(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置及びシェーディング補正方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240509BHJP
B41J 2/205 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B41J2/01 209
B41J2/01 451
B41J2/205
(21)【出願番号】P 2020036153
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 諭
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-072971(JP,A)
【文献】特開2019-034467(JP,A)
【文献】特開2008-188839(JP,A)
【文献】特開2013-049254(JP,A)
【文献】特開平05-031916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク滴を吐出する複数のノズルが設けられた複数のインク吐出部と、
前記インク吐出部による前記インク滴の吐出を制御して搬送される記録材に画像を形成する画像記録制御部と、
前記記録材に形成された補正用チャートの濃度を読み取る画像読取部と、
前記記録材に形成された前記補正用チャートの画像データと、前記画像読取部で読み取られた前記補正用チャートの読取結果とを比較し、比較結果に基づいてシェーディング補正用の補正データを生成し、前記記録材に形成される画像のシェーディング補正を行う補正制御部と、を備え、
前記画像記録制御部が前記記録材に前記補正用チャートを形成する前に、前記補正制御部は、前記インク吐出部の温度が、前記画像記録制御部により印刷ジョブが実行されるときの設定温度である第1の温度よりも高い第2の温度となるように調整する
機能を有し、
前記補正制御部は、
前記印刷ジョブに基づいて前記記録材に画像を形成する際に使用する所定面積当たりのインクの量であるインク付着量を計算するインク付着量計算部と、
前記インク付着量計算部で計算された前記インク付着量に基づいて、前記インク吐出部の温度を前記第2の温度へ上げるための処理に対する指令値を決定する指令値決定部と、を備え、
前記補正制御部は、前記指令値決定部により前記インク付着量と前記インク吐出部の目標温度との関係が定められた温度制御テーブルを参照して、前記印刷ジョブの前記画像の前記インク付着量に対する前記インク吐出部の前記第2の温度を決定し、前記第2の温度に基づいて、前記インク吐出部に設けられて前記インク吐出部を加熱する加熱部を制御する
インクジェット記録装置。
【請求項2】
インク滴を吐出する複数のノズルが設けられた複数のインク吐出部と、
前記インク吐出部による前記インク滴の吐出を制御して搬送される記録材に画像を形成する画像記録制御部と、
前記記録材に形成された補正用チャートの濃度を読み取る画像読取部と、
前記画像読取部の読取結果に基づいて前記記録材に形成される画像のシェーディング補正を行う補正制御部と、を備え、
前記画像記録制御部が前記記録材に前記補正用チャートを形成する前に、前記補正制御部は、前記インク吐出部の温度が、前記画像記録制御部により印刷ジョブが実行されるときの設定温度である第1の温度よりも高い第2の温度となるように調整する機能を有し、
前記補正制御部は、
前記印刷ジョブに基づいて前記記録材に画像を形成する際に使用する所定面積当たりのインクの量であるインク付着量を計算するインク付着量計算部と、
前記インク付着量計算部で計算された前記インク付着量に基づいて、前記インク吐出部の温度を前記第2の温度へ上げるための処理に対する指令値を決定する指令値決定部と、を備え、
前記指令値決定部は、
前記インク付着量と吐き捨て画像の印刷枚数との関係が定められた吐き捨て枚数テーブルを参照し、前記印刷ジョブの前記画像の前記インク付着量に対する前記吐き捨て画像の印刷枚数を決定
し、
前記画像記録制御部は、前記記録材に前記補正用チャートを形成する前に、前記補正制御部の前記指令値決定部に指示された枚数の前記吐き捨て画像を形成する
インクジェット記録装置。
【請求項3】
前記吐き捨て画像は、ハーフトーンのパターンにおいて単位面積当たりのドット数が最も多いパターンで構成され、かつ1ドット当たりのインク量が最大となるドットで構成される
請求項
2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記吐き捨て画像を記憶する記憶部と、
前記吐き捨て画像の印刷枚数を選択する操作入力を受け付ける操作部と、を備え、
前記補正制御部は、前記画像記録制御部により、選択された印刷枚数分の前記吐き捨て画像を形成するように制御する
請求項
2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
2以上の異なる前記吐き捨て画像を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記吐き捨て画像の中から一つの吐き捨て画像を選択する操作入力を受け付ける操作部と、を備え、
前記補正制御部は、選択された前記吐き捨て画像に基づいて、前記画像記録制御部により前記吐き捨て画像を形成するように制御する
請求項
2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
インク滴を吐出する複数のノズルが設けられた複数のインク吐出部と、前記インク吐出部による前記インク滴の吐出を制御して搬送される記録材に画像を形成する画像記録制御部と、前記記録材に形成された補正用チャートの濃度を読み取る画像読取部と、
前記記録材に形成された前記補正用チャートの画像データと、前記画像読取部で読み取られた前記補正用チャートの読取結果とを比較し、比較結果に基づいてシェーディング補正用の補正データを生成し、前記記録材に形成される画像のシェーディング補正を行う補正制御部と、を備えたインクジェット記録装置によるシェーディング補正方法において、
前記画像記録制御部が前記記録材に前記補正用チャートを形成する前に、前記補正制御部
は、前記インク吐出部の温度が、前記画像記録制御部により印刷ジョブが実行されるときの設定温度である第1の温度よりも高い第2の温度となるように調整する
機能を
有し、
前記補正制御部は、
前記印刷ジョブに基づいて前記記録材に画像を形成する際に使用する所定面積当たりのインクの量であるインク付着量を計算するインク付着量計算部と、
前記インク付着量計算部で計算された前記インク付着量に基づいて、前記インク吐出部の温度を前記第2の温度へ上げるための処理に対する指令値を決定する指令値決定部と、を備え、
前記補正制御部が、前記指令値決定部により前記インク付着量と前記インク吐出部の目標温度との関係が定められた温度制御テーブルを参照して、前記印刷ジョブの前記画像の前記インク付着量に対する前記インク吐出部の前記第2の温度を決定する処理と、
前記補正制御部が、前記第2の温度に基づいて、前記インク吐出部に設けられて前記インク吐出部を加熱する加熱部を制御する処理と、を含む
シェーディング補正方法。
【請求項7】
インク滴を吐出する複数のノズルが設けられた複数のインク吐出部と、前記インク吐出部による前記インク滴の吐出を制御して搬送される記録材に画像を形成する画像記録制御部と、前記記録材に形成された補正用チャートの濃度を読み取る画像読取部と、前記画像読取部の読取結果に基づいて前記記録材に形成される画像のシェーディング補正を行う補正制御部と、を備えたインクジェット記録装置によるシェーディング補正方法において、
前記画像記録制御部が前記記録材に前記補正用チャートを形成する前に、前記補正制御部は、前記インク吐出部の温度が、前記画像記録制御部により印刷ジョブが実行されるときの設定温度である第1の温度よりも高い第2の温度となるように調整する機能を有し、
前記補正制御部は、
前記印刷ジョブに基づいて前記記録材に画像を形成する際に使用する所定面積当たりのインクの量であるインク付着量を計算するインク付着量計算部と、
前記インク付着量計算部で計算された前記インク付着量に基づいて、前記インク吐出部の温度を前記第2の温度へ上げるための処理に対する指令値を決定する指令値決定部と、を備え、
