(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】紙製トレー
(51)【国際特許分類】
B65D 5/20 20060101AFI20240509BHJP
B65D 5/56 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B65D5/20 B
B65D5/56 A
(21)【出願番号】P 2020059941
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】古▲瀬▼ 清人
(72)【発明者】
【氏名】猪又 暢之
(72)【発明者】
【氏名】谷口 正幸
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-112477(JP,A)
【文献】特表2013-545675(JP,A)
【文献】特開平09-048420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/24
B65D 5/56
B65D 5/62
B65D 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製のブランクスからなる紙製トレーであって、
紙製のブランクスは、台紙と、その表裏両面またはトレーの内側となる面に形成された熱可塑性樹脂層とからなり、
紙製トレーは、底面、側面板、および縁片によって構成され、
側面板は、底面を囲んで立ち上がり、トレーを形成しており、
縁片は、側面板の上端に連続して、かつ底面に平行にトレーの周囲を囲んでフランジを形成しており、
前記ブランクスを構成する、前記台紙は、トレーの角部において、側面板と、隣接する側面板との間は、側面板を立ち上げた際に重ならないよう切除してあり、
また縁片と、隣接する縁片との間も、縁片全体を形成した際に重ならないよう切除してあり、
前記熱可塑性樹脂層は、
台紙が平面展開された状態において、台紙を切除した部分を含んで、台紙の表裏両面またはトレーの内側となる面から積層してあり、
底面を囲んで立ち上がる側面板は、台紙を切除した部分の熱可塑性樹脂層によって、側面板と、隣接する側面板との間をシールされ接続され、
同様に、縁片と、隣接する縁片との間も、台紙を切除した部分の熱可塑性樹脂層によって、シールされ接続されて、トレーが形成されていることを特徴と
し、
縁片と、隣接する縁片との間は、台紙を切除した部分の熱可塑性樹脂層のヒートシールによってシールされている、紙製トレー。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂層は、ポリエチレン樹脂系、ポリプロピレン樹脂系、ポリエチレンテレフタレート樹脂系、ポリブチレンテレフタレート樹脂系のうち、1または複数からなることを特徴とする、請求項1に記載の紙製トレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製トレーに関するものである。特に板紙を基材としたブランクスを用いて形成され、例えば、アイスクリームなどの冷凍食品や、粉末物を収納することが可能な、紙製トレーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙製トレーは、スーパーマーケットや、コンビニエンスストアなどの小売りの場面で、例えば食品の包装材料として使用されている。その形態はさまざまであるが、紙を基材としていることから、価格面でのメリットのほか、環境適合型の包装材料として、広く使われている。
【0003】
また、内容物によってさまざまな形態が可能であり、ブランクスとして紙基材の表面に熱可塑性樹脂層を設けて、耐水性を付与し、また紙製トレーの立体の形成に熱可塑性樹脂層のシールを行うこともでき、さらに蓋材をシールしてトレー全体を密封することも行われている。
【0004】
しかしながら、紙を基材とした平面のブランクスから組み立てて作る紙製トレーにおいては、プラスチックを基材としたトレーとは異なり、組み立て時にブランクス同士が重なる部分がある。
【0005】
この部分は厚さが厚くなるために、シールして紙製トレーを密封しようとする際には、この段差部分がシールの欠陥になるおそれがあり、密封性には問題があるのが実情であった。特に液体の内容物などにおいては、包装材料において重大欠陥とされる、漏れの問題を引き起こす恐れがあるとして改善が求められてきた。
【0006】
例えば特許文献1には、トレー専用ブランクスとして、方形のトレーにおいて縁辺を設けてあり、方形の4隅において舌片を設けて2方向の縁辺を接合する方式の紙製トレーを形成することのできるトレー専用ブランクスが提案されているが、この場合には舌片の接合部分には、重なりによる段差ができることは避けられず、この段差による隙間部分によって密封性の欠如が内容物の漏れを引き起こす恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、紙製トレーにおいて、縁片から形成されるフランジの接合部分の段差がなく、密封性のよい紙製トレーを供給することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
