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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】指針、時計及び指針の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/04 20060101AFI20240509BHJP
   G01D 13/22 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G04B19/04 B
G01D13/22 101
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020046347
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021148490
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(74)【代理人】
【識別番号】100171882
【弁理士】
【氏名又は名称】北庄 麗絵子
(72)【発明者】
【氏名】丸山 善弘
(72)【発明者】
【氏名】長澤 翔太
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-37522(JP,U)
【文献】特公昭51-1145(JP,B1)
【文献】特開2020-20644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/04
G01D 13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付孔が設けられた針本体と、
前記取付孔に取り付けられる針取付部材と、を備え、
前記針本体の表面側における前記取付孔の周縁部に、前記針本体よりも厚さ寸法が小さい凹部が設けられ、
前記針取付部材は、平坦面を有する前記凹部の底面と、前記凹部の底面の裏面と、を厚さ方向に挟み付け、前記凹部の底面との対向面は平坦面である挟持部を含む、
指針。
【請求項2】
前記凹部は、前記取付孔の中心部側よりも前記針本体の短手方向の両側が浅く形成される、
請求項1に記載の指針。
【請求項3】
前記挟持部は、前記凹部の底面に配置される第1押え部と、前記凹部の裏面側に接する第2押え部と、を備えている、
請求項1又は請求項2に記載の指針。
【請求項4】
前記針本体の表面は、前記凹部の外周側を取り囲み、
前記第1押え部は、前記凹部の底面の略全てを覆う、
請求項3に記載の指針。
【請求項5】
前記凹部は、前記取付孔と同一軸上に延びる、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の指針。
【請求項6】
前記針本体の表面は非平坦面である、
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の指針。
【請求項7】
前記針本体の表面は、前記針本体の長手方向に沿う中心線側が高く、当該中心線側から前記針本体の短手方向の両側に向けて傾斜する山形状に形成されている、
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の指針。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載された指針を備えている、
時計。
【請求項9】
取付孔が設けられる針本体であって、本体の表面側における前記取付孔の周縁部に本体よりも厚さ寸法が小さい凹部が設けられる針本体の前記取付孔に、平坦面を有する前記凹部の底面を覆う第1押え部と、下方に突出する第2押え部と、を有する針取付部材を上方から挿入する工程と、
前記第1押え部を、前記凹部の底面に配置する工程と、
前記第2押え部を前記凹部の底面の裏面へとカシメすることによって、前記第1押え部と前記第2押え部とにより前記周縁部を厚さ方向に挟み付ける工程と、を含む、
指針の製造方法。
【請求項10】
前記凹部は、前記取付孔の中心部側よりも前記針本体の短手方向の両側が浅く形成される、
請求項9に記載の指針の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、時計やメータなどの計器類に用いられる指針それを備えた時計及び指針の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、時計に用いられている指針においては、特許文献1に記載されているように、針本体の取付孔にハカマと称する金属製の針取付部材を挿入させ、この針取付部材のカシメ部をカシメ加工することにより、針本体を針取付部材に取り付ける構造のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-159548号公報
