(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】シート状物品の搬送集積装置および搬送集積方法
(51)【国際特許分類】
B65H 31/32 20060101AFI20240509BHJP
B65H 29/24 20060101ALI20240509BHJP
B65H 29/48 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B65H31/32
B65H29/24 A
B65H29/48
(21)【出願番号】P 2020021329
(22)【出願日】2020-02-12
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】賀中 清士
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-062142(JP,A)
【文献】実開平03-064972(JP,U)
【文献】実開昭51-132003(JP,U)
【文献】特開昭60-167851(JP,A)
【文献】実開昭59-190743(JP,U)
【文献】実開昭60-187158(JP,U)
【文献】特開2002-241027(JP,A)
【文献】特開2008-239320(JP,A)
【文献】米国特許第4405125(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 31/32
B65H 29/24
B65H 29/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質シート状物品を搬送する搬送部と、該搬送部より下側に配置され、前記軟質シート状物品を同位置に集積する集積部と、前記搬送部と前記集積部との間にあって、前記軟質シート状物品を前記集積部に誘導する傾斜したスライダー部と、該スライダー部の上部にあって搬送方向のスライダー部表面に沿って空気流を流す送風部と、前記集積部の前記搬送部の反対側に設置した当て板と、を備え
、
前記スライダー部の表面に搬送方向に平行する溝を複数形成してなる、
ことを特徴とする軟質シート状物品の搬送集積装置。
【請求項2】
前記集積部が、スライダー部の傾斜方向と同じ方向に傾斜して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送集積装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋などの軟質シート状物品を搬送集積するための搬送集積装置および搬送集積方法に関する。
【背景技術】
【0002】
包装袋を製造する製造所においては、製袋機によって製袋が完了した包装袋は、多くの場合、個別に切断されて集積装置において集積され、所定の数量毎に束ねられて出荷される。
【0003】
特許文献1に記載された集積装置は、複数のシート状物品を搬送する搬送部と、前記複数のシート状物品を前記搬送部の搬送方向と対向する方向に一括して起こす起立部材と、前記シート状物品のうち後端に位置するシート状物品を前記起立部材に向けて送り出す送出部材と、を備えたシート状物品の集積装置である。
【0004】
一般的に包装袋は、軟包装材料シートを重ね合わせて熱シールして製造されるが、シール時の熱収縮により多少変形するため、厳密には必ずしも正確な平面形状とは限らず、包装袋には多少の反りや曲がりなど形状のばらつきが存在する。
【0005】
特許文献1に記載された集積装置は、このような局部的にカールが発生した平坦でない包装袋や、ガセット部の嵩張りなどにより厚みが一定でない包装袋の場合に、従来の平置き状態から垂直方向に積み上げる方式では包装袋の束が安定しないため、集積の自動化が困難であったものを、包装袋を起立させて水平方向に集積させることにより、安定した結束を可能にしたものである。
【0006】
特許文献2に記載されたV字型製袋集積機構は、2行以上の面付で製袋された包装袋をV字型に配置された搬送ベルトで挟み、同じ向きに揃えて集積する集積機構である。
【0007】
特許文献3に記載されたプラスチックフィルム製袋の製造、スタック搬送装置は、製袋機と間隔を置いて設置した、プラスチックフィルム製袋(包装袋)を多数個スタックした状態で載置して搬送する間欠低速駆動のスタックコンベヤと、製袋機とスタックコンベヤの間に設置した、包装袋を複数個スタックした状態で載置可能であるとともに、載置した袋を製袋機の袋形成ピッチの範囲内でスタックコンベヤ上にスタック状態になるように搬送可能な間欠高速駆動の中間コンベヤとからなる包装袋のスタック搬送装置である。
【0008】
特許文献1~3に記載された集積装置においては、いずれもスタックの直前まで包装袋をコンベアやニップロールで挟んで拘束した状態で搬送しているために、スタックされる際に、包装袋が折れ曲がったり、反転したりし難いものである。しかしこれらのスタック装置は複雑な機構を必要とするため、装置は高価なものとなるばかりでなく、製品に応じて装置を最適に調整する必要があり、1種類の包装袋を大量に生産する場合であればともかく、段取り替えが頻繁に発生する多品種少量の生産には不向きであった。
