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特許7484376ロボットシステム、及び、ロボットの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ロボットシステム、及び、ロボットの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20240509BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20240509BHJP
   G05B 19/4061 20060101ALI20240509BHJP
   G05B 19/4069 20060101ALN20240509BHJP
【FI】
B25J9/22 A
B25J19/00 E
G05B19/4061 Z
G05B19/4069
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020075863
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021171850
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 正一
【審査官】岩▲崎▼ 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-030893(JP,A)
【文献】特開2013-184283(JP,A)
【文献】国際公開第2018/037662(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/221334(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
G05B 19/18-19/418
G05B 19/42-19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームを有し、前記アームが前記アームの外側に設置される配線又は配管を覆うためのアームカバーを取り付け可能に構成されているロボットと、
前記アームへの前記アームカバーの取り付けを示す第1入力を受け付ける入力受付部と、
前記第1入力に応じて、前記ロボットの可動範囲を、前記アームカバーの取り付けが無い場合の第1可動範囲よりも狭い第2可動範囲に決定する可動範囲決定部と、
前記第2可動範囲に従って前記ロボットの動作を制御するロボット制御部と、
を備え
前記アームは、前記アームカバーとして複数種類のアームカバーを取り付けることが可能に構成されており、
前記第1入力は、前記複数種類のアームカバーのうちのいずれのアームカバーが取り付けられるかを区別する入力であり、
前記可動範囲決定部には、前記複数種類のアームカバーに対応する複数の前記第2可動範囲が予め登録されており、前記第1入力に応じて前記複数の第2可動範囲のうちの1つを選択する、ロボットシステム。
【請求項2】
アームを有し、前記アームが前記アームの外側に設置される配線又は配管を覆うためのアームカバーを取り付け可能に構成されているロボットと、
前記アームへの前記アームカバーの取り付けを示す第1入力を受け付ける入力受付部と、
前記第1入力に応じて、前記ロボットの可動範囲を、前記アームカバーの取り付けが無い場合の第1可動範囲よりも狭い第2可動範囲に決定する可動範囲決定部と、
前記第2可動範囲に従って前記ロボットの動作を制御するロボット制御部と、
を備え、
前記入力受付部は、前記第1入力の他に、前記ロボットの可動範囲に影響のある第2入力を受け付けることが可能であり、
前記可動範囲決定部は、機械学習済みの決定モデルを使用して前記第1入力と前記第2入力から前記第2可動範囲を決定する、ロボットシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロボットシステムであって、
前記入力受付部は、パーソナルコンピューターにより実現され、前記第1入力はユーザーによって実行される、ロボットシステム。
【請求項4】
請求項1または2に記載のロボットシステムであって、
前記アームは、前記アームカバーが取り付けられたことを検知するセンサーを有し、
前記入力受付部は、前記センサーの検出結果を前記第1入力として受け付ける、ロボットシステム。
【請求項5】
アームの外側に設置される配線又は配管を覆うための複数種類のアームカバーを取り付け可能に構成されているロボットの制御方法であって、
(a)前記アームへの前記アームカバーの取り付けを示す第1入力を受け付ける工程と、
(b)前記第1入力に応じて、前記ロボットの可動範囲を、前記アームカバーの取り付けが無い場合の第1可動範囲よりも狭い第2可動範囲に決定する工程と、
