(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/118 20170101AFI20240509BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20240509BHJP
B29C 64/321 20170101ALI20240509BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20240509BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240509BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240509BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20240509BHJP
B29C 70/34 20060101ALI20240509BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20240509BHJP
【FI】
B29C64/118
B29C64/209
B29C64/321
B29C64/393
B33Y30/00
B33Y50/02
B29C70/16
B29C70/34
B29K105:08
(21)【出願番号】P 2020053317
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝田 修弘
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/151074(WO,A1)
【文献】特開2017-185788(JP,A)
【文献】特表2016-518267(JP,A)
【文献】特表2016-531020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面を有する台と、
フィラメントを
内側に通して加熱する
筒状の加熱部を有し、前記フィラメントを前記面に向けて送出させる送出部と、
前記送出部よりも前記フィラメントの送出方向下流側に配置され、前記面に送り出されたフィラメントを前記面に対して加圧する加圧部と、
前記送出方向における前記加圧部と前記加熱部との間でフィラメントを切断する切断部と、
前記フィラメントの切断端を前記加熱部の内側に引き戻す引き戻し手段と、
を備える造形装置。
【請求項2】
面を有する台と、
フィラメントを加熱する加熱部を有し、前記フィラメントを前記面に向けて送出させる送出部と、
前記送出部よりも前記フィラメントの送出方向下流側に配置され、前記面に送り出されたフィラメントを前記面に対して加圧する加圧部と、
前記送出方向における前記加圧部と前記加熱部との間でフィラメントを切断する切断部と、
を備え、
前記フィラメントの切断端を前記加熱部による被加熱範囲に引き戻す引き戻し手段をさらに備える、
造形装置。
【請求項3】
前記送出部は、複数の前記フィラメントが並列して成る並列フィラメントを前記面に向けて送出させ、
前記切断部は、前記並列フィラメントを成す複数の前記フィラメントを個別に切断する個別切断部を含む、
請求項1
又は請求項2に記載の造形装置。
【請求項4】
面を有する台と、
フィラメントを加熱する加熱部を有し、前記フィラメントを前記面に向けて送出させる送出部と、
前記送出部よりも前記フィラメントの送出方向下流側に配置され、前記面に送り出されたフィラメントを前記面に対して加圧する加圧部と、
前記送出方向における前記加圧部と前記加熱部との間でフィラメントを切断する切断部と、
を備え、
前記送出部は、複数の前記フィラメントが並列して成る並列フィラメントを前記面に向けて送出させ、
前記切断部は、前記並列フィラメントを成す複数の前記フィラメントを個別に切断する個別切断部を含む、
造形装置。
【請求項5】
前記切断部を制御し、造形物の造形プロセスデータに応じて複数の前記フィラメントを個別に切断させる制御部をさらに備える、
請求項
3又は請求項4に記載の造形装置。
【請求項6】
前記切断部は、前記並列フィラメントを成す複数の前記フィラメントを前記
フィラメントの送出方向と交差する交差方向の一方側から個別に押圧する複数の個別押圧刃と、前記並列フィラメントに対して前記交差方向の他方側に配置され、
複数の前記フィラメントを押圧する前記複数の個別押圧刃を受けて前記フィラメントを切断させるひとつの受け部と、を備える、
請求項
3から請求項
5の何れか1項に記載の造形装置。
【請求項7】
前記送出部は、複数の前記フィラメントが並列して成る並列フィラメントを前記面に向けて送出させ、
前記切断部は、前記並列フィラメントを成す複数の前記フィラメントを一括に切断する一括切断部を含む、
請求項1~
6の何れか1項に記載の造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、部品の積層造形用の3Dプリンタであって、前記3Dプリンタは、フィラメントのマトリックス材内に延在する1つ又は複数の非弾性軸方向繊維ストランドを含む、未溶融の繊維強化複合フィラメントの繊維複合フィラメント供給部と、前記部品を支持する可動プラテン体と、前記可動プラテン体に対向し、複合フィラメントしごき先端、及び前記複合フィラメントしごき先端を前記マトリックス材の溶融温度よりも高く加熱するヒータを含むプリントヘッドと、前記プリントヘッド及び前記プラテン体を3自由度で相対移動させる複数のアクチュエータと、前記未溶融の繊維強化複合フィラメント、及び前記未溶融の繊維強化複合フィラメントの中に埋め込まれた前記非弾性繊維ストランドを、ある直線送り速度で前記プリントヘッド内に入れるフィラメントドライブと、前記フィラメントドライブ及び前記しごき先端の間に位置し、前記マトリックス材の溶融温度未満に維持される冷却送りゾーンと、前記ヒータ、前記フィラメントドライブ及び前記複数のアクチュエータに動作可能に接続されたコントローラとを備え、前記コントローラは、前記フィラメントドライブに、前記複合フィラメントの未接着の終端を、前記フィラメントドライブと前記しごき先端の間の前記冷却送りゾーンに保持させる命令を実行する、3Dプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、加熱部よりもフィラメントの送出方向上流側でフィラメントを切断する構成と比して、造形される造形物の寸法精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様に記載の造形装置は、面を有する台と、フィラメントを加熱する加熱部を有し、前記フィラメントを前記面に向けて送出させる送出部と、前記送出部よりも前記フィラメントの送出方向下流側に配置され、前記面に送り出されたフィラメントを前記面に対して加圧する加圧部と、前記送出方向における前記加圧部と前記加熱部との間でフィラメントを切断する切断部と、を備える。
【0006】
第2態様に記載の造形装置は、第1態様に記載の造形装置において、前記加熱部は、前記フィラメントを内側に通して加熱する筒状である。
【0007】
第3態様に記載の造形装置は、第2態様に記載の造形装置において、前記フィラメントの切断端を前記加熱部の内側に引き戻す引き戻し手段をさらに備える。
【0008】
第4態様に記載の造形装置は、第1態様に記載の造形装置において、前記フィラメントの切断端を前記加熱部による被加熱範囲に引き戻す引き戻し手段をさらに備える。
【0009】
第5態様に記載の造形装置は、第1態様~第4態様の何れか一態様に記載の造形装置において、前記送出部は、複数の前記フィラメントが並列して成る並列フィラメントを前記面に向けて送出させ、前記切断部は、前記並列フィラメントを成す複数の前記フィラメントを個別に切断する個別切断部を含む。
【0010】
第6態様に記載の造形装置は、第5態様に記載の造形装置において、前記切断部を制御し、造形物の造形プロセスデータに応じて複数の前記フィラメントを個別に切断させる制御部をさらに備える。
【0011】
第7態様に記載の造形装置は、第5態様又は第6態様に記載の造形装置において、前記切断部は、前記並列フィラメントを成す複数の前記フィラメントを前記交差方向の一方側から個別に押圧する複数の個別押圧刃と、前記並列フィラメントに対して前記交差方向の他方側に配置され、前記複数のフィラメントを押圧する前記複数の個別押圧刃を受けて前記フィラメントを切断させるひとつの受け部と、を備える。
【0012】
第8態様に記載の造形装置は、第1態様~第7態様の何れか一態様に記載の造形装置において、前記送出部は、複数の前記フィラメントが並列して成る並列フィラメントを前記面に向けて送出させ、前記切断部は、前記並列フィラメントを成す複数の前記フィラメントを一括に切断する一括切断部を含む。
【発明の効果】
【0013】
第1態様に記載の造形装置によれば、加熱部よりもフィラメントの送出方向上流側でフィラメントを切断する構成と比して、造形される造形物の寸法精度が向上される。
【0014】
第2態様に記載の造形装置によれば、加熱部が筒状である構成において、加熱部よりも送出方向上流側でフィラメントを切断する構成と比して、フィラメントの切断後にフィラメントを送出部から再送出させるときの作業性が向上される。
【0015】
第3態様に記載の造形装置によれば、フィラメントの切断端を加熱部よりも送出方向上流側に引き戻す構成と比して、フィラメントの切断後にフィラメントを送出部から再送出させるときの作業性が向上される。
【0016】
第4態様に記載の造形装置によれば、フィラメントの切断後にそのままフィラメントを再送出させる構成と比して、再送出されるフィラメントの接着性が向上される。
【0017】
第5態様に記載の造形装置によれば、切断部が並列フィラメントを成す複数のフィラメントを一度の切断でひと括りに切断する一括切断部のみを備える構成と比して、造形される造形物の寸法精度を向上させることができる。
【0018】
第6態様に記載の造形装置によれば、造形される造形物の寸法精度が向上される。
【0019】
第7態様に記載の造形装置によれば、複数のハサミでフィラメントを個別に切断する構成と比して、個別切断部の構成が簡易になる。
【0020】
第8態様に記載の造形装置によれば、切断部が並列フィラメントを成す複数のフィラメントを個別に切断する個別切断部のみを備える構成と比して、複数のフィラメントの切断位置のばらつきを抑制させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態に係る造形装置を示す概略側面図である。
【
図2】実施形態に係る送出部を下方から見た状態を示す斜視図である。
【
図3】実施形態に係る造形装置の切断部がフィラメントを切断する動作を示す概略側面図である。
【
図4】実施形態に係る造形装置の搬送ロールがフィラメントを引き戻す動作を示す概略側面図である。
【
図5】(a)実施形態に係る個別切断部及び一括切断部の正面図である。(b)実施形態に係る個別切断部及び一括切断部の側面図である。
【
図6】(a)~(e)実施形態に係る複数の押圧刃の正面図である。
【
図7】実施形態に係る造形装置の切断部が並列フィラメントを切断する動作を示す平面図である。
【
図8】実施形態に係る並列フィラメントの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係る造形装置の一例について、図面に基づいて説明する。
【0023】
なお、以下に示す説明では、造形装置10をユーザ(図示省略)が立つ側から正面視して、装置上下方向(鉛直方向)、装置幅方向(水平方向)、装置奥行方向(水平方向)をそれぞれ、H方向、W方向、D方向と記載する。また、装置上下方向、装置幅方向、装置奥行方向のそれぞれ一方側と他方側を区別する必要がある場合は、造形装置10を正面視して、上側を+H側、下側を-H側、右側を+W側、左側を-W側、奥側を-D側、手前側を+D側と記載する。
【0024】
(造形装置10)
