(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】運転姿勢設定用シート制御装置および該方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/02 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
B60N2/02
(21)【出願番号】P 2020066117
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】大坪 智範
(72)【発明者】
【氏名】上村 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】平田 義人
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-033320(JP,A)
【文献】特開2017-087850(JP,A)
【文献】特開2005-104456(JP,A)
【文献】特開2009-143457(JP,A)
【文献】特開2006-131187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に用いられる車両用シートと、
体型を表す体型情報と運転姿勢範囲に対応した前記車両用シートの姿勢範囲を表す姿勢範囲情報とを互いに対応付けた体型姿勢範囲対応情報を記憶する対応情報記憶部と、
前記車両用シートの姿勢を動かすシート駆動部と、
前記体型情報を入力する入力部と、
前記入力部に入力された体型情報に対応する姿勢範囲情報を、前記対応情報記憶部に記憶されている体型姿勢範囲対応情報から抽出し、前記車両用シートの姿勢が前記抽出した姿勢範囲情報で表された車両用シートの姿勢範囲内となるように
仮に設定し、目の高さを計測した後に前記車両用シートの姿勢を決定するように前記シート駆動部を制御する姿勢制御部とを備える、
運転姿勢設定用シート制御装置。
【請求項2】
前記車両用シートに着座した乗員の目の高さを計測する計測部をさらに備え、
前記姿勢制御部は、前記計測部で計測した目の高さに基づいて、前記車両用シートの姿勢範囲内における特定の車両用シートの姿勢を決定し、前記車両用シートの姿勢が前記決定した車両用シートの姿勢なるように、前記シート駆動部を制御する、
請求項1に記載の運転姿勢設定用シート制御装置。
【請求項3】
前記車両用シートの姿勢範囲は、ヒップポイントの位置範囲であり、
前記ヒップポイントの位置範囲は、前記車両用シートに着座した乗員における足首角度および膝角度に基づいて設定される、
請求項1または請求項2に記載の運転姿勢設定用シート制御装置。
【請求項4】
前記車両用シートの姿勢を動かす指示を入力する第2入力部をさらに備え、
前記姿勢制御部は、前記第2入力部に前記指示が入力された場合に、前記抽出した姿勢範囲情報で
予め定められた車両用シートの姿勢範囲内で、前記車両用シートの姿勢が前記指示に応じた前記車両用シートの姿勢となるように、前記シート駆動部を制御する、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の運転姿勢設定用シート制御装置。
【請求項5】
体型を表す体型情報を入力する入力工程と、
前記体型情報と運転姿勢範囲に対応した車両用シートの姿勢範囲を表す姿勢範囲情報とを互いに対応付けた体型姿勢範囲対応情報から、前記入力工程で入力された体型情報に対応する姿勢範囲情報を抽出する抽出工程と、
前記車両用シートの姿勢が前記抽出工程で抽出した姿勢範囲情報で表された車両用シートの姿勢範囲内となるように
仮に設定し、目の高さを計測した後に前記車両用シートの姿勢を決定するように前記車両用シートの姿勢を制御する姿勢制御工程とを備える、
運転姿勢設定用シート制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切な運転姿勢(ドライビングポジション)を実現できるように、車両用シートの姿勢を制御する運転姿勢設定用シート制御装置および運転姿勢設定用シート制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乗員の適切な運転姿勢(ドライビングポジション)は、一般に、車両を安心、安全および快適に運転するために推奨される。この運転姿勢は、シートバックの傾き、前後方向におけるシートクッションの位置、上下方向におけるシートクッションの位置(高さ)およびシートクッションの座面の傾きを調整することによって設定(調整)できる。乗員は、車両を運転する際に、これらのうちの一部または全部を自己の体型に応じて調整し、運転姿勢を調整する。この運転姿勢に関し、例えば、特許文献1がある。
【0003】
この特許文献1に開示された車両用シート制御装置は、シートの位置姿勢を調整するシート駆動手段と、手動運転状態の際における前記シートの位置姿勢を示すシート情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段から読み出した前記シート情報に基づいて前記シート駆動手段を駆動させる制御手段と、を具備する。このような車両用シート制御装置は、乗員の体型に合わせて調整したシート情報を記憶手段に記憶することで、前記乗員が搭乗した際に前記シート情報で前記シートの位置姿勢を再現でき、前記乗員のマニュアル調整の手間を省力化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、適切な運転姿勢は、例えば、腹部に違和感の無いようにシートバックを傾斜させ、アクセルペダルおよびブレーキペダルを踏み込み易い位置に踵を設定し、脚部に違和感のない自然な位置まで前後方向におけるシートクッションの位置を設定し、ボンネットの約1/4が見えるくらいに上下方向におけるシートクッションの位置(高さ)を設定する等の所定の手順によって実現される。このため、乗員が運転姿勢を調整する際に、例えば前記所定の手順を知らないことや前記所定の手順を実施しないこと等のために、適切な運転姿勢に調整されない虞がある。前記特許文献1に開示された車両用シート制御装置は、記憶手段にシート情報が記憶されていない乗員の場合、シートの位置姿勢を再現できず、このような適切な運転姿勢に調整されない虞がある。そもそも記憶手段に記憶されているシート情報によるシートの位置姿勢が適切な運転姿勢ではない虞もある。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、乗員の体型に応じて適切な運転姿勢を自動的に実現できる運転姿勢設定用シート制御装置および運転姿勢設定用シート制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる運転姿勢設定用シート制御装置は、車両に用いられる車両用シートと、体型を表す体型情報と運転姿勢範囲に対応した前記車両用シートの姿勢範囲を表す姿勢範囲情報とを互いに対応付けた体型姿勢範囲対応情報を記憶する対応情報記憶部と、前記車両用シートの姿勢を動かすシート駆動部と、前記体型情報を入力する入力部と、前記入力部に入力された体型情報に対応する姿勢範囲情報を、前記対応情報記憶部に記憶されている体型姿勢範囲対応情報から抽出し、前記車両用シートの姿勢が前記抽出した姿勢範囲情報で表された車両用シートの姿勢範囲内となるように仮に設定し、目の高さを計測した後に前記車両用シートの姿勢を決定するように前記シート駆動部を制御する姿勢制御部とを備える。