(c)前記第2可動範囲に従って前記ロボットの動作を制御する工程と、
を含み、
前記第1入力は、前記複数種類のアームカバーのうちのいずれのアームカバーが取り付けられるかを区別する入力であり、
前記第2可動範囲は、予め登録された前記複数種類のアームカバーに対応する複数の前記第2可動範囲のうちから一つ選択される、制御方法。
【請求項6】
アームの外側に設置される配線又は配管を覆うためのアームカバーを取り付け可能に構成されているロボットの制御方法であって、
(a)前記アームへの前記アームカバーの取り付けを示す第1入力と、前記ロボットの可動範囲に影響のある第2入力と、を受け付ける工程と、
(b)前記第1入力に応じて、前記ロボットの可動範囲を、前記アームカバーの取り付けが無い場合の第1可動範囲よりも狭い第2可動範囲に決定する工程と、
(c)前記第2可動範囲に従って前記ロボットの動作を制御する工程と、
を含み、
前記第2可動範囲は、機械学習済みの決定モデルを使用して前記第1入力と前記第2入力から決定される、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットシステム及びロボットの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボットの手先には、手先の機構のために配線又は配管が接続される場合がある。このような配線又は配管は、多くの場合にアームに外付けされる。特許文献1には、ケーブル支持枠を用いてアームに配線又は配管を留める技術が開示されている。ケーブル支持枠を用いてアームに配線又は配管を留めると、ロボットの姿勢によって配線又は配管の姿勢がかわり、ケーブルが周辺装置に接触してしまうという不具合が発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-46443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、アームの動作可能範囲を調整するためのトライアンドエラーを繰り返す作業が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、ロボットシステムが提供される。このロボットシステムは、アームを有し、前記アームが前記アームの外側に設置される配線又は配管を覆うためのアームカバーを取り付け可能に構成されているロボットと、前記アームへの前記アームカバーの取り付けを示す第1入力を受け付ける入力受付部と、前記第1入力に応じて、前記ロボットの可動範囲を、前記アームカバーの取り付けが無い場合の第1可動範囲よりも狭い第2可動範囲に決定する可動範囲決定部と、前記第2可動範囲に従って前記ロボットの動作を制御するロボット制御部と、を備える。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、アームの外側に設置される配線又は配管を覆うためのアームカバーを取り付け可能に構成されているロボットの制御方法が提供される。この制御方法は、(a)前記アームへの前記アームカバーの取り付けを示す第1入力を受け付ける工程と、(b)前記第1入力に応じて、前記ロボットの可動範囲を、前記アームカバーの取り付けが無い場合の第1可動範囲よりも狭い第2可動範囲に決定する工程と、(c)前記第2可動範囲に従って前記ロボットの動作を制御する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態のロボットシステムの概念図。
図2】第1実施形態におけるロボットシステムの動作を示すフローチャート。
図3】アームカバーの取り付け入力用のウィンドウの例を示す説明図。
図4】可動範囲の確認用ウィンドウの例を示す説明図。
図5】機械学習済み決定モデルを有する可動範囲決定部のブロック図。
図6】第2実施形態におけるロボットシステムの動作を示すフローチャート。
図7】第3実施形態のロボットシステムの概念図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態
図1は、本開示の第1実施形態のロボットシステム10の概念図である。このロボットシステム10は、ロボット100と、制御装置200と、パーソナルコンピューター300とを備える。
【0009】
ロボット100は、アーム110と、基台120とを備えている。アーム110の先端部には、ハンドなどのエンドエフェクター130が取り付けられている。アーム110の先端部とエンドエフェクター130とを合わせた部分を「手先」とも呼ぶ。この例では、ロボット100は6つの軸を有する垂直多関節ロボットである。但し、ロボット100は、水平多関節ロボットでもよく、また、少なくとも1つの軸を有するものを使用可能である。
