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特許7484248画像処理装置、画像処理方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/20 20170101AFI20240509BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240509BHJP
   G06V 20/52 20220101ALI20240509BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G06T7/20 300Z
G06T7/00 660B
G06V20/52
H04N7/18 D
H04N7/18 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020042659
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021144466
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 郁奈
(72)【発明者】
【氏名】太田 昂志
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛
(72)【発明者】
【氏名】岸田 俊文
【審査官】岡本 俊威
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/174738(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/002408(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00- 7/292
H04N 7/18
G06V 20/50-20/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラによって撮像された撮像画像を時系列で取得する画像取得手段と、
前記撮像画像内の動体の時系列の移動情報を蓄積する蓄積手段と、
前記画像取得手段によって取得された時系列の撮像画像から、動体の移動情報を算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出された動体の移動情報と、前記蓄積手段によって蓄積された動体の移動情報とを比較する比較手段と、
前記比較手段による動体の移動情報の比較結果に基づいて、前記比較手段による比較の対象となった動体が異常な動きを示すか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果を出力する出力手段と、
前記出力手段によって出力された前記判定結果に対する動体が異常な動きを示すか否かに関するユーザ入力を受け付ける受付手段と、
を有し、
前記蓄積手段は、前記受付手段によって受け付けた前記ユーザ入力に応じて、前記算出手段によって算出された前記移動情報を用いて前記蓄積手段によって蓄積された前記移動情報を更新するか否かを決定する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記移動情報は、動体の移動量と動体の移動方向の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記算出手段は、前記画像取得手段によって時系列で取得された複数の撮像画像間の画素値の差分を基に、前記移動量または前記移動方向の前記少なくとも一方を算出することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記移動情報が動体の移動量を含む場合、前記蓄積手段は、移動量の平均値、最頻値、中央値、最小値および最大値により決まる範囲のいずれかを蓄積することを特徴とする請求項2または3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
カメラによって撮像された撮像画像を時系列で取得する画像取得ステップと、
前記撮像画像内の動体の時系列の移動情報を蓄積する蓄積ステップと、
前記画像取得ステップによって取得された時系列の撮像画像から、動体の移動情報を算出する算出ステップと、
前記算出ステップによって算出された動体の移動情報と、前記蓄積ステップによって蓄積された動体の移動情報とを比較する比較ステップと、
前記比較ステップによる動体の移動情報の比較結果に基づいて、前記比較ステップによる比較の対象となった動体が異常な動きを示すか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップによる判定結果を出力する出力ステップと、
