(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】蛍光体ホイール装置、光源装置、投影装置及び蛍光体装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20240509BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20240509BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240509BHJP
F21V 7/28 20180101ALI20240509BHJP
F21V 9/20 20180101ALI20240509BHJP
F21V 9/32 20180101ALI20240509BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20240509BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20240509BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240509BHJP
【FI】
G03B21/14 A
G03B21/00 E
F21S2/00 311
F21V7/28
F21V9/20
F21V9/32
F21V9/40 200
H04N5/74 Z
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2020016733
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 英貴
【審査官】植田 高盛
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-159685(JP,A)
【文献】特開2012-098442(JP,A)
【文献】特表2015-533225(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0391471(US,A1)
【文献】国際公開第2014/192115(WO,A1)
【文献】中国実用新案第206594438(CN,U)
【文献】特開2012-212129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K9/00-9/90
F21S2/00-45/70
F21V1/00-15/04
G03B21/00-21/30
21/12-21/13
21/134-21/30
33/00-33/16
H04N5/66-5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸に対して傾いた方向から励起光が照射されるように配置されるとともに、前記励起光の光路における上流側に位置する第1レイヤーと下流側に位置する第2レイヤーとを有する回転板と、
前記励起光を反射する反射ミラーと、
を備え、
前記第2レイヤーには、前記励起光を反射するとともに蛍光光を透過するダイクロイックミラー領域と、前記励起光及び前記蛍光光を透過する第1透過領域とが、前記回転板の周方向に並んで設けられており、
前記第1レイヤーには、照射された前記励起光を前記反射ミラーに向けて反射させる第1反射領域と前記反射ミラーから反射されてきた前記励起光を前記第2レイヤーに向けて透過させる第2透過領域とが、前記第1透過領域と重なる位置に設けられており、且つ、照射された前記励起光を前記ダイクロイックミラー領域に向けて透過させる第3透過領域と前記ダイクロイックミラー領域で反射された前記励起光に基づいて蛍光光を出射する蛍光体領域とが、前記ダイクロイックミラー領域と重なる位置に設けられていることを特徴とする蛍光体ホイール装置。
【請求項2】
前記第2透過領域は拡散透過領域であり、
前記拡散透過領域は、前記反射ミラーで反射された前記励起光を拡散透過し、
前記第1反射領域と前記拡散透過領域とは、前記回転板上において径方向の位置が異なるように設けられることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体ホイール装置。
【請求項3】
前記第1反射領域は、前記回転板の一方面側に形成され、
前記反射ミラーは、前記回転板の前記一方面側に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蛍光体ホイール装置。
【請求項4】
前記蛍光体領域は、
第1蛍光体領域と、
前記励起光により励起される前記蛍光光の波長帯域が前記第1蛍光体領域と異なる第2蛍光体領域と、
を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の蛍光体ホイール装置。
【請求項5】
前記蛍光体領域及び前記拡散透過領域は周方向に並設されることを特徴とする請求項2に記載の蛍光体ホイール装置。
【請求項6】
前記第1レイヤーは、外周縁側から中心側に向かって傾斜し、前記第2レイヤーへ向かって凸状の傾斜面が形成されており、
前記蛍光体領域は前記傾斜面に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の蛍光体ホイール装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れかに記載の蛍光体ホイール装置と、
励起光源とを備え、
前記励起光源は、半導体発光素子により構成され、前記励起光とされる青色波長帯域光を出射し、
前記蛍光体領域は、前記励起光が照射されることにより、赤色波長帯域光又は緑色波長帯域光を発光することを特徴とする光源装置。
【請求項8】
請求項7に記載の光源装置と、
前記光源装置からの光源光が照射され、画像光を形成する表示素子と、
前記表示素子から出射された前記画像光を被投影体に投影する投影光学系と、
前記表示素子及び前記光源装置を制御する投影装置制御部と、
を備えることを特徴とする投影装置。
【請求項9】
板面に対して傾いた方向から第1光源からの励起光が照射されるように配置されるとともに、前記励起光の光路における上流側に位置する第1レイヤーと下流側に位置する第2レイヤーとを有する板部材と、
前記励起光を反射する反射ミラーと、
を備え、
前記第2レイヤーには、前記励起光を反射するとともに蛍光光を透過する反射透過部と、
前記励起光及び前記蛍光光を透過する第1透過領域と、が設けられており、
前記第1レイヤーには、第2光源から照射された青色波長帯域光を前記反射ミラーに向けて反射させる反射部と前記反射ミラーから反射されてきた前記青色波長帯域光を前記第2レイヤーに向けて透過させる拡散透過部とが、前記第1透過領域と重なる位置に設けられており、且つ、照射された前記励起光を前記反射透過部に向けて透過させる第3透過領域と前記反射透過部で反射された前記励起光に基づいて蛍光光を出射する蛍光体領域とが、前記反射透過部と重なる位置に設けられていることを特徴とする蛍光体装置。
【請求項10】
青色波長帯域からなる励起光を出射する励起光源と、
