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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】バッテリ保持構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/289 20210101AFI20240509BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20240509BHJP
   H01M 50/202 20210101ALI20240509BHJP
   H01M 50/244 20210101ALI20240509BHJP
【FI】
H01M50/289 101
H01M50/291
H01M50/202 501S
H01M50/244 Z
H01M50/202 201
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020059813
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021158066
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】富岡 敏憲
(72)【発明者】
【氏名】楠元 慧
(72)【発明者】
【氏名】田中 行矢
(72)【発明者】
【氏名】山内 一樹
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-041815(JP,A)
【文献】特開2014-012509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/20-50/298
B60R16/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端にねじ部を有するボルト軸部の下端に円弧状の係止部を備えた締結ボルトの前記係止部を、バッテリケースの被係止部に係止するとともに、前記ねじ部をバッテリ本体の上部に載置するバッテリクランプに挿通してナットで螺合し、前記バッテリ本体を前記バッテリケースに固定するバッテリ保持構造であって、
前記バッテリケースにおける前記被係止部の下方に、前記係止部が侵入可能な侵入空間が形成され、
前記バッテリケースに、
前記係止部が前記侵入空間に侵入するように前記締結ボルトを案内する案内ガイドと、
前記係止部が前記侵入空間に案内された前記締結ボルトの前記被係止部に対する位置を規制する位置決め部とが設けられ、
前記位置決め部は、前記締結ボルトに対して、前記係止部の先端側に設けられた第一位置決め部と、前記係止部の反先端側に設けられた第二位置決め部とで、前記侵入空間に案内された前記係止部の水平方向における位置を位置決めする構成であり、
前記第一位置決め部と前記第二位置決め部とは、前記ボルト軸部の直径に対応する前記水平方向の間隔を隔てて配置された
バッテリ保持構造。
【請求項2】
前記第一位置決め部は、
前記被係止部の一部で構成された
請求項1に記載のバッテリ保持構造。
【請求項3】
前記第二位置決め部は、
前記案内ガイドの先端部で構成された
請求項1または請求項2に記載のバッテリ保持構造。
【請求項4】
前記バッテリケースに、
前記被係止部、前記案内ガイド及び前記位置決め部を内在する箱状のボルト係止部が設けられ、
該ボルト係止部における前記被係止部の下方が外部と連通する
請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載のバッテリ保持構造。
【請求項5】
前記案内ガイドの上端から、前記バッテリ本体の上部に向かうとともに、前記バッテリ本体から離間する方向に延設された目印部が設けられた
請求項1乃至請求項4のうちいずれかに記載のバッテリ保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車などの車両におけるエンジンルーム等に配置するバッテリをバッテリケースに保持するバッテリ保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両において、電子機器等に電気を供給するバッテリは、一般的にエンジンルームに配置される。このようなバッテリ本体は、上端にねじ部を有する締結ボルトの下端に設けた係止部を、バッテリケースの被係止部に係止するとともに、前記ねじ部をバッテリ本体の上部に載置するバッテリクランプに挿通してナットで螺合し、前記バッテリケースに固定されることが多い。
【0003】
しかしながら、エンジンルームに配置されるバッテリの周囲にはヒューズボックスや吸気パイプの土台パネルなど様々な部品や装置が配置されており、締結ボルトの係止部をバッテリケースの被係止部に係止するための作業箇所の視認性及び作業性が低い場合があった。
