(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】駆動伝達機構およびそれを備えた画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/16 20060101AFI20240509BHJP
F16H 1/06 20060101ALI20240509BHJP
F16D 1/112 20060101ALI20240509BHJP
F16D 1/02 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G03G21/16 147
F16H1/06
F16D1/112
F16D1/02 200
(21)【出願番号】P 2020067543
(22)【出願日】2020-04-03
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 雅彦
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-353807(JP,A)
【文献】特開2015-138223(JP,A)
【文献】特開2014-191105(JP,A)
【文献】特開2015-114461(JP,A)
【文献】国際公開第2018/037573(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/16
F16H 1/06
F16D 1/112
F16D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体内の一方の側に配置されるフレームの外側に配置され、前記フレームの内側に配置されるユニットに駆動を伝達する駆動伝達機構であって、
回転中心に形成される円筒状のボスと、
前記ボスの内部に形成された摺動孔と、
前記ボスの径方向外側に前記ボスと同心円状に形成され、外周面にギア歯が形成されるリムと、
前記ボスおよび前記リムを連結するウェブと、
を有し、駆動入力側ギアに連結される駆動入力ギア部と、
前記駆動入力ギア部と同一の回転軸で前記駆動入力ギア部と共に回転することで前記駆動入力ギア部の駆動力を被駆動部材に出力する出力側カップリングと、
前記出力側カップリングを前記回転軸に沿って前記駆動入力ギア部から離間する方向に付勢するコイルバネと、
前記摺動孔に回転可能に挿入される摺動ピンと、
前記摺動ピンが固定され、前記駆動入力ギア部を挟んで前記出力側カップリングと反対側に配置される駆動板金と、
前記フレームに回転可能に取り付けられ、前記駆動入力ギア部の前記ギア歯と噛み合う複数の歯車と、
を備え、
前記駆動板金は、前記駆動入力ギア部、前記出力側カップリング、前記コイルバネおよび前記複数の歯車に対向して前記フレームに固定され、
前記コイルバネは、前記出力側カップリングと前記摺動ピンの間に挟持されることを特徴とする駆動伝達機構。
【請求項2】
前記コイルバネは、前記摺動ピンを前記摺動孔に挿入する前の負荷がかからない状態において、端部が前記摺動孔から突出しない長さであることを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達機構。
【請求項3】
前記出力側カップリングを前記コイルバネの付勢力に抗して前記駆動入力ギア部に近づく方向に退避させるカップリング退避機構を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の駆動伝達機構。
【請求項4】
前記駆動入力ギア部の前記ボスの外周面には凸部が形成され、前記出力側カップリングの内周面には前記凸部と係合する係合溝が回転軸方向に延在して形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の駆動伝達機構。
【請求項5】
前記カップリング退避機構は、前記フレームのガイド孔に回転可能に嵌合する環状部と、前記環状部から回転軸方向に沿って前記駆動入力ギア部側に突出する押圧部と、前記押圧部に形成され、回転軸方向の突出量が徐々に変化する傾斜面と、を有し、
前記出力側カップリングの軸方向の端部の外周面には、外側に突出する円環状のフランジ部が形成されており、
前記カップリング退避機構を回転させたとき、前記押圧部が前記傾斜面に沿って前記フランジ部に乗り上げて前記出力側カップリングが前記駆動入力ギア部に近づく方向に退避することを特徴とする請求項3に記載の駆動伝達機構。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の駆動伝達機構を備えた画像形成装置。
