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特許7484232偏光状態変化の監視方法、装置、及び受信機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】偏光状態変化の監視方法、装置、及び受信機
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/075 20130101AFI20240509BHJP
   H04B 10/61 20130101ALI20240509BHJP
【FI】
H04B10/075
H04B10/61
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020037105
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2020150540
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】201910183830.5
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】スゥ・シアオフェイ
(72)【発明者】
【氏名】タオ・ジェヌニン
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-152556(JP,A)
【文献】特表2017-516378(JP,A)
【文献】国際公開第2017/077802(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0341587(US,A1)
【文献】特表2015-518329(JP,A)
【文献】国際公開第2013/084367(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/075
H04B 10/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光状態変化の監視装置であって、
受信機の等化フィルタタップ係数の行列を抽出する抽出手段であって、前記等化フィルタタップ係数の行列は、時間領域においてジョーンズ行列である、抽出手段と、
前記等化フィルタタップ係数の行列の各径路の等化フィルタタップ係数に対してN個のタップのFFT演算を行い、変換後の行列を取得するFFT手段であって、前記変換後の行列の各径路の等化フィルタタップ係数の和は非ゼロ周波数の値である、FFT手段と、
前記変換後の行列の少なくとも1つの経路の等化フィルタタップ係数を用いて偏光状態の変化量を推定する推定手段と、を含む、装置。
【請求項2】
前記変換後の行列の各径路の等化フィルタタップ係数の和は、ゼロ周波数に最も近い周波数点の値である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記変換後の行列の各径路の等化フィルタタップ係数の和の周波数は、信号帯域幅範囲内にある、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
FFT演算を行うタップの数Nは、2の整数乗冪である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
Nは8である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記推定手段は、
前記変換後の行列の少なくとも1つの偏光状態の等化フィルタタップ係数をジョーンズ行列からストークスベクトルの表現に変換する変換手段と、
時間間隔Tでの前記等化フィルタタップ係数のストークスベクトルの変化量を計算する第1計算手段と、
前記ストークスベクトルの変化量に基づいて、時間間隔Tでの偏光状態の変化量を計算する第2計算手段と、を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの偏光状態は、H偏光状態、又はV偏光状態、又はH偏光状態及びV偏光状態である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記推定手段は、
時間間隔Tでの前記変換後の行列の変化量を計算する第3計算手段と、
前記変化量に対して正規化処理を行い、正規化処理後の変化量を取得する正規化手段と、
前記正規化処理後の変化量のうちの少なくとも1つの値を用いて、時間間隔Tでの偏光状態の変化量を計算する第4計算手段と、を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記第4計算手段は、前記正規化処理後の変化量のうちの1行目1列目の値を用いて、時間間隔Tでの偏光状態の変化量を計算する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
