(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】石噛み性能の評価方法
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20240509BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B60C19/00 H
B60C5/00 H
(21)【出願番号】P 2020071713
(22)【出願日】2020-04-13
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 悦郎
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-067706(JP,A)
【文献】特開2020-050225(JP,A)
【文献】特開2017-222315(JP,A)
【文献】特開2014-007795(JP,A)
【文献】特開2008-201373(JP,A)
【文献】特開2008-290541(JP,A)
【文献】特開2013-082271(JP,A)
【文献】特開2010-058698(JP,A)
【文献】特開2014-218109(JP,A)
【文献】特開2017-089170(JP,A)
【文献】登録実用新案第3189446(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 19/00
B60C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝を刻むことでトレッドパターンが構成されたトレッドを有するタイヤの石噛み性能を評価するための方法であって、
前記タイヤを装着した四輪自動車を、多数の石を含む試験路面を有する試験コースで走行させる工程と、
前記溝に噛み込んだ前記石の数を計数する工程と
を含み、
前記タイヤが、タイヤサイズが同じである第一タイヤ及び第二タイヤであり、
前記第一タイヤが前記四輪自動車の前方左側及び後方右側に装着され、
前記第二タイヤが前記四輪自動車の前方右側及び後方左側に装着され
、
前記試験コースが、直線コース部と、前記直線コース部の両側に位置する一対の旋回コース部とを備え、
前記走行工程において、前記旋回コース部での前記四輪自動車の旋回走行の向きがそれぞれの旋回コース部で互いに逆向きになるように、前記四輪自動車は旋回走行させられる、石噛み性能の評価方法。
【請求項2】
前記第一タイヤのトレッドと、前記第二タイヤのトレッドとが異なる、請求項1に記載の石噛み性能の評価方法。
【請求項3】
前記試験路面が、前記多数の石で構成された、砂利層からなり、
前記砂利層が少なくとも15cmの厚さを有する、請求項1又は2に記載の石噛み性能の評価方法。
【請求項4】
前記走行工程の前に、転圧機械を用いて前記試験路面が固められる、請求項1から3のいずれか1項に記載の石噛み性能の評価方法。
【請求項5】
前記走行工程における前記四輪自動車の走行距離が1.0km以上5.0km以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の石噛み性能の評価方法。
【請求項6】
前記直線コース部の距離が50m以上200m以下であり、前回旋回コース部における前記四輪自動車の最小旋回半径が10m以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載の石噛み性能の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石噛み性能の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのトレッドには、溝が刻まれる。これにより、トレッドにはトレッドパターンが構成される。石が散在する路面や、砂利道を、タイヤが走行すると、石が溝に噛むことがある。石が噛んだ溝は、溝として機能できない。溝に石が噛むことで、局部的に陸部の変形が抑えられ、偏摩耗が発生することが懸念される。そこで、石が溝に噛むことを抑制できる技術の確立を目指した検討が行われている(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤの溝に石が噛みやすいかどうかの評価、すなわち、タイヤの石噛み性能の評価は、評価対象のタイヤを装着した車両を、砂利道等で走行させて行われるのが一般的である。タイヤに作用する力の大きさや向きは、タイヤを装着する位置によって異なる。評価対象のタイヤは、車両の全輪に装着される、又は、車両の前輪若しくは後輪に装着される。
