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特許7484177構内交換機、電話帳検索方法及び電話帳検索プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】構内交換機、電話帳検索方法及び電話帳検索プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04Q 3/58 20060101AFI20240509BHJP
   H04M 3/42 20060101ALI20240509BHJP
   G10L 15/00 20130101ALI20240509BHJP
   G10L 15/10 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H04Q3/58 107
H04M3/42 P
H04M3/42 R
G10L15/00 200A
G10L15/10 200W
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020005773
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021114672
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 大地
【審査官】田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-027364(JP,A)
【文献】特開平11-017796(JP,A)
【文献】特開2012-253665(JP,A)
【文献】特開2017-005489(JP,A)
【文献】特開2014-081755(JP,A)
【文献】特開2004-015584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 3/58- 3/62
H04M 3/00
H04M 3/38- 3/58
G10L 13/00-13/10
G10L 15/00-17/26
G10L 19/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話端末の通話の発着信制御を行う構内交換機であって、
複数の電話帳データを記憶する電話帳データ記憶部と、
前記電話端末に入力された信号を受信し受信された受信信号における音声信号から音声情報を認識する音声認識部と、
認識された前記音声情報に対応する対応電話帳データを前記複数の電話帳データから検索する電話帳検索部と、
検索された前記対応電話帳データを前記電話端末に送信する電話帳データ送信部と、
前記音声認識部を介して前記電話端末での通話の一部からテキスト情報及び音声パターンを抽出し、前記テキスト情報及び前記音声パターンを前記電話帳データ記憶部の前記複数の電話帳データに追加して更新する電話帳データ更新部と、
を有することを特徴とする構内交換機。
【請求項2】
前記音声認識部は前記受信信号における電話帳検索信号を受付ける命令受付部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の構内交換機。
【請求項3】
前記電話端末に入力された音声入力に基づき前記音声認識部が認識したテキスト情報に対応する前記音声パターンを、前記電話帳データ送信部は、前記電話端末に送信する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の構内交換機。
【請求項4】
電話端末の通話の発着信制御を行う構内交換機における電話帳検索方法であって、
複数の電話帳データを記憶する電話帳データ記憶ステップと、
前記電話端末に入力された信号を受信し受信された受信信号における音声信号から音声情報を認識する音声認識ステップと、
認識された前記音声情報に対応する対応電話帳データを、前記複数の電話帳データから検索する電話帳検索ステップと、
検索された前記対応電話帳データを前記電話端末に送信する電話帳データ送信ステップと、
前記音声認識ステップを介して前記電話端末での通話の一部からテキスト情報及び音声パターンを抽出し、前記テキスト情報及び前記音声パターンを前記複数の電話帳データに追加して更新する電話帳データ更新ステップと、
を含むことを特徴とする電話帳検索方法。
【請求項5】
前記受信信号における電話帳検索信号を受付ける命令受付ステップを含む、ことを特徴とする請求項に記載の電話帳検索方法。
【請求項6】
前記電話端末に入力された音声入力に基づき前記音声認識ステップで認識したテキスト情報に対応する前記音声パターンを、前記電話帳データ送信ステップにて、前記電話端末に送信する、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の電話帳検索方法。
【請求項7】
