IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニデックの特許一覧

<>
  • 特許-他覚検眼装置 図1
  • 特許-他覚検眼装置 図2
  • 特許-他覚検眼装置 図3
  • 特許-他覚検眼装置 図4
  • 特許-他覚検眼装置 図5
  • 特許-他覚検眼装置 図6
  • 特許-他覚検眼装置 図7
  • 特許-他覚検眼装置 図8
  • 特許-他覚検眼装置 図9
  • 特許-他覚検眼装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】他覚検眼装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/103 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
A61B3/103
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020036836
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2021137260
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】立花 献
(72)【発明者】
【氏名】水戸 慎也
(72)【発明者】
【氏名】滝井 通浩
【審査官】渡邉 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-038788(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0116500(US,A1)
【文献】特開2019-118501(JP,A)
【文献】特開2019-062981(JP,A)
【文献】特開2018-166650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 ー 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼を他覚的に検査するための他覚検眼装置であって、
前記被検眼に他覚検査を行う他覚検眼手段と、
各々の画素集合単位から、方向毎に異なる光を出射することで、物体が放つ光線を再現するライトフィールドディスプレイを有し、前記他覚検査において前記被検眼を固視させるための固視標を前記ライトフィールドディスプレイによって前記被検眼に投影する固視標投影手段と、
前記ライトフィールドディスプレイの出射する光の方向を制御する制御手段と、を備え
前記制御手段は、前記ライトフィールドディスプレイの出射する光の方向を変化させることで前記固視標の呈示距離を変化させることによって、前記被検眼の調節状態を誘導することを特徴とする他覚検眼装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記調節状態を誘導することによって前記被検眼に雲霧を掛け、
前記他覚検眼手段は、前記被検眼に雲霧が掛けられた状態で前記他覚検査を行うことを特徴とする請求項の他覚検眼装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記固視標の呈示距離を徐々に変化させ、
前記他覚検眼手段は、前記被検眼の調節力を測定することを特徴とする請求項1の他覚検眼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼を他覚的に検査するための他覚検眼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の他覚検眼装置において、被検眼に固視標を投影することによって、検査中に被検眼の視線が維持されるようにしている。また、他覚検眼装置は、固視標の呈示位置を変化させることによって、被検眼の固視を誘導したり、固視標の視度を補正したりしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-147570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の他覚検眼装置では、レンズまたは光源等を駆動部によって光軸方向に移動させることで固視標の呈示位置を変化させていたため、装置が大型になってしまうなど好適とは言えなかった。
【0005】
