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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】加圧装置及びこれを用いた加圧処理装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
G03G15/20 535
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020058622
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021157102
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】金井 研司
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-194695(JP,A)
【文献】特開2017-167316(JP,A)
【文献】特開2001-154528(JP,A)
【文献】特開2006-259299(JP,A)
【文献】特開2013-186304(JP,A)
【文献】特開2018-155786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め決められた初期位置に対して退避可能に設けられる第1の加圧要素と、
前記第1の加圧要素に対向して設けられ、前記第1の加圧要素との間に媒体を挟持して加圧する第2の加圧要素と、
前記初期位置に位置する前記第1の加圧要素に対して前記第2の加圧要素を接触位置と退避位置との間で接離する接離手段と、
前記第2の加圧要素が前記接触位置に位置するときに前記初期位置に位置する前記第1の加圧要素を前記第2の加圧要素側に付勢する付勢手段と、
前記第2の加圧要素に対して駆動力を与え、前記第2の加圧要素が前記接触位置に位置するときに前記第1の加圧要素を従動させる駆動手段と、
を備え、
前記接離手段は、前記第2の加圧要素のうち、前記第1の加圧要素と前記第2の加圧要素との接触域とは反対側に設けられ、前記第1の加圧要素側に向けて前記第2の加圧要素を移動させる移動要素を有し、
前記駆動手段は、前記第2の加圧要素が前記移動要素側に押し付けられる方向に前記駆動力を与えることを特徴とする加圧装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加圧装置において、
前記第1の加圧要素は加熱源によって加熱されることを特徴とする加圧装置。
【請求項3】
請求項2に記載の加圧装置において、
前記第1の加圧要素は、無端状のベルト部材を加熱源にて加熱し、前記第2の加圧要素に対向する前記ベルト部材の背面には対向部材を設置していることを特徴とする加圧装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の加圧装置において、
前記付勢手段は、第1の加圧要素に対して圧縮変形による弾性付勢力を与えるものであることを特徴とする加圧装置。
【請求項5】
請求項4に記載の加圧装置において、
前記第1の加圧要素は、前記第2の加圧要素の接離量よりも少ない範囲で退避可能であることを特徴とする加圧装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の加圧装置において、
前記接離手段は、前記移動要素が、揺動支点を中心に揺動可能に構成され、前記第2の加圧要素の被支持部に係わって当該第2の加圧要素を接離するように移動させる揺動部材と、前記揺動部材を予め決められた範囲で揺動させるように変位する変位部材とを有することを特徴とする加圧装置。
【請求項7】
請求項6に記載の加圧装置において、
前記変位部材は、偏心回転部材であることを特徴とする加圧装置。
【請求項8】
請求項7に記載の加圧装置において、
前記揺動部材は、前記偏心回転部材との接触部にカムフォロワを有することを特徴とする加圧装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の加圧装置において、
前記駆動手段は、前記第2の加圧要素への駆動力作用点が、前記接離手段の前記移動要素による前記第2の加圧要素の支持点よりも前記第2の加圧要素の回転方向上流側に位置し、かつ、前記第1の加圧要素と前記第2の加圧要素との接触域よりも前記第2の加圧要素の回転方向下流側に位置することを特徴とする加圧装置。
【請求項10】
請求項9に記載の加圧装置において、
前記駆動手段は、前記第2の加圧要素への駆動力作用点において前記第2の加圧要素を前記接触域から離れる方向の駆動力を与える駆動伝達系を有することを特徴とする加圧装置。
【請求項11】
請求項10に記載の加圧装置において、
前記接離手段は、前記移動要素が、揺動支点を中心に揺動可能に構成され、前記第2の加圧要素の被支持部に係わって当該第2の加圧要素を接離するように移動させる揺動部材を有し、
前記揺動部材の前記揺動支点は前記駆動手段の駆動支点と同軸に設けられていることを特徴とする加圧装置。
【請求項12】
媒体上に被加圧物を付与する処理手段と、
前記媒体上の被加圧物を加圧する請求項1乃至11のいずれかに記載の加圧装置と、を備えたことを特徴とする加圧処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧装置及びこれを用いた加圧処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の加圧装置としては、例えば特許文献1に記載のものが既に知られている。
