(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20240509BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20240509BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20240509BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20240509BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20240509BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240509BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C08G18/00 C
C08G18/08 019
C08G18/75
C08G18/65 041
C08G18/44
C09D5/02
C09D175/04
(21)【出願番号】P 2020060892
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】森上 敦史
(72)【発明者】
【氏名】金子 暁良
(72)【発明者】
【氏名】山田 健史
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/004951(WO,A1)
【文献】特開2019-059864(JP,A)
【文献】国際公開第2010/098318(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/135427(WO,A1)
【文献】特開2004-244435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C09D 5/02
C09D 175/00-175/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物(Aa)、ポリイソシアネート化合物(Ab)、酸性基含有ポリオール(Ac)、中和剤(Ad)及び鎖延長剤(Ae)由来の構成単位を有する、耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体であって、
ポリオール化合物(Aa)は、ポリカーボネートポリオール化合物及びポリエーテルポリオール化合物からなる群より選択され、
ポリオール化合物(Aa)は、ガラス転移温度が-55℃~-20℃のポリカーボネートポリオール化合物を含み、
水性ポリウレタン樹脂分散体に含まれるN(C=O)NH
基濃度が固形分基準で7.5質量%以上13質量%以下であ
り、
水性ポリウレタン樹脂分散体の数平均分子量が50,000以上2,000,000以下である、耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体。
【請求項2】
水性ポリウレタン樹脂分散体中のハードセグメントの含有量が固形分基準で50~70質量%である、請求項1に記載の耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体。
【請求項3】
水性ポリウレタン樹脂分散体中に含まれる脂環構造の含有割合が固形分基準で20~40質量%である、請求項1又は2に記載の耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体。
【請求項4】
ポリオール化合物(Aa)に含まれるポリカーボネートポリオール化合物が脂環構造を含有する、及び/又は炭素数4以下のジオールで構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体。
【請求項5】
ポリオール化合物(Aa)に含まれるポリカーボネートポリオール化合物がシクロヘキサン環を含有する、及び/又は2-メチル-1,3-プロパンジオールで構成される、請求項4に記載の耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体。
【請求項6】
酸価が18~40mgKOH/gである、請求項1~
5のいずれか一項に記載の耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体。
【請求項7】
ポリイソシアネート化合物(Ab)が脂環式ポリイソシアネートである、請求項1~
6のいずれか一項に記載の耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体に任意成分としてアクリルエマルジョン、ポリオレフィンエマルジョン及びポリエステルエマルジョンから選ばれる少なくとも1種を含む耐破壊特性材料用コーティング材料組成物。
【請求項9】
金属の外装用プライマー又はベースコート用の、請求項1~
7のいずれか一項に記載の耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体。
【請求項10】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体又は請求項
8記載の耐破壊特性材料用コーティング材料組成物を乾燥させて得られる、塗膜。
【請求項11】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体又は請求項
8記載の耐破壊特性材料用コーティング材料組成物を20℃~100℃で乾燥させる工程を含む、塗膜の製造方法。
【請求項12】
請求項1
1に記載の方法により得られる塗膜のフロアコート、プラスチック又はゴムへのコート、鋼板処理剤、金属の外装用プライマー又はベースコートとしての使用。
【請求項13】
(I
)ポリオール化合物(Aa)、ポリイソシアネート化合物(Ab)、酸性基含有ポリオール(Ac)を、ポリオール化合物(Aa)と酸性基含有ポリオール(Ac)とが有する水酸基と、ポリイソシアネート化合物(Ab)の有するイソシアナト基のモル比率が、NCO/OH=1.70~2.50となるように、有機溶剤の存在下、又は非存在下で反応させてポリウレタンプレポリマーを得る工程、
(II)前記ポリウレタンプレポリマーの酸基を中和剤(Ad)で中和する工程、
(III)前記ポリウレタンプレポリマーを水系媒体に分散させる工程、
(IV)N(C=O)NH
基濃度が7.5~13質量%になるように鎖延長剤(Ae)の種類及び注入量を調整し、前記ポリウレタンプレポリマーを鎖延長剤(Ae)で高分子量化する工程、
及び場合により
(V)有機溶剤を除去する工程
を含む、耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体を製造する方法
であって、
ポリオール化合物(Aa)は、ポリカーボネートポリオール化合物及びポリエーテルポリオール化合物からなる群より選択され、
ポリオール化合物(Aa)は、ガラス転移温度が-55℃~-20℃のポリカーボネートポリオール化合物を含み、
水性ポリウレタン樹脂分散体の数平均分子量が50,000以上2,000,000以下である、方法。
【請求項14】
ポリオール化合物(Aa)、ポリイソシアネート化合物(Ab)、酸性基含有ポリオール(Ac)、中和剤(Ad)及び鎖延長剤(Ae)由来の構成単位を有する、耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体であって、
ポリオール化合物(Aa)は、ポリカーボネートポリオール化合物及びポリエーテルポリオール化合物からなる群より選択され、
ポリオール化合物(Aa)は、ガラス転移温度が-55℃~-20℃のポリカーボネートポリオール化合物を含み、
水性ポリウレタン樹脂分散体に含まれるN(C=O)NH
基濃度が固形分基準で7.5質量%以上13質量%以下であ
り、
水性ポリウレタン樹脂分散体の数平均分子量が50,000以上2,000,000以下であり、
20℃~100℃の低温で塗膜を形成し、JIS K 5600-5-4に準拠した方法により測定した、塗膜の鉛筆硬度が2B以上であり、
電着塗面へのコーティング膜の碁盤目剥離試験を4回行った際に、剥離が認められない、
耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系媒体中にポリウレタン樹脂を分散させた耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体に関する。また、本発明は、前記水性ポリウレタン樹脂分散体を含有するコーティング材料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水性ポリウレタン樹脂分散体は、接着性、耐摩耗性、ゴム的性質を有する塗膜を得ることができ、従来の溶剤系ポリウレタンと比較して揮発性有機物を減少できることから環境対応材料として溶剤系ポリウレタンからの置き換えが進んでいる材料である。
ポリカーボネートポリオール(PCP)は、イソシアネート化合物との反応により、硬質フォーム、軟質フォーム、塗料、接着剤、合成皮革、インキバインダーなどに用いられる耐久性のあるポリウレタン樹脂を製造するための原料となる有用な化合物である。ポリカーボネートポリオールを用いたポリウレタンの特徴は、カーボネート基の高い凝集力によって発現し、耐水性、耐熱性、耐油性、弾性回復性、耐摩耗性、耐候性に優れることが述べられている(非特許文献1参照)。また、ポリカーボネートポリオールを原料とした水性ウレタン樹脂分散体を塗布して得られる塗膜においても、耐光性、耐熱性、耐加水分解性、耐油性に優れることが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