前記出力ステップによって出力された前記判定結果に対する動体が異常な動きを示すか否かに関するユーザ入力を受け付ける受付ステップと、
前記受付ステップによって受け付けた前記ユーザ入力に応じて、前記算出ステップによって算出された前記移動情報を用いて前記蓄積ステップによって蓄積された前記移動情報を更新するか否かを決定する決定ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
請求項に記載の画像処理方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラの撮像画像において動体の異常な動きを検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークカメラ(IPカメラ)を利用した監視においては、建物に設置したネットワークカメラによって撮影された映像を基に異常な動きを示す動体を検出し、管理者などのユーザに通知することが求められている。
【0003】
このため、異常な動きを示す動体を自動的に判定する技術が提案されている。特許文献1には、カメラによって撮影された映像のフレーム間での動作ベクトルを算出し、画像のブロックごとにあらかじめ定義された、異常動作を表す動作ベクトルを検出した場合に、異常な動きを示す動体を通知する技術が開示されている。また、特許文献2には、カメラによる被観察者の生活行動に関するパラメータをデータベースに記憶し、人感センサや撮像素子を用いて推定される生活行動の生起に関するパラメータをデータベースに記憶したパラメータと比較することで、被観察者の異常行動を判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-100031号公報
【文献】特開2002-352352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、ネットワークカメラを使用する個々の状況に応じた、異常動作や異常行動を定義するベクトルやパラメータなどのデータをあらかじめ作成する必要がある。また、従来技術を用いてさまざまな状況でも動体の異常な動きを精度よく検出するには、さまざまなバリエーションのデータを作成して使用する必要がある。この結果、ネットワークカメラの映像に対する画像処理や判定処理に伴う処理負荷が膨大になる可能性がある。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、カメラの撮像画像に対する画像処理の負荷を抑えて、画像内の動体の異常な動きを検出する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用する。
【0008】
本発明の第一側面は、カメラによって撮像された撮像画像を時系列で取得する画像取得手段と、前記撮像画像内の動体の時系列の移動情報を蓄積する蓄積手段と、前記画像取得手段によって取得された時系列の撮像画像から、動体の移動情報を算出する算出手段と、前記算出手段によって算出された動体の移動情報と、前記蓄積手段によって蓄積された動体の移動情報とを比較する比較手段と、前記比較手段による動体の移動情報の比較結果に基づいて、前記比較手段による比較の対象となった動体が異常な動きを示すか否かを判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果を出力する出力手段と、を有することを特徴とする画像処理装置である。これにより、撮像画像から得られる移動情報と比較するための種々のデータをあらかじめ作成したりそのようなデータを使用したりすることがないため画像処理の負荷を抑えて異常な動きを示す動体を検出することができる。
【0009】
また、前記移動情報は、動体の移動量と動体の移動方向の少なくとも一方を含んでもよい。これにより、例えば、動体の移動量を基に通常は進入しない領域に動体が移動したことを検出したり、動体の移動方向を基に通常とは異なる方向に動体が移動したことを検出したり、動体の移動量と移動方向とを基にうろつきなど通常とは異なる挙動を示す動体を検出したりすることができる。
【0010】
また、前記算出手段は、前記画像取得手段によって時系列で取得された複数の撮像画像間の画素値の差分を基に、前記移動量または前記移動方向の前記少なくとも一方を算出してもよい。これにより、動体の移動量や移動方向を、隣り合う2つのフレームの撮像画像の画素値の差分から算出したり、隣り合う3つ以上のフレームの撮像画像の画素値の差分の平均値から算出したりすることができる。
【0011】
