IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ SMC株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-増圧出力安定化装置 図1
  • 特許-増圧出力安定化装置 図2
  • 特許-増圧出力安定化装置 図3
  • 特許-増圧出力安定化装置 図4
  • 特許-増圧出力安定化装置 図5
  • 特許-増圧出力安定化装置 図6
  • 特許-増圧出力安定化装置 図7
  • 特許-増圧出力安定化装置 図8
  • 特許-増圧出力安定化装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】増圧出力安定化装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 3/00 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
F15B3/00 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020058079
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021156380
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】高桑 洋二
(72)【発明者】
【氏名】脇 和文
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-115953(JP,A)
【文献】特開平09-158901(JP,A)
【文献】特開2018-189100(JP,A)
【文献】実開昭58-189801(JP,U)
【文献】特開2009-142800(JP,A)
【文献】特開2018-084270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 3/00
F15B 11/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体供給源から圧力流体が供給され一次圧に対して所定の二次圧を出力する流体の増圧装置に接続される増圧出力安定化装置であって、
第1ピストンによって区画される第1室と第2室を内部に有する第1シリンダと、第2ピストンによって区画される第3室と第4室を内部に有する第2シリンダと、前記第1ピストンと前記第2ピストンを相互に連結するピストンロッドとを備え、前記流体供給源からの圧力流体が常に前記第1室に供給されるとともに、前記増圧装置から出力される圧力流体が前記第4室に供給され、前記第4室から圧力流体が外部に取り出され
前記第1ピストンの外径が前記第2ピストンの外径よりも大きく、前記第2室および前記第3室が大気に開放されている増圧出力安定化装置。
【請求項2】
流体供給源から圧力流体が供給され一次圧に対して所定の二次圧を出力する流体の増圧装置に接続される増圧出力安定化装置であって、
第1ピストンによって区画される第1室と第2室を内部に有する第1シリンダと、第2ピストンによって区画される第3室と第4室を内部に有する第2シリンダと、前記第1ピストンと前記第2ピストンを相互に連結するピストンロッドとを備え、前記流体供給源からの圧力流体が常に前記第1室に供給されるとともに、前記増圧装置から出力される圧力流体が前記第4室に供給され、前記第4室から圧力流体が外部に取り出され
前記一次圧が前記第3室に供給され、前記第2室が大気に開放されている増圧出力安定化装置。
【請求項3】
請求項記載の増圧出力安定化装置において、
前記第2ピストンの外径が前記第1ピストンの外径と同一である増圧出力安定化装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の増圧出力安定化装置において、
前記第1シリンダは第1シリンダチューブと第1端部カバーとを備え、前記第2シリンダは第2シリンダチューブと第2端部カバーとを備え、前記第1シリンダチューブと前記第2シリンダチューブは中間カバーを介して相互に連結される増圧出力安定化装置。
【請求項5】
請求項記載の増圧出力安定化装置において、
前記第1端部カバーには、前記一次圧が供給される一次圧供給ポートが設けられ、前記第2端部カバーには、前記二次圧が供給される二次圧供給ポートと出力ポートが設けられる増圧出力安定化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の増圧装置と組み合わされる増圧出力安定化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンプレッサから供給される一次圧としてのエアを増圧し、これを所定の二次圧として出力する増圧装置が知られている。