本開示は、従来の問題点に鑑み、より好適に固視標を呈示できる他覚検眼装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1) 被検眼を他覚的に検査するための他覚検眼装置であって、前記被検眼に他覚検査を行う他覚検眼手段と、各々の画素集合単位から、方向毎に異なる光を出射することで、物体が放つ光線を再現するライトフィールドディスプレイを有し、前記他覚検査において前記被検眼を固視させるための固視標を前記ライトフィールドディスプレイによって前記被検眼に投影する固視標投影手段と、前記ライトフィールドディスプレイの出射する光の方向を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ライトフィールドディスプレイの出射する光の方向を変化させることで前記固視標の呈示距離を変化させることによって、前記被検眼の調節状態を誘導することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、より好適に固視標を呈示できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】他覚検眼装置の外観を示す概略図である。
図2】他覚検眼装置の内部構成を示す概略図である。
図3】LFDの構成を示す概略図である。
図4】LFDの原理について説明するための図である。
図5】他覚検眼装置のフローチャートを示す図である。
図6】雲霧時の固視標の動きを示す模式図である。
図7】調節力測定時の固視標の動きを示す模式図である。
図8】直接力測定時の固視標の見え方を示す図である。
図9】固視標の見え方を示す図である。
図10】固視標の変容例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
以下、本開示の実施形態について説明する。本実施形態の他覚検眼装置(例えば、他覚検眼装置1)は、被検眼を他覚的に検査(観察、撮影または測定など)する。他覚検眼装置は、例えば、眼屈折力測定装置、眼底カメラ、光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)、走査型レーザ検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope:SLO)、角膜内皮細胞撮影装置、角膜形状測定装置、眼圧計、アイポジションメータなどであってもよい。他覚検眼装置は、例えば、他覚検眼部(例えば、他覚検眼部100)と、固視標投影部(例えば、固視標光学系300)と、制御部(例えば、制御部70)を備える。
【0011】
他覚検眼部は、例えば、被検眼に他覚検査を行う。固視標投影部は、他覚検査において被検眼を固視させるための固視標(例えば、固視標350または固視標360)を被検眼に投影する。固視標投影部は、ライトフィールドディスプレイ(Light field display:LFD)を有する。LFD(例えば、LFD310)は、各々の画素集合単位から、方向毎に異なる光を出射することで、物体が放つ光線(例えば、物体によって反射される光線等)を再現することができる。つまり、LFDは、見る位置に応じた物体からの反射光または光源を再現することができる。また、LFDは、被検眼の光学特性(例えば、球面度数、乱視度数、および乱視軸の方向等の少なくともいずれか)に応じて、出力する画像の特徴値(例えば、呈示距離、円柱度数の矯正量、および円柱軸の方向の少なくともいずれか)を適宜設定することも可能である。もちろん、呈示距離は無限遠であってもよい。制御部は、LFDの出射する光の方向を制御する。本実施形態の他覚検眼装置は、上記の構成を備えることによって、より好適に固視標を呈示できる。
【0012】
なお、制御部は、LFDを制御して固視標の呈示距離を変化させることによって、被検眼の調節状態を誘導してもよい。例えば、制御部は、調節状態を誘導することによって、被検眼の調節力等を測定することができる。また、例えば制御部は、調節状態を誘導することによって被検眼に雲霧を掛けてもよい。この場合、他覚検眼部は、被検眼の調節力が働いていない状態で他覚検査(例えば、他覚屈折度数測定)を行うことができる。
【0013】
なお、制御部は、被検眼の視度に応じて、呈示距離を変化させてもよい。例えば、制御部は、被検眼の視度情報を取得し、視度情報に基づいて被検眼に確実に視認される呈示距離で固視標を呈示してもよい。これによって、被検眼にピントの合う固視標を呈示することができる。なお、制御部は、外部の記憶装置、電子カルテシステム等から視度情報を取得してもよいし、視度測定装置(例えば、他覚屈折度数測定装置)などから視度情報を取得してもよい。
【0014】
なお、制御部は、LFDによって固視標を立体的に表示させてもよい。例えば、制御部は、固視標の各部の呈示距離と視差などを連続的に変化させることによって、固視標となる絵またはイメージなどの球面または曲面などを表現してもよい。これによって、制御部は、より自然な見え方の固視標を呈示することができる。
