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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ソーナー装置、制御方法とプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/62 20060101AFI20240509BHJP
   G01S 7/52 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G01S7/62 Z
G01S7/52 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020022395
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021128048
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 達也
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-174839(JP,A)
【文献】国際公開第2005/050250(WO,A1)
【文献】特開2014-020907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S7/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受信器からなる受信アレイと、
ビームスキャンを用いて前記受信アレイからの受信信号の信号強度が最大値を取る方位を信号の到来方位とする整相処理部と、
前記信号の到来方向と前記信号強度の結果を表示する表示部と、
を備え、
前記整相処理部は、前記ビームスキャンの方位角範囲を画する境界で信号強度が最大値となった場合には、前記方位角範囲内での信号強度の極大値の有無に関わらず、前記境界の方位を、信号の到来方位から外し、表示対象としない手段を備えた、ことを特徴とするソーナー装置。
【請求項2】
前記整相処理部は、前記ビームスキャンの方位角範囲が一部で重なる第1の方位角範囲と第2の方位角範囲について、前記第1の方位角範囲又は前記第2の方位角範囲を画する境界で信号強度が最大値となった場合には、前記境界の方位を、信号の到来方位から外すことを特徴とする請求項1記載のソーナー装置。
【請求項3】
複数の受信器からなる受信アレイを有し、ビームスキャンを用いて前記受信アレイからの受信信号の信号強度が最大値を取る方位を信号の到来方位とし、前記信号の到来方向と前記信号強度の結果を表示部に表示するソーナー装置における制御方法であって、
前記ビームスキャンの方位角範囲を画する境界で信号強度が最大値となった場合には、前記方位角範囲内での信号強度の極大値の有無に関わらず、前記境界の方位を、信号の到来方位から外し、表示対象としない、ことを特徴とする制御方法。
【請求項4】
前記ビームスキャンの方位角範囲が一部で重なる第1の方位角範囲と第2の方位角範囲について、前記第1の方位角範囲又は前記第2の方位角範囲を画する境界で信号強度が最大値となった場合には、前記境界の方位を、信号の到来方位から外すことを特徴とする請求項3記載の制御方法。
【請求項5】
複数の受信器からなる受信アレイと、信号の到来方向と信号強度の結果を表示する表示部とを有するソーナー装置のコンピュータに、
ビームスキャンを用いて前記受信アレイからの受信信号の信号強度が最大値を取る方位を信号の到来方位とする処理であって、
前記ビームスキャンの方位角範囲を画する境界で信号強度が最大値となった場合には、前記方位角範囲内での信号強度の極大値の有無に関わらず、前記境界の方位を、信号の到来方位から外し、表示対象としない処理を実行させるプログラム。
【請求項6】
前記ビームスキャンの方位角範囲が一部で重なる第1の方位角範囲と第2の方位角範囲について、前記第1の方位角範囲又は前記第2の方位角範囲を画する境界で信号強度が最大値となった場合には、前記境界の方位を、信号の到来方位から外す、請求項5記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーナー装置、制御方法とプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ソーナー装置は、受信アレイからの信号に対して、特定の方向から到来する信号に対する感度を上げるために整相処理を行う。例えば図7(A)に示すように、信号(簡単のため平面波とする)の到来方向を受信アレイの法線方向に対してθ、受信器の個数をNs、受信器の間隔をdとする。