【0003】
このような増圧装置として、例えば特許文献1には、増圧用シリンダの両側に駆動用シリンダを配設したものが記載されている。同文献にも記載されているように、増圧装置から出力された増圧後の流体は、通常、外部のタンクに貯留され、該タンクから流体圧機器に供給する形態で使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-84270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、流体圧機器で使用される流体の量が増圧装置の吐出流量を大きく上回る場合、タンク内に貯留された圧力流体が急速に消費され、タンク内の圧力が短時間で大きく下降してしまう。このため、流体圧機器に対して十分な圧力で流体を供給することができなくなるおそれがある。また、増圧装置の動作速度が大きくなり、圧力流体の消費量が増大するほか、増圧装置の寿命が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情を背景としてなされたものであり、増圧装置の二次圧を安定した状態で出力することが可能な増圧出力安定化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る増圧出力安定化装置は、一次圧に対して所定の二次圧を出力する流体の増圧装置に接続されるもので、第1ピストンによって区画される第1室と第2室を内部に有する第1シリンダと、第2ピストンによって区画される第3室と第4室を内部に有する第2シリンダと、第1ピストンと第2ピストンを相互に連結するピストンロッドとを備える。そして、一次圧が第1室に供給されるとともに、二次圧が第4室に供給され、第4室から圧力流体が外部に取り出される。
【0008】
上記増圧出力安定化装置によれば、第2シリンダの第4室から外部に取り出される圧力流体は、増圧装置で設定された二次圧に近い圧力に維持され、安定した圧力で出力することができる。また、増圧装置の動作速度を緩やかにすることができるので、圧力流体の消費量削減を図ることができるほか、増圧装置の長寿命化を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る増圧出力安定化装置は、増圧装置の一次圧が作用する第1ピストンと増圧装置の二次圧が作用する第2ピストンとを連結した構成を有し、二次圧が供給される室から圧力流体が外部に取り出されるので、増圧装置の二次圧を安定した状態で出力することができる。また、増圧装置の動作速度が緩やかになるため、圧力流体の消費量が低減するほか、増圧装置の耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る増圧出力安定化装置と組み合わされる増圧装置の例を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る増圧出力安定化装置の平面図である。
図3図2の増圧出力安定化装置の側面図である。
図4図2の増圧出力安定化装置のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図2の増圧出力安定化装置が所定の動作位置にあるときの図4に対応する図である。
図6図2の増圧出力安定化装置が別の動作位置にあるときの図4に対応する図である。
図7図2の増圧出力安定化装置から出力される流体の流量と圧力との関係を示す図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る増圧出力安定化装置および増圧装置の正面図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る増圧出力安定化装置のIX-IX線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、まず、本発明に係る増圧出力安定化装置と組み合わされる流体の増圧装置の例について説明し、次に、本発明に係る増圧出力安定化装置について、複数の好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。なお、使用される流体は、圧縮空気等の圧力流体である。
【0012】
(増圧装置の例)
図1に例示されるように、本発明に係る増圧出力安定化装置と組み合わされる流体の増圧装置70は、センタボデイ72と、センタボデイ72を挟んでその両側に連設される一対のシリンダ74a、74bと、これらのシリンダ74a、74b内を摺動するピストン76a、76bと、これらのピストン76a、76bを連結するロッド78とを備える。センタボデイ72には、入口ポート80と出口ポート82と排出ポート84とが設けられ、入口ポート80は図示しない流体供給源(コンプレッサ)に接続されている。