【0015】
なお、制御部は、LFDによって、2つ以上の異なる呈示距離を含む固視標を表示させてもよい。この場合、他覚検眼部は、固視標において被検眼が注視している部分の呈示距離に応じた他覚検査を行ってもよい。例えば、制御部は、被検眼が固視標の遠用部分を注視している状態で遠用屈折度数を測定し、固視標の近用部分を注視している状態で近用屈折度数を測定してもよい。
【0016】
<実施例>
以下、本開示に係る実施例について説明する。図1は他覚検眼装置1の外観構成図である。他覚検眼装置1は、例えば、基台2、顔支持部3、駆動部4、表示部75、操作部76、および他覚検眼部100等を備える。顔支持部3は、基台2に固定され、被検者の顔を支持する。駆動部4は、他覚検眼部100を基台2に対してXYZ方向に駆動させる。表示部75は、各種の情報(例えば、被検眼の観察像、被検眼の測定結果、等)を表示する。操作部76は、各種の設定を行う。本実施例では、タッチパネル付きの表示部75が操作部76を兼用する。他覚検眼部100は、後述する光学系を収納する。なお、本実施例では、図2のように他覚検眼装置1の左右方向をX方向、上下方向をY方向、前後方向をZ方向として表す。
【0017】
図2は他覚検眼装置1の光学系及び制御系の概略構成図である。例えば、他覚検眼部100は、測定光学系200、固視標光学系300、指標投影光学系400、観察光学系500、等を備える。測定光学系200は、被検眼Eの眼屈折力(例えば、球面度数、柱面度数、乱視軸角度、等)を他覚的に測定する。固視標光学系300は、被検眼Eに対して固視標を呈示する。指標投影光学系400は、被検眼EのZ方向を検出するためのアライメント指標を投影する。観察光学系500は、被検眼Eの前眼部を撮像する。
【0018】
<測定光学系>
例えば、測定光学系200は、投光光学系210と、受光光学系220と、を備える。投光光学系210は、被検眼Eにおける瞳孔の中心部を介して、被検眼Eの眼底Efにスポット状の測定光束を投影する。受光光学系220は、眼底Efにより反射された測定光束の反射光束を、瞳孔の周辺部を介してリング状に取り出す。
【0019】
例えば、投光光学系210は、光源211、リレーレンズ212、ホールミラー213、プリズム214、駆動部215、対物レンズ216、等を備える。光源211は、測定光学系200の光軸N1上に配置され、眼底Efと光学的に共役な位置関係となっている。例えば、光源211としては、LED(Light Emitting Diode)、SLD(Superluminescent Diode)、等を用いることができる。ホールミラー213の開口部は、瞳孔と光学的に共役な位置関係となっている。プリズム214は瞳孔と共役な位置から外れた位置に配置され、プリズム214を通過する光束を光軸N1に対して偏心させる。なお、プリズム214に代えて、光軸N1上に平行平面板を斜めに配置してもよい。駆動部215は、光軸N1を中心として、プリズム214を回転駆動させる。
【0020】
測定光源211は、瞳孔を介して眼底Efにスポット状の測定指標を投影するために利用される。光源211は、被検者に眩しさを感じさせにくい赤外域の光を発することが望ましい。但し、必ずしもこれに限られるものではない。また、本実施例において、光源211は、被検眼Eの徹照像を撮影するための照明光源としても用いられる。即ち、光源211から出射された光束(照明光)の眼底反射光によって、被検眼Eの瞳孔内が照明される。
【0021】
例えば、受光光学系220は、対物レンズ216、プリズム214、ホールミラー213、リレーレンズ221、全反射ミラー222、受光絞り223、コリメータレンズ224、リングレンズ225、撮像素子226、等を備える。対物レンズ216、プリズム214、及びホールミラー213は、投光光学系210と共用される。リレーレンズ221及び全反射ミラー222は、ホールミラー213の反射方向に配置される。受光絞り223、コリメータレンズ224、リングレンズ225、及び撮像素子226は、全反射ミラー222の反射方向に配置される。受光絞り223は、眼底Efと光学的に共役な位置関係となっている。リングレンズ225は、瞳孔と光学的に共役な位置関係となっている。例えば、リングレンズ225は、円筒レンズがリング状に形成されたレンズ部と、レンズ部以外に遮光用のコーティングが施された遮光部と、から構成される。撮像素子226は、眼底Efと光学的に共役な位置関係となっている。例えば、撮像素子226としては、CCD(Charged-Coupled Devices)、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)、等を用いることができる。例えば、撮像素子226からの出力信号は、制御部70に入力される。