【0005】
二種類のタイヤを評価する場合、一方のタイヤの評価の後に、他方のタイヤの評価が行われる。この評価方法は、二種類のタイヤを同時に評価することは予定していない。路面状態は、タイヤの石噛み状況に影響する。走行により路面状態は変化するので、この評価方法で得られる結果には路面状態も反映される。石噛み性能の向上のためにタイヤには、様々な対策が施される。この対策の有効性をより正確に把握できるよう、対比可能な結果を効率よく得ることができる、評価方法の確立が求められている。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、対比可能な結果を効率よく得ることができる、石噛み性能の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る石噛み性能の評価方法は、溝を刻むことでトレッドパターンが構成されたトレッドを有するタイヤの石噛み性能を評価するための方法である。この評価方法は、
(1)前記タイヤを装着した四輪自動車を、多数の石を含む試験路面を有する試験コースで走行させる工程、及び
(2)前記溝に噛み込んだ前記石の数を計数する工程
を含む。前記タイヤは、タイヤサイズが同じである第一タイヤ及び第二タイヤである。前記第一タイヤは前記四輪自動車の前方左側及び後方右側に装着され、前記第二タイヤは前記四輪自動車の前方右側及び後方左側に装着される。
【0008】
好ましくは、この石噛み性能の評価方法では、前記第一タイヤのトレッドと、前記第二タイヤのトレッドとは異なる。
【0009】
好ましくは、この石噛み性能の評価方法では、前記試験路面は、前記多数の石で構成された、砂利層からなる。前記砂利層は、少なくとも15cmの厚さを有する。
【0010】
好ましくは、この石噛み性能の評価方法では、前記走行工程の前に、転圧機械を用いて前記試験路面は固められる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の石噛み性能の評価方法によれば、対比可能な結果が効率よく得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る石噛み性能の評価方法で用いられる第一タイヤの一例を示す展開図である。
【
図2】
図2は、第二タイヤの一例を示す展開図である。
【
図3】
図3は、試験コースの一例を示す平面図である。
【
図4】
図4は、試験コースの構成を説明する断面図である。
【
図5】
図5は、四輪自動車へのタイヤの装着を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0014】
本開示においては、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけない状態は、正規状態と称される。本開示では、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
【0015】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0016】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用タイヤの場合、特に言及がない限り、正規内圧は180kPaである。
【0017】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。乗用車用タイヤの場合、特に言及がない限り、正規荷重は前記荷重の88%に相当する荷重である。
【0018】
本開示において、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の硬さは、JIS K6253の規定に準じて、23℃の温度条件下でタイプAデュロメータを用いて測定される。
【0019】
本開示において、「タイヤサイズ」とは、JIS D4202「自動車用タイヤ-呼び方及び諸元」に規定された「タイヤの呼び」を意味する。