【0004】
この種の指針の針本体は、取付孔が六角形などの多角形に形成されている。また、針取付部材は、指針軸を挿入する筒状部の外周面に、取付孔の内径よりも小さい小径のカシメ部と、取付孔の内径よりも大きい大径の押え部と、を設けた構造になっている。これにより、この指針は、針本体の取付孔に針取付部材のカシメ部を挿入させて取付孔の周縁部を押え部に押し当てた状態で、カシメ部をカシメ加工して針本体を針取付部材に取り付ける構造になっている。
【0005】
すなわち、この指針は、針本体の取付孔に針取付部材のカシメ部を挿入させてカシメ部をカシメ加工する際に、カシメ部の外周が多角形の取付孔の各辺に食い込むように、カシメ部を外周方向に押し広げて、針取付部材を針本体に固定させることにより、針本体に対する針取付部材の空転を防ぐように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような指針では、針本体に対する針取付部材の空転を防ぐことができても、針本体の表面が非平坦面である場合、例えば針本体が山形状に盛り上がった断面形状であると、針取付部材の押え部と針本体の表面との間に隙間が生じ、針本体の厚み方向にガタつきが生じやすいという問題がある。
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、針本体の断面形状に係わらず、針本体の厚み方向のガタつきを防いで、針取付部材を確実に固定することができる指針、それを備えた時計及び指針の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、
取付孔が設けられた針本体と、
前記取付孔に取り付けられる針取付部材と、を備え
記針本体の表面側における前記取付孔の周縁部に、前記針本体よりも厚さ寸法が小さい凹部が設けられ、
前記針取付部材は、平坦面を有する前記凹部の底面と、前記凹部の底面の裏面と、を厚さ方向に挟み付け、前記凹部の底面との対向面は平坦面である挟持部を含む、
指針である。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、針本体の断面形状に係わらず、針本体の厚み方向のガタつきを防いで、針取付部材を針本体に確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明を腕時計に適用した一実施形態における時計モジュールを示した要部の拡大断面図である。
図2図1に示された指針を示した拡大斜視図である。
図3図2に示された指針の要部を分解して示した拡大斜視図である。
図4図3に示された指針の針本体に取り付けられる前の状態における針取付部材を拡大して示した半断面図である。
図5図2に示された指針のA-A矢視における拡大断面図である。
図6図2に示された指針のB-B矢視における断面を示し、(a)はその拡大断面図、(b)は針取付部材を取り外した状態の針本体の取付部を示した拡大断面図である。
図7図2に示された指針のC-C矢視における断面を示し、(a)はその拡大断面図、(b)は針取付部材を取り外した状態の針本体の取付部を示した拡大断面図である。
図8】この発明を適用した指針の変形例を示し、(a)はその第1変形例を示した拡大断面図、(b)はその第2変形例を示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1図7を参照して、この発明を腕時計に適用した一実施形態について説明する。
この腕時計は、図1に示すように、時計モジュール1を備えている。この時計モジュール1は、腕時計ケース(図示せず)内に組み込まれるものであり、ハウジング2を備えている。このハウジング2の上面には、文字板3が配置されており、ハウジング2の内部には、時計ムーブメント4が設けられている。
【0012】
この時計ムーブメント4は、図1に示すように、文字板3の貫通孔3aを通して文字板3の上方に突出する指針軸5を備え、この指針軸5の上端部に指針6が取り付けられるように構成されている。これにより、時計ムーブメント4は、指針軸5を回転させて、指針6を文字板3の上方で運針させることにより、時刻を指示するように構成されている。
【0013】