受信器は等位相面の差である(i+1/2)d×sin(θ)分の遅延(距離差)があり、整相処理(整相加算処理)では、各遅延に対応する位相量を減算又は加算して遅延補償し位相を揃えた上で加算することで、信号到来方向θに最大感度を向ける(非特許文献1)。すなわち、各受信器(受波器)出力xi(t)に対して距離差を補償して重み係数wiを掛け、それらを加算して受信アレイの応答出力とし、その出力パワー(電力)は式(1)で与えられる。θbfは整相方位、cは音速、fは周波数である。図7(B)に出力パワーを模式的に示す(横軸:方位、縦軸:出力パワー(デシベル(dB)表示))。信号強度は、出力パワーを、基準パワーとの比率の常用対数で表したものであり、デシベル(dB)で表される。
【0003】
… (1)
ただし、

… (2)
【0004】
上記整相処理では、整相方位の範囲外から到来する信号(雑音等)がメインローブ以外のサイドローブ(図7(B)参照)で受信されるためS/N(Signal to Noise ratio)が低下する等の問題がある。そこで、入力信号の特性に合わせてビームフォーミング特性を変化させる適応整相処理が用いられる(適応整相処理については、例えば非特許文献1等が参照される)。適応整相処理等では、ビームスキャン(ビームステアリング)という手法が用いられる。
【0005】
ビームスキャンは、ある方位角の範囲内(ビームスキャン範囲)で複数の方向に複数のビームを走査し受信アレイの信号強度が最も大きくなる方向を探す。すなわち、各ビーム方向の信号強度を比較することで、最も強度が大きいビーム方向から信号の到来方位を求める。受信アレイの信号強度は、信号到来方位で最大値となり、そこから極小値まで滑らかに値が減少する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】川崎良道 パッシブソーナーの整相処理、OKIテクニカルレビュー、2014年10月/第224号 Vol. 81, No. 2 インターネット<URL https://www.oki.com/jp/otr/2014/n224/pdf/224_r20.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
関連技術によれば、ビームスキャン範囲の外側の方位から到来する信号の強度が大きい場合、信号の裾野にあたるビームスキャン範囲の境界上の信号強度も大きくなる。ビームスキャン範囲内で信号強度が最大値となる方向を到来方位とする場合、信号の裾野を到来方位と誤認してしまうことがある。このような課題に対する解決策として、ビームスキャン範囲内における信号強度の極大値から、到来方位を求める手法が考えられる。しかし、ノイズなどの影響により、ビームスキャン範囲の外側の方位から到来する信号が、ビームスキャン範囲内で極大値を取る可能性がある。このように、極大値を用いる手法でも、到来方位の誤認の可能性がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、ビームスキャンを行う際、ビームスキャン範囲外の方位から到来する信号による到来方位の誤検出を回避できるソーナー装置、方法、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態によれば、複数の受信器からなる受信アレイと、ビームスキャンを用いて前記受信アレイからの受信信号の信号強度が最大値を取る方位を信号の到来方位とする整相処理部と、を備え、前記整相処理部は、ビームスキャン範囲の境界で信号強度が最大値となった場合には、前記ビームスキャン範囲の境界の方位を、信号の到来方位から外し、表示対象としない手段を備えたソーナー装置が提供される。
【0010】
本発明の一形態によれば、複数の受信器からなる受信アレイを有し、ビームスキャンを用いて前記受信アレイからの受信信号の信号強度が最大値を取る方位を信号の到来方位とするソーナー装置における制御方法であって、ビームスキャン範囲の境界で信号強度が最大値となった場合には、前記ビームスキャン範囲の境界の方位を、信号の到来方位から外し、表示対象としない制御方法が提供される。
【0011】
