(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】軸受装置及び信号処理装置
(51)【国際特許分類】
F16C 41/00 20060101AFI20240509BHJP
F16C 19/52 20060101ALI20240509BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20240509BHJP
F16C 19/36 20060101ALI20240509BHJP
G01B 7/30 20060101ALN20240509BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C19/52
F16C19/06
F16C19/36
G01B7/30 T
(21)【出願番号】P 2020003653
(22)【出願日】2020-01-14
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】小口 寿明
【審査官】角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第10100299(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0078537(US,A1)
【文献】特開2007-071280(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0282222(US,A1)
【文献】特表2009-516160(JP,A)
【文献】特開2007-057299(JP,A)
【文献】特開2017-096445(JP,A)
【文献】特表2006-506276(JP,A)
【文献】特開2016-053349(JP,A)
【文献】特開2014-059412(JP,A)
【文献】特開平10-104125(JP,A)
【文献】特開2009-020013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00-19/56
33/30-33/66
41/00-41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受装置と信号処理装置とからなるシステムであって、
前記軸受装置は、
回転軸の外周に固定される内輪と、
前記内輪の径方向外側に設けられた複数の転動体と、
前記転動体の径方向外側に設けられて、前記内輪との間に前記転動体を回転可能に挟持する外輪と、を備え
、
前記外輪は、前記回転軸の回転中心軸の方向に第1端面と、前記第1端面の反対側の端面となる第2端面を有し、前記第1端面は前記外輪を保持する構造体の端部の径方向延出部に当接して変形が規制され、前記第2端面には当接する物体がなく前記第2端面の変形は規制されず、
前記軸受装置は、前記第2端面に、前記回転軸の周方向に所定間隔をおいて
順次設けられた
第1歪み検出部
、第2歪み検出部、第3歪み検出部及び第4歪み検出部を備え
、
前記所定間隔は、前記複数の転動体の周方向ピッチの1/4であり、
前記信号処理装置は、
前記軸受装置に有線または無線で接続されて、前記軸受装置の前記第1歪み検出部乃至前記第4歪み検出部が検出する検出値を取得する取得部と、
前記第1歪み検出部の検出値と前記第3歪み検出部の検出値の差分と、前記第2歪み検出部の検出値と前記第4歪み検出部の検出値の差分とに基づいて、前記回転軸の回転角度を算出する算出部と、を備えるシステム。
【請求項2】
前記第2端面には、前記
第1歪み検出部乃至前記第4歪み検出部の各々を覆うケースが設けられている請求項1に記載の
システム。
【請求項3】
前記
第1歪み検出部乃至前記第4歪み検出部の各々は、金属薄膜または半導体歪みゲージからなる請求項1
または2に記載の
システム。
【請求項4】
前記
第1歪み検出部乃至前記第4歪み検出部の各々が金属薄膜からなる場合、当該金属薄膜はCr、Cr-N、CrAlB、CrAl、NiCr及びCrMnのいずれかを含む請求項
3に記載の
