(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】油圧ショベル
(51)【国際特許分類】
E02F 3/40 20060101AFI20240509BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20240509BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
E02F3/40 E
E02F9/20 M
E02F9/26 A
(21)【出願番号】P 2020009063
(22)【出願日】2020-01-23
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】三輪 敏明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】沼崎 孝義
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-281783(JP,A)
【文献】特開平06-193097(JP,A)
【文献】特開平10-245874(JP,A)
【文献】特開2010-014617(JP,A)
【文献】特開2010-249586(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0350750(US,A1)
【文献】特開2020-117867(JP,A)
【文献】特開平07-083740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/40
E02F 9/20
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームと、基端部がアームピンを介して前記ブームの先端部に回動可能に連結されたアームと、バケットピンを介して前記アームの先端部に回動可能に連結されたバケットとを作業装置として有し、ロッド側の端部がリンク機構を介して前記バケットに連結されたバケットシリンダの伸縮によって前記バケットを駆動する油圧ショベルであって、
前記バケットシリンダのボトム側の端部を前記アームに回動可能に連結するピン型ロードセルと、
前記ピン型ロードセルによる荷重検出値に基づいて、前記バケットに収容された収容物の重量を算出する重量算出装置と、を具備し、
前記ピン型ロードセルは、1軸方向のみを荷重検出方向とし、前記荷重検出方向とバケットクラウド状の前記バケットシリンダの軸方向とが一致する様に取り付けられていることを特徴とす
る油圧ショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バケット内の掘削物(土砂等)の重量を検出する機能を備えた油圧ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
ピン型ロードセルによってバケットとアームを連結し、ピン型ロードセルに加わるせん断力によって生じる歪を計測することで、バケット内の土砂等の収容物の重量を検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、アームに対するバケットの回動状況に応じてピン型ロードセルに作用する荷重の方向が変化してしまう。そのため、使用することができるピン型ロードセルは、荷重の作用方向が変化しても高精度な測定を行うことができる特別なものに限定されてしまう。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の課題を解消し、荷重の作用方向の変化に対応していない汎用のピン型ロードセルを用いて、バケット内の収容物の重量を正確に検出することができる油圧ショベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の油圧ショベルは、ブームと、基端部がアームピンを介して前記ブームの先端部に回動可能に連結されたアームと、バケットピンを介して前記アームの先端部に回動可能に連結されたバケットとを作業装置として有し、ロッド側の端部がリンク機構を介して前記バケットに連結されたバケットシリンダの伸縮によって前記バケットを駆動する油圧ショベルであって、前記バケットシリンダのボトム側の端部を前記アームに回動可能に連結するピン型ロードセルと、前記ピン型ロードセルによる荷重検出値に基づいて、前記バケットに収容された収容物の重量を算出する重量算出装置と、を具備し、前記ピン型ロードセルは、1軸方向のみを荷重検出方向とし、前記荷重検出方向とバケットクラウド状の前記バケットシリンダの軸方向とが一致する様に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、バケットが回動してもピン型ロードセルに作用する荷重方向がほとんど変化しないため、荷重の作用方向の変化に対応していない汎用のピン型ロードセルを用いて、バケット内の収容物の重量を正確に検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る油圧ショベルの構成を示す側面図である。
【
図2】
図1に示すバケットシリンダ支持ピンとして用いるピン型ロードセルの構成を示す図である。
【
図3】
図1に示すバケットの回動範囲を示す説明図である。
【
図4】
図2に示すピン型ロードセルによるブランケットとバケットシリンダとの他の連結例を示す図である。
【
図5】
図1に示す重量算出装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。
本実施形態の油圧ショベル10は、地面と接して走行する走行装置11と、走行装置11の上に旋回可能に配置された旋回体12と、一端が旋回体12に回動可能に取り付けられた作業装置20と、重量算出装置80とを備えている。
【0010】
