(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 1/184 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
B62D1/184
(21)【出願番号】P 2020059478
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生田 智紘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慶之
(72)【発明者】
【氏名】杉下 傑
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏高
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/186149(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/186147(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/068804(WO,A1)
【文献】特開2018-083613(JP,A)
【文献】特開2018-079821(JP,A)
【文献】特開2018-008595(JP,A)
【文献】特開2017-197178(JP,A)
【文献】特開2013-023040(JP,A)
【文献】特開2009-149303(JP,A)
【文献】特開2008-254510(JP,A)
【文献】特開2008-114788(JP,A)
【文献】中国実用新案第204399264(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/184
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延在し、伸縮自在なステアリングシャフトと、
前記第1方向に相対的にスライド可能に連結されたロアコラム及びアッパコラムを有するステアリングコラムと、
前記第1方向と直交する第2方向から前記ステアリングコラムを挟む第1側板及び第2側板を有するブラケットと、
操作レバーと、前記第1側板及び前記第2側板を貫通する締付軸と、を有し、前記第1側板と前記第2側板とを締め付ける締付機構と、
を備え、
前記アッパコラムは、
前記第1方向に延在するスリットが設けられ、前記ロアコラムに摺動自在に外嵌されるクランプ部と、
前記クランプ部から延出し、前記ステアリングシャフトを支持する筒状部と、
前記スリットを挟んで前記クランプ部から径方向外側に突出し、かつ前記締付軸が挿入される長溝が設けられた一対の突出部と、
前記クランプ部の外周面又は一対の前記突出部の側面から突出し、前記締付機構の締め付けにより前記第1側板及び前記第2側板に当接する当接リブと、
を備え、
前記クランプ部は、
前記筒状部寄りに位置し、前記筒状部と連続する連続クランプ部と、
前記筒状部から離隔する離隔クランプ部と、
を有し、
前記突出部は、
前記連続クランプ部から突出する連続突出部と、
前記離隔クランプ部から突出する離隔突出部と、
を備え、
前記当接リブは、
前記クランプ部の外周面に配置され、前記連続クランプ部と前記離隔クランプ部とに跨って延在する一対の第1当接リブと、
前記突出部の側面であって前記長溝を挟んで前記第1当接リブの反対側に配置され、前記連続突出部と前記離隔突出部とに跨って延在する一対の第2当接リブと、
前記離隔突出部の側面であって前記第1当接リブと前記長溝との間に配置される少なくとも1つ以上の第3当接リブと、
を備え、
前記第3当接リブは、前記第1当接リブ及び前記第2当接リブよりも突出量が大きい
ステアリング装置。
【請求項2】
前記第3当接リブは、単一であり、
前記第2側板は、前記第1側板よりも剛性が低く、
一対の前記突出部は、前記第1側板に対向する第1突出部と、前記第2側板に対向する第2突出部と、を備え、
前記第3当接リブは、前記第2突出部に配置され、
前記当接リブは、前記第1突出部の側面から突出する単一の第4当接リブを備え、
前記第4当接リブは、前記離隔突出部の側面であって前記第1当接リブと前記長溝との間に配置され、かつ突出量が前記第1当接リブ及び前記第2当接リブと同じである
請求項1に記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のステアリング装置では、外筒のステアリングコラムに支持されるステアリングシャフトが伸縮自在となっている。よって、ステアリングホイールの位置をステアリングシャフトの軸方向に変更できる。また、ステアリングコラムは、車体側に固定されるロアコラムと、ステアリングシャフトを支持するアッパコラムと、を備える。そして、アッパコラムは、ロアシャフトにスライド自在に連結され、ステアリングシャフトの伸縮に対応することができる。
【0003】
また、特許文献1のステアリング装置は、アッパコラムのスライドを規制することで、ステアリングホイールの軸方向の位置を固定している。具体的に、特許文献1のアッパコラムは、ロアコラムに摺動自在に外嵌されたクランプ部と、ステアリングシャフトを支持する軸受が内嵌された筒状部と、クランプ部の外周面から径方向外側に突出する一対の突出部と、を備える。また、ステアリング装置は、クランプ部を挟む第1側板及び第2側板を有するブラケットと、第1側板及び第2側板を締め付ける締付機構と、を備える。締付機構は、第1側板及び第2側板を貫通する締付軸と、締付機構を作動させる操作レバーと、を備える。クランプ部には、締付軸が延在する方向に溝幅を有するスリットが設けられている。一対の突出部は、締付軸の延在する方向に互いに離間し、かつ締付軸に貫通されている。そして、操作レバーの操作により締付機構が締め付け力を発揮すると、第1側板と第2側板は、締付軸に沿って近接する。よって、一対の突出部は、第1側板と第2側板とにより締め付けられ、クランプ部のスリットの溝幅が狭くなる。つまり、クランプ部は、縮径するように変形し、内部に配置されたロアコラムを挟持する。これにより、アッパコラムのスライドが規制され、ステアリングホイールの位置が固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アッパコラムは、操作レバーの操作時にクランプ部が変形するものの、クランプ部に連続する筒状部は変形しない。つまり、クランプ部と筒状部との境界部に多くの応力が集中する。このため、境界部近傍にリブが設けられ、境界部近傍の剛性が向上したアッパコラムが存在している。