電話端末の通話の発着信制御を行う構内交換機のコンピュータに、
複数の電話帳データを記憶する電話帳データ記憶ステップと、
前記電話端末に入力された信号を受信し受信された受信信号における音声信号から音声情報を認識する音声認識ステップと、
認識された前記音声情報に対応する対応電話帳データを前記複数の電話帳データから検
索する電話帳検索ステップと、
検索された前記対応電話帳データを前記電話端末に送信する電話帳データ送信ステップと、
前記音声認識ステップを介して前記電話端末での通話の一部からテキスト情報及び音声パターンを抽出し、前記テキスト情報及び前記音声パターンを前記複数の電話帳データに追加して更新する電話帳データ更新ステップと、
を実行させることを特徴とする電話帳検索プログラム。
【請求項8】
前記受信信号における電話帳検索信号を受付ける命令受付ステップを実行させる、ことを特徴とする請求項に記載の電話帳検索プログラム。
【請求項9】
前記電話端末に入力された音声入力に基づき前記音声認識ステップで認識したテキスト情報に対応する前記音声パターンを、前記電話帳データ送信ステップにて、前記電話端末に送信する、ことを特徴とする請求項7又は8に記載の電話帳検索プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話端末の通話の発着信制御を行う構内交換機(PBX:Private Branch Exchange)と、該構内交換機において、操作者の発声した音声を基に電話帳検索を行い、目的の電話番号に検索する電話帳検索方法と、当該電話帳検索方法を実行するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、音声認識機能により該当する宛先の発信番号を電話帳データから読み出し、読み出した発信番号へダイヤルする携帯電話が記載されている。また、特許文献2には、音声認識により読み取られる名前等から電話帳を検索し、該当する電話番号等のデータを読み出す移動通信端末装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-053937号公報
【文献】特開2002-199085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記携帯電話やPHS等の移動通信端末装置は音声認識手段を内蔵し、当該装置だけで音声認識技術を利用した電話帳の検索や発着信履歴の参照が可能となっている。従来の音声認識機能では、操作者の発声する言葉を基に、名詞、動詞、副詞等の識別や、これらの組み合わせによる内容の認識が必要である場合が多くなる。そのために、上記移動通信端末装置では、音声認識人工知能(AI)の搭載や機械学習の導入によって対応することになり、サービス実現にあたり比較的高度なハードウェア及びソフトウェアの搭載が必要になる。よって、移動通信端末装置ごとにデータやプログラムの保存量が増加するという問題が発生する。
【0005】
さらに、上記移動通信端末装置では、当該装置の高機能化が必要になり、製品コストへの影響やハードウェアとして各装置のサイズが大きくなるという課題もある。このため、多機能電話機やPHS等の多数の電話端末を収容する企業向け構内交換機システムでは、電話端末ごとに設けた音声認識機能は一般的ではない。
【0006】
本発明は、上記した従来の課題に鑑みなされたものであり、構内交換機に収容する電話端末ごとに保存するプログラムやデータの保存量の増加を抑制できる構内交換機、電話帳検索方法並びに電話帳検索プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の構内交換機は、電話端末の通話の発着信制御を行う構内交換機であって、
複数の電話帳データを記憶する電話帳データ記憶部と、
前記電話端末に入力された信号を受信し受信された受信信号における音声信号から音声情報を認識する音声認識部と、
認識された前記音声情報に対応する対応電話帳データを前記複数の電話帳データから検索する電話帳検索部と、
検索された前記対応電話帳データを前記電話端末に送信する電話帳データ送信部と、
を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の電話帳検索方法は、電話端末の通話の発着信制御を行う構内交換機における電話帳検索方法であって、
複数の電話帳データを記憶する電話帳データ記憶ステップと、
前記電話端末に入力された信号を受信し受信された受信信号における音声信号から音声情報を認識する音声認識ステップと、
認識された前記音声情報に対応する対応電話帳データを、前記複数の電話帳データから検索する電話帳検索ステップと、
検索された前記対応電話帳データを前記電話端末に送信する電話帳データ送信ステップと、
を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の電話帳検索プログラムは、電話端末の通話の発着信制御を行う構内交換機のコンピュータに、
