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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】熱伝導性組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240509BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20240509BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240509BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240509BHJP
   C08L 33/00 20060101ALI20240509BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C08L101/00
C08F265/06
C08K3/04
C08K3/08
C08L33/00
C09K5/14 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020020386
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021123702
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮田 勇悟
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 じゆん
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-182963(JP,A)
【文献】特開2019-094452(JP,A)
【文献】特開2019-048950(JP,A)
【文献】特開2001-195919(JP,A)
【文献】特開2012-015118(JP,A)
【文献】特開2017-069175(JP,A)
【文献】特開2013-159735(JP,A)
【文献】特開2010-132838(JP,A)
【文献】特開2003-238822(JP,A)
【文献】特開2016-102153(JP,A)
【文献】特開2013-067755(JP,A)
【文献】宮田 勇悟、高田 じゆん,反応誘起相分離とフィラー偏在技術を応用した高機能材料の創製,東亜合成グループ研究年報,22,2019年01月01日,https://www.toagosei.co.jp/develop/theses/detail/pdf/no22_02.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08K
C08L
C09K 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
比誘電率が異なる2成分以上のポリマー成分、熱伝導性金属フィラーおよびグラフェンを含む熱伝導性組成物において、該熱伝導性金属フィラーが1つのポリマー成分に偏在し、かつ、熱伝導性金属フィラーが偏在するポリマー成分が連続相を形成し、
前記連続相が、ポリマー成分を重合性モノマーに溶解させて行われる反応誘起相分離よって形成される、
熱伝導性組成物。
【請求項2】
前記熱伝導性金属フィラーが最も比誘電率の低いポリマー成分に偏在する請求項1に記載の熱伝導性組成物。
【請求項3】
前記熱伝導性金属フィラーがアルミニウムフィラーである請求項1または請求項2に記載の熱伝導性組成物。
【請求項4】
熱伝導率が0.8W/m・K以上であり、かつ密度が1.5g/cm3以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項5】
最も比誘電率の高いポリマー成分と他のポリマー成分との比誘電率の差が0.01~50である請求項1~4のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項6】
ポリマー成分の少なくとも1つが(メタ)アクリル樹脂である請求項1~5のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項7】
ポリマー成分の少なくとも1つが架橋したポリマー成分である請求項1~6のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項8】
重合性モノマー中にポリマーを溶解させた後、前記重合性モノマーを重合させてポリマー成分にすることで、ポリマー成分が相分離する反応誘起相分離を起こし、導電性金属フィラーが1つのポリマー成分に偏在し、該導電性金属フィラーが偏在するポリマー成分が連続相を形成することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物の製造方法。
【請求項9】