【0022】
なお、被検眼Eと対物レンズ216との間には、ビームスプリッタ230が配置されている。ビームスプリッタ230は、固視標光学系300からの測定光束を被検眼Eへと導き、被検眼Eの前眼部からの反射光束を観察光学系500へと導く。
【0023】
上記の構成において、光源211から出射された測定光束は、リレーレンズ212、ホールミラー213、プリズム214、対物レンズ216、及びビームスプリッタ230を経て、眼底Ef上にスポット状の測定光束を投影する。これによって、眼底Ef上に点光源像が形成される。このとき、プリズム214が光軸N1周りに回転され、ホールミラー213の開口部の瞳投影像(瞳上での投影光束)は高速に偏心回転される。眼底Efにて測定光束が反射された反射光束は、ビームスプリッタ230、対物レンズ216、及びプリズム214を介して、ホールミラー213に反射される。反射光束は、さらに、リレーレンズ221を介して全反射ミラー222に反射され、受光絞り223の位置に集光する。コリメータレンズ224及びリングレンズ225によって、リング状の像が撮像素子226に結像する。
【0024】
なお、測定光学系200は上記の構成に限らず、被検眼Eの眼底Efに測定光束を投影する投光光学系と、眼底Efにより反射された測定光束の反射光束を受光する受光光学系と、を有する測定光学系であればよい。例えば、測定光学系200は、眼底Efにスポット指標を投影し、シャックハルトマンセンサを用いて、眼底Efにおけるスポット指標の反射光束を検出する測定光学系であってもよい。また、フォトレフラクション方式が用いられてもよい。フォトレフラクション方式は、照明用光源をカメラの光軸上から軸外に外した位置に取り付け、被検眼の瞳孔領内に現れる眼底からの反射光の分布から屈折状態を求めるものである。
【0025】
<固視標光学系>
固視標光学系300は、被検眼Eに固視標を投影する。固視標は、例えば、被検眼Eを測定する際に固視を誘導するために用いられる。固視標光学系300は、ライトフィールドディスプレイ(Light field display:LFD)310を備える。LFDは、固視標を3次元的に表示することができる。
【0026】
LFD310は、各々の画素集合単位(詳細は後述する)から、方向毎に異なる光を出射することで、物体が放つ光線(例えば、物体によって反射される光線等)を再現することができる。つまり、LFD310は、見る位置に応じた物体からの反射光または光源を再現することができる。また、LFD310は、被検眼の光学特性(例えば、球面度数、乱視度数、および乱視軸の方向等の少なくともいずれか)に応じて、出力する画像の特徴値(例えば、被検眼に対する固視標の呈示距離等)を適宜変更することも可能である。
【0027】
詳細は後述するが、LFD310は、被検眼に対する固視標の呈示距離を変更することができる。この場合、被検者は、固視標の呈示位置が、被検眼の遠点から近点までの間に存在する場合に、呈示された固視標を明確に視認することができる。被検眼から遠点までの距離は、被検眼の遠視の焦点距離となる。つまり、被検眼から遠点までの距離は、被検眼からの距離のうち、被検眼が物体(例えば固視標等)を明確に視認可能な最も遠い距離となる。また、被検眼から近点までの距離は、被検眼からの距離のうち、被検眼が物体を明確に視認可能な最も近い距離となる。
【0028】
現在、光線を再現する方式が互いに異なる複数種類のLFDが提案されている。LFDの方式には、例えば、微小素子アレイ方式、複数ディスプレイ方式、およびバリア基盤方式等がある。
【0029】
微小素子アレイ方式のLFDは、画像源(例えばディスプレイ等)の正面側(画像を視認するユーザ側)に微小素子アレイを備える。微小素子アレイとは、複数の画素集合単位の各々に対応して設けられる複数の微小素子が、二次元上に並べて(例えば格子状に)配置された光学部材である。微小素子アレイには、例えば、複数のマイクロレンズを備えるマイクロレンズアレイ、複数のマイクロホールを備えるマイクロホールアレイ、複数の回折素子を備える回折素子アレイ、複数の偏光素子を備える偏光素子アレイ、および、複数の屈折素子を備える屈折素子アレイ等の少なくともいずれかを採用できる。
【0030】
