IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気硝子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-トラバース装置 図1
  • 特許-トラバース装置 図2
  • 特許-トラバース装置 図3
  • 特許-トラバース装置 図4
  • 特許-トラバース装置 図5
  • 特許-トラバース装置 図6
  • 特許-トラバース装置 図7
  • 特許-トラバース装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】トラバース装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 54/28 20060101AFI20240509BHJP
   C03B 37/035 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B65H54/28 Z
C03B37/035
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020050407
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021147208
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 忠典
(72)【発明者】
【氏名】西堀 真治
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-217325(JP,A)
【文献】特開昭50-059542(JP,A)
【文献】特開昭50-042146(JP,A)
【文献】特開昭50-071945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/28
C03B 37/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスストランドを巻き取る際に当該ガラスストランドに綾を振らせるトラバース装置であって、
回転する回転軸と、
前記回転軸に取り付けられ、前記回転軸の軸線方向と交差する方向に延びる第1支持部と、前記回転軸における、前記第1支持部が取り付けられた位置とは前記回転軸の軸線方向及び回転軸方向において異なる位置に取り付けられ、前記回転軸の軸線方向と交差する方向に延びる第2支持部と、前記第1支持部及び前記第2支持部の前記回転軸に取り付けられる側と反対側の端部どうしを結ぶ連結部と、を有し、前記連結部は直線形状のみから構成される、複数のワイヤートラバースと、を備え
前記複数のワイヤートラバースの前記第1支持部が延びる方向はそれぞれ異なるとともに、前記第2支持部が延びる方向はそれぞれ異なる、
トラバース装置。
【請求項2】
前記連結部の長さは、前記第1支持部及び前記第2支持部よりも長い、
請求項1に記載のトラバース装置。
【請求項3】
前記第1支持部及び前記第2支持部は、前記回転軸の軸線方向に対して垂直方向に延び、かつ直線形状である、
請求項1または2に記載のトラバース装置。
【請求項4】
前記第1支持部の反対側の端部が、前記第2支持部の反対側の端部よりも前記回転軸から離間している、
請求項1~3のいずれか一項に記載のトラバース装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスストランドを綾振りするために用いられるトラバース装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チョップドストランドやロービングパッケージ等のガラス製品は、ブッシングから引き出されたガラスストランドをコレットに巻き取ってケーキとし、その後ケーキから引き出されたガラスストランドを二次加工することにより製造される。
【0003】
通常ケーキを製造する場合には、二次加工工程においてケーキからガラスストランドを引き出しやすいようにするために、ガラスストランドをコレットの軸方向に沿った方向に往復移動させながらコレットに巻き取る。ガラスストランドを往復移動させることは、綾振りと呼ばれる。この綾振りに用いられる装置はトラバース装置と呼ばれ、トラバース装置は、高速回転する支軸と、その支軸に取り付けられているスパイラル形状等をした2本のトラバースワイヤから構成されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照 )。