前記指令値決定部が、前記インク付着量と吐き捨て画像の印刷枚数との関係が定められた吐き捨て枚数テーブルを参照し、前記印刷ジョブの前記画像の前記インク付着量に対する前記吐き捨て画像の印刷枚数を決定する処理と、
前記画像記録制御部が、前記記録材に前記補正用チャートを形成する前に、前記補正制御部の前記指令値決定部に指示された枚数の前記吐き捨て画像を形成する処理と、を含む
シェーディング補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置及びシェーディング補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のノズルを有するインクジェットヘッドと記録媒体とを相対移動させながら、複数のノズルからインク滴を吐出(射出)させ、用紙等の記録媒体上に着弾させることによって画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置、即ちインクジェット記録装置がある。この種のインクジェット記録装置では、記録速度の向上を目的として、インクジェットヘッドを複数、上記相対移動の方向と交差する方向に配列して長尺のヘッドユニットを構成し、当該長尺のヘッドユニットによって画像を形成する技術が用いられている。
【0003】
インクジェット記録装置では、インクジェットヘッドの複数のノズル間でインク滴の吐出量にばらつきがあると、記録媒体に形成した画像(以下、「形成画像」と記述する場合がある)に濃度むらが生じるため、形成画像の画質低下に繋がる。また、インクジェットヘッドの数が複数になると、インクジェットヘッドごとにインク滴の吐出量のばらつきが生じることがあり、インクジェットヘッドごとの吐出量のばらつきによっても、形成画像に濃度むらが生じ、画質低下に繋がる。このため、インクジェット記録装置では、濃度むら補正を行うことによって濃度むらに起因する画質低下を抑制するようにしている。
【0004】
このようなインク滴の吐出量のばらつきに起因して発生する画質低下を抑制するための技術が、特許文献1に開示されている。特許文献1には、同一の補正用チャートの画像を複数枚の用紙に形成し、複数の補正用チャートの濃度を平均して得た濃度平均値に基づいてシェーディング補正用の補正データを生成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、インクジェット記録装置では、複数のノズルからインク滴を射出することによってインクジェットヘッドの温度が上昇する。複数の記録材への連続印刷や高印字率画像の印刷では、インクジェットヘッドのノズル列の中央部での温度上昇がより顕著である。
【0007】
特許文献1に記載の技術では、濃度むらを補正するシェーディング補正時に、印刷によるインクジェットヘッドの温度上昇が再現されない。このため、印刷ジョブに対する印刷開始当初に比べ、印刷終了時はインクジェットヘッドに対応する間隔で濃度むらが発生し、オペレーターに濃度むらが視認されるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、連続印刷時に発生する、隣接するインクジェットヘッド間の濃度むらを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様のインクジェット記録装置は、インク滴を吐出する複数のノズルが設けられた複数のインク吐出部と、そのインク吐出部によるインク滴の吐出を制御して搬送される記録材に画像を形成する画像記録制御部と、記録材に形成された補正用チャートの濃度を読み取る画像読取部と、その画像読取部の読取結果に基づいて記録材に形成される画像のシェーディング補正を行う補正制御部と、を備える。そして、上記画像記録制御部が記録材に補正用チャートを形成する前に、上記補正制御部は、インク吐出部の温度が、上記画像記録制御部により印刷ジョブが実行されるときの設定温度である第1の温度よりも高い第2の温度となるように調整する。
【0010】
本発明の一態様のシェーディング補正方法は、インク滴を吐出する複数のノズルが設けられた複数のインク吐出部と、インク吐出部によるインク滴の吐出を制御して搬送される記録材に画像を形成する画像記録制御部と、記録材に形成された補正用チャートの濃度を読み取る画像読取部と、その画像読取部の読取結果に基づいて記録材に形成される画像のシェーディング補正を行う補正制御部と、を備えたインクジェット記録装置によるシェーディング補正方法である。そして、このシェーディング補正方法は、上記画像記録制御部が記録材に補正用チャートを形成する前に、上記補正制御部が、インク吐出部の温度が、上記画像記録制御部により印刷ジョブが実行されるときの設定温度である第1の温度よりも高い第2の温度となるように調整する処理、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の少なくとも一態様によれば、連続印刷時に発生する、隣接するインクジェットヘッド間の濃度むらを抑制することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るヘッドユニットの構成を記録材側から見た示す平面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置におけるテストチャートの一例を示すもので、
図5Aはテストチャート全体を示す説明図、
図5Bはテストチャートの一部を拡大して示す説明図である。
【
図6】従来方式における高印字率画像を連続印刷したときの濃度変動の例を示すグラフである。
【
図7】インクジェットヘッドの温度と印刷枚数との関係例を示すグラフである。
【
図8】連続10枚印刷時のインク付着量とヘッド温度の関係例を示すグラフである。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係るインク付着量に対するヘッド温度の指令値を格納するヘッド温度制御テーブルの例を示す。
【
図10】本発明の第1の実施形態に係るシェーディング補正処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図11】従来方式と本実施形態における1枚目印刷時の濃度と対象枚数印刷時の濃度との濃度差の例を示すグラフである。
【
図12】本発明の第1の実施形態の変形例に係る入力画像を複数の領域に分割した例を示す図である。
【
図13】本発明の第2の実施形態に係るインクジェット記録装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図14】本発明の第2の実施形態に係るインク付着量に対する吐き捨て枚数の指令値を格納する吐き捨て枚数テーブルの例を示す。
【
図15】本発明の第2の実施形態に係るシェーディング補正処理の手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態の例について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び添付図面において実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0014】
<第1の実施形態>
[インクジェット記録装置の全体構成]
始めに、本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成例について、
図1を参照して説明する。
図1は、インクジェット記録装置の全体構成を示す概略構成図である。
【0015】
インクジェット記録装置1は、後述する
図2に示すインクジェットヘッド242に設けたノズル244からインクを吐出することで記録材P(記録媒体)に画像を形成(記録)する。本実施形態では、記録媒体として用紙を適用した例を説明するが、これに限定されるものではなく、記録媒体としては、フィルムや布地等その他各種のものが適用可能である。
【0016】
このインクジェット記録装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の4色のインクを重ね合わせるカラーインクジェット記録装置である。インクジェット記録装置1は、給紙部10と、画像形成部20と、排紙部30と、制御部40とを有している。そして、インクジェット記録装置1は、端末装置2(
図3参照)から入力された画像データを記録材Pに形成する。
【0017】