偏光状態変化の監視方法であって、
受信機の等化フィルタタップ係数の行列を抽出するステップであって、前記等化フィルタタップ係数の行列は、時間領域においてジョーンズ行列である、ステップと、
前記等化フィルタタップ係数の行列の各径路の等化フィルタタップ係数に対してN個のタップのFFT演算を行い、変換後の行列を取得するステップであって、前記変換後の行列の各径路の等化フィルタタップ係数の和は非ゼロ周波数の値である、ステップと、
前記変換後の行列の少なくとも1つの経路の等化フィルタタップ係数を用いて偏光状態の変化量を推定するステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信の分野に関し、特に偏光状態変化の監視方法、装置、及び受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
動的光ネットワークは、高感度、動的に制御可能なルーティング、柔軟に可変な容量などの利点を有するため、通信伝送ネットワークで重要な位置を占めている。光性能の検出は、動的光ネットワークに不可欠な技術であり、光通信システムをリアルタイムで監視、制御して最適な状態で動作させるために、様々な光通信システムパラメータの変化を効果的に監視することができる。
【0003】
光の偏光状態の変化を監視することにより、ファイバの曲げ、ジッタ、ヒットなどのリスクイベントを効果的に発見、区別することができる。
【0004】
なお、上述した背景技術の説明は、本発明の技術案を明確、完全に理解させるための説明であり、当業者を理解させるために記述されているものである。これらの技術案は、単なる本発明の背景技術部分として説明されたものであり、当業者により周知されたものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
偏光状態の監視では、現在、関連する解決策があり、例えば2×2 CMA(Constant Modulus Algorithm:コンスタントモジュラスアルゴリズム)フィルタの等化係数に基づいて偏光状態の回転速度を計算する。しかし、本発明の発明者の発見によると、このような方法は、周波数領域における0Hzでの等化フィルタ係数を用いるため、送信機の直流、位相の不均衡、振幅の不均衡などの送信機の非理想的な状況の影響を受けることにより、監視された偏光状態の変化量に誤差が存在する。
【0006】
上記の問題又は他の同様な問題を解決するために、本発明の実施例は、偏光状態変化の監視方法、装置、及び受信機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施例の第1態様では、偏光状態変化の監視方法であって、受信機の等化フィルタタップ係数の行列を抽出するステップと、前記等化フィルタタップ係数の行列の各径路の等化フィルタタップ係数に対してN個のタップのFFT演算を行い、変換後の行列を取得するステップであって、前記変換後の行列の各径路の等化フィルタタップ係数の和は非ゼロ周波数の値である、ステップと、前記変換後の行列の少なくとも1つの経路の等化フィルタタップ係数を用いて偏光状態の変化量を推定するステップと、を含む、方法を提供する。
【0008】
本発明の実施例の第2態様では、偏光状態変化の監視装置であって、受信機の等化フィルタタップ係数の行列を抽出する抽出手段と、前記等化フィルタタップ係数の行列の各径路の等化フィルタタップ係数に対してN個のタップのFFT演算を行い、変換後の行列を取得するFFT手段であって、前記変換後の行列の各径路の等化フィルタタップ係数の和は非ゼロ周波数の値である、FFT手段と、前記変換後の行列の少なくとも1つの経路の等化フィルタタップ係数を用いて偏光状態の変化量を推定する推定手段と、を含む、装置を提供する。
【0009】
本発明の実施例の第3態様では、本発明の実施例の第2態様に記載の装置を含む受信機を提供する。
【0010】
本発明の実施例の第4態様では、コンピュータ読み取り可能なプログラムであって、受信機において前記プログラムが実行される際に、前記受信機に上記の第1態様に記載の方法を実行させる、プログラムを提供する。
【0011】
本発明の実施例の第5態様では、コンピュータ読み取り可能なプログラムが記憶されている記憶媒体であって、前記コンピュータ読み取り可能なプログラムが受信機に上記の第2態様に記載の方法を実行させる、記憶媒体を提供する。
【0012】
本発明の有利な効果は以下の通りである。各径路の等化フィルタタップ係数に対してN個のタップの高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)演算を行い、タップ係数の和を周波数領域でゼロ周波数から高周波数(非ゼロ周波数)にシフトすることで、偏光状態変化の監視結果への送信機の非理想的な状況の影響を回避することができる。