好ましくは、前記運転姿勢設定用シート制御装置において、前記車両用シートは、乗員が着座するシートクッションと、前記乗員が背もたれするシートバックと、前記シートバックの傾きを調整するリクライニング機構と、前後方向における前記シートクッションの位置を調整するスライド機構と、上下方向における前記シートクッションの位置(高さ)を調整するリフト機構と、前記シートクッションの座面の傾きを調整するチルト機構とを備え、前記シート駆動部は、前記車両用シートの姿勢を動かすために、前記リクライニング機構、前記スライド機構、前記リフト機構およびチルト機構のうちの少なくともいずれかを動かす。
【0008】
このような運転姿勢設定用シート制御装置は、体型姿勢範囲対応情報を予め記憶し、入力部に入力された体型情報に対応する姿勢範囲情報を、この体型姿勢範囲対応情報から抽出し、車両用シートの姿勢が前記抽出した姿勢範囲情報で表された車両用シートの姿勢範囲内となるように、前記車両用シートの姿勢を動かすシート駆動部を制御するので、乗員の体型に応じて適切な運転姿勢を自動的に実現できる。
【0009】
他の一態様では、上述の運転姿勢設定用シート制御装置において、前記車両用シートに着座した乗員の目の高さを計測する計測部をさらに備え、前記姿勢制御部は、前記計測部で計測した目の高さに基づいて、前記車両用シートの姿勢範囲内における特定の車両用シートの姿勢を決定し、前記車両用シートの姿勢が前記決定した車両用シートの姿勢なるように、前記シート駆動部を制御する。
【0010】
座高と足の長さとは、個々人で異なり、運転姿勢は、座高と足の長さとに依存する。このような運転姿勢設定用シート制御装置は、目の高さを計測し、この計測した目の高さに基づいて、車両用シートの姿勢範囲内における特定の車両用シートの姿勢を決定するので、車両用シートに着座した乗員における座高と足の長さとに応じた運転姿勢を実現できる。
【0011】
他の一態様では、これら上述の運転姿勢設定用シート制御装置において、前記車両用シートの姿勢範囲は、ヒップポイントの位置範囲であり、前記ヒップポイントの位置範囲は、前記車両用シートに着座した乗員における足首角度および膝角度に基づいて設定される。
【0012】
これによれば、ヒップポイントの位置範囲で車両用シートの姿勢範囲を定義した運転姿勢設定用シート制御装置が提供できる。
【0013】
他の一態様では、これら上述の運転姿勢設定用シート制御装置において、前記車両用シートの姿勢を動かす指示を入力する第2入力部をさらに備え、前記姿勢制御部は、前記第2入力部に前記指示が入力された場合に、前記抽出した姿勢範囲情報で予め定められた車両用シートの姿勢範囲内で、前記車両用シートの姿勢が前記指示に応じた前記車両用シートの姿勢となるように、前記シート駆動部を制御する。
【0014】
このような運転姿勢設定用シート制御装置は、第2入力部に指示が入力された場合に、前記抽出した姿勢範囲情報で予め定められた車両用シートの姿勢範囲内で、車両用シートの姿勢が前記指示に応じた前記車両用シートの姿勢となるように、シート駆動部を制御するので、車両用シートの姿勢を適切な運転姿勢に自動的に調整した後に、車両用シートの姿勢が乗員によってマニュアル調整された場合でも、車両用シートの姿勢を適切な運転姿勢に維持できる。
【0015】
本発明の他の一態様にかかる運転姿勢設定用シート制御方法は、体型を表す体型情報を入力する入力工程と、前記体型情報と運転姿勢範囲に対応した車両用シートの姿勢範囲を表す姿勢範囲情報とを互いに対応付けた体型姿勢範囲対応情報から、前記入力工程で入力された体型情報に対応する姿勢範囲情報を抽出する抽出工程と、前記車両用シートの姿勢が前記抽出工程で抽出した姿勢範囲情報で表された車両用シートの姿勢範囲内となるように仮に設定し、目の高さを計測した後に前記車両用シートの姿勢を決定するように前記車両用シートの姿勢を制御する姿勢制御工程とを備える。
【0016】
このような運転姿勢設定用シート制御方法は、入力工程に入力された体型情報に対応する姿勢範囲情報を、体型姿勢範囲対応情報から抽出し、車両用シートの姿勢が前記抽出した姿勢範囲情報で表された車両用シートの姿勢範囲内となるように、前記車両用シートの姿勢を制御するので、乗員の体型に応じて適切な運転姿勢を自動的に実現できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる運転姿勢設定用シート制御装置および運転姿勢設定用シート制御方法は、乗員の体型に応じて適切な運転姿勢を自動的に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態における運転姿勢設定用シート制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】前記運転姿勢設定用シート制御装置の第2入力部を説明するための図である。
【
図3】前記運転姿勢設定用シート制御装置の第3入力部を説明するための図である。
【
図4】前記運転姿勢設定用シート制御装置に記憶される体型姿勢範囲対応情報テーブルを示す図である。
【
図5】乗員の運転姿勢に関する各関節角度を説明するための図である。
【
図6】車幅方向から見たヒップポイントの範囲を説明するための図である。
【
図7】車両用シートの姿勢制御に関する、前記運転姿勢設定用シート制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0020】
実施形態における運転姿勢設定用シート制御装置は、適切な運転姿勢(ドライビングポジション)を実現できるように、車両用シートの姿勢を制御する装置である。この運転姿勢設定用シート制御装置は、車両に用いられる車両用シートと、体型を表す体型情報と運転姿勢範囲に対応した前記車両用シートの姿勢範囲を表す姿勢範囲情報とを互いに対応付けた体型姿勢範囲対応情報を記憶する対応情報記憶部と、前記車両用シートの姿勢を動かすシート駆動部と、前記体型情報を入力する入力部と、前記入力部に入力された体型情報に対応する姿勢範囲情報を、前記対応情報記憶部に記憶されている体型姿勢範囲対応情報から抽出し、前記車両用シートの姿勢が前記抽出した姿勢範囲情報で表された車両用シートの姿勢範囲内となるように、前記シート駆動部を制御する姿勢制御部とを備える。以下、このような運転姿勢設定用シート制御装置について、より具体的に説明する。
【0021】
図1は、実施形態における運転姿勢設定用シート制御装置の構成を示すブロック図である。
図2は、前記運転姿勢設定用シート制御装置の第2入力部を説明するための図である。