また、前記移動情報が動体の移動量を含む場合、前記蓄積手段は、移動量の平均値、最頻値、中央値、最小値および最大値により決まる範囲のいずれかを蓄積してもよい。これにより、異常な動きを示す動体を検出するために撮像画像から算出される移動量と比較する基準を、カメラの撮影環境に応じて柔軟に選択することができる。
【0012】
また、上記の画像処理装置は、前記出力手段によって出力された前記判定結果に対する動体が異常な動きを示すか否かに関するユーザ入力を受け付ける受付手段をさらに有し、前記蓄積手段は、前記受付手段によって受け付けた前記ユーザ入力に応じて、前記算出手段によって算出された前記移動情報を用いて前記蓄積手段によって蓄積された前記移動情報を更新するか否かを決定してもよい。これにより、画像処理装置によって正常な動きを示す動体が異常な動きを示すと判定された場合に、ユーザ入力によるフィードバックを基に蓄積された移動情報を更新することで、次回以降の異常な動きを示す動体の検出精度を向上させることができる。
【0013】
なお、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む、画像処理方法や、これらの方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、又は、そのようなプログラムを非一時的に記録したコンピュータ読取可能な記録媒体として捉えることもできる。上記構成及び処理の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カメラによって取得された画像の処理負荷を抑えて異常な動きを示す動体を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明が適用された画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、一実施形態に係るPC(画像処理装置)の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、一実施形態に係るPCの処理フロー例を示すフローチャートである。
図4図4は、一実施形態に係るPCのサブルーチンの処理フロー例を示すフローチャートである。
図5図5Aは、一実施形態に係る撮像画像の具体例を示す模式図であり、図5B図5Cは、移動量の定常データと移動方向の定常データの具体例をそれぞれ示す模式図である。
図6図6A図6Cは、一実施形態に係る撮像画像における不審者の動きの具体例を示す模式図であり、図6D図6Eは、図6A図6Cの撮像画像から算出される移動量と移動方向の具体例をそれぞれ示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<適用例>
本発明の適用例について説明する。ネットワークカメラ(IPカメラ)を利用した監視においては、建物に設置したネットワークカメラによって撮影された映像を基に異常な動きを示す動体を検出し、管理者などのユーザに通知することが求められている。しかしながら、従来技術では、種々の使用環境において異常な動きを示す動体の検出精度を維持するには、撮像画像から動体を検出するために用いられる膨大な辞書を使用するため、画像処理の負荷が増大する懸念がある。
【0017】
図1は、本発明が適用された画像処理装置100の構成例を示すブロック図である。画像処理装置100は、画像取得部101、異常判定部102、出力部103を有する。画像取得部101は、ネットワークカメラによる撮像画像を取得する。異常判定部102は、以下の実施形態において詳述する処理を実行して、撮像画像に対する異常な動きを示す動体の検出を行う。より具体的には、異常判定部102は、撮像画像を基に動体の移動量と移動方向を算出し、算出した移動量と移動方向を基に、異常な動きを示す動体を特定する。出力部103は、異常判定部102によって特定された異常な動きを示す動体の通知を出力する。
【0018】
本発明に係る画像処理装置100によれば、さまざまな使用環境において画像処理の負荷を抑えつつカメラの撮像画像に対する異常な動きを示す動体を精度よく検出することができる。
【0019】
<実施形態の説明>
本発明の一実施形態について説明する。図2は、本実施形態に係る画像処理システムの大まかな構成例を示す模式図である。本実施形態に係る画像処理システムは、PC200(パーソナルコンピュータ;画像処理装置)、ネットワークカメラ300、及び、表示装置400を有する。PC200とネットワークカメラ300とは有線または無線で互いに接続されており、PC200と表示装置400は有線または無線で互いに接続されている。
【0020】