造形装置10は、溶解積層方式(FDM方式(Fused Deposition Modeling))の三次元造形装置(3Dプリンタ)であって、複数の層の層データに従って、層を複数重ねることで、造形物を造形する装置である。造形装置10は、
図1に示されるように、造形部12と、台14と、移動部18と、を備える。造形装置10の各部の動作は、造形物の三次元データに従って、制御部16によって制御される。
【0025】
台14は、造形装置10の下方の部分に配置され、上方を向く水平面である面14aを有する。
【0026】
移動部18は、造形物の三次元データに基づく造形プロセスデータに従って、造形部12を台14に対して相対移動させる。すなわち、造形部12は、移動部18によって、台14の面14aに沿って、面14aに対して相対移動する。また、造形部12は、移動部18によって、積層方向に沿って、面14aに対して相対移動する。実施形態において、移動部18は、台14に対して上側に配置されており、造形部12を装置幅方向、装置奥行方向、及び装置上下方向に移動させ、さらに、上下方向を軸方向として造形部12を回転させる複数のアクチュエータを含んで構成されている。なお、移動部18は、台14を造形部12に対して移動させる構成であってもよい。
【0027】
(造形部)
造形部12は、装置上下方向において、台14と移動部18との間に配置されている。造形部12は、後述するフィラメントFBが面14aに沿う方向に4つ並列して成る並列フィラメントFAを造形材として台14の面14a上に送出して層を形成し、該層を複数重ねることで立体物を造形する。実施形態において、並列フィラメントFAを成すフィラメントFBは、装置奥行方向に並列している。造形部12は、供給部20と、搬送部24と、積層部30と、を備える。
【0028】
供給部20は、例えば移動部18に取り付けられており、フィラメントFBが巻かれている4つのリール22を含んで構成されている。供給部20は、それぞれのリール22から積層部30にフィラメントFBを供給する。フィラメントFBは、繊維束に樹脂が含侵されて成るものである。繊維束は、連続繊維の束の一例である。連続繊維は、例えば直径0.007mmの炭素繊維である。繊維束は、例えば、この炭素繊維3000本を直径0.4mmの円形状に束ねることで成されている。実施形態において、供給部20のリール22は、造形装置10に対して脱着可能であり、フィラメントFBが巻かれている他のリールと交換可能な構成を有している。なお、4つのリール22は、
図1においては、1つのリールとして表現を簡略化されている。
【0029】
搬送部24は、供給部20に対してフィラメントFBの供給方向下流側に配置されており、並列フィラメントFAを成すフィラメントFBの並列方向に並ぶ、搬送ロール対を含んで構成されている。一対の搬送ロール対は、装置奥行方向を軸方向として上下に並んで配置されているロール部材である。搬送部24は、供給部20から供給されるフィラメントFBを搬送ロール対で挟持しており、該フィラメントFBを積層部30に向けて搬送する。搬送部24による、フィラメントFBの搬送方向は、台14の面14aに対して傾斜している。実施形態におけるフィラメントFBの搬送方向は、面14aに対して-W側で且つ-H側に向かって傾斜している方向である。実施形態において、搬送部24は、フィラメントFBのそれぞれに対応して、フィラメントFBの並列方向に並ぶ4対で一組の搬送ロール対が、フィラメントFBの搬送方向に並んで2組配置されている構成を有している。2組の搬送ロール対は、フィラメントFBの搬送方向上流側から順にそれぞれ、上流側搬送ロール対24a及び下流側搬送ロール対24bとされている。なお、上流側搬送ロール対24a及び下流側搬送ロール対24bは、
図1においては、1対の搬送ロール対として表現を簡略化されている。
【0030】
また、搬送部24は、下流側搬送ロール対24bを構成するそれぞれの搬送ロール対と個別に連結されている、4つの駆動手段26をさらに備える。駆動手段26は、例えばモータ等を含んで構成されており、搬送ロール対における上側のロール部材と連結され、該ロール部材を装置奥行方向まわりに回転させる。実施形態において、駆動手段26が搬送ロール対における上側のロール部材を手前側から見て時計回りに回転させると、フィラメントFBを下流側搬送ロール対24bから積層部30に向けて搬送させる。なお、駆動手段26は、搬送ロール対における上側のロール部材を回転させない、すなわち停止させることで、フィラメントFBの搬送を停止させることができる。また、駆動手段26は、上側のロール部材を手前側から見て反時計回りに回転させることができる。駆動手段26は、その動作を、制御部16によって制御されている。なお、4つの駆動手段26は、
図1においては、1つの駆動手段26として表現を簡略化されている。
【0031】
(積層部)
積層部30は、搬送部24に対してフィラメントFBの搬送方向下流側に配置されている。積層部30は、搬送部24から搬送されたフィラメントFBを面14aに沿う方向に並列させて並列フィラメントFAを成して面14aに送出することで、並列フィラメントFAから成る層を形成する。積層部30は、支持部32と、送出部40と、加圧部50と、切断部60と、を有する。
【0032】
支持部32は、移動部18に設けられ、送出部40と、加圧部50と、切断部60と、を支持する部位である。支持部32は、基部32aと、第一支持部34と、第二支持部36と、第三支持部38と、を有する。
【0033】
基部32aは、移動部18から下方に延びる棒状の部材である。
【0034】
第一支持部34は、例えば基部32aの下端部から下方に延びて且つ装置奥行方向に並んでいる一対のパネル状のブラケットで構成されており、後述する加圧部50の軸部52bを支持している。第一支持部34のブラケットの内側にはそれぞれ、ブラケットの板厚方向に貫通しており、装置上下方向に延びる形状を有する孔部35が形成されている。また、第一支持部34において、それぞれのブラケットで挟まれている空間は、加圧部50又は後述する切断部60が移動可能である通路空間31とされている(