上述のようにポリカーボネートポリオールを用いた水性ポリウレタン樹脂分散体は良好な特性を発現するが、溶剤系ポリウレタンに比較して十分とはいえないことがある。特に塗膜の耐溶剤性及び耐水性は不十分な場合がある。そのような特性を改良するために、ポリウレタン樹脂に架橋構造を導入したり、エポキシ樹脂や多官能イソシアネート等の架橋材を導入した組成物として硬化時に架橋したりすることが行なわれる。中でも、ブロック化されたイソシアナト基を有する水性ポリウレタン樹脂分散体は常温で安定であることから貯蔵安定性の高い一液型の架橋反応性分散体として利用価値が高い(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。ポリカーボネートポリオールを原料とした水性ポリウレタン樹脂分散体は電着塗膜への密着性が高いという特長を有することでも知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
さらに、ウレタン結合、ウレア結合、カーボネート結合を有し、かつブロック化されたイソシアナト基を特定量で有する水性ポリウレタン樹脂分散体により、塗布後の製膜速度を制御し、塗膜の水への再分散を可能にすることができ、これを塗布・加熱処理して得られる塗膜は、耐水性及び耐溶剤性に優れ、電着塗膜への密着性にも優れ、引張における破断エネルギーが高いため、耐衝撃性にも優れるということを見出されている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-120757号公報
【文献】特開2002-128851号公報
【文献】特開2000-104015号公報
【文献】特開2005-220255号公報
【文献】国際公開第2010/098316号パンフレット
【0006】
【文献】「最新ポリウレタン材料と応用技術」 シーエムシー出版社発行 第2章 第43ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
水性ポリウレタン樹脂分散体は、フィルム、塗料又はコーティング材料として用いる際には、バーコーター、ロールコーター、エアスプレー等の塗布装置を用いて基材等への塗布が行われる。塗布された水性ポリウレタン樹脂分散体を加熱乾燥することで基材上に塗膜が形成される。耐破壊特性材料用途においては、この基材への充分な密着性及び引張における大きな破断エネルギーを得る必要があるが、従来の水性ポリウレタン樹脂分散体では、ブロックイソシアネート基を有するため140℃以上の乾燥工程が必要であった。
地球温暖化ガス排出の観点で、この乾燥温度を従来の140℃以上から100℃以下に下げて塗膜を作成することができれば、エネルギーコスト削減や環境への負荷の低減が期待される。
そこで、本発明の課題は、100℃以下での低温乾燥において、基材への密着性を備えつつ、破断エネルギーの高い塗膜を形成する、耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ソフトセグメントに特定のガラス転移温度を有するポリカーボネートポリオールを使用し、ポリオール化合物、酸性基含有ポリオール、ポリイソシアネート化合物及び鎖延長剤の構成割合によりN(C=O)NHの濃度を制御することで、100℃以下の低温乾燥において形成される塗膜が基材への密着性と破断エネルギーを共に高くすることができることを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明は、具体的には以下のとおりである。
(1)第1の発明は、ポリオール化合物(Aa)、ポリイソシアネート化合物(Ab)、酸性基含有ポリオール(Ac)、中和剤(Ad)及び鎖延長剤(Ae)由来の構成単位を有する、耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体であって、ポリオール化合物(Aa)は、ガラス転移温度が-55℃~-20℃のポリカーボネートポリオール化合物を含み、水性ポリウレタン樹脂分散体に含まれるN(C=O)NH濃度が固形分基準で7.5質量%以上13質量%以下である、耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体である。
(2)第2の発明は、水性ポリウレタン樹脂分散体中のハードセグメントの含有量が固形分基準で50~70質量%である、前記(1)に記載の耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体である。
(3)第3の発明は、水性ポリウレタン樹脂分散体中に含まれる脂環構造の含有割合が固形分基準で20~40質量%である、前記(1)又は(2)に記載の耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体である。
(4)第4の発明は、ポリオール化合物(Aa)に含まれるポリカーボネートポリオール化合物が脂環構造を含有する、及び/又は炭素数4以下のジオールで構成される、前記(1)~(3)のいずれかに記載の耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体である。
(5)第5の発明は、ポリオール化合物(Aa)に含まれるポリカーボネートポリオール化合物がシクロヘキサン環を含有する、及び/又は2-メチル-1,3-プロパンジオールで構成される、前記(4)に記載の耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体である。
(6)第6の発明は、数平均分子量が50,000以上である、前記(1)~(5)のいずれかに記載の耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体である。
(7)第7の発明は、酸価が18~40mgKOH/gである、前記(1)~(6)のいずれかに記載の耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体である。
(8)第8の発明は、ポリイソシアネート化合物(Ab)が脂環式ポリイソシアネートである、前記(1)~(7)のいずれかに記載の耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体である。
(9)第9の発明は、前記(1)~(8)のいずれかに記載の耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体に任意成分としてアクリルエマルジョン、ポリオレフィンエマルジョン及びポリエステルエマルジョンから選ばれる少なくとも1種を含む耐破壊特性材料用コーティング材料組成物である。
(10)第10の発明は、金属の外装用プライマー又はベースコート用の、前記(1)~(8)のいずれかに記載の耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体である。
(11)第11の発明は、前記(1)~(8)のいずれかに記載の耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体又は前記(9)記載の耐破壊特性材料用コーティング材料組成物を乾燥させて得られる、塗膜である。
(12)第12の発明は、前記(1)~(8)のいずれかに記載の耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体又は前記(9)記載の耐破壊特性材料用コーティング材料組成物を20℃~100℃で乾燥させる工程を含む、塗膜の製造方法である。
(13)第13の発明は、前記(12)に記載の方法により得られる塗膜のフロアコート、プラスチック又はゴムへのコート、鋼板処理剤、金属の外装用プライマー又はベースコートとしての使用である。
(14)第14の発明は、(I)ガラス転移温度が-55℃~-20℃のポリカーボネートポリオール化合物を含むポリオール化合物(Aa)、ポリイソシアネート化合物(Ab)、酸性基含有ポリオール(Ac)を、ポリオール化合物(Aa)と酸性基含有ポリオール(Ac)とが有する水酸基と、ポリイソシアネート化合物(Ab)の有するイソシアナト基のモル比率が、NCO/OH=1.70~2.50となるように、有機溶剤の存在下、又は非存在下で反応させてポリウレタンプレポリマーを得る工程、
(II)前記ポリウレタンプレポリマーの酸基を中和剤(Ad)で中和する工程、
(III)前記ポリウレタンプレポリマーを水系媒体に分散させる工程、
(IV)N(C=O)NH濃度が7.5~13質量%になるように鎖延長剤(Ae)の種類及び注入量を調整し、前記ポリウレタンプレポリマーを鎖延長剤(Ae)で高分子量化する工程、
及び場合により
(V)有機溶剤を除去する工程
を含む、耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体を製造する方法である。
(15)第15の発明は、ポリオール化合物(Aa)、ポリイソシアネート化合物(Ab)、酸性基含有ポリオール(Ac)、中和剤(Ad)及び鎖延長剤(Ae)由来の構成単位を有する、耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体であって、ポリオール化合物(Aa)は、ガラス転移温度が-55℃~-20℃のポリカーボネートポリオール化合物を含み、水性ポリウレタン樹脂分散体に含まれるN(C=O)NH濃度が固形分基準で7.5質量%以上13質量%以下である、耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体であって、20℃~100℃の低温で塗膜を形成し、JIS K 5600-5-4に準拠した方法により測定した、塗膜の鉛筆硬度が2B以上であり、電着塗面へのコーティング膜の碁盤目剥離試験を4回行った際に、剥離が認められない、耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、室温~100℃、例えば80℃の乾燥でできる塗膜が電着塗膜などの基材と良好な密着性を有し、高い硬度、並びに高い破断エネルギーを有する、耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体を提供することができる。このため、従来の高温加熱乾燥と比較して地球温暖化ガス排出量の抑制に貢献できる。本発明は、フロアコーティング、プラスチック基材又はゴムへのコート、鋼板処理剤、自動車、トラック、電車などの車両の外装用プライマー(ベースコート材料)などに利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体は、ポリオール化合物(Aa)、ポリイソシアネート化合物(Ab)、酸性基含有ポリオール(Ac)、中和剤(Ad)及び鎖延長剤(Ae)由来の構成単位を有するものである。