【0010】
エンドエフェクター130には、接続ライン140を介して、エンドエフェクター用の補助装置400が接続されている。この例では、補助装置400はコンプレッサーであり、接続ライン140は空気配管である。エンドエフェクター130と補助装置400の組み合わせとしては、この例以外の種々の組み合わせを使用可能である。その場合に、接続ライン140は、エンドエフェクター130の構成に適した可撓性の配線又は配管を含むものが使用される。本開示において、「配線又は配管」とは、配線のみの構成と、配管のみの構成と、配線と配管を含む構成と、を包含する広い意味で使用される。接続ライン140は、アーム110の先端部に設けられたカメラやセンサー等の付属装置に接続するようにしてもよい。この場合には、その付属装置に適した補助装置が使用される。
【0011】
ロボット100のアーム110には、アーム110の外側に設置される接続ライン140を覆うためのアームカバー150を取り付けることが可能である。アームカバー150を取り付けることにより、接続ライン140の配線又は配管が、ロボット100の周囲に設置された周辺装置に接触することを防止できる。図1の例では、アームカバー150は、板状又は箱状の形状を有しており、樹脂又は金属により形成されている。但し、アームカバー150として、袋状のカバーを使用してもよい。
【0012】
制御装置200は、ロボット制御部210とメモリー220とを含んでいる。メモリー220には、ロボット100の作業プログラムが予め格納されている。ロボット制御部210は、作業プログラムに従ってロボット100の制御を実行する。
【0013】
パーソナルコンピューター300は、入力受付部310と、可動範囲決定部320と、可動範囲テーブル330と、作業プログラム作成部340と、シミュレーター350と、表示部360とを有している。入力受付部310は、アーム110へのアームカバー150の取り付けを示す入力を受け付ける。本実施形態では、この入力はユーザーによって行われるものであり、その具体例については後述する。可動範囲決定部320は、入力受付部310で受け付けられた入力に応じて、ロボット100の可動範囲を、アームカバー150の取り付けが無い場合の第1可動範囲よりも狭い第2可動範囲に決定する機能を有する。第1可動範囲と第2可動範囲は、可動範囲テーブル330に予め登録されている。作業プログラム作成部340は、ユーザーの指示に応じてロボット100の作業プログラムの生成や修正を実行する。作成された作業プログラムは、制御装置200にも送信される。シミュレーター350は、作業プログラムを用いてロボット100の動作をシミュレートし、作業プログラムに不具合がないか否かを確認する機能を有する。この際、シミュレーター350は、可動範囲決定部320で決定された可動範囲を使用してシミュレートを実行する。
【0014】
図2は、第1実施形態におけるロボットシステム10の動作を示すフローチャートである。図2の処理は、制御装置200とパーソナルコンピューター300によって実行される。ステップS110では、ユーザーがパーソナルコンピューター300を用いて、アーム110へのアームカバー150の取り付けを示す入力を行い、入力受付部310がその入力を受け付ける。ステップS120では、入力受付部310で受け付けられた入力に応じて、可動範囲決定部320がロボット100の可動範囲を決定する。
【0015】
図3は、アームカバー150の取り付け入力用のウィンドウW1の例を示す説明図である。このウィンドウW1は、ロボット100の各種設定を示す画面であり、ロボット100のモデル名や、軸数、リーチ、最大負荷などが表示されている。また、アームカバー設定として、「使用しない」、「タイプ1を使用する」、「タイプ2を使用する」などの複数の選択肢がプルダウンメニューとして選択可能に表示される。「タイプ1」や「タイプ2」は、アームカバー150の異なる種類を意味している。「タイプ1を使用する」又は「タイプ2を使用する」等のアームカバー150を使用する旨の選択肢が選択されると、その入力が入力受付部310によって受け付けられる。なお、プルダンメニューの代わりに、「アームカバーを使用する」ことを示すチェックボックスや、「タイプ1を使用する」「タイプ2を使用する」などを示すチェックボックスを使用してもよい。ウィンドウW1内の「可動範囲の確認」ボタンを押すと、アームカバー設定に応じて決定された可動範囲を確認することが可能である。
【0016】
図4は、可動範囲の確認用ウィンドウW2の例を示す説明図である。この例では、アームカバー150を使用しない場合の標準的な第1可動範囲R1と、タイプ1のアームカバー150を使用する場合の第2可動範囲R1とが示されている。これらの可動範囲R1,R2は、ロボット100の6つの軸が取り得る範囲として決定されている。第2可動範囲R2は、第1可動範囲R1よりも狭い範囲である。この例では、第2可動範囲R2は、第3軸J3と第4軸J4の範囲が第1可動範囲R1よりも狭く決定されている。これらの可動範囲R1,R2は、予め可動範囲テーブル330に登録されている。