【0006】
しかしながら、境界部近傍の剛性が向上すると、筒状部に連続するクランプ部の一端部が変形し難くなる。そして、筒状部に連続するクランプ部の一端部を変形させる場合、操作レバーにかかる負荷が大きくなり、操作レバーの操作を重く感じる。一方で、筒状部から離隔するクランプ部の他端部を変形させる場合、操作レバーにかかる負荷が小さく、操作レバーの操作を軽く感じる。つまり、アッパコラムがスライドし締付機構で締め付ける位置が変わると、操作レバーの操作感が変わり、操作者に違和感を与えてしまう。
【0007】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、アッパコラムがスライドし締付機構の締め付け位置が変わったとしても、同じような操作感で操作レバーを操作できるステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係るステアリング装置は、第1方向に延在し、伸縮自在なステアリングシャフトと、前記第1方向に相対的にスライド可能に連結されたロアコラム及びアッパコラムを有するステアリングコラムと、前記第1方向と直交する第2方向から前記ステアリングコラムを挟む第1側板及び第2側板を有するブラケットと、操作レバーと、前記第1側板及び前記第2側板を貫通する締付軸と、を有し、前記第1側板と前記第2側板とを締め付ける締付機構と、を備え、前記アッパコラムは、前記第1方向に延在するスリットが設けられ、前記ロアコラムに摺動自在に外嵌されるクランプ部と、前記クランプ部から延出し、前記ステアリングシャフトを支持する筒状部と、前記スリットを挟んで前記クランプ部から径方向外側に突出し、かつ前記締付軸が挿入される長溝が設けられた一対の突出部と、前記クランプ部の外周面又は一対の前記突出部の側面から突出し、前記締付機構の締め付けにより前記第1側板及び前記第2側板に当接する当接リブと、を備え、前記クランプ部は、前記筒状部寄りに位置し、前記筒状部と連続する連続クランプ部と、前記筒状部から離隔する離隔クランプ部と、を有し、前記突出部は、前記連続クランプ部から突出する連続突出部と、前記離隔クランプ部から突出する離隔突出部と、を備え、前記当接リブは、前記クランプ部の外周面に配置され、前記連続クランプ部と前記離隔クランプ部とに跨って延在する一対の第1当接リブと、前記突出部の側面であって前記長溝を挟んで前記第1当接リブの反対側に配置され、前記連続突出部と前記離隔突出部とに跨って延在する一対の第2当接リブと、前記離隔突出部の側面であって前記第1当接リブと前記長溝との間に配置される少なくとも1つ以上の第3当接リブと、を備え、前記第3当接リブは、前記第1当接リブ及び前記第2当接リブよりも突出量が大きい。
【0009】
締付機構の締め付けにより、第1側板及び第2側板は一対の突出部に近接する。ここで、第1側板及び第2側板に挟まれる一対の突出部が一対の連続突出部の場合、第1側板及び第2側板は、第1当接リブ及び第2当接リブに当接する。そして、締付機構の更なる締め付けにより、第1側板及び第2側板は、第1当接リブ及び第2当接リブを押圧する。また、第1側板及び第2側板は、第1当接リブに当接する部分と第2当接リブに当接する部分の間がアッパコラム側に撓む。よって、操作レバーの操作力は、第1側板及び第2側板の変形に利用され、通常、重く感じる操作レバーの操作を軽く感じる。一方で、第1側板及び第2側板に挟まれる突出部が離隔突出部の場合、第1側板及び第2側板は、最初に第2側板が第3当接リブに当接し、その後に第1当接リブ及び第2当接リブに当接する。よって、操作レバーの操作量が少ない段階から操作レバーに負荷がかかり始め、操作レバーの操作に重さを感じる。また、締付機構の更なる締め付けにより、第1側板及び第2側板は、第1当接リブ、第2当接リブ、及び第3当接リブを押圧し、一対の離隔突出部が締め付けられる。ここで、第1側板又は第2側板は、第1当接リブに当接する部分と第2当接リブに当接する部分の間に第3当接リブが当接し、撓まないようになっている。よって、操作レバーの操作が軽くなる要因が排除されている。以上から、本開示のステアリング装置によれば、連続クランプ部を締め付ける場合の操作感が軽くなり、離隔クランプ部を締め付ける場合の操作感が重くなる。このため、操作レバーの操作感の違いが小さく、操作者に違和感を与え難い。
【0010】
上記のステアリング装置の望ましい態様として、前記第3当接リブは、単一であり、前記第2側板は、前記第1側板よりも剛性が低く、一対の前記突出部は、前記第1側板に対向する第1突出部と、前記第2側板に対向する第2突出部と、を備え、前記第3当接リブは、前記第2突出部に配置され、前記当接リブは、前記第1突出部の側面から突出する単一の第4当接リブを備え、前記第4当接リブは、前記離隔突出部の側面であって前記第1当接リブと前記長溝との間に配置され、かつ突出量が前記第1当接リブ及び前記第2当接リブと同じである。
【0011】
第1側板は、第1当接リブ及び第2当接リブを押圧している場合、第1当接リブに当接する部分と第2当接リブに当接する部分の間に第4当接リブが当接し、撓まないようになっている。よって、操作レバーの操作が軽くなる要因が排除され、離隔クランプ部を締め付ける場合の操作感をさらに重くすることができる。また、第3当接リブは、剛性の低い第2側板の方に当接する。仮に、第3当接リブが剛性の高い第1側板の方に当接するとした場合、第1側板は、第3当接リブに当接した後に、変形せずに第1当接リブ及び第2当接リブを押圧しない可能性がある。よって、本開示によれば、第2側板は、第3当接リブに当接した後、変形しつつ第1当接リブ及び第2当接リブを確実に押圧するようになっている。
【発明の効果】
【0012】
本開示のステアリング装置によれば、アッパコラムがスライドし締付機構の締め付け位置が変わったとしても、同じような操作感で操作レバーを操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態におけるステアリング装置の側面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態におけるステアリング装置の斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態におけるステアリング装置の側面図である。
【
図4】
図4は、