この場合、指針6は、図1図3に示すように、例えば時針であり、針本体7とハカマと称する針取付部材8とを備え、この針取付部材8が指針軸5に取り付けられるように構成されている。針本体7は、アルミ合金、黄銅、チタン合金などの金属または合成樹脂で形成されているが、アルミ合金などの金属で形成されていることが望ましい。
【0014】
この針本体7は、図2および図3に示すように、細長い板状に形成されている。すなわち、この針本体7は、時刻を指示する長針部7aと、この長針部7aと反対側に延びる短針部7bと、長針部7aと短針部7bとの間に設けられた取付部7cと、を備えている。長針部7aは、取付部7c側から先端に向けて次第に細くなるほぼ板状に形成されている。
【0015】
短針部7bは、図2および図3に示すように、長針部7aの延伸方向の長さよりも短く、例えば長針部7aの1/3程度の長さで、取付部7c側から延伸方向に向けて少し細くなるほぼ板状に形成されている。この場合、短針部7bは、必ずしも取付部7c側から延伸方向に向けて細くなる形状である必要はなく、長針部7aと同じ角度で広がる形状であっても良く、また四角形などの形状に形成されていても良い。
【0016】
また、取付部7cは、図2および図3に示すように、針取付部材8が取り付けられるものであり、取付部7cの中心部に設けられた取付孔9と、この取付孔9の周縁部に設けられた収容凹部10と、を備えている。取付孔9は、円形状の孔であり、針本体7の表裏面である上下面に貫通して設けられている。
【0017】
収容凹部10は、図2および図3に示すように、取付孔9と同一軸上に設けられた円形状の凹部であり、針本体7が視認される一面である上面、つまり表面に設けられている。この収容凹部10の内径は、取付孔9の内径よりも大きく、且つ針本体7の短手方向の長さよりも短く形成されている。また、この収容凹部10は、レーザ加工、プレス加工、切削加工などによって、底面10aが平坦面に形成されている。
【0018】
一方、針取付部材8は、図3および図4に示すように、その内部に指針軸5が挿入する筒状部11と、この筒状部11の外周面に設けられて針本体7の取付孔9の周縁部をその厚み方向に挟み付ける挟持部12と、を備えている。挟持部12は、突出部であって針取付部材8の周囲から突出している。この場合、針取付部材8は、真鍮やアルミ合金などの金属で形成されるが、アルミ合金よりも硬質の真鍮で形成されていることが望ましい。
【0019】
この針取付部材8の筒状部11は、図3および図4に示すように、その中心に円形状の軸取付孔13が表面から裏面に貫通して設けられている。この軸取付孔13は、指針軸5が挿入して嵌着する大きさに形成されている。また、この筒状部11は、その外径が針本体7の取付孔9の内径とほぼ同じ大きさの円形状に形成されている。これにより、筒状部11は内部の断面が円形の円筒状に形成されている。
【0020】
また、針取付部材8の挟持部12は、図4に示すように、針本体7の収容凹部10に収容されて収容凹部10の底面10aに押し当てられる第1押え部14と、針本体7の裏面側の取付孔9の周縁部にカシメ加工によって押し当てられる第2押え部15と、を備えている。
【0021】
第1押え部14は、図4図6図7に示すように、筒状部11の外周面における上部にリング状に設けられている。すなわち、この第1押え部14は、外径が針本体7の取付孔9の内径よりも大きく、且つ針本体7の収容凹部10の内径と同程度の大きさに形成されている。これにより、第1押え部14は、針本体7の上方から筒状部11が取付孔9に挿入された際に、針本体7の表面に設けられた収容凹部10に収容されるように構成されている。
【0022】
第2押え部15は、図4に示すように、カシメ加工される前の状態の外径が針本体7の取付孔9の内径と同じか、それよりも小さく形成され、針本体7の取付孔9に上方から挿入された際に、針本体7の裏面側に突出する構造になっている。また、この第2押え部15は、針本体7の取付孔9に上方から挿入されて、針本体7の裏面に突出された状態でカシメ加工された際に、針本体7の裏面側の取付孔9の周縁部に押し当てられる構造になっている。
【0023】
この場合、第2押え部15は、図4に示すように、筒状部11の下端面にほぼ逆V字形状のカシメ溝15aが環状に設けられていることによって、筒状部11の下部外周に形成されている。このカシメ溝15aは、内部にたがねと称するカシメ冶具(図示せず)が挿入されて第2押え部15をカシメ加工させるように形成されている。
【0024】
これにより、第2押え部15は、図4に示すように、カシメ加工される際に、筒状部11の外周から突出する方向に折り曲げられるように変形して、針本体7の裏面側の取付孔9の周縁部に押し当てられるように構成されている。このため、この第2押え部15は、高いカシメ加工力を必要としないので、針本体7を変形させない構造になっている。