【0020】
本開示の一実施形態に係る石噛み性能の評価方法は、タイヤの石噛み性能を評価するための方法である。この評価方法では、評価対象のタイヤを四輪自動車に装着し、この四輪自動車が試験コースで走行させられる。走行後、タイヤの石噛み状況が確認される。まず、この評価方法で用いられるタイヤが説明される。
【0021】
[タイヤ]
この評価方法では、評価の対象とするタイヤ2は、溝を刻むことでトレッドパターンが構成されたトレッドを有するタイヤ2である。評価対象のタイヤ2の用途に特に制限はなく、このタイヤ2は、トラック及びバス用タイヤであってもよく、乗用車用タイヤであってもよく、小形トラック用タイヤであってもよい。なお、この評価方法では、四輪自動車が用いられるが、この四輪自動車は評価対象のタイヤ2の用途に応じて適宜選定される。
【0022】
この評価方法では、評価対象のタイヤ2として、タイヤサイズが同じである二種類のタイヤ2が準備される。この評価方法では、二種類のタイヤ2のうち、一方のタイヤ2が第一タイヤ2aと称され、他方のタイヤ2が第二タイヤ2bと称される。この評価方法で用いられるタイヤ2は、タイヤサイズが同じである、第一タイヤ2a及び第二タイヤ2bである。
【0023】
図1及び
図2には、本開示の一実施形態に係る石噛み性能の評価方法で用いられる二種類のタイヤ2の一例を示す。本開示においては、
図1に示されたタイヤ2が第一タイヤ2aであり、
図2に示されたタイヤ2が第二タイヤ2bである。第一タイヤ2a及び第二タイヤ2bは小形トラック用タイヤである。
【0024】
図1には、第一タイヤ2aのトレッド4aが示される。
図1において、上下方向は周方向であり、左右方向は軸方向である。紙面に対して垂直な方向は、径方向である。
図1において、一点鎖線CL1は第一タイヤ2aの赤道面を表す。
【0025】
トレッド4aは架橋ゴムからなる。トレッド4aには、溝6aが刻まれる。これにより、トレッド4aにトレッドパターンが構成される。
【0026】
第一タイヤ2aのトレッド4aには、周方向に連続して延びる溝6a、すなわち周方向溝8aが刻まれる。これにより、トレッド4aに複数の陸部10aが構成される。これら陸部10aは、軸方向に並列する。それぞれの陸部10aには、軸方向に延びる溝6a、すなわち軸方向溝12aが刻まれる。これにより、陸部10aに複数のブロック14aが構成される。これらブロック14aは、周方向に間隔をあけて配置される。
【0027】
図1に示されるように、第一タイヤ2aのトレッド4aには、4本の周方向溝8aが刻まれ、5本の陸部10aが構成される。5本の陸部10aは、軸方向において、中心に位置するセンター陸部16と、このセンター陸部16の外側に位置する、一対のミドル陸部18と、このミドル陸部18の外側に位置する、一対のショルダー陸部20とで構成される。この第一タイヤ2aの赤道面上には、センター陸部16が位置する。センター陸部16を構成するブロック14aと、ミドル陸部18を構成するブロック14aとには、サイプ22が刻まれている。
【0028】
図2には、第二タイヤ2bのトレッド4bが示される。
図2において、上下方向は周方向であり、左右方向は軸方向である。紙面に対して垂直な方向は、径方向である。
図2において、一点鎖線CL2は第二タイヤ2bの赤道面を表す。
【0029】
第二タイヤ2bのトレッド4bも架橋ゴムからなる。このトレッド4bにも溝6bが刻まれ、トレッドパターンが構成される。
【0030】
第二タイヤ2bのトレッド4bにも、周方向溝8bが刻まれる。これにより、トレッド4bに複数の陸部10bが構成される。それぞれの陸部10bには、軸方向溝12bが刻まれる。これにより、陸部10bに複数のブロック14bが構成される。
【0031】
図2に示されるように、第二タイヤ2bのトレッド4bには、5本の周方向溝8bが刻まれ、6本の陸部10bが構成される。5本の周方向溝8bは、軸方向において、中心に位置するセンター周方向溝24と、このセンター周方向溝24の外側に位置する、一対のミドル周方向溝26と、このミドル周方向溝26の外側に位置する、一対のショルダー周方向溝28とで構成される。この第二タイヤ2bの赤道面上には、センター周方向溝24が位置する。各陸部10bを構成するブロック14bには、サイプは刻まれていない。