図3のステアリング装置を軸に沿って切った場合の断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態のアッパコラムの側面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態のアッパコラムの側面図である。
【
図8】
図8は、本実施形態のアッパコラムの底面図である。
【
図14】
図14は、高剛性クランプを締め付け前の状態を示す断面図である。
【
図15】
図15は、高剛性クランプの締付開始直後の状態を示す図である。
【
図16】
図16は、高剛性クランプの締付時であって、第1側板及び第2側板が第1当接リブ及び第2当接リブを押圧している状態を示す図である。
【
図17】
図17は、低剛性クランプを締め付け前の状態を示す断面図である。
【
図18】
図18は、低剛性クランプの締付開始直後の状態を示す図である。
【
図19】
図19は、低剛性クランプの締付時であって、第1側板及び第2側板が第1当接リブ及び第2当接リブを押圧している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0015】
図1は、本実施形態におけるステアリング装置の側面図である。
図2は、本実施形態におけるステアリング装置の斜視図である。
図3は、本実施形態におけるステアリング装置の側面図である。
図4は、
図3のステアリング装置を軸に沿って切った場合の断面図である。
図5は、本実施形態のアッパコラムの側面図である。
図6は、本実施形態のアッパコラムの側面図である。
図7は、
図5のVII-VII線矢視断面図である。
図8は、本実施形態のアッパコラムの底面図である。
図9は、
図1のIX-IX線矢視断面図である。
図10は、
図5の一部を拡大した拡大側面図である。
図11は、
図6の一部を拡大した拡大側面図である。
図12は、
図10のXII-XII線矢視断面図である。
図13は、
図10のXIII-XIII線矢視断面図である。
図14は、高剛性クランプを締め付け前の状態を示す断面図である。
図15は、高剛性クランプの締付開始直後の状態を示す図である。
図16は、高剛性クランプの締付時であって、第1側板及び第2側板が第1当接リブ及び第2当接リブを押圧している状態を示す図である。
図17は、低剛性クランプを締め付け前の状態を示す断面図である。
図18は、低剛性クランプの締付開始直後の状態を示す図である。
図19は、低剛性クランプの締付時であって、第1側板及び第2側板が第1当接リブ及び第2当接リブを押圧している状態を示す図である。
【0016】
最初に、ステアリング装置100の基本的な構成について説明する。
図1に示すように、ステアリング装置100は、ステアリングホイール101と、ステアリングシャフト102と、第1ユニバーサルジョイント103と、中間シャフト104と、第2ユニバーサルジョイント105と、ピニオンシャフト106と、を備える。
【0017】
ステアリングホイール101は、ステアリングシャフト102の一端部102aに取り付けられている。そして、運転者がステアリングホイール101を操作すると、軸Oを中心にステアリングシャフト102が回転し、ステアリングシャフト102に操作トルクが付与される。
【0018】
ステアリングシャフト102の他端部102bと、第1ユニバーサルジョイント103の間には、ギヤボックス110を介在している。ギヤボックス110には、電動モータ120が組み付けられており、ステアリングシャフト102に補助トルクが付与されている。つまり、本実施形態のステアリング装置100は、運転者の操舵を電動モータ120で補助する電動パワーステアリング装置である。なお、本発明は、ギヤボックス110を備えていないステアリング装置に適用してもよい。
【0019】
中間シャフト104の一端部は、第1ユニバーサルジョイント103と連結している。ピニオンシャフト106は、第2ユニバーサルジョイント105を介して、中間シャフト104の他端部と連結している。以上から、ステアリングシャフト102の操作トルクは、第1ユニバーサルジョイント103、中間シャフト104、第2ユニバーサルジョイント105を介してピニオンシャフト106に伝達される。
【0020】
図2に示すように、上記した構成以外に、ステアリング装置100は、ステアリングコラム1と、第1ブラケット70と、第2ブラケット80と、締付機構90と、を備える。つぎに、ステアリング装置100の各構成の詳細を説明する。なお、以下の説明において、XYZ直交座標系が用いられる。X軸は、ステアリングシャフト102の軸Oと平行である。Y軸は、ステアリング装置100が搭載された車両の車幅方向に平行である。Z軸は、X軸及びY軸の両方に対して垂直である。X軸と平行な方向はX方向と記載され、Y軸と平行な方向はY方向と記載され、Z軸と平行な方向はZ方向と記載される。X方向のうち車両の前方に向かう方向を+X方向とする。操作者が+X方向を向いた場合の右方向を+Y方向とする。Z方向のうち上方に向かう方向を+Z方向とする。また、X方向を第1方向といい、Y方向を第2方向という場合がある。
【0021】
図3に示すように、ステアリングシャフト102は、ステアリングコラム1の-X方向の端部から突出した状態で組み付けられている。
図4に示すように、ステアリングシャフト102は、円筒軸であるアッパシャフト108と、中実軸であるロアシャフト109と、を備える。アッパシャフト108の-X方向の端部には、ステアリングホイール(
図1参照)が取り付けられる。アッパシャフト108の+X方向の端部は、ロアシャフト109に外嵌されている。また、アッパシャフト108の+X方向の端部と、ロアシャフト109の-X方向の端部とは、スプライン嵌合している。よって、アッパシャフト108は、ロアシャフト109に対しX方向にスライド可能となっている。
【0022】
ロアシャフト109の+X方向の端部は、ギヤボックス110のハウジング111の内部に進入している。ギヤボックス110のハウジング111の内部には、トーションバー112と、トーションバー112の外筒である出力軸114と、出力軸114に外嵌されるウォームホイール115と、が設けられている。ウォームホイール115は、電動モータ120の出力軸に連結する図示しないウォームと歯合している。よって、電動モータ120が駆動すると、出力軸114にトルクが付与される。
【0023】