【0012】
上記水性ポリウレタン樹脂分散体は、100℃以下の低温乾燥下での基材への密着性の観点から、ポリオール化合物(Aa)にガラス転移温度が-55℃~-20℃のポリカーボネートポリオール化合物(Aa1)を含み、
水性ポリウレタン樹脂分散体に含まれるN(C=O)NH濃度が固形分基準で7.5質量%以上13質量%以下であることが必須である。
【0013】
ブロックイソシアネート基を有する水性ポリウレタン樹脂分散体を使用する場合、100℃以下、例えば80℃での乾燥工程では塗膜が基材に密着しなかった。一方、ブロックイソシアネート基を持たない場合、乾燥温度が100℃以下でも塗膜は形成可能であるが、耐破壊特性材料用途において十分な充分な密着性及び引張における大きな破断エネルギーを得ることができなかった。本発明では、乾燥温度が100℃以下でも塗膜が形成可能であり、且つ塗膜が耐破壊特性材料用途において十分な充分な密着性及び引張における大きな破断エネルギーを得ることができる。
【0014】
<ポリオール化合物(Aa)>
本発明で使用するポリオール化合物(Aa)は、ガラス転移温度が-55℃~-20℃のポリカーボネートポリオール化合物(Aa1)を含み、任意成分として、その他のポリオール化合物(Aa2)を含んでいてもよい。
ポリオール化合物(Aa)は、ガラス転移温度が-55℃~-20℃のポリカーボネートポリオール化合物(Aa1)をポリオール化合物(Aa)の全量に対して好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上含む。ポリカーボネートポリオール化合物(Aa1)の含有量の上限は特に制限されず、ポリオール化合物(Aa)の全量即ち100質量%を占めていてもよい。
【0015】
<ポリカーボネートポリオール化合物(Aa1)>
上記ポリカーボネートポリオール化合物(Aa1)は基材への密着性と破断エネルギーの観点から、ガラス転移温度が-55℃~-20℃であり、-50~-25℃であることが好ましく、-50~-30℃であることがより好ましい。ガラス転移温度は示差走査熱量計により測定することができる。具体的な測定方法は後述の通りである。
【0016】
ポリカーボネートポリオール化合物(Aa1)は、1種以上のポリオール成分と、炭酸エステルやホスゲンとを反応させることにより得られる。安全性や試薬の取扱等の観点から製造が容易であること、末端塩素化物の副生成がない点から、1種以上のポリオールモノマーと、炭酸エステルとを反応させて得られるポリカーボネートポリオールが好ましい。
【0017】
ポリカーボネートポリオール化合物(Aa1)のポリオール成分としては、公知のものを使用することができる。例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等の直鎖状脂肪族ジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の分岐鎖状脂肪族ジオールといった脂肪族ポリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上の多価アルコール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘプタンジオール、2,5‐ビス(ヒドロキシメチル)-1,4-ジオキサン、2,7-ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、1,4‐ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン等の主鎖に脂環式構造を有するジオール;1,4-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,2-ベンゼンジメタノール、4,4’-ナフタレンジメタノール、3,4’-ナフタレンジメタノール等の芳香族ジオール;6-ヒドロキシカプロン酸とヘキサンジオールとのポリエステルポリオール等のヒドロキシカルボン酸とジオールとのポリエステルポリオール;アジピン酸とヘキサンジオールとのポリエステルポリオール等のジカルボン酸とジオールとのポリエステルポリオール;ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールやポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールが挙げられ、脂環式ポリオール及び/又は脂肪族ポリオールが好ましく、脂環構造を含有するポリオール(例えば、脂環式ポリオール又は脂環式ポリオールと脂肪族ポリオールの組み合わせ)、及び/又は炭素数4以下のジオールで構成されるポリオールがより好ましく、シクロヘキサン環を有するポリオール及び/又は2-メチル-1,3-ペンタンジオールがさらに好ましい。
【0018】
ポリカーボネートポリオール化合物(Aa1)のポリオール成分は、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0019】
炭酸エステルとしては、特に制限されないが、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の脂肪族炭酸エステル;ジフェニルカーボネート等の芳香族炭酸エステル;エチレンカーボネート等の環状炭酸エステル等が挙げられる。その他に、ポリカーボネートポリオールを生成することができるホスゲン等も使用できる。中でも、ポリカーボネートポリオール化合物(Aa1)の製造のしやすさから、脂肪族炭酸エステルが好ましく、ジメチルカーボネートが特に好ましい。
【0020】
ポリカーボネートポリオール化合物(Aa1)は、その分子中に、ポリカーボネートポリオールの特性を損なわない範囲で、1分子中の平均のカーボネート結合の数未満の数のエーテル結合やエステル結合を含有していてもよい。
【0021】
ポリカーボネートポリオール化合物(Aa1)は、数平均分子量(Mn)が400~5,000であることが好ましい。Mnが400以上であると、ソフトセグメントとしての性能が良好で、塗膜を形成した場合に割れが発生し難い。Mnが5,000以下であると、ポリカーボネートポリオール化合物(Aa)とイソシアネート化合物(Ab)との反応性が低下することなく、ウレタンプレポリマーの製造工程に時間がかかったり、反応が充分に進行しないという問題や、ポリカーボネートポリオールの粘度が高くなり、取り扱いが困難になるという問題が生じない。ポリカーボネートポリオール化合物(Aa1)のより好ましいMnは、500~3,500であり、特に好ましくは600~2,500である。なお、本発明において、Mnは、水酸基価及び1H-NMR若しくはアルカリ加水分解後のガスクロマトグラフィーによる組成物の定量値から算出した値である。
【0022】
ポリカーボネートポリオール化合物(Aa1)の水酸基価は基材密着性及び破断エネルギーの観点から、20~300mgKOH/gであることが好ましく、30~230mgKOH/gであることがより好ましく、45~200mgKOH/gであることがさらに好ましい。水酸基価は、JIS K 1557のB法に準拠して測定される。
【0023】
ポリオール成分及び炭酸エステルからポリカーボネートポリオール化合物(Aa1)を製造する方法としては、例えば、反応器中に炭酸エステルと、この炭酸エステルのモル数に対して過剰のモル数のポリオールとを加え、温度160~200℃、圧力50mmHg程度で5~6時間反応させた後、更に数mmHg以下の圧力において200~220℃で数時間反応させる方法が挙げられる。上記反応においては副生するアルコールを系外に抜き出しながら反応させることが好ましい。その際、炭酸エステルが副生するアルコールと共沸することにより系外へ抜け出る場合には、過剰量の炭酸エステルを加えてもよい。また、上記反応において、チタニウムテトラブトキシド等の触媒を使用してもよい。
【0024】
<その他のポリオール化合物(Aa2)>
ポリオール化合物(Aa)は上記ガラス転移温度が-55~-20℃であるポリカーボネートポリオール化合物(Aa1)及び後述する酸性基含有ポリオール(Ac)以外のその他のポリオール化合物(Aa2)を含有していてもよい。このような、その他のポリオール化合物(Aa2)は、ポリオール化合物(Aa)の全量に対し、70質量%未満の量で含まれていることが好ましく、60質量%未満の量で含まれていることがより好ましく、50質量%未満の量で含まれていることがさらに好ましく、40質量%未満の量で含まれていることが特に好ましい。水性ポリウレタン樹脂に求める物性に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、その他のポリオール化合物(Aa2)の種類、量はともに当業者であれば適宜調整することができるが、その他のポリオール化合物(Aa2)は、ポリオール化合物(Aa)中に含まれていなくてもよい。
【0025】
その他のポリオール化合物(Aa2)としては、公知のものを使用することができる。例えば、ポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシド、エチレンオキシドとブチレンオキシドとのランダム共重合体やブロック共重合体等のポリエーテルポリオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール等の短鎖脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、ハイドロキノン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン及びそれらのアルキレンオキシド付加体等のジオール、ガラス転移温度が-55℃未満、又は-20℃を超えるポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0026】