【0013】
シリンダ74a、74bは、ピストン76a、76bによって内側の増圧室86a、86bと外側の駆動室88a、88bとに区画される。増圧室86a、86bは、センタボデイ72に設けた入口チェック弁90a、90bを介して入口ポート80に連通するとともに、出口チェック弁92a、92bを介して出口ポート82に連通している。駆動室88a、88bは、センタボデイ72に設置された切換弁94に接続され、切換弁94を切り換えるためのプッシュロッド96a、96bが増圧室86a、86b内に突出している。また、増圧装置70は、出口ポート82における流体の二次圧を調節するためのガバナ98を備える。
【0014】
この増圧装置70は、切換弁94を介して一方の駆動室88aに供給される圧力流体によってピストン76aが図1の左方向に移動すると、一方の増圧室86aの圧力流体が増圧されて、出口チェック弁92aを通って出口ポート82から出力される。このとき、他方の駆動室88b内の圧力流体が切換弁94を介して排出ポート84から排出される。そして、そのストローク終端近くにおいてピストン76aがプッシュロッド96aを押圧すると、切換弁94が切り換わって他方の駆動室88bに圧力流体が供給される。
【0015】
これにより、ピストン76bが図1の右方向に移動し、他方の増圧室86bの圧力流体が増圧されて、出口チェック弁92bを通って出口ポート82から出力される。このとき、一方の駆動室88a内の圧力流体が切換弁94を介して排出ポート84から排出される。そして、そのストローク終端近くにおいてピストン76bがプッシュロッド96bを押圧すると、切換弁94が図示の状態に切り換わる。出口ポート82における流体の圧力が設定された二次圧に到達するまで、増圧装置70は上記一連の動作を繰り返す。
【0016】
(第1実施形態)
次に、本発明の第1実施形態に係る増圧出力安定化装置10について、図2図7を参照しながら説明する。
【0017】
図4に示されるように、増圧出力安定化装置10は、直列に接続される第1シリンダ12と第2シリンダ14から構成される。第1シリンダ12は、直方体状の第1シリンダチューブ12aと、第1シリンダチューブ12aに形成された円形のシリンダ孔内に摺動自在に配設される円形の第1ピストン12bとを有する。第2シリンダ14は、直方体状の第2シリンダチューブ14aと、第2シリンダチューブ14aに形成された円形のシリンダ孔内に摺動自在に配設される円形の第2ピストン14bとを有する。
【0018】
第1ピストン12bは、ピストンロッド16の一端側に第1ナット17aにより連結固定され、第2ピストン14bは、ピストンロッド16の他端側に第2ナット17bにより連結固定されている。したがって、第1ピストン12bおよび第2ピストン14bは、ピストンロッド16とともに軸方向に一体となって移動する。第1ピストン12bの外径は、第2ピストン14bの外径よりも大きい。
【0019】
第1シリンダチューブ12aと第2シリンダチューブ14aとの間には、矩形板状の中間カバー18が設けられている。中間カバー18から離れた側の第1シリンダチューブ12aの端部には、矩形板状の第1端部カバー20が設けられ、中間カバー18から離れた側の第2シリンダチューブ14aの端部には、矩形板状の第2端部カバー22が設けられている。第1ピストン12bと第2ピストン14bとピストンロッド16とからなる組立体(以下「ピストン組立体」という)は、第1ピストン12bが第1端部カバー20に当接する位置(図5参照)と、第1ピストン12bが中間カバー18に当接する位置(図6参照)との間で移動可能となっている。
【0020】
第1シリンダチューブ12aは、第1端部カバー20側から挿入され中間カバー18にねじ込まれる4本のボルト23aによって、第1端部カバー20と中間カバー18との間で挟持される。第2シリンダチューブ14aは、第2端部カバー22側から挿入され中間カバー18にねじ込まれる4本のボルト23bによって、第2端部カバー22と中間カバー18との間で挟持される(図3参照)。
【0021】
第1シリンダチューブ12aのシリンダ孔内は、第1ピストン12bにより、第1端部カバー20側の第1室24aと中間カバー18側の第2室24bとに区画される。第2シリンダチューブ14aのシリンダ孔内は、第2ピストン14bにより、中間カバー18側の第3室26aと第2端部カバー22側の第4室26bとに区画される。
【0022】