本実施形態では、一例として、家屋の玄関の軒下に設置されたネットワークカメラ300によって玄関や家屋の敷地、敷地に隣接する道路などを撮像することを想定する。ネットワークカメラ300は、複数フレームの撮像画像を取得し、取得した撮像画像をPC200に出力する。PC200は、ネットワークカメラ300による撮像画像に基づいて異常な動きを示す動体を特定し、特定した動体に関する情報を表示装置へ出力する。表示装置の一例としては、ディスプレイや情報処理端末(スマートフォンなど)が挙げられる。
【0021】
なお、本実施形態ではPC200がネットワークカメラ300や表示装置400とは別体の装置であるものとするが、PC200はネットワークカメラ300または表示装置400と一体に構成されてもよい。また、PC200の設置場所は特に限定されない。例えば、PC200はネットワークカメラ300と同じ場所に設置されてもよい。また、PC200はクラウド上のコンピュータであってもよい。
【0022】
PC200は、入力部210、制御部220、記憶部230、及び、出力部240を有する。制御部220は、動体情報取得部221、基準値算出部224、比較部225、及び、判定部226を有する。また、動体情報取得部221は、フレーム間差分算出部222、及び、移動情報算出部223を有する。入力部210、記憶部230、フレーム間差分算出部222、比較部225、判定部226、出力部240が、それぞれ本発明の画像
取得手段、蓄積手段、算出手段、比較手段、判定手段、出力手段に対応する。
【0023】
入力部210は、ネットワークカメラ300によって撮像された動画を構成するフレームをネットワークカメラ300から取得して制御部220に出力する。また、ネットワークカメラ300は、光学カメラでなくてもよく、サーマルカメラなどであってもよい。
【0024】
制御部220は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などを含み、PC200内の各部の制御や、各種情報処理などを行う。
【0025】
動体情報取得部221は、ネットワークカメラ300の画角内の動体の時系列による動きを蓄積したデータを定常データとして生成し、生成した定常データを記憶部230に記憶する。また、動体情報取得部221のフレーム間差分算出部222は、定常データの隣接する2つ以上のフレーム間の画素差分量を算出する。また、動体情報取得部221の移動情報算出部223は、フレーム間差分算出部222によって算出された画素差分量を基に、動体の移動量および移動方向を算出する。
【0026】
基準値算出部224は、移動情報算出部223によって算出された動体の移動量および移動方向と記憶部230に蓄積されている定常データが示す移動量と移動方向を基に、動体の移動量の平均値、最頻値、中央値、最小値および最大値により決まる範囲や、動体の移動方向の角度に基づく平均値、最頻値、中央値、最小値および最大値により決まる範囲を算出する。そして、基準値算出部224は、算出結果を用いて記憶部230に記憶されている定常データを更新する。
【0027】
比較部225は、算出された動体の移動量および移動方向と定常データに含まれる動体の移動量および移動方向との差分を、異常と判定するための閾値と比較する。判定部226は、比較部225による比較結果を基に異常な動きを示す動体の判定を行う。
【0028】
記憶部230は、上記の定常データのほか、制御部220で実行されるプログラムや、制御部220で使用される各種データなどを記憶する。例えば、記憶部230は、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブなどの補助記憶装置である。出力部240は、判定部226による異常な動きを示す動体の判定結果を通知する情報を、表示装置400に出力する。なお、判定部226による動体の判定結果は、記憶部230に記憶されて、任意のタイミングで出力部240から表示装置400に出力されてもよい。
【0029】
図3は、PC200の処理フロー例を示すフローチャートである。PC200は、入力部210によって取得される画像ごとに図3の処理フローを実行する。PC200によって繰り返し実行される図3の処理フローの繰り返し周期は特に限定されないが、本実施形態では、ネットワークカメラ300による撮像のフレームレートで図3の処理フローが繰り返されるとする。
【0030】
まず、入力部210が、ネットワークカメラ300によって撮像された撮像画像を、ネットワークカメラ300から取得する(ステップS301)。入力部210が取得した撮像画像は、PC200内のRAMなどに一時的に記憶される。また、入力部210は、1フレーム分の撮像画像しか取得していない場合は、ステップS301の処理を繰り返して、以下の処理に必要なフレーム数分の撮像画像を取得する。
【0031】