【0004】
このように、締結ボルトの係止部をバッテリケースの被係止部に係止するための作業箇所の視認性が低い場合であっても、締結ボルトの係止部を被係止部まで案内するガイド部を備えるバッテリ保持構造が特許文献1に提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示のバッテリ保持構造では、締結ボルトのねじ部にナットを螺合するまでにバッテリクランプが水平方向に移動すると、被係止部に対する係止部の係止が外れるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-12509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、締結ボルトの係止部をバッテリケースの被係止部に係止するための作業箇所の視認性及び作業性が低い場合であっても、確実に係止部を被係止部に係止して、バッテリ本体をバッテリケースに固定できるバッテリ保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上端にねじ部を有するボルト軸部の下端に円弧状の係止部を備えた締結ボルトの前記係止部を、バッテリケースの被係止部に係止するとともに、前記ねじ部をバッテリ本体の上部に載置するバッテリクランプに挿通してナットで螺合し、前記バッテリ本体を前記バッテリケースに固定するバッテリ保持構造であって、前記バッテリケースにおける前記被係止部の下方に、前記係止部が侵入可能な侵入空間が形成され、前記バッテリケースに、前記係止部が前記侵入空間に侵入するように前記締結ボルトを案内する案内ガイドと、前記係止部が前記侵入空間に案内された前記締結ボルトの前記被係止部に対する位置を規制する位置決め部とが設けられ、前記位置決め部は、前記締結ボルトに対して、前記係止部の先端側に設けられた第一位置決め部と、前記係止部の反先端側に設けられた第二位置決め部とで、前記侵入空間に案内された前記係止部の水平方向における位置を位置決めする構成であり、前記第一位置決め部と前記第二位置決め部とは、前記ボルト軸部の直径に対応する前記水平方向の間隔を隔てて配置されたことを特徴とする。
【0009】
この発明により、締結ボルトの係止部をバッテリケースの被係止部に係止するための作業箇所の視認性及び作業性が低い場合であっても、確実に係止部を被係止部に係止して、バッテリ本体をバッテリケースに固定することができる。
【0010】
詳述すると、視認性が低い場合であっても、前記案内ガイドによって前締結ボルトの前記係止部を前記被係止部の下方の前記侵入空間に、容易に案内することができる。
また、前前記案内ガイドによって前記係止部が前記被係止部の下方の前記侵入空間に案内された前記締結ボルトは、前記係止部の先端側に設けられた第一位置決め部と、前記係止部の反先端側に設けられた第二位置決め部とによって、前記係止部の先端側と反先端側の両方から位置規制されている。
【0011】
そのため、バッテリ本体の固定のため、バッテリクランプが多少動いても前記係止部は前記被係止部の下方に位置決めされているため、前記締結ボルトのねじ部に対するナットの螺合によって、前記係止部を前記被係止部に確実に係止することができる。
よって、作業性及び視認性が低い作業空間であっても、確実に係止部を被係止部に係止して、バッテリ本体をバッテリケースに固定することができる。
【0012】
なお、前記締結ボルトに対して、第一位置決め部が設けられた前記係止部の先端側は、係止部とボルト軸部とでJ字状に形成された締結ボルトにおけるボルト軸部に対する係止部先端が配置された側であり、第二位置決め部が設けられた前記係止部の反先端側とは、係止部先端に対してボルト軸部が配置された側である。前記第一位置決め部及び第二位置決め部は、前記締結ボルトにおけるボルト軸部の一部に当接して位置規制してもよいし、係止部の一部に当接して位置規制してもよい。
【0013】
この発明の態様として、前記第一位置決め部は、前記被係止部の一部で構成されてもよい。
この発明により、第一位置決め部として別途設けることなく、係止部が係止する被係止部の一部で、前記締結ボルトの被係止部に対する前記係止部の先端側の位置を規制することができる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記第二位置決め部は、前記案内ガイドの先端部で構成されてもよい。
この発明により、第二位置決め部として別途設けることなく、前記係止部が前記侵入空間に侵入するように前記締結ボルトを案内する案内ガイドの一部で、前記締結ボルトの被係止部に対する前記係止部の反先端側の位置を規制することができる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記バッテリケースに、前記被係止部、前記案内ガイド及び前記位置決め部を内在する箱状のボルト係止部が設けられ、該ボルト係止部における前記被係止部の下方が外部と連通してもよい。