【0032】
第二タイヤ2bのトレッドパターンは、
図1に示された第一タイヤ2aのトレッドパターンとは異なる。この第二タイヤ2bは、
図1に示された第一タイヤ2aと、同じタイヤサイズを有するが、異なるトレッドパターンを有する。第一タイヤ2aのトレッド4aと、第二タイヤ2bのトレッド4bとは異なる。
【0033】
前述したように、この評価方法では、タイヤサイズが同じである二種類のタイヤ2が用いられる。この評価方法が対象とする二種類のタイヤ2においては、第一タイヤ2aのトレッド4aと、第二タイヤ2bのトレッド4bとが異なっていればよい。ここで、第一タイヤ2aのトレッド4aと、第二タイヤ2bのトレッド4bとが異なる場合としては、トレッドパターンが異なる場合、トレッド4の硬さが異なる場合、トレッドパターンを構成する溝6の断面形状が異なる場合、トレッドパターンを構成する溝6の底に凸部(図示されず)を設けているか否かの違いがある場合等が挙げられる。
【0034】
詳述しないが、タイヤ2は、トレッド4以外にサイドウォール等の多数の要素を備える。この評価方法が対象とする二種類のタイヤ2においては、トレッド4以外の構成は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0035】
前述したように、この評価方法では、評価対象のタイヤ2を装着した四輪自動車を試験コースで走行させることで、タイヤ2の石噛み性能が評価される。次に、この評価方法で用いる試験コースが説明される。
【0036】
[試験コース]
図3には、この評価方法で用いる試験コース32の一例が示される。この試験コース32は、直線コース部34と、一対の旋回コース部36とを備える。本開示においては、この
図3において一方側、すなわち右側に位置する旋回コース部36は第一旋回コース部36aと称される。他方側、すなわち左側に位置する旋回コース部36は第二旋回コース部36bと称される。
【0037】
図3に示されるように、この試験コース32では、一対の旋回コース部36、すなわち、第一旋回コース部36aと第二旋回コース部36bとは、直線コース部34の両側に位置する。この試験コース32においては、一の直線コース部34が、第一旋回コース部36aと第二旋回コース部36bとの間を架け渡している。
【0038】
この評価方法では、例えば、四輪自動車38は、直線コース部34を他方側から一方側に向かって走行し、第一旋回コース部36aに進入する。四輪自動車38は、この第一旋回コース部36aで旋回走行を行い、再び、直線コース部34に進入する。四輪自動車38は、直線コース部34を一方側から他方側に向かって走行し、第二旋回コース部36bに進入する。四輪自動車38は、この第二旋回コース部36bで旋回走行を行い、再び、直線コース部34に進入する。この評価方法では、直線コース部34、第一旋回コース部36a、直線コース部34及び第二旋回コース部36bを順に四輪自動車38が走行することで、四輪自動車38は試験コース32を1周走行したことになる。
【0039】
この試験コース32では、第二旋回コース部36bにおいて、第一旋回コース部36aでの旋回走行とは逆向きに旋回走行することで、四輪自動車38の走行モードとしての、直進走行モード、左旋回走行モード、そして右旋回走行モードが実行される。この試験コース32は、四輪自動車38の走行モードの全てをタイヤ2が経験できるように構成されている。
【0040】
図4には、試験コース32の断面が、この試験コース32を走行する四輪自動車38とともに示される。この
図4に示されるように、試験コース32は、下地層40と、この下地層40に積層された砂利層42とを備える。下地層40は、地ならしをした地盤である。この下地層40は路床とも称される。砂利層42は、多数の石で構成される、所定の厚さを有する層である。この試験コース32では、試験路面44は砂利層42からなる。砂利層42は多数の石を含む。この試験コース32は、多数の石を含む試験路面44を有する。
【0041】
この評価方法では、下地層40上に多数の石を散布して砂利層42が構成されてもよく、下地層40上に多数の石を散布した後に、プレートコンパクター、ランマー、ローラー等の転圧機械(図示されず)によってこれらの石を締め固めて砂利層42が構成されてもよい。
【0042】