作業装置20は、基端部がブームピン31を介して旋回体12に回動可能に連結されたブーム21と、基端部がアームピン32を介してブーム21の先端部に回動可能に連結されたアーム22と、バケットピン33を介してアーム22の先端部に回動可能に連結されたバケット23とを有している。
【0011】
また、作業装置20は、ブーム21を駆動するブームシリンダ41を有している。ブームシリンダ41は、作動油によって駆動される油圧シリンダであり、一端がブームシリンダ支持ピン51を介して旋回体12に回動可能に連結されていると共に、ロッド側の端部がブーム側作用ピン52を介してブーム21に回動可能に連結されている。
【0012】
これにより、ブームシリンダ41の収縮に伴って、旋回体12に対してブーム21が下方向に回動されるブーム下げ動作が行われ、ブームシリンダ41の伸長に伴って、旋回体12に対してブーム21が上方向に回動されるブーム上げ動作が行われる。
【0013】
さらに、作業装置20は、アーム22を駆動するアームシリンダ42を有している。アームシリンダ42は、作動油によって駆動される油圧シリンダであり、一端がアームシリンダ支持ピン53を介してブーム21に回動可能に連結されていると共に、ロッド側の端部がアーム側作用ピン54を介してアーム22に回動可能に連結されている。
【0014】
これにより、アームシリンダ42の収縮に伴って、ブーム21に対してアーム22が上方向に回動されるブームダンプ動作が行われ、アームシリンダ42の伸長に伴って、ブーム21に対してアーム22が下方向に回動されるブームクラウド動作が行われる。
【0015】
さらに、作業装置20は、バケット23を駆動するバケットシリンダ43を有している。バケットシリンダ43は、作動油によって駆動される油圧シリンダであり、ボトム側の端部がピン型ロードセル70を介してアーム22に回動可能に連結されていると共に、ロッド側の端部がリンク機構60を介してバケット23に連結されている。
【0016】
リンク機構60は、バケットシリンダ43のロッド側の端部とアーム22との間に架け渡された第1リンク部材61と、バケットシリンダ43のロッド側の端部とバケット23との間に架け渡された第2リンク部材62とを有している。
【0017】
バケット23は、バケットピン33を介してアーム22の先端部に回動可能に連結されていると共に、第1リンクピン63を介して第2リンク部材62の先端部に連結されている。第1リンク部材61の基端部は、第2リンクピン64を介してアーム22の先端部に回動可能に連結され、第1リンク部材61の先端部及び第2リンク部材62の基端部は、第3リンクピン65を介してバケットシリンダ43のロッド側の端部に回動可能に連結されている。
【0018】
これにより、バケットシリンダ43の伸長に伴って、バケット23がバケットピン33を支点として内向に回動されるバケットクラウド動作が行われ、バケットシリンダ43の収縮に伴って、バケット23がバケットピン33を支点とし外向に回動されるバケットダンプ動作が行われる。
【0019】
図2を参照すると、ピン型ロードセル70は、内部は中空に形成された円柱状であり、左軸承部71、中央軸承部72及び右軸承部73を備えている。そして、左軸承部71及び右軸承部73と中央軸承部72との間には、薄肉部74がそれぞれ形成されている。左軸承部71及び右軸承部73は、キープレート75によってアーム22に形成された一対のブランケット22aにそれぞれ固定されている。そして、中央軸承部72は、バケットシリンダ43のボトム側の端部が回転可能に軸承されている。なお、
図2において、(a)はブランケット22aに固定されたピン型ロードセル70の側面図であり、(b)はブランケット22aとバケットシリンダ43とを連結するピン型ロードセル70を(a)に示す矢印X方向から見た図である。
【0020】
ピン型ロードセル70は、バケットシリンダ43から中央軸承部72に作用する1軸方向(以下、荷重検出方向)の荷重(せん断力)を検出して荷重検出値として出力する1軸荷重検出機能を有し、荷重検出方向とバケットシリンダ43の軸方向とがほぼ一致する様に取り付けられている。ピン型ロードセル70に作用する荷重の方向は、
図3(a)、(b)に示すように、バケット23の回動状況に拘わらずほとんど変化しない。従って、ピン型ロードセル70には、バケット23の回動状況に拘わらず、ほぼ同じ条件で荷重が作用する。なお、
図3において、(a)は最もバケットクラウドさせた状態(以下、バケットクラウド状態と称す)を、(b)は最もバケットダンプさせた状態(以下、バケットダンプ状態と称す)をそれぞれ示す。なお、バケットクラウド状態でピン型ロードセル70の荷重検出方向とバケットシリンダ43の軸方向とを一致させるとより好適である。
【0021】
なお、
図4に示すように、ピン型ロードセル70は、キープレート75aによって中央軸承部72にバケットシリンダ43のボトム側の端部を固定させ、アーム22に形成された一対のブランケット22aによって左軸承部71及び右軸承部73を回動可能に支承させるようにしても良い。
図4において、(a)はブランケット22aに支承されたピン型ロードセル70の側面図であり、(b)はブランケット22aとバケットシリンダ43とを連結するピン型ロードセル70を(a)に示す矢印Y方向から見た図である。
【0022】
図4に示す例では、L字状に構成された2枚のキープレート75aを用い、2枚のキープレート75aの一端が左軸承部71及び右軸承部73にそれぞれ形成されたキー溝にそれぞれ嵌合されている。そして、2枚のキープレート75aの他端がブランケット22aを跨いでバケットシリンダ43のボトム側の端部に固定されている。このように、ピン型ロードセル70をバケットシリンダ43に対して回転方向で固定することにより、ピン型ロードセル70の荷重検出方向とバケットシリンダ43の軸方向とを一致させた状態で、中央軸承部72にバケットシリンダ43のボトム側の端部を固定させると良い。
【0023】