前記重合性モノマーが、(メタ)アクリレート化合物である請求項8に記載の熱伝導性組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2成分以上のポリマー成分から成り、2つ以上の相から成る相分離構造を有するポリマーブレンドで、そのうちの1つの相に熱伝導性金属フィラーを偏在させ、該熱伝導性金属フィラーが偏在する相が連続相を形成する有機無機複合物およびグラフェンからなる熱伝導性組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機無機複合物は、有機物の長所(成型性、軽量性、柔軟性、官能基導入など)と無機物の長所(耐熱性、機械的強度、熱伝導性、導電性など)を両立することが期待される材料である。
【0003】
有機物であるポリマーの特性を改質するための手法として、ポリマーに無機物である無機フィラーを添加して有機無機複合物とする手法が採られており、さらに有機無機複合物の特性を制御する手法として、相分離構造を有するポリマーブレンドの特定の相に優先的に無機フィラーを偏在させる手法が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、2成分以上のポリマー成分から成り、2つ以上の相から成る相分離構造を有するポリマーブレンドで、1つの相に導電性金属フィラーを偏在させ、該導電性金属フィラーが偏在する相が連続相を形成する有機無機複合物からなる導電性組成物およびその製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-182963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、導電性金属フィラーとして銀フィラーが例示されているが、特定な用途では導電率が不十分であり、導電率を上げるためには導電性金属フィラーの添加量を増加させる必要がある。しかしながら、導電性金属フィラーは密度が大きいため、添加量を増加させると組成物自体の密度が大きくなるため、例えば、自動車用など軽量化が要求される用途には使用が難しいという問題がある。
なお、特許文献1における導電性と本発明の熱伝導性とは、ほぼ同じ効果を意味すると考えられ、導電性を改良することで熱伝導性も改良される。
【0007】
本発明は、上記の状況を鑑み、熱伝導性金属フィラーの添加量を増加させることなく、熱伝導性に優れ、かつ密度が小さくて軽量である熱伝導性組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、比誘電率の異なるポリマー成分と重合性モノマー成分を均一に相溶し、熱伝導性金属フィラーを混合した後、反応誘起相分離を進行させると、該熱伝導性金属フィラーが連続相に効率的に偏在すること、さらに熱伝導性に優れたグラフェンを組み合わせることで、熱伝導性に優れ、軽量な熱伝導性組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1発明は、比誘電率が異なる2成分以上のポリマー成分、熱伝導性金属フィラーおよびグラフェンを含む熱伝導性組成物において、該熱伝導性金属フィラーが1つのポリマー成分に偏在し、かつ、熱伝導性金属フィラーが偏在するポリマー成分が連続相を形成する熱伝導性組成物である。
【0010】
また、本発明の第2発明~第7発明は、熱伝導性金属フィラーを特定、熱伝導率と密度を特定、ポリマー成分の比誘電率の差を特定、またはポリマー成分を特定した第1発明に記載の熱伝導性組成物である。
【0011】
さらに、本発明の第8発明および第9発明は、重合性モノマー中にポリマーを溶解させた後、前記重合性モノマーを重合させてポリマー成分にすることで、ポリマー成分が相分離する反応誘起相分離を起こし、熱伝導性金属フィラーが1つの相に偏在し、該熱伝導性金属フィラーが偏在する相が連続相を形成することを特徴とする第1発明~第7発明のいずれかに記載の熱伝導性組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明における有機無機複合物およびグラフェンからなる熱伝導性組成物は、連続相を形成するポリマー成分の組成比を任意に設計できるうえ、相対的に低い比誘電率を有する相に、容易に熱伝導性金属フィラーを偏在させることができ、さらに特定な条件により、偏在先で効率的に熱伝導性金属フィラー同士を連結することができる。さらに、熱伝導性に優れたグラフェンを添加することで、熱伝導性金属フィラーの量が少なくとも高い熱伝導性を有するため、特に軽量化が必要とされる有機無機複合物として、熱伝導性材料への利用が可能であり、自動車の電気系統の放熱材料、電子材料、センサ材料、医療・介護材料、構造材料、自動車材料および航空宇宙材料等の用途への利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は比較例3で得られた組成物の走査型プローブ顕微鏡での断面写真(SPM)およびその拡大写真を示す。
図2図2は比較例1で得られた組成物の走査型プローブ顕微鏡での断面写真(SPM)を示す。
図3図3は実施例1で得られた組成物の走査型プローブ顕微鏡での断面写真(SPM)を示す。