上記のようなその他のポリオール化合物(Aa2)は、市販のものを用いてもよいし、個別に調製したものを用いてもよい。例えば、適切な原料を選択し、(Aa1)に関して説明した方法により、ガラス転移温度が-55℃未満又は-20℃を超えるポリカーボネートポリオールを調製することもできる。
【0027】
<ポリイソシアネート化合物(Ab)>
ポリイソシアネート化合物(Ab)としては、公知のものを使用することができる。例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-ジクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート化合物が挙げられる。ポリイソシアネート化合物(Ab)は、その構造の一部又は全部がイソシアヌレート化、カルボジイミド化、又はビウレット化など誘導化されていてもよい。
【0028】
上記のポリイソシアネート化合物(Ab)の中でも、基材密着性の観点から、脂環式ポリイソシアネート化合物が好ましく、硬度と破断エネルギーの観点から、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)がより好ましい。
【0029】
ポリイソシアネート化合物(Ab)は、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0030】
ポリイソシアネート化合物(Ab)の使用量は、ポリイソシアネート化合物(Ab)のイソシアネート基と全ポリオール(ポリオール化合物(Aa)と、酸性基含有ポリオール(Ac)の合計)の水酸基との比(イソシアネート基/水酸基(モル比))が、1.7~2.5であることが好ましく、1.75~2.3であることが特に好ましい。
【0031】
<酸性基含有ポリオール(Ac)>
酸性基含有ポリオール(Ac)とは、一分子中に2個以上の水酸基と、1個以上の酸性基を含有するものである。酸性基含有ポリオール(Ac)は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0032】
酸性基含有ポリオール(Ac)としては、公知のものを使用することができる。例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸等のジメチロールアルカン酸;N,N-ビスヒドロキシエチルグリシン、N,N-ビスヒドロキシエチルアラニン、3,4-ジヒドロキシブタンスルホン酸、3,6-ジヒドロキシ-2-トルエンスルホン酸等が挙げられる。中でも入手の容易さの観点から、2個のメチロール基を含む炭素数4~12のジメチルロールアルカン酸が好ましく、ジメチロールアルカン酸の中でも、2,2-ジメチロールプロピオン酸がより好ましい。
【0033】
水性ポリウレタン樹脂分散体において、ポリオール化合物(Aa)と、酸性基含有ポリオール(Ac)の合計の水酸基当量数は、50~4000であることが好ましい。水酸基当量数がこの範囲であれば、得られたポリウレタン樹脂を含む水性ポリウレタン樹脂分散体の製造が容易である。得られる水性ポリウレタン樹脂分散体から得られる塗膜の破断エネルギーの観点から、水酸基当量数は、好ましくは100~2500、より好ましくは120~1500、特に好ましくは150~1000である。
【0034】
水酸基当量数は、以下の式(1)及び(2)で算出することができる。
各ポリオール成分の水酸基当量数=各ポリオール成分の分子量/各ポリオール成分の水酸基の数・・・(1)
ポリオール成分の合計の水酸基当量数=M/ポリオール成分の合計モル数・・・(2)
式(2)において、Mは、[〔ポリカーボネートポリオール成分の水酸基当量数×ポリカーボネートポリオール成分のモル数〕+〔酸性基含有ポリオールの水酸基当量数×酸性基含有ポリオールのモル数〕+〔その他のポリオールの水酸基当量数×その他のポリオールのモル数〕]を示す。
【0035】
<中和剤(Ad)>
中和剤(Ad)は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0036】
中和剤(Ad)としては、公知のものを使用することができる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の不揮発性塩基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン化合物;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の二級アミン化合物;エチレンジアミン、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン等の一級アミン化合物;アンモニア等を用いることができる。
【0037】
上記中和剤(Ad)としては、コーティング材料組成物中の水系媒体を乾燥する際の温度(通常は50~180℃)で揮発してポリウレタン皮膜から消失し、より一層優れた接着強度が得られる点から、その沸点が200℃以下であることが好ましく、-50~180℃の範囲であることがより好ましい。100℃以下の低温下で数秒間~1時間の短時間に乾燥塗膜を得る際には、その沸点が130℃以下であることが好ましく、110℃以下であることがより好ましい。
【0038】
上記中和剤(Ad)を用いる場合の使用量としては、上記水性ポリウレタン樹脂分散体に含まれる上記酸性基のモル数に対して0.8~1.2倍の範囲であることが好ましい。前記中和剤(Ad)の使用量が上記水性ポリウレタン樹脂分散体に含まれる上記酸性基のモル数に対して0.8倍以上であると、得られる分散体の安定性が高く、1.2倍以下であると、100℃以下の低温乾燥下で数秒間~1時間の短時間で基材密着性と破断エネルギーが共に高い塗膜を得ることができる。
【0039】
<鎖延長剤(Ae)>
鎖延長剤(Ae)は、ポリウレタンプレポリマーのイソシアナト基と反応性を有する化合物である。鎖延長剤(Ae)は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0040】
鎖延長剤(Ae)としては、公知のものを使用することができる。例えば、エチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,4-ヘキサメチレンジアミン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、キシリレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン等のアミン化合物;水等が挙げられ、アミン化合物が好ましい。
【0041】
上記鎖延長剤(Ae)のうち、数平均分子量(Mn)が300以下のジアミンが好ましい。Mnが300以下であることは、ポリウレタン樹脂の凝集力を高くするために必要であり、ジアミンを使用することは、ポリウレタン樹脂のMnを高くし、耐久性を向上させるためのみならず、破断エネルギーの観点からも好ましい。
【0042】
上記鎖延長剤(Ae)の添加量は、得られるウレタンポリマー中の鎖延長起点となるイソシアナト基の当量以下であることが好ましい。イソシアナト基の当量を超えて鎖延長剤(Ae)を添加した場合には、鎖延長されたウレタンポリマーの分子量が低下して凝集力が低下することがあり、破断エネルギーが低くなる可能性がある。
【0043】
また、鎖延長剤(Ae)としては、上記例示のほか、イソシアナト基と反応性を有する官能基を3つ以上有する化合物を併用してもよい。そのような化合物を併用することで、N(C=O)NH基の含有量をより制御しやすくなる。その結果、塗膜とする際の乾燥速度をより制御しやすくなる。そのような化合物の例としては、1分子中にアミノ基及び/又はイミノ基を合計で3つ以上有するポリアミン化合物が挙げられ、ジエチレントリアミンのような化合物を用いることができる。
【0044】
<ポリウレタン樹脂>
本発明におけるポリウレタン樹脂は、ポリオール化合物(Aa)、ポリイソシアネート化合物(Ab)、酸性基含有ポリオール(Ac)、中和剤(Ad)及び鎖延長剤(Ae)由来の構成単位を有する。本発明のポリウレタン樹脂は、好ましくは、以下のような特徴を有するものである。
【0045】
<N(C=O)NH基濃度>
本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体に含まれるN(C=O)NH基濃度が固形分基準で7.5質量%以上13質量%以下である。N(C=O)NH基は、ポリウレタンの調製過程で鎖延長剤とイソシアナト基との反応により生じる。N(C=O)NH基の濃度が上記範囲であると、水性ポリウレタン樹脂分散体を低温で硬化させた場合でも基材への密着性に優れる被膜が得られる。
【0046】
水性ポリウレタン樹脂分散体に含まれるN(C=O)NH基濃度は、ポリオール化合物(Aa)及び酸性基含有ポリオール(Ac)の有する水酸基濃度、ポリイソシアネート化合物(Ab)の有するイソシアナト基濃度及び鎖延長剤(Ae)の有する水酸基濃度及び/又はアミノ基濃度によって算出され、基材への密着性の観点から、7.5~13質量%であることが必須であり、7.8~12質量%であることが好ましく、8~11.5質量%であることがより好ましく、8.2~11質量%であることがさらに好ましい。N(C=O)NH基濃度の計算方法は、実施例において説明するとおりである。
【0047】
<ハードセグメント>
一般にポリウレタンの分子には、ハードセグメントと呼ばれる部分とソフトセグメントと呼ばれる部分が存在する。ハードセグメント同士は凝集してポリウレタン樹脂の硬さの向上に影響し、ソフトセグメントは変形に対する自由度が高いことから、柔軟性や密着性の向上に影響する。
