(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20240509BHJP
H04R 1/22 20060101ALI20240509BHJP
H04R 1/28 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H04R1/02 101D
H04R1/02 101B
H04R1/22 310
H04R1/28 310Z
H04R1/02 102B
(21)【出願番号】P 2020001178
(22)【出願日】2020-01-08
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100128598
【氏名又は名称】高田 聖一
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】原田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】松下 律男
【審査官】毛利 太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/037805(WO,A1)
【文献】特開平03-035689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00 - 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカーを備える車両であって、
前記スピーカーは、
スピーカーユニットと、
前記スピーカーユニットが取り付けられ、前記スピーカーユニットの一部または全部を収容する第1空間を形成するエンクロージャーと、
前記エンクロージャーから外部に延びる
可撓性の変形可能な1以上の管体と、を有し、
前記1以上の管体のうちの一部または全部は、前記第1空間に連通する第2空間を形成し、
前記第2空間における前記第1空間とは反対側の端が閉塞され
、
前記スピーカーは、インストルメントパネルまたはヘッドコンソールであるパネルの内側に配置され、
ドアには、スピーカーが設置されていない、
車両。
【請求項2】
前記1以上の管体は、
前記第2空間を形成する1以上の第1管体と、
前記第1空間に連通する第3空間を形成する1以上の第2管体と、を含み、
前記第3空間における前記第1空間とは反対側の端が開放される、
請求項1に記載の
車両。
【請求項3】
前記1以上の管体は、前記第2空間を形成する複数の管体を含む、
請求項1または2に記載の
車両。
【請求項4】
前記1以上の管体のそれぞれは、前記エンクロージャーよりも剛性が低い、
請求項1から3のいずれか1項に記載の
車両。
【請求項5】
前記1以上の管体のそれぞれは、前記エンクロージャーよりも弾性の高い材料で構成される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の
車両。
【請求項6】
前記エンクロージャーには、前記第1空間の内外を連通する複数の孔が設けられており、
前記複数の孔は、
前記1以上の管体に接続される1以上の第1孔と、
前記1以上の管体に接続されずに閉塞される1以上の第2孔と、を含む、
請求項1から5のいずれか1項に記載の
車両。
【請求項7】
前記1以上の管体は、聴取空間に対して遮蔽物により隔てられる空間に設置される、
請求項
1から6のいずれか1項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカー、エンクロージャーおよび車両に関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカーユニットをエンクロージャーに取り付けたスピーカーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低音域での再生を可能とするには、エンクロージャーの容積を大きくする必要がある。しかし、従来の形状のスピーカーは、エンクロージャーの容積を大きくすると、例えば、車両のダッシュボード内のような狭く複雑な空間に配置することができない。
【0005】
以上の事情を考慮して、本発明は、低音域での再生が可能なスピーカーを狭く複雑な空間であっても設置可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明の好適な態様に係るスピーカーは、スピーカーユニットと、前記スピーカーユニットが取り付けられ、前記スピーカーユニットの一部または全部を収容する第1空間を形成するエンクロージャーと、前記エンクロージャーから外部に延びる変形可能な1以上の管体と、を有し、前記1以上の管体のうちの一部または全部は、前記第1空間に連通する第2空間を形成し、前記第2空間における前記第1空間とは反対側の端が閉塞される。