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置と、当該軸受装置から得られる信号を処理する信号処理装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸受の荷重を検出する技術が知られている。例えば、特許文献1には,軸受の荷重を検出する方法として、荷重の変化に伴う転動体の接触部の位置の変化を磁歪型センサで検知し、当該位置の変化を荷重に換算する技術が開示されている。特許文献1では、軸受の外輪外径から転動体の軌道面に向かって孔を開け、当該孔に磁歪型センサを挿入している。磁歪型センサは、磁場の変化を検出するセンサである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、磁歪型センサを設置するために軸受の外輪に孔を開けており、軸受に力が作用した場合、当該孔に応力集中が発生する可能性がある。
また、軸受を使用する各種装置・機械に対する市場のニーズは、ますます高度化・多様化している。したがって重要な機械要素である軸受に対しても同様である。例えば、ロボットの関節部、工作機械スピンドル、風力発電機等に使用される軸受に対しては、より高度な作動制御を行うために、荷重だけでなく、軸受(回転軸)の回転角度の検出も期待されている。しかしながら、特許文献1には、磁歪型センサを用いて軸受の荷重を検出する技術は開示されているが、軸受(回転軸)の回転角度の検出する技術は開示されていない。
そこで、本発明は、応力集中を発生することなく、歪み検出を行うことができる軸受装置を提供することを目的とする。また、本発明は、歪み検出部を用いて回転軸の回転角度を検出できる信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一つの態様の軸受装置は、回転軸の外周に固定される内輪と、前記内輪の径方向外側に設けられた複数の転動体と、前記転動体の径方向外側に設けられて、前記内輪との間に前記転動体を回転可能に挟持する外輪と、を備える軸受装置であって、前記外輪は、前記回転軸の回転中心軸の方向に第1端面と、前記第1端面の反対側の端面となる第2端面を有し、前記第1端面と前記第2端面の少なくとも一方は、前記外輪を保持する構造体に非接触な部分を有し、前記軸受装置は、前記構造体に非接触な部分に、前記回転軸の周方向に所定間隔をおいて設けられた複数の歪み検出部を備える。
回転軸にアキシャル荷重が作用した場合に、外輪を保持する構造体に接触していない端面部分は、当該端面部分に垂直な方向に歪むことができる。歪み検出部は、当該端面部分に設けられているので、この歪みを検出することができる。外輪に孔を設けずに歪み検出部を設けたので、外輪には応力集中が発生しない。
【0006】
また、上記の軸受装置において、内輪の端面が、内輪を保持する構造体に非接触な部分を有する場合には、歪み検出部を、当該非接触な端面部分に設けてもよい。
前記複数の歪み検出部は、前記複数の転動体の周方向ピッチの1/nの間隔で設けられてもよい。nは、例えば、3以上の整数である。前記nが3の場合、前記複数の歪み検出部は、3つの歪み検出部である。前記nが4の場合、前記複数の歪み検出部は、例えば、2つまたは4つの歪み検出部である。
前記複数の歪み検出部の各々は、例えば、金属薄膜または半導体歪みゲージから構成される。金属薄膜は、例えば、Cr、Cr-N、CrAlB、CrAl、NiCr及びCrMnのいずれかを含む。
【0007】
本発明の他の態様の信号処理装置は、前記軸受装置に有線または無線で接続されて、前記軸受装置の複数の歪み検出部が検出する検出値を取得する取得部と、前記取得部で取得した前記検出値に基づいて、前記回転軸の回転角度を算出する算出部と、を備える。前記算出部は、例えば、歪み検出部が検出する検出値(歪みの値)から、リサージュ曲線を生成し、リサージュ曲線に基づいて、回転軸の回転角度を算出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、応力集中を発生させることなく、歪み検出を行うことができる。また、本発明の他の態様によれば、歪み検出部を用いて回転軸の回転角度を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は本発明の実施形態1による信号処理システムの概略図である。