【0025】
また、この第2押え部15は、図4図6図7に示すように、カシメ加工された際に、その外径が針本体7の取付孔9の内径よりも大きく、かつ第1押え部14の外径よりも小さい大きさに形成されるように構成されている。これにより、挟持部12は、カシメ加工された第2押え部15と第1押え部14とによって、針本体7の取付孔9の内周部、つまり収容凹部10の底面10aと針本体7の裏面側の取付孔9の周縁部とを針本体7の厚み方向(上下方向)に挟み付けるように構成されている。
【0026】
ところで、針本体7は、図5に示すように、この針本体7の表面に盛上り部16が設けられている。また、この針本体7は、裏面である下面が平坦面に形成されている。盛上り部16は、図2および図5に示すように、針本体7の長手方向に沿う稜線である中心線側が高く、この中心線側から針本体7の短手方向の両側縁に向けて次第に低くなるように傾斜する山形状に形成されている。
【0027】
このため、針本体7の取付部7cに設けられた収容凹部10は、図6(b)に示すように、その深さが取付孔9の中心部側から針本体7の短手方向の両側に向かって次第に浅くなるように形成されている。これにより、収容凹部10の底面10aとこの底面10aに対面する第1押え部14の対向面である下面とは、互いに密接する平坦面に形成されている。
【0028】
この場合、針本体7は、図6および図7に示すように、指針6が文字板3の上方を運針する際に、上下方向に撓み変形しない程度の厚みをもって形成されている。このため、収容凹部10の底面10aとこれに対応する針本体7の下面との間の厚みT1は、収容凹部10の深さを調整することにより、針本体7全体の厚みT2よりも薄く、且つ針本体7に針取付部材8が確実に固定される程度の一定の厚みで形成されていることが望ましい。
【0029】
すなわち、針本体7は、図6および図7に示すように、収容凹部10の底面10aとこれに対応する針本体7の下面との間の厚みT1が、均一な厚みで、針本体7の長手方向に沿う稜線である中心線上における厚みT2よりも薄く(T1<T2)形成されている。例えば、針本体7の中心線における厚みT2が、0.13mm~0.18mmである場合、収容凹部10の底面10aとこれに対応する針本体7の下面との間の厚みT1は、0.1mm程度の均一な厚みで形成されている。
【0030】
これにより、針取付部材8は、図6および図7に示すように、針本体7の取付孔9に上方から挿入されて、第1押え部14が取付部7cの収容凹部10内に配置された際に、針本体7の表面に盛上り部16が設けられていても、第1押え部14の下面が収容凹部10の底面10aに密接するように構成されている。また、この針取付部材8は、第1押え部14の下面が収容凹部10の底面10aに密接した状態で、第2押え部15がカシメ加工された際に、第2押え部15の上面が針本体7の裏面において取付孔9の周縁部に密接するように構成されている。
【0031】
このため、この指針6は、図6および図7に示すように、針取付部材8が針本体7の取付部7cに取り付けられた際に、第1押え部14の下面と収容凹部10の底面10aとの間、および第2押え部15の上面と取付孔9の周縁部との間に、隙間が生じないように構成されている。
【0032】
これにより、指針6は、図6および図7に示すように、収容凹部10の底面10aと針本体7の裏面側の取付孔9の周縁部とが挟持部12によって厚み方向に挟み付けられた際に、針本体7が平らな形状でなく、針本体7の表面に盛上り部16が設けられていても、つまり針本体の表面が非平坦面であっても、針本体7の断面形状に係わらず、収容凹部10によって針取付部材8が針本体7の厚み方向にガタつくことがなく、針取付部材8が針本体7に確実に固定されるように構成されている。
【0033】
すなわち、この指針6は、図6および図7に示すように、針本体7の表面に設けられた収容凹部10によって、この収容凹部10の底面10aとこれに対応する針本体7の下面との間の厚みが均一に形成されていることにより、針本体7の断面形状に係わらず、針取付部材8が針本体7に安定して固定されるように構成されている。
【0034】
このため、指針6は、図6および図7に示すように、針本体7の収容凹部10の底面10aとこれに対応する針本体7の裏面側の取付孔9の周縁部とが挟持部12によって針本体7の厚み方向に挟み付けられた際に、これらの間における針本体7の回転方向の摩擦抵抗が高められて、針取付部材8に対する針本体7の固定トルクが確保されるように構成されている。