給紙部10は、給紙トレー11と、記録材供給部12とを有している。給紙トレー11は、記録材Pを載置可能に設けられた板状の部材である。給紙トレー11は、載置された記録材Pの枚数に応じて上下方向に移動可能に設けられている。そして、給紙トレー11に載置された複数の記録材Pのうち上下方向の最上部の記録材Pは、記録材供給部12により搬送される位置で保持される。
【0018】
記録材供給部12は、複数(本例では、2つ)のローラー121,122と、搬送ベルト123とを有している。搬送ベルト123は、長手方向の両端が接続された無端状に形成されている。搬送ベルト123は、ローラー121,122に張架されている。そして、ローラー121,122のうち一方のローラーが回転駆動することで、搬送ベルト123は、2つのローラー121,122の間を循環移動する。これにより、搬送ベルト123に載置された記録材Pが搬送される。
【0019】
また、記録材供給部12は、ローラー121,122を回転駆動する不図示の駆動部や、給紙トレー11に載置された最上部の記録材Pを搬送ベルト123に受け渡す供給装置(図示略)を有している。そして、記録材供給部12は、搬送ベルト123に載置された記録材Pを画像形成部20に向けて搬送し、画像形成部20に給紙する。
【0020】
画像形成部20は、画像形成ドラム21と、受け渡しユニット22と、加熱部23と、ヘッドユニット24と、定着部25と、画像読取部26と、記録材排出部27と、記録材反転部28とを有しており、記録材Pに画像を形成する。
【0021】
画像形成ドラム21は、円筒状に形成されている。画像形成ドラム21は、不図示の駆動モーターにより反時計回りに回転する。画像形成ドラム21の外周面には、給紙部10から供給された記録材Pが担持される。画像形成ドラム21は、外周面を三等分した3面の保持領域211を有している。保持領域211は、ステンレス鋼(SUS)シート等の表面に樹脂シート等が貼り付けられ、各保持領域211の表面において記録材Pを保持することが可能となっている。そして、画像形成ドラム21は、回転駆動することで記録材Pを排紙部30に向けて搬送する。また、画像形成ドラム21の外周面には、加熱部23、ヘッドユニット24、定着部25及び画像読取部26が対向して配置されている。
【0022】
受け渡しユニット22は、給紙部10の記録材供給部12と画像形成ドラム21との間に設けられている。受け渡しユニット22は、爪部221と、円筒状の受け渡しドラム222等を有している。爪部221は、記録材供給部12により搬送された記録材Pの一端を担持する。受け渡しドラム222は、爪部221に担持された記録材Pを画像形成ドラム21に向けて誘導する。これにより、記録材Pは、受け渡しユニット22を介して記録材供給部12から画像形成ドラム21の外周面に受け渡される。
【0023】
受け渡しドラム222における記録材Pの搬送方向の下流側には、加熱部23が配置されている。加熱部23は、例えば電熱線等を有し、通電に応じて発熱する。加熱部23は、制御部40による制御により、画像形成ドラム21に担持されて加熱部23の近傍を通過する記録材Pが所定の温度となるように発熱を行う。
【0024】
また、加熱部23の近傍には、不図示の温度センサーが設けられている。温度センサーは、加熱部23付近の温度を検知する。そして、制御部40は、温度センサーが検知した温度情報に基づいて、加熱部23の温度を制御する。
【0025】
加熱部23における記録材Pの搬送方向の下流側には、ヘッドユニット24が設けられている。ヘッドユニット24は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)に応じて4つ設けられている。4つのヘッドユニット24は、記録材Pの搬送方向に対して上流側から、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順に配置されている。
【0026】
ヘッドユニット24は、記録材Pの搬送方向と直交する方向(幅方向)において記録材Pの全体を覆う長さ(幅)に設定されている。すなわち、インクジェット記録装置1は、ワンパス方式のラインヘッド型インクジェット記録装置である。4つのヘッドユニット24は、それぞれ吐出するインクの色が異なるのみで、互いに同一の構成を有している。
【0027】
次に、ヘッドユニット24の構成例を説明する。
図2は、ヘッドユニット24を記録材P側から見た状態を示す平面図である。
【0028】
ヘッドユニット24は、複数(本例では、16個)のインクジェットヘッド242(インク吐出部の例)を有している。そして、2つのインクジェットヘッド242が1組となって、1つのインクジェットモジュール243を構成している。そのため、本例のヘッドユニット24には、8つのインクジェットモジュール243が設けられている。
【0029】
8つのインクジェットモジュール243は、記録材Pの搬送方向に沿って2列並べられている。そして、一列のインクジェットモジュール243は、記録材Pの搬送方向と直交する方向(幅方向)に沿って4つ並べて配置されている。また、8つのインクジェットモジュール243は、2列のインクジェットモジュール243が記録材Pの搬送方向に沿って互い違いの千鳥状に配置されている。
【0030】
なお、インクジェットモジュール243の数及び配置は、上述したものに限定されるものではなく、6又は10以上のインクジェットモジュール243を配置してもよい。
【0031】
また、インクジェットヘッド242は、複数のノズル244を有している。そして、インクジェットヘッド242は、ノズル244からインクを記録材Pに向けて吐出する。これにより、画像形成ドラム21に担持された記録材Pに画像が形成される。
【0032】
4つのヘッドユニット24における搬送方向の下流側には、定着部25が配置されている。定着部25としては、例えば、低圧水銀ランプ等の紫外線を照射する蛍光管が適用される。そして、定着部25は、紫外線を画像形成ドラム21により搬送された記録材Pに向けて照射し、記録材P上に吐出されたインクを硬化させる。これにより、定着部25は、記録材Pに形成された画像を定着させる。
【0033】
紫外線を発する蛍光管としては、低圧水銀ランプの他、数百Pa~1MPa程度の動作圧力を有する水銀ランプ、殺菌灯として利用可能な光源、冷陰極管、紫外線レーザー光源、メタルハライドランプ、発光ダイオードなどが挙げられる。これらの中で、紫外線をより高照度で照射可能であって消費電力の少ない光源(例えば発光ダイオード等)がより望ましい。
【0034】
なお、定着部25としては紫外線を照射するものに限定されるものではなく、インクの性質に応じてインクを硬化させる性質を有するエネルギー線を照射するものであればよく、光源もエネルギー線の波長などに応じて置換される。また、定着部25としては、紫外線等の光を照射するものに限定されるものではない。定着部としては、例えば、記録材に熱を与えることでインクを乾燥させたり、インクに化学的な変化を起こさせる液体を付与させたりするもの等その他各種の方法を適用できるものである。
【0035】
また、定着部25における搬送方向の下流側には、画像読取部26が配置されている。画像読取部26は、光源から読み取り対象に光を照射し、その反射画像を読み取る。画像読取部26は、複数の検出素子が記録材Pの搬送方向と直交する方向(幅方向)に沿って並べられたインラインセンサで構成されており、ヘッドユニット24及び定着部25により記録材Pに形成された2次元の反射画像や、画像形成ドラム21の表面の反射画像を読み取る。画像読取部26が読み取った画像のデータは、制御部40に送られる。
【0036】
なお、画像読取部26を構成する検出素子の間隔は、インクジェットヘッド242のノズル244の間隔よりも広く設定されている。すなわち、画像読取部26の分解能は、ヘッドユニット24の解像度よりも粗く設定されている。また、画像読取部26は、画像形成ドラム21の幅方向よりも長く形成され、画像形成ドラム21の表面の保持領域211の幅方向の全体を読み取ることができるように形成されている。
【0037】
また、画像読取部26の搬送方向の下流側には、記録材排出部27と、記録材反転部28が設けられている。記録材排出部27は、画像形成ドラム21により搬送された記録材Pを排紙部30に向けて搬送する。
【0038】
記録材排出部27は、円筒状の分離ドラム271と、排出ベルト272とを有している。分離ドラム271は、画像形成ドラム21に担持された記録材Pを画像形成ドラム21の外周面から分離させる。そして、分離ドラム271は、記録材Pを排出ベルト272又は記録材反転部28に記録材Pを誘導する。