本発明の一形態によれば、複数の受信器からなる受信アレイを有するソーナー装置のコンピュータに、ビームスキャンを用いて前記受信アレイからの受信信号の信号強度が最大値を取る方位を信号の到来方位とする処理であって、ビームスキャン範囲の境界で信号強度が最大値となった場合には、前記ビームスキャン範囲の境界の方位を、信号の到来方位から外し、表示対象としない処理を実行させるプログラムが提供される。さらに、本発明によれば、上記プログラムを記憶したコンピュータ可読型記録媒体((例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、又は、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM))等の半導体ストレージ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc))が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ビームスキャンを行う際、ビームスキャン範囲外の方位から到来する信号による到来方位の誤検出を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(A)、(B)は本発明の実施形態を説明する図である。
図2】本発明の実施形態のソーナー装置の構成を説明する図である。
図3】本発明の実施形態における整相処理部の処理を説明する図である。
図4】本発明の実施形態における表示部の表示結果を説明する図である。
図5】本発明の実施形態を説明する図である。
図6】本発明をコンピュータ装置に実装した例を模式的に説明する図である。
図7】(A)、(B)は関連技術の整相処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について説明する。本発明の一実施形態によれば、ビームスキャンを用いて信号強度が最大値を取る方位を信号の到来方位とするにあたり、ビームスキャン範囲の境界で信号強度が最大値となった場合には、当該方位を表示しない。これにより、ビームスキャン範囲外から到来する信号がビームスキャン範囲内で極大値を持っているか否かに関わらず、信号到来方位の誤認を回避可能としている。
【0015】
図1は、実施形態のソーナー装置の動作原理を説明する図である。ソーナー装置において、受信アレイから得た受信信号に対して整相処理(適応整相処理)と信号処理を行い、信号の到来方位(横軸)と信号強度(縦軸)の結果を表示する。整相処理でビームスキャンを行い、図1(A)に示すように、ビームスキャン範囲内で信号強度が最大値となる方位を信号の到来方位(目標方位)とする。一方、図1(B)に示すように、ビームスキャン範囲の外側の方位から到来する信号が、ビームスキャン範囲の境界で信号強度が最大値となった場合には、当該方位(ビームスキャン範囲の境界)は、表示部に表示しない。これにより、ビームスキャン範囲外から到来する信号による誤検出を避ける。
【0016】
図2は、実施形態のソーナー装置の構成を説明する図である。受信アレイ101は、水中等を伝搬する音波を電気信号に変える複数の受信素子(受波器、音響素子、音響センサともいう)の配列(例えば1次元アレイ、2次元アレイ等)である。受信アレイ101の各受信素子からの各受信信号は受信部102においてアナログ信号からデジタル信号に変換され、整相処理部103に送られる。整相処理部103では、受信アレイ101で受信した受信信号(デジタル受信信号)に対してビームスキャン処理を含む整相処理を行う。信号処理部104では、整相処理部103から出力される信号に基づき、信号到来方位、時間、信号レベルあるいはS/N(Signal to Noise)等を算出し、表示部105に、信号処理結果を表示する。
【0017】
図3は、整相処理部103の構成の一例を示す図である。特に制限されないが、以下では、受信アレイは複数(S個)の受信素子からなるラインアレイとする。受信アレイの各受信素子からの受信データは、整相処理部103内の不図示の記憶部において、1次元の配列データに格納される。第i番目(i=1~S)の受信素子からの配列データをXi tとする。Xi tは、第i番目の受信素子で受信した受信信号をサンプリングしたN個の受信データ(デジタルデータ)からなるN次元ベクトルである。
… (3)
【0018】
フーリエ変換処理部201は、N次元ベクトルXi tに対してフーリエ変換を施し周波数領域(周波数スペクトル)Yiに変換する。フーリエ変換はNポイントFFT(Fast Fourier Transform)であってもよい(NポイントDFT(Discrete Fourier Transform)であってもよい)。

… (4)
【0019】