【0009】
図8に示したような従来の集積装置においては、機構が単純であるため、段取り替えも容易であり、設備費用も安くて済むが、上記したような多少変形した包装袋が混入した場合等に、正常に堆積されず、図のように裏返しになったり、折れ曲がったりする場合があったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2013-23314号公報
【文献】特開平8-91644号公報
【文献】特開昭52-146371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は、簡単な機構でありながら、安定した積載を可能とする軟質シート状物品の集積装置およびこれを用いた軟包装袋の集積方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、軟質シート状物品を搬送する搬送部と、該搬送部より下側に配置され、前記軟質シート状物品を同位置に集積する集積部と、前記搬送部と前記集積部との間にあって、前記軟質シート状物品を前記集積部に誘導する傾斜したスライダー部と、該スライダー部の上部にあって搬送方向のスライダー部表面に沿って空気流を流す送風部と、前記集積部の前記搬送部の反対側に設置した当て板と、を備えたことを特徴とする軟質シート状物品の搬送集積装置である。
【0013】
本発明に係る搬送集積装置は、搬送部と集積部の間に傾斜したスライダー部を設けたので、多少変形した包装袋のような軟質シート状物であっても、安定して集積することができるようになった。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、前記集積部が、スライダー部の傾斜方向と同じ方向に傾斜して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送集積装置である。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、前記スライダー部の表面に搬送方向に平行する溝を複数形成してなることを特徴とする請求項1または2に記載の搬送集積装置である。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか1項に記載の搬送集積装置を用いて、製袋機から順次排出される軟包装袋を集積することを特徴とする軟包装袋の搬送集積方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る軟質シート状物品の搬送集積装置によれば、折れ曲がりやスタック位置のずれ、はみだし、不揃い、裏返しなどの不良が抑制され、スタックされた製品の取り扱いが容易となる。
【0018】
スライダー部に空気流を流すことにより、軟質シート状物品の先端部がスライダー部の表面に引っ掛かることがなく、円滑な搬送を実現できる。また、スライダー部は、構造が簡単であるから、既存の集積装置に付加することも容易に可能である。
【0019】
請求項2に記載の発明のように、集積部が、スライダー部の傾斜方向に傾斜して配置されている場合にあっては、さらに集積が円滑に行われる。
【0020】
また、請求項3に記載の発明のように、スライダー部の表面に搬送方向に平行する溝を複数形成した場合には、空気流の流れが直線的に整うため、シート状物品が横方向に滑り出したりせず、より円滑な集積が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明に係る搬送集積装置の基本的な構成と、動作をおよび軟質シート状物品の流れを示した模式図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る搬送集積装置の他の実施態様を示した模式図であり、集積部が傾斜して配置された例である。
【
図3】
図3は、スライダー部の構造の一例を示した斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示したスライダー部の断面模式図である。
【
図5】
図5は、スライダー部の他の例を示した断面模式図であり、送風部の吹き出しノズルがスリット状の例である。
【
図6】
図6は、スライダー部の他の例を示した斜視図であり、スライダー部に溝が形成されている例である。
【
図7】
図7は、
図6に示したスライダー部の断面模式図である。
【
図8】
図8は、従来の集積装置の構成と、動作をおよび軟質シート状物品の流れを示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面を参照しながら、本発明に係る搬送集積装置について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る搬送集積装置1の基本的な構成と、動作をおよび軟質シート状物品10の流れを示した模式図である。
【0023】
本発明に係る搬送集積装置1は、軟質シート状物品10を搬送する搬送部2と、搬送部2より下側に配置され、軟質シート状物品10を同位置に集積する集積部4と、搬送部2と集積部4との間にあって、軟質シート状物品10を集積部4に誘導する傾斜したスライダー部3と、スライダー部3の上部にあって搬送方向のスライダー部表面に沿って空気流8を流す送風部5と、集積部4の搬送部2の反対側に設置した当て板6と、を備えることを特徴とする軟質シート状物品の搬送集積装置である。