ロアシャフト109の+X方向の端部は、トーションバー112の-X方向の端部と連結している。トーションバー112の+X方向の端部は、固定ピン113により出力軸114と連結している。出力軸114の+X方向の端部には、第1ユニバーサルジョイント103が連結している。よって、ロアシャフト109の操舵トルクは、トーションバー112と出力軸114と第1ユニバーサルジョイント103を介して、中間シャフト104(
図1参照)に伝達される。また、ロアシャフト109の操舵トルクに応じてトーションバー112は捻じれ、ロアシャフト
109と出力軸
114との間に回転の角度差が生じる。
【0024】
ロアシャフト109と出力軸114との回転の角度差をなくすため、出力軸114の-X方向の端部には、トルク検出用溝114aが形成されている。また、トルク検出用溝114aの外周側には、円筒部材116が配置されている。円筒部材116は、ロアシャフト109の+方向の端部に固定され、ロアシャフト109と一体に回転する。円筒部材116は、図示しないが径方向に貫通する複数の窓が形成されている。円筒部材116の外周側には、トルクセンサが117配置されている。
【0025】
トルクセンサ117は、ハウジング111の内部に設置された図示しないトルク検出回路用基板に検出結果を送信し、トルク検出回路用基板が、ロアシャフト109と出力軸114との回転の角度差を検出する。トルク検出回路用基板は、検出結果に基づいて電動モータ120を駆動し、出力軸114に操舵補助トルクを与える。これにより、ロアシャフト109と出力軸114との回転角度が同じとなる。
【0026】
図2に示すように、第1ブラケット70は、Y方向に互いに離隔する一対の支持片71を備える。支持片71は、X方向及びY方向に延在する取付板72と、X方向及びZ方向に延在する支持板73と、を備える。取付板72は、図示しないボルトにより車体に固定される。支持板73の-Z方向の端部には、Y方向に延在するピボットシャフト74が回動自在に設けられている。ピボットシャフト74には、ギヤボックス110が固定されている。よって、ギヤボックス110、ステアリングシャフト102、ステアリングコラム1、及びステアリングホイール101は、ピボットシャフト74を中心に回転可能に第1ブラケット70に支持されている(
図1の矢印A1、A2参照)。
【0027】
図4に示すように、ステアリングコラム1は、X方向に延在し、ステアリングシャフト102を囲む外筒である。ステアリングコラム1は、ステアリングホイール101寄りに配置されたコラムであるアッパコラム2と、アッパコラム2に対し
+X方向に配置され、ステアリングホイール101から離隔したコラムであるロアコラム3と、を備える。ロアコラム3は、円筒状を成している。ロアコラム3の
+X方向の端部は、ギヤボックス110のハウジング111に外嵌されている。
【0028】
アッパコラム2は、鋳造により製造されている。
図3、
図4、
図5、
図6に示すように、アッパコラム2は、ロアコラム3に外嵌されるクランプ部10と、クランプ部10から-X方向に延出する筒状の筒状部20と、クランプ部10の+X方向の端部に設けられた取付部30と、クランプ部10の外周面から-Z方向に突出する一対の突出部40(
図5では1つのみ図示、
図6参照)と、X方向に延在する当接リブ50(
図3、
図5、
図6参照)と、を備える。
【0029】
筒状部20は、内周面が円形状となっている。筒状部20の内径は、内部にロアコラム3が進入可能な大きさとなっている。筒状部20の-X方向の端部には、軸受21が内嵌されている。そして、筒状部20は、軸受21を介してアッパシャフト108を回転自在に支持している。また、筒状部20の-X方向の端部の開口は、軸受21とアッパシャフト108とにより閉じている。
【0030】
図5、
図6に示すように、筒状部20の外周面20aには、互いにX方向に離隔して配置された第1環状リブ22及び第2環状リブ23が設けられている。筒状部20の外周面20aであって第1環状リブ22及び第2環状リブ23との間には、X方向に延在する直線状の直線リブ24a、24b、24c、24dが90度間隔で4つが設けられている。このため、筒状部20の剛性は非常に高い。また、第2環状リブ23は
、クランプ部10と筒状部20の境界部に設けられている。
【0031】
図7に示すように、クランプ部10は、スリット11が設けられている。
図8に示すように、クランプ部10のスリット11は、X方向に延在している。よって、クランプ部10は、断面形状が円弧状の状態で、X方向に延在している。そして、クランプ部10に対し外力が作用していない状態で、クランプ部10の内径は、ロアコラム3の外径と略同一となっている。つまり、クランプ部10は、ロアコラム3に対しスライド自在となっている。
【0032】
図7に示すように、クランプ部10のスリット11は、軸Oから視て-Z方向に位置している。よって、スリット11の溝幅はY方向となっている。これによれば、Y方向から締め付ける圧縮荷重がクランプ部10に作用すると、スリット11の溝幅が狭くなるようにクランプ部10が変形する。つまり、クランプ部10は、縮径して内部に配置されたロアコラム3を挟持する。この結果、クランプ部10の内周面とロアコラム3の外周面との間で高い摩擦力が作用し、アッパコラム2のスライドが規制される。
【0033】
図8、
図10に示すように、取付部30の+Z方向の一部は、切り欠き31が設けられている。
図8に示すように、取付部30は、ロアコラム3に対し、-Z方向に円弧状に回り込んでいる。取付部30の外周面であって-Z方向を向く面には、取付リブ32が設けられている。取付リブ32には、雌ねじ穴33が設けられている。雌ねじ穴33には、ハーネス等を支持する図示しないブラケットが取り付けられる。
【0034】
なお、クランプ部10のスリット11のX方向の両端部には、スリット11よりも溝幅が周方向に拡張している第1拡張スリット12及び第2拡張スリット13が設けられている。この第1拡張スリット12及び第2拡張スリット13によれば、クランプ部10は、X軸方向に隣り合う筒状部20や取付部30と連続していない部分が増加する。この結果、クランプ部10は、筒状部20や取付部30の剛性の影響が少なくなり、変形し易くなる。クランプ部10のそのほかの構成については後述する。
【0035】
図8に示すように、一対の突出部40、40は、-Z方向から視た場合、スリットを挟むように配置されている。以下において、一対の突出部40、40のうちスリット11よりも-Y方向に配置されるものを第1突出部41とい、+Y方向に配置されるものを第2突出部42という。第1突出部41及び第2突出部42は、クランプ部10とほぼ同じ長さでX方向に延在している。