【0039】
分離ドラム271は、片面画像形成におけるフェースアップ排紙を行う場合に、記録材Pを排出ベルト272に誘導する。また、分離ドラム271は、片面画像形成におけるフェースダウン排紙及び両面画像形成を行う場合に、記録材Pを記録材反転部28に誘導する。
【0040】
排出ベルト272は、記録材供給部12の搬送ベルト123と同様に、無端状に形成されている。排出ベルト272は、複数のローラーにより回転可能に支持されている。排出ベルト272は、分離ドラム271による受け渡された記録材Pを排紙部30に送り出す。
【0041】
記録材反転部28は、複数の反転ローラー281,282と、反転ベルト283とを有している。フェースダウン排紙を行う場合、記録材反転部28は、分離ドラム271により誘導された記録材Pの表裏を反転し、記録材排出部27に搬送する。これにより、記録材Pは、記録材排出部27による画像が形成された面が上下方向の下方を向いた状態で排紙部30に搬送される。
【0042】
また、両面画像形成を行う場合、記録材反転部28は、分離ドラム271により誘導された記録材Pの表裏を反転し、再び画像形成ドラム21の外周面に搬送する。これにより、記録材Pは、画像形成ドラム21により搬送され、再び加熱部23、ヘッドユニット24、定着部25及び画像読取部26を通過する。
【0043】
排紙部30は、記録材排出部27により画像形成部20から送り出された記録材Pを格納する。排紙部30は、平板状の排紙トレー31を有している。そして、排紙部30は、排紙トレー31上に画像が形成された記録材Pを載置する。
【0044】
[インクジェット記録装置のハードウェア構成]
次に、インクジェット記録装置1のハードウェア構成例について説明する。
図3は、インクジェット記録装置1のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0045】
インクジェット記録装置1は、制御部40を備えている。制御部40は、例えばCPU(Central Processing Unit)41と、CPU41の作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)42と、CPU41が実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)43とを有する。さらに、制御部40は、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)又は半導体メモリ等からなる記憶部44を有している。記憶部44には、制御プログラム(例えば、画像処理プログラム)や各種データ等のインクジェット記録装置1を制御するための情報が格納される。このため、ROM43及び記憶部44は、CPU41が動作するために必要なプログラムやデータ等を記録している。すなわち、ROM43及び記憶部44は、インクジェット記録装置1を動作させるコンピューターによって実行されるプログラムを格納したコンピューター読取可能な記録媒体の一例として用いられる。
【0046】
また、インクジェット記録装置1は、画像形成ドラム21、記録材排出部27や記録材反転部28等の搬送系の駆動を行い、記録材Pを搬送する搬送部51と、操作表示部52と、入出力インターフェース53とを有している。
【0047】
制御部40のCPU41は、加熱部23、ヘッドユニット24、定着部25、画像読取部26、RAM42、ROM43、記憶部44にそれぞれシステムバス54を介して接続され、装置全体を制御する。また、CPU41は、搬送部51、操作表示部52、入出力インターフェース53にそれぞれシステムバス54を介して接続されている。
【0048】
操作表示部52は、液晶表示装置(LCD)又は有機ELD(Electro Luminescence Display)等のディスプレイからなるタッチパネルである。この操作表示部52は、オペレーターに対する指示メニュー、ノズル244の吐出検出動作に関する情報や取得した画像データに関する情報等のインクジェット記録装置1に関する情報を表示する。さらに、操作表示部52は、複数のキーを備え、オペレーターのキー操作による各種の指示、文字、数字などのデータの入力を受け付ける入力部としての役割を持っている。これにより、オペレーターが操作表示部52を通じてインクジェット記録装置1に対する操作が行える。なお、操作表示部52を、操作部と表示部に分けて構成してもよい。この場合、オペレーターは、操作部を通じてインクジェット記録装置1を操作し、表示部は、インクジェット記録装置1に関する情報を表示する。
【0049】
入出力インターフェース53は、PC(パーソナルコンピュータ)や、ファクシミリ装置等の端末装置2に接続されている。そして、入出力インターフェース53は、端末装置2から画像データを受信する。入出力インターフェース53は、受信した画像データを制御部40に出力する。そして、制御部40は、入出力インターフェース53から受信した画像データに対し、必要に応じて、シェーディング補正、画像濃度調整、画像圧縮等の画像処理を行う。
【0050】
また、ヘッドユニット24は、制御部40によって画像処理された画像データを受け取り、画像データに基づいて記録材P上に所定の画像を形成する。具体的には、ヘッドユニット24は、ヘッド駆動部241を駆動することで、インクジェットヘッド242からインクを所定の位置に吐出させる。
【0051】
インクジェットヘッド242には、加熱部245とサーミスタ246が設けられている。加熱部245は、熱を発生させてインクジェットヘッド242の温度を上昇させる電熱器(例えば電熱線)である。インクジェットヘッド242すなわちインクの温度を目標温度まで上昇させることで、インク粘性が良好になる。サーミスタ246は、温度に応じて電気抵抗が大きく変化する半導体回路素子(温度検出部の例)である。制御部40は、インクジェットヘッド242からサーミスタ246の電気抵抗に応じた信号を取得し、この信号に基づいてインクジェットヘッド242の温度を所定の温度に維持する制御を行う。なお、インクジェットモジュール243ごとに、加熱部245とサーミスタ246が設けられてもよい。
【0052】
ヘッドユニット24により記録材Pに形成された画像は、画像読取部26によって読み取られ、その画像データが制御部40に送られる。また、ノズル244の吐出不良の判定動作を行う際、制御部40は、画像読取部26から送られた画像データに基づいて吐出不良が生じているノズル244を判別する。そして、制御部40は、例えば、吐出不良が発生したノズル244に隣接するノズル244からのインクの吐出量を増やすことで、ヘッドユニット24のシェーディング補正処理を行う。
【0053】
[インクジェット記録装置の機能構成]
次に、第1の実施形態に係るインクジェット記録装置1の機能構成例について
図4を参照して説明する。
図4は、第1の実施形態に係るインクジェット記録装置1の機能構成例を示すブロック図である。
【0054】
インクジェット記録装置1の制御部40は、補正制御部410、温度制御部420、及び画像記録制御部430を備える。また、制御部40は、画像データ記憶部441、ヘッド温度制御テーブル442(温度制御テーブルの例)、及び出力設定記憶部443を備える。画像データ記憶部441、ヘッド温度制御テーブル442、及び出力設定記憶部443は、記憶部44又はRAM42を用いて構成される。
【0055】
画像データ記憶部441には、印刷ジョブの原稿画像(以下「入力画像」とも称する)及び補正用チャート(
図5に示すテストチャート60)の画像データが記憶されている。
【0056】
ヘッド温度制御テーブル442には、インク付着量とインクジェットヘッド242の目標温度との関係が定められている。インク付着量は、印刷ジョブに基づいて記録材Pに画像を形成する際に使用するインクの量であって、記録材Pに付着させる単位面積当たりのインクの量[mL/m2]である。面積は、単位面積に限らず、予め設定した面積(所定面積)であればよい。
【0057】
出力設定記憶部443には、印刷ジョブの出力設定情報が記憶されている。例えば出力設定情報には、画像の画素ごとの色情報及び濃度情報が含まれる。
【0058】
補正制御部410は、画像読取部26の読取結果に基づいて、記録材Pに形成される画像の濃度むらを補正するシェーディング補正を行う。補正制御部410は、インク付着量計算部411、ヘッド温度決定部412、読取画像生成部414、及び補正データ生成部415を備える。