複数の電話帳データを記憶する電話帳データ記憶ステップと、
前記電話端末に入力された信号を受信し受信された受信信号における音声信号から音声情報を認識する音声認識ステップと、
認識された前記音声情報に対応する対応電話帳データを前記複数の電話帳データから検索する電話帳検索ステップと、
検索された前記対応電話帳データを前記電話端末に送信する電話帳データ送信ステップと、
を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、個々の電話端末ごとにデータやプログラムの保存量の増加を抑制し、個々の電話端末の大型化も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施例の構内交換機を含む通信システムの構成例の一例を示す概略説明図である。
図2】第1の実施例の構内交換機に接続される電話機の一例の構成を示すブロック図である。
図3】第1の実施例の構内交換機における電話帳検索ユニットの概略的な構成を示した機能ブロック図である。
図4】第1の実施例の構内交換機における電話帳検索ユニット内の電話帳データの一例を示す表である。
図5】第1の実施例の構内交換機を含む通信システムにおける構内交換機の動作を示すフローチャートである。
図6】第2の実施例の構内交換機における電話帳検索ユニットの概略的な構成を示した機能ブロック図である。
図7】第3の実施例の構内交換機における電話帳検索ユニットの概略的な構成を示した機能ブロック図である。
図8】第3の実施例の構内交換機における電話帳検索ユニット内の電話帳データの一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例による構内交換機について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付し、当該部分の重複した説明は省略する。さらに、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
図1は、第1の実施例の構内交換機100を含む通信システムの構成の一例を示す概略説明図である。システム構成は、構内交換機100とこれに通信可能に1つ以上接続(収容)された電話機10とで構成される。構内交換機100は、外部通信接続部を介して通信網NWに接続され、この通信網NWには通話端末CTT(又は図示しない他の通信網)が接続される。構内交換機100は、2以上の電話端末(通話端末CTTや固定電話機、多機能電話機等の電話機10)の間の通話の発着信制御を行う。
【0014】
通信網NWの接続形態は、電話回線網の他、例えばインターネット、衛星通信網等の公衆回線網や、各種のLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、VoPN(Voice over Packet Network)のような専用回線網を含むものであってもよい。通信網NWの電話回線網には構内交換機100に接続される回線終端装置が含まれ、この回線終端装置は、一般的に、通信回線網の終端部分に設置されるモデムやターミナルアダプタ(TA)、光回線終端装置(ONU)等が含まれる。
【0015】
通話端末CTTとしては、ビジネスフォン、スマートフォン、IP電話機、固定電話機、携帯電話機、携帯通話端末及びパーソナルコンピュータ等の通信接続可能である電子機器が挙げられる。
【0016】
[構内交換機]
電話端末の通話の発着信制御を行う構内交換機100には、一例として、シェルフ構造を取るATCA(Advanced Telecom Computing Architecture)に規定されるμTCA規格に沿った通信制御装置がある。この構内交換機100は、全体を制御する主制御部101を備えるコンピュータ装置である。この主制御部101は、図示しないが、CPU(Central Processing Unit)とRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等のメインメモリ部を含み、メインメモリ部に格納されたオペレーティングシステム(Operating System)ソフトウェアプログラムに従い制御されて、独自のソフトウェア制御により複数の内部構成機器相互の通信が可能となるように構成されている。
【0017】
更に、μTCA規格の構内交換機100は、内部構成機器である機能ユニットFU(各々がプリント回路板(PCB:Printed Circuit Board)である)をプラグイン接続で搭載しており、それぞれの機能ユニットFUはコネクタ(図示せず)を介して主制御部101に接続さている。機能ユニットFUは、主制御部101の下で、収容した電話機10同士や、回線終端装置等の外線回線の装置との通信(発着信制御)ができるように、外線回線収容部機能ユニットOSL、スイッチ部機能ユニットSWT、内線端末収容部機能ユニットISL等で構成されている。構内交換機100は、一般的に様々なサービス機能ユニットを搭載し、それぞれに応じて、収容した電話機の機能、例えば、ACR発信、PB発信、内線外線通話制御、通話録音、代理応答、昼夜切替等を実現できる。