図5及び図6に示すように、X方向に延在する長溝43、44が設けられている。
図7に示すように、長溝43、44は、Y方向に貫通している。
【0036】
図
5、図6、及び図7に示すように、当接リブ50は、一対の第1当接リブ51、51と、一対の第2当接リブ52、52と、単一の第3当接リブ53と、単一の第4当接リブ54と、を備える。第1当接リブ51は、クランプ部10の外周面から突出している。第2当接リブ52は、第1突出部41、第2突出部42の外側面から突出してい
る。
【0037】
図5に示すように、第1当接リブ51及び第2当接リブ52は、X方向に直線状に延在している。第1当接リブ51は、Y方向から視て軸Oと重なっている。第1当接リブ51の-X方向の端部は、第2環状リブ23に連続している。第2当接リブ52は、第1突出部41及び第2突出部42の-Z方向の端部に位置している。第2当接リブ52は、長溝43、44の縁部に沿って延在している。以上から、第1当接リブ51と第2当接リブ52は、長溝43、44を挟んで配置されている。なお、単一の第3当接リブ53及び単一の第4当接リブ54を含む当接リブ50の詳細については後述する。
【0038】
図9に示すように、第2ブラケット80は、一対の取付板81、81と、上板82と、第1側板83と、第2側板84と、を備えている。なお、第2ブラケット80を単にブラケットという場合がある。
【0039】
一対の取付板81は、ステアリングコラム1を挟んでY方向に離隔する板状部材である。取付板81は、離脱カプセル85を介して車体に連結される。離脱カプセル85は、取付板81の-X方向の端部に配置されている。離脱カプセル85は、樹脂部材86によって取付板81に一体化している。離脱カプセル85は、ボルト等によって車体側部材に固定される。そして、車両の2次衝突によりステアリングコラム1に+X方向の荷重が作用した場合(
図1の矢印B1参照)、樹脂部材86が剪断して取付板81のみが+X方向に移動し、第2ブラケット80が車体から離脱する。
【0040】
上板82は、一対の取付板81、81同士を連結する板状部材である。第1側板83と第2側板84は、X方向及びZ方向に延在する板状部材である。第1側板83は、クランプ部10よりも-Y方向に配置されている。第2側板84は、クランプ部10よりも+Y方向に配置されている。つまり、第1側板83と第2側板84とは、ステアリングコラム1のクランプ部10を挟んで、Y方向に離隔している。第1側板83と第2側板84は、一対の取付板81、81と上板82とに対し、溶接により一体化している。第1側板83と第2側板84とには、Z方向に延在する円弧溝83a、84aが形成されている。円弧溝83a、84aは、ピボットシャフト74(
図1、
図2、
図3参照)を中心に円弧状に形成されている。また、第1側板83における
+X方向の端部には、-Y方向に突出する突出板87が設けられている。このため、第1側板83は、Y方向に対する剛性が第2側板84よりも高い。
【0041】
締付機構90は、クランプ部10を締め付けてクランプ部10に圧縮荷重を与えるための装置である。締付機構90は、締付軸91と、操作レバー92と、固定カム93と、回転カム94と、ナット95と、スペーサ96と、スラストベアリング97と、を備える。
【0042】
締付軸91は、棒状部材である。締付軸91は、-Y方向から+Y方向に向かって順に、第1側板83の円弧溝83a、クランプ部10の長溝43、44、第2側板84の円弧溝84aに挿入され、Y方向に延在している。締付軸91の-Y方向の端部には、頭部91aが設けられている。締付軸91の-Y方向の端寄りには、操作レバー92が連結している。操作レバー92は、締付軸91から-X方向に延出し、車内の運転者によって操作可能となっている(
図1、
図2参照)。そして、運転手が締付軸91を中心に操作レバー92を回転操作すると、締付軸91が連動して回転する。
【0043】
固定カム93及び回転カム94は、締付軸91に貫通された状態で、第1側板83と操作レバー92との間に配置されている。固定カム93は、第1側板83に隣接している。固定カム93の一部は、第1側板83の円弧溝83aに嵌合している。よって、固定カム93は、締付軸91に連動して回転しない。回転カム94は、操作レバー92に隣接している。回転カム94は、操作レバー92と連結し、操作レバー92と一体に回転する。固定カム93と回転カム94との互いの対向面には、周方向に沿った傾斜面が設けられている。操作レバー92の操作により回転カム94が回転すると、回転カム94の傾斜面に固定カム93の傾斜面が乗り上げたり、若しくは乗り下げたりする。これにより、固定カム93と回転カム94とのY方向の距離が変化する。
【0044】
締付軸91の+Y方向の端部に、雄ねじ部91bが設けられている。この雄ねじ部91bには、ナット95が螺合している。これにより、締付軸91が円弧溝83a、84a、長溝43、44から抜け落ちないようになっている。スペーサ96及びスラストベアリング97は、締付軸91に貫通された状態で、第2側板84とナット95との間に配置されている。スペーサ96は、第2側板84であって円弧溝84aの周辺に当接している。スラストベアリング97は、ナット95とスペーサ96との間に配置されている。
【0045】
以上から、操作レバー92の操作により固定カム93と回転カム94とがY方向に離間した場合、締付軸91の頭部91aが-Y方向に押圧され、ナット95が-Y方向に移動する。これにより、固定カム93とスペーサ96とにおけるY方向の距離が縮まり、固定カム93と第1側板83の摩擦力と、スペーサ96と第2側板84の摩擦力と、が大きくなる。この結果、締付軸91は、円弧溝83a、84aに沿ってZ方向に移動することが規制される。よって、締付軸91に貫通されるアッパコラム2もZ方向に移動することが規制され、ステアリングホイール101におけるZ方向の位置が固定される。
【0046】
また、第1側板83及び第2側板84は、固定カム93及びスペーサ96からY方向に締め付けられる。このため、第1側板83及び第2側板84の内側面は、アッパコラム2の一対の第2当接リブ52に当接する。また、第1側板83及び第2側板84は、一対の第2当接リブ52同士が圧縮するように押圧する。これにより、第1突出部41及び第2突出部42は、Y方向への圧縮荷重を受ける。クランプ部10は、スリット11の溝幅が狭くなり、ロアコラムを挟持する。これにより、アッパコラム2は、ロアコラム3に固定され、ステアリングホイール101のX方向の移動が規制される。