【0035】
また、この指針6は、図6および図7に示すように、針本体7の表面に設けられた収容凹部10によって、この収容凹部10の底面10aとこれに対応する針本体7の下面との間の厚みが、針本体7に針取付部材8を固定できる程度の一定の厚みに形成されていることにより、針本体7の形状に係わらず、針取付部材8の部品共通化が図れるように構成されている。
【0036】
次に、この指針6の作用について説明する。
この指針6を組み立てる場合には、まず、針本体7の取付部7cに針取付部材8を取り付ける。このときには、針本体7の取付孔9に針取付部材8の筒状部11を上方から挿入させて、針取付部材8の第1押え部14を針本体7の収容凹部10に収容させる。すると、第2押え部15が針本体7の取付孔9を通して針本体7の下側に突出して配置される。
【0037】
この状態で、第2押え部15をカシメ加工によってカシメして、針本体7の裏面側の取付孔9の周縁部に押し当てる。すなわち、第2押え部15をカシメ加工する際には、針取付部材8の筒状部11の下端面に設けられたカシメ溝15a内にたがねと称するカシメ冶具(図示せず)を挿入させてカシメ加工する。
【0038】
すると、第2押え部15が、筒状部11の外周から突出する方向に折り曲げられるように変形する。このため、第2押え部15をカシメ加工する際には、高いカシメ加工力を必要としないので、針本体7を変形させることなく、第2押え部15がカシメられる。これにより、挟持部12が針本体7の収容凹部10の底面10aと針本体7の裏面側の取付孔9の周縁部とを針本体7の厚み方向に挟み付ける。
【0039】
すなわち、第2押え部15が針本体7の裏面側の取付孔9の周縁部に押し当てられると共に、針本体7の収容凹部10の底面10aに針取付部材8の第1押え部14が押し当てられる。このため、挟持部12が針本体7の収容凹部10の底面10aと針本体7の裏面側の取付孔9の周縁部とを挟み付けることにより、指針6が組み立てられる。
【0040】
この状態では、針本体7の収容凹部10の底面10aと第1押え部14の下面とが平坦面に形成されていることにより、針本体7の収容凹部10の底面10aと第1押え部14の下面とが密接する。このため、針取付部材8の第1押え部14の下面と針本体7の収容凹部10の底面10aとの間に隙間が生じことがない。
【0041】
また、この状態では、針本体7の下面が平坦面に形成されていることにより、針本体7の下面と第2押え部15の上面とが密接する。このため、針本体7の下面と第2押え部15の上面との間に隙間が生じことがない。これにより、針取付部材8に対する針本体7の厚み方向のガタつきを防いで、針取付部材8が針本体7に確実に固定される。このため、針取付部材8に対する針本体7の回転方向の摩擦抵抗が高められ、針取付部材8に対する針本体7の固定トルクが高められる。
【0042】
そして、この指針6を時計ムーブメント4の指針軸5に取り付ける。このときには、指針6の針取付部材8の筒状部11に指針軸5の上部を差し込むことにより、指針軸5に針取付部材8が取り付けられる。これにより、指針6が指針軸5に取り付けられる。この状態で、指針軸5が時計ムーブメント4によって回転すると、指針6が文字板3の上方で上下方にガタ付くことなく安定した状態で運針して時刻を指示する。
【0043】
このように、この腕時計の指針6によれば、取付孔9が設けられた針本体7と、取付孔9に取り付けられる針取付部材8と、を備え、針取付部材8は、針本体7を厚み方向に挟み付ける挟持部12を備え、針本体7の表面側における取付孔9の周縁部に、挟持部12を収容する収容凹部10が設けられていることにより、針本体7の形状に係わらず、針本体7の厚み方向のガタつきを防ぐことができると共に、針取付部材8を針本体7に確実に且つ良好に固定させることができる。
【0044】
すなわち、この腕時計の指針6では、針本体7の表面側における取付孔9の周縁部に設けられた収容凹部10の深さを調整することにより、針本体7の厚みや断面形状に係わらず、収容凹部10の底面10aと針本体7の下面との間の厚みを均一にすることができる。これにより、針本体7の断面形状に係わらず、針本体7の厚み方向のガタつきを防ぐことができると共に、針取付部材8を針本体7に確実に且つ良好に固定させることができるほか、針取付部材8の部品の共通化を図ることができ、低コスト化を図ることができる。
【0045】