また、複数ディスプレイ方式のLFDでは、複数のディスプレイがスタック状に組み合わされている。複数ディスプレイ方式のLFDには、例えばテンソルディスプレイ等がある。バリア基盤方式のLFDでは、細かいスリットが形成されたバリア基盤が、画像源(例えばディスプレイ等)の背面側(画像を視認するユーザ側の反対側)に設けられている。なお、LFDの構成は、画素からの光を被検眼に向けて出射する構成でもよいし、スクリーンに画素を投影する構成でもよい。また、LFDは、光を走査させることで画像を出力してもよい。
【0031】
他覚検眼装置1には、いずれの方式のLFDを採用することも可能である。本実施例では、マイクロレンズアレイを備えた微小素子アレイ方式のLFD310を採用する場合を例示して説明を行う。図3に示すように、本実施例のLFD310は、画像源311、バックライト312、および微小素子アレイ313を備える。なお、図3では、LFD310の構成の理解を容易にするために、画像源311、バックライト312、および微小素子アレイ313の各々が分解された状態が示されている。
【0032】
画像源311は、画像を視認するユーザ(本実施例では被検者)の視線方向に交差する二次元の方向(つまり、ディスプレイの表示面に平行な二次元方向)に並べられた複数の画素を有する。一例として、本実施例の画像源311には、多数の画素を備えた(つまり、高解像度の)ディスプレイが使用されている。しかし、ディスプレイ以外の画像源が使用されてもよい。例えば、物体が放つ光線を再現するための所定の画像が印刷された印刷媒体(紙等)が、画像源311として使用されてもよい。この場合、印刷媒体が交換されることで、LFD310によって出力(呈示)される画像が変更されてもよい。
【0033】
バックライト312は、画像源311の背面側に設けられており、画像源311を背面側から照明する。なお、画像源311自体が十分な強さで発光可能な場合等には、バックライト312を省略することも可能である。
【0034】
微小素子アレイ(本実施形態ではマイクロレンズアレイ)313は、複数の微小素子313(本実施形態ではマイクロレンズ)を備える。複数の微小素子313は、二次元上に並べて(本実施形態では格子状に)配置されている。各々の微小素子313には、画像源311における複数の画素に対応する。詳細には、画像源311のうち、各々の微小素子313の領域を背面側に投影した領域内に配置された複数の画素が、1つの画素集合単位311aとなる。画素集合単位311a内の画素から出射される光は、画素集合単位311aに対応する微小素子313(つまり、画素集合単位311aの正面側に配置された微小素子313)を通過して、正面側に出射される。
【0035】
ここで、図4を参照して、被検眼に対する固視標の呈示距離を変更する方法の一例について説明する。図4は、被検眼に対する固視標の呈示距離(本実施形態では、LFD310から画像の呈示位置までの距離)をLFD310が変更した場合の一部の光線の状態を、模式的に示す図である。図4(a)は、固視標の呈示位置(つまり、結像面の位置)を、図4(b)の呈示位置PP2比べて被検眼の位置EPに近い位置PP1とした場合の、光線の状態の一例である。
【0036】
図4(a)、(b)に示すように、LFD310は、被検眼に対する固視標の呈示位置を、前後方向(図4における左右方向)に変化させることができる。一例として、本実施例のLFD310は、各々の画素集合単位311aのうち、発光させる画素の集合の数を変化させることで、固視標の呈示位置(つまり、固視標の結像面の位置)を変化させることができる。また、LFD310は、各々の画素集合単位311aのうち、発光させる画素の位置を変えることで、画角(つまり、被検眼に対する固視標の呈示方向)を変更することも可能である。
【0037】
なお、被検眼に対する固視標の呈示距離を変更するための具体的な方法は、適宜選択されればよい。例えば、図4(a)、(b)に示す例では、変更される呈示距離に関わらず、各々の画素集合単位311a(つまり、各々のマイクロレンズ31)から固視標用の光線が出射される。しかし、LFD310は、各々の呈示距離毎に、光線を出射させる画素集合単位311aを区別してもよい。また、LED2は、画像の表示面(本実施例ではマイクロレンズアレイ313)とユーザの間に、各々の画素集合単位311aから出射される複数の光線がいずれも通過する光学素子(例えばレンズ等)を備えていてもよい。
【0038】
<指標投影光学系>
指標投影光学系400は、第1指標投影光学系と、第2指標投影光学系と、を備える。第1指標投影光学系は、被検眼Eの角膜に無限遠のアライメント指標を投影する。第2指標投影光学系は、被検眼Eの角膜に有限遠のアライメント指標を投影する。
【0039】