図4図4は実施例1で得られた組成物の走査型電子顕微鏡での断面写真(SEM)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳しく説明する。なお、特にことわりのない限り、「部
数」は質量部、「%」は質量%を表す。
また、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」はアクリルおよびメタクリルを意味する。
【0015】
本発明の熱伝導性組成物における有機成分は2成分以上のポリマー成分であり、無機成分は熱伝導性金属フィラーである。2成分以上のポリマー成分と熱伝導性金属フィラーを混合させて、相分離した1つの相に熱伝導性金属フィラーが偏在して連続相を形成したものとグラフェンとを含む組成物が、本発明の熱伝導性組成物である。
【0016】
本発明における各ポリマー成分の比誘電率は、そのポリマーの原料であるモノマーの誘電率(ε)を真空の誘電率(ε0)で除した比誘電率(ε/ε0)で示す。
【0017】
本発明において熱伝導性金属フィラーが偏在するとは、1つの相に存在する熱伝導性金属フィラーの割合が、熱伝導性金属フィラー全体に対して70質量%以上であることを意味し、その割合は80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
熱伝導性金属フィラーが偏在している割合の測定は、特に限定なく公知の方法を用いることができる。例えば、走査型電子顕微鏡を用いて観察した試料の断面をX線マイクロアナライザ(XMA、堀場製作所社製X-max80)を用いて解析し、添加した熱伝導性金属フィラー成分の元素マッピングをすることにより測定できる。その他、走査型プローブ顕微鏡や原子間力顕微鏡を用いたタッピングによる解析などの方法も利用可能である。
【0018】
また、本発明において連続相を形成することは、例えば、熱伝導性組成物の断面を走査型プローブ顕微鏡で観察することにより、連続相を形成していることが確認できる。
【0019】
本発明における相分離構造を形成する各相は、それぞれ単独のポリマー成分である完全な分離状態であっても、あるいは、ポリマー成分比が相分離開始前の相溶状態から変化している程度であってもよい。
後者の場合、例えば、比誘電率の異なる2つのポリマー成分からなるポリマーブレンドにおいて相分離構造が形成される場合は、一方は比誘電率の高いポリマー成分が主成分であり、他方は比誘電率の低いポリマー成分が主成分となり、前者の相の比誘電率が相対的に高く、後者の相の比誘電率が相対的に低くなる。熱伝導性金属フィラーは後者の相に優先的に偏在する。
【0020】
本発明の熱伝導性組成物の製造方法は特に限定されないが、重合性モノマー中にポリマーを溶解させ、熱伝導性金属フィラーおよびグラフェンを含む状態で、重合性モノマーを重合させてポリマー成分にする時に起こる反応誘起相分離を利用した方法で製造することが好ましい。以下、反応誘起相分離を利用した方法で製造する熱伝導性組成物について説明する。
【0021】
本発明における重合性モノマーとしては、特に限定されないが、(メタ)アクリレートおよびスチレンなどのビニルモノマー、エポキシおよびオキセタンなどの環状エーテルモノマー、ならびにシリコンモノマーなどが挙げられるが、柔軟性の制御のしやすさから、(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。
【0022】
前記(メタ)アクリレートには、単官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリレートが含まれる。
単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、脂環式を含む単官能脂肪族(メタ)アクリレートモノマーおよび単官能芳香族(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、2官能(メタ)アクリレートモノマーおよび3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーが挙げられ、2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、2官能脂肪族(メタ)アクリレートモノマーおよび2官能芳香族(メタ)アクリレートモノマーが挙げられ、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、多官能脂肪族(メタ)アクリレートモノマーおよび多官能芳香族(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
これらのモノマーは、1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0023】
前記重合性モノマーとして、具体的には次のようなものが挙げられる。
<単官能脂肪族(メタ)アクリレートモノマー>