【0017】
なお、アーム110に取り付けうるアームカバー150が1種類のみである場合には、可動範囲テーブル330には、そのアームカバー150に適した第2可動範囲R2が予め登録される。また、アーム110が複数種類のアームカバー150を取り付けることが可能に構成されている場合には、可動範囲テーブル330には、それらの複数種類のアームカバー150にそれぞれ適した第2可動範囲R2が予め登録される。入力受付部310は、図3に示したように、複数種類のアームカバー150のうちのいずれのアームカバー150が取り付けられるかを区別する入力を受け付ける。可動範囲決定部320は、入力受付部310で受け付けられた入力に応じて、複数の第2可動範囲R2のうちの1つを選択する。この構成によれば、アームカバー150の種類に応じて、ロボット100の可動範囲の設定を容易に実行できる。また、アームカバー150の種類に応じた第2可動範囲R2をその都度計算する必要が無く、適切な第2可動範囲R2を容易に決定できる。なお、可動範囲テーブル330は、可動範囲決定部320の一部を構成するものと考えることも可能である。また、可動範囲決定部320としては、以下で説明する機械学習を利用したものを使用可能である。
【0018】
図5は、機械学習を使用した可動範囲決定部320の構成を示すブロック図である。この可動範囲決定部320は、機械学習済みの決定モデル322を有する。この決定モデル322は、アームカバー150の取り付けを示す第1入力I1と、ロボット100の可動範囲に影響のある第2入力I2とに応じて、アームカバー150に適したロボット100の可動範囲R2を出力する。決定モデル322は、例えば、ニューラルネットワークとして構成することが可能である。第1入力I1は、前述した図3で説明したアームカバー設定によってなされた入力である。第2入力I2は、第1入力I1とは異なる入力であり、例えば、アームカバー150の寸法を示すデータや、アームカバー150の画像を第2入力I2として使用することができる。また、アームカバー150として袋状のカバーを使用する場合を考慮して、アームカバー150の材質を第2入力I2として使用してもよい。入力受付部310は、これらの2つの入力I1,I2を受け付けて可動範囲決定部320に送信する。可動範囲決定部320は、機械学習済みの決定モデル322を使用して、第1入力I1と第2入力I2から第2可動範囲R2を決定することが可能である。この構成によれば、可動範囲に影響のある第2入力I2も考慮してロボット100の可動範囲を適切に決定できる。但し、可動範囲決定部320は、決定モデル322を用いることなく、第1入力I1のみを用いて第2可動範囲R2を決定するようにしてもよい。
【0019】
図2のステップS130では、ステップS120で決定された可動範囲がパーソナルコンピューター300から制御装置200のロボット制御部210に送信される。ステップS140では、ステップS130で受信した可動範囲に基づいて、ロボット制御部210が作業プログラムに従ってロボット100の制御を実行する。ステップS150では、ロボット100の制御の実行中に、作業プラグラムに従った動作が可動範囲外となる可動範囲外エラーが生じたか否かが判定される。可動範囲外エラーが発生した場合には、ロボット制御部210は、作業プログラムに従った制御を停止し、可動範囲外エラーである旨をパーソナルコンピューター300に送信してユーザーに通知する。ステップS145では、ユーザーが作業プログラム作成部340を使用して作業プログラムを修正する。修正された作業プログラムは、制御装置200に送信され、ステップS140に戻る。こうして、可動範囲外エラーが発生しなくなるまでステップS140~S150を繰り返し実行し、ステップS160において作業が終了すると全体の処理を終了する。
【0020】
以上のように、第1実施形態では、配線又は配管を含む接続ライン140をアームカバー150で覆うので、接続ライン140が周辺装置に接触することを防止できる。また、アーム110にアームカバー150が取り付けられるときにロボット100の可動範囲をより狭い第2可動範囲R2に決定することによって、アームカバー150と周辺装置との干渉を防止するための設定を容易に実行できる。更に、ロボット100自身がアームカバー150と干渉することも防止できる。
【0021】
B.第2実施形態