【0016】
この発明により、前記案内ガイドによって、箱状のボルト係止部の内部において係止部を侵入空間に案内するとともに、前記係止部を前記被係止部に確実に係止することができる。
また、このように前記係止部を前記被係止部に確実に係止できる箱状の該ボルト係止部における前記被係止部の下方が外部と連通しているため、ボルト係止部に侵入した水を排水することができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記案内ガイドの上端から、前記バッテリ本体の上部に向かうとともに、前記バッテリ本体から離間する方向に延設された目印部が設けられてもよい。
この発明により、バッテリ本体の搭載に影響を及ぼすことなく、視認性の高い目印部を基準として締結ボルトの係止部を被係止部に係止することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、締結ボルトの係止部をバッテリケースの被係止部に係止するための作業箇所の視認性及び作業性が低い場合であっても、確実に係止部を被係止部に係止して、バッテリ本体をバッテリケースに固定できるバッテリ保持構造を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)バッテリ保持構造を示す斜視図、(b)バッテリを透過状態で示した斜視図。
図2】(a)バッテリ保持構造の正面図、(b)図1(a)におけるA-A断面図。
図3図2(b)におけるB-B断面図。
図4】(a)締結ボルトを挿入した状態の図1(a)におけるA-A断面図、(b)案内部で締結ボルトを案内した状態の図1(a)におけるA-A断面図。
図5】(a)係止部が侵入空間に侵入した状態の図1(a)におけるA-A断面図、(b)係止部が侵入空間に侵入した状態において締結ボルトが傾いた場合の図1(a)におけるA-A断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1図5を参照して、この実施形態に係るバッテリ保持構造1について説明する。
なお、図1等において、矢印で示した「前方」「後方」「内側」「外側」はそれぞれ、車両前方側、車両後方側、車幅方向内側、及び車幅方向外側を示している。
【0021】
図1乃至図3に示すように、このバッテリ保持構造1は、バッテリ本体10をバッテリケース50に固定するための保持構造である。
バッテリ保持構造1は、バッテリ本体10を載置するバッテリケース50、バッテリ本体10の上面11に載置するバッテリクランプ20、バッテリクランプ20とバッテリケース50とを連結する締結ボルト30、締結ボルト30のねじ部33に螺合するナット40を備えている。
【0022】
なお、本実施形態では、平面視長方形状のバッテリ本体10の長手方向が車両前後方向に向き、短手方向が車幅方向に向くように配置される。また、図1及び図3に示すように、バッテリ本体10における車幅外側には、図示省略するヒューズボックス等が配置され、車幅内側には吸気パイプ用の土台パネル100等が配置されている。換言すると、バッテリ本体10は、ヒューズボックス等と、土台パネル100との間の狭隘な空間に配置される。
【0023】
バッテリ本体10は、上面11にバッテリポスト12を備えた略直方体に形成されている。上面11に備えたバッテリポスト12は、電気供給する機器に接続されたバッテリケーブル等が接続される。
【0024】
バッテリクランプ20は、車幅方向に沿ってバッテリ本体10の上面11に載置するクランプであり、両端部近傍には車両前後方向に拡がる拡大部21が設けられ、車幅方向中央付近は、剛性を向上するために高さを高く形成している。拡大部21に、締結ボルト30のねじ部33を挿通する貫通孔を設けるとともに、貫通孔の周囲はナット40が螺合するようにフラットに形成されている。
【0025】
締結ボルト30は、図2(b)に示すように、上端にねじ部33を有する軸部31の下方に、円弧状の係止部32を備え、全体で略J字状を構成している。
ナット40は底部を皿状に拡大した皿ナットであり、締結ボルト30のねじ部33に螺合するように構成している。
【0026】
上述のように構成した、バッテリ本体10を載置し、バッテリクランプ20、締結ボルト30及びナット40でバッテリ本体10を固定するバッテリケース50は、車両前後方向に長い平面視長方形状の受け皿部51と、受け皿部51における一対の長辺部分から上方に延設された側壁部52(52a,52b)とで構成している。
【0027】
受け皿部51は、バッテリ本体10よりひとまわり大きな平面視長方形状に形成され、車幅方向内側及び車両前後方向の三方向の外周縁に沿って上方に延びる皿壁部511を備えている。
側壁部52(52a,52b)は、車両前後方向に長い平面視長方形状の受け皿部51における一対の長辺部分から上方に延設されている。
【0028】