【0047】
また、第1側板83及び第2側板84は、一対の第2当接リブ52、52以外に、一対の第1当接リブ51、51を押圧する。これによれば、一対の第2当接リブ52、52に圧縮荷重が作用し、クランプ部10を縮径させることができる。なお、第1当接リブ51は、締付力が作用する締付軸91から離隔している。よって、第1当接リブ51に作用する圧縮荷重は、第2当接リブ52に作用する圧縮荷重よりも小さい。一方で、第2当接リブ52に圧縮荷重を与えても、第1突出部41及び第2突出部42の-Z方向の端部のみが近接するように、第1突出部41及び第2突出部42が傾倒してクランプ部10のスリット11が狭くならない可能性がある。つまり、第1当接リブ51によれば、第1突出部41及び第2突出部42を介することなく、クランプ部10に圧縮荷重を与えることができる。よって、操作レバー92の操作時、クランプ部10がロアコラム3を確実に挟持するようになっている。
【0048】
一方で、操作レバー92の操作により、固定カム93と回転カム94とがY方向に近接した場合、固定カム93とスペーサ96とにおけるY方向の距離が拡大する。これにより、固定カム93と第1側板83の摩擦力が低下する。併せて、スペーサ96と第2側板84の摩擦力も低下する。よって、締付軸91は、円弧溝83a、84aに沿ってZ方向に移動することが許容される。そして、ステアリングホイール101に対してZ方向への荷重を加えると、ステアリングコラム1、ステアリングシャフト102、及びギヤボックス110は、ピボットシャフト74(
図1を参照)を中心として、矢印A1方向又は矢印A2方向に回転する。これにより、ステアリングホイール101のZ方向の位置が変更する。
【0049】
また、第1当接リブ51及び第2当接リブ52は、第1側板83及び第2側板84の締め付けが解除される。よって、クランプ部10は、スリット11の溝幅が広くなり、ロアコラム3の挟持を解除する。そして、ステアリングホイール101に対してX方向への荷重を加えると、アッパコラム2及びアッパシャフト108がX方向にスライドする。これにより、ステアリングホイール101のX方向の位置が変更される(
図1の矢印B1、B2参照)。
【0050】
次に、クランプ部10と当接リブ50の詳細について説明する。クランプ部10をY方向及びZ方向に延在する平面で切った場合の断面形状は、切る位置をX方向に移動させても略同じ形状となっている。つまり、クランプ部10におけるX方向の各部位の剛性は、略均一となっている。ただし、
図10、
図11に示すように、クランプ部10の-X方向の端部は、第2環状リブ23が設けられた筒状部20と連続している。これにより、クランプ部10において筒状部20の寄りの部分は、第2環状リブ23によって見かけ上の剛性が高くなり、変形し難い。一方で、離隔クランプ部17の+X方向の端部は、切り欠き31が設けられた取付部30と連続し、見かけ上の剛性は高くなっていない。以上から、クランプ部10は、筒状部20寄りに位置し、変形し難い連続クランプ部16と、筒状部20からX方向に離隔し、変形し易い離隔クランプ部17と、を備える。また、突出部40は、連続クランプ部16から突出する連続突出部46と、離隔クランプ部17から突出する離隔突出部47と、を備える。
【0051】
なお、本実施形態では、クランプ部10において連続クランプ部16が占める割合は、クランプ部10の三分の二程度であり、残りの三分の一は、離隔クランプ部17となっている。ここで、上記する連続クランプ部16と離隔クランプ部17との割合は一例であり、本発明のクランプ部はこれに限定されるものでない。さらに、本実施形態では、筒状部20に連続しているために、連続クランプ部16が変形し難くなっている例を挙げているが、本発明の連続クランプ部16は、クランプ部10の一部の肉厚がクランプ部10の他の部分よりも厚くなっているため、変形し難くなっている場合でも適用できる。
【0052】
なお、
図10において、第3当接リブ53を見やすくするため、第3当接リブ53の端面53cにハッチングを施している。
図10に示すように、第3当接リブ53は、X方向に延在するリブである。第3当接リブ53は、一対の突出部40、40のうち第2突出部42のみに設けられている。第3当接リブ53のZ方向の幅は、第1当接リブ51や第2当接リブ52よりも狭い。第3当接リブ53の+X方向の端部53aは、第2突出部42の+X方向の端部に位置している。第3当接リブ53のX方向の長さは、第1当接リブ51や第2当接リブ52よりも短く、第2突出部42のX方向の長さに対して三分の一程度となっている。つまり、第3当接リブ53の-X方向の端部53bは、第2突出部42のX方向の中央部よりも+X方向に位置している。以上から、第3当接リブ53は、突出部40のうち、離隔クランプ部17から突出する離隔突出部47の範囲でのみ延在している。また、第3当接リブ53は、第2突出部42の長溝44に沿って延在している。よって、第2当接リブ52と第3当接リブ53とで長溝44を挟んでいる。
【0053】
なお、
図11において、第4当接リブ54を見やすくするため、第4当接リブ54の端面54cにハッチングを施している。
図11に示すように、第4当接リブ54は、X方向に延在するリブである。第4当接リブ54は、一対の突出部40、40のうち第1突出部41のみに設けられている。第4当接リブ54のZ方向の幅は、第1当接リブ51や第2当接リブ52よりも狭い。第4当接リブ54の+X方向の端部54aは、第1突出部41の+X方向の端部に位置している。第4当接リブ54のX方向の長さは、第3当接リブ53の長さと同じである。第4当接リブ54の長さは、第1当接リブ51や第2当接リブ52よりも短く、第1突出部41のX方向の長さに対して三分の一程度となっている。つまり、第4当接リブ54の-X方向の端部54bは、第1突出部41のX方向の中央部よりも+X方向に位置している。以上から、第4当接リブ54は、突出部40のうち、離隔クランプ部17から突出する離隔突出部47の範囲でのみ延在している。また、第4当接リブ54は、第
1突出部
41の長溝
43に沿って延在している。よって、第2当接リブ52と第4当接リブ54とで、長溝
43を挟んでいる。
【0054】
次に、第1当接リブ51、第2当接リブ52、第3当接リブ53、第4当接リブ54の突出量について、
図7、
図12、
図13を参照しながら説明する。