【0059】
インク付着量計算部411は、画像データ記憶部441に記憶された印刷ジョブに基づいて、記録材Pに形成する画像のインク付着量を計算する。例えば、印刷する原稿画像に対して各ノズルから射出するインク滴の量(インク量)を積算し、インク量の積算値を所定面積で割ることで、対象画像の単位面積当たりのインク付着量が求められる。対象画像がカラー画像である場合、インク付着量はCMYKの色ごとに求める。第1の実施形態では、印刷ジョブの原稿画像が複数枚(複数ページ)ある場合、インク付着量として、色ごとに1ページ目のインク付着量を計算する。なお、インク付着量の計算は、1ページ目に限らず他のページでもよい。
【0060】
ヘッド温度決定部412(指令値決定部の例)は、インク付着量計算部411で計算された入力画像のインク付着量に基づいて、インクジェットヘッド242の温度を第2の温度へ上げるための処理に対する指令値を決定する。具体的には、ヘッド温度決定部412は、ヘッド温度制御テーブル442を参照し、指令値として印刷ジョブの原稿画像のインク付着量に対するインクジェットヘッド242の目標温度(第2の温度)を決定し、その目標温度を温度制御部413へ出力する。
【0061】
温度制御部413は、インクジェットヘッド242の温度を制御する。温度制御部413は、シェーディング補正を実行する前に、インクジェットヘッド242の温度が、印刷ジョブに基づいて画像記録制御部430が画像を形成するときの設定温度である第1の温度よりも高い第2の温度となるように調整する。第1の温度は、テストモードではない通常の画像形成におけるインクジェットヘッド242の初期設定温度である。例えば、温度制御部420は、ヘッド温度決定部412から入力される指令値に基づいて加熱部245を制御し、シェーディング補正を実行する直前に、インクジェットヘッド242の温度が第2の温度となるよう調整する。
【0062】
読取画像生成部414は、画像読取部26で記録材Pに形成された画像の濃度を読み取り、読取結果(濃度データ)から読取画像データを生成する。読取画像生成部414は、RGB値の読取データをCMYK値ごとの読取画像データに変換する。
【0063】
補正データ生成部415は、テストチャート60(補正用チャート)の画像データと、記録材Pに形成されたテストチャート60を読み取って生成された読取画像データとを比較し、比較結果に基づいて補正データ(濃度むら補正値)を算出する。補正データ生成部415は、出力設定記憶部443に記憶された出力設定情報に対し補正データを反映して、出力設定情報を更新する。
【0064】
画像記録制御部430は、インクジェットヘッド242によるインク滴の吐出を制御して記録材Pに画像を形成する。本実施形態では、画像記録制御部430は、通常印刷モード時に印刷ジョブに基づいて画像を形成し、テストモード時にテストチャートを形成する。
【0065】
後述する
図8に示すように、インク滴の射出数(すなわちインク付着量)が多い画像では連続印刷によりヘッド温度が上昇し、射出数の少ない画像との濃度差が発生してしまう。このため、補正制御部410で画像のインク付着量を計算し、後述する
図9のヘッド温度制御テーブル442を参照してヘッド温度を決定及び調整する。その後、テストチャートを印刷及び読み取り、補正データ(濃度むら補正値)を生成することで、画像の連続印刷によって発生する濃度差を抑制することができる。
【0066】
図5は、インクジェット記録装置1におけるテストチャートの一例を示すものであり、
図5Aはテストチャート全体を示す説明図、
図5Bはテストチャートの一部を拡大して示す説明図である。
【0067】
図5Aに示すように、テストチャート60(以下「補正用チャート」とも称する)は、1枚の用紙P全体に形成される。
【0068】
第1チャート群61Yは、4つのヘッドユニット24のうちイエロー(Y)のインクを吐出するヘッドユニット24によって形成される。また、第2チャート群61Mは、4つのヘッドユニット24のうちマゼンタ(M)のインクを吐出するヘッドユニット24によって形成される。第3チャート群61Cは、4つのヘッドユニット24のうちシアン(C)のインクを吐出するヘッドユニット24によって形成される。第4チャート群61Bkは、4つのヘッドユニット24のうちブラック(Bk)のインクを吐出するヘッドユニット24によって形成される。
【0069】
第1チャート群61Y、第2チャート群61M、第3チャート群61C、及び第4チャート群61Bkは、それぞれ複数(本例では8つ)のテストパターン61を有している。すなわち、テストパターン61は、ヘッドユニット24に設けられたインクジェットモジュール243と同じ数だけ形成される。8つのテストパターン61は、8つのインクジェットモジュール243におけるヘッドユニット24に配置された位置と対応して形成されている。すなわち、8つのテストパターン61は、2列のテストパターン61が用紙Pの搬送方向に沿って互い違い千鳥状に配置されている。
【0070】
また、テストパターン61における用紙Pの先端側が、インクジェットモジュール243を構成する2つのインクジェットヘッド242のうち用紙Pの搬送方向の上流側に配置されたインクジェットヘッド242が対応している。そして、テストパターン61における用紙Pの後端側が、インクジェットモジュール243を構成する2つのインクジェットヘッド242のうち用紙Pの搬送方向の下流側に配置されたインクジェットヘッド242が対応している。
【0071】
このように、1枚の用紙P全体にテストチャート60を形成することで、吐出不良が発生したノズル244を有するインクジェットヘッド242を容易に検出することができる。さらに、ヘッドユニット24の解像度よりも粗い分解能を有する画像読取部26を用いてもノズル244の吐出不良を正確に検出することができる。これにより、画像読取部26の分解能を向上させる必要がなくなる。
【0072】
また、
図5Bに示すように、テストパターン61は、複数のパターン線61aにより形成されている。複数のパターン線61aの位置は、インクジェットヘッド242に設けた複数のノズル244を設けた位置に対応している。そのため、パターン線61aに抜けT1が発生した場合、この抜けT1に対応する位置のノズル244に吐出不良が発生していると判断することができる。これにより、吐出不良が発生したノズル244の位置を正確に検出することができる。
【0073】
テストチャート60では、4色の第1チャート群61Y、第2チャート群61M、第3チャート群61C、及び第4チャート群61Bkを搬送方向に各色が重ならないように配置されている。テストパターン61は、例えば搬送方向に18段の階調を有する。18段は一例であり、他の階調数でもよい。また、テストチャートの態様は、
図5に示したものに限られない。
【0074】
インクジェット記録装置1は、記録材に画像を形成後、画像読取部26で画像を読み取り濃度データ(例えばG信号)を取得することで、シェーディング補正用の補正データ(濃度むら補正値)を算出する。一般に、濃度データに含まれる赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の成分のうち、G成分の感度が高いとされ、G信号がもっとも濃度を反映する。ただし、濃度データはG信号に限らない。
【0075】
図5のようなシェーディング補正用のテストチャート60は、インク付着量が合計1[mL/m
2]程度しかない。そのため、よりインク滴の射出数が多い画像(例えば7mL/m
2の画像)では、連続印刷によってよりインクジェットヘッド242が発熱して温度が上昇する。その結果、インク滴の射出数が多い画像では、出力設定が同じであっても、シェーディング補正時とは異なる濃度分布を示すようになる。
【0076】
ここで、従来方式における高印字率画像を連続印刷したときの濃度変動の例について
図6を参照して説明する。
図6は、従来方式における高印字率画像を連続印刷したときの濃度変動の例を示すグラフである。
【0077】
本実施形態において、高印字率画像とは、記録材の面積に対する、印刷される文字などの画像を積算した面積の比率が所定値よりも高い画像である。高印字率画像では、少なくともシェーディング補正に用いるテストチャート60よりもインク付着量が多い(例えば2~数mL/m
2以上)。