図6は、第2実施形態におけるロボットシステム10の動作を示すフローチャートである。第2実施形態のロボットシステム10の構成は第1実施形態と同じであり、図6に示す動作の一部が図2と異なる。具体的には、図6のステップS110,S120は図2のステップS110,S120と同じであり、図2のステップS130以降の処理が図6のステップS210以降の処理に変更されている。
【0022】
ステップS210では、ステップS120で決定された可動範囲に基づいて、シミュレーター350が作業プログラムに従ってロボット100の動作のシミュレーションを実行する。ステップS220では、シミュレーションの実行中に、作業プラグラムに従った動作が可動範囲外となる可動範囲外エラーが生じたか否かが判定される。可動範囲外エラーが発生した場合には、シミュレーター350は、作業プログラムに従ったシミュレーションを停止し、可動範囲外エラーである旨をユーザーに通知する。ステップS215では、ユーザーが作業プログラム作成部340を使用して作業プログラムを修正して、ステップS210に戻る。こうして、可動範囲外エラーが発生しなくなるまでステップS210~S220を繰り返し実行し、ステップS230においてシミュレーションが終了するとステップS240に進む。ステップS240では、最終的な作業プログラムと可動範囲がパーソナルコンピューター300から制御装置200のロボット制御部210に送信される。ステップS250では、ロボット制御部210によって、ロボットの制御が実行される。
【0023】
上述した第2実施形態も第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第2実施形態では、ロボット100を実際に動作させず、シミュレーター350によって可動範囲と作業プログラムに不具合がないか否かを判定することができるという利点がある。
【0024】
C.第3実施形態
図7は、第3実施形態のロボットシステム10aの概念図である。このロボットシステム10aは、アームカバー150aの構成と、パーソナルコンピューター300が省略されてその一部の機能が制御装置200aで実現されている点で第1実施形態と異なっており、他の構成は第1実施形態のロボットシステム10と同じである。
【0025】
アームカバー150aは、ロボット100のアーム110と係合する係合部材としての爪152を有している。アーム110には、アームカバー150aが取り付けられたことを検知するセンサー160を有する。このセンサー160は、例えば、アームカバー150aの爪152がアーム110の係合部に係合したことを検出するセンサーである。具体的には、例えば、爪152とセンサー160にそれぞれ1つ以上の電気接点を設けておき、それらの電気接点の接触状態に応じてアームカバー150aの取り付け状態を検出することが可能である。複数種類のアームカバー150aを使用可能な場合には、その種類に応じてアームカバー150aの電気接点を異なる位置に配置すればよい。なお、センサー160としては、これ以外の種々のセンサーを利用可能である。
【0026】
ロボット100の基台120には、入力受付部170が設けられている。この入力受付部170は、センサー160で検知されたアームカバー150aの取り付け状態を制御装置200aに通知する。すなわち、入力受付部170は、センサー160の検出結果を、アームカバーの取り付けを示す入力として受け付ける。この構成によれば、ユーザーが入力を実行することなく、アームカバー150aが取り付けられていることを示す入力を入力受付部170に提供できる。
【0027】
制御装置200aは、ロボット制御部210とメモリー220の他に、可動範囲決定部320と、可動範囲テーブル330と、作業プログラム作成部340とを有している。これらの各部320~340は、第1実施形態においてパーソナルコンピューター300により実現されていたものであり、その機能や動作は第1実施形態におけるこれらの各部320~340の機能や動作とほぼ同じなので、その説明を省略する。本実施形態においては、たとえば、教示作業が既に済んだ状態において、アームカバー150aを異なる種類のアームカバーに取り換えたときに、第1実施形態と同様の効果を奏する。または、メンテナンス作業等によってアームカバー150aを一度取り外したのちに再度取り付けた場合に、第1実施形態と同様の効果を奏する。なお、教示作業が済んでいない場合にも、第1実施形態と同様の効果を奏する。この時、シミュレーターの機能を有するパーソナルコンピューターや制御装置を用意することで、シミュレーションを行うことも可能である。
【0028】
また、第3実施形態では、アームカバー150aが取り付けられていることを示す入力をユーザーが行う必要がないという利点がある。
【0029】
他の実施形態
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態(aspect)によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0030】