【請求項7】
回転中心に形成される円筒状のボスと、
前記ボスの径方向外側に前記ボスと同心円状に形成され、外周面にギア歯が形成されるリムと、
前記ボスおよび前記リムを連結するウェブと、
を有し、駆動入力側ギアに連結される駆動入力ギア部と、
前記駆動入力ギア部と同一の回転軸で前記駆動入力ギア部と共に回転することで前記駆動入力ギア部の駆動力を被駆動部材に出力する出力側カップリングと、
前記出力側カップリングを前記回転軸に沿って前記駆動入力ギア部から離間する方向に付勢するコイルバネと、
前記ボスに形成された摺動孔に回転可能に挿入される摺動ピンと、
前記出力側カップリングを前記コイルバネの付勢力に抗して前記駆動入力ギア部に近づく方向に退避させるカップリング退避機構と、
を備えた駆動伝達機構の製造方法であって、
水平に載置されたフレームのガイド孔に前記カップリング退避機構を嵌め込む工程と、
前記カップリング退避機構の上から前記回転中心を合わせて前記駆動入力ギア部および前記出力側カップリングを配置する工程と、
前記駆動入力ギア部の前記摺動孔に前記コイルバネを挿入する工程と、
駆動板金に固定された前記摺動ピンを前記摺動孔に挿入し、前記駆動板金を前記フレームに固定する工程と、
を含む駆動伝達機構の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動力を伝達可能な駆動伝達機構およびそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置においては、ドラムユニット、現像ユニット、定着ユニット、搬送ユニット等の各ユニットに種々の回転部材が使用されている。これらの回転部材に回転駆動力を伝達させるために、駆動部の回転駆動力を伝達するための駆動伝達ギアと、回転体(被駆動部材)側の回転軸と駆動部側の回転軸とを連結するカップリング(軸継手)とで構成される駆動伝達機構が知られている。
【0003】
従来の駆動伝達機構では、駆動伝達ギアとカップリングの間にばねが配置されており、ばねによる復元力でカップリングが軸方向に付勢される構成が一般的である。例えば特許文献1には、回転駆動軸の一端に連結され、バネで軸方向に付勢されたカップリング回転子と、カップリング回転子がカップリング受動子から離間する位置においてカップリング回転子のフランジ部に掛止される回転型のストッパと、を有する駆動力伝達機構が開示されている。
【0004】
図10は、従来の駆動伝達ユニット101の外観斜視図である。
図11は、従来の駆動伝達ユニット101を回転軸に沿って切断した断面斜視図である。
図10および
図11に示すように、駆動伝達ユニット101は、駆動入力ギア部102と、入力側カップリング(図示せず)に嵌合する出力側カップリング103と、駆動入力ギア部102と出力側カップリング103の間に配置されるコイルバネ105と、を有する。コイルバネ105は、出力側カップリング103を駆動入力ギア部102から突出する方向(
図11の左方向)に付勢する。
【0005】
出力側カップリング103の外周面にはスリット103aが形成されている。駆動入力ギア102に設けられた係止爪102aがスリット103aに係合することで、出力側カップリング103がコイルバネ105の付勢力によって駆動入力ギア部102から外れない構成となっている。
【0006】
図12は、従来の駆動伝達ユニット101をフレーム110に組み付けた状態を示す側面断面図である。
図12に示すように、駆動伝達ユニット101とフレーム110との間にはカップリング退避機構107が配置されている。カップリング退避機構107を回転させて、出力側カップリング103をコイルバネ105の付勢力に抗して駆動入力ギア部102側に退避させることで、入力側カップリングと出力側カップリング103との係合状態を解除することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図10~
図12に示した従来の駆動伝達ユニット101では、出力側カップリング103には係止爪102aが係合するスリット103aが形成される。スリット103aは出力側カップリング103のストローク(移動範囲)分だけ形成する必要がある。また、駆動入力ギア部102には係止爪102aを形成するための金型の抜き孔としての食い切り孔102bが形成される。そのため、駆動入力ギア部102および出力側カップリング103の部品強度が低下するという問題点があった。