所定の軸を中心に回転するように構成されるとともに前記励起光源から出射される前記励起光の光路上に配置されることにより、前記所定の軸を中心にした回転に伴って前記励起光が照射される領域が可変する回転板と、
前記励起光を反射する反射ミラーと、
を備え、
前記回転板は、前記所定の軸に対して傾いた方向から前記励起光が照射されるように配置されるとともに、前記光路における上流側に位置する第1レイヤーと下流側に位置する第2レイヤーとを有し、
前記第2レイヤーには、青色波長帯域の光を反射するとともに緑色波長帯域の光を透過するダイクロイックミラー領域と、青色波長帯域の光と緑色波長帯域の光をともに透過する第1透過領域とが、前記回転板が回転した際に互いに異なるタイミングで前記励起光の照射位置に近づくように設けられており、
前記第1レイヤーには、照射された前記励起光を前記反射ミラーに向けて反射させる第1反射領域と前記反射ミラーから反射されてきた前記励起光を前記第2レイヤーに向けて透過させる第2透過領域とが、前記第1透過領域と重なる位置に設けられており、且つ、照射された前記励起光を前記ダイクロイックミラー領域に向けて透過させる第3透過領域と前記ダイクロイックミラー領域で反射された前記励起光に基づいて緑色波長帯域からなる蛍光光を出射する蛍光体領域とが、前記ダイクロイックミラー領域と重なる位置に設けられている、
ことを特徴とする光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体ホイール装置、該蛍光体ホイール装置を備える光源装置、該光源装置を備える投影装置、蛍光体装置及び光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、光源から出射された光を、DMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)と呼ばれるマイクロミラー表示素子、又は液晶板等の表示素子に集光させ、スクリーン上にカラー画像を表示させる投影装置が一般に使用されている。
【0003】
特許文献1には、光源から所定波長帯域の励起光が入射すると励起光と異なる色の蛍光を発する蛍光体ホイール装置が組み込まれた投影装置(プロジェクタ)が開示されている。励起光は、青色の波長帯域の光が選択され、蛍光体ホイール装置が発する蛍光は、赤色の波長帯域の光及び緑色の波長帯域の光等が選択されることが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蛍光体ホイール装置の構成は、反射式蛍光ホイール装置及び透過式ホイール装置がある。特許文献1に開示される蛍光体ホイール装置は、励起光を蛍光体領域が形成される基材側から入射させて蛍光体領域に照射させる透過式蛍光体ホイール装置であり、簡易な構成であるが、励起光を基材上の蛍光体領域側から入射させる反射式蛍光体ホイール装置と比して、励起光による蛍光発光効率が低下する。従って、簡易な構成であり、高い蛍光発光効率を有する蛍光体ホイール装置が望まれている。
【0006】
本発明は、簡易な構成であり、高い蛍光発光効率を有する蛍光体ホイール装置、光源装置、投影装置及び蛍光体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の蛍光体ホイール装置は、所定の軸に対して傾いた方向から励起光が照射されるように配置されるとともに、前記励起光の光路における上流側に位置する第1レイヤーと下流側に位置する第2レイヤーとを有する回転板と、前記励起光を反射する反射ミラーと、を備え、前記第2レイヤーには、前記励起光を反射するとともに蛍光光を透過するダイクロイックミラー領域と、前記励起光及び前記蛍光光を透過する第1透過領域とが、前記回転板の周方向に並んで設けられており、前記第1レイヤーには、照射された前記励起光を前記反射ミラーに向けて反射させる第1反射領域と前記反射ミラーから反射されてきた前記励起光を前記第2レイヤーに向けて透過させる第2透過領域とが、前記第1透過領域と重なる位置に設けられており、且つ、照射された前記励起光を前記ダイクロイックミラー領域に向けて透過させる第3透過領域と前記ダイクロイックミラー領域で反射された前記励起光に基づいて蛍光光を出射する蛍光体領域とが、前記ダイクロイックミラー領域と重なる位置に設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の光源装置は、上述の蛍光体ホイール装置を備え、前記励起光源は、半導体発光素子により構成され、前記励起光とされる青色波長帯域光を出射し、前記蛍光体領域は、前記励起光が照射されることにより、赤色波長帯域光又は緑色波長帯域光を含む光を発光することを特徴とする。
【0009】
本発明の投影装置は、上述の光源装置と、前記光源装置からの光源光が照射され、画像光を形成する表示素子と、前記表示素子から出射された前記画像光を被投影体に投影する投影光学系と、前記表示素子及び前記光源装置を制御する投影装置制御部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の蛍光体装置は、板面に対して傾いた方向から第1光源からの励起光が照射されるように配置されるとともに、前記励起光の光路における上流側に位置する第1レイヤーと下流側に位置する第2レイヤーとを有する板部材と、前記励起光を反射する反射ミラーと、を備え、前記第2レイヤーには、前記励起光を反射するとともに蛍光光を透過する反射透過部と、前記励起光及び前記蛍光光を透過する第1透過領域と、が設けられており、前記第1レイヤーには、第2光源から照射された青色波長帯域光を前記反射ミラーに向けて反射させる反射部と前記反射ミラーから反射されてきた前記青色波長帯域光を前記第2レイヤーに向けて透過させる拡散透過部とが、前記第1透過領域と重なる位置に設けられており、且つ、照射された前記励起光を前記反射透過部に向けて透過させる第3透過領域と前記反射透過部で反射された前記励起光に基づいて蛍光光を出射する蛍光体領域とが、前記反射透過部と重なる位置に設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の光源装置は、青色波長帯域からなる励起光を出射する励起光源と、所定の軸を中心に回転するように構成されるとともに前記励起光源から出射される前記励起光の光路上に配置されることにより、前記所定の軸を中心にした回転に伴って前記励起光が照射される領域が可変する回転板と、前記励起光を反射する反射ミラーと、を備え、前記回転板は、前記所定の軸に対して傾いた方向から前記励起光が照射されるように配置されるとともに、前記光路における上流側に位置する第1レイヤーと下流側に位置する第2レイヤーとを有し、前記第2レイヤーには、青色波長帯域の光を反射するとともに緑色波長帯域の光を透過するダイクロイックミラー領域と、青色波長帯域の光と緑色波長帯域の光をともに透過する第1透過領域とが、前記回転板が回転した際に互いに異なるタイミングで前記励起光の照射位置に近づくように設けられており、前記第1レイヤーには、照射された前記励起光を前記反射ミラーに向けて反射させる第1反射領域と前記反射ミラーから反射されてきた前記励起光を前記第2レイヤーに向けて透過させる第2透過領域とが、前記第1透過領域と重なる位置に設けられており、且つ、照射された前記励起光を前記ダイクロイックミラー領域に向けて透過させる第3透過領域と前記ダイクロイックミラー領域で反射された前記励起光に基づいて緑色波長帯域からなる蛍光光を出射する蛍光体領域とが、前記ダイクロイックミラー領域と重なる位置に設けられている、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の光源装置は、励起光を出射する励起光源と、所定の軸を中心に回転するように構成されるとともに前記励起光源から出射される前記励起光の光路上に配置されることにより、前記所定の軸を中心にした回転に伴って前記励起光が照射される領域が可変する回転板と、前記励起光を反射する反射ミラーと、を備え、前記回転板は、前記励起光を反射する反射領域と、前記励起光に基づいて蛍光光を出射する蛍光体領域と、前記反射ミラーで反射された励起光を透過する透過領域を有し、前記反射領域と、前記蛍光体領域とは、前記回転板が回転した際に互いに異なるタイミングで前記励起光の照射位置に近づくように設けられており、前記ミラーは、前記反射領域で反射された励起光を反射するように配置されており、前記透過領域は、前記反射領域に対して、前記回転板の半径方向内側に配置されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成であって、蛍光発光効率の高い蛍光体ホイール装置、該蛍光体ホイール装置を備える光源装置、該光源装置を備える投影装置、蛍光体装置及び光源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る投影装置の機能ブロックを示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る投影装置の内部構造を示す平面模式図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る蛍光体ホイール装置に備えられる第1レイヤー及び第2レイヤーの対応関係を示す対応図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る
図3の第1レイヤーを示す平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る
図3の第2レイヤーを示す平面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る光源装置の励起光を拡散透過させる場合の一部平面模式図であり、蛍光体ホイール装置については
図4に示す回転板のVIa-VIa端面及び
図5に示す第2レイヤーのVIb-VIb端面を示している。
【
図7】本発明の実施形態に係る光源装置の励起光により蛍光発光させる場合の一部平面模式図であり、蛍光体ホイール装置については
図4に示す回転板のVIIa-VIIa端面及び
図5に示す第2レイヤーのVIIb-VIIb端面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態)
以下、本発明に係る実施形態を図に基づいて説明する。
図1は投影装置10の投影装置制御部の機能回路ブロックを示す図である。投影装置制御部は、画像変換部23と制御部38とを含むCPU、入出力インターフェース22を含むフロントエンドユニット、表示エンコーダ24と、表示駆動部26とを含むフォーマッターユニットから構成される。入出力コネクタ部21から入力された各種規格の画像信号は、入出力インターフェース22、システムバス(SB)を介して画像変換部23で表示に適した所定のフォーマットの画像信号に統一するように変換された後、表示エンコーダ24に出力される。
【0016】
表示エンコーダ24は、入力された画像信号をビデオRAM25に展開記憶させた上でこのビデオRAM25の記憶内容からビデオ信号を生成して表示駆動部26に出力する。
【0017】
表示駆動部26は、表示エンコーダ24から出力された画像信号に対応して適宜のフレームレートで空間的光変調素子(SOM)である表示素子51を駆動する。
【0018】
そして、投影装置10は、光源装置60から出射された光線束を、光源側光学系170を介して表示素子51に照射することにより、表示素子51の反射光で光像を形成し、投影光学系220(
図2参照)を介して図示しないスクリーン等の被投影体に画像を投影表示する。なお、この投影光学系220の可動レンズ群235は、レンズモータ45によりズーム調整やフォーカス調整のための駆動を行うことができる。
【0019】
画像圧縮/伸長部31は、画像信号の輝度信号及び色差信号をADCT及びハフマン符号化等の処理によりデータ圧縮して着脱自在な記録媒体とされるメモリカード32に順次書き込む記録処理を行う。
【0020】
さらに、画像圧縮/伸長部31は、再生モード時にメモリカード32に記録された画像データを読み出し、一連の動画を構成する個々の画像データを1フレーム単位で伸長する。画像圧縮/伸長部31は、その画像データを、画像変換部23を介して表示エンコーダ24に出力し、メモリカード32に記憶された画像データに基づいて動画等の表示を可能とする処理を行う。
【0021】
制御部38は、投影装置10内の各回路の動作制御を司るものであって、CPU、各種セッティング等の動作プログラムを固定的に記憶したROM及びワークメモリとして使用されるRAM等により構成される。
【0022】
筐体の上面パネルに設けられるメインキー及びインジケータ等により構成されるキー/インジケータ部37の操作信号は、直接に制御部38に送出される。リモートコントローラからのキー操作信号はIr受信部35で受信され、Ir処理部36で復調されたコード信号が制御部38に出力される。
【0023】
制御部38は、システムバス(SB)を介して音声処理部47と接続される。この音声処理部47は、PCM音源等の音源回路を備えており、投影モード及び再生モード時には音声データをアナログ化し、スピーカ48を駆動して拡声報音させる。
【0024】
また、制御部38は、光源制御部としての光源制御回路41を制御する。光源制御回路41は、画像生成時に要求される所定波長帯域の光が光源装置60から出射されるように、後述する励起光源70(青色波長帯域光、緑色波長帯域光及び赤色波長帯域光等の励起光の光源である青色レーザダイオード71)を含む光源装置60の動作(例えば、青色レーザダイオード71の電源を時分割でON又はOFFさせることにより、光源装置60に任意の光(青色レーザダイオード71を光源とする青色波長帯域光、青色レーザダイオード71を光源とする励起光により発光する緑色波長帯域光及び赤色波長帯域光の3つの光を加法混色することによって作成される光)を出射させる動作)を制御することができる。
【0025】
さらに、制御部38は、冷却ファン駆動制御回路43に光源装置60等に設けた複数の温度センサによる温度検出を行わせ、この温度検出の結果から冷却ファン261の回転速度を制御させる。また、制御部38は、冷却ファン駆動制御回路43にタイマー等により投影装置10本体の電源のOFF後も冷却ファン261の回転を持続させる、あるいは、温度センサによる温度検出の結果によっては投影装置10本体の電源をOFFにする等の制御を行う。
【0026】
次に、この投影装置10の内部構造について述べる。