(1)本開示の第1形態によれば、ロボットシステムが提供される。このロボットシステムは、アームを有し、前記アームが前記アームの外側に設置される配線又は配管を覆うためのアームカバーを取り付け可能に構成されているロボットと、前記アームへの前記アームカバーの取り付けを示す第1入力を受け付ける入力受付部と、前記第1入力に応じて、前記ロボットの可動範囲を、前記アームカバーの取り付けが無い場合の第1可動範囲よりも狭い第2可動範囲に決定する可動範囲決定部と、前記第2可動範囲に従って前記ロボットの動作を制御するロボット制御部と、を備える。
このロボットシステムによれば、アームカバーで配線又は配管を覆うので、配線又は配管が周辺装置に接触することを防止できる。また、アームにアームカバーが取り付けられるときにロボットの可動範囲をより狭い第2可動範囲に決定することによって、アームカバーと周辺装置との干渉を防止するための設定を容易に実行できる。更に、ロボットがアームカバーと干渉することも防止できる。
【0031】
(2)上記ロボットシステムにおいて、前記アームは、前記アームカバーとして複数種類のアームカバーを取り付けることが可能に構成されており、前記第1入力は、前記複数種類のアームカバーのうちのいずれのアームカバーが取り付けられるかを区別する入力であり、前記可動範囲決定部には、前記複数種類のアームカバーに対応する複数の前記第2可動範囲が予め登録されており、前記第1入力に応じて前記複数の第2可動範囲のうちの1つを選択するものとしてもよい。
このロボットシステムによれば、アームに複数種類のアームカバーを取付可能な場合に、アームカバーの種類に応じて、ロボットの可動範囲の設定を容易に実行できる。また、アームカバーの種類に応じた可動範囲をその都度計算する必要が無く、適切な可動範囲を容易に設定できる。
【0032】
(3)上記ロボットシステムにおいて、前記入力受付部は、前記第1入力の他に、前記ロボットの可動範囲に影響のある第2入力を受け付けることが可能であり、前記可動範囲決定部は、機械学習済みの決定モデルを使用して前記第1入力と前記第2入力から前記第2可動範囲を決定するものとしてもよい。
このロボットシステムによれば、可動範囲に影響のある第2入力も考慮してロボットの可動範囲を適切に決定できる。
【0033】
(4)上記ロボットシステムにおいて、前記入力受付部は、パーソナルコンピューターにより実現され、前記第1入力はユーザーによって実行されるものとしてもよい。
このロボットシステムによれば、アームカバーに応じた設定を確実に実行できる。また、ロボット自体の構成を簡略化できる。
【0034】
(5)上記ロボットシステムにおいて、前記アームは、前記アームカバーが取り付けられたことを検知するセンサーを有し、前記入力受付部は、前記センサーの検出結果を前記第1入力として受け付けるものとしてもよい。
このロボットシステムによれば、ユーザーが第1入力を実行することなく、アームカバーが取り付けられていることを示す第1入力を入力受付部に提供できる。
【0035】
(6)本開示の第2形態によれば、アームの外側に設置される配線又は配管を覆うためのアームカバーを取り付け可能に構成されているロボットの制御方法が提供される。この制御方法は、a)前記アームへの前記アームカバーの取り付けを示す第1入力を受け付ける工程と、(b)前記第1入力に応じて、前記ロボットの可動範囲を、前記アームカバーの取り付けが無い場合の第1可動範囲よりも狭い第2可動範囲に決定する工程と、(c)前記第2可動範囲に従って前記ロボットの動作を制御する工程と、を含む。
この制御方法によれば、アームカバーで配線又は配管を覆うので、配線又は配管が周辺装置に接触することを防止できる。また、アームにアームカバーが取り付けられるときにロボットの可動範囲をより狭い第2可動範囲に決定することによって、アームカバーと周辺装置との干渉を防止するための設定を容易に実行できる。更に、ロボットがアームカバーと干渉することも防止できる。
【符号の説明】
【0036】
10,10a…ロボットシステム、100…ロボット、110…アーム、120…基台、130…エンドエフェクター、140…接続ライン、150,150a…アームカバー、152…爪、160…センサー、170…入力受付部、200,200a…制御装置、210…ロボット制御部、220…メモリー、300…パーソナルコンピューター、310…入力受付部、320…可動範囲決定部、322…決定モデル、330…可動範囲テーブル、340…作業プログラム作成部、350…シミュレーター、360…表示部、400…補助装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7