特許文献1には、加熱源で加熱される無端ベルトの内面に宛て部材を備えた加熱部、無端ベルトとの間に媒体を受け入れるロール部材、そのロール部材を加圧する加圧機構、およびロール部材の位置を移動させて媒体を挟む挟持領域における押圧力分布を変更する移動機構を備えた加圧部とを有する定着装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-186304号公報(発明を実施するための形態,図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、接離可能な対構成の加圧要素を備えた態様において、対構成の加圧要素を接触させて駆動するときに、加圧要素に駆動反力が生じたとしても、対構成の加圧要素間の接触域における接触圧分布の変動を抑制可能とする加圧装置及びこれを用いた加圧処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、予め決められた初期位置に対して退避可能に設けられる第1の加圧要素と、前記第1の加圧要素に対向して設けられ、前記第1の加圧要素との間に媒体を挟持して加圧する第2の加圧要素と、前記初期位置に位置する前記第1の加圧要素に対して前記第2の加圧要素を接触位置と退避位置との間で接離する接離手段と、前記第2の加圧要素が前記接触位置に位置するときに前記初期位置に位置する前記第1の加圧要素を前記第2の加圧要素側に付勢する付勢手段と、前記第2の加圧要素に対して駆動力を与え、前記第2の加圧要素が前記接触位置に位置するときに前記第1の加圧要素を従動させる駆動手段と、を備え、前記接離手段は、前記第2の加圧要素のうち、前記第1の加圧要素と前記第2の加圧要素との接触域とは反対側に設けられ、前記第1の加圧要素側に向けて前記第2の加圧要素を移動させる移動要素を有し、前記駆動手段は、前記第2の加圧要素が前記移動要素側に押し付けられる方向に前記駆動力を与えることを特徴とする加圧装置である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る加圧装置において、前記第1の加圧要素は加熱源によって加熱されることを特徴とする加圧装置である。
請求項3に係る発明は、請求項2に係る加圧装置において、前記第1の加圧要素は、無端状のベルト部材を加熱源にて加熱し、前記第2の加圧要素に対向する前記ベルト部材の背面には対向部材を設置していることを特徴とする加圧装置である。
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかに係る加圧装置において、前記付勢手段は、第1の加圧要素に対して圧縮変形による弾性付勢力を与えるものであることを特徴とする加圧装置である。
請求項5に係る発明は、請求項4に係る加圧装置において、前記第1の加圧要素は、前記第2の加圧要素の接離量よりも少ない範囲で退避可能であることを特徴とする加圧装置である。
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに係る加圧装置において、前記接離手段は、前記移動要素が、揺動支点を中心に揺動可能に構成され、前記第2の加圧要素の被支持部に係わって当該第2の加圧要素を接離するように移動させる揺動部材と、前記揺動部材を予め決められた範囲で揺動させるように変位する変位部材とを有することを特徴とする加圧装置である。
請求項7に係る発明は、請求項6に係る加圧装置において、前記変位部材は、偏心回転部材であることを特徴とする加圧装置である。
請求項8に係る発明は、請求項7に係る加圧装置において、前記揺動部材は、前記偏心回転部材との接触部にカムフォロワを有することを特徴とする加圧装置である。
請求項9に係る発明は、請求項1乃至8のいずれかに係る加圧装置において、前記駆動手段は、前記第2の加圧要素への駆動力作用点が、前記接離手段の前記移動要素による前記第2の加圧要素の支持点よりも前記第2の加圧要素の回転方向上流側に位置し、かつ、前記第1の加圧要素と前記第2の加圧要素との接触域よりも前記第2の加圧要素の回転方向下流側に位置することを特徴とする加圧装置である。
請求項10に係る発明は、請求項9に係る加圧装置において、前記駆動手段は、前記第2の加圧要素への駆動力作用点において前記第2の加圧要素を前記接触域から離れる方向の駆動力を与える駆動伝達系を有することを特徴とする加圧装置である。
請求項11に係る発明は、請求項10に係る加圧装置において、前記接離手段は、前記移動要素が、揺動支点を中心に揺動可能に構成され、前記第2の加圧要素の被支持部に係わって当該第2の加圧要素を接離するように移動させる揺動部材を有し、前記揺動部材の前記揺動支点は前記駆動手段の駆動支点と同軸に設けられていることを特徴とする加圧装置である。
【0007】
請求項12に係る発明は、媒体上に被加圧物を付与する処理手段と、前記媒体上の被加圧物を加圧する請求項1乃至11のいずれかに係る加圧装置と、を備えたことを特徴とする加圧処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、接離可能な対構成の加圧要素を備えた態様において、対構成の加圧要素を接触させて駆動するときに、加圧要素に駆動反力が生じたとしても、対構成の加圧要素間の接触域における接触圧分布の変動を抑制可能とすることができる。
請求項2に係る発明によれば、媒体上の被加圧物に対して加熱しながら加圧することができる。
請求項3に係る発明によれば、第1の加圧要素が付属部品の多い態様であっても、第1の加圧要素を接離する必要がなく、接離時の付属部品への衝撃を抑制することができる。
請求項4に係る発明によれば、引張変形による弾性付勢力を与える方式に比べて、装置構成を小型化することができる。
請求項5に係る発明によれば、付勢手段による付勢力を押さえて、駆動時のトルクを低減することができる。
請求項6に係る発明によれば、接離手段の移動要素の代表的態様を簡単に構築することができる。
請求項7に係る発明によれば、揺動部材を変位させる変位部材を簡単に構築することができる。
請求項8に係る発明によれば、カムフォロワがない場合に比べて、揺動部材と変位部材との間の接触抵抗を低減することができる。
請求項9に係る発明によれば、接離手段の移動要素側に第2の加圧要素を押し付けることができ、第1の加圧要素と第2の加圧要素との接触域に駆動反力が作用する事態を適切に抑制することができる。
請求項10に係る発明によれば、第2の加圧要素に対して駆動手段からの駆動力を適切に伝達することができる。
請求項11に係る発明によれば、揺動部材の揺動支点と駆動手段の駆動支点とを非同軸にする態様に比べて、第2の加圧要素に対して接離手段、駆動手段を設置するに当たって、設置スペースを抑制することができる。