図2Aは、斜視図であり、
図2Bは、側面図である。
図3は、前記運転姿勢設定用シート制御装置の第3入力部を説明するための図である。
図4は、前記運転姿勢設定用シート制御装置に記憶される体型姿勢範囲対応情報テーブルを示す図である。
図5は、乗員の運転姿勢に関する各関節角度を説明するための図である。
図6は、車幅方向から見たヒップポイントの範囲を説明するための図である。
【0022】
ここで、以下の説明において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」および「下」等の方向を表す用語は、車両の前身走行の際の進行方向を「前」とした場合における車両の各方向を指すものとする。
【0023】
実施形態における運転姿勢設定用シート制御装置Dは、例えば、
図1に示すように、入力部1と、計測部2と、制御処理部3と、記憶部4と、シート駆動部5とを備える。
図1に示す例では、運転姿勢設定用シート制御装置Dは、さらに、ミラー6と、ステアリング装置7と、ヘッドアップディスプレイ(HUD)8と、オーディオ装置9とを備える。
【0024】
シート駆動部5は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って車両用シートSTの姿勢を動かす装置である。車両用シートSTは、車両に用いられ、乗員が着座するための装置であり、例えば、
図2に示すように、座面を形成するシートクッションSCと、その下端(一方端)でシートクッションSCの後端(他方端)に取り付けられ、背もたれとなるシートバックSBと、シートバックSBの上端(他方端)に取り付けられる枕状のヘッドレストHRとを備える。車両用シートSTには、シート駆動部5が組み込まれている。シート駆動部5は、本実施形態では、例えば、シートバックSBの傾きを調整する電動のリクライニング機構51と、前後方向におけるシートクッションSCの位置(前後位置)を調整する電動のスライド機構52と、上下方向におけるシートクッションSCの位置(上下位置、高さ)を調整する電動のリフト機構53と、シートクッションSCの前端(一方端)の高さを上下方向に調整することで、シートクッションSCの座面の傾きを調整する電動のチルト機構54とを備える。このような電動化されたリクライニング機構51、スライド機構52、リフト機構53およびチルト機構54は、公知の常套手段によって構成され、例えば、特開2011-79472号公報、特開2019-172016号公報および特開2006-218882号公報等に開示されている。前記シートバックSBの傾きは、上下方向を法線とする水平面(例えば車両の床面等)と、シートバックSBの略高さ方向に延びる延長方向とのなす角度によって表される。前記座面の傾きは、前記水平面と前記座面とのなす角度によって表される。
【0025】
入力部1は、制御処理部3に接続され、例えば、車両用シートSTの姿勢を動かす指示(車両用シートSTの姿勢を調整する指示)や、乗員の体型に応じて調整(制御)された車両用シートSTの姿勢を記憶する指示等の各種指示(各種コマンド)、および、例えば乗員の体型を表す体型情報等の運転姿勢設定用シート制御装置Dを動作させる上で必要な各種データを運転姿勢設定用シート制御装置Dに入力する装置である。前記乗員の体型は、例えば、身長によって表され、前記体型情報は、本実施形態では、身長である。入力部1は、本実施形態では、
図1ないし
図3に示すように、第1入力部11と、第2入力部12と、第3入力部13とを備える。
【0026】
第1入力部11は、前記体型情報等の各種データを入力する装置である。第1入力部11は、例えばテンキー等の複数のスイッチを備えて構成されてよいが、本実施形態では、軸周りに回転可能であって軸方向にプッシュ可能な円柱状のダイヤルスイッチであり、例えば、車両室内において、運転席と助手席とを隔てるセンターコンソールに配置される。このダイヤルスイッチでは、ダイヤルスイッチを回転することによって、HUD8(あるいはセンターディスプレイ(不図示))に表示される数値が回転方向に応じて増減し(例えば時計回りの回転によって前記数値が増加し、反時計回りの回転によって前記数値が減少する)、ダイヤルスイッチをプッシュすることによって、HUD8(あるいは前記センターディスプレイ)に表示されている数値が確定し、当該運転姿勢設定用シート制御装置Dに入力される。
【0027】
第2入力部12は、車両用シートSTの姿勢を動かす指示を入力する装置である。第2入力部12は、本実施形態では、例えば、
図2に示すように、シートバックSBの傾きを調整する指示を入力するシートバック用スイッチ(SBスイッチ)121と、シートクッションSCにおける前後位置、上下位置および座面の傾きそれぞれを調整する各指示を入力するシートクッション用スイッチ(SCスイッチ)122とを備え、SBスイッチ121とSCスイッチ122とで車両用シートSTの側面視形状を模すように、車両用シートSTの下部側面に配設される。SBスイッチ121は、下端部を回転軸に略前後方向に傾くように構成される。SCスイッチ122は、略中央部を回転軸に前端および後端それぞれを略上下方向に傾くように構成され、さらに、前後方向に動くように構成される。
【0028】
第3入力部13は、乗員の体型に応じて調整(制御)された車両用シートSTの姿勢を記憶する指示を入力する装置である。第3入力部13は、本実施形態では、例えば、
図3に示すように、現在の車両用シートSTの姿勢を記憶部4に記憶する記憶処理を実行させるSETスイッチ131と、車両用シートSTの姿勢を記憶させる記憶部4の記憶領域を指定する複数の選択スイッチ132とを備え、車両用シートSTの下部側面に配設される。
図3に示す例では、選択スイッチ132は、2個の第1および第2選択スイッチ132-1、132-2を備える。
【0029】
計測部2は、車両用シートSTに着座した乗員の目の高さを計測する装置である。前記目の高さは、所定の基準の位置、例えば、車両の床面の位置、シートクッションSCの座面の位置、あるいは、車両用シートSTの姿勢に応じたヒップポイントの位置から計測される。計測部2は、本実施形態では、例えば、目高さデータ取得部21と、目高さ処理部34(22)とを備える。目高さデータ取得部21は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、車両用シートSTに着座した乗員の目の高さを計測するための所定のデータを取得する装置である。目高さ処理部34(22)は、本実施形態では、後述の制御処理プログラムの実行によって制御処理部3に機能的に構成され、目高さデータ取得部21で取得した前記所定のデータを処理することによって前記乗員の目の高さを求めるものである。
【0030】