【0013】
本発明の特定の実施形態は、後述の説明及び図面に示すように、詳細に開示され、本発明の原理を採用されることが可能な方式を示している。なお、本発明の実施形態は、範囲上には限定されるものではない。本発明の実施形態は、添付されている特許請求の範囲の主旨及び内容の範囲内、各種の改変、修正、及び均等的なものが含まれる。
【0014】
ある一つの実施形態に説明及び又は示されている特徴は、同一又は類似の方式で一つ又は多くの他の実施形態に使用されてもよく、他の実施形態における特徴と組み合わせてもよく、他の実施形態における特徴を代替してもよい。
【0015】
なお、用語「含む/有する」は、本文に使用される際に、特徴、要素、ステップ又は構成要件の存在を意味し、一つ又は複数の他の特徴、要素、ステップ又は構成要件の存在又は追加を排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の実施例の図面又は実施形態に説明されている要素及び特徴は、1つ又は複数の他の図面又は実施形態に示す要素及び特徴と組み合わせてもよい。図面において、類似する符号は複数の図面における対応する構成部を表し、複数の態様に用いられる対応構成部を表してもよい。
【0017】
ここで含まれる図面は、本発明の実施例を理解させるためのものであり、本明細書の一部を構成し、本発明の実施例を例示するためのものであり、文言の記載と合わせて本発明の原理を説明する。なお、ここに説明される図面は、単なる本発明の実施例を説明するためのものであり、当業者にとって、これらの図面に基づいて他の図面を容易に得ることができる。
図1】典型的な偏光多重化デジタルコヒーレント受信機の概略図である。
図2】実施例1の偏光状態変化の監視方法の概略図である。
図3】偏光状態変化量の推定プロセスの1つの概略図である。
図4】偏光状態変化量の推定プロセスのもう1つの概略図である。
図5】偏光状態変化量の推定プロセスのさらにもう1つの概略図である。
図6】実施例2の偏光状態変化の監視装置の概略図である。
図7】偏光状態変化の監視装置の推定部の1つの概略図である。
図8】偏光状態変化の監視装置の推定部のもう1つの概略図である。
図9】実施例3の受信機の1つの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の上記及びその他の特徴は、図面及び下記の説明により明確になる。明細書及び図面では、本発明の特定の実施形態、即ち本発明の原則に従う一部の実施形態を表すものを公開している。なお、本発明は説明される実施形態に限定されず、本発明は、特許請求の範囲内の全ての修正、変更されたもの、及び均等なものを含む。
【0019】
本発明の実施例では、用語「第1」、「第2」は異なる要素を名称で区分するためのものであり、これらの要素の空間的配列又は時間的順序などを意味するものではなく、これらの要素はこれらの用語に限定されない。用語「及び/又は」は列挙された用語の1つ又は複数のうち何れか及びその組み合わせを含む。用語「包括」、「含む」、「有する」は説明された特徴、要素、素子又は部材の存在を意味するが、他の1つ又は複数の特徴、要素、素子又は部材の存在又は追加を排除するものではない。
【0020】
本発明の実施例では、単数形の「一」、「該」等は複数形を含み、「一種」又は「一類」を意味し、「1つ」に限定するものではない。また、用語「前記」は、文脈上明確に指示されない限り、単数形及び複数形両方を含む。また、文脈上明確に指示されない限り、用語「応じて」は「少なくとも部分的に応じて」を意味し、用語「に基づいて」は「少なくとも部分的に基づいて」を意味する。
【0021】
図1は典型的な偏光多重化デジタルコヒーレント受信機の概略図である。図1に示すように、whh、wvh、whv、wvvは、4つの経路の線形等化フィルタ100のタップ係数である。本実施例では、バタフライ構造を有する有限インパルス応答(FIR:Finite Impulse Response)線形フィルタを等化フィルタ100として用いてもよい。本実施例は具体的な等化アルゴリズムに限定されず、例えばコンスタントモジュラスアルゴリズム(CMA:Constant Modulus Algorithm)、最小二乗誤差推定、最小平均二乗誤差(MMSE:Minimum Mean Square Error)推定、最良線形不偏推定(BLUE:Best Linear Unbiased Estimation)、又は他の等化アルゴリズムを用いてもよい。
【0022】
本実施例では、図1に示すように、該等化フィルタ100の構造は、2×2の多入力多出力(MIMO:Multiple Input Multiple Output)構造、即ち、
(外1)
であるが、本実施例は等化フィルタの構造に限定されず、2×4のMIMO構造
(外2)
又は4×4のMIMO構造
(外3)

を用いてもよく、それを2×2のMIMO構造
(外4)
に変換すればよい。
【0023】
以下は、図面を参照しながら本発明の実施例の各態様を説明する。
【0024】
<実施例1>
本実施例は、偏光状態変化の監視方法を提供する。
【0025】
図2は本実施例の偏光状態変化の監視方法の概略図であり、図2に示すように、該方法は以下のステップを含む。
【0026】
ステップ201:受信機の等化フィルタタップ係数の行列を抽出する。
【0027】
ステップ202:該等化フィルタタップ係数の行列の各径路の等化フィルタタップ係数に対してN個のタップのFFT演算を行い、変換後の行列を取得する。ここで、該変換後の行列の各径路の等化フィルタタップ係数の和は非ゼロ周波数の値である。
【0028】
ステップ203:該変換後の行列の少なくとも1つの経路の等化フィルタタップ係数を用いて偏光状態の変化量を推定する。
【0029】
受信機では、図1に示すように、等化フィルタタップ係数の時間領域でのジョーンズ行列は
(外5)
である。従来技術では、各径路のタップ係数は時間領域で加算され、例えばタップ数M=17の場合、加算後の結果は
【数1】
である。
【0030】
このような方法のタップ係数の和が周波数領域で0Hz(ゼロ周波数)に位置し、送信機の非理想的な状況も0GHzに発生するため、偏光状態変化の推定値は受信機の非理想的な状況の影響を受ける。
【0031】
本実施例では、各径路の等化フィルタタップ係数に対してN個のタップのFFT演算を行い、タップ係数の和を周波数領域でゼロ周波数から高周波数(非ゼロ周波数)にシフトすることで、偏光状態変化の監視結果への送信機の非理想的な状況の影響を回避することができる。
【0032】
例えば、サンプリングレートが84Gサンプル/秒、N=8、周波数間隔が84e9/8=10.5GHzであると仮定すると、タップ係数の和は0Hzから10.5GHzにシフトし、0Hzでの送信機の非理想的な状況の偏光状態変化の推定量への影響を回避した。
【0033】
本実施例のステップ201では、上記の受信機の等化フィルタタップ係数の行列は、時間領域におけるジョーンズ行列であり、例えば
(外6)
であり、本実施例は該行列の取得方法に限定されない。
【0034】
本実施例のステップ202では、等化フィルタのタップ数がMであると仮定すると、ステップ201において取得された該等化フィルタタップ係数の行列の各径路の等化フィルタタップ係数に対してN個のタップのFFT演算を行い、変換後の行列を取得する。
【数2】
【0035】

本実施例では、該変換後の行列の各径路の等化フィルタタップ係数の和(時間領域での加算結果)は、非ゼロ周波数の値である(周波数領域では0Hzではない)。これによって、0Hzでの送信機の非理想的な状況の偏光状態変化の推定量への影響を回避することができる。
【0036】
例えば、等化フィルタのタップ数M=17となり、FFT演算を行うタップの数N=8であると仮定すると、加算後の結果(即ち変換後の行列)は以下のようになる。
【数3】
【0037】
本実施例では、上記の変換後の行列の各径路の等化フィルタタップ係数の和は、ゼロ周波数に最も近い周波数点の値、例えば0Hz近傍の左側又は右側の値であってもよいが、本実施例はこれに限定されず、上記の変換後の行列の各径路の等化フィルタタップ係数の和は、ゼロ周波数に最も近い2つの周波数点の値であってもよい。また、偏光状態変化の監視の信号対雑音比を向上させるために、上記の変換後の行列の各径路の等化フィルタタップ係数の和の周波数は、信号帯域幅範囲内にある必要がある。
【0038】
本実施例では、FFT演算を行うタップの数(FFTタップ数とも称される)Nは、2の整数乗冪であってもよい。これによって、高速計算を実現し、複雑さを低減することができる。例えば、該FFTタップ数Nは8であってもよい。これによって、iの値に関わらず、
(外7)
は常に
(外8)
のうちの1つであるため、
(外9)
と他の数との乗算演算は常に論理演算及び加算/減算で実現することができるため、計算の複雑さを大幅に低減することができる。
【0039】
本実施例のステップ203では、上記の変換後の行列の少なくとも1つの経路の等化フィルタタップ係数を用いて偏光状態の変化量を推定してもよい。
【0040】
一例では、上記の変換後の行列の少なくとも1つの偏光状態の等化フィルタタップ係数をジョーンズ行列
(外10)
からストークスベクトル(S、S、S及びS)の表現に変換し、時間間隔(T)での前記等化フィルタタップ係数のストークスベクトルの変化量(ΔS)を計算し、該ストークスベクトルの変化量に基づいて、この時間間隔(T)での偏光状態の変化量(ΔSOP)を計算してもよい。
【0041】
図3は、H偏光状態のストークスベクトルの変化量を用いて時間間隔Tの偏光状態の変化量を計算することの例を示し、図4は、V偏光状態のストークスベクトルの変化量を用いて時間間隔Tの偏光状態の変化量を計算することの例を示している。