図7の補助線Wで示すように、第1当接リブ51の端面51aと第2当接リブ52の端面52aとは、Y方向における位置が同一となっている。なお、
図7の断面図は、クランプ部10において連続クランプ部16を断面視した断面図であり、第3当接リブ53及び第4当接リブ54は、
図7上には図示されていない。
【0055】
第1当接リブ51の突出量は、第1当接リブ51が延在するX方向に変わったとしても一定となっている。また、第2当接リブ52の突出量も、第2当接リブ52が延在するX方向に変わっても一定となっている。つまり、
図12、
図13に示すように、第1当接リブ51の端面51aの位置、及び第2当接リブ52の端面52aの位置は、X方向に移動しても変わらない。
【0056】
図12、
図13に示すように、第3当接リブ53の端面53cは、第2突出部42に設けられた第1当接リブ51の端面51a及び第2当接リブ52の端面52aよりも+Y方向に位置している(
図12、
図13の補助線Wを参照)。よって、第3当接リブ53の突出量は、第1当接リブ51及び第2当接リブ52よりも大きい。また、第3当接リブ53の突出量は、第3当接リブ53が延在するX方向に変わっても一定となっている。
【0057】
図12、
図13に示すように、第4当接リブ54の端面54cにおけるY方向の位置は、補助線Wと重なっており、第1突出部41に設けられた第1当接リブ51の端面51a及び第2当接リブ52の端面52aと同じ位置に位置している。よって、第4当接リブ54の突出量は、第1当接リブ51及び第2当接リブ52と同じである。また、第4当接リブ54の突出量は、第4当接リブ54が延在するX方向に変わっても一定となっている。
【0058】
次に、第1側板83及び第2側板84と、当接リブ50との関係を説明する。また、説明では、締付軸91が連続クランプ部16に対しZ方向に重なっている場合(
図10のG91を参照)と、締付軸91が離隔クランプ部17に対しZ方向に重なっている場合(
図10のH91を参照)と、に分けて説明する。また、この説明で用いる
図14から
図19において、各構成を抽象化して描いている。
【0059】
最初に、締付軸91が連続クランプ部16に対してZ方向に重なっている場合(
図10のG91を参照)について説明する。
図14に示すように、締付軸91を含むY方向及びZ方向に延在する平面上には、当接リブ50のうち、第1当接リブ51と第2当接リブ52とが存在する。締付機構90が作動する前の状態で、第1側板83及び第2側板84は、締め付けられておらず、第1当接リブ51及び第2当接リブ52に当接していない。
【0060】
次に
図15に示すように、操作レバー92を操作し、締付機構90で第1側板83及び第2側板84を締め付けると、第1側板83及び第2側板84は、互いに近接し、第1当接リブ51と第2当接リブ52とに当接する。さらに操作レバー92を操作すると、第1側板83及び第2側板84は、第1当接リブ51と第2当接リブ52を押圧する。
【0061】
ここで、締付機構90の締め付け力は、Z方向において第1当接リブ51と第2当接リブ52との間である(
図15の矢印Fを参照)。また、第1側板83及び第2側板84の剛性は、連続クランプ部16よりも小さい。よって、第1側板83及び第2側板84が第1当接リブ51と第2当接リブ52を押圧する場合、
図16に示すように、第1側板83及び第2側板84は、Z方向の中間部がクランプ部10に向かって撓む。つまり、連続クランプ部16を締め付ける場合、操作レバー92の操作力の一部が第1側板83及び第2側板84の変形に利用される。以上から、操作レバー92の操作感は、第1側板83及び第2側板84が撓まない場合よりも、軽く感じる。
【0062】
なお、
図16に示すように、第1側板83の撓み量は、第2側板84の撓み量よりも小さい。これは、第1側板83が突出板87(
図9参照)により変形し難くなっているからである。
【0063】
続いて、締付軸91が離隔クランプ部17に対してZ方向に重なっている場合(
図10のH91を参照)について説明する。
図17に示すように、締付軸91を含みY方向及びZ方向に延在する平面上には、第1当接リブ51、第2当接リブ52、第3当接リブ53、及び第4当接リブ54が存在する。締付機構90が作動する前の状態で、第1側板83及び第2側板84は、第1当接リブ51、第2当接リブ52、第3当接リブ53、及び第4当接リブ54のいずれにも当接していない。
【0064】
次に
図18に示すように、操作レバー92を操作し、締付機構90で第1側板83及び第2側板84を締め付けると
、第2側板84
が最初に第3当接リブ53
に当接する。
【0065】
ここで、第2側板84は、第1側板83よりも変形し易くなっている。よって、さらに締付機構90で第1側板83と第2側板84を締め付けると、
図19に示すように、第2側板84は、第3当接リブ53に当接する部位が+Y方向に撓み、
第1当接リブ51と
第2当接リブ52とに当接する。一方で、第1側板83は、変形することなく第1当接リブ51、第2当接リブ52、及び第4当接リブ54に当接する。
【0066】
そして、操作レバー92を操作し、第1側板83及び第2側板84を更に締め付けると、第1側板83及び第2側板84は、第1当接リブ51と第2当接リブ52を押圧する。ここで、第1側板83のZ方向の中間部は、第4当接リブ54と当接している。また、第2側板84のZ方向の中間部は、第3当接リブ53と当接している。よって、第1側板83及び第2側板84は、Z方向の中間部がクランプ部10に向かって撓まないようになっている。
【0067】
以上から、離隔クランプ部17を締め付ける場合は、第1当接リブ51、第2当接リブ52よりも先に第3当接リブ53が第2側板84に当接する。このため、操作レバー92の操作量が少ない段階から操作レバー92に負荷がかかり始め、操作レバーの操作に重さを感じる。また、第1側板83及び第2側板84におけるZ方向の中間部がクランプ部10に向かって撓まない。つまり、操作レバー92の操作が軽くなる要因が排除されている。よって、離隔クランプ部17を締め付ける場合の操作レバー92の操作感は、重く感じる。つまり、連続クランプ部16を締め付ける場合の操作感と、離隔クランプ部17を締め付ける場合の操作感と、の違いが小さいことから、同じような操作感で操作レバー92を操作することができる。
【0068】