紙製のブランクスからなる紙製トレーであって、
紙製のブランクスは、台紙と、その表裏両面またはトレーの内側となる面に形成された熱可塑性樹脂層とからなり、
紙製トレーは、底面、側面板、および縁片によって構成され、
側面板は、底面を囲んで立ち上がり、トレーを形成しており、
縁片は、側面板の上端に連続して、かつ底面に平行にトレーの周囲を囲んでフランジを形成しており、
前記ブランクスを構成する、前記台紙は、トレーの角部において、側面板と、隣接する側面板との間は、側面板を立ち上げた際に重ならないよう切除してあり、
また縁片と、隣接する縁片との間も、縁片全体を形成した際に重ならないよう切除してあり、
前記熱可塑性樹脂層は、台紙を切除した部分を含んで、台紙の表裏両面またはトレーの内側となる面から積層してあり、
底面を囲んで立ち上がる側面板は、台紙を切除した部分の熱可塑性樹脂層によって、側面板と、隣接する側面板との間をシールされ接続され、
同様に、縁片と、隣接する縁片との間も、台紙を切除した部分の熱可塑性樹脂層によって、シールされ接続されて、トレーが形成されていることを特徴とする、紙製トレーである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、
前記熱可塑性樹脂層は、ポリエチレン樹脂系、ポリプロピレン樹脂系、ポリエチレンテレフタレート樹脂系、ポリブチレンテレフタレート樹脂系のうち、1または複数からなることを特徴とする、請求項1に記載の紙製トレーである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紙製トレーにおいて、縁片から形成されるフランジの接合部分の段差がなく、密封性のよい紙製トレーを供給することが可能である。
【0012】
本発明は、紙製のブランクスからなる紙製トレーであって、紙製トレーは、底面、側面板、および縁片によって構成され、側面板は、底面を囲んで立ち上がり、トレーを形成していることによって、より環境適合型の紙製トレーであり、耐水性に優れ、また平面のブランクスからのトレーの形成が容易に可能である。
【0013】
また本発明においては、縁片は、側面板の上端に連続して、かつ底面に平行にトレーの周囲を囲んでフランジを形成して紙製トレーの周囲を囲んでいることによって、またフランジにはブランクスの重なりによる段差がないことから、蓋材のシールが容易に可能で、より密封性に優れる紙製トレーとすることが可能である。
【0014】
すなわち、ブランクスを構成する台紙は、トレーの角部において、側面板と、隣接する側面板との間は、側面板を立ち上げた際に重ならないよう切除してあり、また縁片と、隣接する縁片との間も、縁片全体を形成した際に重ならないよう切除してあることによって、ブランクスを紙製トレーに組み立て立体に形成する際には、ブランクス同士が重なる部分をなくすことが可能である。
【0015】
熱可塑性樹脂層は、台紙を切除した部分を含んで、台紙の表裏両面またはトレーの内側となる面から積層してあり、底面を囲んで立ち上がる側面板は、台紙を切除した部分の熱可塑性樹脂層によって、側面板と、隣接する側面板との間をシールされ接続され、同様に、縁片と、隣接する縁片との間も、台紙を切除した部分の熱可塑性樹脂層によって、シールされ接続されて、トレーが形成されていることによって、ブランクス同士が重なることなく紙製トレーの組み立てが可能であり、重なりがないことによって平坦さが得られ、したがって紙製トレーに蓋材をつけてフランジ部分とシールして密封する場合においても、密封性の良い紙製トレーとすることができる。
【0016】
また特に請求項2に記載の発明によれば、熱可塑性樹脂層は、ポリエチレン樹脂系、ポ
リプロピレン樹脂系、ポリエチレンテレフタレート樹脂系、ポリブチレンテレフタレート樹脂系のうち、1または複数からなることによって、紙製トレー組み立ての際のシーラントとしてより適性を持ち、かつ紙製トレーの用途に応じたシーラントの設計が可能である。特にポリエチレンテレフタレート樹脂系、ポリブチレンテレフタレートを選択する場合には、より耐熱性に優れた紙製トレーを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明に係る紙製トレーの、一実施態様を説明するための、斜視模式図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る紙製トレーの、一実施態様を説明するための、平面展開模式図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る紙製トレーの、一実施態様の角部において、台紙の側面板と、隣接する側面板との間は、側面板を立ち上げた際に重ならないよう台紙を切除してあり、また縁片と、隣接する縁片との間は、縁片を形成した際に重ならないよう台紙を切除してあることを説明するための台紙の平面展開模式図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る紙製トレーの、一実施態様において、台紙の窓抜き部分を説明するための平面模式図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る紙製トレーの、一実施態様において、台紙の表裏両面またはトレーの内側となる面に熱可塑性樹脂を設けた後、打ち抜きが完了してブランクスが完成した状態を説明するための平面展開模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を