ポリウレタンにおけるソフトセグメントとは、主に高分子量ポリオールに由来する部分であり、ハードセグメントとは、水素結合による凝集を起こし得る結晶性の部分である。一般的なポリウレタンにおいては、ジイソシアネートと短鎖ジオールの連鎖からなる部分がハードセグメントである。このセグメントはウレタン結合を高密度に含むため、非常に水素結合が強く、多数の分子のハードセグメントが凝集することで、ハードドメインが形成される。具体的にはハードセグメントは、ウレタン基、ウレア基、並びにウレタン基又はウレア基同士若しくはウレタン基とウレア基とを連結する分子量250未満の構造からなる。当該「分子量250未満の構造」は、ポリイソシアネート化合物(Ab)、酸性基含有ポリオール(Ac)、及び鎖延長剤(Ae)から選ばれる少なくとも一種に由来することが好ましい。「分子量250未満の構造」は、例えば、ポリイソシアネートをOCN-R-NCOと表したときのR部分に相当する。この部分の分子量が250未満であれば、当該部分の分子としての長さが十分に短く、ハードセグメントが凝集した島と言われる部分が十分に形成される。ウレタン基又はウレア基同士若しくはウレタン基とウレア基とを連結する分子量250未満の構造とは、具体的には、ウレタン基及び/又はウレア基の間の分子量250未満で構成されるポリイソシアネート化合物(Ab)、ポリオール化合物(Aa)、酸性基含有ポリオール(Ac)及び鎖延長剤(Ae)であるポリアミン化合物の中から選ばれる少なくとも一つの化合物由来の構造からイソシアナト基、水酸基、アミノ基、イミノ基を除いた構造である。
【0048】
水性ポリウレタン樹脂分散体中のハードセグメントの含有量は、固形分基準で50~70質量%であることが好ましく、52~68質量%であることがより好ましく、55~65質量%であることがさらに好ましい。ハードセグメントの含有量の計算方法は、実施例において説明するとおりである。
【0049】
<脂環構造>
水性ポリウレタン樹脂分散体に含まれるポリウレタン樹脂には、被膜としたときの硬さの観点から、脂環構造が含まれていることが好ましい。脂環構造は、脂肪族の環構造であればその環員数に制限はない。原料としての入手が容易であることから、6員環(シクロヘキシレン基)が含まれるように設計することが好ましい。脂環構造は、ポリウレタンの原料の何れに由来していてもよいが、ポリオール化合物(Aa)及び/又はポリイソシアネート化合物(Ab)に由来しているものであることが好ましい。脂環構造を有する構成単位の例としては、ポリオール化合物(Aa)として、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の主鎖に脂環式構造を有するジオール又はこれから得られるポリカーボネートポリオール、ポリイソシアネート化合物(Ab)として水素添加MDI等が挙げられる。脂環構造の含有割合は、これら各構成単位に含まれる脂環構造全体に基づいて算出される。
【0050】
水性ポリウレタン樹脂分散体中に含まれる脂環構造の含有割合は、固形分基準で20~40質量%であることが好ましく、25~38質量%であることがより好ましい。脂環構造の含有割合が20質量%未満であると、基材密着性が低くなり、脂環構造の含有割合が40質量%を超えると、破断エネルギーが低くなる傾向がある。脂環構造の含有割合の計算方法は、実施例において説明するとおりである。
【0051】
<水性ポリウレタン樹脂分散体>
水性ポリウレタン樹脂分散体は、ポリウレタン樹脂及び水系媒体を含み、ポリウレタン樹脂が水系媒体中に分散している。
水系媒体としては、例えば、上水、イオン交換水、蒸留水、超純水などの水や、水と親水性有機溶媒との混合媒体などが挙げられる。
親水性有機溶媒としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトンなどのケトン類;N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドンなどのピロリドン類;ジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルコール類;KJケミカル社製「KJCMPA(R)-100」に代表されるβ-アルコキシプロピオンアミドなどのアミド類;2-(ジメチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール(DMAP)などの水酸基含有三級アミンが挙げられる。
【0052】
水系媒体中の親水性有機溶媒の量は、0~20質量%であることが好ましく、0~15質量%であることがより好ましく、0~10質量%であることがさらに好ましい。
【0053】
水性ポリウレタン樹脂分散体のpHは、5.0~10.0であることが好ましく、6.0~9.5であることがより好ましく、6.5~9.0であることがさらに好ましい。
【0054】
水性ポリウレタン樹脂分散体の数平均分子量(Mn)は、低温乾燥塗膜の破断エネルギーの観点から、50,000以上であることが好ましく、100,000以上であることがより好ましい。数平均分子量を50,000以上とすることで、組成物を100℃以下の温度で乾燥して得られる塗膜がより優れた破断エネルギーを示す。合成することができ、水分散体として取り扱いが可能な粘度であれば、上限は特に制限されない。数平均分子量の上限は通常は2,000,000以下であり、1,000,000以下であることが好ましい。
【0055】
水性分散体中におけるポリウレタン樹脂の割合は、好ましくは5~60質量%、より好ましくは20~50質量%である。
【0056】
前記水性ポリウレタン樹脂分散体の酸価は、特に制限されないが、固形分基準で18~40mgKOH/gであることが好ましく、20~35mgKOH/gであることがより好ましい。前記水性ポリウレタン樹脂分散体の酸価が固形分基準で40mgKOH/gより大きくなると、水系媒体中への分散性が悪くなる傾向がある。酸価が固形分基準で18mgKOH/gより小さくなると、基材密着性が低下する傾向にある。酸価は、JIS K 1557の指示薬滴定法に準拠して測定することができる。測定においては、酸性基を中和するために使用した中和剤を取り除いて測定することとする。例えば、有機アミン類を中和剤として用いた場合には、水性ポリウレタン樹脂分散体をガラス板上に塗布し、温度60℃、20mmHgの減圧下で24時間乾燥して得られた塗膜をN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させて、JIS K 1557の指示薬滴定法に準拠して酸価を測定することができる。
【0057】
<水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法>
国際公開第2016/039396号公報等に記載の公知の方法により、水性ポリウレタン樹脂分散体を製造することができる。例えば、以下のような製造方法が挙げられる。
第1の製造方法は、原料を全て混合し、反応させて、水系媒体中に分散させることにより水性ポリウレタン樹脂分散体を得る方法である。
第2の製造方法は、全ポリオール成分とポリイソシアネートとを反応させて、プレポリマーを製造し、前記プレポリマーの酸性基を中和した後、水系媒体中に分散させ、鎖延長剤を反応させることにより水性ポリウレタン樹脂分散体を得る方法である。
水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法としては、分子量の制御が行いやすいため、上記の第2の製造方法が好ましい。
【0058】
また、ブロックイソシアネート構造を有する場合は例えば、以下のような製造方法により導入することができる。
第1の製造方法は、ウレタン化触媒存在下又は不存在下で、ブロック化剤(Bg)以外の原料を全て混合し、反応させて、ウレタン化反応を行い、最後にブロック化触媒存在下又は不存在下でブロック化剤(Bg)を反応させてブロック化反応を行い、末端イソシアナト基の少なくとも一部がブロック化されたポリウレタンプレポリマーを合成する方法である。
第2の製造方法は、ブロック化触媒存在下又は不存在下で、イソシアネート化合物(Bb)と、ブロック化剤(Bg)とを反応させてブロック化反応を行い、イソシアナト基の一部をブロック化したポリイソシアネート化合物を合成し、ウレタン化触媒存在下又は不存在下で、得られたブロック化したポリイソシアネート化合物と、(Bb)及び(Bg)以外の原料とを反応させてウレタン化反応を行って、ポリウレタンプレポリマーを合成する方法である。
これらの製造方法における水性分散体の製造方法は、上述の通りである。
【0059】
特に、本発明においては、以下の(I)~(IV)及び場合により(V)を含む方法により耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体を製造することができる。
(I)ガラス転移温度が-50℃~-20℃のポリカーボネートポリオール化合物を含むポリオール化合物(Aa)、ポリイソシアネート化合物(Ab)、酸性基含有ポリオール(Ac)を、ポリオール化合物(Aa)と酸性基含有ポリオール(Ac)とが有する水酸基と、ポリイソシアネート化合物(Ac)の有するイソシアナト基のモル比率が、NCO/OH=1.70~2.50となるように、有機溶剤の存在下、又は非存在下で反応させてポリウレタンプレポリマーを得る工程、
(II)前記ポリウレタンプレポリマーの酸性基を中和剤(Ad)で中和する工程、
(III)前記ポリウレタンプレポリマーを水系媒体に分散させる工程、
(IV)N(C=O)NH濃度が7.5~13質量%になるように鎖延長剤(Ae)の種類及び注入量を調整し、前記ポリウレタンプレポリマーを鎖延長剤(Ae)で高分子量化する工程、及び場合により、
(V)有機溶剤を除去する工程。
【0060】
<コーティング材料組成物の製造>
コーティング材料組成物は、電着塗面、鋼板、木材、プラスチック基材にスプレー、ハケ、アプリケーター、バーコーターなどで塗布して塗膜を形成する材料と定義される。