図3参照)。
【0035】
第二支持部36は、第一支持部34の搬送部24側の部位に設けられた一対のパネル状のブラケットで構成されており、後述する送出部40の本体部40aを支持している。第二支持部36のブラケットはそれぞれ、例えば、装置奥行方向から見て、第一支持部34から搬送部24側に突出して且つ台14の面14aに向けて屈曲して延びる逆L字状の形状を有する。
【0036】
第三支持部38は、第一支持部34の搬送部24とは反対側の部位に設けられた、一対のパネル状のブラケットで構成されており、切断部60の後述するケース部62を支持している。
【0037】
(送出部)
送出部40は、搬送部24よりもフィラメントFBの搬送方向下流側に配置され、第二支持部36に支持されており、搬送部24から搬送されたフィラメントFBを面14aに沿う方向に並列させて並列フィラメントFAを成して面14aに送出する部位である。送出部40は、本体部40aと、加熱部42と、を有する。
【0038】
本体部40aは、
図1及び
図2に示されるように、装置奥行方向から見て、フィラメントFBの搬送方向に延びる直方体状の部材である。本体部40aは、受入口44と、送出口46とを有する。
【0039】
受入口44は、
図1に示されるように、本体部40aの、搬送部24側の端部に設けられ、搬送部24から搬送された4つのフィラメントFBを本体部40aの内側に受け入れる部位である。送出口46は、本体部40aの搬送部24とは反対側の端部に設けられ、受入口44から受け入れた4つのフィラメントFBを、装置奥行方向に並列させた状態で、台14の面14aに向けて送出させる部位である。実施形態において、送出口46から送出されるフィラメントFBの送出方向は、搬送部24の搬送方向に沿う方向である。すなわち、送出口46から送出されるフィラメントFBの送出方向は、面14aに対して傾斜している。
【0040】
(加熱部)
加熱部42は、送出口46から送出されたフィラメントFBを加熱する部位である。実施形態において、加熱部42は、
図2に示されるように、4つの筒部48と、図示しないヒータ等の加熱装置と、を含んで構成されている。
【0041】
4つの筒部48はそれぞれ、送出口46からフィラメントFBの送出方向に沿って延びている、金属材料で形成された筒状の部材であり、それぞれが装置奥行方向に並んだ状態で配置されている。4つの筒部48の内側にはそれぞれ、送出口46から送出されるフィラメントFBが通されている。4つの筒部48は、図示しない加熱装置によって加熱されることで、内側に通されているフィラメントFBを加熱して溶融させる。筒部48の内側は、被加熱範囲の一例である。溶融状態にあるフィラメントFBは、台14の面14aに対する接着性を有している。また、4つの筒部48で加熱されて溶融状態にある4つのフィラメントFBは、
図1に示されるように、筒部48から面14a上に並列フィラメントFAとして送出される。すなわち、送出部40は、4つのフィラメントFBから成る並列フィラメントFAを送出させる。送出部40から面14a上に送出された溶融状態の並列フィラメントFAは、面14a上に接着される。
【0042】
なお、実施形態においては、送出部40から送出されるフィラメントFBを、手前側から順にフィラメントFB1、FB2、FB3、FB4として区別する(
図2及び
図8参照)。
【0043】
(加圧部)
加圧部50は、
図1に示されるように、送出部40よりもフィラメントFBの送出方向下流側に配置され、第一支持部34によって支持されており、台14の面14a上に送出された並列フィラメントを加圧する部位である。実施形態において、加圧部50は、ロール部52と、を含んで構成されている。
【0044】
ロール部52は、装置奥行方向を軸方向とする姿勢で配置されている円柱状のロール部材である。ロール部52は、円柱状の本体部52aと、本体部52aの中心軸を通るように設けられ、装置奥行方向に延びる軸部52bと、を有している。ロール部52は、本体部52aの外周面と、台14の面14aとで、面14a上に送出された並列フィラメントFAを挟むように配置されている。
【0045】
ロール部52は、軸部52bが第一支持部34の孔部35に通されている状態で、回転可能に支持されている。ロール部52の軸部52bは、昇降手段(図示省略)と連結されている。昇降手段(図示省略)は、例えば油圧シリンダーで構成されており、軸部52bに装置上下方向の並進力を付与して、軸部52bを第一支持部34の孔部35の内側で装置上下方向に移動させる。このとき、ロール部52は、軸部52bと共に移動する。また、ロール部52及び台14が面14a上に送出された溶融状態の並列フィラメントFAを挟んでいるときに、昇降手段(図示省略)によってロール部52に下方向の並進力が付与されると、ロール部52は溶融状態の並列フィラメントFAを加圧する。すなわち、ロール部52は、面14aに送り出された並列フィラメントFAを成すフィラメントFBを、面14aに対して加圧する。ロール部52は、溶融状態の並列フィラメントFAを加圧することで、並列フィラメントFAから成る層を形成する。昇降手段(図示省略)は、その動作を、制御部16によって制御されている。
【0046】
図3に示されるように、軸部52bが昇降手段(図示省略)によって第一支持部34の孔部35の上端部に移動したとき、ロール部52は軸部52bと共に上昇して、第一支持部34の通路空間31を、切断部60に対して開放させる。
【0047】
(切断部)
切断部60は、
図1に示されるように、送出部40から送出された並列フィラメントFAを成すフィラメントFBを、フィラメントFBの送出方向における、加圧部50と加熱部42との間で切断する部位である。切断部60は、ケース部62と、個別切断部66と、一括切断部64と、受け部61と、を備える。
【0048】