【0009】
また、駆動伝達ユニット101を装置本体110に組み付ける際に、カップリング退避機構107の位相によっては、
図12に示すようにコイルバネ105の付勢力によって駆動入力ギア部102がスラスト方向に押し戻されることがある。その結果、駆動伝達ユニット101に隣接するギア109a、109bとの噛み合いが外れ、組み立て性が低下するという問題点もあった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、駆動入力ギア部と出力側カップリングの強度を確保しつつ、組み立て作業性にも優れた駆動伝達機構およびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、駆動入力ギア部と、出力側カップリングと、コイルバネと、を備えた駆動伝達機構である。駆動入力ギア部は、回転中心に形成される円筒状のボスと、ボスの径方向外側にボスと同心円状に形成され、外周面にギア歯が形成されるリムと、ボスおよびリムを連結するウェブと、を有し、駆動入力側ギアに連結される。出力側カップリングは、駆動入力ギア部と同一の回転軸で駆動入力ギア部と共に回転することで駆動入力ギア部の駆動力を被駆動部材に出力する。コイルバネは、出力側カップリングを回転軸に沿って駆動入力ギア部から離間する方向に付勢する。駆動入力ギア部および出力側カップリングは、ボスに形成された摺動孔に回転可能に挿入される摺動ピンを回転軸として回転可能である。コイルバネは、出力側カップリングと摺動ピンの間に挟持される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の構成によれば、コイルバネは摺動ピンによって押圧され、出力側カップリングを噛み合い方向に付勢するため、摺動ピンの装着前はコイルバネによる付勢力が出力側カップリングに作用しない。これにより、出力側カップリングの抜け止め機構が不要となるため、駆動入力ギア部と出力側カップリングとの間にコイルバネを配置する従来の駆動伝達機構のように、出力側カップリングのスリットや駆動入力ギア部の食い切り孔を形成する必要がない。従って、駆動伝達機構を構成する部品の強度低下を抑制することができる。また、駆動伝達機構を含む駆動部の組み立て時に、駆動入力ギア部のスラスト方向の位置が、カップリング退避機構の位相によらず隣接するギアと噛み合う適切な位置となるため、組み立て作業性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る駆動伝達ユニット40を備えた画像形成装置100の構造を示す断面図
【
図2】本実施形態の駆動伝達ユニット40を含む現像ユニット16およびドラムユニット25の駆動部30周辺を駆動板金31の外側から見た斜視図
【
図3】
図2の状態から駆動板金31を取り外した駆動部30周辺の斜視図
【
図4】本実施形態の駆動伝達ユニット40を含む駆動部30周辺をフレーム100aの内側から見た分解斜視図
【
図5】本実施形態の駆動伝達ユニット40の外観斜視図
【
図6】
図5の駆動伝達ユニット40にカップリング退避機構47を装着した状態を示す斜視図
【
図7】
図6の状態からカップリング退避機構47を回転させて出力側カップリング43を退避させた状態を示す斜視図
【
図8】本実施形態の駆動伝達ユニット40を回転軸に沿って切断した側面断面図
【
図9】本実施形態の駆動伝達ユニット40の側面断面図であって、駆動板金31を装着した状態を示す図
【
図10】従来の駆動伝達ユニット101の外観斜視図
【
図11】
図10の駆動伝達ユニット101を回転軸に沿って切断した断面斜視図
【
図12】従来の駆動伝達ユニット101をフレーム110に組み付けた状態を示す側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る駆動伝達ユニット40を備えた画像形成装置100の内部構成を示す概略断面図である。なお、
図1では左側を画像形成装置100の前方側として図示している。
図1に示すように、画像形成装置100(ここではモノクロプリンター)は、装置本体1の下部に積載された用紙(記録媒体)を収容する給紙カセット2が備えられている。給紙カセット2の上方には、装置本体1の前方から後方へ略水平に延び、更に上方へ延びて装置本体1の上面に形成された排紙部3に至る用紙搬送路4が形成されている。用紙搬送路4に沿って上流側から順に、ピックアップローラー5、フィードローラー6、中間搬送ローラー7、レジストローラー対8、画像形成部9、定着ユニット10および排出ローラー対11が配置されている。更に、画像形成装置100内には、上記の各ローラー、画像形成部9、定着ユニット10等の動作を制御する制御部26が配置されている。