図1~
図5を参照しながら、更に詳しい説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例にのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって特定されるものである。
【0019】
図1は、本発明に係る紙製トレーの、一実施態様を説明するための、斜視模式図である。
【0020】
本発明は、紙製のブランクスから形成される紙製トレー(100)である。
図1の一実施態様の斜視模式図に示すように、底板(1)を有して周囲は側面板(2)に囲まれ、側面板(2)の上端には、側面板(2)に連続して底面(1)に平行な、縁片(3)が形成されている。
【0021】
縁片(3)は紙製トレー(100)の周囲を取り囲んで、フランジ(4)を形成している。したがって、
図1から見て取れるように、フランジ(4)は8角形であり、8枚の縁片(3)から構成されている例である。
【0022】
また、
図1に示す例において、底板(1)は8角形である。したがって、側面板(2)および縁片(3)はそれぞれ8枚である。こうして側面板(2)を立てて、立体に形成された紙製トレー(100)は、内容物を収納可能な8角形の容器として用いることができる。
【0023】
本発明において、紙製のブランクスは、台紙と、その表裏両面またはトレーの内側となる面に形成された熱可塑性樹脂層とからなるものであって、紙製トレーの立体の形成においては、熱可塑性樹脂層をシール、密着させて行うことができる。またブランクスが、その表裏両面またはトレーの内側となる面を熱可塑性樹脂層で被覆されていることにより、紙製トレー(100)に優れた耐水性を付与することが可能である。
【0024】
また、紙製トレー(100)のフランジ(4)として形成された縁片(3)は、この部
分に蓋材をシールして、紙製トレー(100)全体を密封することができる。
【0025】
この紙製トレー(100)は、紙を基材とした材料構成であることによって、環境対応型の包装材料として優れており、必要に応じて密封性も備えることが可能であって、利便性の高い紙製トレー(100)として幅広く使用することが可能である。
【0026】
また本発明においては、紙製トレー(100)であっても、従来その欠点とされてきた、立体の形成においてブランクスの重なりをなくすことができる。特に縁片(3)で形成される、紙製トレー(100)の周囲を囲む、フランジ(4)部分の重なりをなくすことができ、平坦なものとすることが可能である。したがって、密封性において優れた紙製トレー(100)とすることができる。
【0027】
図2は、本発明に係る紙製トレーの、一実施態様を説明するための、平面展開模式図である。
【0028】
本発明は、紙製のブランクスから形成される、紙製トレー(100)である。ブランクスは台紙を基材として、その表裏両面またはトレーの内側となる面に熱可塑性樹脂層を設けたものであって、側面板(2)を立ち上げ、立体に成型して紙製トレー(100)を形成して、内容物を収納可能な容器として用いる。
図2に示す例の平面展開模式図(9)はブランクスのうち、台紙の部分のみを示したものである。
【0029】
図2に示す例の平面展開模式図(9)に示すように、紙製トレー(100)は底面(1)を中心にして、底面(1)を囲んで立ち上がる側面板(2)、側面板(2)には、側面板(2)の上端に連続して、底面(1)に平行な、縁片(3)が設けられている。
【0030】
すなわち、この
図2に示す実施態様において、底板(1)は4辺を有して紙製トレー(100)の角部(10)を4か所を有する。したがって底板(1)は8角形であって1面であり、側面板(2)は8面となる。また縁片(3)は、各側面板(2)の上端に接続しており、8面となる。
【0031】
また、
図2において、底面(1)と側面板(2)との間の、折り線(5)は谷折り、側面板(2)と縁片(3)との間の、折り線(6)は山折りであって、紙製トレー(100)は、
図2の手前側に立ち上がって立体となる。
【0032】
この時、従来のブランクスの平面展開図とは異なり、立体にしたときに、ブランクス同士が重なる部分がないように、V字形に切除された部分(11)が設けてある。この切除された部分(11)は、紙製トレー(100)の角部(10)の紙基材において、側面板(2)と、隣接する側面板(2)との間が、側面板(2)を立ち上げた際に重ならないよう切除してあり、また縁片(3)と、隣接する縁片(3)との間は、縁片(3)を形成した際に重ならないよう切除してある。
【0033】
したがって、底面(1)と側面板(2)との間の、折り線(5)を谷折りにして、側面板(2)を立ち上げる場合には、側面板(2)同士の間にある、V字形の切除された部分は閉じた状態となって、側面板(2)同士は連続した状態となる。
【0034】
また、側面板(2)と縁片(3)との間の、折り線(6)を山折りにして、縁片(3)を底面(1)と平行な面にする場合には、縁片(3)同士もまた連続して、紙製トレー(100)の周囲を囲んだフランジ(4)となる。
【0035】
ちなみに、紙製トレー(100)が立体に形成された状態において、紙製トレー(10
0)の周囲を囲んで、かつ水平な面である縁片(3)は、たとえば紙製トレー(100)に蓋材をかぶせる場合には、蓋材と縁片(3)をシールして、紙製トレー(100)全体を密封することが可能である。
【0036】
図3は、本発明に係る紙製トレーの、一実施態様の角部において、台紙の側面板と、隣接する側面板との間は、側面板を立ち上げた際に重ならないよう台紙を切除してあり、また縁片と、隣接する縁片との間は、縁片を形成した際に重ならないよう台紙を切除してあることを説明するための台紙の平面展開模式図である。
【0037】
前述したように本発明においては、ブランクスを形成する台紙(20)において、側面板(2)と、隣接する側面板(8)との間は、側面板(2)を立ち上げた際に重ならないよう台紙(20)を切除してあり、また縁片(3)と、隣接する縁片(3)との間は、縁片(3)を形成した際に重ならないよう台紙(20)を切除してある。
【0038】
台紙(20)の材質は特段の限定を加えるものではなく、一般の紙や板紙を用いることができ、その厚さや紙質は、紙製トレー(100)に対する要求品質、用途を考慮して適宜選択することが可能である。
【0039】
図3に示す例においては、台紙(20)においては、切除された部分(11)は、互いに近い距離にある2箇所づつが、一つの窓抜き部(12)として打ち抜かれて、台紙(20)の4隅に、4箇所の窓抜き部(12)を形成している。
【0040】
なお、窓部抜き部(12)の位置は、わかりやすいように、破線で示す平面展開図を重ねて示してある。
【0041】
図4は、本発明に係る紙製トレーの、一実施態様において、台紙の窓抜き部分を説明するための平面模式図である。
【0042】
前述のように、
図3に示す窓抜き部(12)は、台紙(20)の4隅にあって4箇所である。切除された部分(11)を設けるための窓抜き部(12)と、台紙(20)との関係は、
図4に示すような位置関係である。
【0043】
本発明による紙製トレー(100)のためのブランクスは、このように窓抜き部(12)を設けられた台紙(20)に対して、その表裏両面またはトレーの内側となる面から熱可塑性樹脂層を設けることによって得られる。すなわち、本発明においては、熱可塑性樹脂層が、台紙(20)の窓抜き部(12)を含んで、台紙(20)の表裏から積層してある。
【0044】
このようにして、台紙(20)と熱可塑性樹脂層を積層したのち、紙製トレー(100)のブランクスを打ち抜きによって作成することによって、より正確にまた生産性良く、本発明による紙製トレーのためのブランクスを作成することが可能である。
【0045】
ブランクスを作成するためには、この
図4に示す、熱可塑性樹脂の積層後の台紙(20)から、4隅の除去部分(13)を分離、除去する。
【0046】
図5は、
図5は、本発明に係る紙製トレーの、一実施態様において、台紙の表裏両面またはトレーの内側となる面に熱可塑性樹脂を設けた後、打ち抜きが完了してブランクスが完成した状態を説明するための平面展開模式図である。
【0047】
本発明による紙製トレー(100)のための、完成したブランクス(40)において、
台紙(1)は、
図2に示す平面展開図(9)の通りに切断され、その表裏両面またはトレーの内側となる面には熱可塑性樹脂層(30)が設けられている。
【0048】
熱可塑性樹脂層(30)は、紙の部分のほか、ブランクス(40)の紙の部分同士が重なる部分がないように設けられた、切除された部分(11)も覆っており、この部分は台紙(20)では窓抜き部(12)となっているが、表裏両面またはトレーの内側となる面の熱可塑性樹脂層(30)のみが積層された状態となっている。
【0049】
図5に示すブランクス(40)において、紙製トレー(100)は底面(1)を中心に有しており、底面(1)を囲んで立ち上がる側面板(2)には、側面板(2)の上端に連続して底面(1)に平行な、縁片(3)が形成されている。
図5において、底面(1)と側面板(2)との間の折り線(5)は谷折り、側面板(2)と縁片(3)との間の折り線(6)は山折りであって、紙製トレー(100)は、
図5の手前側に立ち上がって立体となる。
【0050】