ケース部62は、並列フィラメントFAの送出方向と交差する交差方向及び装置奥行方向に沿って拡がる直方体状の外形を有する部材である。実施形態における交差方向は、台14の面14aに対して-W側で且つ+H側に向かって傾斜している方向である。ケース部62は、下側の端部を第三支持部38に支持されている。ケース部62は、ケース部62の内側が交差方向に貫通している中空構造を有している。すなわち、ケース部62の、交差方向下側の端面には、開口部62aが形成されている。ケース部62及び開口部62aは、後述する個別切断部66及び一括切断部64を内側に収容可能な大きさを有する。なお、ケース部62の中空構造は、交差方向上側の端部が閉止されている構造であってもよい。
【0049】
(個別切断部)
個別切断部66は、並列フィラメントFAを成す4つのフィラメントFBを個別に切断する部位である。個別切断部66は、
図5に示されるように、4つのスライド板65と、4つの個別押圧刃67と、を含んで構成されている。
【0050】
スライド板65は、交差方向及び装置奥行方向に沿って拡がる薄板状の部材である。
【0051】
4つの個別押圧刃67はそれぞれ、4つのスライド板65の交差方向下側端部の一部から、交差方向下側に向けて突出するように設けられた、矩形板状の平刃である。具体的には、4つの個別押圧刃67はそれぞれ、
図6(a)~(d)に示されるように、フィラメントFB1、FB2、FB3、FB4のそれぞれに対応して、それぞれに対応するスライド板65の交差方向下側端部の一部から突出している。すなわち、4つの個別押圧刃67は、それぞれのスライド板65の下側端部において、並列フィラメントFAの並列方向に沿って互いにずれている部位から突出している。フィラメントFB1、FB2、FB3、FB4のそれぞれに対応している個別押圧刃67を順に、個別押圧刃67a、67b、67c、67dとして区別する。個別切断部66における4つのスライド板65を、互いの板面が重なるように板厚方向に並べたとき、個別押圧刃67a~dは、
図5(a)に示されるように、板厚方向から見て、装置奥行方向に並んでいる。
【0052】
個別切断部66は、それぞれのスライド板65が板厚方向に重なっている状態で、ケース部62の内側に収容されている(
図1参照)。なお、個別切断部66は、
図1及び
図3において、1枚の板として表現を簡略化されている。
【0053】
個別切断部66は、個別切断部66を交差方向にスライドさせるスライド手段(図示省略)と連結されており、スライド手段(図示省略)によってケース部62の開口部62aから出し入れ可能な構造を有している。スライド手段(図示省略)は、例えば複数のリニアアクチュエータ等で構成されており、個別切断部66の個別押圧刃67a~dを個別にスライドさせることができる。また、スライド手段(図示省略)は、後述する一括切断部64とも連結されており、個別切断部66と一括切断部64とをそれぞれ別々にスライドさせることができる。個別切断部66は、
図3に示されるように、第一支持部34の通路空間31が開放されているとき、スライド手段(図示省略)によって、筒部48よりも送出方向下流側の位置に突出している受け部61の板部69(詳細は後述)の板面に接触可能である。個別切断部66と板部69とが接触する位置は、装置幅方向において、加圧部50と送出部40の加熱部42との間の位置である。換言すると、個別切断部66と板部69とが接触する位置は、フィラメントFBの送出方向における、加圧部50と加熱部42との間の位置である。
【0054】
交差方向において、個別切断部66と板部69との間にフィラメントFBがあるとき、個別切断部66の個別押圧刃67a~dの何れかが板部69に向けてスライドすると、個別押圧刃67a~dはそれぞれに対応しているフィラメントFB1~4を切断する。具体的には、個別押圧刃67a~dは、スライド手段(図示省略)によってスライドされて、それぞれに対応しているフィラメントFB1~4を、受け部61に向けて押圧することで、フィラメントFB1~4を切断する。すなわち、個別切断部66は、フィラメントFBを、フィラメントFBの送出方向における、加圧部50と加熱部42との間で切断する。
なお、個別切断部66がフィラメントFBを切断するとき、搬送部24は、フィラメントFBの搬送を停止させている。また、このとき切断されるフィラメントFBの樹脂は、加熱部42の加熱によって、溶融状態にある。
【0055】
(一括切断部)
一括切断部64は、並列フィラメントFAを成す4つのフィラメントFBを一括に切断する部位である。一括切断部64は、
図5に示されるように、個別切断部66と同様である1つのスライド板65と、1つの押圧刃63と、を含んで構成されている。
【0056】
押圧刃63は、
図5及び
図6(e)に示されるように、スライド板65の交差方向下側端部から、スライド板65の装置奥行方向の縁部に沿って突出するように設けられた、下端部に鋭利部を有する矩形板状の平刃である。換言すると、押圧刃63は、板厚方向から見て、個別押圧刃67a~dが重なっている状態の形状を有している。押圧刃63の装置奥行方向の幅は、並列フィラメントFAの装置奥行方向の幅よりも大きい。
【0057】
一括切断部64は、
図5に示されるように、個別切断部66と板厚方向に重なっている状態で、個別切断部66と共にケース部62の内側に収容されている(
図1参照)。一括切断部64及び個別切断部66は、ケース部62の内側に収容されているとき、第一支持部34の通路空間31を、加圧部50に対して開放させている。なお、個別切断部66及び一括切断部64は、
図1及び
図3において、1枚の板として表現を簡略化されている。
【0058】
一括切断部64は、前述したように、スライド手段(図示省略)と連結されており、スライド手段(図示省略)によってケース部62の開口部62aから出し入れ可能な構造を有している。一括切断部64は、
図3に示されるように、第一支持部34の通路空間31が開放されているとき、スライド手段(図示省略)によって、筒部48よりも送出方向下流側の位置に突出している板部69の板面に接触可能である。一括切断部64と板部69とが接触する位置は、装置幅方向において、加圧部50と送出部40の加熱部42との間の位置である。換言すると、一括切断部64と板部69とが接触する位置は、フィラメントFBの送出方向における、加圧部50と加熱部42との間の位置である。