バッテリ本体10に対して土台パネル100が配置された車幅方向内側の側壁部52aは、図2に示すように、上側に向かって先細りの略台形状に形成し、上部中央にボルト係止部53aを備えている。
【0029】
バッテリ本体10に対して土台パネル100が配置された側と反対側の車幅方向外側の側壁部52bは、図1(a),(b)に示すように、下方に向かって先細りの略台形状の凹部を上部に備えた略長方形状に形成され、上部中央にボルト係止部53bを備えている。
【0030】
側壁部52aに設けられ、上述のように構成されたボルト係止部53aに対して、側壁部52bに設けられたボルト係止部53bは、車両前後方向の向きが逆向きとなる対称な向きで構成されているものの、同様の構成であるため、以下においてボルト係止部53aについて詳細に説明し、ボルト係止部53bについての詳細な説明を省略する。
【0031】
ボルト係止部53aは、上下方向に長い略長方形状であり、側壁部52aに対して車幅方向に所定の間隔で隔てたボルト係止部側壁54、ボルト係止部側壁54の車両前後方向に配置したボルト係止部前壁55a及び後壁55b、上部に配置した上面56とによって所定の厚み略箱状に構成している。
上面56は、図1(a),(b)に示すように、車両前方側の半分程度を開口し、ボルト係止部53aの内部に締結ボルト30を挿入する挿入孔57を形成している。
【0032】
ボルト係止部53aの内部において、挿入孔57の下方に挿入ガイド60が設けられている。
挿入ガイド60は、挿入孔57から下方に向かって幅方向内側(本実施形態においては車両後方)に傾斜する傾斜ガイド部61と、傾斜ガイド部61の下端から下方に延びる鉛直ガイド部62と、鉛直ガイド部62の下端から下方に向かって幅方向内側(本実施形態においては車両後方)に湾曲する湾曲ガイド部63とが設けられている。また、湾曲ガイド部63の下端63aの下方には、抜落防止部64を備えている。
【0033】
ボルト係止部53aにおける車両後方側の半分は、上下方向に長い略長方形状のボルト係止本体部65を備えている。
ボルト係止本体部65の車両前方側の側面65aは上下方向に延び、その下端に締結ボルト30の係止部32が係止する被係止部66が設けられている。
【0034】
被係止部66は、ボルト係止本体部65の下端から下方に突出し、その下端66bが係止部32の径内側の円弧形状に沿った下向きに突出する円弧状に形成している。このように構成された被係止部66は、車両前方側の側面66aが、ボルト係止本体部65の上下方向に延びる車両前方側の側面65aと面一となるように構成している。
このように構成された被係止部66の車両後方側には、係止部32の先端を収容する収容凹部67が形成されている。
【0035】
上述のように構成されたボルト係止本体部65及び被係止部66は、面一に形成された車両前方側の側面65a,66aを、車両前後方向において、湾曲ガイド部63の下端63aに対して締結ボルト30の軸部31の直径に対応する間隔を隔てて車両後方側に配置している。
また、被係止部66の下方には、締結ボルト30の係止部32が侵入可能な侵入可能空間Xが形成され、侵入可能空間Xの下方に上述の抜落防止部64が配置されている。
【0036】
そして、被係止部66の下端66bは、上下方向において、湾曲ガイド部63の下端63aに対して、締結ボルト30の係止部32の円弧高さH(円弧状に形成された係止部32の最下端から先端までの上下方向の高さ)より広い間隔で配置されている。
【0037】
なお、ボルト係止部53aのボルト係止部側壁54における挿入孔57に対応する車両前方側部分を上方に延設された誘導板58を備えている。誘導板58は、上面56より上方に突出しており、ボルト係止部53aに対して上方に向かって離間するよう傾斜した傾斜誘導部581と、傾斜誘導部581の上端から上方に延設された上下誘導部582とで構成している。
【0038】
このように構成した誘導板58は、ボルト係止部53aの上面56より上方に突出しており、土台パネル100とバッテリ本体10とに挟まれた狭隘な作業空間において、ボルト係止部53aを位置の目印となる。また、誘導板58は、土台パネル100の近傍に配置されるボルト係止部53aに設けているが、車両外側に配置されたボルト係止部53bには備えていない。
【0039】
このように構成したボルト係止部53aに締結ボルト30を挿入して、係止部32を被係止部66に係止する固定作業について説明する。まず、作業に当たり、締結ボルト30の軸部31をバッテリクランプ20の拡大部21に設けた貫通孔に挿通し、ねじ部33にナット40を螺合して、締結ボルト30とバッテリクランプ20を組み付ける。
その上で、誘導板58に沿わせて締結ボルト30の係止部32を挿入孔57まで誘導し、挿入孔57から締結ボルト30をボルト係止部53aの内部に挿入する。
【0040】