【0015】
給紙カセット2は、用紙搬送方向の上流側端部に設けられた回動支点12aによって、給紙カセット2に対して回動可能に支持された用紙積載板12を備えている。用紙積載板12が上方向に回動することで用紙積載板12上に積載された用紙がピックアップローラー5に押圧される。給紙カセット2の前方側には、フィードローラー6に圧接されるリタードローラー13が配設されている。ピックアップローラー5によって複数枚の用紙が同時に給送された場合には、フィードローラー6とリタードローラー13とによって用紙が捌かれ、最上位の1枚のみが搬送される。
【0016】
フィードローラー6とリタードローラー13とによって捌かれた用紙は、中間搬送ローラー7によって搬送方向を装置後方へと変えられてレジストローラー対8へと搬送され、レジストローラー対8によってタイミングを調整されて画像形成部9へと供給される。
【0017】
画像形成部9は、電子写真プロセスによって用紙に所定のトナー像を形成する。画像形成部9は、
図1において反時計回り方向に回転可能に軸支された像担持体である感光体ドラム14と、感光体ドラム14の周囲に配置される帯電装置15、現像ユニット16、クリーニング装置17、用紙搬送路4を挟んで感光体ドラム14に対向するように配置される転写ローラー(転写部材)18、感光体ドラム14の上方に配置される露光ユニット(LSU)19、および除電装置(図示せず)から構成されている。現像ユニット16の上方には、現像ユニット16へトナーを補給するトナーコンテナ20が配置されている。なお、感光体ドラム14、帯電装置15およびクリーニング装置17はユニット化されており、ドラムユニット25を構成している。
【0018】
帯電装置15には感光体ドラム14に接触する帯電ローラーが配置されている。感光体ドラム14が回転すると、帯電ローラーが感光体ドラム14の表面に接触して従動回転する。このとき、帯電ローラーに所定の電圧を印加することにより、感光体ドラム14の表面が一様に帯電される。
【0019】
次いで、入力された画像データに基づいて、露光ユニット(LSU)19から出射されるレーザービームにより感光体ドラム14の表面に静電潜像が形成される。形成された静電潜像に現像ユニット16の現像ローラー16aに担持されたトナーが付着して感光体ドラム14の表面にトナー像が形成される。感光体ドラム14の表面に形成されたトナー像は、レジストローラー対8から感光体ドラム14と転写ローラー18とのニップ部に供給された用紙へ転写される。
【0020】
トナー像が転写された用紙は、感光体ドラム14から分離されて定着ユニット10に向けて搬送される。定着ユニット10は、用紙搬送方向に対し画像形成部9の下流側に配置されており、画像形成部9においてトナー像が転写された用紙は、定着ユニット10に備えられた加熱ローラー22、および加熱ローラー22に圧接される加圧ローラー23によって加熱、加圧され、用紙に転写されたトナー像が定着される。画像形成部9および定着ユニット10において画像形成処理および定着処理がなされた用紙は、排出ローラー対11によって排紙部3に排出される。
【0021】
一方、転写後に感光体ドラム14の表面に残留しているトナーはクリーニング装置17のクリーニングブレードおよびクリーニングローラー(いずれも図示せず)により除去される。感光体ドラム14の表面の残留電荷は除電装置によって除去される。その後、感光体ドラム14は帯電装置15によって再び帯電され、以下同様にして画像形成が行われる。
【0022】
図2は、現像ユニット16およびドラムユニット25の駆動部30周辺を駆動板金31の外側から見た斜視図である。
図3は、
図2の状態から駆動板金31を取り外した駆動部30周辺の斜視図である。
図4は、駆動伝達ユニット40を含む駆動部30周辺をフレーム100aの内側から見た分解斜視図である。
図2~
図4に示すように、装置本体1内の一方側(
図1の紙面に対して奥側)には多数の歯車が回転可能に取り付けられるフレーム100aが配置されている。
【0023】
フレーム100aには、駆動モーター32と、駆動モーター32の回転駆動力を現像ユニット16(
図1参照)に伝達するギア33、35、37から成る駆動伝達ギア列39、および駆動伝達ユニット40と、駆動伝達ユニット40を介して駆動モーター32の回転駆動力をドラムユニット25(