【0007】
本発明の他の好適な態様に係るエンクロージャーは、スピーカーユニットが取り付けられるエンクロージャーであって、前記スピーカーユニットが取り付けられる第1端と、前記第1端とは反対側の第2端と、を有し、前記第1端と前記第2端との間に前記スピーカーユニットの一部または全部を収容する空間を形成する筒部と、前記第2端を塞ぐ底部と、を有し、前記筒部および前記底部のうちの一方または両方には、前記空間の内外を連通する複数の孔が設けられる。
【0008】
本発明の好適な態様に係る車両は、前述の態様に係るスピーカーを有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るスピーカーの概略図である。
【
図2】第1実施形態に係るスピーカーの断面図である。
【
図3】第1実施形態に係るスピーカーの断面図である。
【
図4】第2実施形態に係るスピーカーの断面図である。
【
図5】第3実施形態に係るスピーカーの断面図である。
【
図6】第3実施形態に係るスピーカーの断面図である。
【
図7】第4実施形態に係るスピーカーの断面図である。
【
図8】第4実施形態に係るスピーカーの断面図である。
【
図9】スピーカーが車両に設置される場合を説明するための図である。
【
図10】変形例1に係るスピーカーの断面図である。
【
図11】変形例2に係るスピーカーの断面図である。
【
図12】変形例3に係るスピーカーの断面図である。
【
図13】変形例4に係るスピーカーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面において各部の寸法及び縮尺は実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に記載する実施形態は、本発明の好適な具体例である。このため、本実施形態には、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0011】
1-1.スピーカーの概略
図1は、第1実施形態に係るスピーカー10の概略図である。
図1では、スピーカー10の一部が断面で示される。この断面は、スピーカー10の中心軸AXを含む平面でスピーカー10を切断した断面である。なお、中心軸AXは、後述する振動板21の振動方向に平行で、かつ、振動板21の中心を通る線分である。
【0012】
スピーカー10は、例えば、自動車等の車両のインストルメントパネルまたはヘッドコンソール等のパネルに配置される車載用のスピーカーである。なお、スピーカー10の用途は、車載用に限定されず、他の用途でもよい。また、スピーカー10は、狭く複雑な空間に配置される小型スピーカーとして好適である。より具体的には、スピーカー10は、例えば、8cm口径程度のスピーカーに好適である。
【0013】
図1に示すように、スピーカー10は、スピーカーユニット20とエンクロージャー30と第1管体40と第2管体50とを有する。
【0014】
スピーカー10の各部の概略を説明すると、スピーカーユニット20は、音を示す電気的な音信号を音に変換する主要な構成要素をユニット化した構造体である。スピーカーユニット20は、エンクロージャー30に取り付けられる。エンクロージャー30は、スピーカーユニット20の一部または全部を収容する第1空間S1を形成する筐体である。第1管体40および第2管体50のそれぞれは、エンクロージャー30から外部に延びる変形可能な管体である。
【0015】
本実施形態では、第1管体40は、第1空間S1に連通する第2空間S2を形成する。第2空間S2における第1空間S1とは反対側の端は、閉塞される。このため、第2空間S2によりエンクロージャー30の容積が増大される。この結果、エンクロージャー30を小型化しても、低音を再生することができる。したがって、口径が8cm程度であっても、50Hz以上150Hz以下の低音を再生することができる。なお、第1管体40がエンクロージャー30の一部を構成するともいえる。
【0016】
また、第2管体50は、第1空間S1に連通する第3空間S3を形成する。第3空間S3は、第1空間S1とは反対側の端が開放される。このため、第2管体50は、バスレフポートとして機能する。この結果、この点でも、低音量を効果的に増加させることができる。
【0017】
このような第1管体40および第2管体50のそれぞれは、他の形状の構造体に比べて、狭所に設置しやすい。そのうえ、第1管体40および第2管体50のそれぞれが変形可能であるため、エンクロージャー30を小型化することと相まって、狭く複雑な空間であっても、スピーカー10を設置することができる。以下、スピーカー10の各部を順次詳細に説明する。
【0018】
1-2.スピーカーの各部
図2および
図3は、第1実施形態に係るスピーカー10の断面図である。