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、メタリル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、2-ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、末端水酸基ポリエステルモノ(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2-アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、アリル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートモノエステル、(メタ)アクリル酸、カルビトール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、単官能ウレタン(メタ)アクリレート、単官能エポキシ(メタ)アクリレート、単官能ポリエステル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、シアノアクリレート、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0024】
<単官能芳香族(メタ)アクリレートモノマー>
フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシ-2-メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-(2-フェニルフェニル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性p-クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2-ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4-ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(n=2)(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(n=2.5)(メタ)アクリレート、ジフェニル-2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、o-フェニルフェノールグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート等のフタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、フルオレン骨格含有単官能性(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0025】
<2官能脂肪族(メタ)アクリレートモノマー>
ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3-アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2官能ウレタン(メタ)アクリレート、2官能エポキシ(メタ)アクリレート、2官能ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのカプロラクトン変性ジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸グリセリンモノ(メタ)アクリレート、3-(メタ)アクリロイロキシグリセリンモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0026】
<2官能芳香族(メタ)アクリレートモノマー>
ビスフェノールAのEO(エポキシ)付加物ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、フルオレン骨格含有二官能性(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAの(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAの(メタ)アクリレート、ビスフェノールAとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応で得られるエポキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応で得られるエポキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応で得られるエポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0027】
<3官能以上の脂肪族(メタ)アクリレートモノマー>
ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、多官能ウレタン(メタ)アクリレート、多官能エポキシ(メタ)アクリレート、多官能ポリエステル(メタ)アクリレート、トリス[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリス[2-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル]イソシアヌレート、2,4,6-トリス((メタ)アクリロイルオキシエトキシ)-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0028】
<3官能以上の芳香族(メタ)アクリレートモノマー>
フルオレン骨格含有多官能性(メタ)アクリレートおよび2,4,6-トリス((メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0029】
上記の中で、好ましい重合性モノマーおよびその比誘電率は以下のとおりである。なお、比誘電率は、誘電率計(日本ルフト株式会社製Model871)で測定し(23℃、周波数:10kHz)、カッコ中の数字が比誘電率である。
イソボルニルメタクリレート(4.4)、シクロヘキシルメタクリレート(4.9)、ブチルアクリレート(5.1)、メチルアクリレート(6.6)、メチルメタクリレート(6.1)、2-メトキシエチルアクリレート(7.9)、グリシジルメタクリレート(8.0)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(8.7)、2-アセトアセトキシエチルメタクリレート(13.5)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(14.2)、アクリロイルモルホリン(15.5)、2-(2-オキソ-1、3-ジオキソラン-4-イル)エチルメタクリレート(30.2)、2-(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)エチルアクリレート(46.5)。
【0030】
また、上記のモノマーを重合させて、本発明におけるポリマー成分として使用することができる。
【0031】
本発明において上記重合性モノマーに溶解させるポリマー成分としては、特に限定はされないが、上記重合性モノマーを重合して得られるポリマーの他に、次のような熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂などが挙げられる。
【0032】
<熱可塑性樹脂>
(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、フッ化樹脂、液晶ポリマー、オレフィン-ビニルアルコール共重合体、アイオノマー樹脂、ポリアリレート樹脂、アクリロニトリル-エチレン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体およびアクリロニトリル-スチレン共重合体などが挙げられる。
これらの中でも、柔軟性の制御のしやすさから、(メタ)アクリル樹脂を用いるのが好ましい。
【0033】
<熱硬化性樹脂>
エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂および熱硬化性ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0034】
本発明において前記のモノマーを重合するための重合開始剤の種類としては、重合反応を開始し得るものであれば特に制限はない。例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンゾインエーテル類、ヒドロキシケトン類、アシルホスフィンオキシド類、ジアゾニウムカチオンオニウム塩、ヨードニウムカチオンオニウム塩およびスルホニウムカチオンオニウム塩などを、使用するモノマーの種類に応じて適宜用いることができる。
【0035】
前記の重合性モノマーとポリマー成分の配合割合は任意に決めることができるが、ポリマー成分の割合は、好ましくは5~90質量%であり、より好ましくは10~70質量%であり、さらに好ましくは15~50質量%である。
【0036】
本発明では比誘電率が異なる2成分以上のポリマー成分が使用されるが、最も比誘電率が高いポリマー成分と他のポリマー成分との比誘電率の差は、好ましくは0.01~50であり、より好ましくは0.01~30であり、さらに好ましくは0.01~20ある。比誘電率差が50以上であると重合性モノマーにポリマーが溶解しない恐れがある。
【0037】
さらに、本発明におけるポリマー成分は架橋されていても良い。架橋はカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基およびカルボニル基などの反応性官能基が導入された重合体と架橋性官能基を有する架橋剤との間の架橋反応により行われる。
この他にも1分子中に2個以上のビニル基を有する、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびジビニルベンゼン等の架橋性モノマーの共重合、またはメチロール基含有モノマーおよび加水分解性シリル基含有モノマー等の自己架橋可能な官能基を有するモノマーを導入することによっても架橋は可能である。