【0004】
また、近年は、ガラス製品の生産性の向上のため、1個のコレットに複数本のガラスストランドを巻き取ってケーキが製造される(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
図8は、従来のトラバース装置により、4本のガラスストランドを綾振りする場合におけるガラスストランドの動きの概略を示す図である。従来のトラバース装置100は、2本のワイヤートラバース101、102と、軸線αを中心に回転する回転軸103とを備える。ワイヤートラバース101、102は、それぞれ1本のワイヤーにより構成される。ワイヤートラバース101は、回転軸103の側面で接続する第1部101a、第1部101aからU字状に曲がった後に延伸するとともに、直線状である第2部101b、第2部101bから延伸するとともに、曲線形状である第3部101c、第3部101cから延伸するとともに、回転軸103の側面で接続し、直線状である第4部101dにより構成される。また、ワイヤートラバース102は、回転軸103の側面で接続する第1部102a、第1部102aからU字状に曲がった後に延伸するとともに、直線状である第2部102b、第2部102bから曲がった後に延伸するとともに、曲線形状である第3部102c、第3部102cから延伸するとともに、回転軸103の側面で接続し、直線状である第4部102dにより構成される。なお、各ワイヤートラバース101、102は同じ形状であり、第1部101a、102a、第2部101b、102b、第3部101c、102c、第4部101d、102bはそれぞれ同じ形状である。
【0006】
ブッシングから数百から数万本のフィラメントが引き出され、シューにより4本に束ねられたガラスストランドSは、コレットに巻き取るために、トラバース装置100のワイヤートラバース101の第2部101bに接触させる。その際、ガラスストランドSどうしが接するようにする。次に、回転軸103を回転させる。これにより、ワイヤートラバース101、102が回転軸103を中心に回転する。ワイヤートラバース101、102が回転することにより、各ガラスストランドSが、ワイヤートラバース101、102に沿って移動する。具体的には、各ガラスストランドSは、ワイヤートラバース101の第2部101bから第3部101cに移動する。そして、各ガラスストランドSは、ワイヤートラバース102に乗り移り、第3部102cを移動し、再びワイヤートラバース101の第3部101cに乗り移る。その後は、ワイヤートラバース102の第3部102cとワイヤートラバース101の第3部101c間の乗り移りと移動が、回転軸103が回転している間は繰り返される。この動作により、各ガラスストランドSが回転軸103の軸方向に沿って往復移動することになる。コレットを回転させつつ、トラバース装置100の回転軸103を回転させることで、各ガラスストランドSがコレットに綾振りされながら巻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特公昭42-21302号公報
【文献】特開昭50-42146号公報
【文献】特開昭53-106830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
1個のコレットに複数本のガラスストランドを巻き取る際には、各ガラスストランドの長さが等しくなるように巻き取られることが重要となる。ガラスストランドの長さが異なると、二次加工の際において問題が発生する。例えば、ロービングパッケージを製造する際において、ロービングストランドを構成するガラスストランドの長さが異なると、ロービングパッケージの品質の低下を招く。
図8のような従来のワイヤートラバース101を利用したトラバース装置100では、ケーキを製造するに当たり、各ガラスストランドSが接したり離れたりを繰り返す。このように、各ガラスストランドSが接したり離れたりを繰り返すことにより、ガラスストランドSの長さが均一にならない場合があった。
【0009】
また、各ガラスストランドSが接したり離れたりを繰り返すことにより、ガラスストランドSどうしが擦り合い、ガラスストランドSから毛羽が発生する場合がある。