【0059】
交差方向において、一括切断部64と板部69との間にフィラメントFBがあるとき、一括切断部64が板部69に向けてスライド手段(図示省略)によってスライドされると、一括切断部64はフィラメントFBを切断する。具体的には、一括切断部64は、装置奥行方向に並列しているフィラメントFB1~4を、押圧刃63で受け部61に向けて押圧することで、並列状態にあるフィラメントFB1~4をまとめて切断する。すなわち、一括切断部64は、並列フィラメントFAを成す4つのフィラメントFBを一括に切断する。このとき、一括切断部64で切断された4つのフィラメントの、それぞれの切断端Eの位置は、装置奥行方向に並んでいる。また、一括切断部64は、フィラメントFBを、フィラメントFBの送出方向における、加圧部50と加熱部42との間で切断する。なお、一括切断部64がフィラメントFBを切断するとき、搬送部24は、フィラメントFBの搬送を停止させている。また、このとき切断されるフィラメントFBは、加熱部42によって加熱されたものであり、溶融状態にある。
【0060】
(受け部)
受け部61は、
図1及び
図2に示されるように、送出部40の、交差方向において筒部48よりも下側の部位に設けられ、ケース部68と、板部69と、を含んで構成されている。
【0061】
ケース部68は、フィラメントFBの送出方向及び装置奥行方向に沿う方向に拡がる直方体状の外形を有する部材であり、送出部40の、交差方向において筒部48よりも下側の部位に配置されている。ケース部68は、ケース部68の内側が送出方向に貫通している中空構造を有している。すなわち、ケース部68の、送出方向下流側の端面には、開口部68aが形成されている。ケース部68及び開口部68aは、後述する板部69を内側に収容可能な大きさを有する。なお、ケース部68の中空構造は、送出方向上流側の端部が閉止されている構造であってもよい。
【0062】
板部69は、フィラメントFBの送出方向及び装置奥行方向に沿う方向に拡がる板状の部材である。板部69は、送出部40が並列フィラメントFAを送出しているとき、板部69のフィラメントFBの送出方向下流側の先端部が、送出部40の筒部48よりも該送出方向上流側に配置されている。
【0063】
受け部61の板部69は、板部69をフィラメントFBの送出方向に往復させる往復手段(図示省略)と連結されており、往復手段(図示省略)によってケース部68の開口部68aから出し入れ可能な構造を有している。往復手段(図示省略)は、例えば油圧シリンダー等で構成されている。板部69は、加圧部50が第一支持部34の通路空間31を開放させているとき、往復手段(図示省略)によって、フィラメントFBの送出方向において、筒部48よりも下流側の位置に突出可能である。
【0064】
受け部61の往復手段と、個別切断部66及び一括切断部64のスライド手段(図示省略)と、は、制御部16によってその動作を制御されている。すなわち、切断部60は、その動作を制御部16によって制御されている。
【0065】
(造形方法)
次に、実施形態における造形プロセスの一例を、
図1、
図3、
図4、
図7を参照しながら説明する。
【0066】
まず、
図1に示されるように、造形される立体物の造形プロセスデータに従って、制御部16は、積層部30及び移動部18の動作を制御して、送出部40から面14aに向けて並列フィラメントFAを送出させる。面14a上に送出された並列フィラメントFAは、制御部16によって動作を制御された加圧部50によって加圧され、並列フィラメントFAから成る層となる。
【0067】
図7に例示されるように、角部が丸みを帯びている部位であるフィレット部Fを有する造形物の造形プロセスデータが、フィレット部Fでの並列フィラメントFAの切断を含んでいるときについて考える。このとき、制御部16は、切断部60を制御して、並列フィラメントFAを成すフィラメントFBを個別に切断させる。具体的には、制御部16は、造形プロセスデータに応じて、面14a上に形成される層が造形プロセスデータによる層の形状にフィットするように、個別切断部66で、フィラメントFBを、フィラメントFB4、FB3、FB2、FB1の順に個別に切断させる。
【0068】
より具体的に説明すると、個別切断部66でフィラメントFB1~4を個別に切断するとき、制御部16は、
図3に示されるように、移動部18及び搬送部24の駆動手段26の動作を一時停止させる。そして、制御部16は、加圧部50の昇降手段(図示省略)を制御してロール部52を上昇させ、第一支持部34の通路空間31を、切断部60に対して開放させる。さらに、制御部16は、切断部60を制御して、板部69を突出させた後、切断するフィラメントFB4~1の順に応じて、個別押圧刃67d、67c、67b、67aを順次スライドさせて、該フィラメントFBを切断させる(
図7参照)。このとき、制御部16は、切断後に面14aに送出されるフィラメントFB4~1がフィレット部Fの形状にフィットするように、移動部18及び搬送部24を制御してフィラメントFB4~1の切断位置を順次調整する。
【0069】
フィラメントFB1~4の何れかを切断した後、制御部16は、切断部60を制御して、個別切断部66をケース部62の内側に収容させて、通路空間31を加圧部に対して開放させる。その後、制御部16は、加圧部50の昇降手段(図示省略)を制御してロール部52を下降させ、面14a上に送出されたフィラメントFB1~4を加圧する。面14a上に送出されたフィラメントFB1~4は、加圧されることで、並列フィラメントFAの並列方向に拡がり、フィラメントFB1~4間の隙間が無くなることで、層と成る。
【0070】
また、フィラメントFB1~4の何れかを切断した後、制御部16は、