請求項12に係る発明によれば、接離可能な対構成の加圧要素を備えた態様において、対構成の加圧要素を接触させて駆動するときに、加圧要素に駆動反力が生じたとしても、対構成の加圧要素間の接触域における接触圧分布の変動を抑制可能とする加圧装置を含む加圧処理装置を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は本発明が適用された加圧処理装置の実施の形態の概要を示す説明図、(b)は(a)に係る加圧処理装置で用いられる加圧装置の要部を示す説明図である。
図2】実施の形態1に係る加圧処理装置としての画像形成装置の一例を示す説明図である。
図3】実施の形態1で用いられる加圧装置としての定着装置の一例を示す説明図である。
図4図3中IV-IV線断面説明図である。
図5】実施の形態1に係る定着装置の接離機構の要部を示す説明図である。
図6】実施の形態1に係る定着装置の駆動機構の一例を示す説明図である。
図7】実施の形態1に係る定着装置の変形の形態1を示す説明図である。
図8】実施の形態1に係る定着装置の変形の形態2を示す説明図である。
図9】比較の形態1に係る定着装置の要部を示す説明図である。
図10】(a)は比較の形態1に係る定着装置の駆動機構の一例を示す説明図、(b)は定着装置の接触域における長手方向のニップ圧分布の一例を示す説明図である。
図11】比較の形態2に係る定着装置の要部を示す説明図である。
図12】実施の形態2に係る加圧処理装置としてのインクジェット装置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
◎実施の形態の概要
図1(a)は本発明が適用された加圧処理装置の実施の形態の概要を示す説明図である。
同図において、加圧処理装置は、媒体S上に被加圧物9を付与する処理手段8と、媒体S上の被加圧物9を加圧する加圧装置1と、を備えたものである。
そして、加圧装置1は、図1(b)に示すように、予め決められた初期位置に対して退避可能に設けられる第1の加圧要素2と、第1の加圧要素2に対向して設けられ、第1の加圧要素2との間に媒体Sを挟持して加圧する第2の加圧要素3と、初期位置に位置する第1の加圧要素2に対して第2の加圧要素3を接触位置と退避位置との間で接離する接離手段4と、第2の加圧要素3が接触位置に位置するときに初期位置に位置する第1の加圧要素2を第2の加圧要素3側に付勢する付勢手段6と、第2の加圧要素3に対して駆動力を与え、第2の加圧要素3が接触位置に位置するときに第1の加圧要素2を従動させる駆動手段7と、を備え、接離手段4は、第2の加圧要素3のうち、第1の加圧要素2と第2の加圧要素3との接触域CNとは反対側に設けられ、第1の加圧要素2側に向けて第2の加圧要素3を移動させる移動要素5を有し、駆動手段7は、第2の加圧要素3が移動要素5側に押し付けられる方向に駆動力を与えるものである。
【0011】
このような技術的手段において、対構成の加圧要素2,3は、無端状のベルト部材とロール部材との組合せ態様に限られるものではなく、いずれもロール部材である態様も含む。
また、接離手段4については、第1の加圧要素2に対して第2の加圧要素3を接離させる移動要素5を有するものであればよい。
更に、付勢手段6は第1の加圧要素2と第2の加圧要素3との接触域CNにおける接触圧を維持する上で必要であり、第2の加圧要素3を付勢するものは含まず、第1の加圧要素2を付勢するものを対象とする。
更にまた、駆動手段7は、第2の加圧要素3が移動要素5側に押し付けられるように第2の加圧要素3に駆動力を与えるものであればよく、これにより、第1の加圧要素2と第2の加圧要素3との接触域CNに駆動反力が作用することを回避する。
【0012】
次に、本実施の形態に係る加圧装置の代表的態様又は好ましい態様について説明ずる。
先ず、加圧装置1の代表的態様としては、第1の加圧要素2は加熱源2bによって加熱される態様が挙げられる。本例は、加熱しながら加圧する装置を対象とするもので、第1の加圧要素2に加熱源2bを含む態様に限らず、第2の加圧要素3に加熱源(図示せず)を具備するものも含む。
また、第1の加圧要素2として加熱源2bを含む態様のうち、付属部品の多い態様としては、無端状のベルト部材2aを加熱源2bにて加熱し、第2の加圧要素3に対向するベルト部材2aの背面には対向部材2cを設置している態様が挙げられる。
更に、付勢手段6の好ましい態様としては、付勢手段6の設置スペースを抑えるという観点からすれば、第1の加圧要素2に対して圧縮変形による弾性付勢力を与えるものが挙げられる。
更にまた、付勢手段6による付勢力を抑える上で好ましい態様としては、第1の加圧要素2は、第2の加圧要素3の接離量よりも少ない範囲で退避可能である態様が挙げられる。
【0013】
また、接離手段4の好ましい態様としては、移動要素5が、揺動支点を中心に揺動可能に構成され、第2の加圧要素3の被支持部に係わって当該第2の加圧要素3を接離するように移動させる揺動部材5aと、揺動部材5aを予め決められた範囲で揺動させるように変位する変位部材5bとを有する態様が挙げられる。
本例において、揺動部材5aとしては、一つの機能部材で構成してもよいし、共通又は別の揺動支点に対して揺動可能な二つの機能部材をバネ部材を介して連結して構成するなど適宜設計変更して差し支えない。また、変位部材5bとしては例えば偏心回転部材(カム部材)を用いる態様が代表的であるが、揺動部材5aとの接触抵抗を低減するという観点からすれば、揺動部材5aには偏心回転部材(カム部材)との接触部にカムフォロワを有する態様が好ましい。
【0014】
また、駆動手段7の代表的態様としては、第2の加圧要素3への駆動力作用点が、接離手段4の移動要素5による第2の加圧要素3の支持点よりも第2の加圧要素3の回転方向上流側に位置し、かつ、第1の加圧要素2と第2の加圧要素3との接触域CNよりも第2の加圧要素3の回転方向下流側に位置する態様が挙げられる。
ここで、駆動手段7の好ましい態様としては、第2の加圧要素3への駆動力作用点において第2の加圧要素3を接触域CNから離れる方向の駆動力を与える駆動伝達系7a(例えば駆動伝達ギア列)を有する態様がある。
このような駆動手段7の更に好ましい態様としては、移動要素5が、揺動支点を中心に揺動可能に構成され、第2の加圧要素3の被支持部に係わって当該第2の加圧要素3を接離するように移動させる揺動部材5aを有し、揺動部材5aの揺動支点は駆動手段7の駆動支点と同軸に設けられている態様が挙げられる。本例は、接離手段4、駆動手段7を設置するスペースを一部共用することが可能になる点で好ましい。