【0024】
搬送部2は、製袋機等から排出された包装袋のような軟質シート状物品10を集積部4に供給するもので、
図1の例ではベルトコンベアであるが、コンベアロールを複数並べたものや、チャックでつまんで搬送するもの等、どのような形式でも良い。
【0025】
集積部4は、搬送部2によって搬送されてきた軟質シート状物品10を集積する装置であり、定位置に揃えるために、搬送部2の反対側に当て板6が設置されている。当て板6は、シート状物品のサイズに応じて、前後方向に移動可能としても良い。
【0026】
集積部4には、横方向へのシート状物品のずれを防止するために、特に図示しないが、幅可変のサイドガイドを設けても良い。サイドガイドは、さらに、左右両側に設けたサイドガイドを広げたり狭めたりする往復運動をさせることにより、幅方向の物品の揃い方がきれいになる。
【0027】
集積部4は、初期の高さを変えられるようにすると共に、シート状物品が溜まるにつれて、自動的に下降するようにしても良い。
【0028】
図2は、搬送集積装置1の他の実施態様を示した模式図であり、集積部4が水平面に対して傾斜して配置された例である。集積部を後述するスライダー部と同じ傾きの方向に傾斜させることにより、集積がより円滑に行われ、シート状物品10が、きれいに揃うようになる。
【0029】
本発明に係る搬送集積装置1においては、
図1、2に示したように、搬送部2と集積部4との間に、軟質シート状物品10を集積部4に誘導する傾斜したスライダー部3を設けたことを最大の特徴とする。スライダー部3の上部には、搬送方向のスライダー部表面に沿って空気流8を流す送風部5が設けられている。
【0030】
図3は、スライダー部3の構造の一例を示した斜視図である。
図4は、
図3に示したスライダー部の断面模式図である。この例では平坦な板状のスライダー部3と、その上部に設けられた送風部5が組み合わされている。送風部には、吹き出しノズル9がこの例では9個設置されており、吹き出しノズルから吹き出された空気流8は、スライダー部3の表面に沿って流れ下る。
【0031】
図5は、スライダー部3の他の例を示した断面模式図であり、送風部5の吹き出しノズル9がスリット状の例である。このように、吹き出しノズル9の構造については、特に制約されず、要はスライダー部3の表面に空気の層流が形成されれば良い。
【0032】
スライダー部3に供給されたシート状物品は、スライダー部の傾斜によって何もしなくても自然に滑り落ちるが、空気流8が存在することにより、より円滑に安定して滑り落ちるようになる。このため、製袋時のシール熱により変形した包装袋などのように、変形したり反ったりした物品でも安定して移動させることができ、集積部4に安定して集積することが可能となる。
【0033】
スライダー部3の設置位置や角度等については、実際のシート状物品の状態に応じて、調節ができるようにしておくと良い。
【0034】
送風部5に供給される空気は、圧縮空気でも良いし、送風機から供給される空気でも良い。空気の量についても、スライダー部3の角度や幅、シート状物品のサイズや重さ等によって最適な量を調節できるようにしておくと良い。
【0035】
スライダー部3は、既存の集積装置に後から付加することも可能であり、費用も掛からないものである。
【0036】
図6は、スライダー部3の他の例を示した斜視図であり、スライダー部表面に溝7が形成されている例である。
図7は、
図6に示したスライダー部の断面模式図である。このようにスライダー部表面に搬送方向に平行する溝を複数形成することにより、空気流の流れが直線的に整うため、シート状物品が横方向に滑り出したりせず、より円滑な集積が可能となる。すなわち、スライダー部表面の空気流が乱流とならず整流となるため、軟質シート状物品が正規の方向から外れて横滑りし、堆積が乱れたり、極端な場合は、横方向に落下したりすることを防止する効果がある。
【0037】
溝7の形状や深さ、本数については、特に制約はない。また
図6では、一定の厚さを持った板状のスライダー部に溝を形成した構造となっているが、1枚の板を波状に折り曲げたり、かまぼこ状に形成したものでも良い。
【0038】
スライダー部3の材質も、金属とは限らず、より滑り抵抗値の小さい材質、例えばポリエチレン樹脂板やテフロン(登録商標)板などでも良い。またこれらの材質を組み合わせて、例えば平坦な金属板に、棒状のポリエチレン樹脂を取り付けた構造などでも良い。
【0039】
本発明に係るシート状物品の搬送集積装置は、軟包装袋を製造する製袋機の出口に設置して、個々に裁断されて枚葉状となった軟包装袋を集積して、束ねて出荷する工程に最適に使用できる。製品の形状がさまざまに変化するような場合であっても、調整が容易であり、多品種少量生産に適したものである。
【符号の説明】
【0040】
1・・・搬送集積装置
2・・・搬送部
3・・・スライダー部
4・・・集積部
5・・・送風部
6・・・当て板
7・・・溝
8・・・空気流
9・・・吹き出しノズル
10・・・軟質シート状物品