図2は、投影装置10の内部構造を示す平面模式図である。ここで、投影装置10の筐体は、略箱状に形成されて、正面パネル12、背面パネル13、右側パネル14及び左側パネル15を備える。なお、以下の説明においては、投影装置10における左右とは投影方向に対しての左右方向を示し、前後とは投影装置10のスクリーン側方向及び光線束の進行方向に対しての前後方向を示す。
【0027】
正面パネル12、右側パネル14及び左側パネル15には、夫々に複数の排気孔17が備えられる。背面パネル13及び左側パネル15には、夫々に複数の吸気孔18が備えられる。また、正面パネル12及び背面パネル13近傍には、冷却ファン261が備えられる。排気孔17、吸気孔18及び冷却ファン261等により、投影装置10の内部は冷却される。
【0028】
投影装置10は、右側パネル14の近傍に制御回路基板241を備える。この制御回路基板241は、電源回路ブロックや光源制御ブロック等を備える。また、投影装置10は、制御回路基板241の側方、つまり、投影装置10筐体の略中央部分に光源装置60を備える。さらに、投影装置10には、光源装置60と左側パネル15との間に、光源側光学系170や投影光学系220が配置される。
【0029】
光源装置60は、青色波長帯域光の光源であって、励起光の光源である励起光源70と、蛍光体ホイール装置100と、を備える。蛍光体ホイール装置100は、青色波長帯域光を拡散透過すること及び青色波長帯域光を励起光として蛍光発光することができる。本実施形態において、蛍光体ホイール装置100は、赤色波長帯域光及び緑色波長帯域光を蛍光発光する。従って、赤色光源装置及び緑色光源装置は、励起光源70及び蛍光体ホイール装置100により構成される。蛍光体ホイール装置100から出射される各色波長帯域光は、集光された後、ライトトンネルまたはガラスロッド等の導光装置175の入射口に入射する。
【0030】
励起光源70は、投影装置10筐体の左右方向における左寄り部分であって正面パネル12寄りに配置される。また、励起光源70は、青色レーザダイオード71から成る光源群を有する。光源群は、夫々の光軸が平行になるよう配置された複数の半導体発光素子である青色レーザダイオード71から成る。
【0031】
光源群は、複数の半導体発光素子である青色レーザダイオード71がマトリクス状に配列されて成る。また、各青色レーザダイオード71の光軸上には、各青色レーザダイオード71からの出射光の指向性を高めるように各々平行光に変換するコリメータレンズ73が夫々配置されている。さらにこれらの光源群の前部に集光レンズ72が配置され、概ね蛍光体領域303上で光源群からの出射光が集光されるように配置されている。
【0032】
蛍光体ホイール装置100は、励起光源70から出射される励起光の光路上であって、光源装置60の略中央に配置される。蛍光体ホイール装置100は、正面パネル12と平行となるように配置された蛍光体ホイール101と、この蛍光体ホイール101を回転駆動するモータ110と、このモータ110を駆動制御する図示しない駆動制御装置と、蛍光体ホイール101から反射された励起光を再度蛍光体ホイール101に向かって反射する反射ミラー102と、蛍光体ホイール101から背面パネル13方向に出射される光線束を集光する集光レンズ群111と、を備える。なお、駆動制御装置は、前述の光源制御回路41により制御される。蛍光体ホイール装置100の構成については、詳細を後述する。
【0033】
光源側光学系170は、導光装置175、集光レンズ178、光軸変換ミラー181、集光レンズ183、照射ミラー185及びコンデンサレンズ195により構成されている。なお、コンデンサレンズ195は、コンデンサレンズ195の背面パネル13側に配置される表示素子51から出射された画像光を投影光学系220に向けて出射するので、投影光学系220の一部ともされている。
【0034】
導光装置175は、蛍光体ホイール装置100の集光レンズ群111の近傍に配置されている。よって、赤色波長帯域光、緑色波長帯域光及び青色波長帯域光は、集光レンズ群111により集光され、導光装置175に入射される。導光装置175に入射された光線束は、導光装置175により均一な強度分布の光線束とされる。
【0035】
導光装置175の背面パネル13側の光軸上には、集光レンズ178を介して、光軸変換ミラー181が配置されている。導光装置175の出射口から出射した光線束は、集光レンズ178で集光された後、光軸変換ミラー181により、左側パネル15側に光軸を変換される。
【0036】
光軸変換ミラー181で反射した光線束は、集光レンズ183により集光された後、照射ミラー185により、コンデンサレンズ195を介して表示素子51に所定の角度で照射される。なお、DMDとされる表示素子51は、背面パネル13側にヒートシンク190が設けられ、このヒートシンク190により表示素子51は冷却される。
【0037】
光源側光学系170により表示素子51の画像形成面に照射された光源光である光線束は、表示素子51の画像形成面で反射され、投影光として投影光学系220を介してスクリーンに投影される。ここで、投影光学系220は、コンデンサレンズ195、可動レンズ群235及び固定レンズ群225により構成されている。可動レンズ群235は、レンズモータ45により移動可能に形成される。そして、可動レンズ群235及び固定レンズ群225は、固定鏡筒に内蔵される。よって、可動レンズ群235を備える固定鏡筒は、可変焦点型レンズとされ、ズーム調節やフォーカス調節が可能に形成される。
【0038】
このように投影装置10を構成することで、蛍光体ホイール101を回転させるとともに励起光源70から光を出射すると、赤色、緑色及び青色の各波長帯域光が集光レンズ群111及び導光装置175に順次入射され、さらに光源側光学系170を介して表示素子51に入射されるため、投影装置10の表示素子51であるDMDがデータに応じて各色の光を時分割表示することにより、スクリーンにカラー画像を投影することができる。
【0039】
次に、蛍光体ホイール装置100の蛍光体ホイール101について、
図3乃至
図7を用いて、詳述する。
図3は、蛍光体ホイール装置100に備えられる第1レイヤー103及び第2レイヤー104の対応関係を示す対応図である。
図4は、第1レイヤー103を示す平面図である。
図5は、第2レイヤー104を示す平面図である。
図6は、光源装置60の励起光を拡散透過させる場合の一部平面模式図である。
図7は、光源装置60の励起光により蛍光発光させる場合の一部平面模式図である。
【0040】
蛍光体ホイール装置100が備える蛍光体ホイール101(回転板)は、
図3に示すように、第1レイヤー103及び第2レイヤー104から構成される。第1レイヤー103及び第2レイヤー104は、平面視、円形状であって、互いに重なり合うように(互いに平行に)配置される(
図4及び
図5も参照)。第1レイヤー103は、第2レイヤー104に対して、励起光の光路における上流側に位置する。第1レイヤー103の下流側に位置する、第1レイヤー103の他方面103a側に第2レイヤー104が配置され、第1レイヤー103の一方面103b側に、モータ110が配置される(
図6及び
図7参照)。そして、
図6及び