【0018】
[電話機]
図2は、電話端末の電話機10の一例の構成を示すブロック図である。電話機10は、端末制御部11、通信制御部12、ハンドセット部15、操作部16、表示部17、LED部18及び報知部19等の機能部で構成されている。操作者とのインターフェースであるハンドセット部15、操作部16、表示部17、LED部18の機能部の一部は、電話機10の操作者に対面する電話機盤面(図示せず)に備えられている。
【0019】
端末制御部11は、通信制御部12、ハンドセット部15、操作部16、表示部17、LED部18及び報知部19に接続され、通信制御部12、ハンドセット部15、表示部17、LED部18及び報知部19の制御や設定を行い、構内交換機100や操作部16からの信号を受け付ける。端末制御部11は、各種のデータ信号を電話機10の所定の機能部に送り、また、通信制御部12(構内交換機100)、ハンドセット部15及び操作部16から送られる各種のデータの処理や設定を行う。
【0020】
通信制御部12は、構内交換機100に接続され、端末制御部11の下で構内交換機100と間で音声データを含む各種のデータ等の送受信を行う機能を有する。
【0021】
ハンドセット部15は、操作者が把持して使用する受話器を有し、受話器が操作者の音声を電気信号に変換するマイク及び通話の相手の音声を再生するスピーカを含んでいる。ハンドセット部15は、マイクからの当該音声電気信号を端末制御部11及び通信制御部12を介して構内交換機100に送出し、構内交換機100から通信制御部12及び端末制御部11を介して入力された音声電気信号を音声に変換し操作者に提供する。
【0022】
操作部16は、操作者による押下操作(命令)を受け付けるテンキー、#キー、*キー、等の複数の操作キー(図示せず)や、多機能電話機の場合は、更に、多機能キー、カーソルキー、クリアキー及び決定キー並びにその他のキー等を含んでいる。多機能キーの一部には、例えば、セレクト、通話録音、ピックアップ/代理応答、外線、PB送信及び昼夜切替の構内交換機100の機能を起動する役割(モード)が割り当てられている場合がある。本実施例による後述する電話帳検索処理(以下、音声認識による電話帳データの検索を行うモードとして音声検索モードとも呼ぶ)の起動は、多機能電話機の場合、多機能キーの一部である所定の機能キーを専用キーとして割り当てられていてもよい。また、多機能キーのない一般の電話機の場合、音声検索モードは、予め特番設定をしておくことによりテンキー押下でPB信号又はDP信号が送出され起動するようにも構成できる。
【0023】
表示部17は、例えば液晶表示画面(LCD: Liquid Crystal Display)からなり、端末制御部11から入力された種々のデータに基づく情報を表示でき、これを操作者に通知する。例えば、本実施例による音声検索モードの起動や検索結果は表示部17に表示され、これが操作者に通知される。なお、表示部17は、操作部16としても機能するタッチパネルであってもよい。
【0024】
LED部18は、複数のLEDを含んでいる。少なくとも1つのLEDは、着信ランプとして機能する。他の幾つかのLEDは所定の報知機能が割り当てられ、例えば、操作部16の特定の操作キーの背面側に設けられていてもよい。各LEDの点灯及び点滅等の制御は、端末制御部11が実行する。すなわち、端末制御部11は、操作者による操作及び電話機10の発着信動作等に応じて、対応するLEDを点灯又は点滅させる。また、音声検索モードの起動を操作者に通知する方法として、電話機10の表示部17への表示以外に、LED部18の点灯表示を利用することができる。
【0025】
報知部19は、例えばスピーカを含んで構成され、端末制御部11から入力された種々のデータに基づく情報、例えば着信音等を電話機10の周囲へ報知する。
[電話帳検索ユニット]
図1に示す構内交換機100については、本実施例による電話帳検索処理の説明のために、機能ユニットの電話帳検索ユニット111を詳述し、他の機能ユニットの説明を省略する。
【0026】
本実施例の構内交換機100の電話帳検索ユニット111による電話帳検索処理(音声検索モード)は、電話機10に割り当てられた専用キー又は特番のテンキーの押下に応じて起動される。例えば、操作者は、当該押下により、電話機10の端末制御部11及び通信制御部12を介して構内交換機100に対して、電話帳検索要求信号を送信させ、電話帳検索処理後、名前に対応する検索結果を電話機10の表示部17に表示させる。
【0027】
図3は電話帳検索ユニット111の概略的な構成を示した機能ブロック図である。
【0028】