図6において、横軸はインクジェットヘッドユニット24(8個のインクジェットヘッド242)のノズル列方向の位置、縦軸は濃度(L
*)を表している。L
*はL
*a
*b
*色空間における明度を表す。L
*値が小さいほど暗い(濃度が高い)。1枚目の濃度変動が実線、10枚目の濃度変動が破線で示されている。
【0078】
図6では、濃度(L
*)が、8個のインクジェットヘッド242のノズル列に応じた周期性を有することを示している。また、
図6より、特に、インクジェットヘッド242のノズル列の中央部において、1枚目に比べて10枚目の方が、濃度が高くなっていることがわかる。1枚目と10枚目の濃度差ΔL
*は、およそ1より大きくなっている(ΔL
*>1)。一般的に、濃度差ΔL
*が1を超えると人間の目で濃度差を視認できるとされている。連続印刷によりインクジェットヘッド242(インクジェットモジュール243)のノズル列が発熱(中央部のノズルほど発熱)したことによって、1枚目の濃度よりも10枚目の濃度が高くなっていると考えられる。
【0079】
次に、インクジェットヘッド242の温度と印刷枚数との関係例について
図7を参照して説明する。
図7は、インクジェットヘッド242の温度と印刷枚数との関係例を示すグラフである。
【0080】
図7において、横軸は印刷枚数、縦軸はインクジェットヘッド242の温度[℃]を示す。インクジェットヘッド242の温度(以下「ヘッド温度」とも称する)は、印刷枚数が多いほど高くなるが、一定の印刷枚数を超えたあたりから伸びなくなる傾向がある。
図7の例では、およそ10枚でヘッド温度が頭打ちになっている。
【0081】
次に、連続して所定枚数印刷時のインク付着量とヘッド温度の関係例について
図8を参照して説明する。
図8は、連続10枚印刷時のインク付着量[mL/m
2]とヘッド温度の関係例を示すグラフである。本例は一例であって、想定する一枚の画像の濃度(インク付着量)に応じて、インク付着量とヘッド温度の関係(ヘッド温度の上昇率)は異なる。
【0082】
図8に、最小二乗法により複数の測定値から求められた回帰直線の例(y=0.5906x+79.235、決定係数R
2=0.928)が示されている。ヘッド温度の初期設定値が80℃である場合、本来であれば印刷中のヘッド温度を80℃に維持することが望ましいが、上述のとおり、印刷枚数が増えるにつれてインクジェットヘッド242のノズル列の中央部で発熱するようになる。つまり、
図8のグラフのように、画像のインク付着量(=インク滴の射出数)に応じてインクジェットヘッド242の中央部のヘッド温度が上昇してしまう。このことから、
図6で示したように、画像の連続印刷時にインクジェットヘッド242のノズル列の中で濃度変動が発生する。特に、インク付着量が多い高印字率画像の連続印刷時に、この濃度変動が表れやすくなる。
【0083】
[ヘッド温度制御テーブル]
次に、インク付着量に対するヘッド温度の指令値を格納するヘッド温度制御テーブル442の例について
図9を参照して説明する。
図9は、ヘッド温度制御テーブル442の例を示す。なお、
図8のグラフの内容と
図9のヘッド温度制御テーブル442内の数値は、厳密にはリンクしていない。
【0084】
図8に示されるように、インク付着量[mL/m
2]に対して連続印刷におけるヘッド温度の上昇はリニアに変化することから、テーブルとしてインク付着量とヘッド温度を対応付けることができる。
図9のヘッド温度制御テーブル442では、インク付着量が“0mL/m
2”のとき、ヘッド温度は初期設定の“80℃”であり、インク付着量が“1mL/m
2”のとき、ヘッド温度は“80.886℃”である。また、インク付着量が“5mL/m
2”のとき、ヘッド温度は“82.953℃”であり、インク付着量が“10mL/m
2”のとき、ヘッド温度は“85.906℃”である。
【0085】
ヘッド温度決定部412は、ヘッド温度制御テーブル442から、インク付着量計算部411で計算したインク付着量に対応付けられたヘッド温度を読み出し、該ヘッド温度を指令値として温度制御部420へ出力する。計算したインク付着量に該当する数値がヘッド温度制御テーブル442にない場合、ヘッド温度決定部412は、ヘッド温度制御テーブル442を基に内挿法によりヘッド温度を求める。
【0086】
[シェーディング補正処理]
次に、補正制御部410によるシェーディング補正処理の手順例について
図10を参照して説明する。
図10は、補正制御部410によるシェーディング補正処理の手順例を示すフローチャートである。
【0087】
図10において、テストモードが選択されたとき、補正制御部410のインク付着量計算部411は、原稿データ記憶部441から印刷ジョブの原稿画像(入力画像)を読み込む(S1)。次いで、インク付着量計算部411は、入力画像の1枚目のインク付着量を計算する(S2)。
【0088】
次いで、ヘッド温度決定部412は、ヘッド温度制御テーブル442を参照して、インク付着量からインクジェットヘッド242ごとに目標のヘッド温度を決定し、温度制御部420にヘッド温度の指令値を出力する(S3)。
【0089】
次いで、温度制御部420は、ヘッド温度の指令値に基づいて、加熱部245を制御してインクジェットヘッド242(インク)の温度を調整する(S4)。次いで、温度制御部420は、サーミスタ246が出力する信号により、インクジェットヘッド242の温度が目標の温度に到達したか否かを判定する(S5)。インクジェットヘッド242の温度が目標の温度に到達していない場合には(S5のNO)、温度制御部420は、ステップS4に移行して加熱部245によりインクジェットヘッド242の加熱を続ける。
【0090】
次いで、インクジェットヘッド242の温度が目標の温度に到達した場合には(S5のYES)、温度制御部413から画像記録制御部430へ画像記録指令を出力する。そして、画像記録制御部430は、画像データ記憶部441から補正チャート(テストチャート60)の画像データを読み出し、目標の温度になったインクジェットヘッド242を駆動して補正用チャートを印刷する(S6)。
【0091】
次いで、画像読取部26が記録材Pに形成された補正用チャートを読み取り(S7)、読取結果(濃度データ)を読取画像生成部414に入力する。読取画像生成部414は、読取データから読取画像データを生成する。
【0092】
次いで、補正データ生成部415は、画像データ記憶部441に保存されている補正用チャートの画像データと、補正用チャートの読取結果から生成された読取画像データとを比較し、比較結果に基づいて補正データ(濃度むら補正値)を生成する(S8)。補正データ生成部415は、補正データを用いて出力設定情報を変更する。ステップS8の処理後、本フローチャートの処理を終了する。
【0093】
このようにして、濃度むらを補正するシェーディング補正が行われる。そして、画像記録制御部430が、変更後の出力設定に基づいて印刷ジョブを実行することにより、記録材Pに濃度むらが抑制された画像が形成される。
【0094】
次に、従来方式と本実施形態における1枚目印刷時の濃度と対象枚数印刷時の濃度との濃度差の例について
図11を参照して説明する。
図11は、従来方式と本実施形態における1枚目印刷時の濃度と対象枚数印刷時の濃度との濃度差の例を示すグラフである。
【0095】
図11は、シェーディング補正した後に、1枚目の濃度を基準にして10枚目の濃度(L
*)との差分(ΔL
*)を表している。図中の「新方式」は、本実施形態の方式である。
図6に示したような従来方式では、1枚目と10枚目との濃度差ΔL
*は、1よりも大きくなり(ΔL
*>1)、濃度差がオペレーターに視認される。一方、
図11のような本実施形態の方式では、1枚目と10枚目との濃度差ΔL
*は、1以下と小さくなり(ΔL
*≦1)、濃度差がオペレーターに視認されなくなる。
図11では、ノズル列方向のほぼ全域で、濃度差ΔL
*が0.5以下である。
【0096】
以上のとおり、第1の実施形態に係るインクジェット記録装置1では、補正制御部410が、シェーディング補正を行う前に加熱部245を制御して、インクジェットヘッド242の温度が通常の画像形成時の設定温度である第1の温度よりも高い第2の温度となるように調整する。これにより、連続印刷時のインクジェットヘッド242の温度を再現した状態で、シェーディング補正を行うことができる。そのため、連続印刷時に、インクジェットヘッド242のノズル列の中央部と両端部との温度変動の差分を低減し、両者の濃度差を小さくすることができる。それにより、連続印刷時において、インクジェットヘッド242(特にノズル列の中央部)の位置に対応して表れる濃度差(濃度むら)が抑えられる。それゆえ、連続印刷時に発生する、隣接するインクジェットヘッド242間の濃度むらを抑制することができる。別の側面として、連続印刷において、ページ間(例えば印刷の序盤と終盤)の濃度差が抑えられるとも言える。