【0010】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、コレットに巻き取られるガラスストランドの長さを均一にできるとともにガラスストランドから発生する毛羽を抑制できるトラバース装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のトラバース装置は、ガラスストランドを巻き取る際に当該ガラスストランドに綾を振らせるトラバース装置であって、回転する回転軸と、前記回転軸に取り付けられ、前記回転軸の軸線方向と交差する方向に延びる第1支持部と、前記回転軸における、前記第1支持部が取り付けられた位置とは前記回転軸の軸線方向及び回転軸方向において異なる位置に取り付けられ、前記回転軸の軸線方向と交差する方向に延びる第2支持部と、前記第1支持部及び前記第2支持部の前記回転軸に取り付けられる側と反対側の端部どうしを結ぶ連結部と、を有し、前記連結部は直線形状である、ワイヤートラバースと、を備える。
【0012】
本構成によれば、ワイヤートラバースの連結部が直線形状であるため、当該トラバース装置により複数本のガラスストランドをコレットに巻き取る際において、各ガラスストランド間の距離がほぼ一定となり、コレットに巻き取られるガラスストランドの長さを均一にすることができる。また、ガラスストランドから発生する毛羽も抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コレットに巻き取られるガラスストランドの長さを均一にできるとともに毛羽の発生を抑制できるトラバース装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第一実施形態のトラスバース装置10を含むケーキ製造装置を示す図である。
図2図2は、第一実施形態のケーキ製造装置を構成する分割シュー25を示す図である。
図3図3は、第一実施形態のトラバース装置10の概略斜視図である。
図4図4は、第一実施形態のトラバース装置10を、軸線方向における駆動部2の反対から見た図である。(a)は、ワイヤートラバース3のみを、(b)は、ワイヤートラバース4のみを、(c)は、ワイヤートラバース5のみを、(d)は、ワイヤートラバース6のみを示している。
図5図5は、コレット26上におけるガラスストランドSの動作を示す図である。
図6図6は、第二実施形態のトラバース装置20の概略斜視図である。
図7図7は、第二実施形態のトラバース装置20を、軸線方向における駆動部2の反対から見た図である。(a)は、ワイヤートラバース11のみを、(b)は、ワイヤートラバース12のみを、(c)は、ワイヤートラバース13のみを、(d)は、ワイヤートラバース14のみを、(e)は、ワイヤートラバース15のみを、(f)は、ワイヤートラバース16のみを、(g)は、ワイヤートラバース17のみを、(h)は、ワイヤートラバース18のみを、示している。
図8図8は、従来のトラバース装置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0016】
図1は、第一実施形態のトラバース装置10を用いてケーキを製造する製造装置を示す図である。ケーキは、以下のようにして製造される。
【0017】
まず、ガラス原料を溶融槽21で溶融し、その溶融ガラスをブッシングの複数のノズル孔22から引き出すことにより複数本のガラス繊維フィラメント23を得る。なお、ノズル孔22の数は、100~15000本であり、ノズル孔22の数と同数のガラス繊維フィラメント23が得られる。次に、このようにして得られた複数本のガラス繊維フィラメント23に対してアプリケータ24で集束剤を塗布し、複数本のガラス繊維フィラメント23を、分割シュー25によって束ねて、4本のガラスストランドSを形成する。分割シュー25は、図2に示すように、4つの溝25a、25b、25c、25dを有し、各溝25a、25b、25c、25dにガラス繊維フィラメント23が導入される。なお、各溝25a、25b、25c、25dに導入されるガラス繊維フィラメントの本数は同数であることが好ましい。そして、4本のガラスストランドSをトラバース装置10で綾振りしながら高速回転するコレット26に巻き取ってケーキを製造する。このケーキからガラスストランドSを引き出して、合糸ロービングパッケージ等を作製する。
【0018】
図3は、上記トラバース装置10を概略的に示す斜視図である。トラバース装置10は、軸線αを中心に回転可能な回転軸1と、回転軸1を回転駆動するための駆動部2と、4本のワイヤートラバース3、4、5、6(以下、4本のワイヤートラバースを表す場合、「ワイヤートラバース3~6」と記載する。)とを有している。