図7に示すように、第1レイヤー103及び第2レイヤー104は、モータ110より延在するモータ軸110aにより軸支される。第1レイヤー103及び第2レイヤー104の中心には、夫々板厚方向に貫通した軸受103A及び軸受104Aが形成される。モータ軸110aは、まず第1レイヤー103の軸受103Aを貫通し、次に第2レイヤー104の軸受104Aを貫通して、第1レイヤー103及び第2レイヤー104を固定する。なお、モータ軸110aは、第2レイヤー104を貫通せずに、固定してもよい。この場合、軸受104Aは、貫通していてもよいし有底筒状に形成してもよい。第1レイヤー103及び第2レイヤー104は、透明なプラスティック材、樹脂材またはガラス材等の透明な部材によって、形成することができる。
【0041】
第1レイヤー103は、第3透過領域301を有する。
図3及び
図4に示すように、第3透過領域301は、第1レイヤー103の外周縁側にC環状に形成される。第3透過領域301は、第1レイヤー103の他方面103a(光路に於ける上流側)から一方面103b(光路における下流側)に亘って形成される(
図6参照)。そして、第3透過領域301は、第1レイヤー103を形成する透明な部材によって形成され、励起光源70から出射される励起光をはじめとする可視光を透過することができる。
【0042】
第1レイヤー103は、第1反射領域302を有する。第1反射領域302は、第1レイヤー103の一方面103bの外周縁側に形成される(
図6及び
図7参照)。そして、第1反射領域302は、
図3及び
図4に示す青色波長帯域光の反射領域302aの一方面に位置し、円弧状に形成される。第1反射領域302は、例えば、光を反射するミラーにより形成することができる。なお、第1反射領域302は、第1レイヤー103の他方面103a(反射領域302a)に形成することもできる。第3透過領域301及び第1反射領域302は、第1レイヤー103の略同半径位置において周方向に並設される。
【0043】
第1レイヤー103は、蛍光体領域303を有する。
図3及び
図4に示すように、蛍光体領域303は、第1レイヤー103の他方面103aの第3透過領域301の内側に、C環状に形成される。蛍光体領域303は、第1レイヤー103の他方面103aに形成された反射面303-1上に設けられる。反射面303-1は、励起光及び蛍光光を反射することができる。蛍光体領域303は、第1蛍光体領域303a及び第2蛍光体領域303bを有する。第1蛍光体領域303a及び第2蛍光体領域303bは、蛍光体領域303を夫々の領域に周方向に分割するように形成され、夫々異なった蛍光発光特性を有する。第1蛍光体領域303aは、励起光源70から出射された励起光(青色波長帯域光)が照射されると、赤色波長帯域光を蛍光発光する。第2蛍光体領域303bは、励起光源70から出射された励起光(青色波長帯域光)が照射されると、緑色波長帯域光を蛍光発光する。
【0044】
第1レイヤー103は、拡散透過領域304(第2透過領域)を有する。
図3及び
図4に示すように、拡散透過領域304は、第1レイヤー103の他方面103aの反射領域302aの内側に、円弧状に形成され、蛍光体領域303と周方向に並設する。拡散透過領域304は、励起光源70から出射された励起光(青色波長帯域光)を拡散透過する。なお、拡散透過領域304は、プラスティック材、透明樹脂またはガラス材により形成することができる。なお、拡散透過領域304は第2レイヤー104に形成してもよい。
【0045】
第1レイヤー103は、回転板中央部305を有する。回転板中央部305は、第1レイヤー103の蛍光体領域303及び拡散透過領域304よりも内側中央に形成される。第1レイヤー103は、回転板中央部305を金属により形成することも、透明な部材により形成することもできる。第1レイヤー103を金属等の透光性を有さない材料で形成した場合、第3透過領域301は、透光性を有する別部材により構成することができる。
【0046】
第2レイヤー104は、第1透過領域401を有する。
図3及び
図5に示すように、第1透過領域401は、第2レイヤー104の外周縁側に円弧状に形成される。なお、第1透過領域401は、後述する第2レイヤー中央部403と一体に連設されており、
図5に示す1点鎖線は、第1透過領域401及び第2レイヤー中央部403の境界を示す。また、第1透過領域401は、第2レイヤー104の他方面104a及び一方面104bに亘って形成される。そして、第1透過領域401は、励起光源70から出射された励起光(青色波長帯域光)と、励起光源70から出射された励起光(青色波長帯域光)が蛍光体領域303に照射されることによって蛍光発光する蛍光光と、を透過することができる。
【0047】
第2レイヤー104は、ダイクロイックミラー領域402を有する。
図3及び
図5に示すように、ダイクロイックミラー領域402は、第2レイヤー104の他方面104aの外周縁側にC環状に形成される。ダイクロイックミラー領域402は、第1透過領域401と周方向に並設する。また、第1透過領域401は、第1レイヤー103及び第2レイヤー104を重ねた状態の平面視において、第1反射領域302及び拡散透過領域304と径方向の位置が重なるように配置される。そして、ダイクロイックミラー領域402は、第1レイヤー103及び第2レイヤー104を重ねた状態の平面視において、第3透過領域301及び蛍光体領域303と径方向の位置が重なるように配置される。ダイクロイックミラー領域402は、励起光源70から出射された励起光(青色波長帯域光)を反射し、励起光源70から出射された励起光(青色波長帯域光)が蛍光体領域303に照射されることによって蛍光発光する蛍光光を透過する特性を有する。ダイクロイックミラー領域402は、例えば、ダイクロイックフィルタにより形成することができる。
【0048】
第2レイヤー104は、第2レイヤー中央部403を有する。第2レイヤー中央部403は、第2レイヤー104の第1透過領域401及びダイクロイックミラー領域402よりも内側に形成される。第2レイヤー104は、第2レイヤー中央部403を金属により形成することも、透明な部材により形成することもできる。第2レイヤー104を金属等の透光性を有さない材料で形成した場合、第1透過領域401は、透光性を有する別部材により構成することができる。
【0049】
蛍光体ホイール装置100が備える反射ミラー102は、
図6及び
図7に示すように、第1レイヤー103の一方面103b側で、且つ励起光源70とモータ110との間に配置される。そして、反射ミラー102は、第1レイヤー103の一方面103b側に、反射面を形成する。
【0050】
次に、蛍光体ホイール装置100の動作について、
図6及び
図7を用いて説明する。励起光源70から出射された励起光(青色波長帯域光)は、蛍光体ホイール装置100の第1レイヤー103に照射される。このとき、蛍光体ホイール装置100の蛍光体ホイール101(第1レイヤー103及び第2レイヤー104)は、モータ110により、モータ軸110aを中心として回転している。このとき、第3透過領域301及び蛍光体領域303と、第1反射領域302及び拡散透過領域304と、の境界B1及び境界B2は、平面視において、夫々、ダイクロイックミラー領域402と第1透過領域401との境界B3及び境界B4と一致させながら、同角速度で同期して回転する(