【
図2】
図2は歪みゲージ及びその近傍の部品の拡大図である。
【
図3】
図3は軸受の端面における歪みゲージの配置を示す概略側面図である。
【
図4】
図4は軸受と歪みゲージの概略断面図である。
【
図5】
図5は歪みゲージの出力信号の流れを示す図である。
【
図7】
図7は信号処理装置の構成を示す概略図である。
【
図8】
図8は実施形態1の変形例を示す概略図である。
【
図9】
図9は本発明の実施形態2による軸受装置の概略図である。
【
図10】
図10は実施形態2で得られるリサージュ曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0011】
<実施形態1>
図1は、本実施形態における軸受の回転角度を検出する信号処理システム1の全体図である。本実施形態では、軸受10に歪み検出部としての歪みゲージ20を取り付けて、軸受10の回転角度(回転軸12の回転角度)を検出する場合を説明する。歪みゲージ20は軸受10の回転角度を検出するので、軸受角度センサと称することもできる。軸受10は、例えば、ボールベアリングである。信号処理システム1の主な構成要素は、軸受10に取付けられた歪みゲージ20と、歪みゲージ20の出力信号を処理する信号処理装置33である。
【0012】
図1に示すように、軸受10は、回転軸12の外周に固定される内輪14と、内輪14の径方向外側に位置する外輪16と、内輪14と外輪16の間に設けられた転動体18と、を有する。内輪14と外輪16の間に、転動体18が回転可能に挟持されている。軸受10は、ハウジング30に固定されている。転動体18は、内輪14の周方向に沿って複数設けられている。転動体18は、保持器(図示せず)にて周方向等間隔(同一の周方向ピッチ)に保持されており、転動体18は保持器により保持されながら、内輪14と共に動く。符号J1は回転軸12の回転中心軸を示している。
【0013】
回転軸12は、軸受10が取り付けられる小径部12aと、小径部12aより大きな直径を有する大径部12bとを有する。小径部12aと大径部12bの境界に、回転軸12の径方向に延びる段部12cが形成される。軸受10の内輪14の左端面14aは、回転軸12の段部12cに当接している。軸受10の内輪14の右端面14bは、ベアリングナット22に当接している。ベアリングナット22は、回転軸12の小径部12aの外周に形成された雌ネジ部24に螺合しており、軸受10はベアリングナット22により、右方向に移動できないようになっている。
【0014】
ハウジング30は、円筒部26と、円筒部26から径方向内側に延びるフランジ部28とを有する。円筒部26の内周面26aとフランジ部28の内側面28aにより、ハウジング30の内部に、座ぐり穴29が形成される。また、フランジ部28の内周縁28bにより、貫通穴31が形成される。
軸受10の外輪16の右端面16aは、フランジ部28の内側面28aに当接しており、
図1において右方向に変形することができない。軸受10の外輪16の外周面16bは、ハウジング30の円筒部26の内周面26aに当接しており、径方向外側に変形することができない。軸受10の外輪16の左端面16cは、ハウジング30に接触していないので、
図1において左方向に変形することができる。より詳しくは、軸受10の外輪16の左端面16cは、左方向に凸及び凹に変形することができる。ハウジング30は、外輪16を保持する構造体であると言える。また、左端面16cは、ハウジング30(構造体)に非接触な部分と言える。
【0015】
軸受10の外輪16の左端面16cには、歪みゲージ20が、外輪16の周方向に所定間隔で複数設けられている。本実施形態では2つの歪みゲージ20が設けられており、
図1にはそのうちの1つが示されている。
図2は、歪みゲージ20とその近傍の拡大図である。
図1及び