【0019】
回転軸1は、駆動部2に回転可能に取り付けられており、駆動部2により回転駆動されて軸線α周りに回転するようになっている。駆動部2は、モーターにより回転軸1を回転させるように構成されている。回転軸1は、取り付けリング7、8を具備しており、ワイヤートラバース3~6は、取り付けリング7、8を介して回転軸1に取り付けられる。取り付けリング7、8にはワイヤートラバース3~6の断面形状とほぼ同じ形状の開口が形成されている。取り付けリング7、8には、開口がそれぞれ4個ずつ形成されている。取り付けリング7には、隣接して2個の開口が形成されており、これら2個の開口と軸線αに対して対称となる位置にも2個の開口が形成されている。取り付けリング8には、軸線α方向に隣接して2個の開口が形成されており、軸線αに対して対称となる位置に2個の開口が形成されている。なお、取り付けリング7、8は回転軸1と一体物でもよい。また、取り付けリング7、8を省略し、ワイヤートラバース3~6を回転軸1に直接取り付けても良い。また、リング7、8の代わりに、例えば、ワイヤートラバース3、4、5、6の軸α長さと略同一の長さのリングを1個、回転軸1に取り付けてもよい。
【0020】
ワイヤートラバース3~6は、取り付けリング7、8に取り付けられ、回転軸1の軸線αと交差する方向に延びる第1支持部3a、4a、5a、6a(以下、4個のワイヤートラバースの第1支持部を表す場合、「第1支持部3a~6a」と記載する。)と、取り付けリング7、8に取り付けられ、回転軸1の軸線αと交差する方向に延びる第2支持部3b、4b、5b、6b(以下、4個のワイヤートラバースの第2支持部を表す場合、「第1支持部3b~6b」と記載する。)と、第1支持部3a~6a及び第2支持部3b~6bの取り付けリング7、8に取り付けられる側と反対側の端部どうしを結ぶ連結部3c、4c、5c、6c(以下、4個のワイヤートラバースの連結部を表す場合、「連結部3c~6c」と記載する。)とにより構成される。本実施形態においては、第1支持部3a~6aはそれぞれ長さが等しく、第2支持部3b~6bもそれぞれ長さが等しく、そして、第1支持部3a~6aは、第2支持部3b~6bよりも長い。なお、第1支持部3a~6aの長さは異なってもよく、第2支持部3b~6bの長さも異なってもよい。また、第1支持部3a~6aの長さと第2支持部3b~6bの長さは全て等しくしてもよい。また、連結部3c~6cは、第1支持部3a~6aよりも長い。なお、本実施形態では、ワイヤートラバース3~6は、1本のワイヤーを曲げることにより得られたものであるが、例えば、第1支持部3a~6aと連結部3c~6cとを溶接で接続し、第2支持部3b~6bと連結部3c~6cとを溶接で接続しても良いし、はめ込み、ボルト固定、挟み込み等で接続してもよい。
【0021】
図4は、本実施形態のトラバース装置10を、軸線α方向における駆動部2の反対側から見た図である。図4(a)はワイヤートラバース3のみを、(b)は、ワイヤートラバース4のみを、(c)は、ワイヤートラバース5のみを、(d)は、ワイヤートラバース6のみを示している。図4において、ワイヤートラバース3~6の実線は、リング7に取り付けられた部位であり、二点破線はリング8に取り付けられた部位であり、点線は連結部3c~6cを表す。なお、図4では、駆動部2の記載を省略している。図4に示すように、ワイヤートラバース3の第1支持部3aが取り付けられる位置は、ワイヤートラバース5の第2支持部5bと隣接する。ワイヤートラバース3の第2支持部3bは、ワイヤートラバース4の第1支持部4aと隣接する。ワイヤートラバース4の第2支持部4bは、ワイヤートラバース6の第1支持部6aと隣接する。ワイヤートラバース5の第1支持部5aは、ワイヤートラバース6の第2支持部6bと隣接する。
【0022】
そして、本実施形態においては、ワイヤートラバース3~6の第1支持部3a~6a、ワイヤートラバース3~6の第2支持部3b~6b、及びワイヤートラバース3~6の連結部3c~6cは、それぞれ直線状である。なお、第1支持部3a~6a、第2支持部3b~6bは直線状でなくてもよい。ワイヤートラバース3~6の連結部3c~6cが、第1支持部3a~6a、及び第2支持部3b~6bとの接続箇所は、図3に示すように鋭角となってもよく、ラウンド状や鈍角となっていてもよい。
【0023】