図3参照)。第1レイヤー103に照射された励起光は、第1レイヤー103の一方面103bの第3透過領域301又は第1反射領域302に、斜め方向(非垂直方向)から時分割で入射し、照射される。
【0051】
第1レイヤー103の第3透過領域301に照射される励起光を第1励起光とすると、第1励起光の光路は、
図6に示すような光路となる。まず、第1励起光は、空気中から第1レイヤー103の第3透過領域301に入射するため、屈折する。第3透過領域301に入射することにより屈折した第1励起光は、第3透過領域301を透過し、第1レイヤー103の他方面103aより空気中に出射されるため、屈折する。第3透過領域301から空気中に出射された第1励起光は、空気中を通過した後、第2レイヤー104の一方面104bに斜め方向(非垂直方向)から入射する。ここで、第2レイヤー104は、透明な部材により形成されている。従って、第1励起光は、第2レイヤー104に入射することにより屈折する。第2レイヤー104に入射した第1励起光は、第2レイヤー104の内部を透過し、ダイクロイックミラー領域402により反射され、再度第2レイヤー104の内部を透過した後、第2レイヤー104の一方面104bから空気中に出射される。第2レイヤー104の一方面104bから空気中に出射された第1励起光は、屈折した後、空気中を通過し、第1レイヤー103の蛍光体領域303に照射される。
【0052】
蛍光体領域303は、第1励起光が照射されることにより、蛍光光を発光する。蛍光体領域303により主として垂直方向(モータ軸110aの軸線方向)に発光された蛍光光は、第2レイヤー104の一方面104bに入射する。そして、第2レイヤー104の一方面104bに入射した蛍光光は、第2レイヤー104の内部及びダイクロイックミラー領域402を順に透過する。ダイクロイックミラー領域402を透過した蛍光光は、第1蛍光体領域303aに第1励起光が照射された場合の赤色波長帯域光又は第2蛍光体領域303bに第1励起光が照射された場合の緑色波長帯域光として、集光レンズ群111により集光された後、導光装置175に入射する。
【0053】
第1レイヤー103の第1反射領域302に照射される励起光を第2励起光とすると、第2励起光の光路は、
図7に示すような光路となる。まず、第2励起光は、第1レイヤー103の第1反射領域302に照射され、反射ミラー102に向けて反射される。反射ミラー102に入射した第2励起光は、反射ミラー102により反射され、第1レイヤー103の一方面103bに垂直に入射する。第1レイヤー103に入射した第2励起光は、第1レイヤー103の内部を透過した後、拡散透過領域304に入射し、拡散される。次に、拡散透過領域304により拡散された第2励起光は、第2レイヤー104の一方面104bに入射し、第2レイヤー104の内部を透過した後、第2レイヤー104の他方面104aより出射される。第2レイヤー104の他方面104aより出射した第2励起光は、青色波長帯域光として、集光レンズ群111により集光された後、導光装置175に入射する。
【0054】
本実施形態は、励起光に2通りの光路を持たせることにより、簡易な構成で励起光及び蛍光光を出射する蛍光体ホイール装置100を構成できる。また、蛍光体領域303に励起光(第1励起光)が照射されると、励起光(第1励起光)の入射方向と逆方向に強い蛍光光を発光する。本実施形態は、第2レイヤー104のダイクロイックミラー領域402により反射させてから蛍光体領域303に照射し、励起光(第1励起光)の入射方向(第2レイヤー104から第1レイヤー103に向かう方向)と逆方向(第1レイヤー103から第2レイヤー104に向かう方向)に発光した蛍光光を利用するものである。さらに、蛍光体領域303に入射して蛍光体領域303を励起しなかった励起光は、反射面303-1で反射されるため、再び蛍光体領域303の励起光とすることができる。そして、励起光が第2レイヤー104側に一部が反射しても、ダイクロイックミラー領域402により再度、蛍光体領域303側へ反射することができる。従って、本実施形態の蛍光体ホイール装置100は、高い蛍光発光効率を発揮することができる。
【0055】
なお、本実施形態の第1レイヤー103及び第2レイヤー104は、蛍光体領域303及び拡散透過領域304を内包した1つの部材でもよい。また、第1レイヤー103及び第2レイヤー104は、接した状態で、モータ110により同期回転してもよい。そして、第3透過領域301及び第1透過領域401は、部材を配置せずに円弧状に切欠いた構成としてもよい。
【0056】
(変形例1)
次に、本発明の変形例1を説明する。なお、本変形例の説明において、前述の実施形態と同様の構成については、その説明を省略又は簡素化する。本変形例は、蛍光体ホイール101(第1レイヤー103及び第2レイヤー104)をモータ110により回転させる構成に替えて、板部材(レイヤー)を用いた蛍光体装置とするものである。
【0057】
本変形例は、蛍光体ホイール101(第1レイヤー103及び第2レイヤー104)に替えて、固定された3枚の板部材を用いる。そして、励起光源70は、蛍光光(赤色波長帯域光及び緑色波長帯域光)の励起光の光源となる青色レーザダイオード71から構成される第1光源群及び青色波長帯域光の光源となる青色レーザダイオード71から構成される第2光源群から構成することができる。なお、第1光源群から出射される励起光を第3励起光、第2光源群から出射される励起光を第4励起光として、説明する。
【0058】
3枚の板部材のうち、2枚の板部材(第1板部材及び第2板部材)には、第1板部材(
図6の第1レイヤー103の右側一部に相当)に、第1励起光を透過させる透過部(第3透過領域301に相当)及び第1励起光により蛍光光を発光する蛍光体領域(蛍光体領域303に相当)を形成し、第2板部材に、第3励起光を反射し蛍光光を透過させる反射透過部(ダイクロイックミラー領域402に相当)を形成する。本変形例において、第3励起光は、第1板部材の透過部を透過し、第2板部材の反射透過部に反射された後に、第1板部材の蛍光体領域に照射される。第1板部材の蛍光体領域に第3励起光が照射されることで、赤色波長帯域光及び緑色波長帯域光等の蛍光光が発光される。従って、本変形例は、赤色波長帯域光及び緑色波長帯域光等の蛍光光を出射することができる。なお、第1板部材及び第2板部材は、前述の実施形態における第1レイヤー103及び第2レイヤー104と同様に平行に配置することができる。
【0059】
3枚の板部材のうち、残りの1枚の板部材(
図6の第1レイヤー103の左側一部に相当する第3板部材)には、第4励起光を反射する反射部(第1反射領域302に相当)と第4励起光を拡散透過させる拡散透過部(拡散透過領域304に相当)を形成することで、反射部で反射させた第4励起光を反射ミラー102で反射させ、拡散透過部に照射及び透過させることができる。これにより、本変形例は、青色波長帯域光を出射することができる。
【0060】