このとき、紙製トレー(100)の角部(10)において、台紙(20)を切除した部分の熱可塑性樹脂層(30)によって、側面板(2)と、隣接する側面板(2)との間をシールすることができ、同様に、台紙(20)を切除した部分の熱可塑性樹脂層(30)によって、縁片(3)と、隣接する縁片(3)との間も、シールすることによって紙製トレー(100)が形成される。このシールには、例えばヒートシールを用いることができる。
【0051】
熱可塑性樹脂層(30)は、熱可塑性樹脂層(30)同士が対向するように重ねて、加熱、加圧してヒートシールすることによって互いを接着させ、互いに接着することを可能にする。
【0052】
熱可塑性樹脂層(30)の材質としては、熱可塑性樹脂のうちポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。
【0053】
熱可塑性樹脂層(30)の形成には、押出機などを用いて溶融した樹脂を製膜して、台紙(20)上に層形成することができる。あるいは、あらかじめフィルムの状態に製膜してある材料を、ラミネートによって積層することによって、台紙(20)の表裏両面または片面に熱可塑性樹脂層(30)を形成することも可能である。
【0054】
この熱可塑性樹脂層(30)に、前述のポリエチレン樹脂系、ポリプロピレン樹脂系、のほか、ポリエチレンテレフタレート樹脂系、ポリブチレンテレフタレート樹脂系のうち、1または複数を用いることが可能である。これらは紙製トレー(100)の用途や要求される品質に応じて、適宜選択して用いることができる。
【0055】
特にポリエチレンテレフタレート樹脂系、ポリブチレンテレフタレート樹脂系を用いる場合には、例えば電子レンジ加熱を伴う用途などにおいて、耐熱性の点で耐性を有する紙製トレー(100)となる。
【0056】
このようにして本発明によれば、紙製トレーにおいて、縁片から形成されるフランジの
接合部分の段差がなく、密封性のよい紙製トレーを供給することが可能である。
【実施例】
【0057】
以下本発明を、実施例1および比較例1によって更に具体的な説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例にのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって特定されるものである。
【0058】
評価用に、紙製トレーを作成し、内容物を充填した後に蓋材をシールして、密封し傾けた状態で内容物の漏れを観察する。
【0059】
<実施例1>
坪量260g/m
2のカップ原紙に、
図3で示す窓抜き部を設け、台紙の表面にはポリプロピレン樹脂を厚さ30μmで押し出して積層した。紙製トレー内側になる面にはポリプロピレン樹脂を厚さ40μmで押し出して積層した。このシートを断裁して
図5に示すブランクスを打ち抜きで作成した。
【0060】
図5に示す本発明による紙製トレー用のブランクスを組み立てて、
図1に示す外観の紙製トレーを作成し、アイスクリームを充填し、蓋材をシールして紙製トレーを密封した。
【0061】
容器を反転し、傾けた状態で蓋材とフランジ部分からの内容物の漏れの発生を観察したところ、180分経過後も内容物の漏れは確認されなかった。
【0062】
この結果は、実施例1の紙製トレーを構成するブランクスにおいて、本発明による台紙の切除された部分を設けたことによって、フランジ部分にブランクスの重なりがなく平坦になり、蓋材のシールが強固になっていることによるものと考えられる。
【0063】
<比較例1>
坪量260g/m2のカップ原紙に、台紙の表面にはポリプロピレン樹脂を厚さ30μmで押し出して積層した。紙製トレー内側になる面にはポリプロピレン樹脂を厚さ40μmで押し出して積層した。このシートを断裁して従来の紙製トレー用のブランクスを打ち抜きで作成した。
【0064】
この従来の紙製トレー用のブランクスを組み立てて、紙製トレーを作成した。組み立てた紙製トレーには、切除された部分がなく、フランジ部分に一部ブランクスの重なる部分が存在した。この紙製トレーに、アイスクリームを充填し、蓋材をシールして紙製トレーを密封した。
【0065】
容器を反転し、傾けた状態で蓋材とフランジ部分からの内容物の漏れの発生を観察したところ、30分経過した時点で内容物の漏れの発生が確認された。
【0066】
この結果は、比較例1の紙製トレーを構成するブランクスにおいて、本発明による台紙の切除部分を設けていないために、フランジ部分にブランクスの重なりがあり、段差が生じ、蓋材のシールにおいて密封性を阻害していることによるものと考えられる。
【0067】
このように、本発明によれば、紙製トレーにおいて、縁片から形成されるフランジの接合部分の段差がなく、密封性のよい紙製トレーを供給することが可能であることを検証することができた。
【符号の説明】
【0068】
1・・・底板
2・・・側面板
3・・・縁片
4・・・フランジ
5・・・折り線
6・・・折り線
10・・・角部
11・・・切除された部分
12・・・窓抜き部
13・・・除去部分
20・・・台紙
30・・・熱可塑性樹脂層
40・・・ブランクス
100・・・紙製トレー