また、図4に示す通り、ワイヤートラバース3の第1支持部3aと第2支持部3bの延伸方向、ワイヤートラバース4の第1支持部4aと第2支持部4bの延伸方向、ワイヤートラバース5の第1支持部5aと第2支持部5bの延伸方向、及びワイヤートラバース6の第1支持部6aと第2支持部6bの延伸方向はそれぞれ異なる。さらに、本実施形態においては、第1支持部3a~6a、及び第2支持部3b~6bは、それぞれ軸線αに対して垂直となる。なお、リング7、8の間隔が、トラバース装置10によりガラスストランドSを綾振りすることができる範囲となる。また、第1支持部3a~6a、及び第2支持部3b~6bは、それぞれ軸線αに対して垂直でなくてもよい。
【0024】
以下に、上記トラバース装置10を使用したコレット26へのガラスストランドSの巻き取り方法について説明する。
【0025】
トラバース装置10を分割シュー25の下方でかつコレット26の上方に配置する。この際、図1に示すようにトラバース装置10の回転軸1の軸線αがコレット26の回転軸線と略平行になるように配置する。また、4本のガラスストランドSは、ワイヤートラバース3の第2支持部3bとワイヤートラバース4の第1支持部4aとの間に通される。なお、トラバース装置10の位置はコレット26に対して常時一定であってもよいが、ガラスストランドSの巻き取りに連れてケーキの外径が大きくなるのに伴い、トラバース装置10をコレット26から徐々に離すように移動させるようにしてもよい。
【0026】
次に、コレット26を回転させてガラスストランドSを巻き取る過程でのガラスストランドSの動作を説明する。回転軸βを中心にコレット26を回転させると共に、トラバース装置10の駆動部2を作動させて回転軸1を軸線α周りに高速回転させる。そして、回転軸1及びコレット26を回転させることにより、ガラスストランドSがコレット26に巻き取られる。また、ガラスストランドSは、ワイヤートラバース3~6に沿って回転軸1の軸線α方向に往復移動する。具体的には、ガラスストランドSは、回転軸1の回転にともない移動を開始し、ワイヤートラバース4の連結部4cの第1支持部4a側からワイヤートラバース4の連結部4cの第2支持部4b側まで移動する。次に、ガラスストランドSがワイヤートラバース6に乗り移り、ワイヤートラバース6の連結部6cの第1支持部6a側からワイヤートラバース6の第2支持部6b側まで移動する。次に、ガラスストランドSがワイヤートラバース5に乗り移り、ワイヤートラバース5の連結部5cの第1支持部5a側からワイヤートラバース5の第2支持部5b側まで移動する。次に、ガラスストランドSがワイヤートラバース3に乗り移り、ワイヤートラバース3の連結部3cの第1支持部3a側からワイヤートラバース3の第2支持部3b側まで移動する。次に、ガラスストランドSがワイヤートラバース4に乗り移る。コレット26及び回転軸1が回転している間はこの一連の動作が繰り返される。
【0027】
これにより、図5に示すようにコレット26の回転軸β方向全体にわたってガラスストランドSが巻き取られる。すなわち、ガラスストランドSが綾振りされてコレット26に巻き取られる。
【0028】
従来のように、ワイヤートラバースに曲線部や段差等が存在する場合、当該曲線部や段差がガラスストランドSの移動の妨げとなり得る。そのため、複数のガラスストランドS間の距離が変動しやすい。例えば、図8のように、第3部101cのように曲面となっていると、ガラスストランドSが移動する速度に差が生じるために、複数のガラスストランドS間の距離が変動しやすくなる。本実施形態におけるトラバース装置10の場合、ワイヤートラバース3~6の連結部3c~6cは、それぞれ直線状である。そのため、ガラスストランドSの移動がスムーズに行われることになる。よって、複数のガラスストランドS間の距離がほぼ一定となる。よって、コレット26に巻き取られるガラスストランドSの長さを均一にできる。また、図8の形態では、ガラスストランドS間の距離が変動することにより、ガラスストランドSどうしが擦れあい、毛羽が発生する。複数のガラスストランドS間の距離をほぼ一定とすることで、毛羽の発生も抑制できる。
【0029】
次に本発明の第二実施形態のトラバース装置を用いてケーキを製造する製造装置について説明する。なお、トラバース装置以外の構成については第一実施形態の製造装置と同じであるため、トラバース装置について説明する。また、第一の実施形態で説明した構成と同じものについては、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0030】