図2に示すように、歪みゲージ20は外輪16の左端面16cに取付けられている。よって、軸受10の外輪16の左端面16cが紙面左方向に凸に変形すると、歪みゲージ20も紙面左方向に凸に変形する。また、軸受10の外輪16の左端面16cが紙面右方向に凹に変形すると、歪みゲージ20も紙面右方向に凹に変形する。本実施形態では、歪みゲージ20は、外輪16の左端面16cに、接着剤により貼り付けられている。
【0016】
歪みゲージ20は、ケース32により覆われている。ケース32は、圧入、接着、溶着等により、外輪16の左端面16cに取付けられている。ケース32の断面は⊂形状を有しており、ケース32の左側面には、穴32aが形成されている。
図1に示すように、軸受10から離れた所に信号処理装置33が設けられている。信号処理装置33からはケーブル34が延びている。ケーブル34は、例えば、シールドケーブルである。
図2に示すように、ケーブル34は、ケース32の穴32aを通って、ケース32の中に延びている。ケース32には、当該穴32aを塞ぐシール35が設けられている。ケーブル34はシール35を貫通して延びている。
【0017】
ケース32の中において、ケーブル34の先端には回路基板37が設けられている。回路基板37は、ケース32に固定されている。回路基板37の右端には、スプリングコンタクト40が設けられている。スプリングコンタクト40の先端には接点部41が設けられており、当該接点部41が歪みゲージ20の電極パッド21に接している。回路基板37には、アンプ38(
図5)やアナログデジタル変換器39(
図5)などのICチップ(集積回路チップ)が実装されている。
【0018】
本実施形態で使用する歪みゲージ20は、例えば、Cr、Cr-N、CrAlB、CrAl、NiCr、CrMnなどの金属薄膜により形成されている。どの材質の金属薄膜を採用するかは、例えば、要求されるゲージ率や温度安定性等に基づいて決める。ゲージ率は、歪みを抵抗変化に変換する率である。温度安定性は、例えば、高温でも正しい検出値を出せる能力のことである。
あるいは、歪みゲージ20として、半導体歪みゲージを使用してもよい。半導体歪みゲージは、金属薄膜で構成した歪みゲージより、ゲージ率が高い。
【0019】
図3は軸受10と2つの歪みゲージ20(20A、20B)を、中心軸J1方向から見た図である。尚、
図3では、歪みゲージ20A、20Bの配置を分かり易くするために、ケース32等を省略してある。
図3に示すように、2つの歪みゲージ20A、20Bが、軸受10の外輪16の左端面16cに設けられている。本実施形態では、歪みゲージ20Aと20Bの間隔は、転動体18のピッチθの1/4である。各歪みゲージ20A、20Bは、外輪16の左端面16cに設けられて、当該左端面16cの凸変形に伴い、
図3の紙面垂直方向に凸に変形することができ、当該左端面16cの凹変形に伴い、
図3の紙面垂直方向に凹に変形することができる。
図3において軸受10の内輪14と転動体18は、矢印Cで示すように、反時計回りに回転するとする。以下の記載では、歪みゲージ20Aを第1歪みゲージと称し、歪みゲージ20Bを第2歪みゲージと称する。
【0020】
第1歪みゲージ20A及び第2歪みゲージ20Bによる歪みの検出について、
図1~
図5を参照して説明する。以下の説明では、
図3に示した3つの転動体18のうちの中央に位置する転動体18について説明をする。
図1及び
図4に示すように、回転軸12には左方向から回転中心軸J1方向に力Fが作用するとする。力Fの一部は、軸受10に対して、
図4に示すように、アキシャル荷重AXとして作用する。
アキシャル荷重AXが作用している状態で、
図3に示すように、転動体18が第1歪みゲージ20Aを通過すると、ハウジング30に拘束されていない外輪左端面16cが
図4の左方向に凸に変形する。当該変形に伴い、第1歪みゲージ20Aも
図4の左方向に凸に変形する。これを
図3で説明すると、
図3に示した第1歪みゲージ20Aが紙面垂直方向に凸に変形することになる。
【0021】