図4に示されるように、切断されたフィラメントFBに対応する各駆動手段26を制御して、それぞれの下流側搬送ロール対24bの上側のロール部材を手前側から見て反時計回りに回転させる。これにより、切断されたフィラメントFB1~4であって、下流側搬送ロール対24bに挟持されているフィラメントFB1~4が、フィラメントFBの送出方向とは逆の方向に引き戻される。このとき、駆動手段26は、切断されたフィラメントFB1~4の切断端Eを、加熱部42の筒部48の内側に引き戻す。すなわち、駆動手段26は、切断されたフィラメントFB1~4の切断端Eを、加熱部42の被加熱範囲に引き戻す。駆動手段26は、引き戻し手段の一例である。被加熱範囲に引き戻されたフィラメントFB1~4の切断端Eは、加熱部42によって再加熱される。
【0071】
なお、実施形態の造形装置10は、例えば装置奥行方向に沿う形状のエッジを有する造形物を形成する等のときにおいて、制御部16が、一括切断部64によって、4つのフィラメントFBを一括に切断させる場合がある。具体的に説明すると、制御部16は、このとき、移動部18及び搬送部24を一時停止させて且つ第一支持部34の通路空間31を切断部60に対して開放させた後、一括切断部64をスライドさせてフィラメントFB1~4を一括に切断させる。
【0072】
<作用及び効果>
次に、本発明の作用及び効果について説明する。なお、この説明において、本実施形態に対する比較形態を記載するときに、実施形態の造形装置10と同様の部品等を用いる場合、その部品等の符号及び名称をそのまま用いて説明する。
【0073】
実施形態の造形装置10は、フィラメントFBの送出方向における、加圧部50と加熱部42との間でフィラメントFBを切断する切断部60を備えている。実施形態の造形装置10と、以下に示す比較形態の造形装置とを比較する。
【0074】
比較形態の造形装置は、切断部が、送出部40よりもフィラメントFBの送出方向上流側に配置されている。以上の点以外については、比較形態の造形装置は、実施形態の造形装置10と同様の構成とされている。
【0075】
比較形態の造形装置の、フィラメントFBの送出方向における、加圧部50と、切断部60によるフィラメントFBの切断箇所との間の距離は、実施形態の造形装置10における該距離よりも長い。換言すると、切断されたフィラメントFBが張架されていない状態で送出部40から台14の面14a上にまで送出される距離は、実施形態の造形装置10における該距離よりも長くなる。そのため、比較形態の造形装置で造形される造形物の寸法精度は、実施形態の造形装置10で造形される造形物の寸法精度よりも悪くなりやすい。換言すると、実施形態の造形装置10は、比較形態よりもフィラメントFBの送出方向における、加圧部50と切断部60によるフィラメントFBの切断箇所との間の距離が短いため、造形される造形物の寸法精度を比較形態よりも向上させることができる。よって、実施形態の造形装置10は、加熱部よりもフィラメントの送出方向上流側でフィラメントを切断する構成と比して、造形される造形物の寸法精度が向上される。
【0076】
また、実施形態の造形装置10は、送出部40の加熱部42が、送出口46側に設けられた筒部48である構成を有している。加熱部42が筒部48である構成において、フィラメントFBを加熱部42よりもフィラメントFBの送出方向上流側で切断すると、切断後に送出部40からフィラメントFBを再送出させるときに、フィラメントFBを再度筒部48の内側に通す作業が発生する。一方、実施形態の造形装置10は、フィラメントFBの送出方向における、加圧部50と加熱部42との間でフィラメントFBを切断するため、フィラメントFBを再送出するときに、フィラメントFBを再度筒部48の内側に通す作業が発生しない。よって、実施形態の造形装置10は、加熱部42が筒部48である構成において、加熱部42よりも送出方向上流側でフィラメントを切断する構成と比して、フィラメントの切断後にフィラメントを送出部40から再送出させるときの作業性が向上される。
【0077】
また、実施形態の造形装置10は、駆動手段26が、フィラメントFBの切断端Eを加熱部42の内側に引き戻す構成を有している。よって、実施形態の造形装置10は、フィラメントFBの切断端Eを加熱部42よりも送出方向上流側に引き戻す構成と比して、フィラメントFBの切断後にフィラメントFBを送出部40から再送出させるときの作業性が向上される。
【0078】
また、実施形態の造形装置10は、駆動手段26が、フィラメントFBの切断端Eを加熱部42の被加熱範囲に引き戻す構成を有している。フィラメントFBの切断後にそのままフィラメントFBを再送出させると、再送出までの間に切断端Eが冷却されて半硬化状態となり、再送出されるフィラメントFBの接着性が低下する虞がある。一方、実施形態の造形装置10は、駆動手段26によってフィラメントFBの切断端Eが加熱部42の被加熱範囲である筒部48の内側に引き戻されるため、引き戻された切断端Eは、筒部48で再加熱されて溶融状態となって送出部40から再送出される。よって、実施形態の造形装置10は、フィラメントFBの切断後に、そのままフィラメントFBを再送出させる構成と比して、再送出されるフィラメントFBの接着性が向上される。
【0079】
また、実施形態の造形装置10は、切断部60が個別切断部66を含む構成を有している。よって、実施形態の造形装置10は、切断部が一括切断部64のみを備える構成と比して、造形される造形物の寸法精度を向上させることができる。
【0080】
また、実施形態の造形装置10は、切断部60を制御し、造形物の造形プロセスデータに応じて4つのフィラメントFB1~4を個別に切断させる制御部16を備えている。よって、実施形態の造形装置10は、造形装置10によって造形される造形物の寸法精度が向上される。
【0081】
また、実施形態の造形装置10は、切断部60が、個別押圧刃67a~dと、受け部61と、を備えている。よって、複数のハサミでフィラメントを個別に切断する構成と比して、個別切断部の構成が簡易になる。
【0082】