【0042】
この例では、M=17、N=8と仮定すると、変換後の行列の4つの経路の等化フィルタタップ係数の和は、それぞれ以下のようになる。
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【0043】
この例では、そのうちのH偏光状態のタップ係数をジョーンズ行列からストークスベクトル表現に変換してもよく、図3に示すように、変換後のストークスベクトルは、それぞれ以下のように表される。
【数8】
【数9】
【数10】
【数11】
【0044】
時間間隔TでのH偏光状態のタップ係数のストークスベクトル変換量(
(外11)
)を算出することにより、時間間隔Tでの偏光状態変化量(
(外12)
)を取得する。ここで、i=1,2,3となる。
【0045】
或いは、この例では、そのうちのV偏光状態のタップ係数をジョーンズ行列からストークスベクトル表現に変換してもよく、図4に示すように、変換後のストークスベクトルは、それぞれ以下のように表される。
【数12】
【数13】
【数14】
【数15】
【0046】
時間間隔TでのV偏光状態のタップ係数のストークスベクトル変換量(
(外13)
)を算出することにより、時間間隔Tでの偏光状態変化量(
(外14)
)を取得する。ここで、i=1,2,3となる。
【0047】
この例では、H偏光状態又はV偏光状態のストークスベクトルのみを用いて偏光状態の変化量を計算することを一例にして説明しているが、本実施例はこれに限定されず、H偏光状態のストークスベクトル及びV偏光状態のストークスベクトルの両方を用いて偏光状態の変化量を計算してもよい。例えば、各偏光状態のストークスベクトルを用いて算出された偏光状態の変化量の平均値を計算して偏光状態の変化量の結果を取得してもよいが、本実施例はこれに限定されない。
【0048】
もう1つの例では、時間間隔Tでの変換後の行列の変化量(DW)を計算し、該変化量(DW)に対して正規化処理を行い、正規化処理後の変化量(DW’)を取得し、該正規化処理後の変化量(DW’)のうちの少なくとも1つの値を用いて、この時間間隔Tでの偏光状態の変化量(ΔSOP)を計算してもよい。
【0049】
図5は、正規化後の変化量(DW’)のうちの1つの値DW’1,1を用いてこの時間間隔Tでの偏光状態の変化量を計算することの例を示している。
【0050】
この例では、同様にM=17、N=8と仮定すると、変換後の行列の4つの経路の等化フィルタタップ係数の和は、それぞれ以下のようになる。
【数16】
【数17】
【数18】
【数19】
【0051】
この例では、時間間隔Tでの変換後の行列Wの変化量DWを計算してもよい。
【数20】
【数21】
【0052】
次に、変化量DWに対して正規化処理を行い、正規化処理後の変化量DW’を取得する。
【数22】
【0053】
ここで、DW及びDW’は何れも2行2列の行列である。ここで、det()は行列式を求めるための演算であり、例えばW=
(外15)
、det(W)=
(外16)
となる。
【0054】
これによって、DW’のうちの少なくとも1つの値、例えばDW’のうちの1行目1列目の値DW’1,1を用いて、時間間隔Tでの偏光状態の変化量(
【数23】
)を計算してもよい。
【0055】
この例では、正規化処理後の変化量(DW’)のうちの1行目1列目の値(DW’1,1)を用いて時間間隔Tでの偏光状態の変化量を計算してもよいが、本実施例はこれに限定されず、正規化処理後の変化量(DW’)のうちの他の1つ又は複数の値を用いて時間間隔Tでの偏光状態の変化量を計算してもよく、ここでその説明を省略する。
【0056】
本実施例によれば、受信機の各径路の等化フィルタタップ係数に対してN個のタップのFFT演算を行い、タップ係数の和を周波数領域でゼロ周波数から高周波数(非ゼロ周波数)にシフトすることで、偏光状態変化の監視結果への送信機の非理想的な状況の影響を回避することができる。
【0057】
<実施例2>
本実施例は偏光状態変化の監視装置を提供する。該装置の問題解決の原理は実施例1の方法と同様であるため、その具体的な実施は実施例1の方法の実施を参照してもよく、同様な内容について説明を省略する。
【0058】
図6は本実施例の偏光状態変化の監視装置600の概略図である。図6に示すように、偏光状態変化の監視装置600は、抽出部601、FFT部602及び推定部603を含む。抽出部601は、受信機の等化フィルタタップ係数の行列を抽出する。FFT部602は、該等化フィルタタップ係数の行列の各径路の等化フィルタタップ係数に対してN個のタップのFFT演算を行い、変換後の行列を取得する。該変換後の行列の各径路の等化フィルタタップ係数の和は非ゼロ周波数の値である。推定部603は、該変換後の行列の少なくとも1つの経路の等化フィルタタップ係数を用いて偏光状態の変化量を推定する。