例えば、目高さデータ取得部21は、車両用シートSTに着座した乗員の画像を生成するカメラと、車両用シートSTに着座した乗員までの距離を測定する距離計とを備え、例えば前記センターディスプレイ(不図示)の横に配置される。目高さ処理部34(22)は、前記カメラで生成した前記乗員の画像、および、前記距離計で測定した前記乗員までの距離に基づいて、前記乗員の目の高さを求める。前記距離計は、例えば、赤外光パルスを送信し、前記乗員で反射した前記赤外光パルスの反射光を受信し、前記赤外光パルスの送信タイミングから前記反射光の受信タイミングまでの時間に基づく、いわゆるTOF(Time of fligt)で距離を測定する。目高さ処理部34(22)は、前記カメラで生成した前記乗員の画像における、前記乗員の顔が写り込むと想定される予め規定された所定の画像領域から、白色フィルタ等の画像処理によって白目部分を抽出して白目部分の画素位置を求め、前記距離計で測定した前記乗員までの距離および前記カメラの撮像光学系の光学特性(例えば撮像倍率等)等から、1画素に写り込む被写体の実長を求め、前記カメラで生成される画像の下端部の実高さ、前記白目部分の画素位置および前記1画素に写り込む被写体の実長から、前記乗員の目の高さを求める。なお、前記カメラで生成される画像の下端部の実高さは、前記カメラにおける撮像光学系の光学特性および撮像方向(光軸方向)等から、予め求められ、記憶部4に記憶される。前記所定の画像領域は、例えば、前記カメラの配置位置、車両用シートSTの配置位置、前記カメラの撮像光学系の光学特性およびその撮像方向等によって予め求められ、記憶部4に記憶される。あるいは、例えば、目高さデータ取得部21は、前記カメラおよび前記距離計に代え、いわゆるステレオカメラを備える。前記ステレオカメラによって、車両用シートSTに着座した乗員の画像を生成し、車両用シートSTに着座した乗員までの距離を測定する。あるいは、例えば、目高さデータ取得部21は、サイズ(大きさ)の既知なマークと、車両用シートSTに着座した乗員および前記マークの画像を生成するカメラとを備える。前記マークは、乗員が車両用シートSTに着座した場合でも前記カメラによって撮像可能な箇所、例えばヘッドレストHRの側部に設けられ、前記カメラは、斜め前方から前記乗員の顔および前記マークを撮像するように配置される。目高さ処理部34(22)は、前記カメラで生成した前記乗員の画像における所定の画像領域から、画像処理によって白目部分および前記マークそれぞれを抽出して白目部分の画素位置および前記マークが写り込んだ画素数を求め、前記マークが写り込んだ画素数および前記マークのサイズから1画素に写り込む被写体の実長を求め、前記カメラで生成される画像の下端部の実高さ、前記白目部分の画素位置および前記1画素に写り込む被写体の実長から、前記乗員の目の高さを求める。
【0031】
ミラー6は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従ってミラー面を電動で調整(制御)できるように構成された例えば左右一対のドアミラー(またはサイドミラー等)を備える。このようなミラー面の角度を電動で調整できるミラー6は、公知の常套手段で構成され、例えば、特開2016-130130号公報や特開2011-102066号公報等に開示されている。
【0032】
ステアリング装置7は、操舵輪を操舵するための機構であり、ステアリングホイールと、前記ステアリングホイールに連結されるステアリングシャフトと、前記ステアリングホイールの操作によって前記ステアリングシャフトに生じる舵角を検出する舵角センサと、前記舵角センサで検出した舵角に応じて前記操舵輪に操舵角を与える操舵角駆動機構とを備え、前記ステアリングシャフトは、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って前記ステアリングホイールを電動で上下させるチルト機構と、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って前記ステアリングホイールを電動で前後させるテレスコピック機構とを備える。このような電動化されたチルト機構およびテレスコピック機構は、公知の常套手段で構成され、例えば、特開2020-19327号公報や特開2019-23050号公報等に開示されている。
【0033】
HUD8は、運転席の前方におけるダッシュボードに配置され、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、例えば第1入力部11で入力される体型情報等の所定の情報を例えばフロントガラス等の透明な面状光学部材に投影して表示する装置である。HUD8は、公知の常套手段で構成され、例えば、特開2015-161965号公報や特開2019-166886号公報等に開示されている。
【0034】
オーディオ装置9は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従う音響機器である。本実施形態では、オーディオ装置9は、複数のスピーカを備え、前記複数のスピーカの各出力タイミングや各音量等を調整することで、乗員(聴者)に、異なる場所(位置)で音が発生したように聞こえさせることができる。このようなオーディオ装置9は、ドラムやエレキギターやボーカル等の複数の音源で演奏される楽曲や、オーケストラのような異なる楽器の複数の音源で演奏される楽曲等を、各音源の配置位置から各音源の音が発生しているように、乗員に聞こえさせることができる。このようなオーディオ装置9は、公知の常套手段で構成され、例えば、特開2006-67218号公報や特開2019-80188号公報等に開示されている。オーディオ装置9は、制御処理部3の制御に従って、目の高さから求めた乗員の耳の位置に応じて前記各出力タイミングや各音量等を調整することで、前記乗員の体型に応じて前記楽曲を適切に前記乗員に聞こえさせることができ、前記乗員に没入感や臨場感を与えることができる。
【0035】
記憶部4は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、制御処理プログラムが含まれ、前記制御処理プログラムには、例えば、運転姿勢設定用シート制御装置Dの各部1、2、4~9を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御する制御プログラムや、第1入力部11に入力された体型情報に対応する後述の姿勢範囲情報を、後述の対応情報記憶部41に記憶されている体型姿勢範囲対応情報から抽出し、車両用シートSTの姿勢が前記抽出した姿勢範囲情報で表された車両用シートSTの姿勢範囲内となるように、シート駆動部5を制御する姿勢制御プログラムや、入力部1の操作に従って記憶部4に対し所定の情報を読み書きする記憶処理プログラムや、目高さデータ取得部21で取得した前記所定のデータを処理することによって前記乗員の目の高さを求める目高さ処理プログラム等が含まれる。前記各種の所定のデータには、体型姿勢範囲対応情報や、車両用シートSTの姿勢を表すシート姿勢情報等の、これら各プログラムを実行する上で必要なデータが含まれる。このような記憶部4は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。そして、記憶部4は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部3のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。記憶部4は、対応情報記憶部41と、個別姿勢情報記憶部42とを機能的に備える。