【0097】
従来は、濃度むらが発生すると、インクジェットヘッド242のノズルごとに印加電圧を制御していた。しかし、印加電圧を制御して、インク滴の着弾位置、インク滴(例えば連続する一発目及び二発目)の径、隣接するインクジェットヘッド242間のインク滴の着弾位置の間隔、他の色のインクジェットヘッド242とのインク滴の着弾位置の間隔などを調整するため、調整が難しかった。これに対し、本実施形態は、シェーディング補正を実行する前に、連続印刷時のインクジェットヘッド242の温度を再現することで、従来の印加電圧を制御する方法と比較して、連続印刷時に発生する濃度むらをより簡単に抑制することができる。
【0098】
<第1の実施形態の変形例>
上述した第1の実施形態では、入力画像の特定のページ全体のインク付着量を計算したが、入力画像を複数の領域に分割して、分割領域ごとにインク付着量を計算して対応するインクジェットヘッド242の温度を制御するようにしてもよい。
【0099】
図12は、入力画像を複数の領域に分割した例を示す。
図12では、記録材Pの搬送方向(矢印)に直交する方向で、入力画像70を8個の領域に分割した例である。右端の分割領域A1は、
図2に示すインクジェットヘッド24内の右端のインクジェットモジュール243(インクジェットヘッド242)と対応する。そして、左端の分割領域A8は、
図2に示すインクジェットヘッド24内の右端のインクジェットモジュール243(インクジェットヘッド242)と対応する。分割対象を、入力画像ではなくて有効画像領域としてもよい。
【0100】
このように分割領域を設定し、インク付着量計算部411が分割領域ごとにインク付着量を計算して対応するインクジェットヘッド242の温度を制御することで、インクジェットヘッド242ごとにヘッド温度を制御することができる。このため、上述した第1の実施形態と比較して、より高精度にシェーディング補正を行うことができる。
【0101】
なお、
図12では8個の分割領域A1~A8を設定したが、分割領域の個数を2~7個としてもよい。例えば、インク付着量計算部411が、入力画像の画像データを解析して濃度分布を計算し、高濃度部分と低濃度部分の間に境界線を設定して領域を分割してもよい。これにより、入力画像の濃度分布に応じて、各インクジェットヘッド242の温度を調整でき、濃度分布に合わせた適切なシェーディング補正が実現できる。
【0102】
<第2の実施形態>
第2の実施形態では、連続印刷で発生するインクジェットヘッド242の発熱に対応するために、補正用チャートを印刷する前に加熱部245を制御するのではなく、指定枚数分の吐き捨てチャートを印刷する。シェーディング補正を行う前に1枚以上の吐き捨てチャートを印刷することで、連続印刷時のインクジェットヘッドの発熱を再現させ、シェーディング補正を実施する。
【0103】
[インクジェット記録装置の機能構成]
図13は、第2の実施形態に係るインクジェット記録装置の機能構成例を示すブロック図である。本実施形態に係るインクジェット記録装置1Aは、一部を除いて第1の実施形態に係るインクジェット記録装置1と同じ構成とすることができる。インクジェット記録装置1Aは、第1の実施形態に係るインクジェット記録装置1と比較して、補正制御部410Aが、ヘッド温度決定部412の代わりに吐き捨て枚数決定部416を備える点が異なる。以下、
図13のインクジェット記録装置1Aについて、
図4に示したインクジェット記録装置1と異なる部分を中心に説明し、重複する部分の説明を省略する。
【0104】
インクジェット記録装置1Aの制御部40は、補正制御部410A、温度制御部420、及び画像記録制御部430を備える。また、制御部40は、画像データ記憶部441、吐き捨て枚数テーブル444、及び出力設定記憶部443を備える。
【0105】
画像データ記憶部441には、印刷ジョブの原稿画像(入力画像)及びチャート画像が記憶されている。また、画像データ記憶部441には、チャート画像として、補正用チャート(
図5に示すテストチャート60)の画像データ、及び吐き捨てチャートが記憶されている。画像データ記憶部441、吐き捨て枚数テーブル444、及び出力設定記憶部443は、記憶部44又はRAM42を用いて構成される。
【0106】
吐き捨て枚数テーブル444は、インク付着量と吐き捨てチャート(吐き捨て画像の例)の印刷枚数との関係が定められている。吐き捨てチャートは、所定のインク付着量[mL/m2]を有する温度調整用の画像であり、シェーディング補正を実施する前に、インクジェットヘッド242の温度を上昇させるために用いられる。印刷枚数は、印刷ページ数でもよい。吐き捨てチャートを記録材Pの両面に形成する場合、印刷ページ数を指定することができる。
【0107】
補正制御部410Aは、インク付着量計算部411、吐き捨て枚数決定部416、温度制御部413、読取画像生成部414、及び補正データ生成部415を備える。
【0108】
インク付着量計算部411は、第1の実施形態と同様に、画像データ記憶部441に記憶された印刷ジョブに基づいて、記録材Pに形成する画像一枚当たりのインク付着量を計算する。対象画像がカラー画像である場合、インク付着量はCMYKの色ごとに求める。第2の実施形態では、印刷ジョブの原稿画像が複数枚(複数ページ)ある場合、インク付着量として、色ごとに複数枚のインク付着量の平均値を計算する。
【0109】
吐き捨て枚数決定部416(指令値決定部の例)は、インク付着量計算部411で計算された入力画像一枚当たりのインク付着量に基づいて、インクジェットヘッド242の温度を第2の温度へ上げるための処理に対する指令値を決定する。具体的には、吐き捨て枚数決定部416は、吐き捨て枚数テーブル444を参照し、印刷ジョブの原稿画像のインク付着量に対する吐き捨てチャート(吐き捨て画像)の印刷枚数を決定する。
【0110】
画像記録制御部430は、インクジェットヘッド242によるインク滴の吐出を制御して記録材Pに画像を形成する。本実施形態では、通常印刷モード時に印刷ジョブに基づいて画像を形成し、テストモード時に吐き捨てチャート及びテストチャートを形成する。また、画像記録制御部430は、補正制御部410Aがシェーディング補正を実行する前に、吐き捨て枚数決定部416から指示された枚数の吐き捨てチャートを形成する。
【0111】
吐き捨てチャートは、例えばハーフトーン(網点により形成された濃淡の中間色調)のパターンにより作成される。一例として、吐き捨てチャートは、ハーフトーンのパターンにおいて単位面積当たりのドット数が最も多いパターンであって、1ドット当たりのインク滴の量が最大となるドットで構成される。この場合、画像形成装置にもよるが、吐き捨てチャートのインク付着量は10mL/m2程度となる。なお、吐き捨てチャートとして、顧客画像すなわち入力画像を用いてもよい。このように、吐き捨てチャートの態様は、インクジェットヘッド242の温度を目標温度まで上昇させる目的を達成できるものであればよく、任意である。
【0112】
[吐き捨て枚数テーブル]
次に、インク付着量に対する吐き捨て枚数の指令値を格納する吐き捨て枚数テーブル444の例について
図14を参照して説明する。
図14は、吐き捨て枚数テーブル444の例を示す。吐き捨て枚数テーブル444は、入力画像一枚当たりのインク付着量と、該インク付着量に対し所定の吐き捨てチャートを連続印刷する枚数が対応付けられている。例えば、印刷ジョブの入力画像が7枚であれば、インク付着量は7枚の平均値である。
図14では、インク付着量が“0mL/m
2”のとき、吐き捨て枚数は“0枚”であり、インク付着量が“1mL/m
2”のとき、吐き捨て枚数は“1枚”である。また、インク付着量が“5mL/m
2”のとき、吐き捨て枚数は“4枚”であり、インク付着量が“10mL/m
2”のとき、吐き捨て枚数は“7枚”である。
【0113】
次に、補正制御部410Aによるシェーディング補正処理の手順例について
図15を参照して説明する。
図15は、補正制御部410Aによるシェーディング補正処理の手順例を示すフローチャートである。