電話帳検索ユニット111は、コネクタ(図示せず)を介して主制御部101に通信可能に接続され電話帳検索プログラムをインストールしたマイクロコンピュータ装置である。電話帳検索ユニット111は、図示しないが、CPUと、RAM、HDDやSSD等のメモリ部を含み、メモリ部に格納された当該電話帳検索プログラムに従い、電話帳検索処理を実行するマイクロコンピュータ装置である。電話帳検索ユニット111は機能部として、命令受付部112を含む音声認識部113と、電話帳データ記憶部114と、電話帳検索部115と、電話帳データ送信部116とを有する。これら機能部は、上記電話帳検索プログラムにより、電話帳検索ユニット111のメモリ部中に展開され実現されている。なお、これら機能部は、電話帳検索ユニット111にハードウェアのみを搭載して、電話帳検索プログラムを主制御部101のメインメモリ部中に展開され実現されていてもよい。
【0029】
音声認識部113は、操作者により電話機10に入力された信号(操作者の音声信号を含む)を受信する。音声認識部113の命令受付部112が操作者による電話機10の所定の機能キーの押下による電話帳検索命令を受付け、電話帳検索処理を開始する。
【0030】
音声認識部113は、電話機10から受信した受信信号の内の音声信号から特定の音声情報を認識する。音声認識部113は、受信した音声信号に音声認識処理を施してテキスト情報を生成する。音声認識部は、例えば、音声認識エンジン(例えば、Julius)、形態素解析エンジン(例えば、MeCab)を備えていてもよい。かかる音声信号に基づくテキスト情報は、取得された時刻順の形態素ごとに区画された文字列が生成されてテキスト化された情報である。
【0031】
音声認識部113は、テキスト情報に対して敬称解析を行い、テキスト情報中の抽出すべきキーワード「名前」に関係する発話文字列を抽出する処理(敬称として「殿」「様」「氏」「くん」等も除外する処理)を行う。このようにして、音声認識部113は、受信された音声信号から特定の音声情報(名前テキスト情報)を認識する。
【0032】
電話帳データ記憶部114は、操作者に発話される音声に基づく音声信号に含まれる名前の単語の登録名と、対応する電話番号と、の複数の組を含む電話帳データTBを記憶している。すなわち、電話帳データ記憶部114には、複数の電話帳データが予め記憶されている。図4は電話帳検索ユニット内の電話帳データ記憶部114の電話帳データの一例を示す表である。電話帳データ記憶部114は、例えば、図4に示す表のように、番号順に並べた複数の登録名「名前」を、各々、そのカタカナ表記と電話番号と共に対応付けたテーブルファイルTB(電話帳データ)として予め格納している。なお、電話帳データ記憶部114は、フラッシュメモリ、カードメモリ、USBメモリ、HDD等の記憶媒体から構成されてもよい。
【0033】
電話帳検索部115は、音声認識部113で認識された音声情報「名前」と、これに対応する「電話番号」(対応電話帳データ)を電話帳データ記憶部114から検索して、「名前」と「電話番号」の組を検索結果として抽出する。
【0034】
電話帳データ送信部116は、電話帳検索部115で検索された対応電話帳データを電話機10に送信する。電話帳データ送信部116は、その出力を電話機10へ送信し、その表示部17(図2)に検索結果を表示させる。
【0035】
(動作の説明)
図5は、本実施例の構内交換機を含む通信システムにおける構内交換機の動作を示すフローチャートを示す。
【0036】
まず、操作者は電話機10の所定の機能キー押下により、音声認識部113へ電話帳検索命令を送信し(ステップS101)、音声検索モードを起動すると共に電話機10の表示部17に音声検索モードの音声入力を促す表示をする。これにより当該音声検索モードが有効になり、電話機10と構内交換機100との間に音声パスが形成される。
【0037】
次に、操作者は検索したい「名前」を電話機10のハンドセット部15に向けて発声すると、この名前の音声が、接続された音声パスを経由して上位PBXの電話帳検索ユニット111の音声認識部113へ入力される(ステップS102)。音声認識部113は、入力された当該音声を認識してテキスト化を行い、当該名前テキスト情報を電話帳検索部115へ送信する(ステップS103)。電話帳検索部115は、受信した当該名前のテキスト情報に基づき電話帳データ記憶部114の検索を行う(ステップS104)。ここで本実施例(図5)では、「さん」という敬称を検索文字列から除外する処理を行い、「さん」以外の検索文字列が事前に登録してある「名前」と一致する例を示している。
【0038】
次に、電話帳検索部115は、電話帳データ記憶部114にて当該名前テキスト情報とこれに対応する電話番号(対応電話帳データ)を検索して、電話帳データ記憶部114から、当該名前テキスト情報に対応する対応電話帳データを検索結果として抽出する(ステップS105)。電話帳検索部115は当該名前と対応する電話番号との組の1以上の群を抽出するが、当該名前が存在しない場合は「なし」を検索結果として出力する。