図6に示すように、8本のワイヤートラバース11、12、13、14、15、16、17、18(以下、8本のワイヤートラバースを表す場合、「ワイヤートラバース11~18」と記載する。)は、取り付けリング7、8を介して回転軸1に取り付けられる。取り付けリング7、8にはワイヤートラバース11~18の断面形状とほぼ同じ形状の開口が形成されている。取り付けリング7、8には、開口がそれぞれ8個ずつ形成されている。取り付けリング7には、軸線α方向に隣接して2個の開口が形成されており、当該開口が形成された位置から軸線αに沿って90°、180°、270°回転した位置にそれぞれ2個の開口が形成されている。取り付けリング8には、軸線α方向に隣接して2個の開口が形成されており、当該開口が形成された位置から軸線αに沿って90°、180°、270°回転した位置にそれぞれ2個の開口が形成されている。
【0031】
ワイヤートラバース11~18は、それぞれ取り付けリング7、8に取り付けられ、回転軸1の軸線αと交差する方向に延びる第1支持部11a、12a、13a、14a、15a、16a、17a、18a(以下、8個のワイヤートラバースの第1支持部を表す場合、「第1支持部11a~18a」と記載する。)と、それぞれ取り付けリング7、8に取り付けられ、回転軸1の軸線αと交差する方向に延びる第2支持部11b、12b、13b、14b、15b、16b、17b、18b(以下、8個のワイヤートラバースの第2支持部を表す場合、「第2支持部11b~18b」と記載する。)と、第1支持部11a~18a及び第2支持部11b~18bの取り付けリング7、8に取り付けられる側と反対側の端部どうしを結ぶ連結部11c、12c、13c、14c、15c、16c、17c、18c(以下、8個のワイヤートラバースの連結部を表す場合、「連結部11c~18c」と記載する。)とにより構成される。本実施形態においては、第1支持部11a~18aはそれぞれ長さが等しく、第2支持部11b~18bもそれぞれ長さが等しく、そして、第1支持部11a~18aは、第2支持部11b~18bよりも長い。また、連結部11c~18cは、第1支持部11a~18aよりも長い。なお、第1支持部11a~18aの長さは異なってもよく、第2支持部11b~18bの長さも異なってもよい。また、第1支持部11a~18aの長さと第2支持部11b~18bの長さを等しくしてもよい。
【0032】
図7は、本実施形態のトラバース装置20を、軸線α方向における駆動部2の反対側から見た図である。図7(a)は、ワイヤートラバース11のみを、(b)は、ワイヤートラバース12のみを、(c)は、ワイヤートラバース13のみを、(d)は、ワイヤートラバース14のみを、(e)は、ワイヤートラバース15のみを、(f)は、ワイヤートラバース16のみを、(g)は、ワイヤートラバース17のみを、(h)は、ワイヤートラバース18のみを示している。図7において、ワイヤートラバース11~18の実線は、リング7に取り付けられた部位であり、二点破線はリング8に取り付けられた部位であり、点線は連結部11c~18cを表す。なお、図7では、駆動部2の記載を省略している。図7に示すように、ワイヤートラバース11の第1支持部11aが取り付けられる位置は、ワイヤートラバース18の第2支持部18bと隣接する。ワイヤートラバース11の第2支持部11bは、ワイヤートラバース12の第1支持部12aと隣接する。ワイヤートラバース12の第2支持部12bは、ワイヤートラバース13の第1支持部13aと隣接する。ワイヤートラバース13の第2支持部13bは、ワイヤートラバース14の第1支持部14aと隣接する。ワイヤートラバース14の第2支持部14bは、ワイヤートラバース15の第1支持部15aと隣接する。ワイヤートラバース15の第2支持部15bは、ワイヤートラバース16の第1支持部16aと隣接する。ワイヤートラバース16の第2支持部16bは、ワイヤートラバース17の第1支持部17aと隣接する。ワイヤートラバース17の第2支持部17bは、ワイヤートラバース18の第1支持部18aと隣接する。
【0033】
以下に、上記トラバース装置20を使用したコレット26へのガラスストランドSの巻き取りについて説明する。
【0034】
トラバース装置20を分割シュー25の下方でかつコレット26の上方に配置する。この際、第一実施形態のトラバース装置10を用いてケーキを製造する製造装置と同じように配置する。
【0035】