例えば、第1指標投影光学系は、点光源401a及び401b、コリメータレンズ402a及び402b、等を有する。なお、便宜上、図2では第1指標投影光学系の一部のみを図示している。点光源401a及び401bは、近赤外光を発する光源であってもよい。コリメータレンズ402a及び402bは、点光源から発せられた光束を平行光束(略平行光束)にする。これらの点光源及びコリメータレンズは、光軸N1を中心とした同心円上に45度間隔で複数個が配置され、光軸N1を通る垂直平面を挟んで左右対称となっている。これによって、被検眼Eの角膜に無限遠のアライメント指標が投影される。
【0040】
例えば、第2指標投影光学系は、点光源403a及び403bを有する。なお、便宜上、図2では第2指標投影光学系の一部のみを図示している。点光源403a及び403bは、近赤外光を発する光源であってもよい。例えば、これらの点光源は、第1指標投影光学系が有する点光源とは異なる位置に配置される。これによって、被検眼Eに有限遠のアライメント指標が投影される。
【0041】
なお、本実施例においては、第1指標投影光学系及び第2指標投影光学系の光源として点状の光源を用いる構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、光源はリング状の光源やライン状の光源を用いるようにしてもよい。また、第2指標投影光学系は、被検眼Eの前眼部を照明する前眼部照明、被検眼Eの角膜形状を測定する指標、等としても用いることができる。
【0042】
<観察光学系>
例えば、観察光学系500は、対物レンズ306、ハーフミラー305、撮像レンズ501、撮像素子502、等を備える。対物レンズ306及びハーフミラー305は、固視標光学系300と共用される。撮像レンズ501及び撮像素子502は、ハーフミラー305の反射方向に配置される。撮像素子502は、被検眼Eの前眼部と光学的に共役な位置関係となっている。この撮像素子502によって、被検眼Eの前眼部の正面画像が撮像される。前眼部画像の一種である徹照像も、撮像素子502によって撮像される。例えば、撮像素子502からの出力は、制御部70及び表示部75に入力される。なお、観察光学系500は、指標投影光学系400によって被検眼Eの角膜に形成されたアライメント指標像を検出する光学系を兼ね、制御部70によってアライメント指標像の位置を検出する。
【0043】
<制御部>
例えば、制御部70は、CPU(プロセッサ)71、不揮発性メモリ(Non-volatile memory:NVM)72等を備える。CPU71は、他覚検眼装置1の制御(例えば、LFD310による固視標の出力制御等)を司る。NVM72は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、および着脱可能なUSBメモリ等を不揮発性メモリ72として使用してもよい。本実施例では、後述する屈折度数測定処理(図5参照)を実行するための屈折度数測定処理プログラム等のCPU71が実行する各種プログラムが、NVM72に記憶される。
【0044】
制御部70には、駆動部4、表示部75(操作部76)等が電気的に接続される。また、制御部70には、他覚検眼部100が備える各光源、各撮像素子、各駆動部等が電気的に接続される。
【0045】
<屈折力測定>
続いて、本実施例の他覚検眼装置1を用いて被検眼の屈折度数を測定するときの制御動作を図5に基づいて説明する。
【0046】
(ステップS1:アライメント)
まず、制御部70は、被検眼に対する装置のアライメントを行う。例えば、制御部70は、指標投影光学系400が備える点光源を点灯させる。これによって、被検眼Eの角膜にアライメント指標像が投影される。検者は、顔支持部3に顔を固定させて、固視標光学系300によって投影された固視標を観察するよう被検者に指示する。被検眼Eの前眼部には、無限遠と有限遠のアライメント指標像が投影される。被検眼Eの前眼部は、観察光学系500が備える撮像素子502により検出され、前眼部画像が表示部75に表示される。制御部70は、前眼部画像から検出されたアライメント指標の位置関係に基づいて、被検眼Eに対する他覚検眼部100のアライメントのずれ量を検出する。制御部70は、検出したずれ量に基づいて駆動部4を制御し、他覚検眼部100を3次元的に駆動させて被検眼Eに対するアライメントを行う。もちろん、検者が操作部76を操作することによって、手動でアライメントを行ってもよい。
【0047】
(ステップS2:予備測定)