本発明のコーティング材料組成物は、前記水性ポリウレタン樹脂分散体を必須成分として含有するが、必要に応じてその他の樹脂及び/又はその他の添加剤を含有してもよい。以下、本明細書において単に「コーティング材料組成物」というときは、その他の樹脂、添加剤等を含有させた組成物のみならず、前記水性ポリウレタン樹脂分散体からなる組成物も包含する。
【0061】
前記その他の樹脂としては、エマルジョンの状態のアクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ナイロン樹脂が挙げられる。中でも、アクリルエマルジョン、ポリオレフィンエマルジョン、ポリエステルエマルジョンが好ましく、任意成分として、これらの中から選ばれる少なくとも1種を混合して得られる耐破壊特性材料用コーティング材料組成物が好ましい形態である。
【0062】
前記その他の添加剤としては、例えば、硬化剤、架橋剤、表面調整剤、乳化剤、増粘剤、ウレタン化触媒、充填剤、発泡剤、顔料、染料、撥油剤、中空発泡体、難燃剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0063】
表面調整剤としては、一般に高分子量化に伴う粘性の変化、表面張力の変化、泡の発生に起因して生じる塗膜の欠陥を解消し得る性能を有する、表面調整剤、レベリング剤、濡れ剤、消泡剤等と称されるものであれば、特に制限なく使用することができ、例えば、アクリル系、ビニル系、シリコーン系、フッ素系、セルロース系、天然ワックス系、水溶性有機溶媒等の各種表面調整剤、レベリング剤、濡れ剤、消泡剤等の他、界面活性剤も好ましく挙げられ、中でも濡れ剤が好ましい。
【0064】
本発明のコーティング材料組成物の製造方法は、特に制限されないが、公知の製造方法を用いることができる。例えば、前記水性ポリウレタン樹脂分散体、任意成分として、上述したその他樹脂及び各種添加剤を攪拌混合することにより製造される。
【0065】
本発明のコーティング材料組成物において、前記水性ポリウレタン樹脂分散体とその他樹脂との混合割合は、基材密着性及び破断エネルギーの観点から、100/0~10/90(固形分質量比)が好ましく、100/0~15/85がより好ましく、90/10~20/80が更に好ましく、80/20~30/70が特に好ましい。
【0066】
<硬化方法>
本発明の耐破壊特性材料用コーティング材料組成物は、20℃以上、かつ好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下の温度に加熱することにより、硬化させることができる。
具体的には、前述の耐破壊特性材料用コーティング材料組成物を電着塗面、鋼板、木材、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂などの各種プラスチック基材に、スプレー、ハケ、アプリケーター、バーコーター等を用いて塗布し、100℃以下、好ましくは80℃のオーブン、加熱槽等に1~120分間、好ましくは、1~60分間、より好ましくは1~45分間保持する方法により硬化させることができる。塗膜の乾燥膜厚は、0.5~200μmに調整することが好ましく、1~100μmに調整することがより好ましく、5~50μmに調整することがさらに好ましく、10~40μmに調整することが特に好ましい。複層塗膜の中のプライマー、ベースコート等として用いる場合には、前述の各種基材に塗布後、例えば、室温~80℃で1~30分間、好ましくは、1~10分間、より好ましくは、2~6分間保持して、任意成分として、さらにもう1種のベースコートを塗布して、同様の乾燥温度、乾燥時間で乾燥させた後に、トップコート(用途によっては、クリアコートという)を塗布して、100℃以下、好ましくは、80℃以下で10~120分間、好ましくは、20~90分間、より好ましくは、30~60分間加熱硬化させることができる。
本発明の一つの態様は、前記耐破壊特性材料用コーティング組成物を20℃~100℃で乾燥させて得られる塗膜である。
【0067】
<塗膜の物性>
本発明のコーティング材料組成物から得られる塗膜の、実施例記載の方法で測定した破断エネルギーは100MPa以上が好ましく、110MPa以上がより好ましく、120MPa以上がさらに好ましい。
本発明のコーティング材料組成物から得られる塗膜の、実施例記載の方法で測定した電着塗面との密着性は100/100(1)以上が好ましく、100/100(4)がより好ましい。ここで、本発明において塗膜の密着性の評価は「n/100(m)」のように記載する。nは下記試験条件で少なくとも1のマス目が剥離したときに残っていたマス目の数、mは剥離が生じたときの試験回数を意味する。ただしmの最大値は4とし、4回繰り返し試験を行っても剥離が生じなかった場合は100/100(4)と表記する。密着性試験の条件は、実施例の項で詳細に説明している。
本発明のコーティング材料組成物から得られる塗膜の、実施例記載の方法で測定した鉛筆硬度は、2B以上あることが好ましく、B以上であることがより好ましい。
【0068】
<耐破壊特性材料の用途>
本発明において耐破壊特性材料とは、基材の保護剤として用いられ、かつそれ自身も衝突、石跳ね、落下などの物理的衝撃に対して破壊されにくい特性を有する材料である。このため、耐破壊特性材料は、塗膜としたときの基材への密着性及び破断エネルギーが共に高い材料が好ましい。本発明の耐破壊特性材料の用途として具体的には、プライマー材料、ベースコート材料等が挙げられる。
本発明の破壊特性材料用組成物は、フロアコーティング、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂などの各種プラスチック基材又はゴムへのコート、鋼板処理剤、自動車、トラック、電車などの車両のような、金属の外装用プライマー(ベースコート材料)などに広範囲に用いることができ有用であり、特に、金属の外装用プライマー(ベースコート材料)に用いられる。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、物性測定は以下の通り行った。
【0070】
(1)ポリカーボネートポリオールのガラス転移温度(Tg):示差走査熱量計(DSC)にて、10℃/分で-100℃まで降温させた後で、10℃/分で昇温させ、転移が始まった温度を測定した。
(2)N(C=O)NH濃度(%):
(i)水に分散する前のポリウレタンプレポリマーの残存イソシアナト基のモル数が、鎖延長剤ポリアミンのアミノ基及び/又はイミノ基のモル数より多い場合:
「N(C=O)NH濃度(%)=〔(ポリアミンのアミノ基及び/又はイミノ基のモル数)+[(ポリイソシアネート化合物のイソシアナト基のモル数)-(ポリオール化合物及び酸性基含有ポリオールの全水酸基のモル数)-(ポリアミンのアミノ基及び/又はイミノ基のモル数)]/2〕×57.03×100」として、算出した。イソシアナト基が加水分解してできるN(C=O)NH濃度を加算している。
(ii)水に分散する前のポリウレタンプレポリマーの残存イソシアナト基のモル数が、鎖延長剤ポリアミンのアミノ基及び/又はイミノ基のモル数より少ない場合:
「N(C=O)NH濃度(%)=[(ポリイソシアネート化合物のイソシアナト基のモル数)-(ポリオール化合物及び酸性基含有ポリオールの全水酸基のモル数)]×57.03×100」として、算出した。全量イソシアナト基がアミノ基及び/又はイミノ基と反応してN(C=O)NH基を生成するとして算出した。
(3)ハードセグメント含量:水性ポリウレタン樹脂分散体に含まれる分子量300未満のポリオール、ポリイソシアネート、ポリアミン、酸性基含有ポリオールの合計質量を固形分質量で割ったときの割合(%)を記した。
(4)脂環構造の含有割合:水性ポリウレタン樹脂分散体の各原料の仕込み割合から算出した脂環構造の質量分率を表記した。質量分率は水性ポリウレタン樹脂分散体の固形分を基準とする。
(5)水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したものであり、予め作成した標準ポリスチレンの検量線から求めた換算値を記した。
(6)酸価:JIS K 1557の指示薬滴定法に準拠して測定した。
【0071】
(7)鉛筆硬度は、次のようにして評価した。各水性ポリウレタン樹脂分散体に造膜助剤としてジプロピレングリコールn-ブチルエーテル(安藤パラケミー製ダワノール(登録商標)DPnB)を全体の2質量%になるように添加して混合し、を日本テストパネル製自動車用カチオン電着塗装板上にバーコーター#18を使って均一に塗布した。次いで、室温にて16時間放置後、80℃にて45分間乾燥した。上記で得られた電着塗板とポリウレタン樹脂塗膜との積層体において、前記ポリウレタン樹脂塗膜の鉛筆硬度をJIS K 5600-5-4に準拠した方法で測定した。
(8)電着層表面への密着性は、次のようにして評価した。水性ポリウレタン樹脂分散体に造膜助剤としてダワノール(登録商標)DPnBを全体の2質量%になるように添加して混合し、自動車鋼板カチオン電着塗板(日本テストパネル社製)上にバーコーター#18で塗布し、80℃で45分間加熱乾燥し、得られた塗膜を用いて碁盤目剥離試験を行った。塗膜に10mm×10mmの面積に縦横1mm間隔で切り目を入れ、粘着テープを貼った後、剥がしたときに電着層表面に残っているマスの数を目視で数えて評価した。これを4回繰り返した。1回目の剥離試験で100個中15個が残っていた場合を15/100(1)と記載し、2回目まで全く剥離せず、3回目で100個中85個残っていた場合を85/100(3)と記載した。全く剥離しなかった場合は100/100(4)と表記した。
(9)ポリウレタン樹脂フィルムの引張特性は、以下のようにして評価した。水性ポリウレタン樹脂分散体に造膜助剤としてダワノール(登録商標)DPnBを全体の2質量%になるように添加して混合し、PETフィルム状に乾燥膜厚が50μmとなるように塗布し、80℃で2時間乾燥させてポリウレタン樹脂フィルムを作成した。ポリウレタン樹脂フィルムの弾性率、引張強度、破断点伸度は、JIS K 7311に準拠する方法で測定した。なお、測定条件は、測定温度23℃、湿度50%、引張速度100mm/分で行った。
