40℃に設定した水浴に金属棒を5分間浸してから、金属棒を引き抜きの先チューブ状(φ4mm×10mm)成形の成型体を得た。前記チューブは神経再生誘導チューブとして使用可能な医療用チューブとして用いることができる。
【0088】
[実施例2]
ポリエステルコポリマーの合成において、使用するマクロモノマーを40gに変更し、攪拌に用いた羽を“テフロン”(登録商標)製に変更した以外は実施例1と同様にして、フィルムおよび医療用チューブを作製した。
【0089】
[実施例3]
ポリエステルコポリマーの合成において、マクロモノマーの反応混合物の精製時に、攪拌状態にある500mLのメタノールに15mMとなるよう酢酸を添加した以外実施例2と同様にして、フィルムおよび医療用チューブを作製した。
【0090】
[実施例4]
ポリエステルコポリマーの合成において、使用するマクロモノマーを30gに変更した以外は実施例2と同様にして、フィルムおよび医療用チューブを作製した。
【0091】
[実施例5]
ポリエステルコポリマーの合成において、マクロモノマーの反応混合物の精製時に、攪拌状態にある500mLのメタノールを500mLのヘキサンに変更した以外実施例3と同様にして、フィルムおよび医療用チューブを作製した。
【0092】
[実施例6]
ポリエステルコポリマーの合成において、マクロモノマーの反応混合物の精製時に、攪拌状態にある500mLのメタノールに滴下する前に1Nの塩酸100mLと混合させた以外実施例2と同様にして、フィルムおよび医療用チューブを作製した。
【0093】
[比較例1]
50.0gの-ラクチド(PURASORB L;PURAC社製)と、38.5mLのεーカプロラクトン(和光純薬工業株式会社製)とを、モノマーとしてセパラブルフラスコに採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、14.5mLのトルエン(超脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解した触媒である0.81gのオクチル酸スズ(II)(和光純薬工業株式会社製)を添加、150℃、6時間で共重合反応させて、粗コポリマーを得た。
【0094】
得られた粗コポリマーを100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1400mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を3回繰り返し、沈殿物としてグラジエントコポリマーを得た。これを70℃で減圧乾燥し、その後実施例1と同様にフィルムおよび医療用チューブを作製した。
【0095】
[比較例2]
50.0gの-ラクチド(PURASORB L;PURAC社製)をモノマーとしてセパラブルフラスコに採取した。これをアルゴン雰囲気下とし、14.5mLのトルエン(超脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解した触媒である0.81gのオクチル酸スズ(II)(和光純薬工業株式会社製)、助開始剤としてイオン交換水をモノマー/助開始剤比が142.9となるよう添加し、90℃、1時間で助触媒反応を行ったあと、150℃、3時間で重合反応させた。
【0096】
これに、38.5mLのεーカプロラクトン(和光純薬工業株式会社製)を添加し、さらに150℃記載の温度、6時間で重合反応させ、粗コポリマーを得た。
【0097】
得られた粗コポリマーを100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1400mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を3回繰り返し、沈殿物を70℃で減圧乾燥して精製コポリマーを得た。
【0098】
当該精製コポリマー7.5gと、触媒である0.28gのp-トルエンスルホン酸4、4-ジメチルアミノピリジニウム(合成品)と、0.10gの4、4-ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業株式会社製)を採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、5%となるようジクロロメタン(脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解し、5mLのジクロロメタンに溶解した縮合剤である1.38gのジシクロヘキシルカルボジイミド(シグマアルドリッチ社製)を添加し、室温で2日間縮合重合させた。
【0099】
反応混合物に30mLのクロロホルムを添加し、攪拌状態にある500mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この沈殿物を50mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある500mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を2回繰り返し、沈殿物すなわち精製コポリマーを得た。これを70℃で減圧乾燥し、その後実施例1と同様にフィルムおよび医療用チューブを作製した。
【0100】
[比較例3]
ジクロロメタンに溶解した時の濃度を27%とした以外は比較例2と同様にして、フィルムおよび医療用チューブを作製した。
【0101】
[比較例4]
ポリ乳酸であるPDLLA(株式会社ビーエムジー)を購入し、実施例1と同様にフィルムおよび医療用チューブを作製した。
【0102】
[比較例5]
ポリカプロラクトンであるPolycaprolactone(900288, シグマアドリッチ社)を購入し、実施例1と同様にフィルムおよび医療用チューブを作製した。
【0103】
各実施例、比較例で製造した、各成形体の構成および各種評価結果を表1、表2に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の医療成形品は、手術中に用いる結紮糸や縫合糸、縫合針、癒着防止フィルム、神経損傷保護フィルム、神経再生誘導チューブなどに適用できるが、これらに限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5