この評価方法では、タイヤ2の溝6に噛み込むことができる大きさを有する石であれば、砂利層42に用いられる石に、特に、制限はない。この評価方法では、溝6への噛みやすさの観点から、1mm以上10mm以下の大きさを有する石が、砂利層42の石として好適に用いられる。
【0043】
この評価方法では、以上説明した、タイヤ2、試験コース32及びこのタイヤ2が装着される四輪自動車38を用いて、このタイヤ2の石噛み性能が評価される。次に、この評価方法が説明される。
【0044】
[評価方法]
この評価方法では、評価対象のタイヤ2が四輪自動車38に装着される。この評価方法は、四輪自動車38にタイヤ2を装着する工程を含む。この装着工程では、タイヤ2はリムに組まれる。タイヤ2の内部に空気が充填され、タイヤ2の内圧が調整される。調整後、リム46が四輪自動車38に取り付けられる。これにより、タイヤ2の四輪自動車38への装着が完了する。
【0045】
この評価方法では、タイヤ2が組まれるリム46として正規リムが用いられる。タイヤ2の内圧は通常、正規内圧に調整されるが、この内圧が正規内圧よりも低い圧力に設定されてもよく、正規内圧よりも高い圧力に設定されてもよい。
【0046】
この評価方法では、タイヤ2の四輪自動車38への装着が完了すると、タイヤ2を装着した四輪自動車38が、試験コース32で走行させられる。この評価方法は、タイヤ2を装着した四輪自動車38を、試験コース32で走行させる工程を含む。この評価方法では、四輪自動車38は所定の速度で走行させられる。走行距離が所定の距離に到達すると、四輪自動車38の走行が停止される。これにより、走行工程が完了する。
【0047】
この評価方法では、四輪自動車38の乗車人数は通常1名(ドライバーのみ)であるが、乗車人数が2名以上であってもよい。四輪自動車38が荷室を有する場合には、この四輪自動車38に荷物が積載されてもよい。この評価方法では、タイヤ2に作用する荷重は、正規荷重を超えない範囲で、乗車人数又は荷物の積載量により適宜調整される。
【0048】
この評価方法では、走行工程が完了すると、タイヤ2の溝6に噛み込んだ石の数が計数される。この評価方法は、溝6に噛み込んだ石の数を計数する工程を含む。この評価方法では、この計数結果に基づいて、タイヤ2の石噛み性能が評価される。溝6に噛み込んだ石の数が多いほど、溝6に石が噛みやすいことを表す。言い換えれば、溝6に噛み込んだ石の数が少ないタイヤ2は、耐石噛み性能に優れる。
【0049】
前述したように、評価対象のタイヤ2はタイヤサイズが同じである第一タイヤ2a及び第二タイヤ2bである。この評価方法では、この評価対象である第一タイヤ2a及び第二タイヤ2bが一台の四輪自動車38に装着される。この評価方法では、二種類のタイヤ2が同時に評価される。
【0050】
図5には、評価対象のタイヤ2の装着位置が示される。この
図5において、上側が四輪自動車38の前方側である。
図5(a)には、前輪及び後輪それぞれがシングルタイヤで構成される四輪自動車38へのタイヤ2の装着例が示される。
図5(b)には、前輪がシングルタイヤで構成され後輪がダブルタイヤで構成される四輪自動車38へのタイヤ2の装着例が示される。
【0051】
図5に示されるように、この評価方法では、第一タイヤ2aが四輪自動車38の前方左側及び後方右側に装着され、第二タイヤ2bが四輪自動車38の前方右側及び後方左側に装着される。
【0052】
この評価方法では、四輪自動車38の前後において、左右に装着されるタイヤ2の種類が異なるように、四輪自動車38にタイヤ2が装着される。このため、タイヤ2の石の噛み込みやすさに違いがあっても、四輪自動車38の左右両側のそれぞれに、石が噛みやすいタイヤ2と、石が噛みにくいタイヤ2とが位置する。四輪自動車38の前方及び後方のそれぞれに、石が噛みやすいタイヤ2と、石が噛みにくいタイヤ2とが位置する。
【0053】
この評価方法では、前方の左右両側に第一タイヤ2aを装着し、後方の左右両側に第二タイヤ2bを装着した場合や、左側の前後両方に第一タイヤ2aを装着し、右側の前後両方に第二タイヤ2bを装着した場合に比べて、タイヤ2に石が噛むことによる、四輪自動車38の走行状態への影響が効果的に抑えられる。この評価方法では、タイヤ2の石噛み性能に関して、対比可能な結果が効率よく得られる。
【0054】