(10)破断エネルギーは、伸度-応力曲線の伸度ゼロから破断点伸度までの応力を積分して求めた。
【0072】
[実施例1]
<耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体(1)の製造>
ETERNACOLL(登録商標) UM90(1/3)(宇部興産製;数平均分子量894;水酸基価125.5mgKOH/g;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール(モル比で1:3)と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、180g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(30.1g)と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(206g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMM、75.3g)中、ジブチル錫ジラウリレート(0.3g)存在下、窒素雰囲気下で、80~95℃で5時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(21.9g)を添加・混合したもののうち、355gを、強撹拌のもと水(618g)の中に加えた。ついで、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(73.9g)を加えて、耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体(1)を得た。
【0073】
[実施例2]
<耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体(2)の製造>
ETERNACOLL(登録商標) UM90(1/3)(宇部興産製;数平均分子量873;水酸基価128.5mgKOH/g;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール(モル比で1:3)と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、180g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(28.9g)と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(203g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMM、73.4g)中、ジブチル錫ジラウリレート(0.3g)存在下、窒素雰囲気下で、80~95℃で5時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(21.9g)を添加・混合したもののうち、354gを、強撹拌のもと水(615g)の中に加えた。ついで、35質量%の2-アミノエチルエタノールアミン水溶液(16.7g)、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(59.9g)を加えて、耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体(2)を得た。
【0074】
[実施例3]
<耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体(3)の製造>
ETERNACOLL(登録商標) UP-100(宇部興産製;数平均分子量974;水酸基価115.2mgKOH/g;2-メチル-1,3-プロパンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、180g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(28.1g)と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(190g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMM、72.6g)中、ジブチル錫ジラウリレート(0.3g)存在下、窒素雰囲気下で、80~95℃で5時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(21.1g)を添加・混合したもののうち、343gを、強撹拌のもと水(595g)の中に加えた。ついで、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(72.9g)を加えて、耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体(3)を得た。
【0075】
[実施例4]
<耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体(4)の製造>
ETERNACOLL(登録商標) UM90(1/1)(宇部興産製;数平均分子量875;水酸基価128.2mgKOH/g;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール(モル比で1:1)と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、93.3g)と、PTMG-1000(三菱化学製;数平均分子量970;水酸基価115.7mgKOH/g;ポリテトラメチレングリコール、76.7g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(27.2g)と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(187g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMM、69.4g)中、ジブチル錫ジラウリレート(0.3g)存在下、窒素雰囲気下で、80~95℃で5時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(20.5g)を添加・混合したもののうち、363gを、強撹拌のもと水(630g)の中に加えた。ついで、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(75.0g)を加えて、耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体(4)を得た。
【0076】
[実施例5]
<耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体(5)の製造>
ETERNACOLL(登録商標) UM90(1/3)(宇部興産製;数平均分子量873;水酸基価128.5mgKOH/g;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール(モル比で1:3)と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、155g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(28.0g)と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(206g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMM、71.7g)中、ジブチル錫ジラウリレート(0.3g)存在下、窒素雰囲気下で、80~95℃で5時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(21.0g)を添加・混合したもののうち、360gを、強撹拌のもと水(624g)の中に加えた。ついで、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(94.7g)を加えて、耐破壊特性材料用の水性ポリウレタン樹脂分散体(5)を得た。
【0077】
[比較例1]
<水性ポリウレタン樹脂分散体(6)の製造>
ETERNACOLL(登録商標) UH-200(宇部興産製;数平均分子量1958;水酸基価57.3mgKOH/g;1,6-ヘキサンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1850g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(129g)と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(841g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMM、932g)中、ジブチル錫ジラウリレート(0.9g)存在下、窒素雰囲気下で、80~95℃で5時間加熱した。次いで、3,5-ジメチルピラゾール(DMPZ、55.8g)を加えて1.5時間同温度で加熱を続けた。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(97.4g)を添加・混合したもののうち、3500gを、強撹拌のもと水(4950g)の中に加えた。ついで、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(270g)を加えて、水性ポリウレタン樹脂分散体(6)を得た。
【0078】
[比較例2]
<水性ポリウレタン樹脂分散体(7)の製造>