【0015】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
-画像形成装置の全体構成-
図2は実施の形態1に係る加圧処理装置としての一例である画像形成装置の全体構成を示す。
同図において、画像形成装置20は、装置筐体21内に例えば複数の色成分画像を作製するための作像エンジン22を搭載し、この作像エンジン22の下方には媒体としての用紙を供給するための用紙供給容器23(本例では一段構成を例示)を配設し、当該用紙供給容器23から供給された用紙を略鉛直方向に沿って延びる用紙搬送路24を通じて搬送し、作像エンジン22にて作製された画像を一括転写装置25にて転写した後、用紙上に転写された画像を加圧装置の一例としての定着装置26にて定着し、例えば装置筐体21の上部に設けられた用紙排出受け27に画像定着済みの用紙を排出するようにしたものである。
【0016】
-作像エンジン-
本例において、作像エンジン22は、電子写真方式を採用した複数の色成分(本例ではY(イエロ)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック))トナーによる複数の作像部30(具体的には30a~30d)を有し、各作像部30で作製した各色成分画像を中間転写体40に一次転写した後、一括転写装置25にて中間転写体40上の画像を用紙に一括転写(二次転写)するようにしたものである。
本例において、作像部30(30a~30d)は、例えばドラム状の感光体31を有し、当該感光体31の周囲には、当該感光体31を帯電する帯電装置32、帯電された感光体31上に静電潜像を形成する潜像書込装置33、感光体31上に形成された静電潜像を各色成分トナーにて現像する現像装置34、感光体31に対向する中間転写体40の裏面に設けられて感光体31上の画像を中間転写体40に一次転写する一次転写装置35、及び、一次転写後に感光体31上に残留するトナーを清掃する清掃装置36を順次配設したものである。
尚、本例では、潜像書込装置33としては各作像部30に対して例えばLEDアレイにて別々に書き込むようにしたものが用いられるが、これに限られるものではなく、各作像部30に対して各色成分の静電潜像を対応するレーザ光で書き込む共用のレーザ走査装置を設けるようにしてもよいし、レーザ走査装置を夫々別々に設けるようにしてもよい。また、符号37(具体的には37a~37d)は各作像部30(30a~30d)の各現像装置34に対して各色成分トナーを補給するトナーカートリッジである。
【0017】
更に、本例では、中間転写体40は例えば複数の張架ロール41~44に掛け渡されるベルト状部材からなり、例えば張架ロール41を駆動ロールとして所定方向に循環回転可能に駆動され、また、張架ロール43は中間転写体40に所望の張力を付与する張力付与ロールとして機能するようになっている。
尚、符号47は中間転写体40上の残留物(トナーや紙粉等)を清掃する中間転写体用清掃装置である。
更にまた、本例では、一括転写装置25は中間転写体40の表面に従動回転可能に接触する転写ロール25aを有しており、中間転写体40の張架ロール42を対向電極とし、転写ロール25aと対向電極との間に所望の転写電界を形成することで、中間転写体40上に保持された画像を用紙へと一括転写するようになっている。
また、用紙搬送路24のうち一括転写装置25の入口側には一括転写装置25に送り込む用紙を位置合わせする位置合わせロール28が設けられ、また、用紙搬送路24の用紙排出受け27の直前には排出ロール29が設けられている。
【0018】
-定着装置の全体構成-
本実施の形態において、定着装置26は、第1の圧力要素に加熱機能を付加し、第2の圧力要素との間で用紙を挟持して搬送し、用紙上に転写された未定着画像を加熱、加圧して定着するものである。
本例において、第1の圧力要素としては、図2及び図3に示すように、例えば所謂誘導加熱方式を採用したものであって、磁界の作用により発熱する発熱層を有する加熱定着ベルト61と、加熱定着ベルト61の外周面に対し予め決められた間隙をもって配置され、加熱定着ベルト61を発熱させるために磁界を発生させる磁界発生器63と、加熱定着ベルト61のうち第2の圧力要素に対向する箇所の背面側に配置され、加熱定着ベルト61を第2の圧力要素側に押し付ける押圧パッド65と、を備えたものが用いられる。
一方、第2の圧力要素としては、図2及び図3に示すように、加熱定着ベルト61のうち押圧パッド65に対応した部位に対向して設けられ、加熱定着ベルト61との間に用紙を挟持して搬送する加圧定着ロール62が用いられている。
【0019】
<定着加熱ベルト・定着加圧ロール>
本例において、加熱定着ベルト61は無端状のベルト部材を有し、当該ベルト部材は少なくとも用紙の幅よりも幅広のものが使用されている。そして、ベルト部材は、例えば基層、例えば非磁性金属製の導電層(発熱層として機能)、弾性層及び表面層等の多層構造として構成されている。
また、加圧定着ロール62は回転軸621の周囲に弾性体からなるロール本体622を設けたものである。
【0020】
<磁界発生器>
本例において、磁界発生器63は、加熱定着ベルト61の外周面のうち加圧定着ロール62とは反対側に位置する略半周部を囲む台座部631を有している。この台座部631は加熱定着ベルト61の幅方向に沿って延びる断面円弧状に形成されており、この台座部631には加熱定着ベルト61の幅方向に沿って周回するコイル受部632が設けられ、このコイル受部632に巻線構造の励磁コイル633が保持されている。
更に、本例では、磁界発生器63の外側、具体的には台座部631のうち励磁コイル633の背面側(加熱定着ベルト61とは反対側に相当)と、磁界発生器63に対向する加熱定着ベルト61の内側には夫々磁界保持部材64(具体的には64a,64b)が設けられている。この磁界保持部材64(64a,64b)は磁性材料(例えばフェライト)からなり、台座部631の形状に沿って断面略円弧状に形成され、加熱定着ベルト61を外部、内部から挟み込んで励磁コイル633から発生した磁界を保持して所望の磁路を形成し、電磁誘導による加熱効率を高めるようにしたものである。
【0021】
<押圧パッド周辺構造>