【0036】
対応情報記憶部41は、体型情報と姿勢範囲情報とを互いに対応付けた体型姿勢範囲対応情報を記憶するものである。前記姿勢範囲情報は、運転姿勢範囲に対応した車両用シートSTの姿勢範囲を表す情報である。前記車両用シートSTの姿勢範囲は、本実施形態では、ヒップポイントの位置範囲であり、前記ヒップポイントの位置範囲は、車両用シートSTに着座した乗員における足首角度および膝角度に基づいて設定される。
【0037】
このような適切な運転姿勢を実現するためのヒップポイントの位置範囲は、例えば、特開2019-38320号公報に開示されている。
【0038】
適切な運転姿勢を実現するためには、車幅方向から見た場合の乗員OCの足首角度A、膝角度Bおよびヒップ角度Cには、それぞれ、適切な範囲が存在する。足首角度Aの適正範囲は、アクセルペダルに足を載せているだけで前記アクセルペダルを踏み込んでいない状態(アクセル開度がゼロである状態)において、例えば、90°以上100°以下とされる。膝角度Bの適正範囲は、例えば、119°以上132°以下とされる。ヒップ角度Cの適正範囲は、例えば、90°以上110°以下とされる。このような各範囲で表される運転姿勢範囲で適切な運転姿勢が実現される。
【0039】
座面の傾斜が固定されている場合、乗員OCの足首角度Aおよび膝角度Bは、
図5に示すように、ヒールポイントHE、ニーポイントKNおよびヒップポイントHIに基づいて定められる。ヒールポイントHEは、乗員OCの体型およびアクセルペダルの位置に応じて一点に定められる。前記アクセルペダルは、当該運転姿勢設定用シート制御装置Dの用いられる車両(車種)に応じて所定の位置に固定されているため、ヒールポイントHEは、乗員OCの体型のみに応じて一点に定められる。ヒップポイントHIは、乗員OCの体型とシートクッションSCの位置とに応じて定められる。ニーポイントKNは、ヒールポイントHEとヒップポイントHIとに応じて定められる。したがって、乗員OCの体型が定められると、スライド機構52およびリフト機構53によってシートクッションSCを位置決めすることで、ヒールポイントHE、ニーポイントKNおよびヒップポイントHIが全て定められ、これにより、足首角度Aおよび膝角度Bが定められる。
【0040】
座面の傾斜が固定されている場合、ヒップ角度Cは、
図5に示すように、乗員OCの上体の傾きに応じて定まることから、スライド機構52およびリフト機構53によるシートクッションSCの位置決め、および、リクライニング機構51によるシートバックSBの傾斜を決めることで、定められる。
【0041】
乗員OCの体型は、本実施形態では、上述のように身長で表され、身体におけるヒップポイントHIから頭部側の長さ(座高)と、身体におけるヒップポイントHIから脚部側の長さ(足の長さ)とは、身長を所定の比率で按分することで決定される。前記所定の比率は、例えば、当該運転姿勢設定用シート制御装置Dの用いられる車両の仕向地における住人の標準体型から予め求められる。
【0042】
適切な運転姿勢を実現するためのヒップポイントHIの位置範囲R1は、座面の傾斜が固定されている場合、上述から、足首角度Aおよび膝角度Bが各前記適正範囲内である場合の範囲である。ここで、足首角度Aの適正範囲は、第1足首角度A1以上第2足首角度A2以下(上述の例では90°以上100°以下)とされ、膝角度Bの適正範囲は、第1膝角度B1以上、第2膝角度B2以下(上述の例では119°以上132°以下)とされる。
図6に示すように、足首角度Aが第1足首角度A1であって膝角度Bが第1膝角度B1である場合におけるヒップポイントHIは、第1ポイントX1とされる。足首角度Aが第1足首角度A1であって膝角度Bが第2膝角度B2である場合におけるヒップポイントHIは、第2ポイントX2とされる。足首角度Aが第2足首角度A2であって膝角度Bが第1膝角度B1である場合におけるヒップポイントHIは、第3ポイントX3とされる。足首角度Aが第2足首角度A2であって膝角度Bが第2膝角度B2である場合におけるヒップポイントHIを第4ポイントX4とされる。ヒールポイントHEが1点に固定されている場合において、足首角度Aが第1足首角度A1以上第2足首角度A2以下の適正範囲内であり、かつ、膝角度Bが第1膝角度B1以上第2膝角度B2以下の適正範囲内である場合、
図6に示すように、ヒップポイントHIは、第1ポイントX1、第2ポイントX2、第3ポイントX3および第4ポイントX4で囲まれた範囲R1内に存在することになる。したがって、この範囲R1が、適切な運転姿勢を実現するためのヒップポイントHIの位置範囲R1である。
【0043】
なお、適切な運転姿勢を実現するためのヒップポイントHIの位置範囲R1における輪郭において、厳密には、第1ポイントX1と第2ポイントX2とを結ぶ線、および、第3ポイントX3と第4ポイントX4とを結ぶ線は、ニーポイントKNを中心とした円弧であり、第1ポイントX1と第3ポイントX3とを結ぶ線、および、第2ポイントX2と第4ポイントX4とを結ぶ線は、下腿の下側の回転軸(ヒールポイントHEの近傍)を中心とした円弧である。ここでは、直線近似できる範囲内であるので、第1ポイントX1と第2ポイントX2とを結ぶ線分、第2ポイントX2と第4ポイントX4とを結ぶ線分、第4ポイントX4と第3ポイントX3とを結ぶ線分、および、第3ポイントX3と第1ポイントX1とを結ぶ線分で囲まれた範囲が、適切な運転姿勢を実現するためのヒップポイントHIの位置範囲R1として設定されている。
【0044】
このような適切な運転姿勢を実現するためのヒップポイントHIの位置範囲R1は、座面の傾斜が変わると変化する。このため、座面の変更可能な傾斜範囲において、所定の角度間隔で複数の傾斜ごとに、複数の前記ヒップポイントHIの位置範囲R1が設定される。
【0045】
なお、適切な運転姿勢を実現するためのヒップポイントHIの位置範囲R1は、車種や体型等によって広狭となり、1点となる場合や存在しない場合もあり得る。
【0046】
車両用シートSTの姿勢範囲としての、このようなヒップポイントHIの位置範囲R1を表す姿勢範囲情報が体格情報としての身長と対応付けられ、体型姿勢範囲対応情報として対応情報記憶部41に予め記憶される。より具体的には、姿勢範囲情報は、車両用シートSTに設定された座標において、ヒップポイントHIの位置範囲R1を表す座標値で表されて良いが、本実施形態では、ヒップポイントHIの位置範囲R1内となるリクライニング機構51の駆動量の範囲(傾斜の可動範囲、リクライニング範囲)、スライド機構52の駆動量の範囲(前後位置の可動範囲、スライド範囲)、リフト機構53の駆動量の範囲(上下位置の可動範囲、リフト範囲)、および、チルト機構54の駆動量の範囲(チルト可動範囲、チルト範囲)で表される。リクライニング機構51、スライド機構52、リフト機構53およびチルト機構54の各駆動量は、各可動可能範囲における一方の境界値(上限値または下限値)を基準に表される。前記体型姿勢範囲対応情報は、本実施形態では、テーブル形式で対応情報記憶部41に記憶されている。