また、この腕時計の指針6では、針取付部材8の挟持部12が、収容凹部10に収容される第1押え部14と、針本体7の裏面側の取付孔9の周縁部に配置される第2押え部15と、を備えていることにより、針本体7の収容凹部10の底面10aと針本体7の裏面側の取付孔9の周縁部とを第1押え部14と第2押え部15とで針本体7の厚み方向に挟んで押え付けることができる。これにより、針取付部材8の第1押え部14を収容凹部10の底面10aに確実に押し当てることができるので、針取付部材8を針本体7に確実に且つ良好に取り付けることができる。
【0046】
また、この腕時計の指針6では、収容凹部10の底面10aとこの底面10aに対面する第1押え部14の対向面である下面とが互いに密接する平坦面に形成されていることにより、第1押え部14が収容凹部10に収容された状態で、針本体7の収容凹部10の底面10aと針本体7の裏面側の取付孔9の周縁部とが第1押え部14と第2押え部15とによって挟み付けられた際に、収容凹部10の底面10aに第1押え部14の下面を隙間が生じることなく確実に且つ良好に密接させることができる。
【0047】
また、この腕時計の指針6では、針本体7の表面に盛上り部16が設けられていることにより、針本体7全体の強度を確保することができると共に、盛上り部16によって外観性およびデザイン性を向上させることができるほか、針本体7の表面に盛上り部16が設けられていても、針本体7の表面に設けられた収容凹部10の底面10aと針本体7の下面との間の厚みを均一に形成することができる。
【0048】
これにより、この腕時計の指針6では、収容凹部10の底面10aと針本体7の裏面側の取付孔9の周縁部との間を第1押え部14と第2押え部15で確実に且つ良好に挟み付けることができ、収容凹部10の底面10aに第1押え部14の下面を隙間が生じることなく密接させることができるので、針取付部材8を針本体7に安定させた状態で確実に且つ良好に取り付けることができる。
【0049】
この場合、この腕時計の指針6では、盛上り部16が、針本体7の長手方向に沿う稜線である中心線側が高く、この中心線側から針本体7の短手方向の両側縁に向けて傾斜する山形状に形成されていることにより、針本体7の長手方向における強度を高めて、針本体7全体の強度を確保することができると共に、外観性およびデザイン性を向上させることができる。
【0050】
この場合、この腕時計の指針6では、収容凹部10の深さが、取付孔9の中心部側よりも針本体7の短手方向の両側縁の側が浅く形成されていることにより、針本体7の盛上り部16が山形状に形成されていても、針本体7の表面における取付孔9の周縁部に収容凹部10を設けることにより、収容凹部10の底面10aを平坦面に形成することができる。
【0051】
これにより、この腕時計の指針6では、針本体7の表面に山形状の盛上り部16が設けられていても、針本体7の表面に設けられた収容凹部10の底面10aと針本体7の下面との間の厚みを均一に形成することができるので、収容凹部10の底面10aと針本体7の裏面側の取付孔9の周縁部とを挟持部12によって厚み方向に確実に挟み付けることができる。これにより、収容凹部10の底面10aに第1押え部14の下面を隙間が生じることなく密接させることができるので、針取付部材8を針本体7に安定させた状態で確実に且つ良好に取り付けることができる。
【0052】
なお、上述した実施形態では、針本体7の盛上り部16が山形状に形成されている場合について述べたが、この発明は、これに限らず、例えば図8(a)に示す第1変形例のように、針本体7の表面に湾曲状の盛上り部20を設けた構造であっても良い。すなわち、この盛上り部20は、針本体7の長手方向に沿う稜線側である中心線側が高く、この中心線側よりも針本体7の短手方向の両側縁が低くなる円弧状の湾曲部に形成されていても良い。
【0053】
この場合にも、針本体7の裏面は、平坦面に形成されている。このような第1変形例の指針6においても、針本体7の表面における取付孔9の周縁部に収容凹部10を設けることにより、収容凹部10の底面10aを平坦面に形成することができるので、上述した実施形態と同様、収容凹部10の底面10aに第1押え部14の下面を隙間が生じることなく密接させることができる。
【0054】
また、この発明は、上述した実施形態および第1変形例に限らず、例えば図8(b)に示す第2変形例のように、針本体7の表面に断面台形状の盛上り部21を設けた構造であっても良い。すなわち、この盛上り部21は、針本体7の長手方向に沿う稜線側である中心線側が平坦状に高く、この中心線側の針本体7の短手方向における平坦状の両側部に中心線側よりも低くなる傾斜面21aを設けた断面形状が台形状に形成されていても良い。
【0055】