図2および図4に示されるように、第1端部カバー20の一つの側面には、前記した流体供給源に接続される一次圧供給ポート28が設けられている。流体供給源からの圧力流体は、増圧装置70の入口ポート80に供給されると同時に、この一次圧供給ポート28にも供給される。したがって、一次圧供給ポート28を介して第1シリンダ12の第1室24aに供給される流体の圧力は、増圧装置70の入口ポート80に供給される流体の圧力(増圧装置70の一次圧)と同じである。
【0023】
中間カバー18の一つの側面には、大気に開放される第1呼吸ポート30が設けられ、これと対向する中間カバー18の他の側面には、大気に開放される第2呼吸ポート32が設けられている。第1シリンダ12の第2室24bは、第1呼吸ポート30を介して大気に開放され、第2シリンダ14の第3室26aは、第2呼吸ポート32を介して大気に開放されている。
【0024】
第2端部カバー22の一つの側面には、図示しない配管により増圧装置70の出口ポート82に接続される二次圧供給ポート34が設けられている。増圧装置70から出力される圧力流体は、二次圧供給ポート34を介して第2シリンダ14の第4室26bに供給される。二次圧供給ポート34における流体の圧力は、増圧装置70の出口ポート82における流体の圧力(増圧装置70の二次圧)と同じである。また、二次圧供給ポート34が設けられる側面と対向する第2端部カバー22の側面には、出力ポート36が設けられており、第2シリンダ14の第4室26bの圧力流体は、出力ポート36から外部に取り出され、図示しない流体圧機器に供給可能となっている。
【0025】
第1端部カバー20には、一次圧供給ポート28を第1シリンダ12の第1室24aに連通せしめるとともに第1ナット17aを収容可能な空間20aが設けられている。第2端部カバー22には、二次圧供給ポート34および出力ポート36を第2シリンダ14の第4室26bに連通せしめる空間22bが設けられている。
【0026】
ここで、第1室24aの圧力、すなわち増圧装置70の一次圧をP1とし、ピストン組立体に作用する力が釣り合う場合の第4室26bの圧力をP2´とし、増圧装置70で設定された二次圧をP2とする。P2´は、P1、第1ピストン12bの断面積、第2ピストン14bの断面積に基づいて求めることができる。
【0027】
第4室26bから取り出される流体の圧力を増圧装置で設定された二次圧P2に近い値に維持するため、P2´ができるだけP2に近い値となっていることが好ましい。また、第4室26bの容積が最小となるまでピストン組立体が移動した後、第4室26bの容積を回復させることができるようにするため、P2´はP2以下となっていることが必要である。
【0028】
本実施形態に係る増圧出力安定化装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用について説明する。第1室24aから第4室26bまでの圧力がすべて大気圧に等しく、ピストン組立体が図4に示す位置で静止しているときを初期状態とする。この初期状態において、増圧装置70は作動していない。また、出力ポート36と流体圧機器とを接続する図示しない流路は、図示しない電磁弁により閉じられているものとする。
【0029】
上記初期状態から、図示しない切換弁を切り換えることにより、流体供給源からの圧力流体を増圧装置70および増圧出力安定化装置10に向けて供給する。これにより、増圧装置70の入口ポート80に一次圧P1を有する圧力流体が供給されると同時に、増圧出力安定化装置10の一次圧供給ポート28にも一次圧P1を有する圧力流体が供給され、該圧力流体は、一次圧供給ポート28から第1シリンダ12の第1室24aに供給される。
【0030】
また、増圧装置70の入口ポート80に一次圧が供給されると、増圧装置70が作動を開始し、増圧された圧力流体が増圧装置70の出口ポート82から増圧出力安定化装置10の二次圧供給ポート34に向けて供給される。増圧装置70が一定以上作動すると、二次圧供給ポート34を介して圧力流体が供給された第2シリンダ14の第4室26bの圧力が増圧装置70で設定された二次圧P2に到達し、前述したピストン組立体が釣り合いを保つための圧力P2´を上回る。これにより、ピストン組立体は、第1ピストン12bが第1端部カバー20に当接するまで移動し、第2シリンダ14の第4室26bには、増圧装置70で設定された二次圧P2を有する圧力流体が貯留される(図5参照)。
【0031】
第2シリンダ14の第4室26bに二次圧P2を有する圧力流体が貯留された状態から、出力ポート36と流体圧機器とを接続する流路が開かれると、第4室26bに貯留された圧力流体が出力ポート36から流体圧機器に向けて供給される。第4室26bに貯留された圧力流体が出力ポート36から取り出されると、ピストン組立体に加わる力のバランスを保つべく、第1ピストン12bが第1端部カバー20から離れ、第2ピストン14bが第2端部カバー22に近接する向きにピストン組立体が移動する。