図2では、中心軸AXを含む平面でスピーカー10を切断した断面が示される。
図3では、中心軸AXに直交する平面でスピーカー10を切断した断面が示される。
【0019】
図2に示すように、スピーカーユニット20は、振動板21と駆動部22とフレーム23とを有し、これらをユニット化した構造体である。
【0020】
振動板21は、シート材で構成され、振動により放音する振動体である。当該シート材は、例えば、樹脂材料を繊維基材に含浸させた状態で硬化または固化することで得られる。当該樹脂材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、変性ゴム樹脂およびフェノール樹脂等が挙げられる。当該繊維基材としては、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、シリカ繊維、金属繊維、チタン酸カリウム繊維、ジルコニア繊維、ポリアクリレート繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、綿繊維、麻繊維およびセルロース繊維等が挙げられる。
【0021】
振動板21は、中心軸AXに沿う方向に振動する。本実施形態の振動板21は、コーン型である。なお、振動板21の形状は、コーン型に限定されず、例えば、ドーム型等でもよい。
【0022】
駆動部22は、入力される電気的な音信号に基づいて振動板21を駆動する機構である。図示しないが、駆動部22は、例えば、振動板21に固定されるコイルと、当該コイルに作用する磁界を発生させる永久磁石と、を有する。当該コイルは、電気的な音信号が入力されることで、当該永久磁石との間における磁力の相互作用により振動板21を振動させる。この振動により、振動板21から当該音信号に基づく音が放音される。なお、駆動部22は、音信号に基づいて振動板21を駆動することができればよく、コイルおよび永久磁石を有する構成に限定されず、任意である。
【0023】
フレーム23は、振動板21および駆動部22を支持する構造体である。フレーム23は、例えば、鉄または金属材料または樹脂材料で構成される。フレーム23には、振動板21および駆動部22がネジ止めまたは接着剤等により適宜に固定される。なお、フレーム23の形状は、振動板21および駆動部22を支持することができればよく、
図2に示す形状に限定されず、任意である。
【0024】
エンクロージャー30は、スピーカーユニット20、第1管体40および第2管体50が取り付けられる筐体である。エンクロージャー30は、例えば、樹脂材料または金属材料で構成される。ここで、エンクロージャー30は、実質的な剛体である。なお、「実質的な剛体」とは、スピーカー10の通常の使用状況下において加わる外力により変形しないか、または、当該外力により変形したとしても視認できない程度の変形であることを意味する。
【0025】
エンクロージャー30は、概略的に、有底筒状をなす。具体的には、エンクロージャー30は、筒部31とフランジ部32と底部33と取付部34および35とを有する。
【0026】
筒部31は、中心軸AXまわりに沿う筒状をなす。
図2および
図3に示す例では、筒部31は、第1端E01と第1端E01とは反対側の第2端E02とを有する円筒状をなす。筒部31の内側には、第1端E01と第2端E02との間に、スピーカーユニット20の少なくとも一部を収容する第1空間S1が形成される。
図2に示す例では、第1空間S1は、スピーカーユニット20のほぼ全体を収容する。
【0027】
なお、筒部31の形状は、スピーカーユニット20の少なくとも一部を収容可能な第1空間S1を形成することができればよく、
図2および
図3に示す形状に限定されず、任意である。例えば、筒部31は、幅の異なる部分を有してもよい。また、中心軸AXに沿う方向でみた筒部31の内縁または外縁の形状は、円形に限定されず、例えば、四角形または五角形等の多角形でもよいし、楕円形でもよい。
【0028】
フランジ部32は、筒部31における一端である第1端E01に設けられ、中心軸AXから離れる方向に筒部31から突出する。フランジ部32には、前述のスピーカーユニット20のフレーム23がネジ止め等により取り付けられる。また、フランジ部32は、スピーカー10を設置する対象物に対してネジ止め等により取り付けられる。
【0029】
なお、フランジ部32は、筒部31の全周にわたり設けられてもよいし、筒部31の周方向での異なる複数の位置に分割して設けられてもよい。また、フランジ部32は、必要に応じて設ければよく、省略してもよい。
【0030】
底部33は、筒部31におけるフランジ部32とは反対側の端である第2端E02を塞ぐように設けられる。
図2に示す例では、底部33は、中心軸AXに直交する平板状をなす。なお、底部33の形状は、
図2に示す形状に限定されない。例えば、底部33は、厚さの異なる複数の部分を有してもよい。また、底部33の厚さ方向が中心軸AXに対して傾斜してもよい。
【0031】
取付部34は、第1管体40をエンクロージャー30に取り付けるための部分である。
図2および
図3に示す例では、取付部34は、筒部31から突出する筒状の突出部である。取付部34には、筒部31の内外を連通させる孔H1が設けられる。孔H1の一端は、フランジ部32よりも底部33に近い位置で筒部31の内周面に開口する。また、孔H1の他端は、取付部34の先端面に開口する。
図2および
図3に示す例では、取付部34の幅が一定である。取付部34の横断面における外形は、特に限定されないが、第1管体40をエンクロージャー30に取り付けやすくする観点から、円形、楕円形またはこれらに類似する形状であることが好ましい。また、取付部34の横断面における外形が円形、楕円形またはこれらに類似する形状であると、第1管体40が取付部34付近でも様々な方向に曲がりやすくなるという利点もある。
【0032】
なお、取付部34の位置および形状等は、第1管体40を取り付けることができればよく、
図2および
図3に示す例に限定されない。例えば、取付部34は、幅の異なる複数の部分を有してもよい。また、取付部34は、底部33よりもフランジ部32に近い位置に設けられてもよい。また、取付部34は、筒部31から突出しなくてもよい。すなわち、取付部34は、筒部31の内外を連通させる孔H1のみで構成されてもよい。この場合、孔H1に第1管体40を挿入することで嵌め合わせればよい。
【0033】
取付部35は、第2管体50をエンクロージャー30に取り付けるための部分である。
図2および
図3に示す例では、取付部35は、筒部31から突出する筒状の突出部である。
図2および
図3に示す例では、取付部35は、前述の取付部34とは反対方向に突出する。取付部35には、筒部31の内外を連通させる孔H2が設けられる。孔H2の一端は、フランジ部32よりも底部33に近い位置で筒部31の内周面に開口する。また、孔H2の他端は、取付部35の先端面に開口する。
図2および
図3に示す例では、取付部35の幅が一定である。取付部35の横断面における外形は、特に限定されないが、第2管体50をエンクロージャー30に取り付けやすくする観点から、円形、楕円形またはこれらに類似する形状であることが好ましい。また、取付部35の横断面における外形が円形、楕円形またはこれらに類似する形状であると、第2管体50が取付部35付近でも様々な方向に曲がりやすくなるという利点もある。
【0034】
なお、取付部35の位置および形状等は、第2管体50を取り付けることができればよく、
図2および
図3に示す例に限定されない。例えば、取付部35は、幅の異なる複数の部分を有してもよい。また、取付部35は、底部33よりもフランジ部32に近い位置に設けられてもよい。また、中心軸AXに沿う方向における取付部35の位置は、当該方向における取付部34の位置と異なってもよい。また、取付部35は、筒部31から突出しなくてもよい。すなわち、取付部35は、筒部31の内外を連通させる孔H2のみで構成されてもよい。この場合、孔H2に第2管体50を挿入することで嵌め合わせればよい。
【0035】
第1管体40は、エンクロージャー30から外部に延びる変形可能な管体である。
図2および
図3に示す例では、第1管体40は、一定幅の管体である。第1管体40の構成材料としては、第1管体40に可撓性を付与することができればよく、例えば、樹脂材料、ゴム材料およびエラストマー材料等が挙げられる。なお、第1管体40は、幅の異なる複数の部分を有してもよいし、分岐した部分を有してもよい。
【0036】
ここで、第1管体40は、エンクロージャー30よりも剛性が低い。このため、第1管体40の変形の自由度を高めることができる。この結果、様々な形状の空間に第1管体40を設置しやすいという利点がある。同様の観点から、第1管体40は、エンクロージャー30よりも弾性の高い材料で構成されることが好ましい。
【0037】
第1管体40の内側には、第2空間S2が形成される。第1管体40の一方の端E11は、前述の取付部34に接続される。この接続により、第2空間S2が取付部34の孔H1を介して第1空間S1に連通する。
図2および
図3に示す例では、第1管体40の端E11の内側に取付部34が挿入されることで、第1管体40がエンクロージャー30に接続される。第1管体40の他方の端E12は、閉塞される。このため、第2空間S2における第1空間S1とは反対側の端が閉塞される。
図2および
図3に示す例では、第1管体40の端E12が第1管体40と一体的な部材により閉塞される。なお、第1管体40とは別体の部材を用いて、第1管体40の端E12を閉塞してもよい。この場合、当該別体の部材の構成材料は、第1管体40の構成材料と同一でも異なってもよい。