アライメントが完了すると、制御部70は、予備測定を開始する。図6(a)に示すように、LFDの3次元的な表示可能領域を空間Fとすると、制御部70は、予備測定において、被検眼Eに対して光学的に十分な遠方の初期位置d1に固視標350を呈示する。例えば、被検眼Eが近視眼であると、被検眼Eの焦点は固視標350に合わず、固視標350がぼやけて観察される。制御部70は、光源211から測定光束を照射させ、測定光束の反射光束をリング像として撮像素子226に撮像させる。撮像素子226によって撮影されたリング像は、例えば、NVM72に記憶される。制御部70は、NVM72に記憶されたリング像を細線化して各経線方向における眼屈折力を求める。そして、この眼屈折力に対して所定の処理を行い、被検眼Eの球面屈折度数(予備測定における球面屈折度数)を取得する。制御部70は、予備測定を終了する。
【0048】
(ステップS3:雲霧)
続いて、制御部70は、被検眼Eに対して雲霧を行う。まず、制御部70は、LFD310を制御し、予備測定で得られた被検眼Eの球面屈折度数に応じて、被検眼Eの焦点が合う雲霧開始位置d2に、固視標350を移動させる(図6(b)参照)。これによって、被検眼Eには固視標350がはっきりと観察されるようになる。
【0049】
なお、被検眼Eの予備測定の球面屈折度数は、被検眼Eに調節が働いた状態で得られた結果である可能性がある。すなわち、被検眼Eの予備測定での球面屈折度数は、被検眼Eが水晶体の厚み(つまり、水晶体の屈折力)を変化させた状態で得られた結果である可能性がある。このため、制御部70は、被検眼Eに対して雲霧を付加し、被検眼Eの調節を解除させる。例えば、制御部70は、固視標350を、所定の雲霧量Δdに相当する雲霧完了位置d3まで移動させる(図6(c)参照)。このとき、固視標350は、雲霧開始位置d2から雲霧完了位置d3に向けて移動される。固視標350が雲霧完了位置d3に到達すると、被検眼Eに対する雲霧の付加が完了する。
【0050】
これによって、被検眼Eに雲霧が付加され、被検眼Eの焦点は再び固視標350に合わなくなる。例えば、被検眼Eの球面屈折度数は、予備測定にて得られた球面屈折度数から真値へと近づき、被検眼Eの調節が徐々に解除される。
【0051】
(ステップS4:本測定)
制御部70は、被検眼Eに雲霧を付加した状態で、本測定を開始する。例えば、制御部70は、所定のタイミング毎にリング像を撮像して解析し、被検眼Eの球面屈折度数(本測定における球面屈折度数)を取得する。もちろん、被検眼Eの円柱屈折度数や乱視軸角度をともに取得してもよい。制御部70は、本測定の球面屈折度数(及び、円柱屈折度数、乱視軸角度、等)をNVM72に記憶させ、モニタ75に表示させる。
【0052】
以上のように、本実施例の他覚検眼装置は、固視標光学系300に設けたLFDの表示を制御することによって固視標の呈示距離を変更するため、固視標を前後に移動させるための駆動部を設ける必要がない。したがって、装置を小型化または軽量化することができる。
【0053】
なお、本実施例の他覚検眼装置1は、被検眼Eの調節力測定(アコモデーション測定)を行ってもよい。調節力測定は、例えば、固視標350を被検眼Eに徐々に接近させながら、被検眼Eの屈折力を継続的に測定するものである。調節力測定を行う場合、制御部70は、固視標350における注視部分351と背景部分352とを異なる深さ(呈示距離)で表示させることによって、注視部分351と背景部分352とで視度差をつけてもよい。例えば、制御部70は、調節力測定を開始する際、まず固視標350を初期位置d4に呈示させる(図7(a)参照)。そして、制御部70は、背景部分352の呈示位置を維持した状態で、注視部分351だけを被検眼Eに向けて近づけてもよい。例えば、図7(b)のように、制御部70は、背景部分352を初期位置d4に表示させた状態で、注視部分351だけを呈示位置d5へ徐々に移動させてもよい。この場合、調節力の高い被検者は、図8(a)のように、近づく注視部分351がはっきりと見え、近づかない背景部分352がぼやけて見える。このように、本実施例の他覚検眼装置1は、現実感のある固視標350の呈示状態で調節力測定を行うことができる。また、老眼などで調節力の低い被検者は、図8(b)のように、近づく固視部分351がぼやけて見え、近づかない背景部分352がはっきりと見えるだけとなる。これによって、被検者は、眼のかすみなどで全体的に固視標350が見えなくなったのではなく、調節力の低下によって固視標350が見えなくなったことを自覚できる。
【0054】
なお、固視標350を被検眼Eに近づける際に、固視標350が近づくほど固視標350を立体的に表示してもよい。例えば、固視標350の部位に応じて表示する深さ(Z方向の呈示位置)と視差を連続的に変化させることで、固視標となる絵またはイメージなどの球面または曲面などを表現してもよい。例えば、図6のように固視標350が気球の絵である場合、気球が球体に見えるように気球の中央部を周辺部に対して手前(被検眼側)に表示させてもよい。これによって、実際のものの見え方と同じような自然な見え方の固視標を呈示することができ、自然視に近い状態で被検眼Eの検査を行うことができる。