【0059】
本実施例では、上記の変換後の行列の各径路の等化フィルタタップ係数の和は、ゼロ周波数に最も近い周波数点の値であり、該変換後の行列の各径路の等化フィルタタップ係数の和の周波数は、信号帯域幅範囲内にある。
【0060】
本実施例では、FFT演算を行うタップの数Nは、2の整数乗冪であってもよく、例えば8である。
【0061】
図7は本実施例の偏光状態変化の監視装置600の推定部603の1つの態様の概略図である。図7に示すように、この態様では、推定部603は、変換部701、第1計算部702及び第2計算部703を含んでもよい。
【0062】
変換部701は、該変換後の行列の少なくとも1つの偏光状態の等化フィルタタップ係数をジョーンズ行列からストークスベクトルの表現に変換する。第1計算部702は、時間間隔Tでの該等化フィルタタップ係数のストークスベクトルの変化量を計算する。第2計算部703は、該ストークスベクトルの変化量に基づいて、時間間隔Tでの偏光状態の変化量を計算する。
【0063】
この態様では、上記の少なくとも1つの偏光状態は、H偏光状態であってもよいし、V偏光状態であってもよいし、H偏光状態及びV偏光状態であってもよい。その具体的な態様は実施例1と同様であり、ここでその説明を省略する。
【0064】
図8は本実施例の偏光状態変化の監視装置600の推定部603のもう1つの態様の概略図である。図8に示すように、この態様では、推定部603は、第3計算部801、正規化部802及び第4計算部803を含んでもよい。
【0065】
第3計算部801は、時間間隔Tでの該変換後の行列の変化量(DW)を計算する。正規化部802は、該変化量に対して正規化処理を行い、正規化処理後の変化量(DW’)を取得する。第4計算部803は、該正規化処理後の変化量(DW’)のうちの少なくとも1つの値を用いて、時間間隔Tでの偏光状態の変化量を計算する。
【0066】
この態様では、第4計算部803は、正規化処理後の変化量(DW’)のうちの1行目1列目の値を用いて、時間間隔Tでの偏光状態の変化量を計算してもよい。具体的な態様は実施例1と同様であり、ここでその説明を省略する。
【0067】
本実施例では、該偏光状態変化の監視装置600はプロセッサ及びメモリにより実現されてもよい。
【0068】
例えば、1つの態様では、該偏光状態変化の監視装置600の機能はプロセッサに統合され、プロセッサにより該偏光状態変化の監視装置600の機能を実現してもよい。なお、該偏光状態変化の監視装置600の機能はここで援用し、その説明を省略する。
【0069】
例えば、もう1つの態様では、該偏光状態変化の監視装置600はプロセッサとそれぞれ配置されてもよく、例えば、該偏光状態変化の監視装置600はプロセッサに接続されたチップであり、プロセッサの制御により該偏光状態変化の監視装置600の機能を実現してもよい。
【0070】
本実施例では、メモリは、例えばバッファ、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、移動可能な媒体、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、又は他の適切な装置のうちの1つ又は複数であってもよい。メモリは、各種のデータを記憶してもよく、情報処理のプログラムをさらに記憶してもよい。
【0071】
本実施例では、プロセッサはコントローラ又は動作制御部材と称される場合があり、マイクロプロセッサ又は他のプロセッサ装置及び/又は論理装置を含んでもよい。該プロセッサは、入力を受け付け、受信機の各部の動作を制御する。また、プロセッサは、情報の記憶又は処理などを実現するように、メモリに記憶されたプログラムを実行してもよい。
【0072】
本実施例によれば、受信機の各径路の等化フィルタタップ係数に対してN個のタップのFFT演算を行い、タップ係数の和を周波数領域でゼロ周波数から高周波数(非ゼロ周波数)にシフトすることで、偏光状態変化の監視結果への送信機の非理想的な状況の影響を回避することができる。
【0073】
<実施例3>
本実施例は受信機をさらに提供し、図9は該受信機の構成の概略図である。図9に示すように、受信機900は偏光状態変化の監視装置901を含む。該偏光状態変化の監視装置901は実施例2の偏光状態変化の監視装置600の構成及び機能を有し、実施例1の偏光状態変化の監視方法の各ステップを実現するものであり、実施例1及び実施例2の内容はここで援用され、その説明を省略する。
【0074】
本実施例では、図1に示すように、該受信機は他のモジュールをさらに含んでもよく、その構成及び機能は従来技術を参照してもよく、ここでその説明を省略する。
【0075】
本実施例によれば、受信機の各径路の等化フィルタタップ係数に対してN個のタップのFFT演算を行い、タップ係数の和を周波数領域でゼロ周波数から高周波数(非ゼロ周波数)にシフトすることで、偏光状態変化の監視結果への送信機の非理想的な状況の影響を回避することができる。