次に、動体情報取得部221のフレーム間差分算出部222が、入力部210によって取得された複数フレームの撮像画像のうち現在の(最新の)フレームの撮像画像と1つ前のフレームの撮像画像との間の画素値の差分を算出する(ステップS302)。なお、差
分の算出に用いるフレーム数に制限はないが、3つ以上のフレームの撮像画像における差分は、例えば隣接する2フレーム間の画素値の差分の絶対値をそれぞれ計算し、それらの平均値を画素値の差分として算出することができる。
【0032】
フレーム間差分算出部222が算出したフレーム間の画素値の差分は、PC200内のRAMなどに一時的に記憶される。また、フレーム間差分算出部222は、以下の処理で動体の移動量を算出するため、3つのフレーム間(例えば、現在のフレームとその前後のフレームとのそれぞれの間)の画素値の差分を算出していない場合は、ステップS301およびS302を繰り返して、各フレーム間の画素値の差分を算出する。
【0033】
次に、移動情報算出部223が、ステップS302で算出された複数フレーム間の画素値の差分を基に、撮像画像内の動体の移動量および移動方向を算出する(ステップS303)。移動量の一例としては画素値の差分から求まるスカラー値を、移動方向の一例としては角度を用いることができる。なお、撮像画像における動体の特定や、動体の移動量および移動方向の算出は、周知の技術を用いて行うことができるため、ここでは処理の詳細については説明を省略する。
【0034】
図5(A)に、ネットワークカメラ300による撮像画像の一例を模式的に示す。図5に示すように、ネットワークカメラ300は、家屋に面する道路501や歩道502、歩道502から家屋の玄関口503まで続くアプローチ504、家屋の玄関口503に立つ人505、道路501を走行する車506などを撮像する。
【0035】
図5(B)、5(C)は、本実施形態において蓄積される定常データの一例を概略的に示す図である。図5(B)は、撮像画像内の動体の移動量を示す定常データであり、図5(C)は、撮像画像内の動体の移動方向を示す定常データである。定常データは、ネットワークカメラ300が取得する撮像画像において、画素のブロックごとに動体の平均的な移動量および移動方向を表すデータである。なお、画素のブロックの大きさは1画素~複数画素の任意の画素数のブロックとすることができる。
【0036】
移動量の定常データでは、画素のブロックごとに動体の移動速度に応じた移動量の大きさが格納される。例えば、道路501は車が走行するため、定常データでは道路501に対応するブロックの移動量は大きくなる。また、歩道502やアプローチ504は人が往来するため、歩道502やアプローチ504に対応するブロックの移動量は、道路501に対応するブロックよりは小さく、他の周囲のブロックよりは大きくなる。
【0037】
また、移動方向の定常データでは、動体の移動方向を示す代表的な移動方向が格納される。例えば、道路501は車が走行する方向が決まっているため、図5Aの撮像画像では、道路501に対応するブロックの移動方向は右方向または左方向が横一列に並ぶように格納される。また、アプローチ504は人が歩道502と玄関口504との間を移動するため、アプローチ504に対応するブロックの移動方向は上下方向が格納される。撮像画像内において静物部分は通常は動体の移動がないため、対応するブロックの移動方向は格納されていない(図中「N」)。
【0038】
再び図3のフローチャートの説明に戻る。ステップS304において、制御部220は、記憶部230に定常データが蓄積されているか否かを判定する。制御部220は、定常データのデータサイズや更新回数、定常データが蓄積されていることを示すフラグなどを用いて、定常データが蓄積されているか否かを判定することができる。制御部220は、定常データが蓄積されていると判定した場合は(S304:YES)、処理をステップS305に進める。一方、制御部220は、定常データが蓄積されていないと判定した場合は(S304:NO)、処理をステップS307に進める。
【0039】
ここで、ステップS305のサブルーチンの処理について、図4を参照しながら説明する。まず、ステップS401において、比較部225が、ステップS303で算出した動体の移動量および移動方向と、記憶部230に記憶されている定常データが示す移動量および移動方向とを比較して、ステップS303で算出した動体の移動量および移動方向の定常データとの偏差を算出する。
【0040】
次に、ステップS402において、比較部225は、ステップS305で算出された動体の移動量と移動方向のそれぞれの偏差が、閾値よりも大きいか否かを判定する。比較部225は、動体の移動量と移動方向の偏差のいずれかが閾値よりも大きいと判定した場合は(S305:YES)、処理をステップS405に進める。一方、比較部225は、動体の移動量と移動方向がいずれも閾値以下であると判定した場合は(S305:NO)、処理をステップS405に進める。