【0038】
第2空間S2は、前述のように、エンクロージャー30の容積を増大させる機能を有する。エンクロージャー30の容積を増大させることで、低音が再生されやすくなる。
【0039】
第2空間S2の容積は、50Hz以上150Hz以下の低音が再生可能な程度に設定される。したがって、第1管体40の長さL1および内径D12のそれぞれは、50Hz以上150Hz以下の低音が再生可能な程度に設定される。
【0040】
第2管体50は、エンクロージャー30から外部に延びる変形可能な管体である。
図2および
図3に示す例では、第2管体50は、一定幅の管体である。第2管体50の構成材料としては、第2管体50に可撓性を付与することができればよく、例えば、樹脂材料、ゴム材料およびエラストマー材料等が挙げられる。なお、第2管体50は、幅の異なる複数の部分を有してもよいし、分岐した部分を有してもよい。また、第2管体50の構成材料は、第1管体40の構成材料と同一でも異なってもよい。
【0041】
ここで、第2管体50は、エンクロージャー30よりも剛性が低い。このため、第2管体50の変形の自由度を高めることができる。この結果、様々な形状の空間に第2管体50を設置しやすいという利点がある。このような観点から、第2管体50は、エンクロージャー30よりも弾性の高い材料で構成されることが好ましい。
【0042】
第2管体50の内側には、第3空間S3が形成される。第2管体50の一方の端E21は、前述の取付部35に接続される。この接続により、第3空間S3が取付部35の孔H2を介して第1空間S1に連通する。
図2および
図3に示す例では、第2管体50の端E21の内側に取付部35が挿入されることで、第2管体50がエンクロージャー30に接続される。第2管体50の他方の端E22は、開放される。このため、第3空間S3における第1空間S1とは反対側の端が開放される。なお、第2管体50の端E22が開放されていれば、第2管体50の端E22に他の部材が取り付けられてもよい。
【0043】
第3空間S3は、前述のように、バスレフポートとして機能する。すなわち、第1空間S1の空気をバネとし、第3空間S3内の空気を質量とする振動系がヘルムホルツ共鳴器を構成する。このヘルムホルツ共鳴器の共振周波数を適宜に設定することで、低音が再生されやすくなる。
【0044】
第3空間S3の容積は、50Hz以上150Hz以下の低音が再生可能な程度に設定される。したがって、第2管体50の長さL2および内径D22のそれぞれは、50Hz以上150Hz以下の低音が再生可能な程度に設定される。具体的には、長さL2と内径D22は特に限定されないが、例えばエンクロージャー容積が500ml程度で共振周波数を60Hz程度にする場合、長さL22は300mmから500mm程度、内径D22は16mmから20mm程度である。
【0045】
以上のように、第1実施形態によれば、狭く複雑な空間であっても設置可能でかつ低音の再生が可能なスピーカー10を実現することができる。
【0046】
2.第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0047】
図4は、第2実施形態に係るスピーカー10Aの断面図である。スピーカー10Aは、エンクロージャー30および第1管体40に代えて、エンクロージャー30A、第1管体40aおよび40bを有する以外は、前述の第1実施形態のスピーカー10と同様である。
【0048】
エンクロージャー30Aは、筒部31、フランジ部32、底部33、取付部34および35のほか、取付部36を有する。ここで、取付部34には、第1管体40aが取り付けられる。取付部36には、第1管体40bが取り付けられる。
【0049】
図4に示す例では、取付部36は、筒部31から突出する筒状の突出部である。
図4に示す例では、取付部36は、前述の取付部34および35の突出方向とは交差する方向に突出する。取付部36には、筒部31の内外を連通させる孔H3が設けられる。孔H3の一端は、フランジ部32よりも底部33に近い位置で筒部31の内周面に開口する。また、孔H3の他端は、取付部36の先端面に開口する。取付部36の形状は、前述の第1実施形態の取付部34と同様である。
【0050】
なお、取付部36の位置および形状等は、第1管体40bを取り付けることができればよく、
図4に示す例に限定されない。また、取付部36は、筒部31から突出しなくてもよい。すなわち、取付部36は、筒部31の内外を連通させる孔H3のみで構成されてもよい。この場合、孔H3に第1管体40bを挿入することで嵌め合わせればよい。
【0051】
第1管体40aおよび40bのそれぞれは、エンクロージャー30Aから外部に延びる変形可能な管体である。第1管体40aおよび40bのそれぞれは、前述の第1実施形態の第1管体40と同様に構成される。
【0052】