また、実施形態の造形装置10は、切断部60が一括切断部64を含む構成を有している。よって、実施形態の造形装置10は、切断部が個別切断部のみを備える構成と比して、複数のフィラメントの切断位置のばらつきを抑制させることができる。
【0083】
以上のとおり、本発明の特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内にて種々の変形、変更、改良が可能である。
【0084】
例えば、実施形態においては、駆動手段26が、搬送部24に備えられているものとした。しかしながら、駆動手段26は、搬送部24に備えられていなくてもよい。例えば、駆動手段は、搬送部24に代わってリール22に連結されているものであってもよい。この場合、リール22に連結されている駆動手段が、引き戻し手段となる。
【0085】
また、実施形態においては、造形装置10が、造形材として4つのフィラメントFBから成る並列フィラメントFAを送出する構成とした。しかしながら、本発明における造形材は、並列フィラメントFAに限定されない。例えば、本発明における造形材は、1つのフィラメントFBであってもよい。また、本発明における並列フィラメントを成すフィラメントFBは、2つでもよく、3つでもよく、また5つ以上であってもよい。
【0086】
また、実施形態においては、加熱部42が、それぞれの内側にフィラメントFBを通している、4つの筒部48を備えるものとした。しかしながら、加熱部42は、4つの筒部を備えるものに限定されない。例えば、加熱部42は、並列フィラメントFAの並列方向に沿って偏平しており、内側に複数のフィラメントFBを通している1つの筒部を備える構成であってもよい。また、加熱部42は、一対の板状の部材で並列フィラメントFAを挟んだ状態で加熱させる構成であってもよい。また、加熱部42は、フィラメントFBに対して非接触状態で加熱させる構成であってもよい。
【0087】
また、実施形態においては、駆動手段26が、下流側搬送ロール対24bの上側のロール部材を手前側から見て反時計回りに回転させることができるものとした。しかしながら、駆動手段26は、上側のロール部材を手前側から見て反時計回りに回転できない構成であってもよい。また、本発明の造形装置は、引き戻し手段を備えない構成であってもよい。
【0088】
また、実施形態においては、切断されたフィラメントFBの切断端Eが、加熱部42の筒部48の内側に引き戻されるものとした。しかしながら、本発明においては、切断端Eは、加熱部42の筒部48の内側に引き戻されなくてもよい。例えば、切断端Eは、加熱部42よりもフィラメントFBの送出方向上流側に引き戻されてもよい。
【0089】
また、実施形態においては、個別切断部66が、個別押圧刃67a~dを備えるものとした。しかしながら、個別切断部66は、個別押圧刃67a~dを備えるものに限定されない。例えば、個別切断部66は、複数のハサミでフィラメントを個別に切断する構成を有するものであってもよい。
【0090】
また、実施形態においては、一括切断部64の押圧刃63は、矩形板状の平刃であるとした。しかしながら、本発明における一括切断部は、一括切断部で切断された複数のフィラメントのそれぞれの切断端の位置を、フィラメントの搬送方向に対して直交する方向(並列方向)に並べることができるのであれば、矩形板状の形状に限定されない。例えば、一括切断部は、フィラメントの断面方向が装置幅方向であるとき、装置幅方向から見て、装置高さ方向及び装置奥行方向に拡がっており、且つ装置高さ方向に対して装置奥行方向に傾斜している刃を下端部に有する板状の部材であってもよい。
【0091】
また、実施形態においては、造形装置10が個別切断部66と一括切断部64の両者を備える構成とした。しかしながら、本発明の造形装置は、個別切断部のみを備える構成であってもよく、また一括切断部のみを備える構成であってもよい。
【0092】
また、実施形態における造形材は、繊維束に樹脂が含侵されて成るものとした。しかしながら、本発明における造形材は、繊維束に樹脂が含侵されて成るものに限定されない。
【0093】
また、実施形態では、制御部16が、造形プロセスデータに応じて、面14a上に形成される層が造形プロセスデータによる層の形状にフィットするように、切断部60を制御してフィラメントFB1~4を個別に切断させる例を示した(
図7参照)。しかしながら、本発明における実施の態様は、これに限定されるものではない。ここで、造形プロセスデータとは、造形物のデータに基づき各層を形成するためのデータであり、各層の形状データ、各層を形成する際の並列フィラメントFAの軌跡データ(送出プロセスデータ)の少なくとも一部を含むものである。上記実施形態では、並列フィラメントFAの断端が層の外形に沿うように、制御部16が、各層の形状データに応じて並列フィラメントFAを成すフィラメントFB1~4の切断位置を制御する例を示した。別例として、造形プロセスデータは、例えば並列フィラメントFAを成すフィラメントFB1~4を面14aに沿って湾曲させながら送出させることで層の外形を形成させるものであってもよい。また、他の別例として、造形プロセスデータは、例えば、面14a上で並列フィラメントFAを成すフィラメントFB1~4をつづら折り状に折り返しながら送出させることで層の外形を形成させるものであってもよい。これらのような別例において、湾曲部や折り返し部におけるフィラメントFB1~4の内外周での長さの差を吸収させるために、又は内周側のフィラメントFBの応力を緩和させるために、制御部16は、フィラメントFB1~4を個別に切断させる場合がある。また、これらのような別例においては、湾曲部や折り返し部においてフィラメントFB1~4をすべて切断させる態様に限定されず、フィラメントFB1~4のうち、一部のフィラメントのみを切断させる態様とすることも可能である。
【符号の説明】
【0094】
10 造形装置
14 台
14a 面
16 制御部
26 駆動手段(引き戻し手段の一例)
40 送出部
42 加熱部
50 加圧部
60 切断部
61 受け部
64 一括切断部
66 個別切断部
E 切断端
FA 並列フィラメント
FB フィラメント