転動体18が、さらにθ/4ピッチ反時計回りに進んで、第2歪みゲージ20Bの位置に至ると、第2歪みゲージ20Bが位置する外輪左端面16cと、第2歪みゲージ20Bとが
図3において紙面垂直方向に凸に変形する。この時、歪みゲージ20Aが位置する外輪左端面16cと第1歪みゲージ20Aは、凸変形から元の状態に戻る。
転動体18が、さらにθ/4ピッチ反時計回りに進むと、第2歪みゲージ20Bが位置する外輪左端面16cと第2歪みゲージ20Bは、凸変形から元の状態に戻り、第1歪みゲージ20Aが位置する外輪左端面16cと第1歪みゲージ20Aは、紙面垂直方向に凹に変形する。このように、外輪左端面16cの表面変形は、θ/4毎に凸、平ら、凹、平らを繰り返し、第1歪みゲージ20A及び第2歪みゲージ20Bの各々も、同様な変形を繰り返す。
【0022】
図2に示すように、第1歪みゲージ20A及び第2歪みゲージ20Bの各々の変形は、スプリングコンタクト40を介して電気信号として回路基板37に伝達され、回路基板37からケーブル34を介して信号処理装置33に伝達される。
【0023】
図5は、各歪みゲージ20(20A、20B)からケーブル34までの信号の流れの概要を示している。歪みゲージ20の出力は電圧信号である。
【0024】
図6は、各歪みゲージ20の出力信号(歪み信号)から得られるリサージュ信号(リサージュ曲線R)を示している。リサージュ曲線Rは、ケーブル34を介して信号処理装置33に供給された信号に基づいて、信号処理装置33により生成される。
図6のグラフの横軸は軸受10の周方向の回転角度(回転軸12の回転角度)を示しており、縦軸は歪みを示している。リサージュ曲線Rを用いれば、歪みが分かると、軸受10の回転角度が分かる。本実施形態では、軸受10の回転角度は、内輪14の回転角度であり、且つ、回転軸12の回転角度である。このように取得した回転角度に基づいて、信号処理装置33は、回転軸12の回転速度を計算することもできる。また、リサージュ曲線Rにより、回転軸12の回転方向を特定することもできる。信号処理装置33は、歪みゲージの出力信号を所定のアルゴリズムにより処理する装置である。
【0025】
図7は、信号処理装置33の構成を示す図である。信号処理装置33は、入力部44、制御部45、記憶部46、表示部47及び受信部48を有する。信号処理装置33は、例えば、パーソナルコンピュータまたはタブレット端末である。
入力部44は、ボタン、スイッチ、タッチパネル等からなり、ユーザは入力部44を介して各種入力等を行う。ユーザは、信号処理装置33を操作する際に、入力部44を使用する。入力部44は、操作部と称することもできる。
【0026】
制御部45は、1つまたは複数のCPUやMPUにより構成され、信号処理装置33の各部44及び46~48の動作を制御する。制御部45は、記憶部46に記憶される制御プログラムを実行することにより信号処理装置33を制御する。
記憶部46は、HDD、ROM、RAM、ICメモリカード等により構成され、制御部45が実行する制御プログラムや軸受10の回転角度を計算するためのアルゴリズム等の各種情報を記憶する。リサージュ曲線Rの生成や、軸受10の回転角度の計算は、記憶部46に記憶された制御プログラムを制御部45が実行することにより行われる。尚、本実施形態では、軸受10の回転角度を計算した後に、当該角度に基づいて、軸受10の回転速度(回転軸12の回転速度)を計算することもできる。
【0027】
表示部47は、LCD(液晶ディスプレイ)などからなり、各種データ、数値、文字および画像等の表示を行う。リサージュ曲線Rや軸受10の回転角度も表示部47に表示される。
受信部48は、ケーブル34を介して、歪みゲージ20の出力信号を受け取る。
【0028】
<実施形態1の効果>
上記したように、本実施形態によれば、歪みゲージ20A、20Bの出力信号に基づいて、軸受10の回転角度(回転軸12の回転角度)を取得することができる。つまり、軸受10の回転角度は、回転角度センサを用いずに取得することができる。また、
図5のリサージ曲線Rに基づいて、回転軸12の回転方向を特定することもできるし、回転軸12の回転速度を算出することもできる。
【0029】