図1参照)に伝達するギア60が設けられている。
【0024】
フレーム100aの内側には、現像ユニット16およびドラムユニット25を装着位置に案内するガイドレール50が形成されている。ガイドレール50の下端部には、駆動伝達ユニット40の出力側カップリング43が貫通するガイド孔51が形成されている。現像ユニット16がガイドレール50に沿って装着位置まで挿入されたとき、現像ユニット16の入力側カップリング(図示せず)が出力側カップリング43に噛み合うことで現像ユニット16への駆動力の伝達が可能となる。
【0025】
駆動板金31の裏面側には円形の凹部31aが形成されている。凹部31aは、駆動伝達ユニット40の駆動入力ギア部41(
図5参照)に対向する。凹部31aの中心には摺動ピン53が固定されている。摺動ピン53は、駆動入力ギア部41の摺動孔41e(
図8参照)に嵌合する。
【0026】
図5は、本実施形態の駆動伝達ユニット40の外観斜視図である。
図6および
図7は、
図5の駆動伝達ユニット40にカップリング退避機構47を装着した状態を示す斜視図である。
図8は、本実施形態の駆動伝達ユニット40を回転軸に沿って切断した側面断面図である。駆動伝達ユニット40は、駆動入力ギア部41と、出力側カップリング43と、コイルバネ45とを有する。駆動入力ギア部41および出力側カップリング43は、例えばPOM(ポリアセタール)等の樹脂を射出成形することによって形成されている。
【0027】
駆動入力ギア部41は中心部に形成された円筒状のボス41aと、ボス41aの径方向外側にボス41aと同心円状に形成されたリム41bと、ボス41aおよびリム41bを連結するウェブ41cと、によって構成されている。リム41bの外周面には、ギア37およびギア60に係合するギア歯41dが形成されている。
【0028】
ボス41aの内部には、駆動板金31にカシメ固定された摺動ピン53(
図6参照)が挿入される摺動孔41eが形成されている。ボス41aの外周面の対向する2箇所には凸部41fが形成されている。
【0029】
出力側カップリング43は、先端部が閉じた円筒形状であり、出力側カップリング43の先端部の外面にはドラムユニット25の入力側カップリングに係合する係合爪43aが形成されている。出力側カップリング43の先端部の内面には、コイルバネ45の位置決め(中心合わせ)のための位置決め突起43bが形成されている。
【0030】
出力側カップリング43の内周面の対向する2箇所には、軸方向に延在する係合溝43cが形成されている。出力側カップリング43が駆動入力ギア部41のボス41aに挿入されたとき、凸部41fが係合溝43cに係合する。これにより、駆動入力ギア部41に回転駆動力が入力されたとき、出力側カップリング43が駆動入力ギア部41と同一の回転軸で駆動入力ギア部41と共に回転する。
【0031】
出力側カップリング43の内部にはコイルバネ45が配置されている。
図8ではコイルバネ45に負荷が加わらない状態(自然長)である。この状態では、コイルバネ45は出力側カップリング43の先端部の内面から駆動入力ギア部41の摺動孔41e内を通過し、摺動孔41eの開口縁(ウェブ41cと略面一の位置)まで延在している。
【0032】
カップリング退避機構47は、フレーム100aのガイド孔51(
図4参照)に回転可能に嵌合する環状部47aと、環状部47aから回転軸方向に沿って駆動入力ギア部41側に突出する押圧部47bと、環状部47aから径方向外側に突出するレバー47cとを有する。押圧部47bには、軸方向の突出量が徐々に変化する傾斜面47dが形成されている。
【0033】
図6は、出力側カップリング43が駆動入力ギア部41から突出した状態を示している。
図6の状態からレバー47cを把持してカップリング退避機構47を時計回り方向に回転させると、
図7に示すように押圧部47bが傾斜面47dに沿って出力側カップリング43のフランジ部43dに乗り上げる。これにより、出力側カップリング43が押圧部47bによって押圧され、コイルバネ45の付勢力に抗して駆動入力ギア部41に近づく方向に退避する。その結果、出力側カップリング43と現像ユニット16の入力側カップリングとの係合が解除されるため、現像ユニット16をガイドレール50に沿って取り外し可能となる。
【0034】
本実施形態の駆動伝達ユニット40を含む駆動部30の組み立て手順について説明する。先ず、フレーム100aの外側(