ピン型ロードセル70によって検出された荷重検出値は、無線もしくは有線によって重量算出装置80に送信され、重量算出装置80は、受信した荷重検出値に基づいてバケット23に収容された土砂等の収容物の重量を算出する。
【0024】
重量算出装置80は、パーソナルコンピューター等のプログラム制御によって動作する情報処理装置であり、
図5を参照すると、受信部81と、記憶部82と、入力部83と、出力部84と、算出制御部85とを備えている。
【0025】
受信部81は、ピン型ロードセル70によって検出された荷重検出値を無線もしくは有線によって受信する機能を有している。
【0026】
記憶部82は、半導体メモリーやHDD(Hard Disk Drive)等の記憶手段である。記憶部82には、収容物が収容されていないバケット23がバケットクラウド状態である際に検出されたピン型ロードセル70の荷重検出値が基準検出値86として予め記憶されている。さらに、記憶部82には、受信部81によって受信されたピン型ロードセル70の荷重検出値の推移が荷重推移情報87として記憶されると共に、算出された収容物の重量を積算した積算値88が記憶される。
【0027】
入力部83は、キーボード等の入力手段であり、積算限界値(ダンプトラックの積載量等)の設定入力や積算値88のリセット入力を受け付ける。
【0028】
出力部84は、液晶ディスプレイ等の表示手段やスピーカ等の音声出力手段であり、算出された収容物の重量や、積算値88を出力する。
【0029】
算出制御部85は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータ等の演算処理回路である。ROMには重量算出装置80の動作制御を行うための制御プログラムが記憶されている。算出制御部85のCPUは、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出し、制御プログラムをRAMに展開させることで、バケットクラウド状態特定部89、重量算出部90として機能する。
【0030】
バケットクラウド状態特定部89は、荷重推移情報87を解析することで、バケット23がバケットクラウド状態である際に検出されたピン型ロードセル70の荷重検出値を特定検出値として特定する。そして、バケットクラウド状態特定部89は、荷重検出値を特定した後に荷重推移情報87を消去する。これにより、新たな荷重推移情報87が生成されて記憶部82に記憶されることになる。
【0031】
図3(a)に示すバケットクラウド状態では、矢印Aに示すように、上向きの荷重がピン型ロードセル70に作用し、
図3(b)に示すバケットダンプ状態では、矢印Bに示すように、下向きの荷重がピン型ロードセル70に作用する。従って、バケットクラウド状態でバケット23に収容された収容物をダンプトラック等の積み込む場合、バケットダンプの過程でピン型ロードセル70に作用する荷重がゼロになるタイミングが存在する。
【0032】
そこで、バケットクラウド状態特定部89は、例えば、受信部81によって受信されるピン型ロードセル70の荷重検出値がゼロになると、荷重推移情報87を解析し、荷重検出値がゼロなったタイミング以前の所定時間において基準検出値86以上の荷重検出値を特定検出値として特定する。
【0033】
重量算出部90は、バケットクラウド状態特定部89によって特定された特定検出値と基準検出値86との差分に予め設定された係数を乗算することで、バケット23に収容された土砂等の収容物の重量を算出する。そして、重量算出部90は、積算値88を更新すると共に、更新した積算値88が設定入力された積算限界値に到達した場合、出力部84によって到達通知を出力する。
【0034】
以上説明したように、本実施形態は、ブーム21と、基端部がアームピン32を介してブーム21の先端部に回動可能に連結されたアーム22と、バケットピン33を介してアーム22の先端部に回動可能に連結されたバケット23とを作業装置20として有し、ロッド側の端部がリンク機構60を介してバケット23に連結されたバケットシリンダ43の伸縮によってバケット23を駆動する油圧ショベル10であって、バケットシリンダ43のボトム側の端部をアーム22に回動可能に連結するピン型ロードセル70と、ピン型ロードセル70による荷重検出値に基づいて、バケット23に収容された収容物の重量を算出する重量算出装置80とを備えている。
この構成により、バケット23が回動してもピン型ロードセル70に作用する荷重方向がほとんど変化しないため、荷重の作用方向の変化に対応していない汎用のピン型ロードセル70を用いて、バケット23内の収容物の重量を正確に検出することができる。
【0035】
さらに、本実施形態において、ピン型ロードセル70は、1軸方向のみを荷重検出方向とし、荷重検出方向とバケットシリンダ43の軸方向とが一致する様に取り付けられている。
この構成により、バケット23に収容物が収容された状態でピン型ロードセル70に作用する荷重を正確に検出することができる。
【0036】
以上、実施形態をもとに本発明を説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0037】
10 油圧ショベル
11 走行装置
12 旋回体
20 作業装置
21 ブーム
22 アーム
22a ブランケット
23 バケット
31 ブームピン
32 アームピン
33 バケットピン
41 ブームシリンダ
42 アームシリンダ
43 バケットシリンダ
51 ブームシリンダ支持ピン
52 ブーム側作用ピン
53 アームシリンダ支持ピン
54 アーム側作用ピン
60 リンク機構
61 第1リンク部材
62 第2リンク部材
63 第1リンクピン
64 第2リンクピン
65 第3リンクピン
70 ピン型ロードセル
71 左軸承部
72 中央軸承部
73 右軸承部
74 薄肉部
75、75a キープレート
80 重量算出装置
81 受信部
82 記憶部
83 入力部
84 出力部
85 算出制御部
86 基準検出値
87 荷重推移情報
88 積算値
89 バケットクラウド状態特定部
90 重量算出部