【0039】
ステップS105の電話帳検索の結果データを取得すると、電話帳検索部115は当該検索結果の対応電話帳データを電話帳データ送信部116へ送り(ステップS106)、これを介して電話機10に検索結果を返す(ステップS107)。これにより電話機10の表示部17の画面に検索結果(名前と対応する電話番号の組の1以上の群の結果「No80, No81…」)が表示され(又は、当該名前が存在しない場合は「なし」を表示)、操作者はキー操作(テンキー、カーソルキー、クリアキー、決定キー等)により選択入力を行うことにより、主制御部101を介して検索結果から目的の通話相手にかかわる端末に発信(「No81」オーダー)することができる(ステップS108)。
【0040】
ここで、構内交換機100から電話帳検索の結果データのすべてが電話機10に送信されたが、表示部17の検索結果を一画面に表示しきれない量の名前と対応する電話番号の組の1以上の群がある場合、電話機10自体の表示機能として、複数ページにて表示を行い、つまり、検索結果の1ページ目を表示した後、操作者のキー押下により次のページを取得し、2ページ目、3ページ目と順にキー押下により表示を切り代えることができる。また、構内交換機100から電話帳検索の結果データの一部(一画面表示分)が電話機10の表示要求により順次電話機10に送信されるように、構成してもよい。
【0041】
(効果の説明)
上記の第1の実施例により、収容される電話機10には高度な処理や機能追加を行うことなく、構内交換機100側の処理で音声認識による電話帳検索が実現可能となる。つまり、個々の電話機10には製品コストやハードウェアサイズの影響を与えずに、音声認識機能が導入可能となる。
【0042】
また、構内交換機100の処理においても、音声の単純なテキスト化機能と電話帳検索機能とで実現しているため、高機能な人工知能や機械学習の手段の導入は不要であり、容易かつ低コストで音声認識機能が使用可能となる。
【0043】
(変形例)
第1の実施例では、電話帳検索処理(音声検索モード)は、電話機10のキー操作でキー押下に応じて起動される(図5のステップS101)が、電話帳検索ユニット111の音声認識部113を常に起動させておき、電話機10からの音声入力、例えば、「音声認識」、「電話帳検索」等の発声による特定音声信号に応じて音声検索モードを起動させるように、構成してもよい。これにより、音声認識部113が電話帳検索命令を受付け、電話帳検索処理(図5のステップS101として)を起動する。
【0044】
また、第1の実施例では、表示部17で表示された電話帳検索結果から電話機10のキー操作での選択によって発信先の指定している(図5のステップS108)が、キー操作ではなく音声による発信先の指定もできるように、構成してもよい。ここで、図5のステップS108においては、電話機10と音声認識部113との音声パスが接続された状態での処理であるため、キー操作ではなく音声による発信先の指定も可能である。すなわち、複数の電話帳検索結果が示された際に、操作者は目的の発信先を発声により選択し、構内交換機100側は音声認識により当該発信先を特定することで発信処理(図5のステップS108)へ移行することができる。さらに、構内交換機100から電話帳検索の結果データの一部(一画面表示分)が電話機10の表示要求により順次電話機10に送信(図5のステップS107の代わりに)される場合にも、キー操作ではなく音声による一画面表示分の表示要求も可能である。この変形例によれば操作者による操作の利便性が向上する。
【実施例2】
【0045】
さらに、第1の実施例や変形例では、電話帳の検索結果を電話機10の表示部17へ画面表示して通知しているが、この方法に限らず、他の通知方法を選択してもよい。例えば、テキストデータから音声へ変換する音声合成技術(TTS:Text-To-Speech)を利用して電話帳の検索結果を音声として操作者へ通知することも可能である。
【0046】
図6は、第2の実施例の構内交換機における電話帳検索ユニットの概略的な構成を示した機能ブロック図である。
【0047】
本実施例は、図6に示すように、上記第1の実施例に音声合成部TTSを追加した以外、上記第1の実施例と同一である。
【0048】
この場合、電話帳検索部115は、音声認識部113で認識された音声情報「名前」とこれに対応する「電話番号」(対応電話帳データ)を電話帳データ記憶部114から検索、抽出して、検索結果として音声合成部TTSへ渡す。
【0049】
音声合成部TTSは、電話帳データ送信部116を介して、当該対応電話帳データと共にこれから合成した対応音声電話帳データを電話機10に送信する。電話帳データ送信部116は、その出力を電話機10へ送信し、その表示部17とハンドセット部15(図2)に検索結果を表示、発声させる。本実施例によれば、第1の実施例及び変形例の効果を得ることができ、操作者による操作の利便性がさらに向上する。