本変形例は、第1板部材及び第2板部材は、厚板状の1枚の板部材とすることもできる。その場合、該1枚の板部材は、第3励起光及び蛍光光を透過させる透過部、第3励起光を反射し蛍光光を透過する反射透過部及び第3励起光により蛍光光を発光する蛍光体を有する。該1枚の板部材は、第1励起光を透過部に斜め方向(非垂直方向)から入射させ、透過部を透過させる。そして、該1枚の板部材は、第3励起光を反射透過部により反射させ、蛍光体に照射することにより、蛍光光を発光することができる。
【0061】
即ち、1枚の板部材の場合、第1の領域と第2の領域の何れにおいても、励起光と蛍光光とを透過する透過部が基材となる。基材の第1の領域には、この基材を基準として、励起光が入射する一方面側に、励起光により励起されて蛍光光を発光する蛍光体領域(303)が形成される。そして、基材の他方面側に、励起光を反射して蛍光光を透過する反射透過部(402)が設けられる。基材の第2の領域には、この基材を基準として、励起光が入射する一方面側に、励起光を反射する反射部(302)が設けられる。そして、基材の他方面側に、励起光を拡散透過する拡散透過部(304)が形成される。また、反射部(302)で反射された励起光を反射して拡散透過部(304)に導く反射ミラー102を備える。
【0062】
さらに、本変形例の蛍光体装置は、第3板部材に反射部を設けず、かつ反射ミラー102を備えずに、第4励起光を直接拡散透過させる拡散透過部を形成した構成とすることもできる。この場合、第4励起光を第3板部材の拡散透過部を透過させることで、青色波長帯域光を出射する。
【0063】
(変形例2)
次に、本発明の変形例2を説明する。なお、本変形例の説明において、前述の実施形態、変形例1と同様の構成については、その説明を省略又は簡素化する。本変形例は、第1レイヤー103を外周縁から軸受103Aに向かって傾斜し、
図6の導光装置175側へ凸状(略円錐状)に形成するものである。この構成により、蛍光体領域303は傾斜面に形成されることになる。蛍光体領域303が傾斜することにより、ダイクロイックミラー領域402から反射された第1励起光を、より垂直に近い角度で入射させることができる。なお、本変形例は、第1レイヤー103を外周縁から軸受103Aに向かって傾斜し導光装置175側を窪ませた凹状(略凹円錐状)に形成してもよい。
【0064】
以上、本発明の実施形態によれば、蛍光体ホイール装置100は、励起光を出射する励起光源70と、励起光を透過する第3透過領域301、励起光を反射する第1反射領域302及び励起光により励起されて蛍光光を発光する蛍光体領域303を有する第1レイヤー103と、励起光を反射する反射ミラー102と、を備え、励起光源70から第3透過領域301に照射された励起光である第1励起光は、蛍光体領域303に照射され、励起光源70から第1反射領域302に照射された励起光である第2励起光は、反射ミラー102に反射され、第3透過領域301に入射する。
【0065】
これにより、蛍光体ホイール装置100の構成は、シンプルでありながら、励起光を蛍光発光に用いる場合と、拡散透過させる場合で2つの光路とすることができる。この2つの光路により、高い蛍光発光効率を発揮する蛍光体ホイール装置100を構成することができる。なお、本構成は、1つの励起光を用いて、少なくとも2つの波長帯域の光を出射できる。
【0066】
また、第1レイヤー103は、拡散透過領域304を有し、拡散透過領域304は、反射ミラー102に反射された第2励起光を拡散し、第1反射領域302及び拡散透過領域304は、第1レイヤー103上において径方向に位置が異なるように設けられる。これにより、反射ミラー102に反射された第2励起光を拡散することができる。さらに、反射ミラー102により、第1反射領域302と拡散透過領域304を回転板上において径方向に位置が異なるように設けることができるため、第1反射領域302と拡散透過領域304のレイアウトの幅が広がる。
【0067】
また、拡散透過領域304は、第1レイヤー103の一方面(他方面103a)側に形成され、第1反射領域302は、第1レイヤー103の他方面(一方面103b)側に形成され、反射ミラー102は、第1レイヤー103の他方面(一方面103b)側に形成される。これにより、第1レイヤー103の第3透過領域301を透過した第2励起光を拡散することができる。また、第1反射領域302及び拡散透過領域304が第1レイヤー103の異なる面に形成されるため、第1反射領域302及び拡散透過領域304の形状又はレイアウトの幅が広がる。
【0068】
また、蛍光体領域303は、第1蛍光体領域303aと、励起光により励起される蛍光光の波長帯域が第1蛍光体領域303aと異なる第2蛍光体領域303bと、を有する。これにより、1つの励起光から、少なくとも3種類の波長帯域の光を作成できる。
【0069】
また、第1レイヤー103と重なり合う第2レイヤー104を備え、第2レイヤー104は、励起光及び蛍光光を透過する第1透過領域401と、第1励起光を蛍光体領域303へ反射し、蛍光光を透過するダイクロイックミラー領域402と、を有する。これにより、第1励起光を第2レイヤー104から第1レイヤー103に向かって蛍光体領域303に照射し、第1レイヤー103から第2レイヤー104に向かって発光した蛍光光を利用することができるため、蛍光発光効率の高い構成となる。
【0070】
また、蛍光体領域303及び拡散透過領域304は周方向に並設される。これにより、第1レイヤー103を回転させ、励起光を時分割で第1励起光又は第2励起光に切り替えることができる。
【0071】
また、投影装置10は、上記蛍光体ホイール装置100を備える光源装置60を備える。これにより、簡易な構成の光源装置60及び投影装置10を提供することができる。
【0072】
また、蛍光体装置は、励起光を出射する励起光源70と、励起光により蛍光光を発光する板部材と、を備え、板部材は、励起光により励起されて蛍光光を発光する蛍光体領域及び励起光を透過する透過部を有する第1板部材と、励起光を反射し蛍光光を透過する反射透過部を有する第2板部材と、を含み、励起光は、第1板部材の透過部を透過して反射透過部で反射された後、蛍光体領域に照射され、蛍光光は、反射透過部を透過する。これにより、モータ110を用いなくとも、高い蛍光発光効率を有する蛍光体装置を提供できる。さらに、モータ110を用いない分、省電力化を図ることができる。
【0073】
また、蛍光体装置は、励起光を出射する励起光源70と、励起光により励起されて蛍光光を発光する蛍光体領域及び励起光を反射し蛍光光を透過する反射透過部を有する板部材と、を備え、励起光は、板部材に対して斜め方向から入射し、反射透過部で反射された後、蛍光体領域に照射され、蛍光光は、反射透過部を透過する。これにより、板部材が1枚であっても、基板に対する励起光の入射角度を非垂直とすれば、励起光を反射透過領域に反射させた後に、蛍光体に照射できる。
【0074】
また、光源装置60は、上記蛍光体装置と、励起光を反射する反射部及び励起光を拡散透過する拡散透過部を有する板部材と、反射部に反射された励起光を反射して拡散透過部に導く反射ミラー102と、を備える。これにより、励起光を反射部で反射させた後に入射させることができるため、板部材のレイアウトの幅が広がる。
【0075】
また、以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0076】