【0047】
この体型姿勢範囲対応情報を登録する体型姿勢範囲対応情報テーブル411は、例えば、
図4に示すように、体型情報を登録する体型情報フィールド4111と、体型情報フィールド4111に登録されている体型情報に対応する姿勢範囲情報を登録する姿勢範囲情報フィールド4112とを備え、体型情報ごとにレコードを持つ。本実施形態では、体型情報フィールド4111には、身長が登録され、姿勢範囲情報フィールド4112には、リクライニング範囲、スライド範囲、リフト範囲およびチルト範囲が登録される。このため、姿勢範囲情報フィールド4112は、リクライニング機構51のリクライニング範囲を登録するリクライニング範囲情報サブフィールド41121と、スライド機構52のスライド範囲を登録するスライド範囲情報サブフィールド41122と、リフト機構53のリフト範囲を登録するリフト範囲情報サブフィールド41123と、チルト機構54のチルト範囲を登録するチルト範囲情報サブフィールド41124とを備える。
【0048】
個別姿勢情報記憶部42は、車両用シートSTの姿勢を表すシート姿勢情報を記憶するものである。本実施形態では、第3入力部13が2個の第1および第2選択スイッチ132-1、132-2を備えることに対応して、2個のシート姿勢情報を記憶するために、個別姿勢情報記憶部42は、第1選択スイッチ132-1が操作された場合に、シート姿勢情報を記憶するための第1記憶領域と、第2選択スイッチ132-1が操作された場合に、シート姿勢情報を記憶するための第2記憶領域とを備える。前記シート姿勢情報は、シートバックSBの傾斜の角度、ならびに、シートクッションSCにおける前後位置、上下位置(高さ)および座面の傾斜の角度で表されてよいが、姿勢範囲情報と同様の観点から、本実施形態では、リクライニング機構51の駆動量、スライド機構52の駆動量、リフト機構53の駆動量およびチルト機構54の駆動量で表される。
【0049】
制御処理部3は、運転姿勢設定用シート制御装置Dの各部1、2、4~9を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、適切な運転姿勢を実現できるように、車両用シートSTの姿勢を制御するための回路である。制御処理部3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部3には、前記制御処理プログラムが実行されることによって、制御部31、姿勢制御部32、記憶処理部33および目高さ処理部34(22)が機能的に構成される。
【0050】
制御部31は、運転姿勢設定用シート制御装置Dの各部1、2、4~9を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、運転姿勢設定用シート制御装置D全体の制御を司るものである。
【0051】
目高さ処理部34(22)は、上述したように、目高さデータ取得部21で取得した前記所定のデータを処理することによって前記乗員の目の高さを求めるものである。
【0052】
姿勢制御部32は、車両用シートSTの姿勢を動かして車両用シートSTの姿勢を調整(制御)するために、シート駆動部5を制御するものである。
【0053】
車両用シートSTの姿勢の自動調整では、姿勢制御部32は、第1入力部11に入力された体型情報に対応する姿勢範囲情報を、対応情報記憶部41に記憶されている体型姿勢範囲対応情報テーブル411から抽出し、車両用シートSTの姿勢がこの抽出した姿勢範囲情報で表された車両用シートSTの姿勢範囲内となるように、シート駆動部5を制御する。そして、本実施形態では、姿勢制御部32は、計測部2で計測した目の高さに基づいて、車両用シートSTの姿勢範囲内における特定の車両用シートSTの姿勢を決定し、車両用シートSTの姿勢がこの決定した車両用シートSTの姿勢なるように、シート駆動部5を制御する。姿勢制御部32は、第2入力部12に、車両用シートSTの姿勢をマニュアル調整する指示が入力された場合に、前記抽出した姿勢範囲情報で表された車両用シートSTの姿勢範囲内で、車両用シートSTの姿勢が前記指示に応じた車両用シートSTの姿勢となるように、シート駆動部5を制御する。
【0054】
車両用シートSTの姿勢のマニュアル調整では、
図2Aに示すように、SBスイッチ121が前方に傾けられると、姿勢制御部32は、SBスイッチ121が傾いて前方に位置している間、シートバックSBを前方に傾け、シートバックSBの傾きを徐々に小さくするように、リクライニング機構51を制御し、SBスイッチ121が復帰すると(元の中立位置に戻されると)、姿勢制御部32は、リクライニング機構51を停止する。シートバックSBは、その傾きでその姿勢を維持する。一方、SBスイッチ121が後方に傾けられると、姿勢制御部32は、SBスイッチ121が傾いて後方に位置している間、シートバックSBを後方に傾け、シートバックSBの傾きを徐々に大きくするように、リクライニング機構51を制御し、SBスイッチ121が復帰すると、姿勢制御部32は、リクライニング機構51を停止する。シートバックSBは、その傾きでその姿勢を維持する。
図2Aに示すように、SCスイッチ122が前方に動かされると、姿勢制御部32は、SCスイッチ122が前方に位置している間、シートクッションSCを前方に徐々に移動するように、スライド機構52を制御する。SCスイッチ122が復帰すると(元の中立位置に戻されると)、姿勢制御部32は、スライド機構52を停止する。シートクッションSCは、その前後位置でその姿勢を維持する。一方、SCスイッチ122が後方に動かされると、姿勢制御部32は、SCスイッチ122が後方に位置している間、シートクッションSCが後方に徐々に移動するように、スライド機構52を制御する。SCスイッチ122が復帰すると、姿勢制御部32は、スライド機構52を停止する。シートクッションSCは、その前後位置でその姿勢を維持する。
図2Aに示すように、SCスイッチ122の後端が上方に傾けられると、姿勢制御部32は、SCスイッチ122が傾いて上方に位置している間、シートクッションSCを徐々に上げるように、リフト機構53を制御し、SCスイッチ122が復帰すると(元の中立位置に戻されると)、姿勢制御部32は、リフト機構53を停止する。シートクッションSCは、その上下位置(高さ)でその姿勢を維持する。一方、SCスイッチ122の後端が下方に傾けられると、姿勢制御部32は、SCスイッチ122が傾いて下方に位置している間、シートクッションSCを徐々に下げるように、リフト機構53を制御し、SCスイッチ122が復帰すると、姿勢制御部32は、リフト機構53を停止する。シートクッションSCは、その上下位置でその姿勢を維持する。