サンプリング周波数をfとすると、NポイントFFT(Nは2のべき乗)による周波数スペクトルYiは、周波数ビン番号(インデックス)k=0のDC(Direct Current)成分からΔf=f/Nの間隔でk=(N-1)までのN個の周波数成分(複素周波数成分)を含み、このうち周波数ビン番号k=(N/2+1)~(N-1)の周波数成分は、周波数ビン番号k=N/2のナイキスト(Nyquist)周波数fs/2(=Δf×N/2)を中心に折り返した周波数ビン番号k=N/2-1~1の周波数成分の複素共役(complex conjugate)となっている。なお、離散信号の周波数スペクトルにおいて、一般に、周波数ビン番号k=N/2のナイキスト周波数fs/2以降の周波数成分の信号は扱わない。そこで、周波数スペクトルYiは、周波数ビン番号k=0のDC成分(実部のみ)、周波数ビン番号k=1~N/2-1の複素周波数成分(実部と虚部)、周波数ビン番号k=N/2のナイキスト周波数成分(実部のみ)からなるN次元ベクトルとしてもよい。また、フーリエ変換処理部201の前段に、受信信号からナイキスト周波数fs/2以上の周波数成分を減衰させるアンチエイリアシング(anti-aliasing)フィルタ(アナログ又はデジタルフィルタ)を備えてもよいことは勿論である。
【0020】
複素係数乗算処理部202は、各受信素子の受信データをフーリエ変換して得た周波数スペクトルの各周波数成分(複素周波数成分)に対して、複素係数を乗算する。第i番目の受信素子からの受信データXi tをフーリエ変換(FFT演算)して得た周波数スペクトルYiの周波数ビン番号k(k=1~N/2-1)の複素周波数成分Y(i)k
… (5)
(振幅:A(i)k,位相:θ(i)k, j2=-1)とし、
複素係数を
… (6)
とすると、
… (7)
より、複素係数乗算処理の結果、周波数ビン番号kの位相成分はθ(i)k+θbfとなる。なお、位相θ(i)kは、上式(1)の各受信素子での遅延を補償する位相に対応させるようにしてもよい。複素係数乗算処理部202による、周波数スペクトルの複素周波数成分(周波数ビン番号k=1~N/2-1)の位相をθbfずらすことでビームの向きを変える処理は、ビームステアリングの処理に対応する。
【0021】
加算処理部203は、周波数領域で複素係数exp(jθbf)を乗算した各受信素子の受信データの周波数スペクトルに対して、周波数領域上で、周波数成分毎に加算する。すなわち、各ビーム毎に、周波数成分(振幅:A(i)k,位相:θ(i)k+θbf)(k=1~N/2-1)の各々について、実部同士、虚部同士を加算する。その際、重み係数wを乗算してもよい。第mビームの整相方位をθbf mとすると、第mビーム(m=1~M)の周波数スペクトルZmの周波数ビン番号k(k=1~N/2-1)の周波数成分Zm kは以下で表される。
【0022】
… (8)
【0023】
ただし、
… (9)
… (10)
… (11)
Re()とIm()は複素数の実部と虚部を表す。
【0024】
第mビーム(m=1~M)の周波数スペクトルZmにおいて、周波数ビン番号k=0であるDC成分Zm 0(実部のみ、虚部は0)は以下で与えられる。
… (12)
ただし、A(i)は、第i番目(i=1~S)の受信素子からの受信データをフーリエ変換して得た周波数スペクトルYiの周波数ビン番号k=0のDC成分、wは上式(11)の重み係数である。周波数ビン番号k=N/2のナイキスト周波数成分ZN/2 m(実部のみ、虚部は0)も、式(12)のDC成分と同様に、周波数スペクトルYiの周波数ビン番号k=N/2の周波数成分(実部)を重み加算して求めてもよい。
【0025】
整相方位がθbf mの第mビームによる受信信号のパワーは
… (13)

で与えられる。信号強度は基準パワーPに対して、
(単位:dB)
… (14)
で与えられる。
【0026】
複素係数乗算処理部202と加算処理部203は、例えば第1~第Mビームのビーム方向の数分(M)、並行して行う。その結果、各ビーム方向に対する信号強度(上式(14)のm=1~M)を得る。
【0027】
方位検出処理部204は、各ビーム方向(ビームスキャン範囲内)の信号強度のうち最も大きな信号強度から信号の到来方位を決定する。例えば、整相方位θbf m(m=1~M)のビームのうち、第rビームの信号強度が最も大きい場合、θbf を信号到来方位とする。その際、ビームスキャン範囲の境界で信号強度が最大値となった場合には、当該方位を信号到来方位として選択しない。
【0028】
逆フーリエ変換処理部205は、各ビーム方向の信号強度の中で信号強度が最も大きい信号の周波数スペクトルを時間領域に変換する。信号強度が最大の第rビーム(1=<r=<M)の周波数スペクトルZにおいて周波数ビン番号k=0~N/2の周波数成分Z kは、前述した第mビームの周波数成分Z kのmをrとしたものであり、周波数ビン番号k=N/2+1~(N-1)の周波数成分Zr kは、周波数ビン番号k=N/2のナイキスト周波数を中心に折り返した周波数成分Z N-kの複素共役が設定される。
… (15)
【0029】
逆フーリエ変換処理部205は周波数スペクトルZをIFFT(Inverse FFT)することで、時間領域の信号Xt(N個のデータ)