そして、加圧定着ロール62に対向する加熱定着ベルト61内には押圧パッド65を支持するパッド支持部材66が配置されている。このパッド支持部材66は加熱定着ベルト61の幅方向に延びる棒状に形成されており、このパッド支持部材66の加圧定着ロール62に対向する部位には押圧パッド65が支持され、加圧定着ロール62に対して加熱定着ベルト61を押圧し、加圧定着ロール62と加熱定着ベルト61との間に用紙Sを所定の接触域CNで挟持して搬送すると共に用紙S上の画像を定着処理するようになっている。
尚、本例では、パッド支持部材66には、加熱定着ベルト61内に位置する磁界保持部材64(64b)を支持する支持ブラケット67が設けられている。
【0022】
-定着装置の支持構造-
<加熱定着ベルトの支持構造>
本実施の形態において、加熱定着ベルト61の支持構造としては、図4に示すように、パッド支持部材66及び磁界発生器63が加熱定着ベルト61の移動方向に交差する幅方向両側で対構成のホルダ68に保持され、第1の圧力要素として一体化されている。
特に、本例において、対構成のホルダ68は、図4及び図5に示すように、予め決められた支点P1を揺動支点として揺動可能なホルダアーム681を有し、夫々コイル状の付勢スプリング69によって加圧定着ロール62側に向けて加熱定着ベルト61を付勢するようになっており、加熱定着ベルト61は予め決められた初期位置に対して退避可能に配置されている。
ここで、定着装置26の各構成要素は定着筐体261内に収容されており、例えば定着筐体261の一部に保持ピン262を固定的に設けると共に、この保持ピン262に付勢スプリング69を位置決めし、この付勢スプリング69の一端を保持ピン262の基端側に引っ掛ける一方、ホルダアーム681の一部に形成された引っ掛け片682に圧縮変形させた付勢スプリング69の他端を引っ掛けることで、付勢スプリング69の弾性復帰力により、ホルダアーム681を支点P1を揺動支点として図5中反時計回り方向に付勢し、定着筐体261の一部に形成されたストッパ壁263にホルダアーム681の一部に形成されたストッパ突部683を突き当て、加熱定着ベルト61の初期位置を決めるようにしたものである。
尚、本例において、支点P1は、図5に示すように、加熱定着ベルト61と加圧定着ロール62との接触域CNと加圧定着ロール62の回転軸621中心との間の領域で且つ用紙が進入する側の領域に配置されている。
【0023】
<加圧定着ロールの支持構造>
一方、加圧定着ロール62は、図4に示すように、ロール本体622の回転軸621の両端部を軸受部品71,72で回転可能に支持する構造になっている。
本例においては、装置筐体21の奥側(図中Rr側)に位置する一方の軸受部品71は予め決められた位置に設置され、装置筐体21の手前側(図中Ft側)に位置する他方の軸受部品72は接離機構80によって移動可能に支持されている。
ここで、接離機構80は、加圧定着ロール62の一方の軸受部品72による支持部を揺動支点P0とし、加圧定着ロール62の他方の軸受部品72による支持部を回転軸方向に交差する交差方向(本例では図4中上下方向に相当する矢印方向Z)に沿って移動させ、加圧定着ロール62が初期位置に位置する加熱定着ベルト61と接触する接触位置と、加圧定着ロール62が接触位置から退避する退避位置との間で、加熱定着ベルト61に対して加圧定着ロール62を接離するものである。
本例において、接離機構80は、例えば定着装置26の接触域CNで用紙詰まり(ジャム)が生じた場合には、加熱定着ベルト61と加圧定着ロール62との間の接触状態を解除し、ジャム処理作業を可能にするほか、例えば定着装置26立上げ時に、加熱定着ベルト61から加圧定着ロール62を退避位置に一時的に退避させ、加圧定着ロール62への熱伝導をなくすことで、加熱定着ベルト61だけを効率的に加熱するようにしてもよい。
尚、接離機構80の詳細については後述する。
【0024】
-定着装置の駆動系-
本例において、定着装置26は、図4に示すように、加圧定着ロール62の回転軸621の奥側に位置する端部に駆動機構90が接続されている。
ここで、駆動機構90としては、加圧定着ロール62の回転軸621の端部に被駆動伝達ギア93を同軸に連結する一方、駆動モータ91からの駆動力を予め決められた駆動伝達ギア列などの駆動伝達機構92を介して被駆動伝達ギア93に伝達する態様が用いられる。
本例では、駆動機構90は、加圧定着ロール62を駆動回転させるものであり、接離機構80にて接触位置に加圧定着ロール62を配置した状態で当該加圧定着ロール62に接触する加熱定着ベルト61を従動回転させるようになっている。
【0025】
-定着装置の制御系-
本例では、定着装置26には、図4に示すように、制御装置100が接続されており、制御装置100は、例えばCPU等のプロセッサ、ROM、RAM及びI/Oポートを含むマイクロコンピュータにて構成され、プロセッサに予めインストールされた作像プログラムに従って接離機構80、駆動機構90に制御信号を送出し、接離機構80の接離動作及び駆動機構90による駆動動作を制御するようになっている。
ここで、駆動機構90による駆動開始タイミングとしては適宜選定して差し支えなく、接離機構80により加圧定着ロール62を接触位置に移動させた後であってもよいし、接触位置に至る前に加圧定着ロール62を駆動させるようにしてもよい。
また、定着装置26の温度制御系としては、加熱定着ベルト61の内周面の適宜箇所には図示外の温度センサが接触若しくは非接触に設置されており、当該温度センサにて加熱定着ベルト61の温度を検知し、制御装置100は、温度センサからの検知情報に基づいて磁界発生器63による磁界の発生を制御することで加熱定着ベルト61を温度制御するようになっている。
【0026】
-接離機構の構成例-
図5は定着装置26に組み込まれた接離機構80の構成例について説明する。
同図において、接離機構80は、予め決められた支点P2(本例ではホルダアーム681の支点P1と同軸のものを採用)を揺動支点として揺動する第1のサポートアーム81と、第1のサポートアーム81と同じ支点P2を揺動支点として揺動する第2のサポートアーム82とを有する。
本例において、第1のサポートアーム81は、支点P2から加熱定着ベルト61と加圧定着ロール62との接触域CNとは反対側に位置する加圧定着ロール62の軸受部品72の周囲を略L字状に囲むアーム部材811からなり、このアーム部材811のうち軸受部品72とは反対側に位置する部位に偏心回転部材としてのカム部材83が設置され、このカム部材83に対応したアーム部材811には例えば回転コロからなるカムフォロワ84が設けられている。