係止部32がボルト係止部53aの内部に挿入された締結ボルト30を下方に移動させると、係止部32が傾斜ガイド部61によって幅方向内側(車両後方側)に移動する。さらに、図4(a)に示すように、鉛直ガイド部62に沿って下方移動した締結ボルト30の係止部32は、湾曲ガイド部63によって、下方に移動しながら幅方向内側(車両後方側)に移動する(図4(b)参照)。
【0041】
そして、係止部32が下端63aを越えると、締結ボルト30は下方に移動し、係止部32は侵入可能空間Xに配置される(図5(a)参照)。詳しくは、締結ボルト30の軸部31の車両後方側はボルト係止本体部65及び被係止部66の側面65a,66aに沿い、軸部31の下端(係止部32の車両前方側の上端)は湾曲ガイド部63の下端63aに当接する。そして、係止部32は、侵入可能空間Xにおいて被係止部66の直下に配置されることとなる。
【0042】
この状態では、締結ボルト30における係止部32の車両後方がボルト係止本体部65及び被係止部66の側面65a,66aによって規制され、係止部32の車両前方が湾曲ガイド部63の下端63aによって規制されている、つまり締結ボルト30は、ボルト係止本体部65及び被係止部66の側面65a,66aと、湾曲ガイド部63の下端63aとによって係止部32の車両前後方向が挟み込まれて規制されている。
【0043】
そのため、例えば、バッテリ本体10の上面11においてバッテリクランプ20が車両前後方向に移動し、締結ボルト30が傾斜したとしても、図5(b)に示すように、締結ボルト30は湾曲ガイド部63等に当接するため、締結ボルト30が不用意に傾斜することを防止できる。
【0044】
上述のように、不用意な傾斜が防止された状態(図5(a)に示す状態)の締結ボルト30のねじ部33とナット40とを、バッテリ本体10の上面11に載置したバッテリクランプ20において螺合することで、締結ボルト30は上方に移動し、締結ボルト30の係止部32をボルト係止部53aの被係止部66に係止することができる。そして、ねじ部33とナット40とをさらに螺合することで、締結ボルト30を介してバッテリクランプ20とバッテリケース50とを固定でき、バッテリクランプ20とバッテリケース50との間に配置したバッテリ本体10をバッテリケース50に対して固定することができる。
【0045】
なお、車幅方向外側に配置され、視認性及び作業性が高いボルト係止部53bへの締結ボルト30の固定は、誘導板58によるボルト係止部53aへの締結ボルト30の誘導を行うことなく、係止部32を挿入孔57からボルト係止部53bの内部に直接挿入する。ボルト係止部53bに係止部32を挿入した後の固定プロセスは、上述のボルト係止部53aにおける締結ボルト30の固定方法と同じである。
【0046】
上述のように、バッテリ保持構造1は、上端にねじ部33を有する締結ボルト30の下端に設けた係止部32を、バッテリケース50の被係止部66に係止するとともに、バッテリ本体10の上面11に載置するバッテリクランプ20にねじ部33を挿通してナット40で螺合し、バッテリ本体10をバッテリケース50に固定する構造である。そして、バッテリケース50における被係止部66の下方に、係止部32が侵入可能な侵入可能空間Xが形成され、バッテリケース50に、係止部32が侵入可能空間Xに侵入するように締結ボルト30を案内する挿入ガイド60と、挿入ガイド60によって案内された締結ボルト30に対して、係止部32の車両後方側に設けられた側面66aと、係止部32の車両前方側に設けられた下端63aとを具備している。そのため、締結ボルト30の係止部32をバッテリケース50の被係止部66に係止するための作業箇所の視認性及び作業性が低い場合であっても、確実に係止部32を被係止部66に係止して、バッテリ本体10をバッテリケース50に固定することができる。
【0047】
詳述すると、視認性が低い場合であっても、挿入ガイド60によって締結ボルト30の係止部32を被係止部66の下方の侵入可能空間Xに、容易に案内することができる。
また、挿入ガイド60によって係止部32が被係止部66の下方の侵入可能空間Xに案内された締結ボルト30は、係止部32の車両後方側に設けられた側面66aと、係止部32の車両前方側に設けられた下端63aとによって、係止部32の車両前方側と車両後方側の両方から位置規制されている。
【0048】
そのため、バッテリ本体10の固定によってバッテリクランプ20が多少動いても係止部32は被係止部66の下方に位置決めされている。したがって、締結ボルト30のねじ部33に対するナット40の螺合によって、係止部32を被係止部66に確実に係止することができる。
よって、作業性及び視認性が低い作業空間であっても、確実に係止部32を被係止部66に係止して、バッテリ本体10をバッテリケース50に固定することができる。
【0049】
また、締結ボルト30の車両後方側を規制する側面66aは、係止部32が係止する被係止部66の一部で構成されているため、締結ボルト30の車両後方側を規制する前方規制部を別途設けることなく、被係止部66に対する係止部32の車両後方側の位置を規制することができる。