… (16)
を出力する。
【0030】
信号処理部104は、整相処理部103から出力された時間領域の信号を入力し、目標からの時間あるいは距離や、S/N等を求め、結果を表示部105に表示する。信号の方位については、整相処理部103の結果から求めている。
【0031】
図4は、表示部105の表示例の一例を模式的に示す図である。図4の横軸は方位(到来方位)、縦軸は時間(到来時間)を表しており、目盛線は各軸の間隔を示している。特に制限されないが、図4の例では、例えば第mビームの整相方位をθbf(m)とすると、横軸左端の方位401に対応する整相方位はθbf(1)、横軸右端の方位402に対応する整相方位はθbf(11)であり、ビームスキャン範囲は、整相方位に関してθbf(1)からθbf(11)の範囲に対応する。また、図4の例では、ビームスキャン範囲で信号強度が最大のビームだけでなく、信号強度が予め定められた閾値を超える信号も表示するようにしている。すなわち、ビームスキャン範囲内のビームによって得られた受信信号のうち信号強度が予め定められた閾値を超える信号を〇印で示しており、〇印の半径を信号強度に比例させて示している。表示は信号強度に対応させて輝度を可変させてもよい。
【0032】
ビームスキャン範囲の境界である方位401、402については、信号強度が予め定められた閾値より大きい場合も、結果を表示しない。
【0033】
本実施形態によれば、ビームスキャンを用いた整相処理を行う場合に、ビームスキャン範囲外から到来する信号による誤検出を防ぐ。
【0034】
実施形態の変形例として、図2の処理を、複数同時に行い、表示部105を並べることで、より広範囲の方位について結果を示すことが可能になる。図5に示すように、ビームスキャン範囲を二つの範囲501、502に分けて処理を行った場合、ビームスキャン範囲502から到来する信号が、ビームスキャン範囲501の境界にも表示されることがある。ビームスキャン範囲501、502は、方位が一部で重複するように設定されている。この変形例においても、ビームスキャン範囲501の境界の信号は表示しない。このため、探索方位を複数に分割してビームスキャンを行った場合に、同一信号が複数表示されることを回避できる。
【0035】
図6は、本発明のソーナー装置をコンピュータ装置600に実装した場合の構成を説明する図である。図6を参照すると、コンピュータ装置600は、プロセッサ601と、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の半導体メモリ等(あるいは、HDD(Hard Disk Drive)等であってもよい)のメモリ602と、表示装置603と、図2の受信部102に接続するインタフェース604(バスインタフェース)を備えている。プロセッサ601はDSP(Digital Signal Processor)であってもよい。メモリ602に格納されたプログラム605を実行することで、プロセッサ601は、図2の整相処理部103、信号処理部104の処理を実行する。
【0036】
上記実施形態では、受信アレイからの受信信号(デジタル受信データ)をFFTで周波数領域に変換し周波数成分に対して位相調整を行うことでビームステアリングを行う例を説明したが、時間領域でビームステアリングを行うようにしてもよい。また、図1図5では、適応整相処理による信号強度を例示したが、本発明は、適応整相処理にのみ制限されるものでなく、受信アレイからの受信信号(デジタル受信データ)を使ってステアリングしたビームフォーミングを行う任意の整相処理に適用可能であることは勿論である。
【0037】
なお、上記の非特許文献1の開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施の形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ乃至選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0038】
100 ソーナー装置
101 受信アレイ
102 受信部
103 整相処理部
104 信号処理部
105 表示部
201 フーリエ変換処理部
202 複数係数乗算処理部
203 加算処理部
204 方位検出処理部
205 逆フーリエ変換処理部
401 ビームスキャン範囲始端
402 ビームスキャン範囲終端
501 ビームスキャン範囲
502 ビームスキャン範囲
600 コンピュータ装置
601 プロセッサ
602 メモリ
603 表示装置
604 インタフェース
605 プログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7