第1管体40aの内側には、第2空間S2aが形成される。第2空間S2aは、取付部34の孔H1を介して第1空間S1に連通する。第2空間S2aにおける第1空間S1とは反対側の端が閉塞される。同様に、第1管体40bの内側には、第2空間S2bが形成される。第2空間S2bは、取付部36の孔H3を介して第1空間S1に連通する。第2空間S2bにおける第1空間S1とは反対側の端が閉塞される。
【0053】
第2空間S2aおよびS2bは、エンクロージャー30Aの容積を増大させる機能を有する。第2空間S2aおよびS2bの容積の合計は、50Hz以上150Hz以下の低音が再生可能な程度に設定される。したがって、例えば、第1管体40aおよび40bのそれぞれの内径が前述の第1実施形態の第1管体40の内径D12と等しい場合、第1管体40aの長さL1aと第1管体40bの長さL1bとの合計は、前述の第1実施形態の第1管体40の長さL1と同程度に設定される。このため、第1管体40aおよび40bのそれぞれの長さを第1実施形態の第1管体40の長さよりも短くすることができる。
【0054】
以上の第2実施形態によっても、前述の第1実施形態と同様の効果が得られる。また、第1管体40aおよび40bを用いることで、第1管体40のみを用いる第1実施形態に比べて、エンクロージャー30Aの容積を増加させることが容易であるという利点がある。
【0055】
3.第3実施形態
以下、本発明の第3実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0056】
図5および
図6は、第3実施形態に係るスピーカー10Bの断面図である。
図5では、中心軸AXを含む平面でスピーカー10Bを切断した断面が示される。
図6では、中心軸AXに直交する平面でスピーカー10Bを切断した断面が示される。
【0057】
スピーカー10Bは、エンクロージャー30に代えて、エンクロージャー30Bを有する以外は、前述の第1実施形態のスピーカー10と同様である。
【0058】
エンクロージャー30Bは、取付部35に代えて、取付部37を有する以外は、前述の第1実施形態のエンクロージャー30と同様である。ここで、取付部37には、第2管体50が取り付けられる。
【0059】
図5および
図6に示す例では、取付部37は、底部33から突出する筒状の突出部である。取付部37には、底部33の内外を連通させる孔H4が設けられる。孔H4の一端は、中心軸AXに対して孔H1とは反対側の位置で底部33の内周面に開口する。また、孔H4の他端は、取付部37の先端面に開口する。取付部37の形状は、前述の第1実施形態の取付部35と同様である。
【0060】
なお、取付部37の位置および形状等は、第2管体50を取り付けることができればよく、
図5および
図6に示す例に限定されない。また、取付部37は、底部33から突出しなくてもよい。すなわち、取付部37は、底部33の内外を連通させる孔H4のみで構成されてもよい。この場合、孔H4に第2管体50を挿入することで嵌め合わせればよい。
【0061】
以上の第3実施形態によっても、前述の第1実施形態と同様の効果が得られる。また、第2管体50がエンクロージャー30Bの底部33から突出するので、第2管体50をスピーカーユニット20の後方に引き回しやすいという利点がある。
【0062】
4.第4実施形態
以下、本発明の第4実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0063】
図7および
図8は、第4実施形態に係るスピーカー10Cの断面図である。
図7では、中心軸AXを含む平面でスピーカー10Cを切断した断面が示される。
図8では、中心軸AXに直交する平面でスピーカー10Cを切断した断面が示される。
【0064】
スピーカー10Cは、エンクロージャー30に代えて、エンクロージャー30Cを有する以外は、前述の第1実施形態のスピーカー10と同様である。
【0065】
エンクロージャー30Cは、底部33および取付部35に代えて、底部33Cおよび取付部37Cを有する以外は、前述の第1実施形態のエンクロージャー30と同様である。ここで、取付部37Cには、第2管体50が取り付けられる。
【0066】
底部33Cは、筒部31における第2端E02を塞ぐように設けられる。本実施形態の底部33Cの内面には、
図7に示すように、孔H1に向かって低くなる傾斜面38が設けられる。傾斜面38は、音圧を第2空間S2に導く機能を有する。この機能により、第2空間S2の機能が好適に発揮される。
【0067】
取付部37Cは、中心軸AXまわりの周方向における位置が異なる以外は、前述の第3実施形態の取付部37と同様である。
図7および
図8に示す例では、中心軸AXに沿う方向でみたとき、取付部37Cは、孔H1が延びる方向の延長線上から外れた位置に設けられる。
【0068】