【0038】
架橋剤の種類としては、前記の反応性官能基と架橋反応し得るものであれば特に制限はない。例えば、エポキシ系、イソシアネート系、ヒドラジド系、カルボジイミド系、オキサゾリン系および金属架橋系等の架橋剤から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。架橋剤の添加量は目的とする用途および性能により適宜調整されるものであるが、重合組成物に対し、0.05~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がさらに好ましい。
【0039】
架橋の方法としては、ポリマー(初期ポリマーと呼ぶ)を溶解させた重合性モノマーが重合する際に、重合性モノマー自体に架橋反応を起こす方法、重合性モノマーが重合した後初期ポリマーが架橋反応を起こす方法、あるいはそれら方法により重合性モノマーと初期ポリマーのそれぞれに架橋反応を起こす方法がある。
【0040】
本発明における熱伝導性金属フィラーとしては、特に限定されないが、金、銀、銅、白金、ニッケル、アルミニウム、パラジウム、スズ、ビスマス、亜鉛、インジウム、マグネシウム、タングステンおよびチタンから選択される少なくとも1種の金属を含むものが好ましく、1種単独または2種以上を組み合わせて用いられる。また、熱伝導性金属フィラーは、複数の熱伝導性金属を複合化した複合フィラーであってもよい。
これらの中でも、軽量であり、熱伝導性が高いことから、熱伝導性金属フィラーとしてはアルミニウムフィラーが特に好ましい。
【0041】
前記熱伝導性金属フィラーは、表面処理されていることが好ましく、有機酸またはその塩によって表面処理されていることがより好ましく、表面が疎水化処理されていることがさらに好ましい。これにより、樹脂成分が形成する相分離構造の特定の相に熱伝導性金属フィラーが偏在し易くなり、疎水化処理されている場合には比誘電率のより低い相に偏在し易くなり、より好ましい。
有機酸は、例えば、カルボキシル基を含有し、有機酸塩は、有機酸と塩基との組み合わせにより形成される。有機酸またはその塩は、例えば、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、およびこれらの塩から選ばれ得る。特に、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、およびこれらのアンモニウム塩は、少量の使用で表面処理の効果を得やすいため好ましい。有機酸塩を使用すれば、水中で熱伝導性金属フィラーの表面処理を行うことができるため好ましい。
【0042】
表面処理剤としての有機酸または有機酸塩の量は、熱伝導性金属フィラー100質量部に対して0.001~0.5質量部の範囲にあることが好ましい。表面処理剤の量が0.001質量部より少ないと、表面処理の効果が少なく、熱伝導性金属フィラーを積極的に偏在化させる効果が得られにくくなることがある。表面処理剤の量が0.5質量部より多いと、熱伝導性向上の効果が小さくなる可能性がある。
【0043】
熱伝導性金属フィラーの形状は、球状、棒状、針状、柱状、繊維状、平板状、フレーク状、ナノシート、ナノファイバーおよびらくがん状(複数の球が凝集した形状)のいずれであってもよいが、少量の添加で効率的に金属フィラーが連結して熱伝導経路を形成できることから、球状、棒状、針状、柱状、繊維状、平板状、フレーク状、ナノシート、ナノファイバーおよびらくがん状が好ましく、入手しやすく工業的に利用しやすいことから、球状、棒状、針状、柱状、繊維状、平板状およびフレーク状がさらに好ましい。
【0044】
前記熱伝導性金属フィラーのアスペクト比は20~500が好ましく、30~500がより好ましく、40~500がさらに好ましい。
なお、アスペクト比とは、平均的な熱伝導性金属フィラー粉末を平板状の円柱であると仮定し、その直径がD50と等しいとする。このD50を、BET比表面積から算出した厚さtで除したものをアスペクト比と定義する。
また、D50は、下記に示すように、粒子の50%平均粒径のことである。
【0045】
前記熱伝導性金属フィラーの平均粒子径は、0.01~30μmであることが好ましく、より好ましくは0.1~20μm、さらに好ましくは3.0~10μmである。
熱伝導性金属フィラーの平均粒子径が0.01μmより小さいと、熱伝導性粒子の添加による樹脂組成物の粘度増加が著しく、熱伝導性樹脂組成物の被着体への塗布性が相対的に低下することがある。また、熱伝導性金属フィラーの平均粒子径が30μmより大きいと、微細な構造を有する被着体を接着するときに、熱伝導性樹脂組成物を狭い隙間に均一に浸透させること困難になる可能性がある。
【0046】
熱伝導性金属フィラーの平均粒子径は、レーザー回折散乱型粒度分布測定装置により測定可能である。あるいは、電子顕微鏡観察や、観察結果の画像処理によっても熱伝導性粒子の平均粒径を求めることができる。
【0047】