【0027】
また、第2のサポートアーム82は、支点P2から加熱定着ベルト61と加圧定着ロール62との接触域CNとは反対側に向かって加圧定着ロール62の軸受部品72の周囲を略C字状に囲むアーム部材821からなり、アーム部材821のうち軸受部品72に対向する側には軸受部品72を抱き込む凹部822を形成し、また、アーム部材821の先端折曲部と第1のサポートアーム81のアーム部材811の先端折曲部との間にニップスプリング85を圧縮変形した状態で介在させ、更に、夫々のアーム部材811,821の先端折曲部間をニップスクリュー86で連結し、ニップスプリング85を位置決めして保持すると共に、アーム部材811,821の先端折曲部間の最大スパンを規制するようになっている。
【0028】
-駆動機構による駆動作用点の選定-
本例の駆動機構90においては、図6に示すように、駆動モータ91の駆動力が駆動伝達機構92を介して加圧定着ロール62の被駆動伝達ギア93に伝達されるが、駆動伝達機構92の最終段に位置する駆動伝達ギア92aと被駆動伝達ギア93との間の噛合位置Qは、加熱定着ベルト61と加圧定着ロール62との接触域CNよりも加圧定着ロール62の回転方向下流側で、かつ、接離機構80の第2のサポートアーム82の凹部822と軸受部品72との接触部よりも加圧定着ロール62の回転方向上流側に選定されている。
尚、図6においては、図5に示す接離機構80の要部を模式的に表示するようにした。
【0029】
-定着装置の作動-
<定着装置の接離動作>
先ず、定着装置26の接離動作について説明する。
定着装置26を駆動するときには、加熱定着ベルト61に対して加圧定着ロール62を接触位置に移動させ、加熱定着ベルト61と加圧定着ロール62との間に予め決められた接触圧の接触域CNを形成することが必要である。
このとき、接離機構80においては、図5及び図6に示すように、図示外の駆動モータによってカム部材83を、当該カム部材83の中心からカムフォロワ84に至るまでの距離が長くなる方向に回転させ、予め決められた長さに至る箇所で停止する。この状態において、第1のサポートアーム81はカム部材83によりカムフォロワ84を介して加熱定着ベルト61に接近する方向に支点P1を揺動支点として揺動する。すると、第1のサポートアーム81の揺動先端側がニップスプリング85を圧縮する方向に押圧するため、当該ニップスプリング85が第2のサポートアーム82の揺動先端側を押圧する。この場合、第2のサポートアーム82は、アーム部材821の凹部822に軸受部品72を抱き込んだ状態で加熱定着ベルト61側に押圧するため、加圧定着ロール62の軸受部品72側が一方の軸受部品71側を揺動支点として揺動して接触位置に配置され、加熱定着ベルト61との間に接触域CNを形成する。このとき、加圧定着ロール62は予め決められた接触位置に配置され、付勢スプリング69によって付勢された加熱定着ベルト61に接触する。このため、接触域CNでは付勢スプリング69の付勢力によるニップ荷重が作用することになる。
そして、加熱定着ベルト61の加熱状態が定着処理に必要な温度に至った条件においては、用紙S上の未定着画像が加熱定着ベルト61と加圧定着ロール62との間の接触域CNを通過すると、用紙S上の未定着画像が加熱、加圧されて定着する。
【0030】
また、定着装置26の接触域CNにおいて、例えば用紙詰まり等が生ずると、加熱定着ベルト61と加圧定着ロール62との間の接触状態(ニップ状態)を解除することが必要である。
このとき、接離機構80においては、図示外の駆動モータにより、カム部材83を、当該カム部材83の中心からカムフォロワ84に至るまでの距離が短くなる方向に回転させ、予め決められた長さに至る箇所で停止する。この状態においては、第1のサポートアーム81と第2のサポートアーム82との間に介在されたニップスプリング85の弾性復帰力により、第1のサポートアーム81がカム部材83側に押圧され、これに伴って、第2のサポートアーム82もカム部材83側に引っ張られ、第2のサポートアーム82に抱き込まれた軸受部品72が加熱定着ベルト61から離れる方向へ移動し、加圧定着ロール62は予め決められた退避位置に退避する。尚、ニップスプリング85の長さはニップスクリュー86によって最大スパンが規制されているため、ニップスプリング85が一定以上伸びることはない。
【0031】
<定着装置の駆動動作>
本実施の形態では、駆動機構90による駆動作用点(噛合位置Qに相当)は、図6に示すように、加熱定着ベルト61と加圧定着ロール62との接触域CNよりも加圧定着ロール62の回転方向下流側で、かつ、接離機構80の第2のサポートアーム82の凹部822と軸受部品72との接触部よりも加圧定着ロール62の回転方向上流側に選定されている。この状態において、接離機構80には駆動機構90による駆動力の付与に伴う駆動反力Fが作用することになるが、本例では、この駆動反力Fはカム部材83で受け止められている。このため、本例では、加熱定着ベルト61と加圧定着ロール62との間の接触域CNには付勢スプリング69によるニップ荷重のみが作用し、駆動反力Fが作用することはなく、接触域CNにおけるニップ荷重が加圧定着ロール62の駆動側と駆動側とは反対側の反駆動側との間でアンバランスになる懸念はなく、接触域CNの長手方向全域に亘って安定する。
【0032】
本実施の形態では、接離機構80は加熱定着ベルト61に対して加圧定着ロール62を接離する構成にしているため、加熱定着ベルト61を接離する方式(比較の形態1)に比べて、加熱定着ベルト61と加圧定着ロール62との間の接離量を確保し易い。
更に、本実施の形態では、加熱定着ベルト61は初期位置からニップ荷重位置までしか付勢スプリング69が圧縮しない構成であるため、接触域CNでのニップ荷重をある程度低く抑えることが可能であり、その分、加圧定着ロール62駆動時におけるトルクを低く抑制することが可能である。
更に、本実施の形態では、加熱定着ベルト61は付属部品の多く含む態様であるが、加熱定着ベルト61を接離する方式ではないため、付属部品の多い加熱定着ベルト61を接離することで付属部品に大きな衝撃を与える懸念は少ない。
【0033】
◎変形の形態1