次に、コレット26を回転させると共に、トラバース装置20の駆動部2を作動させて回転軸1を軸線α周りに高速回転させる。また、ガラスストランドSは、ワイヤートラバース11~18に沿って回転軸1の軸線α方向に往復移動する。具体的には、ガラスストランドSは、回転軸1の回転にともない移動を開始し、ワイヤートラバース11の連結部11cの第1支持部11a側からワイヤートラバース11の連結部11cの第2支持部11b側まで移動する。次に、ガラスストランドSがワイヤートラバース12に乗り移り、ワイヤートラバース12の連結部12cの第1支持部12a側からワイヤートラバース12の第2支持部12b側まで移動するとともに、ワイヤートラバース13に乗り移る。この動作を繰り返し、ガラスストランドSは、ワイヤートラバース14、ワイヤートラバース15、ワイヤートラバース16、ワイヤートラバース17、ワイヤートラバース18、ワイヤートラバース11・・・の順に乗り移る。コレット26及び回転軸1が回転している間はこの一連の動作が繰り返される。
【0036】
これにより、図5に示すようにコレット26の回転軸β方向全体にわたってガラスストランドSが巻き取られる。
【0037】
なお、上記の実施形態においては、ワイヤートラバースが4本及び8本のトラバース装置を例示したが、ワイヤートラバースの本数は、偶数本であればよく、例えば、2本や16本であってもよい。
【実施例
【0038】
次に、実施例により本発明の効果を説明する。
【0039】
(実施例1)
実施例1として、第一実施形態のトラバース装置10を用いてケーキを製造する製造装置を用いてケーキを製造した。2400個のノズル孔22から溶融ガラスを引き出してガラス繊維フィラメントを得た後、分割シュー25により4本のガラスストランドSとし、トラバース装置10の回転軸1及びコレット26を回転させることにより、ガラスストランドSをコレット26に巻き取り、ケーキを作製した。
【0040】
(実施例2)
実施例2として、第二実施形態のトラバース装置20を用いてケーキを製造する製造装置を用いてケーキを製造した。2400個のノズル孔22から溶融ガラスを引き出してガラス繊維フィラメントを得た後、分割シュー25により4本のガラスストランドSとし、トラバース装置20の回転軸1及びコレット26を回転させることにより、ガラスストランドSをコレット26に巻き取り、ケーキを作製した。
【0041】
(比較例1)
比較例1として、図8のようにワイヤーが湾曲したトラバース装置を用いてケーキを製造する製造装置を用いてケーキを製造した。2400個のノズル孔22から溶融ガラスを引き出してガラス繊維フィラメントを得た後、分割シュー25により4本のガラスストランドSとし、トラバース装置20の回転軸1及びコレット26を回転させることにより、ガラスストランドSをコレット26に巻き取り、ケーキを作製した。なお、実施例1、2及び比較例1における回転軸1及びコレット26の回転速度及び回転時間は一緒である。
【0042】
実施例1、実施例2及び比較例1により得られたケーキの糸長差と毛羽の発生量を測定した。糸長差の測定方法としては、ケーキから4本のガラスストランドを引き出す。そして、4本のガラスストランドの端部どうしを1か所にまとめてガラスストランドを引き出す。すべてのガラスストランドが引き出された際に、最も長いガラスストランドと最も短いガラスストランドの差を測定する。この値が糸長差である。毛羽の発生量は、ケーキから1本のガラスストランドを400m/分の速度で、直径10mmの真鍮製のテンションバーに接触させつつ6000m引き出し、その際にテンションバーに付着したり、下に落下した毛羽の量を測定することにより求めた。
【0043】
その結果、実施例1、2における糸長差は、比較例1の糸長差よりも小さい値となった。また、実施例1、2における毛羽は、比較例1の毛羽よりも少なかった。
【符号の説明】
【0044】
1…回転軸
3、4、5、6、11、12、13、14、15、16、17、18…ワイヤートラバース
3a、4a、5a、6a、11a、12a、13a、14a、15a、16a、17a、18a…第1支持部
3b、4b、5b、6b、11b、12b、13b、14b、15b、16b、17b、18b…第2支持部
3c、4c、5c、6c、11c、12c、13c、14c、15c、16c、17c、18c…連結部
10、20…トラバース装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8