以上の第4実施形態によっても、前述の第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0069】
5.応用例
図9は、スピーカー10が車両100に設置される場合を説明するための図である。
図10では、車両100のインストルメントパネル101の内側にスピーカー10が設置される場合が示される。ここで、第1管体40および第2管体50は、インストルメントパネル101の内側にスピーカー10を配置される。これにより、意匠性に優れる車両を提供することができる。なお、スピーカーユニット20は、車内に露出してもよい。
【0070】
また、第2管体50におけるスピーカーユニット20とは反対側の端は、車内に露出される。これにより、第2管体50によるバスレフポートの機能が好適に発揮される。ここで、第2管体50の当該端は、ユーザーから見えない位置で車内に露出させることが好ましい。これにより、意匠性に優れる車両100を提供することができる。
【0071】
以上の応用例によれば、インストルメントパネル101の内側の空間にスピーカー10を配置することができる。この結果、車両100におけるドア等の他の部位に設置するスピーカーをなくしたり、当該他の部位に設置するスピーカーの数を少なくしたりしても、低音の再生が可能となる。また、第1管体40および第2管体50が遮蔽物により視覚的に隠れるので、意匠性に優れる車両100を提供することができる。
【0072】
6.変形例
本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、以下に述べる各種の変形が可能である。また、各実施形態及び各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0073】
6-1.変形例1
前述の各実施形態では、1個の第1管体40または2個の第1管体40aおよび40bを有する構成が例示されるが、この例示に限定されず、第1管体の数が3個以上でもよい。また、前述の各実施形態では、第2管体50の数が1個である構成が例示されるが、この例示に限定されず、第2管体50の数が2個以上でもよい。
【0074】
図10は、変形例1に係るスピーカー10Dの断面図である。スピーカー10Dは、第2管体50を2個有する以外は、前述の第4実施形態のスピーカー10Cと同様である。スピーカー10Dは、エンクロージャー30に代えて、エンクロージャー30Dを有する。
【0075】
エンクロージャー30Dの底部33には、2個の取付部37Cが設けられる。各取付部37Cには、第2管体50が取り付けられる。以上の変形例1によっても、前述の第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0076】
6-2.変形例2
図11は、変形例2に係るスピーカー10Eの断面図である。スピーカー10Eは、第2管体50に代えて、栓60を有する以外は、前述の第3実施形態のスピーカー10Bと同様である。
【0077】
栓60は、取付部37の孔H4を塞ぐ部材である。栓60は、例えば、ゴム材料、樹脂材料またはエラストマー材料等の弾性材料で構成される。以上の変形例2によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。ここで、第2管体50によるバスレフポートの機能が発揮されない。この結果、音の再生特性を調整することができる。
【0078】
6-3.変形例3
図12は、変形例3に係るスピーカー10Fの断面図である。スピーカー10Fは、第1管体40および第2管体50に代えて、栓60および70を有する以外は、前述の第3実施形態のスピーカー10Bと同様である。
【0079】
栓70は、取付部34の孔H1を塞ぐ部材である。栓70は、前述の栓60と同様に構成される。以上の変形例3に係るスピーカー10Fは、前述の各実施形態または各変形例に係るスピーカーと組み合わせて用いることで、音の再生特性を調整することができる。
【0080】
6-4.変形例4
図13は、変形例4に係るスピーカー10Gの断面図である。スピーカー10Gは、第1管体40に代えて、第1管体40Gを有する以外は、前述の第2実施形態のスピーカー10Aと同様である。
【0081】
第1管体40Gは、両端が開放する管体である。第1管体40Gの一端は、取付部34に接続される。一方、第1管体40Gの他端は、取付部36に接続される。このような第2空間S2は、その両端からの圧力の均衡により第2空間S2の途中で区分けされる。この区分けの部分が第2空間S2を閉塞する壁として機能する。以上の変形例4によっても、前述の第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0082】
7.付記
以上に例示する形態または変形例から、例えば以下の態様が把握される。