本発明において熱伝導性金属フィラーの含有量とは、熱伝導性金属フィラーの質量を混合溶液(重合性モノマーとポリマーが溶解した液に熱伝導性金属フィラーを加えたもの)の質量で除し100を掛けた数値である。熱伝導性金属フィラーの含有量は50質量%以下であることが好ましく、2~30質量%であることがより好ましい。熱伝導性フィラーの特長を発現させ、かつ成形性を保ち、経済的にも有利であるためには、4~20質量%であることがさらに好ましい。
【0048】
本発明のおけるグラフェンとは、1原子の厚さのsp2結合炭素原子のシート状物質であり、炭素原子とその結合からできたハチの巣状(ハニカム状)の六角形格子構造を有するものである。本発明で使用するグラフェンの厚さは特に限定はないが、使用が容易であることから、2~10nmであることが好ましい。
【0049】
本発明の熱伝導性組成物におけるグラフェンの含有量は、1.0~10質量%であることが好ましい。
【0050】
前記重合性モノマー中にポリマーを溶解させ、熱伝導性金属フィラーおよびグラフェンを配合した後、重合性モノマーを重合反応させてポリマー成分にする時に、2つ以上のポリマー成分が反応誘起相分離を起こす。該重合反応は公知の方法が適用できる。
【0051】
熱伝導性金属フィラーの熱伝導性を効率良く発現させるため、反応誘起相分離によって形成した連続相に熱伝導性金属フィラーを偏在させる。ポリマー成分を重合性モノマーに溶解させて反応誘起相分離を行う場合は、はじめに配合したポリマー成分が主成分である連続相を形成する。
表面が疎水化処理された熱伝導性金属フィラーの場合は、相対的に低い比誘電率を有する相に優先的に偏在する。
配合するポリマーと重合性モノマーの組み合わせにおいては、ポリマーの比誘電率が重合性モノマーの比誘電率よりも低いことが好ましい。
【0052】
熱伝導性金属フィラーとポリマー成分との親和性の評価は、公知の方法を用いて確認することができる。例えば、モノマー液に熱伝導性金属フィラーを分散させたスラリーの粘度を測定する方法や、そのスラリーの外観を目視確認してフィラーが分散していれば親和性が高く、沈殿していれば親和性が低いと判断する方法がある。
【0053】
本発明の熱伝導性組成物は、熱伝導性に優れ、かつ、軽量化が可能なことから、自動車関連の部材に適用が可能であり、特に、自動車の電気系統の放熱材料に使用されることが好ましい。
そのため、本発明の熱伝導性組成物の熱伝導率は0.8W/m・K以上であることが好ましく、1.0W/m・K以上であることがさらに好ましい。また、密度が1.5g/cm3以下であることが好ましく、1.3g/cm3以下であることがさらに好ましい。
【実施例
【0054】
以下、実施例および比較例により、本発明を具体的に説明する。
なお、ポリマー成分の比誘電率は、誘電率計(日本ルフト社製Model871)で測定(23℃、周波数:10kHz)した該モノマーの値である。モノマー成分の比誘電率は、同条件で測定した値である。
【0055】
(使用したポリマー)
・p(BA-HEA)(ブチルアクリレートと2-ヒドロキシエチルアクリレートのランダム共重合体、HEAは4.6質量%)、下記合成例1で得られたポリマー原料であるモノマーのうち主成分であるBAの比誘電率:5.1
【0056】
(合成例1)
<p(BA-HEA)(ブチルアクリレートと2-ヒドロキシエチルアクリレートのランダム共重合体)の合成>
BA(ブチルアクリレート、東亞合成社製)31.9gとHEA(2-ヒドロキシエチルアクリレート、東亞合成社製)1.45gを酢酸エチル(富士フィルム和光純薬社製)233gに溶解し、これを窒素雰囲気下で、60℃まで加温した。ここにV-65(2,2'-アゾビス (2,4-ジメチルバレロニトリル)、富士フィルム和光純薬社製)3.24gを加え、窒素雰囲気下で撹拌を開始した。30分後、60分後にそれぞれBA 31.9g、HEA 1.45g、V-65 3.24gを溶かしたものを加えた。すなわち、原料のアクリレートおよびV-65は時間を置いて3分割で仕込んだ。撹拌開始から3時間で反応を終了させた。
この反応液を水/メタノール=2/8(容量比)に滴下し、白色沈殿を生じさせ、デカンテーションにより上澄み液を除き、水/メタノール=2/8(容量比)で白色沈殿を洗浄した。
白色沈殿を60℃で減圧乾燥してp(BA-HEA)70.7gを収率71%で得た。この分子量を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー株式会社製、HLC-8320)により求めた結果、数平均分子量(Mn)12,000、重量平均分子量(Mw)26,000であり、プロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルより、生成物が目的物であると同定するとともに、生成物中のHEAが占める割合が4.6質量%であることを確認した。
【0057】
(使用したモノマー)
・C-1(2-メトキシエチルアクリレート)、東亞合成社製、比誘電率7.9
(使用した開始剤)
・パーブチルPV(t-ブチルパーオキシピバレート)71%シェルゾール溶液、日油社製
(使用した架橋剤)
・ヘキサメチレンジイソシアネート、東ソー社製
(使用した熱伝導性フィラー)
・TFH-A02P(球状アルミニウム微粒子、D50=2μm、東洋アルミニウム社製)