図7は変形の形態1に係る定着装置の要部を示す説明図である。
同図において、定着装置26の基本的構成は実施の形態1と略同様であるが、実施の形態1と異なり、第1のサポートアーム81、第2のサポートアーム82の揺動支点の位置を変更したものである。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
本例において、駆動機構90の基本的構成は、実施の形態1と略同様であり、駆動伝達機構92の最終段に位置する駆動伝達ギア92aと被駆動伝達ギア93との間の噛合位置Qは、加熱定着ベルト61と加圧定着ロール62との接触域CNよりも加圧定着ロール62の回転方向下流側で、かつ、接離機構80の第2のサポートアーム82の凹部822と軸受部品72との接触部よりも加圧定着ロール62の回転方向上流側に選定されている。
ここで、駆動伝達ギア92aの回転支点をP3と仮定すると、第1のサポートアーム81、第2のサポートアーム82の揺動支点を駆動伝達ギア92aの回転支点P3と同軸にしたものである。
本例によれば、接離機構80の第1のサポートアーム81、第2のサポートアーム82の揺動支点の位置を駆動機構90の駆動伝達ギア92aの回転支点P3と同軸にすることにより、両者を別々の位置に設ける態様に比べて、接離機構80、駆動機構90の各構成要素のレイアウトについて省スペース化することが可能である。
尚、図示していないが、加熱定着ベルト61のホルダアーム681の支点P1を駆動伝達ギア92aの回転支点P3と同軸にすることも可能である。
【0034】
◎変形の形態2
図8は変形の形態2に係る定着装置の要部を示す説明図である。
同図において、定着装置26の基本的構成は実施の形態1と略同様であるが、実施の形態1と異なる接離機構80を備えている。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
同図において、接離機構80は、二つのサポートアーム(第1のサポートアーム81、第2のサポートアーム82)に代えて、一つのサポートアーム88を用いる方式を採用したものである。
本例では、サポートアーム88は、支点P2から加熱定着ベルト61と加圧定着ロール62との接触域CNとは反対側に向かって加圧定着ロール62の軸受部品72の周囲を略C字状に囲むアーム部材881からなり、このアーム部材881のうち軸受部品72とは反対側に位置する部位にカム部材83が設置され、このカム部材83に対応したアーム部材881には例えば回転コロからなるカムフォロワ84が設けられている。
更に、アーム部材881のうち軸受部品72に対向する側には軸受部品72を抱き込む凹部882が形成され、また、アーム部材881の先端折曲部と定着筐体261の一部との間にはニップスプリング85が圧縮変形した状態で介在され、更に、アーム部材881の先端折曲部と定着筐体261の一部との間はニップスクリュー86で連結され、ニップスプリング85を位置決めして保持すると共に、アーム部材881の先端折曲部と定着筐体261の一部264との間の最大スパンを規制するようになっている。
本例においては、実施の形態1に係る接離機構80に比べて、サポートアーム88にニップスプリング85の付勢力が強く作用することになるが、それ以外の基本的作用は実施の形態1と略同様である。
【0035】
また、実施の形態1に係る定着装置の性能を評価する上で、比較の形態1,2に係る定着装置と対比する。
◎比較の形態1
図9は比較の形態1に係る定着装置の要部を示す説明図である。
同図において、定着装置26の基本的構成は実施の形態1と略同様であるが、実施の形態1と異なる接離機構80’を備え、駆動機構90’による駆動作用点(後述する噛合位置Q’に相当)も実施の形態1と異なる。
同図において、加圧定着ロール62は予め決められた位置に固定的に設置されている。
一方、本例では、加熱定着ベルト61側に対構成の接離機構90’が設けられている。
ここで、接離機構80’は、加熱定着ベルト61のホルダ68からサポートアーム181を突出させ、定着筐体261に対してサポートアーム181を揺動可能に支持し、更に、定着筐体261の一部に保持ピン262を固定的に設けると共に、この保持ピン262にニップスプリング182を位置決めし、このニップスプリング182の一端を保持ピン262の基端側に引っ掛ける一方、ホルダ68の一部に形成された引っ掛け片682に圧縮変形させたニップスプリング182の他端を引っ掛けることで、ニップスプリング182の弾性復帰力により、サポートアーム181の揺動支点を中心に図9中反時計回り方向に付勢したものである。
更に、接離機構80’は、定着筐体261のうちホルダ68の用紙出口側の領域に回転偏心部材であるカム部材183を設置すると共に、これに対向するホルダ68に例えば回転コロからなるカムフォロワ184を設けたものである。
【0036】
また、駆動機構90’は、図10(a)に示すように、駆動モータ91’の駆動力が駆動伝達機構92’を介して加圧定着ロール62の被駆動伝達ギア93’に伝達されるが、駆動伝達機構92’の最終段に位置する駆動伝達ギア92a’と被駆動伝達ギア93’との間の噛合位置Q’は、加熱定着ベルト61と加圧定着ロール62との接触域CNよりも加圧定着ロール62の回転方向上流側で、駆動力の伝達方向が加熱定着ベルト61と加圧定着ロール62との接触域CNに向かう位置に選定されている。
【0037】
本例によれば、カム部材183周面とカムフォロワ184との間の距離が予め決められた短い距離にあるとき、ニップスプリング182の付勢力によりホルダ68がサポートアーム181を揺動支点として移動し、加熱定着ベルト61が加圧定着ロール62と接触する接触位置に配置される。また、カム部材183周面とカムフォロワ184との間の距離が予め決められた長い距離にあるとき、カム部材183がニップスプリング182を更に圧縮変形させながらホルダ68を時計回り方向に揺動させ、加熱定着ベルト61が加圧定着ロール62に対して退避する退避位置に配置される。
しかしながら、本例にあっては、カム機構(カム部材183、カムフォロワ184)による加熱定着ベルト61の加圧定着ロール62に対する接離量が少ないことから、加圧定着ロール62に対する加熱定着ベルト61の接離動作を安定的に行うのが困難である。