以上で説明したように、実施形態のステアリング装置100は、ステアリングシャフト102と、ステアリングコラム1と、ブラケット(第2ブラケット80)と、締付機構90と、を備える。ステアリングシャフト102は、第1方向に延在し、伸縮自在になっている。ステアリングコラム1は、第1方向に相対的にスライド可能に連結されたロアコラム3及びアッパコラム2を有する。ブラケット(第2ブラケット80)は、第1方向と直交する第2方向からステアリングコラム1を挟む第1側板83及び第2側板84を有する。締付機構90は、操作レバー92と、第1側板83及び第2側板84を貫通する締付軸91と、を有し、第1側板83と第2側板84とを締め付ける。アッパコラム2は、クランプ部10と、筒状部20と、一対の突出部40、40と、当接リブ50と、を備える。クランプ部10は、第1方向に延在するスリット11が設けられ、ロアコラム3に摺動自在に外嵌される。筒状部20は、クランプ部10から延出し、ステアリングシャフト102を支持する。一対の突出部40、40は、スリット11を挟んでクランプ部10から径方向外側に突出し、かつ締付軸91が挿入される長溝43、44が設けられる。当接リブ50は、クランプ部10の外周面又は一対の突出部40、40の側面から突出し、締付機構90の締め付けにより第1側板83及び第2側板84に当接する。クランプ部10は、筒状部20寄りに位置し、筒状部20と連続する連続クランプ部16と、筒状部20から離隔する離隔クランプ部17と、を有する。突出部40は、連続クランプ部16から突出する連続突出部46と、離隔クランプ部17から突出する離隔突出部47と、を備える。当接リブ50は、一対の第1当接リブ51、51と、一対の第2当接リブ52、52と、少なくとも1つ以上の第3当接リブ53と、を備える。一対の第1当接リブ51、51は、クランプ部10の外周面に配置され、連続クランプ部16と離隔クランプ部17とに跨って延在する。一対の第2当接リブ52、52は、突出部40の側面であって長溝43、44を挟んで第1当接リブ51の反対側に配置され、連続突出部46と離隔突出部47とに跨って延在する。単一の第3当接リブ53は、離隔突出部47の側面であって第1当接リブ51と長溝44との間に配置される。第3当接リブ53は、第1当接リブ51及び第2当接リブ52よりも突出量が大きい。
【0069】
実施形態によれば、連続クランプ部16を締め付ける場合、第1側板83及び第2側板84がクランプ部10の方に撓み、操作レバーの操作を軽く感じる。一方で、離隔クランプ部17を締め付ける場合、第1側板83及び第2側板84がクランプ部10の方に撓まない。よって、操作レバー92の操作を軽く感じる要因が排除されている。また、操作レバー92の操作量が少ない段階から操作レバー92に負荷がかかるため、操作レバー92の操作に重さを感じる。以上から、連続クランプ部16と離隔クランプ部17とを締め付ける場合において、操作レバー92の操作感の違いが小さく、操作者に違和感を与え難い。
【0070】
また、実施形態のステアリング装置100において、第3当接リブ53は、単一であり、第2側板84は、第1側板83よりも剛性が低い。一対の突出部40、40は、第1側板83に対向する第1突出部41と、第2側板84に対向する第2突出部42と、を備える。第3当接リブ53は、第2突出部42に配置される。当接リブ50は、第1突出部41の側面から突出する単一の第4当接リブ54を備える。第4当接リブ54は、離隔突出部47の側面であって第1当接リブ51と長溝43との間に配置され、かつ突出量が第1当接リブ51及び第2当接リブ52と同じである。
【0071】
実施形態によれば、第1側板83が第1当接リブ51及び第2当接リブ52を押圧している場合、第1側板83がクランプ部10の方に撓まないようになっている。よって、操作レバー92の操作が軽くなる要因が排除され、離隔クランプ部17を締め付ける場合の操作感をさらに重くすることができる。また、第3当接リブ53は、剛性の低い第2側板84の方に当接する。つまり、第2側板84は、第3当接リブ53に当接した後、変形しつつ、第2突出部42の方に近接し、第1当接リブ51及び第2当接リブ52に当接する。よって、第2側板84は、第1当接リブ51及び第2当接リブ52を確実に押圧できるようになっている。
【0072】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記したものに限定されない。例えば、クランプ部10において連続クランプ部16と離隔クランプ部17との占める割合が二分の一ずつの場合、第3当接リブ53及び第4当接リブ54を、第1突出部41及び第2突出部42のX方向の中央部まで延在するようにしてもよい。また、実施形態では、第1突出部41の離隔突出部47に第4当接リブ54が設けられ、第2突出部42の離隔突出部47に第3当接リブ53が設けられているが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1突出部41の離隔突出部47に第3当接リブ53が設けられ、第2突出部42の離隔突出部47に第4当接リブ54が設けられていてもよい。又は、第1突出部41の離隔突出部47に第3当接リブ53が設けられ、さらに第2突出部42の離隔突出部47に第3当接リブ53が設けられていてもよい。つまり、2以上の第3当接リブ53を有していてもよい。若しくは、第1突出部41の離隔突出部47と第2突出部42の離隔突出部47とのうち、どちらか一方に第3当接リブ53が設けられ、他方には第3当接リブ53と第4当接リブ54の両方が設けられていなくてもよい。つまり、第3当接リブ53を一つ以上有していれば、第1側板83又は第2側板84の撓みを防止し、操作レバーの操作が軽くなる要因を排除することができる。
【符号の説明】
【0073】
100 ステアリング装置
101 ステアリングホイール
102 ステアリングシャフト
108 アッパシャフト
109 ロアシャフト
110 ギヤボックス
1 ステアリングコラム
2 アッパコラム
3 ロアコラム
10 クランプ部
11 スリット
12 第1拡張スリット
13 第2拡張スリット(拡張スリット)
16 連続クランプ部
17 離隔クランプ部
20 筒状部
21 軸受
23 第2環状リブ
30 取付部(延出部)
40(41、42) 突出部(第1突出部、第2突出部)
43、44 長溝
46 連続突出部
47 離隔突出部
50 当接リブ
51 第1当接リブ
52 第2当接リブ
53 第3当接リブ
54 第4当接リブ
70 第1ブラケット
74 ピボットシャフト
80 第2ブラケット(ブラケット)
83 第1側板
84 第2側板
90 締付機構
91 締付軸
92 操作レバー
93 固定カム
94 回転カム
95 ナット