尚、上記した実施形態では、2つの歪みゲージ20A、20Bを転動体ピッチθの1/4の間隔で設けたが、本実施形態はこのような構成に限定されない。2つの歪みゲージ20A、20Bを転動体ピッチθの1/nの間隔で設けてよい(nは3または5以上の整数)。例えば、転動体の1ピッチθの中で、3つの歪みゲージをθ/3間隔で設けてもよい。
また、転動体の1ピッチθの中で、4つの歪みゲージをθ/4間隔で設けてもよい。4つの歪みゲージ20を設ける場合を、実施形態2として後述する。
さらに、
図8に示すように、2つの歪みゲージ20A、20Bを転動体の1ピッチθの中でθ/4間隔で設けると共に、別の1ピッチθの中で、2つの歪みゲージ20Aa及び20Bbをθ/4間隔で設けてもよい。このようにすると、歪みゲージ20A、20Bが故障した際に、もう一対の歪みゲージ20Aa及び20Bbから得られる信号を用いて、軸受10の回転角度を検出することができる。
【0030】
上記した実施形態では、歪みゲージ20A、20Bを軸受10の外輪16の左端面16cに取付けたが、内輪14の左端面14aが
図1の左方向に自由に変形できる場合(例えば、段部12cの高さが小さい場合)には、歪みゲージ20A、20Bを内輪14の左端面14aに取付けてもよい。この場合、歪みゲージ20A、20Bは回転軸12と共に回転するので、歪みゲージ20A、20Bの検出値(出力信号)は、無線で信号処理装置33に送信される。
【0031】
上記した実施形態では、歪みゲージ20A、20Bを外輪左端面16cに貼り付けたが、本実施形態はこのような構成に限定されない。例えば、歪みゲージ20A、20Bを外輪左端面16cにエッチングやレーザ加工等により直接形成してもよい。
軸受10はボールベアリングではなく、円錐ころ軸受でもよい。また、回路基板38から信号処理装置33へ信号を伝達するために、ケーブル34により回路基板38を信号処理装置33に接続したが、回路基板38と信号処理装置33を無線で接続してもよい。
【0032】
<実施形態2>
転動体の1ピッチθの中で、4つの歪みゲージをθ/4間隔で設ける場合を、実施形態2として説明する。実施形態1と同様な構成には同じ参照符号を付け、詳細な説明は省略する。
図9は実施形態2による軸受10と歪みゲージ20(20A、20B、20C、20D)を示す図である。実施形態1との相違点は、第2歪みゲージ20Bの左横に第3歪みゲージ20Cを設け、第3歪みゲージ20Cの左横に第4歪みゲージ20Dを設けたことである。第2歪みゲージ20Bと第3歪みゲージ20Cの間隔はθ/4であり、第3歪みゲージ20Cと第4歪みゲージ20Dの間隔もθ/4である。第3歪みゲージ20C及び第4歪みゲージ20Dは、軸12の外輪16の左端面16cに設けられている。
【0033】
実施形態2では、信号処理装置33は、4つの歪みゲージ20A~20Dから得られる4つの出力信号から
図10のようなリサージュ曲線R1を生成する。具体的には、信号処理装置33は、第1歪みゲージ20Aと第3歪みゲージ20Cのリサージュ信号(Aと/A)の差動信号を用いると共に、第2歪みゲージ20Bと第4歪みゲージ20Dのリサージュ信号(Bと/B)の差動信号を用いる。第1歪みゲージ20Aと第3歪みゲージ20Cのリサージュ信号(Aと/A)の差動信号はA-(/A)であり、第2歪みゲージ20Bと第4歪みゲージ20Dのリサージュ信号(Bと/B)の差動信号はB-(/B)であるので、
図6のリサージュ曲線Rと比較して、
図10のリサージュ曲線R1の振幅は2倍になる。
【0034】
実施形態2によれば、位相が180度ずれている2つの信号(例えば、Aと/A)の差動信号を用いることにより、各信号に含まれるノイズ(例えば、外部からの電磁波)を引算することになるので、ノイズをキャンセルすることができる。また、曲線の振幅が2倍になるので、信号感度が2倍になり、その結果として、SN比を上げることができる。
【符号の説明】
【0035】
10…軸受、12…回転軸、14…内輪、16…外輪、18…転動体、20、20A、20B、20C、20D…歪みゲージ、30…ハウジング、33…信号処理装置、J1…回転中心軸