図15において、ステップS11~S12、S15~S17の処理は、
図10のステップS1~S2、ステップS6~S8の処理と同じであるため、説明を簡略化する。
【0114】
図15において、テストモードが選択されたとき、補正制御部410Aのインク付着量計算部411は、原稿データ記憶部441から印刷ジョブの原稿画像(入力画像)を読み込み(S11)、入力画像一枚当たりのインク付着量を計算する(S12)。
【0115】
次いで、吐き捨て枚数決定部416は、吐き捨て枚数テーブル444を参照し、インク付着量から目標の吐き捨て枚数を決定する。次いで、温度制御部430は、目標の吐き捨て枚数の決定を受けて、決定された枚数分だけ吐き捨て印刷を実施するように画像記録制御部430へ画像記録指令を出力する(S13)。
【0116】
次いで、画像記録制御部430は、画像記録指令に従って、画像データ記憶部441から吐き捨てチャートの画像データを読み出し、設定された枚数分の吐き捨てチャートを連続して印刷する(S14)。この吐き捨てチャートの連続印刷により、インクジェットヘッド242の温度が初期設定の温度よりも高い温度(第2の温度)に上昇する。
【0117】
次いで、画像記録制御部430は、吐き捨て印刷を終了後、吐き捨て印刷の枚数に応じて温度が上昇したインクジェットヘッド242を駆動して補正用チャート(テストチャート60)を印刷する(S15)。
【0118】
なお、例えば、吐き捨て枚数が7枚に決定されたとき、吐き捨てチャートを6枚連続で印刷し、7枚目に補正用チャートを印刷してもよい。この場合、7枚目に補正用チャートを印刷するので、7枚の吐き捨てチャートを印刷したときと近い温度までヘッド温度を上昇させることができるとともに、インク使用量を吐き捨てチャート1枚分節約することができる。
【0119】
次いで、画像読取部26が記録材Pに形成された補正用チャートを読み取る(S16)。そして、補正データ生成部415は、画像データ記憶部441に保存されている補正用チャートの画像データと、補正用チャートの読取結果から生成された読取画像データとを比較し、比較結果に基づいて補正データ(濃度むら補正値)を生成する(S17)。補正データ生成部415は、補正データを用いて出力設定情報を変更する。ステップS17の処理後、本フローチャートの処理を終了する。
【0120】
このようにして、濃度むらを補正するシェーディング補正が行われる。そして、画像記録制御部430が、変更後の出力設定に基づいて印刷ジョブを実行することにより、記録材Pに濃度むらが抑制された画像が形成される。
【0121】
以上のとおり、第2の実施形態に係るインクジェット記録装置1Aでは、補正制御部410Aが、シェーディング補正を行う前に加熱部245を制御して、インクジェットヘッド242の温度が通常の画像形成時の設定温度である第1の温度よりも高い第2の温度となるように調整する。これにより、連続印刷時のインクジェットヘッド242の発熱を再現した状態で、シェーディング補正を行うことができる。そのため、第1の実施形態と同様に、連続印刷時に発生する、隣接するインクジェットヘッド242間の濃度むらを抑制することができる。
【0122】
また、本実施形態は、シェーディング補正を実行する前に、吐き捨て印刷を行って連続印刷時のインクジェットヘッド242の発熱を再現することで、第1の実施形態に係る加熱部245を制御する方法と比較して、連続印刷時に発生する濃度むらをより簡単に抑制することができる。
【0123】
さらに、本実施形態では、入力画像の複数枚のインク付着量から入力画像一枚当たりのインク付着量を計算して、吐き捨て枚数を決定するため、第1の実施形態よりも、インク付着量の値が実際の入力画像のインク付着量に則している。そのため、第2の実施形態では、より高精度にシェーディング補正することが可能になる。
【0124】
なお、上述した第1の実施形態において、入力画像の1枚目(特定のページ)のインク付着量ではなく、入力画像の複数枚(複数ページ)のインク付着量の平均値を用いてもよい。このようにした場合、第1の実施形態においても、より高精度にシェーディング補正することが可能になる。ただし、複数枚(複数ページ)のインク付着量の平均値を計算するよりも、1枚目のインク付着量だけを計算する方が、インク付着量計算部411の処理負荷が軽減される。
【0125】
<第2の実施形態の変形例(1)>
第2の実施形態の変形例(1)として、インクジェット記録装置1Aが、吐き捨てチャートを記憶する記憶部(記憶部44)と、吐き捨てチャートの印刷枚数を選択する操作入力を受け付ける操作部(操作表示部52)と、を備える構成としてもよい。そして、補正制御部410Aは、画像記録制御部430により、選択された印刷枚数分の吐き捨てチャートを形成するように制御する。
【0126】
上記の構成によれば、顧客(オペレーター)が自由に吐き捨てチャートの印刷枚数の印刷設定を選択することができるため、顧客が、濃度むら補正効果と印刷枚数のバランスを図ることができる。それにより、顧客の満足度が向上する。例えば、連続印刷時のヘッド温度の再現性をより高めたい場合、印刷枚数を増加させることができる。
【0127】
<第2の実施形態の変形例(2)>
第2の実施形態の変形例(2)として、インクジェット記録装置1Aが、2以上の異なる吐き捨てチャートを記憶する記憶部(記憶部44)と、その記憶部に記憶された吐き捨てチャートの中から一つの吐き捨て画像を選択する操作入力を受け付ける操作部(操作表示部52)と、を備える構成としてもよい。そして、画像記録制御部410Aは、選択された吐き捨てチャートに基づいて、画像記録制御部430により吐き捨てチャートを形成するように制御する。
【0128】
上記の構成によれば、顧客(オペレーター)が自由に吐き捨てチャートを選択することができるため、顧客が、濃度むら補正効果とインク使用量のバランスを図ることができる。それにより、顧客の満足度が向上する。例えば、連続印刷時のヘッド温度の再現性をより高めたい場合に、インク付着量の多い吐き捨てチャートを選択することができる。また、インク使用量を抑えたい場合に、インク付着量の少ない吐き捨てチャートを選択することができる。
【0129】
<第2の実施形態の変形例(3)>
なお、第2の実施形態の変形例(1)と変形例(2)を合わせた構成としてもよい。この場合、補正制御部410Aは、吐き捨てチャートの選択内容、及び、印刷枚数の選択内容の少なくともいずれか一方に基づいて、画像記録制御部430による吐き捨てチャートの形成を制御する。
【0130】
さらに、本発明は上述した各実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
【0131】
例えば、上述した各実施形態は本発明を分かりやすく説明するためにインクジェット記録装置の構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成要素に置き換えることが可能である。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成要素を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成要素の追加又は置換、削除をすることも可能である。
【0132】
また、上記の各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。ハードウェアとして、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを用いてもよい。
【0133】
また、
図10及び
図13に示すフローチャートにおいて、処理結果に影響を及ぼさない範囲で、複数の処理を並列的に実行したり、処理順序を変更したりしてもよい。
【符号の説明】
【0134】
1…インクジェット記録装置、20…画像形成部、23…加熱部、24…ヘッドユニット、26…画像読取部、40…制御部、44…記憶部、52…操作表示部、60…補正用チャート、242…インクジェットヘッド、243…インクジェットモジュール、244…ノズル、410,410A…補正制御部、411…インク付着量計算部、412…ヘッド温度決定部、413…温度制御部、414…読取画像生成部、415…補正データ生成部、416…吐き捨て枚数決定部、420…温度制御部、430…画像記録制御部、441…画像データ記憶部、442…ヘッド温度制御テーブル、443…出力設定記憶部、444…吐き捨て枚数テーブル、A1~A8…分割領域