【0076】
<実施例4>
本実施例は通信システムをさらに提供し、該通信システムは送信機、受信機及び偏光状態変化の監視装置を含む。該偏光状態変化の監視装置は、受信機に接続され、或いは受信機に配置され、実施例2の偏光状態変化の監視装置600であってもよい。実施例では該偏光状態変化の監視装置600の構成及び機能を詳細に説明しているため、ここでその内容を援用し、説明を省略する。本実施例では、送信機及び受信機の通常の機能は従来技術を参照してもよく、ここでその説明を省略する。
【0077】
本発明の実施例は、偏光状態変化の監視装置においてプログラムを実行する際に、コンピュータに、該偏光状態変化の監視装置において上記実施例1に記載の方法を実行させる、コンピュータ読み取り可能なプログラムをさらに提供する。
【0078】
本発明の実施例は、コンピュータに、偏光状態変化の監視装置において上記実施例1に記載の方法を実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラムを記憶する、記憶媒体をさらに提供する。
【0079】
本発明の以上の装置及び方法は、ハードウェアにより実現されてもよく、ハードウェアとソフトウェアを結合して実現されてもよい。本発明はコンピュータが読み取り可能なプログラムに関し、該プログラムは論理部により実行される時に、該論理部に上述した装置又は構成要件を実現させる、或いは該論理部に上述した各種の方法又はステップを実現させることができる。本発明は上記のプログラムを記憶するための記憶媒体、例えばハードディスク、磁気ディスク、光ディスク、DVD、フラッシュメモリ等に関する。
【0080】
本発明の実施例を参照しながら説明した方法/装置は、ハードウェア、プロセッサにより実行されるソフトウェアモジュール、又は両者の組み合わせで実施されてもよい。例えば、図6に示す機能的ブロック図における1つ若しくは複数、又は機能的ブロック図の1つ若しくは複数の組み合わせ(例えば抽出部、FFT部、推定部など)は、コンピュータプログラムフローの各ソフトウェアモジュールに対応してもよいし、各ハードウェアモジュールに対応してもよい。これらのソフトウェアモジュールは、図2に示す各ステップにそれぞれ対応してもよい。これらのハードウェアモジュールは、例えばフィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)を用いてこれらのソフトウェアモジュールをハードウェア化して実現されてもよい。
【0081】
ソフトウェアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、モバイルハードディスク、CD-ROM又は当業者にとって既知の任意の他の形の記憶媒体に位置してもよい。プロセッサが記憶媒体から情報を読み取ったり、記憶媒体に情報を書き込むように該記憶媒体をプロセッサに接続してもよいし、記憶媒体がプロセッサの構成部であってもよい。プロセッサ及び記憶媒体はASICに位置する。該ソフトウェアモジュールは移動端末のメモリに記憶されてもよいし、移動端末に挿入されたメモリカードに記憶されてもよい。例えば、機器(例えば移動端末)が比較的に大きい容量のMEGA-SIMカード又は大容量のフラッシュメモリ装置を用いる場合、該ソフトウェアモジュールは該MEGA-SIMカード又は大容量のフラッシュメモリ装置に記憶されてもよい。
【0082】
図面に記載されている一つ以上の機能ブロックおよび/または機能ブロックの一つ以上の組合せは、本発明に記載されている機能を実行するための汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)又は他のプログラマブル論理デバイス、ディスクリートゲートまたはトランジスタ論理装置、ディスクリートハードウェアコンポーネント、またはそれらの任意の適切な組み合わせで実現されてもよい。図面に記載されている一つ以上の機能ブロックおよび/または機能ブロックの一つ以上の組合せは、例えば、コンピューティング機器の組み合わせ、例えばDSPとマイクロプロセッサの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサの組み合わせ、DSP通信と組み合わせた1つ又は複数のマイクロプロセッサ又は他の任意の構成で実現されてもよい。
【0083】
以上、具体的な実施形態を参照しながら本発明を説明しているが、上記の説明は、例示的なものに過ぎず、本発明の保護の範囲を限定するものではない。本発明の趣旨及び原理を離脱しない限り、本発明に対して各種の変形及び変更を行ってもよく、これらの変形及び変更も本発明の範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9