図2Aに示すように、SCスイッチ122の前端が上方に傾けられると、姿勢制御部32は、SCスイッチ122が傾いて上方に位置している間、シートクッションSCの前端を徐々に上げるように、チルト機構54を制御し、SCスイッチ122が復帰すると(元の中立位置に戻されると)、姿勢制御部32は、チルト機構54を停止する。シートクッションSCは、その座面の傾きでその姿勢を維持する。一方、SCスイッチ122の前端が下方に傾けられると、姿勢制御部32は、SCスイッチ122が傾いて下方に位置している間、シートクッションSCの前端を徐々に下げるように、チルト機構54を制御し、SCスイッチ122が復帰すると、姿勢制御部32は、チルト機構54を停止する。シートクッションSCは、その座面の傾きでその姿勢を維持する。
【0055】
ここで、通常のマニュアル調整では、SBスイッチ121およびSCスイッチ122の各操作によって、リクライニング機構51、スライド機構52、リフト機構53およびチルト機構54それぞれの可動可能範囲全体に亘って車両用シートSTの姿勢が調整可能である。一方、上述の自動調整後のマニュアル調整では、SBスイッチ121およびSCスイッチ122の各操作によって、上述のように、前記抽出した姿勢範囲情報で表された車両用シートSTの姿勢範囲内で車両用シートSTの姿勢が調整可能である(すなわち、前記姿勢範囲における下限値および上限値を超えて車両用シートSTの姿勢が調整できず、前記姿勢範囲における下限値または上限値で車両用シートSTの姿勢が制限される)。
【0056】
記憶処理部33は、入力部1の操作に従って記憶部4に対し所定の情報を読み書きするものである。より具体的には、記憶処理部33は、第3入力部13の操作に従って、現在の車両用シートSTの姿勢を記憶部4の個別姿勢情報記憶部42に記憶するものである。第1選択スイッチ132-1が操作されると、記憶処理部33は、個別姿勢情報記憶部42の第1記憶領域を車両用シートSTの姿勢を記憶する記憶領域として受け付け(用意し)、続いて、SETスイッチ131が操作されると、記憶処理部33は、個別姿勢情報記憶部42の第1記憶領域に、現在の車両用シートSTの姿勢を表すシート姿勢情報を記憶する。第2選択スイッチ132-2が操作されると、記憶処理部33は、個別姿勢情報記憶部42の第2記憶領域を車両用シートSTの姿勢を記憶する記憶領域として受け付け、続いて、SETスイッチ131が操作されると、記憶処理部33は、個別姿勢情報記憶部42の第2記憶領域に、現在の車両用シートSTの姿勢を表すシート姿勢情報を記憶する。
【0057】
なお、本実施形態では、第1および第2選択スイッチ132-1、132-2は、個別姿勢情報記憶部42に記憶されているシート姿勢情報を読み出して車両用シートSTの姿勢を動かすスイッチとしても機能する。この場合、読み出す際の第1および第2選択スイッチ132-1、132-2の操作は、上述の記憶させる際の第1および第2選択スイッチ132-1、132-2の操作とは異なる。例えば、上述の記憶させる際の第1および第2選択スイッチ132-1、132-2の操作は、1回だけ押す操作であり、読み出す際の第1および第2選択スイッチ132-1、132-2の操作は、連続的に2回押す操作である。第1選択スイッチ132-1が連続的に2回押されると、記憶処理部33は、個別姿勢情報記憶部42の第1記憶領域に記憶されているシート姿勢情報を読み出し、姿勢制御部32は、車両用シートSTの姿勢がこの読み出したシート姿勢情報で表される車両用シートSTの姿勢となるように、シート駆動部5を制御する。同様に、第2選択スイッチ132-2が連続的に2回押されると、記憶処理部33は、個別姿勢情報記憶部42の第2記憶領域に記憶されているシート姿勢情報を読み出し、姿勢制御部32は、車両用シートSTの姿勢がこの読み出したシート姿勢情報で表される車両用シートSTの姿勢となるように、シート駆動部5を制御する。上述では、兼用したが、個別姿勢情報記憶部42に記憶されているシート姿勢情報を読み出して車両用シートSTの姿勢を動かす専用のスイッチが別途に設けられてもよい。
【0058】
次に、本実施形態の動作について説明する。
図7は、車両用シートの姿勢制御に関する、前記運転姿勢設定用シート制御装置の動作を示すフローチャートである。
【0059】
このような運転姿勢設定用シート制御装置Dは、車両が稼働を始めると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。その制御処理プログラムの実行によって、制御処理部3には、制御部31、姿勢制御部32、記憶処理部33および目高さ処理部34(22)が機能的に構成される。そして、例えば、前記車両の稼働開始や、運転姿勢の自動的な調整開始の指示を入力するスイッチ(不図示)の操作等に応じて、以下の車両用シートの姿勢制御に関する動作が開始され、乗員は、車両用シートSTに着座して、入力部1の第1入力部11から体型情報として自己の身長を入力する。
【0060】
図7において、運転姿勢設定用シート制御装置Dは、制御処理部3によって、第1入力部11に入力された体型情報としての身長を取得する(S1)。
【0061】
次に、運転姿勢設定用シート制御装置Dは、制御処理部3の姿勢制御部32によって、第1入力部11に入力された体型情報に対応する姿勢範囲情報を、対応情報記憶部41に記憶されている体型姿勢範囲対応情報から抽出する(S2)。より具体的には、本実施形態では、姿勢制御部32は、対応情報記憶部41に記憶されている体型姿勢範囲対応情報テーブル411の体型情報フィールド4111を参照し、第1入力部11に入力された身長を登録する体型情報フィールド4111のレコードを選定(検索)し、この選定したレコードにおける姿勢範囲情報フィールド4112のリクライニング範囲情報サブフィールド41121、スライド範囲情報サブフィールド41122、リフト範囲情報サブフィールド41123およびチルト範囲情報サブフィールド41124それぞれに登録されているリクライニング範囲、スライド範囲、リフト範囲およびチルト範囲を抽出する。
【0062】
次に、運転姿勢設定用シート制御装置Dは、姿勢制御部32によって、処理S2で抽出したリクライニング範囲、スライド範囲、リフト範囲およびチルト範囲の各範囲内で車両用シートSTの姿勢を仮に設定する(S3)。例えば、姿勢制御部32は、前記リクライニング範囲、スライド範囲、リフト範囲およびチルト範囲それぞれの各中央値で車両用シートSTの姿勢を仮に設定する。なお、本実施形態では、姿勢制御部32は、車両用シートSTの姿勢を仮に設定するだけでシート駆動部5によって車両用シートSTの姿勢を動かさないが、前記仮に設定した車両用シートSTの姿勢となるように、シート駆動部5によって車両用シートSTの姿勢を動かしてもよい。
【0063】
次に、運転姿勢設定用シート制御装置Dは、計測部2で乗員の目の高さを計測する(S4)。
【0064】