ETERNACOLL(登録商標) UH-100(宇部興産製;数平均分子量999;水酸基価112.3mgKOH/g;1,6-ヘキサンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、170g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(29.1g)と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(211g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMM、76.4g)中、ジブチル錫ジラウリレート(0.3g)存在下、窒素雰囲気下で、80~95℃で5時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(21.9g)を添加・混合したもののうち、353gを、強撹拌のもと水(613g)の中に加えた。ついで、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(88.4g)を加えて、水性ポリウレタン樹脂分散体(7)を得た。
【0079】
[比較例3]
<水性ポリウレタン樹脂分散体(8)の製造>
ETERNACOLL(登録商標) UM90(3/1)(宇部興産製;数平均分子量869;水酸基価129.1mgKOH/g;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール(モル比で3:1)と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、180g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(26.9g)と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(178g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMM、131g)中、ジブチル錫ジラウリレート(0.3g)存在下、窒素雰囲気下で、80~95℃で5時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(20.2g)を添加・混合したもののうち、398gを、強撹拌のもと水(562g)の中に加えた。ついで、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(61.1g)を加えて、水性ポリウレタン樹脂分散体(8)を得た。
【0080】
[比較例4]
<水性ポリウレタン樹脂分散体(9)の製造>
ETERNACOLL(登録商標) UM90(3/1)(宇部興産製;数平均分子量901;水酸基価124.5mgKOH/g;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール(モル比で3:1)と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、230g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(31.9g)と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(203g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMM、165g)中、ジブチル錫ジラウリレート(0.4g)存在下、窒素雰囲気下で、80~95℃で5時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(24.0g)を添加・混合したもののうち、423gを、強撹拌のもと水(589g)の中に加えた。ついで、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(55.8g)を加えて、水性ポリウレタン樹脂分散体(9)を得た。
【0081】
[比較例5]
<水性ポリウレタン樹脂分散体(10)の製造>
ETERNACOLL(登録商標) UM90(3/1)(宇部興産製;数平均分子量901;水酸基価124.5mgKOH/g;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール(モル比で3:1)と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、260g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(28.5g)と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(219g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMM、181g)中、ジブチル錫ジラウリレート(0.4g)存在下、窒素雰囲気下で、80~95℃で5時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(21.5g)を添加・混合したもののうち、437gを、強撹拌のもと水(614g)の中に加えた。ついで、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(59.6g)を加えて、水性ポリウレタン樹脂分散体(10)を得た。
【0082】
[比較例6]
<水性ポリウレタン樹脂分散体(11)の製造>
ETERNACOLL(登録商標) UM90(1/3)(宇部興産製;数平均分子量873;水酸基価128.5mgKOH/g;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール(モル比で1:3)と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、180g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(26.8g)と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(177g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMM、136g)中、ジブチル錫ジラウリレート(0.3g)存在下、窒素雰囲気下で、80~95℃で5時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(20.2g)を添加・混合したもののうち、429gを、強撹拌のもと水(596g)の中に加えた。ついで、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(65.8g)を加えて、水性ポリウレタン樹脂分散体(11)を得た。
【0083】
[比較例7]
<水性ポリウレタン樹脂分散体(12)の製造>
ETERNACOLL(登録商標) UM90(3/1)(宇部興産製;数平均分子量909;水酸基価123.4mgKOH/g;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール(モル比で3:1)と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、160g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(25.9g)と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(185g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMM、134g)中、ジブチル錫ジラウリレート(0.3g)存在下、窒素雰囲気下で、80~95℃で5時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(19.5g)を添加・混合したもののうち、432gを、強撹拌のもと水(597g)の中に加えた。ついで、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(84.3g)を加えて、水性ポリウレタン樹脂分散体(12)を得た。
【0084】
【0085】
【0086】
表2の実施例1~5に示されるように、本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体を、塗布・加熱処理して得られる塗膜は、高い鉛筆硬度、電着塗板への高い密着性を有すると共に、高い破断エネルギーを有する。任意成分として、ポリオール化合物(Aa)のその他ポリオールにポリエーテルポリオールを使用すると、鉛筆硬度や電着塗面への密着性を維持したまま、破断エネルギーを高めることができる(実施例4参照)。
一方、ウレタン結合、ウレア結合、カーボネート結合を有し、かつブロック化されたイソシアナト基を特定量で有する水性ポリウレタン樹脂分散体は、80℃の乾燥でできる塗膜の鉛筆硬度が低く、電着塗面への密着性が低い(比較例1参照)。
ポリカーボネートポリオールのガラス転移温度が-55℃未満であると、鉛筆硬度が低く、電着塗面への密着性も低い(比較例2参照)。ポリカーボネートポリオールのガラス転移温度が-20℃を超えると、電着塗面への密着性が低い(比較例3~5及び比較例7参照)。さらに、比較例3では造膜そのものが困難であった。N(C=O)NH濃度が7.5質量%未満であると、鉛筆硬度ならびに電着塗面への密着性が低くなる(比較例6参照)。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体は、100℃以下の低温で乾燥した塗膜の基材への密着性が優れており、破断エネルギーの高い塗膜が得られることから、フロアコート、プラスチック基材又はゴムへのコート、鋼板処理剤、車両のプライマー層などの低温乾燥化による地球温暖化ガス排出抑制への貢献に期待される。