(使用したグラフェン)
・グラフェン(製品名Graphen nanoplatelets、厚み2-10nm、幅5μm、Strem Chemicals社製)
【0058】
<実施例1>
ポリマー(p(BA-HEA))0.5gをモノマー(C-1)2.0gに溶解した液に、開始剤(パーブチルPVの71%シェルゾール溶液)19mgおよび架橋剤(ヘキサメチレンジイソシアネート)、アルミニウムフィラー(TFE-A02P)1.80gおよびグラフェン85mgを加えた後、ボルテックスミキサーで10秒間混合した後、自転公転式撹拌機(THINKY社製、あわとり練太郎ARE-310)で公転2000rpmかつ自転800rpmで3分間混合した。
得られた混合液をシリコーン製型枠(30mm×30mm×2mm)に流し込みPETフィルムで密閉し、乾燥機を用いて70℃で5時間、続いて100℃で5時間加熱することで所望の試験片を得た。
【0059】
<実施例2~3および比較例1~5>
ポリマーとモノマーの種類、導電性フィラー、グラフェンおよび開始剤の配合量を表1のように変更した以外は、実施例1と同じ方法で試験片を得た。
【0060】
実施例および比較例の各試験片の熱伝導率測定を次の方法で測定した。熱伝導率の結果は表1に示し、断面観察の結果は図1~4に示す。
なお、表1における、アルミニウムは前記TFH-A02Pであり、グラフェンは前記Graphen nanoplateletsであり、開始剤は前記パーブチルPVの71%シェルゾール溶液であり、架橋剤はヘキサメチレンジイソシアネートである。
【0061】
<熱伝導率測定>
各組成物の熱伝導率は下記式により算出した。
熱伝導率λ=熱拡散率α×密度ρ×比熱容量Cp
・熱拡散率α(単位:mm2/s):熱拡散率測定装置(ネッチ・ジャパン社製LFA-467)で測定した。
・密度ρ(単位:g/cm3):アルキメデスの原理に基づいた密度測定(水中置換法)が可能な電子天秤で測定した。
・比熱容量Cp(単位:J/g・K):示差走査熱量計(ネッチジャパン社製DSC214Polyma)で測定した。
【0062】
<組成物の断面観察>
得られた試験片はミクロトーム装置(ライカマイクロシステムズ社製、EM FC7)を用いて、-80℃の温度条件でダイヤモンドナイフを使って断面出しを行なった後、走査型プローブ顕微鏡(SPM、オックスフォード・アサイラム社製、MFP-3D Infinity)で位相像を測定した。位相像から、相分離の有無、アルミニウムフィラーの存在箇所を判断した。また、走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテクノロジーズ社製S-4800)によりグラフェンの存在箇所を判断した。
また、走査型プローブ顕微鏡の観察像(SPMの位相像およびヤング率像)から、相分離の有無、偏在した無機フィラーの割合を下記基準により評価した。
さらに、下記基準で熱伝導性および密度の評価を行った。
【0063】
・相分離の有無
○:目視により判断し、相分離構造が確認された。
×:目視により判断し、相分離構造が確認出来なかった。
-:相分離が起こり得ない単一ポリマー成分の系であるもの。
【0064】
・アルミニウムフィラーの偏在
○:最も比誘電率の低い相に存在する無機フィラーの複合物全体に占める割合が90質量%以上である。
-:偏在が起こり得ない単一ポリマー成分の系。
【0065】
・熱伝導率の評価
〇:熱伝導率が0.80W/m・K以上
×:熱伝導率が0.80W/m・K未満
・密度の評価
〇:密度が1.50g/cm3以下
×:密度が1.50g/cm3を超える
【0066】
<組成物の断面観察の詳細>
図1に比較例3(グラフェンを添加しない)のSPM像(位相像)およびその拡大図を示す。像の明るい(位相差が大きい)海領域はBA-HEAポリマーが主成分の相、像の暗い(位相差が小さい)島領域はC-1ポリマーが主成分の相である相分離であると確認された。加えて、アルミニウムフィラーはBA-HEAポリマーが主成分の相に相当する成分内に偏在していることが観察された。
【0067】
図2に比較例1(アルミニウムフェラーおよびグラフェンを添加しない)のSPM像(位相像)を示した。像の明るい(位相差が大きい)海領域はBA-HEAポリマーが主成分の相、像の暗い(位相差が小さい)島領域はC-1ポリマーが主成分の相である相分離であると確認された。
【0068】
図3に実施例1のSPM像(位相像)を示す。像の明るい(位相差が大きい)海領域はBA-HEAポリマーが主成分の相、像の暗い(位相差が小さい)島領域はC-1ポリマーが主成分の相である相分離であると確認された。アルミニウムフィラーはBA-HEAポリマーが主成分の相に相当する成分内に偏在していることが観察された。また、図4に示した実施例1のSEM像によればグラフェン(暗い部分、凝集体)が点在している形となっている。
【0069】
【表1】
【符号の説明】
【0070】
1 BA-HEAポリマーが主成分の相
2 C-1ポリマーが主成分の相
3 アルミニウムフィラー(TFH-A02P)
4 グラフェンフィラー
図1
図2
図3
図4