次に、運転姿勢設定用シート制御装置Dは、姿勢制御部32によって、仮に設定した車両用シートSTの姿勢から、特定の車両用シートSTの姿勢に設定する(S5)。より具体的には、姿勢制御部32は、計測部2で計測した目の高さに基づいて、処理S3で仮に設定した車両用シートSTの姿勢を、処理S2で抽出したリクライニング範囲、スライド範囲、リフト範囲およびチルト範囲の各範囲内(処理S2で抽出した姿勢範囲情報で表される車両用シートSTの姿勢範囲内)で修正することによって、処理S2で抽出した姿勢範囲情報で表される車両用シートSTの姿勢範囲内における特定の車両用シートSTの姿勢を決定する(S5)。
【0065】
例えば、まず、第1入力部11に入力された身長および標準体型の場合における比率から、乗員の体型が標準体型であると仮定した場合における座高および足の長さ(仮定足長)が求められる。次に、計測部2で計測した目の高さから乗員の座高が求められ、この求めた座高および第1入力部11に入力された身長から乗員における実際の足の長さ(実足長)が求められる。そして、前記実足長が前記仮定足長より短い場合、処理S2で抽出したリクライニング範囲、スライド範囲、リフト範囲およびチルト範囲の各範囲内(処理S2で抽出した姿勢範囲情報で表される車両用シートSTの姿勢範囲内)において、前記仮に設定した車両用シートSTの姿勢が身長の低い方向の姿勢に、例えば第1所定値だけずれた姿勢に修正され、前記実足長が前記仮定足長より長い場合、前記各範囲内において、前記仮に設定した車両用シートSTの姿勢が身長の高い方向の姿勢に、例えば第2所定値だけずれた姿勢修正される。前記身長の低い方向の姿勢とは、処理S2で抽出した姿勢範囲情報で表される車両用シートSTの姿勢範囲のうち、第1入力部11に入力された身長より低い身長に対応する姿勢範囲情報で表される車両用シートSTの姿勢範囲と重複する車両用シートSTの姿勢範囲内の姿勢である。前記身長の高い方向とは、処理S2で抽出した姿勢範囲情報で表される車両用シートSTの姿勢範囲のうち、第1入力部11に入力された身長より高い身長に対応する姿勢範囲情報で表される車両用シートSTの姿勢範囲と重複する車両用シートSTの姿勢範囲内の姿勢である。前記第1および第2所定値は、それぞれ、同値であってよく、異値であってよく、前記実足長と前記仮定足長との差に応じて設定されてよい。
【0066】
次に、運転姿勢設定用シート制御装置Dは、姿勢制御部32によって、車両用シートSTの姿勢が処理S5で設定した特定の車両用シートSTの姿勢となるように、シート駆動部5を制御する(S6)。これによって車両用シートSTは、着座した乗員に応じた適切な運転姿勢を実現するような車両用シートSTの姿勢となる。
【0067】
次に、運転姿勢設定用シート制御装置Dは、制御処理部3によって、車両用シートSTの姿勢のマニュアル調整を処理し(S7)、本処理を終了する。この処理S7では、処理S2で抽出した姿勢範囲情報で表された車両用シートSTの姿勢範囲内で車両用シートSTの姿勢が調整される。すなわち、SBスイッチ121の操作によるシートバックSBの傾きは、処理S2で抽出したリクライニング範囲内に制限され、SCスイッチ122の操作によるシートクッションSCの前後位置は、処理S2で抽出したスライド範囲内に制限され、SCスイッチ122の操作によるシートクッションSCの上下位置は、処理S2で抽出したリフト範囲内に制限され、SCスイッチ122の操作によるシートクッションSCの座面の傾きは、処理S2で抽出したチルト範囲内に制限される。より具体的には、例えば、制御処理部3は、処理S6の実行後、予め設定された所定の時間内に第2入力部12の操作の有無を判定し、この判定の結果、前記所定の時間内に第2入力部12の操作が無い場合には、処理S7が終了され(すなわち、本処理が終了され)、前記判定の結果、前記所定の時間内に第2入力部12の操作が有る場合には、制御処理部3は、姿勢制御部32によって、前記制限下で前記第2入力部12の操作に応じてシート駆動部5を制御し、この制御の終了後、前記所定の時間内に第2入力部12の操作の有無を判定し、以下、同様に処理を実行する。
【0068】
乗員は、必要に応じて第3入力部13を操作する。例えば、乗員は、第1選択スイッチ132-1の操作後にSETスイッチ131を操作する。第1選択スイッチ132-1が操作されると、記憶処理部33は、個別姿勢情報記憶部42の第1記憶領域を車両用シートSTの姿勢を記憶する記憶領域として受け付け、続いて、SETスイッチ131が操作されると、記憶処理部33は、個別姿勢情報記憶部42の第1記憶領域に、現在の車両用シートSTの姿勢を表すシート姿勢情報を記憶する。これによって乗員に適した運転姿勢を実現するような車両用シートSTの姿勢が個別姿勢情報記憶部42に記憶される。前記乗員が搭乗した際に前記乗員に適した運転姿勢を実現するような車両用シートSTの姿勢が再現できる。
【0069】
以上説明したように、本実施形態における運転姿勢設定用シート制御装置Dおよびこれに実装された運転姿勢設定用シート制御方法は、体型姿勢範囲対応情報を予め記憶し、第1入力部11に入力された体型情報に対応する姿勢範囲情報を、この体型姿勢範囲対応情報から抽出し、車両用シートSTの姿勢が前記抽出した姿勢範囲情報で表された車両用シートの姿勢範囲内となるように、前記車両用シートSTの姿勢を動かすシート駆動部5を制御するので、乗員の体型に応じて適切な運転姿勢を自動的に実現できる。
【0070】
座高と足の長さとは、個々人で異なり、運転姿勢は、座高と足の長さとに依存する。上記運転姿勢設定用シート制御装置Dおよび運転姿勢設定用シート制御方法は、目の高さを計測し、この計測した目の高さに基づいて、車両用シートSTの姿勢範囲内における特定の車両用シートSTの姿勢を決定するので、車両用シートSTに着座した乗員における座高と足の長さとに応じた運転姿勢を実現できる。
【0071】
本実施形態によれば、ヒップポイントHIの位置範囲R1で車両用シートSTの姿勢範囲を定義した運転姿勢設定用シート制御装置Dおよび運転姿勢設定用シート制御方法が提供できる。
【0072】
上記運転姿勢設定用シート制御装置Dおよび運転姿勢設定用シート制御方法は、第2入力部12に、車両用シートSTの姿勢をマニュアル調整する指示が入力された場合に、前記抽出した姿勢範囲情報で表された車両用シートSTの姿勢範囲内で、車両用シートSTの姿勢が前記指示に応じた車両用シートSTの姿勢となるように、シート駆動部5を制御するので、車両用シートSTの姿勢を適切な運転姿勢に自動的に調整した後に、車両用シートSTの姿勢が乗員によってマニュアル調整された場合でも、車両用シートSTの姿勢を適切な運転姿勢に維持できる。
【0073】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0074】
D 運転姿勢設定用シート制御装置
1 入力部
2 計測部
3 制御処理部
4 記憶部
5 シート駆動部
11 第1入力部
21 目高さデータ取得部
31 制御部
32 姿勢制御部
34(22) 目高さ処理部
41 対応情報記憶部
51 リクライニング機構
52 スライド機構
53 リフト機構
54 チルト機構