【0055】
なお、調節力測定に限らず、固視標の部分毎に視度差をつけてもよい。つまり、固視標の上下左右方向(XY方向)の位置に応じて視度差をつけてもよい。例えば、図9に示すように、制御部70は、被検眼Eから見て手前に近用の固視標(例えば、新聞)361を表示させ、奥に遠用の固視標(例えば、山)362を表示させてもよい。このように、制御部70は、LFD310によって近用の固視標361と遠用の固視標362を異なる深さで同時に呈示することによって、固視標361を見たときの近方視状態と、固視標362を見たときの遠方視状態とを被検者自身が視線を移すことによって能動的に切り換えることができる。これによって、固視標360の呈示位置を移動させることなく、近方視状態と遠方視状態とを自然に切り換えた状態で検査を行うことができる。
【0056】
なお、制御部70は、固視標350を複数の呈示距離で略同時に表示させるようにしてもよい。例えば、制御部70は、図10に示すように、深さd6,d7,d8の位置に固視標350を略同時に呈示してもよい。この場合、制御部70は、LFD310の表示を高速で切り換えることによって、複数の呈示距離で略同時に固視標350が見えるようにしてもよい。このように、固視標350の呈示位置に深さ方向の幅を持たせることによって、被検者の視度に関係なく、固視標350をしっかりと視認させることができる。また、被検者自身で検査を行うセルフ検眼の場合であっても、被検者は適正な作動距離に位置合わせする前から固視標350にピントを合わせることができ、位置合わせをスムーズに行える。
【0057】
なお、以上の実施例において、被検眼Eと他覚検眼部100との間の距離(作動距離)を検出する作動距離検出部を備えてもよい。作動距離検出部は、例えば、光学的に距離を検出するセンサであってもよいし、超音波測距センサであってもよいし、どのような方式のセンサが用いられてもよい。制御部70は、作動距離検出部によって検出された作動距離に応じてLFDを制御してもよい。例えば、制御部70は、検出された作動距離に応じて、固視標350の呈示距離を変化させてもよい。例えば、制御部70は、作動距離が離れている場合に呈示距離を短くして固視標を被検眼Eに近づけ、作動距離が近すぎる場合に呈示距離を長くして固視標を被検眼Eから遠ざけるようにしてもよい。
【0058】
なお、他覚検眼部100は、測定光学系210を光軸方向に駆動させる駆動部230を備えてもよい(図2参照)。例えば、制御部70は、駆動部230を制御することによって、予備測定、雲霧などに合わせて測定光学系210を光軸方向に駆動させてもよい。この場合、制御部70は、測定光学系210の駆動とLFD310の制御を連動させてもよい。
【0059】
なお、以上の実施例において、他覚検眼装置1は片眼ずつ測定を行う装置であったが、両眼の測定を同時に行えるものであってもよい。例えば、他覚検眼装置1は、右眼用の測定光学系と左眼用の測定光学系を備えてもよい。この場合、調節力測定などで固視標の注視点と背景とで左右眼に視差を付けて呈示してもよい。これによって、より現実に近い見え方で固視標を呈示することができる。
【0060】
なお、他覚屈折度数を測定する装置に限らず、OCT、SLOまたは眼底カメラなどのその他の他覚検眼装置であっても、LFDによって固視標の呈示位置を変更してもよい。例えば、制御部70は、被検者の視度に応じて、LFDによって固視標の視度を補正してもよい。これによって、固視標光学系に視度補正用の駆動部やレンズを設ける必要がなくなる。制御部70は、外部の記憶装置、電子カルテシステム、視度測定装置などから被検者の視度情報を取得してもよい。
【0061】
なお、以上の実施例では、据え置き型の他覚検眼装置1を例として説明したが、手持ち型の他覚検眼装置の固視標光学系にLFDを備える構成としてもよい。これによって、固視標の呈示距離を変更するための駆動部が不要となり、小型および軽量で手持ち型に適した他覚検眼装置を実現できる。
【0062】
なお、本開示は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上述した実施例の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
70 制御部
72 NVM
75 表示部
76 操作部
100 他覚検眼部
200 測定光学系
300 固視標光学系
310 LFD
400 指標投影光学系
500 観察光学系
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10