また、加熱定着ベルト61の接離量を大きく確保しようとすると、ニップスプリング182によるニップ荷重が大きくなり、その分、加圧定着ロール62駆動時におけるトルクを低減することが困難になるばかりか、付属部品の多い加熱定着ベルト61にあっては接離動作に伴う衝撃を襲えることが困難である。
【0038】
また、本比較の形態では、駆動機構90’による駆動力の付与に伴う駆動反力F’は、加熱定着ベルト61と加圧定着ロール62との接触域CNに作用してしまう。このため、本例では、接触域CNにニップスプリング182によるニップ荷重に加えて駆動機構90’側に駆動反力F’が作用することになり、図10(b)に示すように、接触域CNにおけるニップ荷重が加圧定着ロール62の駆動側と駆動側とは反対側の反駆動側との間でアンバランスになる懸念がある。
【0039】
◎比較の形態2
図11は比較の形態2に係る定着装置の要部を示す説明図である。
同図において、定着装置26の基本的構成は実施の形態1と略同様であるが、実施の形態1と異なる接離機構80’を備える。尚、駆動機構90’(図10参照)による駆動作用点は比較の形態1と略同様である。
本例では、加熱定着ベルト61は予め決められた位置に固定的に設置されている。
一方、加圧定着ロール62の接離機構80’は、例えば実施の形態1と略同様に構成されている。
【0040】
本比較の形態では、加熱定着ベルト61側が固定的に設置され、加熱定着ベルト61と加圧定着ロール62との接触域CNにおけるニップ荷重はニップスプリング85の付勢力に直接影響することから、接離機構80’の接離量を大きく確保しようとすると、ニップスプリング85によるニップ荷重が大きくなり、その分、加圧定着ロール62駆動時におけるトルクを低減することが困難になる。
また、本比較の形態でも、駆動機構90’による駆動力の付与に伴う駆動反力F’は、加熱定着ベルト61と加圧定着ロール62との接触域CNに作用してしまう。このため、本例では、接触域CNにニップスプリング85によるニップ荷重に加えて駆動機構90’側に駆動反力F’が作用することになり、図10(b)に示すように、接触域CNにおけるニップ荷重が加圧定着ロール62の駆動側と駆動側とは反対側の反駆動側との間でアンバランスになる懸念がある。
【0041】
◎実施の形態2
図12は実施の形態2に係る加圧処理装置の一例としてインクジェットプリンタの要部を示す説明図である。
同図において、インクジェットプリンタ200には、印刷用のインクを収納したインクカートリッジ201と、その下面にインクを噴射するノズルを備えた印字ヘッド202と、印字ヘッド202と対向するプラテン203とが設けられている。インクカートリッジ201とプラテン203とによって印刷手段が構成される。また、同図において、符号206は被転写材210を搬送する一対の搬送ロール、符号207は熱転写が終了した被転写材210が排出される排出口である。
また、符号220は加圧装置としての熱圧着装置であって、ホットスタンプ箔のインクを箔層とともに被転写材210に転写させるためのホットロール221およびプラテンロール222からなる。
【0042】
符号223はホットスタンプ箔230を巻回したロールであって、このロール223から繰り出されたホットスタンプ箔230は、印字ヘッド202とプラテン203との間に搬送され、この部分でインクによるパターン印刷が行われる。パターンが印刷されたホットスタンプ箔230は熱圧着装置220へ送られ、ここで熱圧着によってインクとともに箔層が被転写材210に転写される。224は転写が終了したホットスタンプ箔230を巻き取るロール、225および226はホットスタンプ箔230をガイドするガイドロールである。
尚、インクジェットプリンタ200には、以上のほか、インクカートリッジ201を保持して往復動するインクキャリアやインクキャリアを駆動するための駆動機構等が備わっているが、本例ではこれらの図示を省略してある。
【0043】
以上のようなインクジェットプリンタ200を用いて熱転写を行うには、図示外の制御装置において、被転写材210に印刷する所望パターンの左右反転パターンを作成する。そして、そのパターンのデータをインクジェットプリンタ200へ送ると、インクジェットプリンタ200では、上記パターンに応じて印字ヘッド202から噴射するインクによって、ホットスタンプ箔230に左右反転パターンが印刷される。こうしてインクのパターンが印刷されたホットスタンプ箔230は、熱圧着装置220のホットロール221とプラテンロール222との間に送られる。一方、被転写材210は搬送ロール206により、熱圧着装置220へ搬送され、ここでホットスタンプ箔230の上に重ねられる。そして、この重なった部分において、ホットロール221とプラテンロール222とによる熱圧着が行われる。この結果、ホットスタンプ箔230に印刷されたインクが軟化して被転写材210に接着し、ホットスタンプ箔230の箔層がインクとともに被転写材210に転写される。熱転写が終了した被転写材210は排出口207から排出され、箔層が抜けたホットスタンプ箔230はロール224に巻き取られる。
【0044】
本例においては、熱圧着装置220のホットロール221及びプラテンロール222を夫々第1の圧力要素及び第2の圧力要素として本発明を適用するようにすればよい。
尚、本例では被転写材210を搬送ロール206によって熱圧着装置220へ供給するようにしたが、転写の都度、被転写材210を熱圧着装置220へ手でセットするようにしてもよい。また、プラテンロール222を上下方向に可動として、ホットロール221とプラテンロール222との間隙を調整できるようにし、種々の厚さの被転写材210に対応できるようにしてもよい。さらに、本例ではホットスタンプ箔230をロール223に巻回して、あらかじめインクジェットプリンタ200の内部に収納したが、ホットスタンプ箔230をインクジェットプリンタ200の外部から供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…加圧装置,2…第1の加圧要素,2a…ベルト部材,2b…加熱源,2c…対向部材,3…第2の加圧要素,4…接離手段,5…移動要素,5a…揺動部材,5b…変位部材,6…付勢手段,7…駆動手段,7a…駆動伝達系,8…処理手段,9…被加圧物,CN…接触域,S…媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12