【0041】
ステップS403において、比較部225は、ステップS402において移動量と移動方向のいずれかの偏差が閾値よりも大きいと判定された動体を、異常な動きを示す動体とみなしてユーザに通知する。ユーザへの通知方法として、比較部225は、出力部240を介して、撮像画像内の動体を示す画像や、異常な動きを示す動体であるか否かの判定をユーザに求めるメッセージなどを表示装置400に表示する。また、比較部225は、音声通知などその他の通知方法を用いて当該動体の通知を行ってもよい。
【0042】
ここで、上記の処理によって異常な動きを示す動体の撮像画像と移動量および移動方向との関係について、図6(A)~図6(E)を参照しながら説明する。図6(A)~図6(C)は、ネットワークカメラ300による撮像画像を時系列(時刻t-1、t、t+1)に並べた例を示す。この例では、ネットワークカメラ300が設置された家屋に不審者601が近づくことを想定する。これらネットワークカメラ300の撮像画像は、上記のステップS302、S303の処理によって、画像上で不審者601が移動した範囲と重なる画素のブロックの移動量は、それ以外の範囲の画素のブロックの移動量よりも大きい値として算出される。図6(D)に、この例で算出される移動量の一例を示す。図6(D)の網掛け部分のブロックの移動量が、画像上で不審者601が移動した範囲と重なる画素のブロックの移動量である。また、上記のステップS302、S303の処理によって、画像上で不審者601が移動した範囲と重なる画素のブロックの移動方向が図6(E)のように算出される。
【0043】
そして、算出された図6(D)、図6(E)に示す移動量と移動方向と、それぞれの定常データ図5(B)、図5(C)に示す移動量と移動方向との偏差を求めることで、定常データの移動量との偏差が閾値よりも大きいブロックおよび移動方向との偏差が閾値よりも大きいブロックを、異常な動きを示す動体が存在するブロックとみなすことができる。移動量と移動方向に用いる閾値は、ブロックごとに異なる閾値が採用されてよく、閾値の大きさも適宜設定されてよい。
【0044】
このように、本実施形態によれば、ネットワークカメラの撮像画像を基に蓄積した移動量と移動方向を基に、画像内の異常な動きを示す動体をユーザに通知することができ、従来のように異常な動きを示す動体の判定に用いる膨大な辞書データや辞書データを用いた比較などの画像処理が不要となるため、従来に比べて画像処理を抑えて異常な動きを示す動体を検出することができる。
【0045】
ステップS403において、ユーザは、表示装置400に表示される動体やメッセージなどを基に、異常な動きを示す動体であるか否かを判定し、図示しないマウスやキーボード、マイクなどの入力装置を操作して判定結果をPC200に入力する。
【0046】
次に、ステップS404において、判定部226は、ユーザ入力の受付手段としてステップS403においてユーザが入力した動体の判定結果を受け付け、ユーザが異常な動きを示す動体である(「異常あり」)と判定した場合は(S404:YES)処理をステップS405に進め、ユーザが異常な動きを示す動体ではない(「異常なし」)と判定した場合は(S404:NO)処理をS406に進める。
【0047】
ステップS405において、判定部226は、判定の対象となった動体が異常な動きを示す動体であるという判定結果を記憶部230に記憶して、本サブルーチンの処理を終了する。また、ステップS406において、判定部226は、判定の対象となった動体が異常な動きを示す動体ではないという判定結果を記憶部230に記憶して、本サブルーチンの処理を終了する。
【0048】
次に、図3のステップS306において、制御部220は、ステップS303において移動量および移動方向が算出された動体に対する判定部226による判定結果が異常なしであるか否かを判定する。制御部220は、判定部226による判定結果が異常なしである場合は(S306:YES)、処理をS307に進める。一方、制御部220は、判定部226による判定結果が異常ありである場合は(S306:NO)、処理をS301に戻す。S307において、制御部220は、ステップS303において算出した移動量および移動方向のデータと記憶部230に記憶されている定常データとを合わせたデータ群から、各画素の移動量および移動方向の最頻値を選択し、選択した最頻値で定常データを更新する。制御部220は、更新した定常データを記憶部230に記憶する。
【0049】