【0083】
本発明の好適な態様(第1態様)に係るスピーカーは、スピーカーユニットと、前記スピーカーユニットが取り付けられ、前記スピーカーユニットの一部または全部を収容する第1空間を形成するエンクロージャーと、前記エンクロージャーから外部に延びる変形可能な1以上の管体と、を有し、前記1以上の管体のうちの一部または全部は、前記第1空間に連通する第2空間を形成し、前記第2空間における前記第1空間とは反対側の端が閉塞される。
【0084】
以上の態様によれば、第2空間によりエンクロージャーの容積が増大される。このため、エンクロージャーを小型化しても、低音を再生することができる。また、管体は、他の形状の構造体に比べて、狭所に設置しやすい。そのうえ、管体が変形可能であるため、エンクロージャーを小型化することと相まって、狭く複雑な空間であっても、スピーカーを設置することができる。
【0085】
第1態様の好適例(第2態様)において、前記1以上の管体は、前記第2空間を形成する1以上の第1管体と、前記第1空間に連通する第3空間を形成する1以上の第2管体と、を含み、前記第3空間における前記第1空間とは反対側の端が開放される。以上の態様によれば、第1管体は、エンクロージャーの容積を増大させる。第2管体は、バスレフポートとして機能する。これらの管体により低音量を効果的に増加させることができる。
【0086】
第1態様または第2態様の好適例(第3態様)において、前記1以上の管体は、前記第2空間を形成する複数の管体を含む。以上の態様によれば、エンクロージャーの容積を増加させることが容易である。
【0087】
第1態様から第3態様のいずれかの好適例(第4態様)において、前記1以上の管体のそれぞれは、前記エンクロージャーよりも剛性が低い。以上の態様によれば、管体の変形の自由度を高めることができる。この結果、様々な形状の空間に管体を設置しやすいという利点がある。
【0088】
第1態様から第4態様のいずれかの好適例(第5態様)において、前記1以上の管体のそれぞれは、前記エンクロージャーよりも弾性の高い材料で構成される。以上の態様によれば、管体の変形の自由度を高めることができる。この結果、様々な形状の空間に管体を設置しやすいという利点がある。
【0089】
第1態様から第5態様のいずれかの好適例(第6態様)において、前記エンクロージャーには、前記第1空間の内外を連通する複数の孔が設けられており、前記複数の孔は、前記1以上の管体に接続される1以上の第1孔と、前記1以上の管体に接続されずに閉塞される1以上の第2孔と、を含む。以上の態様によれば、第1孔の数と第2孔の数との割合により音の再生特性を調整することができる。
【0090】
本発明の好適な態様(第7態様)に係るエンクロージャーは、スピーカーユニットが取り付けられるエンクロージャーであって、前記スピーカーユニットが取り付けられる第1端と、前記第1端とは反対側の第2端と、を有し、前記第1端と前記第2端との間に前記スピーカーユニットの一部または全部を収容する空間を形成する筒部と、前記第2端を塞ぐ底部と、を有し、前記筒部および前記底部のうちの一方または両方には、前記空間の内外を連通する複数の孔が設けられる。以上の態様によれば、当該複数の孔のうちの少なくとも1つに、第2空間を形成する管体を接続することで、狭く複雑な空間であっても設置可能でかつ低音域での再生が可能なスピーカーを実現することができる。
【0091】
本発明の好適な態様(第8態様)に係る車両は、前述のいずれかの態様のスピーカーを有する。以上の態様によれば、インストルメントパネルまたはヘッドコンソール等のパネルの内側の空間にスピーカーを配置することができる。この結果、車両におけるドア等の他の部位に設置するスピーカーをなくしたり、当該他の部位に設置するスピーカーの数を少なくしたりしても、低音の再生が可能となる。
【0092】
第8態様の好適例(第9態様)において、前記1以上の管体は、聴取空間に対して遮蔽物により隔てられる空間に設置される。以上の態様によれば、管体が遮蔽物により視覚的に隠れるので、意匠性に優れる車両を提供することができる。
【符号の説明】
【0093】
10…スピーカー、10A…スピーカー、10B…スピーカー、10C…スピーカー、10D…スピーカー、10E…スピーカー、10F…スピーカー、20…スピーカーユニット、30…エンクロージャー、30A…エンクロージャー、30B…エンクロージャー、30C…エンクロージャー、30D…エンクロージャー、31…筒部、33…底部、33C…底部、40…第1管体、40a…第1管体、40b…第1管体、40G…第1管体、50…第2管体、100…車両、101…インストルメントパネル(遮蔽物)、E01…第1端、E02…第2端、H1…孔、H2…孔、H3…孔、H4…孔、S1…第1空間、S2…第2空間、S2a…第2空間、S2b…第2空間、S3…第3空間。