【0032】
これにより、第4室26bの容積が縮小して圧力低下が抑制される。第4室26bの圧力は、少なくともP2´以下とならないように維持される。第4室26bの圧力が増圧装置70で設定された二次圧P2を下回ると、増圧装置70が作動するが、その動作速度は比較的緩やかである。このように、ピストン組立体が移動して第4室26bの容積が縮小されるとともに、増圧装置70の出口ポート82から二次圧P2を有する圧力流体が第4室26bに補給されながら、第4室26bから圧力流体が取り出され、安定した圧力で流体圧機器に向けて圧力流体を送り出すことができる。
【0033】
第1ピストン12bが第1端部カバー20と中間カバー18の中間位置にある状態で、流体圧機器における圧力流体の使用状態が休止すると、二次圧P2を有する圧力流体が増圧装置70の出口ポート82から第4室26bに供給される状態にあるので、第1ピストン12bが第1端部カバー20に当接するまでピストン組立体が移動する。これにより、第4室26bの容積が最大まで回復する。
【0034】
流体圧機器での圧力流体の使用量が極めて大きい状態が続き、第4室26bに貯留された圧力流体が急速に消費されたときは、第1ピストン12bが中間カバー18に当接するまでピストン組立体が移動し、第4室26bの容積が最小となる(図6参照)。この場合、実質的に増圧装置70のみが作動することになるが、流体圧機器での圧力流体の使用量が減少するかゼロになれば、再び第4室26bの容積が回復する。
【0035】
図7は、サイズの異なる二つの増圧装置に関し、増圧出力安定化装置を設けた場合と設けない場合のそれぞれについて、取り出される圧力流体の流量と圧力との関係を示す図である。横軸に流量をとり、縦軸に圧力をとっている。丸い点を点線で結んだものは、小型の増圧装置を単独で使用した場合を示し、丸い点を実線で結んだものは、小型の増圧装置に増圧出力安定化装置を組み合わせた場合を示す。三角の点を点線で結んだものは、中型の増圧装置を単独で使用した場合を示し、三角の点を実線で結んだものは、中型の増圧装置に増圧出力安定化装置を組み合わせた場合を示す。
【0036】
図7から理解されるように、増圧出力安定化装置を組み合わせると、流量が増大したときの圧力低下が抑制される。また、小型の増圧装置であっても、増圧出力安定化装置を併用すれば、一つ上のサイズの増圧装置と同様な能力をもたせることができる。
【0037】
本実施形態に係る増圧出力安定化装置10によれば、増圧装置70の一次圧が作用する第1ピストン12bと増圧装置70の二次圧が作用する第2ピストン14bとを連結した構成を有し、二次圧が供給される第4室26bから圧力流体が外部に取り出されるので、増圧装置70の二次圧に近い安定した圧力で出力することができる。また、増圧装置70の動作速度が緩やかになるため、排出ポート84から排出される圧力流体の量が低減することで圧力流体の消費量が低減するほか、増圧装置70の耐久性が向上する。
【0038】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る増圧出力安定化装置40について、図8および図9を参照しながら説明する。第2実施形態では、流体供給源からの圧力流体が第1シリンダの第1室に供給されるほか第2シリンダの第3室にも供給されることなどが第1実施形態と異なる。第2実施形態についても、第1実施形態と同様に、前述した増圧装置70と組み合わされるものとして説明するが、組み合わされる増圧装置は、前述した増圧装置70に限られるものではない。
【0039】
増圧出力安定化装置40は、直列に接続される第1シリンダ42と第2シリンダ44から構成される。第1シリンダ42は、直方体状の第1シリンダチューブ42aと、第1シリンダチューブ42aに形成されたシリンダ孔内に摺動自在に配設される第1ピストン42bとを有する。第2シリンダ44は、直方体状の第2シリンダチューブ44aと、第2シリンダチューブ44aに形成されたシリンダ孔内に摺動自在に配設される第2ピストン44bとを有する。
【0040】
第1ピストン42bは、ピストンロッド46の一端側に固定され、第2ピストン44bは、ピストンロッド46の他端側に固定されている。第1ピストン42bおよび第2ピストン44bは、ピストンロッド46とともに軸方向に一体となって移動する。第1ピストン42bの外径は、第2ピストン44bの外径と同一である。
【0041】
第1シリンダチューブ42aと第2シリンダチューブ44aとの間には、中間カバー48が設けられている。中間カバー48から離れた側の第1シリンダチューブ42aの端部には、第1端部カバー50が設けられ、中間カバー48から離れた側の第2シリンダチューブ44aの端部には、第2端部カバー52が設けられている。増圧装置70は、第2端部カバー52に取り付けられている。第1ピストン42bと第2ピストン44bとピストンロッド46とからなるピストン組立体は、第1ピストン42bが第1端部カバー50に当接する位置と、第1ピストン42bが中間カバー48に当接する位置との間で移動可能となっている。