本実施形態では、ステップS306、S307の処理により、撮像画像において動体が異常な動作を示す動体ではないと判定された場合に限り定常データが更新されるため、異常な動作を示さない動体に関するデータが定常データに蓄積されていく。また、ステップS403~S406の処理により、PC200によって異常な動きを示すと誤って判定された場合に、ユーザ入力によるフィードバックを受け付けて、動体の動きに異常がないとして定常データが更新される。このように、本実施形態によれば、定常データをより確度の高い判定基準を示すデータとして構築することができる。
【0050】
本実施形態の画像処理装置によれば、カメラから入力される撮像画像を基に、異常な動きを示す動体を検出するための定常データが蓄積される。このため、本実施形態の画像処理装置よる動体検出の処理負荷は、従来技術のように種々の使用環境に応じてあらかじめ膨大な辞書データを作成して使用する場合よりも軽減されることが期待できる。
【0051】
<その他>
上記実施形態は、本発明の構成例を例示的に説明するものに過ぎない。本発明は上記の具体的な形態には限定されることはなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記の各実施形態の構成および処理などは互いに組み合わせられてもよい。また、上記の実施形態では、動体の移動情報として動体の移動量と移動方向を用いることを想定しているが、移動量と移動方向の少なくとも一方を移動情報として用いてもよい。例えば、動体の移動量を用いる場合は、通常は進入しない領域に動体が移動したこと(立ち入り禁止区域内への進入など)を検出し、動体の移動方向を用いる場合は、通常とは異なる方向に動体が移動したこと(人や車の逆走など)を検出し、動体の移動量と移動方向とを用いる場合は、通常とは異なる挙動(うろつきなど)を示す動体を検出することができる。
【0052】
また、上記の実施形態のステップS402の判定では、移動量の偏差と移動方向の偏差のいずれかが閾値よりも大きい場合に、異常な動きを示す動体のユーザ通知を行うが、こ
れに代えて、移動量の偏差と移動方向の偏差が共にそれぞれの閾値よりも大きい場合に、ユーザ通知を行ってもよい。また、上記の実施形態において、ステップS403、S404の処理を省略して、ステップS402の判定結果を基にS405、S406において異常な動きを示す動体であるか否かを決定してもよい。
【0053】
また、上記の実施形態において、撮像画像内の動体の検出処理に、周知の人体検出技術や一般物体認識技術を組み合わせることで、撮像画像における監視対象を人や物体だけに絞り込むことができる。これにより、撮像画像に写り込む樹木の揺れなど、監視対象とは無関係の動体の動きを排除できるため、異常な動きを示す動体の検出精度がさらに高まることが期待できる。
【0054】
<付記1>
カメラによって撮像された撮像画像を時系列で取得する画像取得手段(210)と、
前記撮像画像内の動体の時系列の移動情報を蓄積する蓄積手段(230)と、
前記画像取得手段によって取得された時系列の撮像画像から、動体の移動情報を算出する算出手段(222)と、
前記算出手段によって算出された動体の移動情報と、前記蓄積手段によって蓄積された動体の移動情報とを比較する比較手段(225)と、
前記比較手段による動体の移動情報の比較結果に基づいて、前記比較手段による比較の対象となった動体が異常な動きを示すか否かを判定する判定手段(226)と、
前記判定手段による判定結果を出力する出力手段(240)と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【0055】
<付記2>
カメラによって撮像された撮像画像を時系列で取得する画像取得ステップ(S301)と、
前記撮像画像内の動体の時系列の移動情報を蓄積する蓄積ステップ(S304、S307)と、
前記画像取得ステップによって取得された時系列の撮像画像から、動体の移動情報を算出する算出ステップ(S303)と、
前記算出ステップによって算出された動体の移動情報と、前記蓄積ステップによって蓄積された動体の移動情報とを比較する比較ステップ(S305)と、
前記比較ステップによる動体の移動情報の比較結果に基づいて、前記比較ステップによる比較の対象となった動体が異常な動きを示すか否かを判定する判定ステップ(S402)と、
前記判定ステップによる判定結果を出力する出力ステップ(S403)と、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【符号の説明】
【0056】
100:画像処理装置 101:画像取得部 102:異常判定部 103:出力部
200:PC(画像処理装置)
210:入力部 230:記憶部 240:出力部
220:制御部
222:フレーム間差分算出部
223:移動情報算出部
225:比較部
226:判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6