【0050】
また、締結ボルト30の車両前方側を規制する下端63aは、係止部32が侵入可能空間Xに侵入するように締結ボルト30を案内する挿入ガイド60の先端部であるため、締結ボルト30の車両前方側を規制する後方規制部を別途設けることなく、被係止部66に対する係止部32の車両前方側の位置を規制することができる。
【0051】
また、バッテリケース50に、被係止部66、係止部32の車両前後方向の位置を規制する側面66a及び下端63aを内在する箱状のボルト係止部53a,53bが設けられ、ボルト係止部53a,53bにおける被係止部66の下方が外部と連通するため、挿入ガイド60によって、箱状のボルト係止部53a,53bの内部において係止部32を侵入可能空間Xに案内するとともに、係止部32を被係止部66に確実に係止することができる。
【0052】
また、このように係止部32を被係止部66に確実に係止できる箱状のボルト係止部53a,53bにおける被係止部66の下方が外部と連通しているため、ボルト係止部53a,53bに侵入した水を排水することができる。
【0053】
また、被係止部66の下方に抜落防止部64を備えているため、ねじ部33とナット40との螺合が解消し、バッテリクランプ20から締結ボルト30が外れても、締結ボルト30の下方を抜落防止部64で留めることができる。したがって、ボルト係止部53a,53bより締結ボルト30が脱落することを防止できる。
【0054】
また、挿入ガイド60の上端から、バッテリ本体10の上面11に向かうとともに、バッテリ本体10から離間する方向に延設された誘導板58が設けられているため、バッテリ本体10の搭載に影響を及ぼすことなく、視認性の高い誘導板58を基準として締結ボルト30の係止部32を被係止部66に係止することができる。
【0055】
また、誘導板58を、ボルト係止部53aのボルト係止部側壁54における挿入孔57に対応する車両前方側部分を上方に延設し、ボルト係止部53aに対して上方に向かって離間するよう傾斜した傾斜誘導部581と、傾斜誘導部581の上端から上方に延設された上下誘導部582とで構成している。そのため、土台パネル100とバッテリ本体10との間に配置されるボルト係止部53aに対して、締結ボルト30の係止部32を上下誘導部582及び傾斜誘導部581に沿わせて下方に移動させるだけで、挿入孔57よりボルト係止部53aの内部に挿入することができる。
【0056】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、この発明のねじ部はねじ部33に対応し、
以下同様に、
締結ボルトは締結ボルト30に対応し、
係止部は係止部32に対応し、
バッテリケースはバッテリケース50に対応し、
被係止部は被係止部66に対応し、
バッテリ本体はバッテリ本体10に対応し、
上部は上面11に対応し、
バッテリクランプはバッテリクランプ20に対応し、
ナットはナット40に対応し、
バッテリ保持構造はバッテリ保持構造1に対応し、
侵入空間は侵入可能空間Xに対応し、
案内ガイドは挿入ガイド60に対応し、
位置決め部は側面66a又は下端63aに対応し、
係止部の先端側は係止部の車両後方側に対応し、
第一位置決め部は側面66aに対応し、
係止部の反先端側は係止部の車両前方側に対応し、
第二位置決め部は下端63aに対応し、
ボルト係止部はボルト係止部53a,53bに対応し、
目印部は誘導板58に対応するも、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
例えば、上述の説明では、締結ボルト30の車両後方側を被係止部66の側面66aで規制し、締結ボルト30の車両前方側を湾曲ガイド部63の下端63aで規制しているが、締結ボルト30の車両前後方向の規制を被係止部66や湾曲ガイド部63とは別の構成で行ってもよい。
【0057】
また、下端63aを軸部31の下端及び係止部32の上端に当接して車両前方側への移動を規制しているが、軸部31や係止部32の異なる箇所に当接して車両前方側への移動を規制してもよい。
【0058】
また、下端63a及び側面66aの間の下方に備えた抜落防止部64で、締結ボルト30の下方への脱落を防止したが、抜落防止部64の代わりにボルト係止部53に底面を備え、締結ボルト30の不用意な脱落を防止してもよい。しかしながら、この場合、ボルト係止部53内部に水が浸入すると抜け出ることができないので底面に貫通する水抜き孔を設けるとよい。
【符号の説明】
【0059】
1…バッテリ保持構造
10…バッテリ本体
11…上面
20…バッテリクランプ
30…締結ボルト
32…係止部
33…ねじ部
40…ナット
50…バッテリケース
53a,53b…ボルト係止部
58…誘導板
60…挿入ガイド
63a…下端
66…被係止部
66a…側面
X…侵入可能空間
図1
図2
図3
図4
図5