【0042】
第1シリンダチューブ42aのシリンダ孔内は、第1ピストン42bにより、第1端部カバー50側の第1室54aと中間カバー48側の第2室54bとに区画される。第2シリンダチューブ44aのシリンダ孔内は、第2ピストン44bにより、中間カバー48側の第3室56aと第2端部カバー52側の第4室56bとに区画される。
【0043】
第1端部カバー50には、流体供給源に接続される一次圧供給第1ポート58が設けられ、中間カバー48には、流体供給源に接続される一次圧供給第2ポート60が設けられている。流体供給源からの圧力流体は、増圧装置70の入口ポート80に供給されると同時に、一次圧供給第1ポート58と一次圧供給第2ポート60に供給される。したがって、一次圧供給第1ポート58を介して第1シリンダ42の第1室54aに供給される流体の圧力および一次圧供給第2ポート60を介して第2シリンダ44の第3室56aに供給される流体の圧力は、増圧装置70の入口ポート80に供給される流体の圧力(増圧装置70の一次圧)と同じである。
【0044】
中間カバー48には、大気に開放される呼吸ポート(図示せず)が設けられており、第1シリンダ42の第2室54bは、該呼吸ポートを介して大気に開放されている。第2端部カバー52には、増圧装置70の出口ポート82に直接接続される二次圧供給ポート62が設けられている。増圧装置70から出力される圧力流体は、二次圧供給ポート62を介して第2シリンダ44の第4室56bに供給される。二次圧供給ポート62における流体の圧力は、増圧装置70の出口ポート82における流体の圧力(増圧装置70の二次圧)と同じである。また、第2端部カバー52には、出力ポート64が設けられており、第2シリンダ44の第4室56bの圧力流体は、出力ポート64から外部に取り出され、図示しない流体圧機器に供給可能となっている。なお、出力ポート64は、二次圧供給ポート62から離れた位置に設けられている。
【0045】
ここで、第1室54aおよび第3室56aの圧力、すなわち増圧装置70の一次圧をP1とし、ピストン組立体に作用する力が釣り合う場合の第4室56bの圧力をP2´とし、増圧装置70で設定された二次圧をP2とする。P2´は、P1、第1ピストン42bおよび第2ピストン44bの断面積、ピストンロッド46の断面積に基づいて求めることができる。
【0046】
第4室56bから取り出される流体の圧力を増圧装置70で設定された二次圧P2に近い値に維持するため、P2´ができるだけP2に近い値となっていることが好ましい。また、第4室56bの容積が最小となるまでピストン組立体が移動した後、第4室56bの容積を回復させることができるようにするため、P2´はP2以下となっていることが必要である。
【0047】
本実施形態に係る増圧出力安定化装置40は、以上のように構成されるものであり、その動作については、前述した増圧出力安定化装置10と同様であるので、説明を省略する。
【0048】
本実施形態に係る増圧出力安定化装置40によれば、ピストン組立体に増圧装置70の一次圧と二次圧が作用し、二次圧が供給される第4室56bから圧力流体が外部に取り出されるので、増圧装置70の二次圧に近い安定した圧力で出力することができる。また、増圧装置70の動作速度が緩やかになるため、排出ポート84から排出される圧力流体の量が低減することで圧力流体の消費量が低減するほか、増圧装置70の耐久性が向上する。
【0049】
本発明に係る増圧出力安定化装置は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することのない範囲で、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0050】
10、40…増圧出力安定化装置 12、42…第1シリンダ
12a、42a…第1シリンダチューブ 12b、42b…第1ピストン
14、44…第2シリンダ 14a、44a…第2シリンダチューブ
14b、44b…第2ピストン 16、46…ピストンロッド
18、48…中間カバー 20、50…第1端部カバー
22、52…第2端部カバー 24a、54a…第1室
24b、54b…第2室 26a、56a…第3室
26b、56b…第4室 36、64…出力ポート
58…一次圧供給第1ポート 60…一次圧供給第2ポート
70…増圧装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9