図4において、両矢印Tは試験路面44を構成する砂利層42の厚さを表す。この厚さTは、砂利層42の最小厚さにより表される。
【0055】
この評価方法では、試験路面44は多数の石で構成された砂利層42からなり、この砂利層42が少なくとも15cmの厚さを有するのが好ましい。これにより、走行による砂利層42の崩れを防止でき、タイヤ2のトレッド4を、試験路面44に含まれる石と安定に接触させ続けることができる。石が溝6に噛みやすいタイヤ2においては、溝6への石噛みが促される。この評価方法では、タイヤ2の石噛み性能に関して、対比可能な結果が効率よく得られる。この観点から、砂利層42の厚さTは17cm以上がより好ましく、19cm以上がさらに好ましい。砂利層42のメンテナンスが容易であるとの観点から、この厚さTは25cm以下が好ましい。
【0056】
この評価方法では、走行による砂利層42の崩れを防止し、タイヤ2のトレッド4を、試験路面44に含まれる石と安定に接触させ続けることができるとの観点から、走行工程の前に、前述の転圧機械を用いて試験路面44が固められるのが好ましい。特に、転圧機械を用いて試験路面44が固められた砂利層42が少なくとも15cmの厚さを有することで、走行による砂利層42の崩れを効果的に防止でき、タイヤ2のトレッド4を、試験路面44に含まれる石とより安定に接触させ続けることができる。この評価方法は、タイヤ2の石噛み性能に関して、対比可能な結果を効率よく得ることができる。
【0057】
図3に示された試験コース32を用いて、この評価方法を行う場合、前述したように、第二旋回コース部36bにおいて、第一旋回コース部36aでの旋回走行とは逆向きに旋回走行することで、四輪自動車38の走行モードとしての、直進走行モード、左旋回走行モード、そして右旋回走行モードが実行される。この場合、四輪自動車38のそれぞれのタイヤ2に対し、横加速度及び前後加速度がほぼ均等に作用する。この評価方法では、試験コース32としてオーバルコースを採用した場合に比べて、四輪自動車38に装着されたタイヤ2に作用する横加速度及び前後加速度の偏りが抑えられる。この評価方法では、タイヤ2の石噛み性能に関して、対比可能な結果が効率よく得られる。この観点から、この評価方法では、試験コース32は、直線コース部34と、この直線コース部34の両側に位置する一対の旋回コース部36とを備えるのが好ましい。この場合、旋回コース部36での四輪自動車38の旋回走行の向きがそれぞれの旋回コース部36で互いに逆向きになるように、四輪自動車38は旋回走行させられるのがより好ましい。
【0058】
図3において、両矢印Sは直線コース部34の距離を表す。矢印Rは、旋回コース部36での四輪自動車38の旋回走行における、この四輪自動車38の最小旋回半径を表す。四輪自動車38は、旋回コース部36において、この最小旋回半径Rで表される円の軌跡の外側を走行する。
【0059】
この評価方法では、直線コース部34は少なくとも50mの距離Sを有するのが好ましい。これにより、この評価方法では、タイヤ2の石噛み性能に関して、対比可能な結果が効率よく得られる。この観点から、この距離Sは60m以上がより好ましく、70m以上がさらに好ましい。対比可能な結果が得られる観点においては、距離Sは長いほど好ましいが、試験コース32のメンテナンスが容易であるとの観点から、この距離Sは200m以下が好ましい。
【0060】
この評価方法では、旋回コース部36における四輪自動車38の最小旋回半径Rは、10m以下が好ましい。これにより、四輪自動車38に装着されたタイヤ2に適度な横加速度が作用し、石が噛みやすいタイヤ2に対しては石の溝への噛み込みが促される。この評価方法では、タイヤ2の石噛み性能に関して、対比可能な結果が効率よく得られる。この観点から、最小旋回半径Rは、9m以下がより好ましく、8m以下がさらに好ましい。なお、最小旋回半径Rの好ましい下限は、評価方法に使用する四輪自動車38の最小回転半径を考慮の上、適宜決められる。
【0061】
この評価方法では、石噛みが再現できるのであれば、走行工程における四輪自動車38の走行速度に特に制限はない。溝6への石の噛み込みが促される観点から、四輪自動車38は低速で走行させられるのが好ましい。具体的には、四輪自動車38の走行速度は40km/h以下が好ましく、30km/h以下がより好ましい。石噛み性能に関し、対比可能なデータが効率よく得られる観点から、この走行速度は5km/h以上が好ましく、10km/h以上がより好ましい。