この場合にも、針本体7の裏面は、平坦面に形成されている。このような第2変形例の指針6においても、針本体7の表面における取付孔9の周縁部に収容凹部10を設けることにより、収容凹部10の底面10aを平坦面に形成することができるので、上述した実施形態および第1変形例と同様、収容凹部10の底面10aに第1押え部14の下面を隙間が生じることなく密接させることができる。
【0056】
また、上述した実施形態および第1、第2変形例では、針本体7の表面に盛上り部16、20、21を設けた場合について述べたが、この発明は、これに限らず、例えば針本体7の厚みが厚い平らな形状の針本体にも適用することができる。また、収容凹部10の底面10aとこれに対応する針本体7の下面との間の厚みT1は、針本体7に針取付部材8が確実に固定される程度の一定の厚みが確保できれば、収容凹部10の深さは調整可能である。そのため、上述した実施形態および第1変形例のように針本体7の表面に山形状の盛上り部16,20を設ける場合には、収容凹部10の深さを次のような深さに設定することもできる。すなわち収容凹部10の深さは、針取付部材8の第1押え部14の上面が、針本体7の短手方向の両端において針本体7の表面と同様の高さとなる深さや、針本体7の表面より低くなる深さに設定することもできる。
【0057】
また、上述した実施形態では、指針6が時針である場合について述べたが、この発明は、必ずしも時針である必要はなく、例えば分針、秒針などの指針、あるいはディスク針などの機能針である場合にも適用することができる。
【0058】
さらに、上述した実施形態および第1、第2変形例では、指針式の腕時計に適用した場合について述べたが、この発明は必ずしも腕時計である必要はなく、例えばトラベルウオッチ、目覚まし時計、置き時計、掛け時計などの各種の指針式の時計に適用することができる。また、この発明は、必ずしも時計である必要はなく、例えばメータなどの計器類にも適用することができる。
【0059】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0060】
(付記)
請求項1に記載の発明は、取付孔が設けられた針本体と、前記取付孔に取り付けられる針取付部材と、を備え、前記針取付部材は、突出部を備え、前記針本体の表面側における前記取付孔の周縁部に、前記突出部を収容する収容凹部が設けられている、ことを特徴とする指針である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の指針において、前記突出部は、前記針本体を厚み方向に挟み付ける挟持部である、ことを特徴とする指針である。
【0061】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の指針において、前記挟持部は、前記収容凹部に配置される第1押え部と、前記針本体の裏面側の前記取付孔の周縁部に配置される第2押え部と、を備えている、ことを特徴とする指針である。
【0062】
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の指針において、前記収容凹部の底面と当該底面に対面する前記挟持部の対向面とは、互いに密接する平坦面である、ことを特徴とする指針である。
【0063】
請求項5に記載の発明は、請求項1~請求項4のいずれかに記載の指針において、前記針本体の表面は非平面である、ことを特徴とする指針である。
【0064】
請求項6に記載の発明は、請求項1~請求項5のいずれかに記載の指針において、前記針本体の表面は、前記針本体の長手方向に沿う中心線側が高く、当該中心線側から前記針本体の短手方向の両側に向けて傾斜する山形状に形成されている、ことを特徴とする指針である。
【0065】
請求項7に記載の発明は、請求項1~請求項6のいずれかに記載の指針において、前記収容凹部は、前記取付孔の中心部側よりも前記針本体の短手方向の両側が浅く形成されている、ことを特徴とする指針である。
【0066】
請求項8に記載の発明は、請求項1~請求項7のいずれかに記載された指針を備えている、ことを特徴とする時計である。
【符号の説明】
【0067】
1 時計モジュール
2 ハウジング
3 文字板
4 時計ムーブメント
5 指針軸
6 指針
7 針本体
7a 長針部
7b 短針部
7c 取付部
8 針取付部材
9 取付孔
10 収容凹部
10a 底面
11 筒状部
12 挟持部
13 軸取付孔
14 第1押え部
15 第2押え部
15a カシメ溝
16、20、21 盛上り部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8