【実施例3】
【0050】
さらに、第1、第2の実施例や変形例では、電話帳データ記憶部114が複数の電話帳データを予め記憶しているが、上記例では電話帳データが名前と電話番号だけが記憶されている。電話帳検索において、名前のみによる検索では、存在する苗字が膨大な数である場合、検索した表示結果データが多くなる傾向がある。そこで、例えば、日頃の通話(好ましくは全通話)から「電話番号」に紐づいた「名前」を取得して、すなわち、当該会話から音声認識部113で「名前」を認識させ、当該「電話番号」に紐づいた「名前」のテキスト情報を利用して電話帳データ記憶部114の電話帳データを更新することも可能である。
【0051】
図7は、第3の実施例の構内交換機における電話帳検索ユニットの概略的な構成を示した機能ブロック図である。
【0052】
本実施例は、図7に示すように、上記第1の実施例に電話帳データ更新部118を追加した以外、上記第1の実施例と同一である。
【0053】
電話帳検索ユニット111の電話帳データ更新部118は、受信された音声信号を録音する一時的な通話録音機能を備え、通話端末(例えば、図1に示す通話端末CTTや電話機10)間の通話の対話音声信号を、音声認識部113を介して取得できる。なお、電話帳データ更新部118は、通話相手と操作者によってなされた対話の音声パケットの一部を直接取得し、相手の音声信号を記録(録音)する構成としてもよい。電話帳データ更新部118は、通話相手の会話のすべてを録音せずに、例えば既知の電話番号の通信端末から操作者が電話機10で受けた際に、相手の会話の開始に発声されることの多い挨拶等の共通語句(自己紹介や相手確認)中の「名前」「会社名」「居場所」の音声から、相手の会話の一部のテキスト情報を、音声認識部113を介して、取得する。電話帳データ更新部118は、取得した当該相手のテキスト情報を、電話帳データ記憶部114の既知の電話帳データTBに付加情報として追加する。さらに、電話帳データ更新部118は、当該相手の会話の一部の内容(5秒程度の音声パターン)をAAC形式やWMA形式等で録音し、これを電話帳データ記憶部114の既知の電話帳データTBに付加情報として更に追加する。
【0054】
図8は、電話帳データ更新部118により更新された電話帳データ記憶部114の電話帳データTBの一例を示す表である。
【0055】
更新された電話帳データ記憶部114の電話帳データTBの付加情報を用いることによって、操作者が電話機10から電話帳検索信号(キー操作又は音声入力)を送信する際に、音声認識部113と電話帳検索部115に対して相手の「名前」だけでなく関連すると思われる「会社名」や「居場所」等の音声入力を行うことにより、検索データ「電話番号」の絞り込みが可能となる。
【0056】
さらに、電話機10に入力された当該音声入力に基づき音声認識部113が認識した「会社名」や「居場所」等のテキスト情報に対応する音声パターン(図8の付加情報:相手の会話の一部内容)を、操作者のキー操作に応じて、電話帳データ送信部116は、電話機10に送信する。これによって、相手の「名前」が思い出せない場合は、電話帳データを初めから又は後ろから順に電話番号を探さなくてはならないけれども、電話帳データ更新部118により更新された電話帳データ記憶部114の電話帳データTBに録音されている5秒程度の音声パターン(図8)を電話機10を介して耳から聞けば、他の付加情報と関連して、思い出せない相手の「名前」を思い出す可能性が高まることが期待できる。
【0057】
よって、本実施例の音声認識部113を介して電話機10での通話からテキスト情報及び音声パターンを付加情報として抽出し、当該付加情報を電話帳データ記憶部114の電話帳データTBに追加し更新する電話帳データ更新部118によれば、更新された電話帳データTBに基づいて、「会社名」や「居場所」の付加情報の音声入力に加えて、聴覚的な音声パターンの付加情報の再生により、電話する相手を絞込み検索する機能が充実され、相手の電話番号に早く辿り着け、利用価値が高いものとなり、効率よく電話帳検索を行える効果が得られる。
【0058】
さらに、本実施例によれば、自動的に会話者の音声の一部に基づく付加情報が記録されることで、電話帳データ記憶部114の電話帳データTBの電話帳データベースへ入力作業の負担軽減となる。
【符号の説明】
【0059】
10 電話機
11 端末制御部
12 通信制御部
15 ハンドセット部
16 操作部
17 表示部
18 LED部
19 報知部
100 構内交換機
FU 機能ユニット
111 電話帳検索ユニット
112 命令受付部
113 音声認識部
114 電話帳データ記憶部
115 電話帳検索部
116 電話帳データ送信部
118 電話帳データ更新部
TB 電話帳データ
CTT 通話端末
NW 通信網
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8