図3の紙面手前側)を上にして水平に載置し、ギア33、35、37および60を所定位置に装着する。次に、フレーム100aのガイド孔51にカップリング退避機構47を嵌め込む。さらに、カップリング退避機構47の上から回転中心を合わせて駆動入力ギア部41および出力側カップリング43を配置する。
【0035】
次に、駆動入力ギア部41の摺動孔41eにコイルバネ45を挿入する。最後に、駆動板金31に固定された摺動ピン53を摺動孔41eに位置合わせして挿入し、
図2に示したように駆動板金31をフレーム100aにビス固定して駆動部30の組み立てを完了する。
【0036】
図9は、
図8に示した駆動伝達ユニット40の駆動入力ギア部41側に駆動板金31を装着した状態を示す図である。
図9に示すように、摺動ピン53は駆動板金31の凹部31aの中心にカシメ固定されている。摺動ピン53がボス41aの摺動孔41eに挿入されることにより、駆動入力ギア部41は摺動ピン53に回転可能に支持される。
【0037】
摺動孔41eへの摺動ピン53の挿入によって、出力側カップリング43およびボス41a内のコイルバネ45が圧縮され、コイルバネ45は出力側カップリング43の先端部の内面と摺動ピン53の先端との間に挟持される。その結果、出力側カップリング43は駆動入力ギア部41から離間する方向(
図9の左方向)に付勢される。
【0038】
駆動モーター32が回転駆動を開始すると、ギア33、35、37を介して駆動入力ギア部45のリム41bに回転駆動力が伝達される。そして、駆動入力ギア部41から出力側カップリング43に回転駆動力が伝達され、出力側カップリング43に嵌合する入力側カップリングを介して現像ユニット16内の現像ローラー16aおよび攪拌搬送スクリュー(図示せず)に回転駆動力が伝達される。
【0039】
本実施形態の構成によれば、コイルバネ45は駆動板金31に固定された摺動ピン53によって押圧され、出力側カップリング43を噛み合い方向に付勢する。そのため、駆動板金31の装着前はコイルバネ45による付勢力が出力側カップリング43に作用しない。
【0040】
これにより、出力側カップリング43の抜け止め機構が不要となるため、
図10~
図12に示した、駆動入力ギア部102と出力側カップリング103との間にコイルバネ105を配置する従来の駆動伝達ユニット101のように、駆動入力ギア部102の係止爪102aや食い切り孔102b、出力側カップリング103のスリット103aを形成する必要がない。従って、駆動伝達ユニット40を構成する部品の強度低下を抑制することができる。
【0041】
また、駆動部30の組み立て時に、駆動入力ギア部41のスラスト方向の位置が、カップリング退避機構47の位相によらず隣接するギア37、60と噛み合う適切な位置となる。従って、駆動板金31の装着性も維持することができる。
【0042】
その他、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、現像ユニット16内の現像ローラー16aおよび攪拌搬送スクリュー(図示せず)に回転駆動力を伝達する駆動伝達ユニット40に本発明を適用した例について示したが、本発明はこれに限らず、ドラムユニット25等の他のユニットに回転駆動力を伝達する駆動伝達機構に本発明を適用してもよい。
【0043】
また本発明は、
図1に示したようなモノクロプリンターに限らず、モノクロおよびカラー複写機、デジタル複合機、カラープリンター、ファクシミリ等の種々の画像形成装置に利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、駆動入力ギア部と出力側カップリングとを用いて被回転部材に駆動力を伝達する駆動伝達機構に利用可能である。本発明の利用により、駆動入力ギア部と出力側カップリングの強度を確保しつつ、組み立て作業性にも優れた駆動伝達機構およびそれを備えた画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0045】
16 現像ユニット
16a 現像ローラー(被駆動部材)
25 ドラムユニット
30 駆動部
31 駆動板金
32 駆動モーター
39 駆動伝達ギア列(駆動入力側ギア)
40 駆動伝達ユニット(駆動伝達機構)
41 駆動入力ギア部
41a ボス
41b リム
41c ウェブ
41d ギア歯
41e 摺動孔
43 出力側カップリング
45 コイルバネ
47 カップリング退避機構
53 摺動ピン
100 画像形成装置
100a フレーム