【0062】
この評価方法では、石噛みが再現できるのであれば、走行工程における四輪自動車38の走行距離に特に制限はない。溝6への石の噛み込みが促される観点から、四輪自動車38の走行距離は長いほど好ましい。具体的には、四輪自動車38の走行距離は1.0km以上が好ましく、1.5km以上がより好ましい。石噛み性能に関し、対比可能なデータが効率よく得られる観点から、この走行距離は5.0km以下が好ましく、3.0km以下がより好ましい。
【0063】
以上説明したように、本発明によれば、対比可能な結果を効率よく得ることができる、石噛み性能の評価方法が得られる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0065】
[実施例]
評価対象の二種類のタイヤとして、
図1に示されたトレッドを有する第一タイヤ(タイヤサイズ=205/85R16)と、
図2に示されたトレッドを有する第二タイヤ(タイヤサイズ=205/85R16)を準備した。第一タイヤ及び第二タイヤは市販タイヤであり、第二タイヤの溝には、第一タイヤよりも石が噛みやすい傾向にあることが確認されている。
【0066】
第一タイヤを正規リムに組み、第一タイヤの内圧を正規内圧に調整した。第二タイヤを正規リムに組み、第二タイヤの内圧を正規内圧に調整した。内圧調整後、第一タイヤ及び第二タイヤが四輪自動車(10tトラック)に装着された。第一タイヤ及び第二タイヤの装着位置は、
図5(b)に示される通りである。
【0067】
試験コースとしては、
図3に示された試験コースが用いられた。試験コースの直線コース部の距離Sは60mに設定された。旋回コース部における細小旋回半径Rは5mに設定された。旋回コース部において四輪自動車は、半径Rが5mである円で表される軌跡の外側を走行した。この試験コースの試験路面は砂利層からなり、この砂利層は1~10mmの大きさを有する多数の石で構成された。走行工程の前に、転圧機械(ローラー)を用いて砂利層が固められた。砂利層の最小厚さは15cmに設定された。
【0068】
タイヤを装着した四輪自動車を試験コースで走行させて、第一タイヤ及び第二タイヤの石噛み性能を評価した。走行速度は20km/hに設定された。走行距離は2.0kmに設定された。走行後、タイヤの溝に噛み込んだ石の数を計数した。その結果が下記の表1に示されている。数値が小さいほど、溝に噛み込んだ石の数は少なく、耐石噛み性能に優れることを表す。なお、後輪の石の数は、後輪に装着した2本のタイヤの平均値で表されている。
【0069】
【0070】
表1に示されるように、前輪では、第二タイヤに噛み込んだ石の数は第一タイヤに噛み込んだ石の数の4.0倍であった。後輪では、第二タイヤに噛み込んだ石の数は第一タイヤに噛み込んだ石の数の3.5倍であった。第二タイヤの石噛み性能は、第一タイヤよりも劣っている。この結果は、実際の使用において確認されていた傾向に一致する。
【0071】
四輪自動車の全輪に第一タイヤ又は第二タイヤを装着して行う従来の評価方法では、対比可能な結果を得るために、走行試験を2回行う必要がある。これに対して、この評価方法では、1回の走行試験で対比可能な結果が得られる。この評価方法によれば、対比可能な結果が効率よく得られる。しかも、この評価方法は、石噛み性能の結果を定量的に評価できる。本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上説明された、石噛み性能の評価方法は種々のタイヤにも適用できる。
【符号の説明】
【0073】
2、2a、2b・・・タイヤ
4、4a、4b・・・トレッド
6、6a、6b・・・溝
8a、8b・・・周方向溝
10a、10b・・・陸部
12a、12b・・・軸方向溝
14a、14b・・・ブロック
16・・・センター陸部
18・・・ミドル陸部
20・・・ショルダー陸部
22・・・サイプ
24・・・センター周方向溝
26・・・ミドル周方向溝
28・・・ショルダー周方向溝
32・・・試験コース
34・・・直線コース部
36、36a、36b・・・旋回コース部
38・・・四輪自動車
40・・・下地層
42・・・砂利層
44・・・試験路面
46・・・リム