以下に、本願出願の最初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]励起光を出射する励起光源と、
前記励起光を透過する透過領域、前記励起光を反射するダイクロイックミラー領域及び第1反射領域、及び前記励起光により励起されて蛍光光を発光する蛍光体領域、を有する回転板と、
前記励起光を反射する反射ミラーと、
を備え、
前記透過領域と前記蛍光体領域とは、前記ダイクロイックミラー領域と重なる位置に配置され、
前記ダイクロイックミラー領域と前記第1反射領域とは、互いに周方向の異なる位置に配置されることを特徴とする蛍光体ホイール装置。
[2]前記透過領域は、第1透過領域と第3透過領域とを含み、
前記ダイクロイックミラー領域と重なる位置に配置される前記透過領域は、前記第3透過領域であることを特徴とする前記[1]に記載の蛍光体ホイール装置。
[3]前記第3透過領域に照射された前記励起光は、前記第3透過領域を透過して前記ダイクロイックミラー領域で反射された後、前記蛍光体領域に照射され、
前記第1反射領域に照射された前記励起光は、前記第1反射領域で反射された後、前記反射ミラーで反射され、前記第1透過領域に入射することを特徴とする前記[2]に記載の蛍光体ホイール装置。
[4]前記回転板は、第1レイヤーと、前記第1レイヤーと重なり合う第2レイヤーと、を有し、
前記第2レイヤーは、前記第1透過領域と前記ダイクロイックミラー領域とを有し、
前記ダイクロイックミラー領域は、前記蛍光光を透過することを特徴とする前記[2]又は前記[3]に記載の蛍光体ホイール装置。
[5]前記回転板は、第2透過領域を有し、
前記第2透過領域は拡散透過領域であり、
前記拡散透過領域は、前記反射ミラーで反射された前記励起光を拡散透過し、
前記第1反射領域と前記拡散透過領域とは、前記回転板上において径方向の位置が異なるように設けられることを特徴とする前記[1]乃至前記[4]の何れかに記載の蛍光体ホイール装置。
[6]前記第1反射領域は、前記回転板の一方面側に形成され、
前記反射ミラーは、前記回転板の前記一方面側に配置されることを特徴とする前記[1]乃至前記[5]の何れかに記載の蛍光体ホイール装置。
[7]前記蛍光体領域は、
第1蛍光体領域と、
前記励起光により励起される前記蛍光光の波長帯域が前記第1蛍光体領域と異なる第2蛍光体領域と、
を有することを特徴とする前記[1]乃至前記[6]の何れかに記載の蛍光体ホイール装置。
[8]前記蛍光体領域及び前記拡散透過領域は周方向に並設されることを特徴とする前記[5]に記載の蛍光体ホイール装置。
[9]前記回転板は、外周縁側から中心側に向かって凸状の傾斜面が形成されており、
前記蛍光体領域は前記傾斜面に形成されることを特徴とする前記[1]乃至前記[8]の何れかに記載の蛍光体ホイール装置。
[10]前記[1]乃至前記[9]の何れかに記載の蛍光体ホイール装置を備え、
前記励起光源は、半導体発光素子により構成され、前記励起光とされる青色波長帯域光を出射し、
前記蛍光体領域は、前記励起光が照射されることにより、赤色波長帯域光又は緑色波長帯域光を発光することを特徴とする光源装置。
[11]前記[10]に記載の光源装置と、
前記光源装置からの光源光が照射され、画像光を形成する表示素子と、
前記表示素子から出射された前記画像光を被投影体に投影する投影光学系と、
前記表示素子及び前記光源装置を制御する投影装置制御部と、
を備えることを特徴とする投影装置。
[12]励起光を出射する励起光源と、
前記励起光により励起されて蛍光光を発光する蛍光体領域、前記励起光と前記蛍光光とを透過する透過領域、及び前記励起光を反射して前記蛍光光を透過するダイクロイックミラー領域、を有するレイヤーと、
を備えることを特徴とする蛍光体装置。
[13]励起光を出射する励起光源と、
前記励起光を反射する反射領域及び前記励起光を拡散透過する拡散透過領域を有するレイヤーと、
前記反射領域で反射された前記励起光を反射して前記拡散透過領域に導く反射ミラーと、
を備えることを特徴とする光源装置。
[14]青色波長帯域からなる励起光を出射する励起光源と、
所定の軸を中心に回転するように構成されるとともに前記励起光源から出射される前記励起光の光路上に配置されることにより、前記所定の軸を中心にした回転に伴って前記励起光が照射される領域が可変する回転板と、
前記励起光を反射する反射ミラーと、
を備え、
前記回転板は、前記所定の軸に対して傾いた方向から前記励起光が照射されるように配置されるとともに、前記光路における上流側に位置する第1レイヤーと下流側に位置する第2レイヤーとを有し、
前記第2レイヤーには、青色波長帯域の光を反射するとともに緑色波長帯域の光を透過するダイクロイックミラー領域と、青色波長帯域の光と緑色波長帯域の光をともに透過する第1透過領域とが、前記回転板が回転した際に互いに異なるタイミングで前記励起光の照射位置に近づくように設けられており、
前記第1レイヤーには、照射された前記励起光を前記反射ミラーに向けて反射させる第1反射領域と前記反射ミラーから反射されてきた前記励起光を前記第2レイヤーに向けて透過させる第2透過領域とが、前記第1透過領域と重なる位置に設けられており、且つ、照射された前記励起光を前記ダイクロイックミラー領域に向けて透過させる第3透過領域と前記ダイクロイックミラー領域で反射された前記励起光に基づいて緑色波長帯域からなる蛍光光を出射する蛍光体領域とが、前記ダイクロイックミラー領域と重なる位置に設けられている、
ことを特徴とする光源装置。
【符号の説明】
【0077】
10 投影装置 12 正面パネル
13 背面パネル 14 右側パネル
15 左側パネル 17 排気孔
18 吸気孔 21 入出力コネクタ部
22 入出力インターフェース 23 画像変換部
24 表示エンコーダ 25 ビデオRAM
26 表示駆動部 31 画像圧縮/伸長部
32 メモリカード 35 Ir受信部
36 Ir処理部 37 キー/インジケータ部
38 制御部 41 光源制御回路
43 冷却ファン駆動制御回路 45 レンズモータ
47 音声処理部 48 スピーカ
51 表示素子 60 光源装置
70 励起光源 71 青色レーザダイオード
72 集光レンズ 73 コリメータレンズ
100 蛍光体ホイール装置
101 蛍光体ホイール 102 反射ミラー
103 第1レイヤー 103A 軸受
103a 他方面 103b 一方面
104 第2レイヤー 104A 軸受
104a 他方面 104b 一方面
110 モータ 110a モータ軸
111 集光レンズ群 170 光源側光学系
175 導光装置 178 集光レンズ
181 光軸変換ミラー 183 集光レンズ
185 照射ミラー 190 ヒートシンク
195 コンデンサレンズ 220 投影光学系
225 固定レンズ群 235 可動レンズ群
241 制御回路基板 261 冷却ファン
301 第3透過領域 302 第1反射領域
302a 反射領域 303 蛍光体領域
303-1 反射面 303a 第1蛍光体領域
303b 第2蛍光体領域 304 拡散透過領域
305 第1レイヤー中央部 401 第1透過領域
402 ダイクロイックミラー領域 403 第2レイヤー中央部
B1~B4 境界